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検索対象: シナリオ 2016年9月号
106件見つかりました。

1. シナリオ 2016年9月号

てるなんて : : : あの二人が一切、僕に隠し 古川家・茶の間 園子「・ : : ・ ( 呟いて ) そうかしら」 4 片隅で、園子が誠と遊んでいる。 雨宮「ん ? 」 ていたんだ」 園子「ねえ、ちょっとそこの文殊様まで行っ 園子、頬を越智の胸に押し付ける 雨宮の声「反省してみると、僕が悪かったの です。僕はあらゆる迫害を精神的に、園子 越智、園子の顎に指をあて、上向かせる てきてくださらない ? 」 唇を寄せて行く。 に加えていたのかもしれません」 雨宮「文殊様 ? が、園子、顔を背ける。 園子の母が畳に突っ伏して泣いている 園子「誠にお守りを買ってあげたいの」 その傍らで、蓉子が雨宮からの手紙を読 雨宮「そんな特別な寺じゃないだろ、あそこ」園子「今は : : : 」 んでいる 越智「ああ : : : 出来るだけ早く会いに行く 園子「ね、お願い 雨宮の声「格子なき牢獄に押し込め、その目 雨宮、ため息をついて立ち上がると、 にみえぬ枠を一寸せばめ一一寸せばめしてい 雨宮「じゃあ、ついでに引越し屋さんを呼ん園子「本当 ? 本当に来てくださる ? なかったとは言えません。園子の如き、人 越智「きっと行くよ」 でくるよ」 一倍自由な精神を持っ女が、この圧迫に堪 園子「 ( 頷き ) もう行かなくちゃ」 と、部屋を出て行く。 えきれないことは当然です : : : 」 越智、もう一度、強く園子を抱きしめる 園子、玄関が閉まる音を聞くと、立ち上 母「こんなもったいない旦那さんがあるつ カる 園子「あの人が帰ってくるわ」 ていうのに・ と、言いながらも、動けない。 と、蓉子が手紙をびりびりひきさき、 園子、北林家へと駆けていく 蓉子「お兄様も意気地がなさすぎるから、お と、越智の姿。煙草をふかしながら、こ離れ 姉様になめられちゃうのよ」 園子、駆け込んでくる。 ちらを窺っていた。園子、足を速める 園子、聴こえぬ振りで、誠と遊んでいる。 雨宮の姿はない。 越智、煙草を投げ捨て、園子の方へ。辺 母「お父様の血が、園子に流れたのよ」 園子、ほっと座り込む りを気にして、園子の手を取り、植え込 園子「引」 畳の上、投げ出された京紅。 みの陰に隠れる。園子、越智の胸に抱き 母を見る 園子、拾い上げ、鏡に向かう つく。 母、園子を睨みつけている 小指を咥えて湿らせると、唇を紅く染め 越智、園子を抱きとめる。 てゆく 園子「・ : 園子「逢いたかった」 ふっと笑みが浮かんで来る 雨宮の声「どうか園子を責めないでくださ 芯越智「ああ」 母「何を笑っているの。何を笑うことがあ 園子「もっと早く・ : : ・私 : : : 」 るっていうの ! 」 越智「知らなかったんだ。こんなことになっ 4

