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検索対象: 本の雑誌 2015年12月号
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1. 本の雑誌 2015年12月号

c な。逆に緊張するから。背伸びせず 新しい本が出た時などに、作家が大 に、まずは場数を踏むこと」 きな本屋さんでトークや対談をすると ほ「うーん。一気に慣れる方法はな ・いうイベントは、いっ頃から始まった % に岩子べ いのかな」 んだろう。昔はなかったような気がす 友「荒療治だけど、例えば、一度で るんだけど、知らなかっただけなのか も千人の前で話したら、それからは百 初めて自分がトークイベントのオフ 人の前で話すなんて平気になるよ」 アーを受けた時、不安になった。人前 でちゃんと話せるだろうか。普段は家 その言葉には説得力を感じた。で にこもっていて飲み会にも行かないよ こちらもびつくりしたけど、お客さ も、もしも千人の前で絶句してしまっ うな暮らしなのだ。トークの内容とか たら、トラウマになって、一一度と人前 んも不安そうだ。がらがらの空間に話 【以前に、大きな声を出す機能が退化し し手が一一人と聞き手が三人。落ち着か に立てなくなってしまうんじゃない てるんじゃないか このまま五人で喫茶店にでも行 かやつばり、徐々に慣れていくしか 友達に相談したところ、こんなアド なさそうだ、と思った って、お茶を飲みながら話した方がい】 】パイスを貰った いんじゃないか それから実際に何度もトークや対談 でも、それ以来、どんなにお客さん をしたのだが、「千人の前」ではまだ 友「最初からうまく喋ろうと思う が少なくても動揺しなくなった。「千 話したことがない。むしろ、その逆の 人の前で話したら、それからは百人の 体験をした。 日 前で話すなんて平気」の反対の現象・ 或るところで他ジャンルの書き手の ト 1 ク だ。この先、仮にお客さんがたった一 方と対談をした時のこと。会場に人っ 穂村弘 人ってことがあったとしたら、それは ていったら、なんと客席に三人しかい なかったのである もう運命の人だと思う

2. 本の雑誌 2015年12月号

し、今着ている極黒略礼服も買った。寒くなったのでネルの が死ぬかもしれないので誰もマネをしなかった。槍のような 。ハジャマも買った。こたつを買おうと折り込みチラシを見て 長寸の棒も鬼花の発案だ。ガス銃の水平撃ちで倒れた相手 いたら音萬が「アホか ! 道場に何を持ち込む気イや」とブッ を、長くて硬い長寸の棒でめった打ちにする。それを実戦で 使ったのは織田信長と花篤好美だけと言われている。今、そブッ言うので、こたつはあきらめてファンヒーターを買った。 おい、この財布をそのまま半紙に の長寸の棒はサスマタや、隊の名が人った提灯用の棒へと変「えーい面倒くっさい 包んで、カントのアホに渡しとけ ! 」 化した 鬼花はポンと財布を受付の上に置き、急いで会場に人ろう 「えーと、祝儀ゃな」 とした 直立不動の一一人の前で、鬼花は極黒略礼服の内ポケットに 「うわ ! 一一十万以上も人ってる ! 」 手を突っ込んだ。そして脂汗をタラリとたらした。 「うお ! さすが ! 」 ロッカーの中や ) ( しもた : ・ 悲鳴のような二人の声が聞こえた。鬼花は受付へ戻り 天を仰いだ。五日ほど前、祝儀袋を百円均一の店で買っ た。その時はい ) しと思ったのだが、帰ってからよく見ると、 「半分でエ工やろ : : : 」と札をワシ掴みにして、会場へと走 少しケパイ気がした。もう少し質素なほうがよかったか ? こんなハデな祝儀袋だと中身もハデな額にしないと釣り合い 「えーと : がな、といったんロッカーにしまい、そのまま忘れていた : »-a 、エル、 --a と。どこや ? 」 「おい ! 半紙かなんかないか ? 白い紙やったらなんでもえ 鳳凰の間の大きな扉を小さく開け、鬼花は「»-a 」席を探し た人ってすぐ、目の前だった。丸いテープルには純白のカ え」 ハーがかけられ、まぶしいくらいだった。ポスも同じテープ 鬼花が言うと「ハイ ! 用意します ! 」と、第三機動隊が飛 ルらしく、不釣り合いなくらい上品な奥さんと二人で、鬼花 ぶように走り出した。鬼花は反対側の内ポケットから財布を 取り出す。いくら人っているだろうか前の公休日に久し振が座るべき場所を指で差していた 「うぬぬぬぬ : カントのアホめ。後でシバキ上げたる りに和歌山競輪に行った。ビギナーズラックではないがヒサ シプリラックで大勝ちした。けっこうな配当も付き、三十万 くらいになった。刑事なんかやめて、こっちで食っていくか 問題なのはポス夫妻の前の席、鬼花の席の隣である。花篤 ! と遊んで帰ってきた。刑事部屋の若い連中にもおごった千秋が留袖を着て座っていた。鬼花の妻である。その横には 112

