特集・シナリオ作家井手俊郎 井手俊郎 ( いでとしろう ) 。 明治昭年 ( 1910 ) 4 月Ⅱ日、佐賀県生まれ。昭 和 8 年、東京高等工芸専門学校卒業後、アサヒビール、 パ。ヒリオ宣伝部、婦人画報編集部嘱託等を経て、昭和 . 一 年、東宝映画興行課人社。直営館の支配人として 各地を転任する。戦後、撮影所の文芸部に転じる。争 議後退社。藤本プロを経てフリー。文芸作品から喜劇、 青春物、アイドル映画など幅広く手掛け、特に女性 を描く名手であった。本名の井手俊郎のほか三木克己、 権藤利英など複数のペンネームを使って多くのシナリ オを執筆。 主な映画作品に『青い山脈』、『女の顔』『山の彼方に』 『若い娘たち』『めし』『三等重役』『警察日記』『女は 二度生まれる』『ハイハイ三人娘』『古都』『江分利満 氏の優雅な生活』『女の中にいる他人』『兄貴の恋人』『二 人の恋人』『初めての旅』『潮騒』『放課後』『海峡』ほ か映画脚本百数十本。主なテレビ作品に『青春とはな んだ』『七人の孫』『細雪』『娘たちは今』『信子とおば あちゃん』朝ドラ ) 『こけこっこー』『兄貴の花 嫁』ほか多数。昭和年 ( 1988 ) 7 月 3 日没。歳。
ⅢⅢⅢⅢ川ⅢⅡい川Ⅲ日川川ⅢⅢⅢれ川Ⅲ川川ⅢⅧⅢⅢⅢⅢ日日いⅢ li い川ⅢいⅢⅢ川Ⅲ川ⅢⅢⅢⅢⅢⅢいⅢⅢⅢⅢⅢ川ⅱ川いいいⅱ 最初におや ? と思ったのは「兄貴の恋人』 ( 六八年 ) と 「一一人の恋人』 ( 六九年 ) の二本立てを観たときだった。どう せ東宝の穏当な青春映画だろうとナメてかかっていた。だけ ど「兄貴の恋人」の内藤洋子の加山雄三の兄貴に対する想 いがちょっと異常に感じて。この妹の近親相姦的愛情を断 ち切るのが、洋子のピアノ教師、ロミ山田だった。レズビア ンの彼女が洋子に接吻したとき、ああ、毒をもって毒を制 したんだと思った。ぞくりとした。なんかこの映画、ヘンだ けどかっこいいなと。兄貴の加山はエリート・サラリーマン で、酒井和歌子の女工に惚れている。しかし彼女には家庭 環境に問題があり、なかなか結ばれない。会社の上司から 取引先のお嬢さんを紹介されたりして、揺れに揺れる。で、 父親の宮ロ精一一に相談する。この宮ロ、普段はむつつりして、 女房の言うことを「む」と、聞いているんだか聞いていない んだか、という茫洋とした人物。この宮口を加山か、ーに 井手俊郎論 連れ出し、スツールで肩を並べて飲む。で、加山が宮口にば そりと洩らす。「家庭的に問題のある和子 ( 酒井和歌子 ) さ んじゃなくて、取引相手の社長のお嬢さんと結婚しようと " 兄貴。と " 一一人。の " 恋人。に惚れて 思ってるんだ。その方が八方丸く収まるし、オヤジだって 安心だろう ? 」。するとそれまで無言だった宮口が一喝する 北里宇一郎 「見損なうな ! 」。それからすかさずカウンターに「ダブル 2 つ」とウイスキーを注文。以後、沈黙して加山と酒を呑む う 5 ん、この宮口にはシビレました。なにせこの時代は、大 人なんかやつつけろのゲバ棒の全盛期、その最中に出会った この父親像。胸に刺さりました。 「二人の恋人』は出だしのホームムービーで参った。以降、 病死した兄貴の恋人と瓜一一つの娘 ( 酒井和歌子 ) を弟 ( 高 橋長英 ) が見つける。で、兄貴 ( 加山雄三 ) に紹介して、結 びつけようとする。が、娘は弟を選んだ。なんていう筋立て は、『エデンの東』だと思った。賢兄愚弟の話だし、弟が恋 人を獲得するあたりが。だけどそ、つまとめてしま、つと、ど うも落ち着かない。どこか小骨が喉に刺さった想いが残る 兄弟の母親 ( 高峰三枝子 ) の存在が気になるのだ。映画の 前半に、トゲの刺さった母親の指を加山が吸う場面がある。 この母親、加山の父の後妻という設定だから血はつながって いない。だけど、ドキリとする。弟の事を思って、母と兄が 会話を交わしているだけだが、このふたりきりの茶の間の場 特集・シナリオ作家井手俊郎