2. シナリオ 2016年9月号

この人、うちでテレビ見てた方がいいって 徹「じゃあ、その人と : : : 絶対に結婚しちゃ フォト・スタジオ 言うし : : : じゃあ、お花見に行こうって言 いけないってことはないだろ ? 光代のカメラテストが行われている 、つと、も、つ散っちゃったって一言、つし : : : も ポーズをつけて、パチ : ハチ : : : と 夏子「そりゃあそうだけど : めてるうちに日が暮れちゃうんです シャッターを切るカメラマン。 徹「どんな人だか、調べりやすぐわかるん 夏子「それでよく一緒に暮せるわねえ」 そばで見ている記者 < と夏子と早苗。 光代「喧嘩してた方が退屈しなくていいんで 夏子「そりゃあそうね : : : 」 徹「とにかく一一人を会わしたらどう ? 」 高速道路をバックに ポーイに案内されて、次郎と徹が入って カメラマンが光代を写している 夏子「ちょっと待ってよ : : : 私も何だか混乱 来る。 して来ちゃった」 夏子「遅いじゃない」 徹「へえ、クールな姉さんが混乱しちゃい 貶高層ビルをバックに 徹「だってさ、出かける時になって、やた 光代の写真。 けないな」 らとカッコつけちゃってさ」 夏子「ほんとね : : : 申しわけない 次郎「お前 : : : 君だってタートルネックにし一 xx 庭園 よ、つか、亠小いセーターにしよ、つか : ・・ : 」 光代。 甲野書房・編集部 夏子「いいわよ ( ポーイに ) じゃ、これで揃一 夏子と記者 < いましたから : 夏子「写真のモデルに、一人あたってもらい 埠頭ー ポーイ「承知いたしました」 光代。 たいのがあるんだ」 と出て行く。 記者 < 「今度はどこの子です ? 」 夏子「紹介するわ : : : こちらが加藤次郎君 , 夏子「映画館の切符売場 : : : 窓口で見ただけ レストラン・個室 光代「・ : 夏子、光代、早苗ーーー だから全身のシルエットはわからないけど 夏子「疲れたでしよう ? せつかくのお休み夏子「あなたをはじめて切符売り場で・ : ・ : 大丈夫だと思うんだ」 光代「あ : : : あの時の : ・ : ・」 を無理に引っぱり出して : 記者 < 「プロのモデルや女優さんじゃなくて 次郎「え : : : ? 素人っほい子を探してたんです : : : 早速あ光代「いいえ」 人 恋 早苗「どうせ今日はどっこにも行くつもり夏子「あら、覚えてたの ? 」 たってみますわ」 の 光代「入場券が飛んでって : : : 」 じゃなかったし : : : 」 人夏子「まじめそうな子だけど : : : 」 夏子「でも、それを拾おうともしないで : 夏子「お休みに出かけないの ? 」 記者 < 「大丈夫ですわ。まかしといて」 あなたの顔をポカンと見てたのね ? 」 早苗「私が映画を見に行こうって言っても、 107

3. シナリオ 2016年9月号

瑞枝「どうぞ」 悠一「馬鹿野郎」 大が吠える 縁側の雨戸が開いて、民子が現れる 瑞枝「いいから : : : 」 民子「まあ : : : 」 悠一「じゃ : ・ ・ ( と乗る ) 」 次郎「・ : 瑞枝「さよなら」 悠一「やつばり帰って来やがったな」 タクシー走り去る 瑞枝、あくびをしながらぶらぶらと歩き民子「・ : 出す。 悠一「今までどこへ行ってたんだ ? 次郎「東京湾で倉庫の夜警やってたんだ」 民子「まあ : : : 」 加藤家・玄関 悠一「こいっ : 悠一が帰って来る。 次郎の額をこずく。 大が吠える 悠一、呼鈴を押そうとして、ふっと庭の次郎「あッ : と悠一の身体に組み付く 方をみる。 次郎が立っている 悠一「うむ : ・ 四つにガッチリと組む二人 民子「あッ : 組んだまま、動かない二人 次郎「・ : 大が吠える 次郎「・ : 民子「あんたたち : : : 」 悠一「馬鹿野郎 : : : 」 次郎「馬鹿野郎 : : : 」 人 次郎「 : 恋悠一「馬鹿野郎」 人次郎「馬鹿野郎」 悠一「馬鹿野郎」 次郎「馬鹿野郎」 0 庭 悠一と次郎が睨み合って立つ。 仲よく抱き合っているような二人 ほっとなごんで来る 悠一「エイツ : 民子「あ : ・ 投げ飛ばされている次郎 次郎「痛てて : : : 」 民子「まあ : : : 」 玄関の方へ歩き出す。 民子「あ : : : 悠 次郎「どこへ行くんだよ」 悠一「お前の代りに、今度は俺が飛び出すん 次郎「兄さん : : : 」 悠一「たまには俺にも親不孝をさせろよ」 表の方へ出て行く。 民子「悠一 : : : 」 次郎「兄貴 : : : 」 大が吠える 住宅街 悠一が歩いて行く 朝日が昇る 脚街の通り 悠一が歩いて行く。 ガード下 悠一が歩いて行く 118 119 123 ー

