泰朗 - みる会図書館


検索対象: シナリオ 2016年9月号
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1. シナリオ 2016年9月号

郁「 ( 驚き ) そうなの ? んたが親父殺した訳じゃないもんな」 黒沢、頷く 墓地 郁「やめなさい」 掃除を終えた黒沢が、線香を立て、瞑目泰朗「父さんが殺されてすぐ」 頭を下げ続けている黒沢。 している 泰朗「親の罪被って罰受けてたつもりだった 顔を上げると、墓石の隙間から男女一一人泰朗「 ( 黒沢に向き ) もう来ないでくれるか か知らないけどさ、たったの七年だよ。そ たいろう 連れ、村田郁 ( ) と息子の泰朗 ( 幻 ) な」 の程度の責任しか感じてなかった訳だ」 がやってくる姿が見える 郁「泰朗ー 郁「いい加減にしなさい。黒沢さん、ごめ 一一人も黒沢に気付いた。 泰朗「迷惑なんだよ」 んなさい。今日はお引き取り下さいー 頭を下げる黒沢。 郁「 ( 頭を下げ ) すみません」 泰朗「 : : : わかった。許してやる」 郁は黒沢に目礼する。 黒沢「いし 、え。あの、厚かましいんですけど、 顔を上げる黒沢。 泰朗は黒沢を無視して、線香を消し、黒迷惑っいでに今日は報告に来ました」 泰朗「その代わり、俺を笑わせろ」 沢が活けた花を捨て、墓石に水を掛け始郁「 ? 真面目な顔の泰朗を見て、思わず吹き出 める 黒沢「奥さんはご存知なかったようですけど、 してしまう黒沢。 郁「泰朗」 私、芸人辞めてました。ですが今度、もう 目の色が変わる泰朗に、 無視して作業する泰朗 一度やり直そうと思っています」 黒沢「 ( 頭を下げ ) すみません : : : あの、似一 郁「ごめんなさいー 泰朗「は ? 」 たようなシチュエーションが、この間あっ 黒沢「いえ」 黒沢「すみません」 て」 郁「毎年、綺麗にしてくれてたの、黒沢さ泰朗「何それ ? 反省したフリ ? 笑いを噛み殺している んでしよ、つ ? 」 郁「泰朗、黒沢さんは悪くないのよ」 泰朗「俺が笑わなかったら復帰するなよ」 黒沢「今後、お気を悪くされるかもしれませ黒沢「わかりました」 郁「ありがとう ) 」ざいます」 んけど、お許し下さい」 と、暫く集中してから顔を上げると、ポ 黒沢「いえ」 泰朗「ふざけてるよな」 サポサ髪で、 郁「主人も喜んでいると思います : : : 私は郁「泰朗、お父さんの前よ」 黒沢「こんにちは。お笑い研究家の薬田アハ あまり見ないんですけど、お忙しいん泰朗「俺らが許さなかったら復帰しないのか 三郎でし」 でしょ ? 薬田はウ以外のウ段がイ段に訛るキャラ 黒沢「 ( 頭を下げ ) すみません」 で、名前も「きしりだあはさびろう」に 聞こえる 泰朗「 : : : その人はもう芸人辞めたんだよ」泰朗「どうせ俺らなんて関係無いんだろ。あ -4