すリオ 『花芯』黒沢久子 『エミアミのはじまりとはじまり』渡辺謙作 黒沢久子 ~ 回想形式の原作を現在進行形に ~ ( 聞き手 ) 赤坂ー博 渡辺謙作 ~ 笑いをメインにする映画を作らなきゃいかんと思って ~ ( 聞き手 ) 野村正昭 ◆特集シナリオ作家井手俊郎 くシナリオ〉 『二人の恋人』 1969 年東宝作品 く特集・シナリオ作家井手俊郎に寄せて〉 北里宇一郎井手俊郎論 ~ " 兄貴 " と二人 " の・・恋人 " に惚れて ~ モルモット吉田 シナリオ評『二人の恋ん ◆連載 佐伯俊道終生娯楽派の戯言第 50 回 / テレビデビュー作は場外乱闘寸前 井土紀州 + 佐伯俊道 ~ 犯罪とセックスの関係 ~ ◆書評 関本郁夫 / 高田宏治著『ひどらんげあおたくさシーポルトに愛されて』・・ ◆情報 シナリオポックス 作家通信井川耕一郎いとう菜のは井上登紀子岩澤勝己 シナリオ倶楽部新聞・ 第 26 回新人シナリオコンクール特別賞大伴昌司賞作品募集 目次 2016 年 9 月号 ◆シナリオ 13 ◆インタヒュー ・ 89 ◆日本名作シナリオ選 / トークセッション 80 46 紙デザイン / 塚本友書 表紙写真「花芯」
早苗「大丈夫よ」 夏子のアバート ( 夜 ) 次郎「送るよ : : : さあ、行こう」 夏子「雑誌のモデルに頼んだのよ : : : この写 夏子と悠一 徹「うん : : : 行こ、つ」 真が今日出来たもんだから、遊びに来たの」夏子「ほんとうは今みたいに出し抜けでなく、 光代「じゃあ、この写真、いただいてって : : : 」悠一「そう : : : 」 あなたに、或る程度、彼女の予備知識を与 えておいて、そしてさりげなく紹介するつ 夏子「ああ、どうぞ ( 大きな封筒を渡す ) 」夏子「コーヒ 1 いれるわ」 もりだったんだけど : : : 私がぐずぐずして 光代「ありがとうございました」 、ん、こちらこそ : たもんだから : ・ 夏子「いし 地下鉄ホーム ( 夜 ) 早苗「じゃ、おやすみなさい」 光代、早苗、次郎、徹が歩いて来る 悠一「いや、別に : 光代「さようなら」 早苗「素敵なお兄さんね」 夏子「実はうちの社長も一度会いたいって 光代「でも、何だか怒ってるみたいだったわ おっしやってるから : : : その時、一緒に食 ね : : : 私、恐かった」 事でもしない ? 」 早苗「そうね、ちょっと無愛想ね」 悠一「え ? 」 入口 ( 夜 ) 光代、早苗、次郎、徹が出て行く。 夏子「軽い気持でね・ : 夏子「じゃ、気をつけてね」 次郎「兄貴には恋人がいたんだけど : 光代「さよなら」 早苗「さよなら」 次郎「いいんだよ : : : 兄貴の恋人、三年前に 光代のアバート ( 夜 ) 夏子「さよなら」 死んじゃったんだ」 光代と早苗が布団を敷いて寝支度をして いる 光代「まあ : ・ 次郎「その恋人、君にそっくりだったんだ」早苗「あんた、この頃、急について来たみた 居間 ( 夜 ) 悠一が立っている 光代「え ? いね」 夏子が来る 徹「名前もミッちゃんって言ったんだ」 光代「そうかしら : ・・ : 」 夏子「どうぞ : : : お坐りになって : : : 」 早苗「え ? 