4. シナリオ 2016年9月号

してるの」 北林「じゃあ、やりましようよ。雨宮さん、 たらしくて : : : 」 園子「美大生なのに、アコーディオン ? 北林「良かったじゃないの。おたふくと風疹今夜、遅いんでしよう ? 」 北林「音大の受験に失敗して、仕方なく美大 は、小さいうちに、貰っといた方がいいの園子「ええ。でも、どうして ? 」 に行ったって話だけど、まあ、どっちにし 北林「越智さんよ」 ても才能なんてありやしないわね、あの子 園子「ええ」 園子「奥様もお子さんが」 : いないも同然になっ北林「それまで自分がやっていた接待、雨宮 北林「息子が二人・ : さんに代わってもらえるんだって。あの人越智「あ、それロン」 ちゃってますけどね」 いいでしよ」 北林「え。やっちゃん、やだわあ」 も好きなのよ、麻雀。ね、 園子「 ? 」 媚を含んだ北林。 園子「・ : 北林「私の自業自得なんですよ」 と、、つつすらと笑う。厚化粧の下、広が 同・座敷 る小皺 雨宮、ネクタイを締めている 麻雀仲間の男を交えて、北林、越智、園 園子、目を逸らしてしまう。 子が麻雀牌をかき混ぜている。 北林「どうかしたの ? 園子、窓外を気にしながら、そわそわし一 ている と、園子の手が、越智の手に触れる。 園子「 ( 取り繕い ) いえ : : : 奥様、京言葉じゃ 園子「ねえ、遅れるわよ」 ハッと目かムロ、つ。 ないんですね」 園子、俯き、牌を積み始める。その手、雨宮「ああ」 北林「生まれは東京だもの。こちらへは嫁い 雨宮、うまく結べず、やり直す。 震えている できたのよ。もうすいぶん経つのに、ちっ 園子「貸して」 越智「・ : とも馴染めなくて」 と、結び始める と、越智、自分を見ている北林に気がつく。 いつお亡くなりになった 園子「旦那様は ? 雨宮、嬉しそ、つである 越智「あなたが親ですよ」 んですか」 と、雨宮の肩越し、窓外に越智の姿。 と、北林の前にサイコロを置く。 北林「すっと前。もう、一一十年になるかしら。 越智、立ち止まり、園子を見る 北林、サイコロを振り、牌を取り始める だから、戻ってもいいんだけど、ついずる 園子「 ( 手を止め ) ・ 北林「そうそう、正田さん、、つるさくない ? ずると : : : 」 雨宮「 ? お隣の ? 」 結婚指輪を嵌めたままの指を見ている と、振り返る 園子「隣 ? 」 芯園子「・ : 越智、片手を上げて、立ち去る 北林「アコーディオンよ。息子がいてね、せつ 北林「 : : : ねえ、あなた、麻雀、できる ? 」 かく美大に入ったっていうのに、ぶらぶら雨宮「待っててくれてもいいのに。冷たいな、 園子「え。ええ少しでしたら」