2. シナリオ 2016年9月号

ェミアビのはじまりとはじまり 黒沢「笑いとは日常の中の非日常。例えば、泰朗「じゃ、何なんだよ ( 空を見上げ ) あ」 笑って読めない泰朗 かけ離れたひたち ( 二つ ) の言葉のびちか 小さな点が現れ、それがやがて金盥の姿 郁、ポカンと驚いていたが、思わず吹き り ( ぶつかり ) 合い : を成した。 出してしまう。 その時、空から降ってきた金盥が黒沢の黒沢「 ( 見上げ ) やばい」 笑う一一人。 頭頂部を直撃する。 金盥を二つ持ちながらうろうろしつつ、 泰朗・郁「」 黒沢「こっちに来んなよ 四ホール・ステージ 蹲る黒沢、頭をさすりながら上空を見上 逃げる方に金盥もふわふわと動き、 拍手の中、登場する実道と黒沢。 げるも、変わらぬ青空。 郁「危ない、黒沢さん」 実道「どうもー、エミアビです。いやー、久々 金盥を拾い、 立ち止まった黒沢、金盥を頭の両斜めに の舞台、緊張するね」 黒沢「 : : : 何これ ? 着け、 黒沢「 ( ド緊張 ) 私、よろしいのでしようか ? 三人共、呆然としていたが、 黒沢「ミッキーマウス」 こういった場所は初めてでして」 泰朗「 : : : 早く笑わせろよ」 そこに三度目の金盥が激突し、思わず吹実道「この人、さっきそこで会ったの」 黒沢、少しの間、金盥を見ていたが、こ き出す郁。 黒沢「ご挨拶遅れました。私、株式会社アノ一 れを被り、位置を何度も直すと、 ネ営業部の黒沢と申します」 黒沢「すみませーん、このハゲヅラ、大きい 甘味処 と、実道に名刺を渡す。 んですけどー」 かき氷を食べている郁 実道「どうも。実道です」 と、金盥を脱いだ途端、違う金盥が脳天 食べ終わった泰朗はスマホを操作してい 黒沢「よろしくお願いします」 を直撃。 る と、客席にも頭を下げる。 よろめき、うずくまる黒沢。 郁「泰朗、お母さんの食べて貰える ? 」 実道「黒沢さんは何を売ってるの ? 」 思わず笑ってしまう郁。 と、突然、忍び笑いをこばす泰朗 黒沢「はい、 お客様が幸せになれるような物 郁「 ( 必死にこらえ ) 大丈夫ですか ? 」 郁「・ : ・ : 何、気持ち悪い : : : さっきは笑わ を売らせていただいておりますー 泰朗「 ( 天を見上げながら ) 何のマジックだ なかったのに」 実道「幸せ ? 大きく出たね」 よ ? 」 笑いを噛み殺しながら、 黒沢「実道様にも、これがあったらもっと幸 黒沢も空を見上げ、狐につままれた気分。泰朗「 ( 読み ) ・ ・ : 今日の午前十時四十分頃、せになれるのに、と思われている物はござ 泰朗「 ( 黒沢に ) お前、ずるいぞ」 千葉県市原市で竜巻が発生し、金物工場の いませんか ? 」 一一つの金盥を手に起き上がる黒沢。 倉庫を直撃。倉庫に置かれていた金盥数百実道「 : : : お金とか ? 黒沢「俺は知らない」 個が空に飛ばされて : : : 」 黒沢「お金でございますね」

3. シナリオ 2016年9月号

〈スタッフ〉 ョ ま 狩野善則 、ンプロデューサー 定井勇一一 じ アソシェイトプロデューサー ロ 鈴木仁 次 藤澤順一 順撮影 国照明 金沢正夫 録音 福田伸 と作。← 上田禎 音楽 原田満生 美術 谷 堀明元紀 はスビマ 装飾 北山陽一一郎 と , ブ給ネ 編集 普嶋信一 ま 画 〈キャスト〉 叔目、一ス 実道憲次 海野一哉 高橋夏海 本雛マ 黒沢拓馬 ュ ヒ 黒沢雛子 村田郁 阯村田泰朗 ヾツ、に男 日 3 携帯男 月運転男 020 炻ーエミアビのはじまりとはじまり」製作委員会 森岡龍 前野朋哉 黒木華 新井浩文 山地まり 大島葉子 九内健太 日向丈 松浦祐也 斎藤嘉樹