」 早苗「だってそうじゃない : : : ファッション モデルになったり、素敵な恋人が現れたり 悠一「ええ : : : ( 椅子にかける ) 」 徹「美千子って一言うんだけど、僕たち、ミッ 夏子「この写真 : ・ ちゃんて呼んでたんだ」 残っている光代の写真を見せる 光代「素敵な恋人って : 早苗「まあ : : : 」 電車が来る 早苗「次郎さんの兄さんよ」 夏子「 ( さりげなく ) どっか、ちょっと美千 光代「だって、あの人の恋人が私に似てたっ 子さんに似てない ? 」 : いいでしょ ? 」 ー 110 ー
い川Ⅲⅱいⅱれ日Ⅲ川いⅢⅢⅱ日ⅢⅢⅢ川ⅢⅱいⅢⅢ川ⅢⅢⅢⅢいⅢい日駲ⅢいいⅢ川ⅢⅢいⅢ日ⅢⅢⅱⅱⅢ川川れⅢⅢい日ⅢⅢⅢⅢ川ⅢいⅢ川Ⅲい川Ⅲ日いⅢⅱⅢⅢⅢⅢ 面が妙に色つほい。かすかに近親相姦の匂いがする。そう考 えると、弟の、スネてイジけて家に帰らぬ、そのひがみ方が、 母と兄の間に入り込めす、なんとか母をこちらに振り向か せたい、その懸命のあがきに見えて。つまりこれは母親に呪 縛された兄弟の話ではないかと。そうなるとタイトルも意味 深で、この兄弟のク二人の恋人ッとは、酒井和歌子の娘では なく高峰三枝子の母に思えて。そういえば映画では、兄と弟、 それぞれが街をさまよう場面に、テンプターズの「おかあさ ん」 ( オー、ママ、ママ 5 ってやつね ) をかぶせてたな。終盤、 兄の加山は、行きつけの飲み屋で知り合ったすげえ色つほい お姐さん ( 稲野和子 ! ) と一夜を共にして、やっと母の縛り から解き放たれ、昏々と眠り続ける。弟の高橋は遂に母を ひとり占めして甘えまくる。兄の代わりに弟を支配下にお いた母の顔はどこかク雪の女王ク ( アナの姉さんじゃなくて ソ連漫画映画版のイメージ ) にも見えて それまで井手俊郎というと、「青い山脈』以下の石坂洋次 郎原作の明朗青春劇や、『三等重役』など源氏鶏太原作のサ ラリー マン物、「めし』が最初のホームドラマの脚本家だと 思っていた。いわば東宝の表看板の人。だからこの二本の 「恋人』を観たときは驚いた。明るく楽しい東宝映画の中に、 塩コショウを利かしてるし、毒だってまぶしてあるんだと。 で、これ以降、井手作品に向かうときは警戒した。油断し てはならぬぞ、と。すると出るわ出るわ。甘美を期待した 観客を裏切るような苦味たつぶりのメロ・ドラマ「愛情の都」 とか、成瀬巳喜男の夫婦ものに辛しを塗りつけたような「愛 情の決算』とか。あの成瀬に、異色中の異色作「女の中に いる他人』を撮らせてもいる。東宝だけじゃない。松竹では 権藤利英のペンネームで、「夜の片鱗」「河口」などク女クも のの傑作をものにし、日活でも三木克己の筆名で明朗軽快、 しかし香辛料をまぶした吉永小百合青春映画を連発。川島 雄三との『洲崎パラダイス・赤信号』「女は二度生まれる』 の女と男のぐずぐず、「古都」「伊豆の踊子』の自家薬籠の 脚色ぶり。どれもこれもカラリと乾いたタッチ。濡れてない。 しかもロ当たりがいい。職人芸を発揮しながら、時に、その 奥に作家性を忍ばせている。大人なのだ。それもすごく洗 練された、都会のかっこいいおじさん。 日取 ( 後に、 かって本誌に連載していた「映画を面白く見る 方法ーから井手氏のこの一言を 「昔の監督は、一一十歳の頃に一生懸命に背伸びして大人の映 画を作っていた。そしてだんだん大人になっていったんだと 思うんだ。しかし、今の人の幼児性は、そのまんまの幼児。 今は幼児が幼児の映画を作っている ( 笑 ) 」 これ、三十年前の発言なんだよなあ。今はもう幼児ばっ かりの日本映画で。自戒。だからこそ、なお、井手俊郎の 映画が重いわけで。 川日Ⅲい日Ⅲ日Ⅲ日Ⅲ日れⅢⅱい日Ⅲⅱいいⅱ日Ⅲ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢ li れⅢ日日ⅢⅢⅢⅢⅱいⅢ li ⅢⅢⅢⅱⅱ lt ⅢⅢⅢ川ⅢⅢ川ⅢⅢⅢⅢⅢいⅢれⅢ川Ⅲ日ⅢⅢⅢⅢⅱⅢれれ日川ⅢⅢⅱⅱⅱⅢれⅢⅱⅢⅢ日ⅢⅱⅢれ引