5. シナリオ 2016年9月号

園子「だって、おかしいじゃないの。自分の 夫に似ているっていうのが、お母様にとっ て最高の悪口だなんて」 箱根辺りの駅の前 小さな旅行鞄を提げた園子が立っている 越智が来るのが見える 園子、笑顔を向ける。 越智も微笑みを浮かべ、近づいてくる。 園子を見つめながら、手の届く距離まで 来て、立ち止まる どちらともなく、頷き合う 越智、園子の旅行鞄を持ち、歩き出す。 園子も歩き出す。 二人並んで、歩いて行く。 渓谷 園子と越智が並んで歩いている。 と、越智が、園子の手を取る 園子、越智を見る 越智、しつかりと園子の手を握る 園子もしつかりと握り返す。 一一人、手を繋いで、歩き続ける。 鳥の鳴き声に空を見上げ、風のそよぎに 木々を見上げながら、ゆっくりと歩く。 握り合った手の感触を味わって 旅館・一室 最後に大きく息をつく。 湯上がりの園子、三面鏡の前に座り込ん と、一切の音が消える でいる 園子の顔から表情が消えてゆく 鏡の中に、越智がいる 目が合って、園子、上気した顔を綻ばせる。越智「どうかした ? 越智、園子の背後に来る。 渓谷の音が戻ってくる 鏡越しに見つめながら、園子のうなじに 園子、蒲団を出て、浴衣を羽織る 指先で触れる 窓ガラスが園子を映している。 振り返る園子、越智の目を覗き込む 園子、窓辺へ行く。 越智も園子の目を覗き込む。 越智も蒲団を出て、園子を後ろから抱き 園子の目、越智を求めている。 しめる 越智、園子にのしかかる 窓ガラスには二人の顔。 園子、目を閉じる。 園子、窓を開ける。 渓谷の音が高くなる 二人の姿は消え、目の前には闇が広がる 園子、越智の動きに合わせ、昇り詰めて 渓谷の音が高くなる ゆく。 園子「私たち、一緒に暮らせないわね」 園子、目を開ける。 越智「 : : : 北林とは別れるよ」 間近に息を荒げる越智の顔。 園子「違うのよ。そんなことじゃないの」 園子、その首をかき抱くと、糸を引くよ越智「じゃあ、何 ? うな声と共に、体を弓のように反らせる 園子、闇の渓谷を見つめている 越智、園子を強く抱きしめながら、精を越智「園子 ? 」 放つ。 園子「 : : : 覗いちゃいけない深淵を覗い 弛緩する二人、抱き合ったまま、息を整ちゃったんだわ、私 : ・ える。 越智「私 ? 二人で一緒に覗いたんだよ」 二人の顔には歓びの微笑みがある 振り向いた園子の顔には哀しげな微笑み 越智、半身を起こして、園子を見つめる が張り付いている 見つめ返す園子、息を整え終えるように、越智「園子 : : : 」 0 っ 4

6. シナリオ 2016年9月号

JWGB スクールとか、学べる場所は他にもあるのだ ろうけど。独学で学んでいる人もいらっしゃ るでしよう。私には、独りで脚本を学んでい こうと田 5 うほどの覚は最初からありません でした。だから、日本映画大学に行きました。 確かに、シナリオはク学ぶツものなの ? 個 人の創作なんだから、教わるってのも : : : っ て考える人もいると思うし、当たり前のこと ですが、学校に通ったから、脚本で食べてい けるよ、つになるなんてことは稀だと思いま す。わたしも、週末は喫茶店で働いて、家賃 やらを払っていますし。それでも、大学に入 り、プロ , で、第一線で活躍する講師陣に教 わったことは、絶対に価値のあることだった と思います。才能があるひとは、元々面白い ものが書けるのだろうけど、書き始めて、途 ・・うんうん唸って、登 中で書く手が止まる : 場人物が増えたりいこのシ 1 ンいるかなと思 いなからもピリオドを打って、講評を頂きに 、ハッとさせ 行きます。・ : ・ : 大げさではなく られるというか「風穴をあけられるような、 そんな感覚があります。関係性の問題だった り、人物の考え方だったり、ああ、こうすれ ばいいんだって。教室を出てから、家に帰っ て、また脚本に向かうまでのあのワクワク感 とい、つか、じゃあこ、つい、つシーンになってし くんじゃないか、そしたら、この人物がいう セリフは また新たに展開が膨らんでき ます。そして、またあれこれ悩みながら書い 一人では思いもっかをかっ て、書いて 行けばいいのにとか、通ったほうかいいです よ、と言えるような立場にもないし、正直わ たし自身、そのことについて考える余裕なん て、全くない、考えちゃいられません。でも、 先日、母校の生徒数がすごい勢いで減少して いるとも聞いたので。今回、シナリオ講座生 の減少と聞いて、脚本を学べる場がある意味 について、感じたことを綴ってみました。 その他、一月に出版された「日本名作シナ リオ選」について、菊島隆三賞、新人シナリ オコンクールの結果報告、最近増えていると いう Amazon 、 fulu 、 NETFLIX などの配信 サイトにおける作協の動き、マイナンバーの 手続きなどなどのおはなしが続きました。 そして、総会が終わり、新人シナリオコン クール授賞式と懇親会。今年は四人もの方が 受賞されました。「ここがゴールだと思わな たこと、それをプロの脚本家に発見してもら ここからがスタートだから」とい しト小、つ一、 0 う。「映像にならない脚本は、ただの紙べら う荒井さんの言葉が心に残ります。 と同じ」とも講師に言われた言葉ですが、そ 私にとって、初めての総会でしたが、脚本 れでも、そうした過程を経て作り出した脚本 たちは、今のわたしにとっても、大切な脚本、をとりまく世界も、刻一刻と変わっていって るのだなあと感じました。特にシナリオにも そして経験です。学校にいて、脚本をつくる 人工知能の波が迫ってきているというお話に 上で、そういうプロセスを味わうことが大切 は驚きます。そんなに遠くない近い未来、久 なんじゃないかと思います。でも、なんと しぶりに総会に参加したらロポットたちが席 いっても、いい経験してるなあって思う時は、 を占拠していて : : : なんてことにならないよ 授業のあとの飲み会です。それも、午前 4 時 う、来年も参加させて頂きたいです。足りな をまわった後の講師陣の話は、学校の授業よ いこと、書き表せていないものが、あれこれ りも、今でも思い出される言葉が多い。やは とあるかもしれませんが、以上、総会の報告、 り、間近でプロの話を聞く場があることって 感想とさせて頂きます。 大事だと思います。もっと沢山の人が講座に 平成 28 年度通常総会 6 月 17 日学士会館 っ 0