4. シナリオ 2016年9月号

実道「マジですか ? ー チャックを下ろす音が聞こえたと思うと、 隣に現れる海野 黒沢「ちょっと読み合わせしてみましよう 蛍光色に光るウッポ状の物が現れた。 海野「どう ? 実道の声「えー」 しかし雛子の耳には届いていないよう。 実道「良いんですか ? 舞台上で見えるのはソレのみ。 海野「 ? : : : 雛子ちゃん ? 少し台本を読んだ後、袖から出てきた風黒沢の声「どうです、コレ」 雛子「下ネタとは」 で、 実道の声「ソレってアレでしょ ? 」 海野「え ? 」 黒沢「どうもー、私、ロジオン・ロマーヌチ黒沢の声「ええ。ビッグマーラ一日一 顎で舞台を示し、 イ・ラスコーリニコフです」 粒で、アレがコレになりました」 雛子「あれだけ下ネタ、嫌っていて : : : 最低 実道「僕はレフ・ニコラエヴィチ・ムイシュ実道の声「マジですか ? 」 だ。復活ステージで、このネタとは : : : 」 キンでーす」 黒沢の声「しかも回せます」 海野「雛子ちゃん、もしかして今までも、そ 実道・黒沢「二人合わせてカラマーゾフの兄 蛍光色のソレが回転する んな顔して僕らのライプ見てたの ? 弟ですー 黒沢の声「扇風機ー 雛子「・ : ・ : どんな顔 ? 」 実道「つてこれ駄目。舌噛んじゃう」 実道の声「やめろって。しまって。早くー 雛子の顔真似をし、 黒沢「ドストエフスキー駄目ですか ? 」 チャックの音が聞こえ、客電がつくとべ海野「こんな顔ー 実道「俺の幸せ、遠いなー」 ルトを填めている途中の黒沢。 雛子「そんな顔、してない」 黒沢「では最後に、これは如何でしよう ? 実道「何やってんの、あんた ? 海野「いやいや、してたよ。リラックスして」 と、薬瓶を取り出した。 黒沢「ビッグマーラ一日一粒で、私、今、 海野、雛子の顔を揉む 黒沢「弊社が開発したピッグマーラ とても幸せでございます」 客席には泰朗や運転男が座っていた。 一日一粒飲むだけでアレがおーきくなりま実道「本当に幸せ ? 邪魔じゃないの ? 大雛子「 ( 気付き ) あ」 ま すー 体、普段どこにあんの ? 今は ? 」 爆笑している泰朗と運転男 じ は実道「アレ ? 」 黒沢「 ( ズボンからシャツへと手を移動 ) こ 海野と雛子、顔を見合わせ、微笑み合う。 黒沢「一度、現物を ) 」覧になりますか ( 突然 ) ま じ 照明さーん ! 」 実道「上ズボンの中じゃないの卩 引同・ステージ の すると舞台が暗転した。 実道が黒沢にズボンを脱がされそうに ア ベルトを外す音が聞こえ、 なっている 同・客席 工 実道の声「ちょっと、何してんの舞台上 雛子が腕を組み、厳しい表情で舞台を凝黒沢「実道様の幸せ度を把握させて下さい」 だよ」 視している 実道「わかったわかった。自分で脱ぐ」 7 ー