通巻 818 号第 72 巻第 9 号毎月 1 回 1 日発行平成 28 年 9 月 1 日発行 うすリオ 立 映画芸術の原点 / s c 0 の月刊誌 e n a 「 i 2016 日本シナリオ作家協会 毎月 3 日発売 シナリオ → - いーを△ イむ 黒沢久子 工ミアピの はじまりと はじまり 渡辺謙作 特集■シナリオ作家 井手俊郎 二人の恋人 1969 年東宝作品 160970706
入場券の飛んで行った方を見る。 わ。ようやくこの頃忘れかけて、誰かほか なとこまで引っぱり出して : : : 」 後から来た女の客が金を出す。 の人と結婚しようかって気持になってるの徹「エイプリル・フールはまだ明日 : : : 明 客「二枚頂戴、 後日だな」 次郎、ようやく足元を見回して、落ちて次郎「あの子と結婚すればいいじゃないか」夏子「やつばり私たちをかついだのね」 いる入場券を拾う。 夏子「馬鹿ね : : : どんな人だかわかりもしな次郎「ちがうったら : : : 変だなあ」 また光代の方を振り返る。 夏子「帰ろ」 次の客に入場券を売っている光代。 次郎「人場券を売ってるんだから、頭の悪い次郎「ちょっと待ってよ : : : 今日は休んだの 次郎、のろのろと入口の方へ行く。 子じゃないよ : : : 金を扱ってるんだから信かなあ」 用されてるんだと思うんだ」 夏子「こういうとこの人はね、日曜日は忙し 夏子のアバート ( 夜 ) 徹「恋人がいるかも知れないな」 いから、ウィークデーに休むの」 次郎と夏子と徹 次郎「いないかも知れないさ : : いたってか次郎「ふーん : : : じゃあ、きっとこの中にい 次郎「美千ちゃんにそっくり・ : ・ : 俺、夢見て まわないよ : : : とにかく一度見てごらんよ るよ : : : 俺、聞いてみる」 るんかなと思ったり・ : ・ : それとも幽霊かな ・ : 兄貴に見せる前に三人で行ってみよう徹「え ? 」 と思って、ぞっとしたんだから : : : 」 次郎「あの、入口にいる女の子に : : : 」 徹「ヘッ」 徹「映画見るんじゃないんだから、金はい夏子「馬鹿ね、およしなさい」 夏子「神様はこの世の中に三人までは同じ顔らないんだな・ : ・ : じゃあ行こうよ」 次郎「だって : ・ をお造りになるそうだから、そういう人が 徹「何て聞くの ? 」 いても不思議じゃないわね」 映画館の表 次郎「入場券を売る人がもう一人いるでしょ 徹「じゃあ、僕と同じ顔の収が地球上にも 次郎と夏子と徹が来る。 う一一人いるの ? 」 入場券売場の方を見る。 夏子「その人に会わして下さいって ? 」 夏子「そうね、アフリカあたりにいるんじゃ次郎「あれ : 次郎「うん : : : 」 光代の顔は見えす、別の出札係が入場券夏子「どんな用だって云われたら、何て答え 徹「ヘッ」 を売っている るの ? 向うの名前もわからないのに、そ 次郎「兄貴にも見せてやんなきや : : : びつく徹「あれが美千ちゃんに似てるの ? 」 んなこと言ったって、不良だと思われるだ りするだろ、つなあ」 次郎「いや : ・・ : ちがうよ」 けよ」 夏子「兄さんに見せたってしようがないじゃ夏子「何よ、あんた : : : せつかくの日曜日に徹「まあ、そんなとこだな」 ない。却って美千子さんを思い出すだけだ のんびりしようと思ったら、わざわざこん夏子「もともと他人の空似でしよう : : : 美千 104 ー