7. シナリオ 2016年9月号

民子「私もね、はじめは美千子さんと似て もはじめはちょっと気になったんだけど悠一「違うよ : ・ : ・僕は君を愛してるんだ : るってだけで、結婚ってことまで考えてい ほかの誰でもない : : : 君を愛してるんだ」 いのかしらと思ったんだけど : : : 」 次郎「そんなことどうだっていいんだよ ( と光代「 玄関のあく音 立ち上って ) とにかくさっさと : : : しつか悠一「はじめはたしかに僕の心の中で、美千 民子「今頃、帰って来たわ」 り擱まえるんだよ」 ちゃんと君のイメージがダブってたよ : 次郎が入って来る。 民子「お風呂は ? 」 でも、今ははっきり違う・ : ・ : 美千ちゃんは 民子「お帰り」 次郎「入るんだよ : : : 入りやいいんだろ、入美千ちゃん : : : 君は君 : : : 僕が愛してるの 次郎「ただ今」 りや : : : 」 は生きている君なんだ : : : 手のとどくとこ 民子「お風呂に入んなさい」 : ほんとうなんだ : セーターをパッと脱ぎ捨てて風呂場の方ろにいる君なんだ : 次郎「ああ : : : ( あぐらをかく ) 」 へ行く。 信じてくれよ」 民子「すぐお入んなさいったら : : : 」 民子「まあ : : : 何て子だろう : : : でも、あれ光代「ごめんなさい : 次郎「兄さん : : : 光ちゃんにさっさとプロ であんたのことを気にしてるんだわ」 悠一「どう言ったらわかってもらえるかなあ ポーズしなよ」 ・ : 僕は決して嘘なんか言わない : 悠一「え ? 光代「あなたが嘘をつくなんて思わないわ 公園 次郎「ぐずぐずしてちゃだめだよ」 噴水ーー : ・だから困るのよ : : : 駄目なのよ : : : 」 悠一「ぐずぐずなんかしないよ」 悠一と光代が歩いて来る 悠一「どうして : ・・ : 」 次郎「してるじゃないか : : : 女なんて、フラ光代「結婚 ? 」 光代「ごめんなさい : : : 私、そのことを次郎 さんに : フラっと何を考えるかわかりやしないから悠一「今すぐでなくてもいいんだ : : : 結婚の : 一押し、二押し、何とかって、ガッと約東だけでもしてくれればいいんだ」 悠一「次郎に ? 」 しつかりんでなきや : : : 」 光代「いけません」 光代「次郎さんに話して : : : あなたにわかっ てもら、んるよ、つに : 民子「何を言うのよ。偉そうに : : : あんたみ悠一「え ? いけない ? 」 たいにそんな乱暴な : : : 兄さんには兄さん光代「困るわ : : : 」 悠一「わかってもらえるように ? : : : 何をわ の流儀があるのよ」 悠一「困る ? 」 かればいいんた : : : 僕か : : : え ? 何をわ かるんだ ? 次郎「そんなのんきなこと : : : 」 光代「あなたは今でもやつばり美千子さんを 民子「いいのよ : : : 私もね、光代さんだった愛して : : : 」 光代「私 : : : 私、どうしても・ : : ・」 らきっといい奥さんになれると思、つの : 悠一「え ? 」 悠一「ど、つしても : : : 僕を : : : 」 系累がなくて、たった一人ばっちっての光代「私はただ美千子さんによく似た : : : 」光代「ごめんなさい : 1 16 ーー

