ウミホタル - みる会図書館


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1. 図書 2016年10月号

〔表紙〕ウミホタル ( 乾燥 ) の発光 伊知地国夫 写真は乾燥したウミホタルに水をたらし、発光したところを撮影したものだ。ウミホタルは沿岸部 の浅い海に生息する体長二、三ミリほどの甲殻類で、乾燥しても殻のために体の形がくずれず、体内 の物質も残る。水をかけると、生きているわけではないが残存している発光物質が光を放つ。 撮影は、シャーレー内に乾燥したウミホタルを五〇匹ほど人れて行った。シャーレーの真上にカメ ラを固定し、スポイトで水を一、二滴たらすと発光は瞬時に始まり、周りを暗くすると肉眼でもよく 見える。割りばしの先などでつぶしてから水をたらすとより明るく光るが、ウミホタルの形のままで 撮影するため、そのままの状態で水をたらした。生体での発光に比べれば淡い光だが、カメラの感度 を上げ ( 一 S04000 ) 、シャッタースピードを長めにして撮影した ( 写真では二五秒 ) 。シャッターが閉じ る前に弱い光を一瞬全体に当ててウミホタルの形がわかるようにした。 ウミホタルの発光は発光物質ルシフェリンが、酵素ルシフェラーゼの働きで水中の酸素と反応する ことで起こり、ルシフェリンールシフェラーゼ反応とも呼ばれる。ホタル、ヤコウチュウ、発光バク テリアなどもこの組み合わせで発光するカノ 、、、、レシフェリン、ルシフェラーゼの構造は同じではない。 二〇〇八年に、オワンクラゲの緑色蛍光タン。ハク質の研究でノーベル化学賞を受賞した下村脩博士は、 一九五六年にウミホタルルシフェリンの結品化に成功し、その構造を解明している。 生体では外部からの刺激などで発光物質と酵素を体外に放出し、水中を光の帯が漂よう。その色は とても鮮明な青で、青色発光ダイオードから出る色とそっくりだ。両方の発光波長がとても近いから だ。最先端の半導体技術から生まれた光と、ウミホタルの生物発光の光が似ていることに驚く。自ら 発光する青色の光が神秘的な感じがするのは、なぜなのだろうか。 ( いちじくにお・科学写真家 )