か」と桂さんのお叱りを受けた候補作は、「海 『新年鑑代表シナリオ集』出版委員会を終えて 難 1890 」だった。 ( 委員・荒井晴彦井土紀州桂千穂金村英明木田紀生中野太森下直 ) アカデミー賞の優秀脚本賞作品でもあった ので、私が興味をもって取り寄せたシナリオ 松下隆一 ( 長 ) だったが、読んでみて、確かに ( しまった ) と思った。諸事情があるのだろう力、こうし 「シナリオは論理ですよ」 いるような人たちの、人生の断片をパラレル た作品がアカデミー賞候補にあがることをど 「岸辺の旅』について議論している時の、 にとらえながらも、彼らの一一一口、つに言えない倦 うとらえてよいのか、その戸惑いだけが残っ 荒井さんの言葉である。 怠感や焦燥感、絶望感、そして葛藤を描き切 てしまった。 その言葉通りに、精密機械のように緻密に るという、とても作家性の高いオリジナルシ 他にも話題作として候補にあがったものの、 組み立てられた「この国の空」は、「よく書ナリオであったかと思う。 選外となった作品に、『海街 d 一 ary 』、『図書 けてますよ。当時はあの通りでしたよ」と評 こうした選考には選ぶ側のク好みクとい 館戦争 THE LAST MISSION 』、「お盆の弟』、 価された桂さんの後押しもあり、すんなりと うものが大なり小なり影響すると思うのだが、 「バクマン。」、「合葬』などがある。 決定した。臨場感あふれる戦時下のリアリズ 「恋人たち』は私個人としては全く好みではな 』は私が推した作品で、画家、 ムはもとより、作家としての強靭な哲学を貫かった。だが、好みではない作品に対してこ 藤田嗣治の生涯を描いたオリジナルシナリオ く姿勢が評価された。 こまで惹きつけられるというのは、その根底 として、豊かなイメージとダイナミックな構 また、菊島隆三賞を受賞した「ソロモンの に作家の切実なるク真摯な想いツが秘められ 成を評価したが、委員の方々の琴線にはふれ 偽証前篇・事件」と「ソロモンの偽証後篇・ ているといっても、 しいたろ、つ。 ず、選外となった。 裁判』も、さしたる異論もなく選ばれた。メ 以上の四本は一回目の出版委員会で決まり、 「映画ビリギャル』も私が興味をもって取 ジャー作ロ明として、プロフェッショナルとい 残りの六本は二回目に決まったが、その間、 り寄せたものであったが、あまりに先が読め うものはこう書くのだという、お手本のよ、つ多くの作品が検討され、選外となった。 る展開に推せなかった。「映画自体は面白かっ な印象であった。 毎年の選考会がどのようなものか、私は今 た」と評価する桂さんの声もあったが、シナ ただ、荒井さんが、映画としてク前篇・後 回が初めてであったのでわからない。だが、 リオとしてディテールについての瑕疵も指摘 篇。という形式はいかがなものかと疑問を呈比較的判断の迷う必要のない作品 ( 良いも悪 され、選外となった。 した。本来は原作をまとめてちゃんとした一 いも ) についていえば、委員たちの間のクあ・ 『駆込み女と駆け出し男』は原作者の井上 本の作品にすべきだというのである。それは うんクの呼吸というか、殆ど議論されるまで ひさし氏の良さを存分に引き出したようなシ その通りだとは思ったが、 商売向きのことも もなく当落が決まった。ただ、中には候補作 ナリオに田 5 えたが、 撮影手法や演出上の狙い あるのだろう。いずれにせよ、シナリオその としてさ、んど、つかとい、つことで、クレームが などといったものまでが書き込まれており、 ものには罪はない。 ついた作品もある。 シナリオの表現としては不適切であると問題 次には「恋人たち』を選んだ。どこにでも「何でこんなものを候補としてあげたんです になった。 -4