8. シナリオ 2016年9月号

花心 と、ノックの音がする 雨宮、座り、 優しく響くその声 園子、越智を求め、抱きついていく。 園子、ドアを窺う。 雨宮「戻っておいで」 越智、驚きながらも、園子に応える 園子、首を振る 「園子、僕だよ」 畳に身を横たえる。 と、雨宮の声。 雨宮「どうして。こんな扱いされてるってい 園子、官能に溺れていく。 うのに、まだ越智と別れるつもりはないの 園子、ドアを開ける。 か」 雨宮「上がっていいかい ? 」 園子「ごめんなさい」 東京・四畳半のアバート昭和年貶月園子「 : : : どうぞ」 雨宮、園子が送った封書を出し、卓袱台 陽の射さない裏ぶれた部屋である。 雨宮、靴を脱ぎ、部屋へ入って行く。 に放り出す。 火鉢の上、食パンが一枚焼かれている 部屋を見回し、 園子が卓袱台にノートを広げ、速記の原雨宮「言っただろ、越智は北林を捨てられな雨宮「絶対、離婚は承知しないからな。俺の 妻だという鎖はといてやるもんか」 いって」 稿を起こしている 園子「心は縛れないのよ」 ひつつめた髪、質素な服装。 園子、応えず、茶を用意している。 夢中で書き起こす。 雨宮「越智は、卑怯な奴だ」 雨宮「 : : : 誠は ? こどもに対する母の責一 任っていうものがあるだろう」 焼き上がった食パンをそのまま齧る これじゃ、結局、園子「誠には申し訳ないと思っています」 雨宮「卑怯じゃないか 雨宮「だったら、誠のためだと思って、戻っ 一番、貧乏くじを引いたのが園子だ」 くすんっと小さく鼻を啜り上げる。 てくれよ」 食パンを一口、二ロ、齧る 園子「いいのよ。私はこれで、いいの」 2 2 1 -1 1 -1 3 3 本体 1200 円十税 3 3 推薦します 改憲勢力が衆院・参院で一一一分の二になった今こそ、「戦争できる国」に改憲しようとする、お「利ロ」な安倍首相にたいして、「平和憲法」を愚直に守る「バカ」 栄黒 は必要なのではあるまいか。負けてはいられないそう思う時、この本を手にするとカまずに「さあ、明日には」と希望が湧く。川鍋正敏 ( 立教大学名誉教授 )