5. シナリオ 2016年9月号

半年の間、取材に勤しみ、その頃はまだ本格的にドラマ 出演したことがなかった片岡鶴太郎を角栄役に抜擢するこ とが決まって、のちのち明らかになる皇民党事件の真相な ども描くつもりだったのだが、 当時はまだ議員になる前の 田中真紀子から宛に「ドラマ化まかりならす」との 内容証明が送りつけられ、断念せざるを得なかった。 元村、氏など、人との出会いは偶然ではあるが、人 生の上では必然なのかもしれない この時期知り合った人々の多くと三十年来、未だに仕事 が一緒に出来ることは幸せである。 『中卒・東大一直線もう高校はいらない』のことは、ウ イキペディアにはこう記されている 『最終回は、大学入試の結果発表会場で再会した磯田 ( 注・ 役名菅原文太 ) と中学担任 ( 長塚京三 ) が和解するシー ンで締め括られている』 ところが、ドラマデータベースの方は、僕の準備稿を参 考にしたのか、以下のように記されている 『教育とは、受験とは何なのか。中卒の息子を一流大学に 合格させた塾経営者の体験記。有森也実の公式デビュー作 とされている。工藤静香のデビュー作でもある。学校教育 に見切りをつけた親子が高校を受験せす、大検↓東大入学 の道を歩むという社会派ドラマでした。長塚さんは主人公 の担任教師なのですが、彼ら親子の生き方をとことん批判 する憎まれ役。主人公が東大合格した時も、「私の考えは 間違っていない , と微動だにしない ( ふつう悪役は最終回 長塚京三にはその後、「おじさん改造講座』 ( (--•co 共同脚本田渕久美子監督江崎実生 ) で、にまっ たく付いていけないかわいそ 5 なおじさん上司役を軽妙に、 名古屋開局間周年記念ドラマ「やらまいか本田宗 郎物語』 ( 演出門脇正美 ) では、本田宗一郎を技 術のみに専念させ、世界のホンダの礎を作った本田の盟友 の経営者・藤沢武夫を重厚に演じていただいた。 祭りの日々は終わり、僕はロマンポルノに復帰した。 『美姉妹剥ぐ ! 』 ( 監督上垣保朗 ) を書いていると、『も う高校はいらない』で二番手の監督だった森田光則から電 話が掛かってきた。 森田は、木下プロ所属の演出家兼である ( 現在はオス カーの ) 。 その森田に誘われ、皆川博子原作の 2 時間サスペンスを 書くことになる 長い長い『 2 時間ドラマ作家生活』の始まりであった で改心するのに : : ) 。とことん憎々しいキャラクターで した。たぶんあの作品が出世作だったのではないでしよう か』 ( 文中一部敬称略 )

6. シナリオ 2016年9月号

月刊うすリオ別冊 シナリオ入門読本 脚本家白坂依志夫の世界 定価 : 1646 円 ( 税込 ) ~ 戦後日本映画を震撼させた伝説の脚本家 ~ 「青空卿石人と玩具」獣死すべし」「偽大学生」など増村保造監督ら とコンピを組みモダンな感覚で戦後日本映画に旋風を巻き起こした伝説の脚本 家・白坂佐ま夫の世界。自選シナリオ 2 編獣死すべし「大地の子守 のほか、「シナリオ」誌に連載し話題となった交遊禄「白坂依志夫の人間万華 鏡」を一挙掲また白坂依と夫の半生を語るインタビュー、座談会・女性か ら見た白坂佐志夫像など収録ーー一日本映画史に残る多くの名作を手がけた脚 本家の実像に迫る 当すリオ明第・ 脚本家 白坂依志夫の世界 ! 書いた ! んた ! 遊んたし 戦後日本映画を震撼させた伝説の本家 ツ 周防正行シナリオ作品集 定価 : 1646 円 ( 税込 ) ~ 周防映画のすべて ~ 0 7 年日本映画の各映画賞をほ ( 蜊店した「それでもボクはやってないはじめ、 周防映画の根幹であるシナリオをデビュー作から今日までの全シナリオを 4 につカつロマンポルノカらスタートし h a 凵 we ダンス ? 」一ヤ、リウットでリメイク され大ヒット、世界の周防映画になるまでの軌跡をシナリオで辿る く収録作品〉 「を t でもボクはやってない ( 07 年キネマ旬ヾストテン 1 他「 Sha 凵 we ダン ス ? 」 ( 96 年キネマ宣ベストテン 1 仞「シコじゃった」 ( 92 年キネマを盟 ベストテン 1 働「ファンシイダンス」 ( 89 年「変鬼矣兄貴クさん ( 84 年 ピンク斑山 D 「スキャンテイドール脱ぎたての香り」 ( 84 年につカっロマンポルノ ) ャリオ当京・ 周防正行 シナツォ 作ロ化 ( それでも ( クは 一一や 0 てない これを第物・ ( ′氿”のス 作家を育てた日活ロマンポルノ シナリオ選集 定価 : 1851 円 ( 税込 ) 一流の脚本家、監督たちが創造した超工ロスの世界 ~ 日本映画史の中で一時代を画し多くの脚本家、監督らを育てたく日活ロマンポ ルノ〉。 SEX シーンさえあまなんでも OK といった自由な発想から、多くの乍 が生まれ、現代日本映画を支える多くの人材が輩出したーー く収録シナリオ〉 荒井晴彦「新宿乱れ街いくまで待って」 / いど・あきお「⑩色情めす市場」 / こ 桂千穂「ズームアップ暴行現場」 / 加藤正人「 SM 教室・失 / 神代辰巳「一 条さゆり濡れた欲情」 / 白坂佐志夫「赤い花弁が濡れる」 / 大工原正泰「さ すらいの恋人眩暈」 / 田中陽造「おんなの細道濡れた海熨 / 中島丈博「淫 獣の宿」 / 中野顕彰「牝猫たちの夜」 ◎日活ロマンポルノの全貌北川れい子◎日活ロマンポルノ全作品リスト シナリオ作家協会発行企画・製作・販売・株マルョンプロダクション「シナリオ」編集部 (TEL) 0 3 ー 3 5 8 5 ー 6 4 5 0 うすリオを解 - いど・・を物ー・・物めす・ 物代員日い第 0 物第れた・・一 作家を寬てな 日活ロマンポルノ シナリオ遷集 「日諸 0 マ冫ル′は・事家たちのオリジイの載いり