二人の恋人 民悠民悠 民悠 民 民 ラピュタ阿佐ヶ谷 子一子一と 子一 い ね ル子 : と いか子 も 思ん何 ん メ し、 ーー 1 ーー 1 美三 あ 僕 心 次、 ノ 毎月抽選で 1 5 名様 っ か だだだ っ ツ 千 . な の配郎んも ン 丈のか ト 力、 招待券プレゼント 子 : にも た 三知あをポ 夫よ ら て さ の と な次・ れ 、帽リ だ ん っ 郎 いな よ きあ っ “ 8 月上映スケジュール が 嫁 てだ た いれて つ の の 「溌剩〈 HA ・ TU ・ RA ・ TU 〉たる 亡 さ 来けだわ 、あそ と子頃 く たどき ん ・お っ 次 暴 は 昭和の女たち一脚本家井手俊 の な ま : 醤れね の 郎 カた大 の 郎のめくばせー」 よ 三す油 は 学だ学 る ん ~ 13 日 ( 土 ) て と 少根 ノ 生では 女の中にいる他人 / 大当り三色 娘 / ニ人の恋人 / 颱風とざくろ / も あ か も の ポ な血 ト 花ひらく娘たち / 放課後 / 街に な けな子 リ つ の つ フ 泉があった た た さ だ ち気イ に 方そは まがキ か の 「稀代のエンターティナー ! フラ 経 う多オ へ ら つ ンキー太陽傳」 14 日 ( 日 ) ~ 10 月 15 日 ( 土 ) 民悠 26 民 悠 民 悠 牛乳屋フランキー / 倖せは俺等の 子一なな子オ し子て る の ねがい / 僕は三人前 / グラマ島の 甲 ら く て る かよ ん 誘惑 / フランキーの宇宙人 / 幕 ーー 1 - ー 1 野 ほそ い 、あ く ん ほわ僕ら れオ 末太陽傳 / ぶつつけ本番 / 愛妻 宝 三や多あれんけだ じ んん れも 記 / 特急につばん / 私は貝になり 房 と な ややだ分・ る と っ私今ばの たい / 貸間あり / 人も歩けば / 暴 な、 つわ のま や て 女 と 、丈お れん坊森の石松 いば な でそ 性 い別存 は っ あ ◆ モーニングショー い本んださ じよ あ にで いな ン よ 気な 「昭和の銀幕に輝くヒロイン第 よ や結断 ヤ ん な っ た で あ 女昏 ったおが 81 弾浅丘ルリ子」 ナ 結 し の話そ の て し、 ~ 27 日 ( 土 ) 連日 10 : 30 より 婚な い お なき 気 は の 執炎 / 夜明けのうた / 華やかな 編 すし、 と 母 孑寺 い気 いた 女豹 / 愛の渇き 集 る返 思 く さ なけが に 気 事 んどわ 「昭和の銀幕に輝くヒロイン第 ら っ ん さ な か も て 82 弾香川京子」 だ ま ん つあな 28 日 ( 日 ) ~ 連日 10 : 30 より か っ か め て . る おかあさん ◆レイトショー 夏 夏 記 記 夏 「ゆきてかえらぬ渡辺護官能の う子と者 者子れ子 ら 力、 い子 映画旅」 来 B 記 A がは を電ずげん夏男 ~ 11 月 14 日 ( 月 ) 連日 21 : 00 より 駄 あて者出ま え子女 の話 さ で 目ぞを ま 、下身 B き てあ 女子大生の抵抗 / おんな地獄唄 ま が記 と そさ体がびなま く 切はでよ 三電者 尺八弁天 / ⑩湯の街夜のひとで ま いが来 いあ・ し : 話数 つ つ し、 / 渡辺護自伝的ドキュメンタリー 三駄 り つあ いじ に名 る て ん 第一部「糸の切れた凧渡辺護が 。