9. シナリオ 2016年9月号

花心 雨宮、園子の蒲団へ入ってゆく 園子、背を向け、拒絶する。 雨宮、構わす、園子の体に手を回す。 園子「お願い。やめて」 雨宮、ムキになり、園子を強引に向き直 らせる 園子、抵抗する。 雨宮「いい加減にしろ ! 」 園子「 ! 」 雨宮「夫婦だろ」 園子、抵抗を止める。 雨宮、園子をまさぐり始める。 園子、天井を睨みつけ、堪える。 雨宮、園子に伸しかかる 園子、唇を噛み締める が、吐息が漏れてくる。その様子に動き を激しくする 園子、目を瞑る。と、頬に涙が伝う 園子、官能に身を委ねてゆく。 園子、ぐったりと身を横たえている 雨宮、園子を見下ろし、微笑む。 雨宮「僕にもう愛情がないなんて、嘘じゃな いか」 雨宮、園子をかき抱く 0 4 園子「 ! 」 園子「・ : 園子、雨宮の寝顔を見ている。 雨宮、規則正しい寝息を立てている。 真っ白なスケッチブック 園子、蒲団を抜け出す。 園子、窓枠に凭れるように座っている スケッチブックを広げた正田が見ている 窓外にばんやりとした灯りが見える。 北林家の窓である 園子「描かないのね」 園子、目を凝らす。 正田「ええ。本当は絵なんてどうでもいいん 部屋を横切る越智の姿が見える。 です」 園子「・ : 園子「本当は音楽をやりたかったって聞いた けど」 園子、部屋を抜け出していく 正田「そっちもどうでもいいんです」 と、スケッチブックを放り出す。 北林家・窓外 園子、中を覗く。 正田「僕はただ死ぬのも面倒だから生きてる四 居間のソフアに越智が横たわっている だけなんですよ」 園子「投げやりなのね」 その足下に、北林が踞り、頭を動かして正田「今のあなたも投げやりに見えますよ」 いる 越智の顔に愉悦が浮かぶ。 正田「初めて見た時はそうじゃなかった。河 原で、覚えてますか ? 」 と、北林、立ち上がる 園子「え ? ああ。私、紅を買いに行ったのよ」 薄いネグリジェを着た体を越智へと押し正田「紅を買うだけで、あんなに幸せそうに 見えたわけじゃないですよね ? 」 園子、窓辺を離れ、駆け出す。 園子「 : : : もう帰って」 正田「 ! 」 園子「絵を描く訳じゃないんでしょ 園子、窓外を見ている と、正田、園子に抱きついてくる 北林家の前、雨宮が北林に何やら頼んで 一 4 いる様子。

10. シナリオ 2016年9月号

二人の恋人 夏子「どうしたんだろうねえ」 友達のとこだと思いますけど : 出て行く。 徹「どっかで住込みのアルバイトでもやっ 民子「すぐ御飯にしますからね」 てるんだよ」 加藤家・居間 悠一の声「ああ : : : 」 民子「ほんとにまあ、御迷惑ばかりおかけし て : : : はい・ いえ、もうあの子のことで 加藤家・台所 ( 夜 ) 階段 ( 夜 ) 民子がタ飯の支度をしている ございますから : : : 心配したって、きりが 悠一が上って行く。 : はあ : : : では 玄関のあく音 ありませんし : : : はい・ : ど、つぞよろしく : 民子「・ : ・ ( ハッとする ) 」 次郎の部屋 ( 夜 ) 悠一の声「ただ今」 電話を切って、ポンヤリ立っている。 悠一が入って来て、部屋の中を見回す。 民子「 : ・ ・ ( ガッカリする ) 」 悠一が顔を出す。 夏子のアパート ( 夜 ) 悠一「あいっ : : : どこへ行ったのかなあ」 夏子が帰って来る。 茶の間 ( 夜 ) 民子が台所から食事を運んでいる 民子「大丈夫よ : : : あの子のことだから : : : 」 夏子「ただ今」 着物に着換えた悠一が来る : 心当り、全部当ってみたけ悠一「でも : : : 」 徹「お帰り・ : 民子「私達を心配させようと思ってるのよ」民子「いいのよ」 どいないよ 悠一「え ? 」 夏子「そ、つ : : : 」 民子「ううん : ・・ : 次郎・ : ・ : ほっといたらいい 民子「ほっといたらいいのよ」 徹「どこへ蒸発しちゃったかなあ」 映画・演劇・演芸・シナリオ・戯曲の専門古書店 矢ロ書店 E* ー 7 F マメ yaguchi@mbk.nifty.com URL http://homepage3.nifty.com/yaguchi/ り至駿河台下 国 靖地下鉄神保町駅 ・矢ロ書店 至九段下 地下鉄神保町駅ご利用の方は岩波ホール出口が便利です。 〒 101 ー 0051 東京都千代田区神田神保町一一ー五ー一 電話 03 ( 3261 ) 5708 03 ( 3261 ) 6350 至水道橋駅 白山通り 目録乞ご請求 営業時間日・祭・平日問わず 10 時 ~ 18 時間分 1 19 ー