7. シナリオ 2016年9月号

園子「何するの ! 」 園子「愛があるから感じるわけじゃないのよ」園子、そうしよう」 と、正田を突き飛ばす。 雨宮「え」 と、すがりついていく。 正田「好きなんです。ずっとずっと好きだっ園子「試してみたんだから、本当よ」 園子「・ : たんだ」 雨宮「試したって、お前 : : : 越智とか ? 越 と、園子の足にすがりつく。 智と寝たのか ? 」 京紅の貝袷 正田「一度だけ。一度だけでいいから。頼み園子「違うわよ」 蒲団袋の上に、猫のように身を丸めた園 ます。拝みますから : ・・ : 」 雨宮「じゃあ、誰と、誰と寝たっていうん 子の手が弄んでいる と、スカートの中に手を入れてゆく。 雨宮、園子の着物や洋服を荷造りしてい る。 園子「・ : ・ : 好きな人に抱かれたら、どんなに なっちゃうんだろう」 雨宮「東京駅まで、蓉子ちゃんが迎えに来て 園子と正田、服の乱れも直さずに、畳に雨宮「 : くれるからね」 横たわっている と、わーっと叫びながら、園子の首に手園子「 : : : 」 と、園子、笑い出す。 を回す。馬乗りになって、園子の首を締雨宮「僕も出来るだけ早く東京へ戻れるよ、つ一 正田、ぎよっと園子を見る め上げる にするから、それまではお母さんのところ 園子、さもおかしそうに笑い続ける。 動かない。 園子「・ : 雨宮の指がじりじりと絞め上げてくる。 蒲団の中、園子、雨宮と抱き合っている 雨宮「大丈夫。誠の顔を見れば、ここでのこ 園子、積極的に動いている 園子、目を見開き、ロを大きく開ける となんて、すっかり忘れてしまうよ」 雨宮、その様子に驚きながらも、受け入 と、雨宮、ハッと手を離す。 園子、雨宮を見る。 れている。 雨宮、園子から離れ、背を向ける。 雨宮「ん ? どうした ? 」 園子、雨宮にまたがる 園子「 : ・ : ・殺せばいいのに : ・ 園子「へその緒 : : : なくしちゃったみたいな 蠢く白い背中が汗で光る 雨宮、嗚咽しはじめる。 園子、しつかりと目を閉じて、昇り詰め雨宮「東京へ帰ろう。ね、園子、東京へ一緒雨宮「誠のか ? 」 て行く。 に帰ってしまおう」 園子「ええ。こっちへ引っ越すときに、ちゃ 崩れ落ちる園子。 園子「・ : んと持ってきたはずなのに : 雨宮、しつかりと抱きとめる 雨宮「誠と三人で、また元のように暮らすん雨宮「じゃあ、どっかにあるんだ。ひょっこ 雨宮「園子 : : : 」 だここでのことは何もかも忘れて、ね、 り出てくるよ」