な そ や 目 ん出力 てし、 じ ん 語る渡辺護」前後篇 て あな駄・ 己 て仕 ど ん や つ た い目 者、 い事 っ あ JR 阿佐ヶ谷駅北ロ徒歩 2 分 ら を A ぞ 祝る 田 3-3336-5 0 よ来そ者 ん 。し の http://www」aputa-jp.com 社 駄な 選ろ週れか て 長 目 の ん のは ら し し、 そ 室 駄 月 も でく の る 目 う反 い ・つ ち ち に 三響 る 写 も は よ と・ 真 必お凄 ・つ ー 101 1 一 = ロ ご希望の方はハガキて、〒 107-0052 東京都港区赤坂 5-4-16 シナリオ会館 4F 「シナリオ」編集部ラビュタ阿佐ケ 谷係宛にお申し込み下さい。締切は、 毎月月末必着。
赤狩りに追われ、変名で脚本を書いたダルトン・トランポは 数々の名作でオリジナルアイデアを考えたとか、使えないホンを 直したとか言われるが、改稿の過程が分からないので、どこまで 本当にトランポが関わったのかと『トランポ ハリウッドに日取 , も 嫌われた男』を観た後に関連書籍を読みながら思った。 日本でも例えば、「めし』 ( 原作】林英美子監督成瀬巳 喜男 ) は田中澄江が最初に脚本を書き、井手俊郎が加わって決定 稿が完成した。「手伝うことになった」と、「プロデューサー人生 ー藤本真澄映画に賭ける』 ( 尾崎秀樹編 / 東宝株式会社出版事業 室 ) で井手は控え目に記しているが、同書に収録された「一プロ デューサーの自叙伝』で藤本は「田中澄江は頑張ってくれたが、 出来上がった脚本は成瀬も私も気に入らない。井手俊郎君に頼ん で書き変えてもらうことにした。 ( 略 ) 脚本は成瀬好みの淡々と ◎シナリオ評 モット吉田 したものながら、よくまとまったものになった。」と、井手の役 割が小さくなかったことを窺わせるが、田中が単独執筆したもの と対比することができれば、具体的に見えてくるだろう。その後 の『妻』 ( 原作林芙美子脚本井手俊郎監督【成瀬巳喜 男 ) は井手が一人で書いたものだが、倦怠期の夫婦のけだるく、 冷ややかな雰囲気が見事に描き出されており、同時期に成瀬と組 んだ田中、水木洋子らに劣らぬ存在だったことが分かる それから年後の「二人の恋人』 ( 脚本】井手俊郎監督】 森谷司郎 ) は、藤本プロデュース、井手のオリジナル脚本による 東宝青春映画である。婚約者の美千代を亡くした悠一は 3 年経っ ても喪失感を拭えない。母の民子を大切にする悠一と対照的に、 3 浪して将来も定まらない弟の次郎はいつも母とイザコザが絶え ない。ある日、次郎は美千代に酷似した光代と出くわす。悠一を一 心配する周りの人々と画策して次郎は 2 人を出会わせる。 終盤近くまで悠一は主体性を持たない。周囲の人間によって彼一 のキャラクターが肉付けされる。例えば、悠一が品行方正で正確 無比な人物であることをどう描いたか。 ・朝の大の散歩で挨拶する近所の若い娘たちが、後で毎日決まっ た時間に家の前を通る悠一を噂する。 ・借金に悠一の会社を訪れた次郎に受付の女がメモを渡すと、 「時間通りに来ないから渡せない。 4 時燔分にもう一度来るこ とーと書いてある この 2 つのシーンに悠一を登場させて喋らせれば、実に説明的 でつまらないものになっただろう。 光代の心が悠一から離れているのを確認した次郎は兄を焚きっ けてプロポーズするように迫る。ようやく悠一は自分の心情を告 げるが、呆気無く光代に振られてメンツを潰される。そこで彼の