3. 本の雑誌 2015年12月号

「あ、お先に」 エレベーターに駆け込み、鬼 利エレベーターから飛び出した鬼花は広いロビーを見 花は十一階の丸いボタンを押そ ナ渡した。受付らしいものが見えた。 うとしたが、すでに灯りが点い ていた 「上司より先に降りるアホがどこにおる ? 」 「エレベーター ? 工ペレーター また後ろで音萬の声がしたので「ここに」と答えな がら振り返り、音萬の蝶ネクタイを指でつかんで引っ ? スパゲティ ? ス。ハゲッティ ? 」 蛔ね 張った。 自分が緊張しているのがわか ったので、独り言をつぶやいて 「やつばりゴムや」 みた。 そして離すと、パスッ ! と音萬のノドに勢いよく戻 「パスタや、田舎もんめ」 「なんやオンマくん、作りもんかいな。ひと昔前の漫 真後ろで声がしたので振り返 才師みたいやなキミ」 ると音萬課長が副署長の野崎警鬼 驚いて聞く野崎警視に、音萬は「作りもんちごて借 視と一緒に立っていた。一日二 花 りもんです」と媚を売るように笑ったが、警視の姿は 十四時間、音萬は野崎にゴマを鬼兄 摺っている前に一度、そんな すでにそこにはなかった。趣味は「競歩ゃな。奥の深 にへばりついていたいのなら、思い切って養子にしてもらっ いスポーツやで」と言い切るだけあって歩くのが速い。腰を たらどうだとポスに言われた音萬は、真剣に悩んでいたこと振って受付へと進んでいる。音萬が慌てて後を追っていった。 もあった。 「なんであのアホまで競歩のマネしてんねん」 鬼花は後は追わず、一一人とは正反対の方向へ足を向けた。 「あ、どうも。野崎警視イ、このホテルはペットは連れて人 目の前の喫煙プースに人り、本日十回目のスピーチの練習を れませんで」 鬼花は音萬のノドを手のひらでコロコロしてみたが、さすした。 がに猫のようにノドは鳴らさず、反対に強く手を払いのけら れた。野崎警視は声をあげて笑い、音萬はプウッとふくれ た。同時にチン ! と十一階を告げる音がした。 「うん ! もうソラでもスピーチ出来るど」 タバコを五本ほど吸うまで、何度も繰り返した。刑事とい 110