8. シナリオ 2016年9月号

花心 雨宮、園子の蒲団へ入ってゆく 園子、背を向け、拒絶する。 雨宮、構わす、園子の体に手を回す。 園子「お願い。やめて」 雨宮、ムキになり、園子を強引に向き直 らせる 園子、抵抗する。 雨宮「いい加減にしろ ! 」 園子「 ! 」 雨宮「夫婦だろ」 園子、抵抗を止める。 雨宮、園子をまさぐり始める。 園子、天井を睨みつけ、堪える。 雨宮、園子に伸しかかる 園子、唇を噛み締める が、吐息が漏れてくる。その様子に動き を激しくする 園子、目を瞑る。と、頬に涙が伝う 園子、官能に身を委ねてゆく。 園子、ぐったりと身を横たえている 雨宮、園子を見下ろし、微笑む。 雨宮「僕にもう愛情がないなんて、嘘じゃな いか」 雨宮、園子をかき抱く 0 4 園子「 ! 」 園子「・ : 園子、雨宮の寝顔を見ている。 雨宮、規則正しい寝息を立てている。 真っ白なスケッチブック 園子、蒲団を抜け出す。 園子、窓枠に凭れるように座っている スケッチブックを広げた正田が見ている 窓外にばんやりとした灯りが見える。 北林家の窓である 園子「描かないのね」 園子、目を凝らす。 正田「ええ。本当は絵なんてどうでもいいん 部屋を横切る越智の姿が見える。 です」 園子「・ : 園子「本当は音楽をやりたかったって聞いた けど」 園子、部屋を抜け出していく 正田「そっちもどうでもいいんです」 と、スケッチブックを放り出す。 北林家・窓外 園子、中を覗く。 正田「僕はただ死ぬのも面倒だから生きてる四 居間のソフアに越智が横たわっている だけなんですよ」 園子「投げやりなのね」 その足下に、北林が踞り、頭を動かして正田「今のあなたも投げやりに見えますよ」 いる 越智の顔に愉悦が浮かぶ。 正田「初めて見た時はそうじゃなかった。河 原で、覚えてますか ? 」 と、北林、立ち上がる 園子「え ? ああ。私、紅を買いに行ったのよ」 薄いネグリジェを着た体を越智へと押し正田「紅を買うだけで、あんなに幸せそうに 見えたわけじゃないですよね ? 」 園子、窓辺を離れ、駆け出す。 園子「 : : : もう帰って」 正田「 ! 」 園子「絵を描く訳じゃないんでしょ 園子、窓外を見ている と、正田、園子に抱きついてくる 北林家の前、雨宮が北林に何やら頼んで 一 4 いる様子。

9. シナリオ 2016年9月号

と、人参を口元に運ぶ。 でしよう」 誠、手で払う。 蓉子、雨宮を窺う。 雨宮、顔を背け、両の拳を握りしめ堪え 傍で見ていた母、 ている 「貸しなさい」 蓉子、園子の手を払う。 と、園子から箸を取り、人参を小さくす園子「 ! 」 ると、 「誠ちゃん、おロ開けて。はーい」 その冷たい視線ーーー と、食べさせる。 園子、わーっと泣き出す。 「一体、何ごとよ ? 」 目を転じると、台所で、雨宮が蓉子に何 と、母が来る やら話しているのが見える 蓉子「なんでもないわ」 母「なんでもないって : : : 」 と、蓉子、愕然と園子を見る。 泣き続ける園子を見る。 蓉子、園子と目が合うと、さっと目を逸蓉子「神経衰弱なのよ、お姉様」 らし、園子の死角へと雨宮を促す。 8 園子、立ち上がり、台所へ。 川べりの道 5 河原 母と蓉子、誠を連れて帰っていく。 離れ・台所 その後ろを園子、母の荷物を持ってつい 園子、入ってきて、 ていく 園子「蓉ちゃん。蓉ちゃんなら、わかってく母「もうここでいいわよ」 れるわよね。私の気持ち : : : 」 と、園子の手から荷物を取る 蓉子「・ : 園子「私、苦しいの。こんな気持ち初めてな母「ほんとう、しつかりしてちょうだいよ」 のよ」 と、園子の手を握る と、蓉子の手にすがりつき、 蓉子、見ている 園子「ねえ、蓉ちゃん。あなたなら、わかる 園子も蓉子を見る。 園子「 : ・ 園子「 ! 」 蓉子「 ( 目を逸らし ) 母さん、汽車の時間」 母「じゃあね」 背を向け歩き出す母、蓉子、誠。 誠が振り返る。 が、蓉子に手を引かれ、行ってしまう。 と、アコーディオンの音が聴こえてくる 切なくも滑稽な音色である。 園子、その音色の方を見る 河原に、正田が一人、アコーディオンを 奏でている 園子、歩いていく 正田、弾く手を止めす、園子に笑顔を向一 ける。 園子、正田の隣に座り込む 正田、旋律を奏で続ける。 園子「 : : : ねえ、私を描きたいって言ったわ よね」 正田「え ? 離れ 園子、窓辺に座り、北林の家の方を眺め ている 正田、スケッチブックを広げ、園子を、畳 の上に投げだした素足を、見つめている 見つめるばかりで、ペンは動かない。 園子「・ : ええ」 8

10. シナリオ 2016年9月号

花心 と、蒲団から出る 雨宮、追いかけ、 雨宮「園子、本気なのか ? 園子「 : ・ 雨宮、園子を引き寄せ、ロづけようとする。 園子、顔を背ける。 雨宮「ふざけるな ! 」 と、拳を振り上げる。 園子「 ! 」 雨宮の拳、園子の脇、襖を殴る。 雨宮、自分の拳を押さえ、呆然 閉め切ったカーテン 蒲団は乱れたまま、延べられている 園子、壁にもたれている。 園子の母、園子を見下ろしている その隣りには、誠を連れた蓉子。 誠、蓉子の足に抱きついて、園子を見て いる 母「一体、どうしちゃったのよ ? 」 と、カーテンを開ける。 園子、陽射しから顔を背ける。 母「あんた、もしかして、後が出来たんじゃ ないの」 園子、首を振り、 園子「誠、おいで」 35 ドラマ 母母母 子子 子 と し誠る園 る園蓉見と蓉と園母と園誠蓉誠と お、じて 。子子る、子蓉、し子病 子 、い子、子 い誠やい園 、と襖、子台よ、院園髪い、園、蓉手 し、ある子誠 ば園、の乱さ所う応へ子を子誠子頷子を い顔 ん子拳穴れんをがえはの撫にをにくを差 わを人差 やを大にた、片なず行傍でし抱抱。見し よ背参し飯 り見の気蒲お付い 、つにるてききる伸 出を とる穴づ団蒲けね誠た座。たとっ おる食し食 誠。がくを団始えののり ? めし、 る 食。べたべ のい。見、め髪か べる青さ る畳るをい ? 菜せ く な をつ ん さ よ で で イ う であ ヤと イ し て ヤて て と る シナリオライターをめざすなら・ 創作のヒント満載 脚本を学ぶ人のクリエイティブマガジン第 16 回 月刊毎月 18 日発売テレビ朝日新人シナリオ大賞ドラマ . = 8 受賞作発表 選考作家座談会 : 井上由美子岡田恵和両沢和幸 く秀作ラジオドラマ 2 篇〉 瀬戸山美咲「あいちゃんは幻」 16 8 月号回回 北阪昌人「ライターのつぶやき 定価 967 円 ( 税込 ) 送料 94 円 ~ 河北新報の 5 年 ~ 」 店頭にない時はその書店へご注文下さい。書店でのお求めが不便な場合は、直接小 「そして、誰もいなくなった」秦建日子 社へ税込定価に送料を加えた額を郵便振替又は現金書留、切手等でお送り下さい。 振替 00140 ー 7 ー 1 10502 〒 107 ー 852 東京都港区赤坂 5 ー 4 ー 16 谷 03 ( 3585 ) 0965 映人ネ土 ー 27 ー 36 ・戸山・珱・あい・んは動ー 次号