4. 本の雑誌 2015年12月号

い石があった。まさかしかし、その " まさと、この事件が上位にランクインしていて、血がおきて、すぐに失血死というつもりだっ たのに。ここからがハイライトだ か〃だった。『路傍の石』執筆中に、これだこびつくりした。 の石だと気に人って持ちこんだらしいが、かやはり田中英光の血だな。墓で自殺未遂と「こんなはずではないとおもい、二度、三度 、五度まで切った。 / 五度目はかなり深 っての自民党の金権政治家が何百万円とか出は。そう思ったが、特に調べることもしなか して自慢するような石なんだよ。路傍というった。それから五か月ほどした夏に「小松左く切った。 / むろん痛い。 / 痛いのだが、あ いかわらず出血しない。ぼたぼたと落ちるだ から、田舎道の脇に転がっている石ころかと京マガジン」の最新号が届き、エッセイ欄に 思ったら、成金趣味を丸出しにした黒光りす田中光二氏が「死にぞこないの記」を書いてけである。 ( 中略 ) カッターナイフがあればい ちばんよかっただろう。 / 僕は困ってしまっ る大きな石だから、おどろいた。やつばり現いて、さすがにおどろいた 場に行くと、何かしら収穫はあるもんだ。路「春のうららかなある日の朝。 / ばくは、青た / 死ぬつもりでやってきたのに、死にき / うららかに日は照っている。 / ど 傍の石の実物を見て、ずいぶん得した気分に山墓地立山分地の、田中家の墓碑のまえにあれない。 なった。 うしたらいいものか判らなくなった」 ぐらをかいて座っていた。 / 死ぬためである。 いや、おもしろい。人の自殺をおもしろい 十年前にが、豊川悦司の主演で『太 / 死ぬことは前日に決めて、朝家を出るまえ に、あとあとのことをこまかく子供たちに書などと失礼かもしれないけれど、悲愴感より 宰治物語』を放映した。このときたまたまド も、のんびりした気配がただよい、笑いさえ ラマを観ていたら、田中英光が山本邸の門柱き残し、遺漏のないようにおいておいた」 こんなふうに坦坦としたトーンで、文章はも誘う。ご自身の自殺未遂をネタに、肩のカ を引き抜いた一件が、エピソードとして使わ れていた。田中英光役は誰が演じたのか気に書きだされる。田中氏は三十年前から、自殺を抜いた、大変におもしろいものを書かれた なって検索すると、脇役には池内博之、小市願望に悩まされてきたという。燃え尽きたとな、田中さんは。そう感じた。 ご家族がやってきて、田中さんは病院に送 慢太郎、佐藤二朗などの名があり、この三人いう自覚と、あるトラブルを抱えた ( その中 られる。行きつけの精神科医に怒られるのだ が亀井、山岸、田中を演じるには似合ってい 身は記されていない ) ことに後押しされて、 この命は、 が、田中さんは反省などしない そうだが、いずれも″六尺豊かで二十貫。と自殺を決行することにした。死に方をいろい いう大男ではないので、謎のままだ ろとあげていき、「消去法でいくと、頸動脈をぼくのものだ、と。「次は絶対確実な方法でや のではなるしかない」「つまり、ぼくはまだ死ぬことを 田中英光の子息である作家の田中光二切って死ぬのがいちばんカッコいい が、青山墓地の田中家の墓のまえで自殺をは いかという結論に達した」という記述に、奇あきらめていない」。確信犯である ふと、三十年前に何かのパーティで一瞬だ かったのは、三年前の二〇一二年一二月だった。妙なユーモアを感じた。 この何日後かに、日刊ゲンダイに紹介されて しかし墓前でナイフを首にあて、頸動脈をけ目があった田中さんが、父親ゆずりのかな いるヤフーニュースの検索ランキングを見る切ろうとするのだが、うまくいかない。大出りな長身だったことを思いだした。

5. 本の雑誌 2015年12月号

持ちもあって、「文藝朝日」連載時から、ふけの道を帰ることになった。太宰も送って 巌谷大四『戦後・日本文壇史』の ときおり読んでいた巌谷大四の " 文壇来たが、ちょうど玉川上水のほとりを歩いて 中盤をすぎたあたりに、こんな記述 と 史。の出版を知り、すぐ大森駅前の書いるとき、偶然山本有三氏の邸宅の前を通っ があった。「昭和二十四年十一月五 店で手にとったのだろう。 た。『これが山本有三の家だよ』と、誰かが言 日、田中英光氏が、三鷹禅林寺の太 先の引用箇所の直後には、こんな一 うと、英光は『よし、生意気な奴だ』と言って、 宰治氏の墓の前で、アドルムを多量の 節がある。「青山二郎氏が「ピンセッ いきなり山本邸の門柱を片腕で抜き、それを に呑み、左手首の動脈を安全力ミソ トで活字をひとつひとつつまみあげ玉川上水の中にどぶんと放りこんだ」」 リの刃で切って自殺した。 / これも 光 私も何年か前に、山本有三記念館を訪れた て、食べてしまいたいような小説」と 当時のジャーナリズムを賑わした事 一評したという、「オリンポスの果実」ことがある。テレビの散歩番組で、吉祥寺・ 件であった」 という青春小説を戦前に書いて「池谷三鷹篇の収録だった。亡くなったフォークの 田中英光という小説家の名前を初 英田 めて知った。『戦後・日本文壇史』は、 和賞」を受けた田中英光氏の戦後の生き高田渡さんが一日に二度は通った井の頭公園 朝日新聞社から昭和年 2 月 2 日に 亀方は、正に捨て身であった。彼は太宰前の「いせや」、太宰治が人水自殺した場所な どの他に、有三記念館も撮っておこうと、こ 初版が刊行されている。この直後に 田 = 治氏に私淑傾倒していた」。 高校に人学して、すぐに『オリンポれは太宰治賞を筑摩書房と共同主催している 購人しているから、中学卒業を間近 に控えた時期だ スの果実』は読んだ。薄い文庫本だったので、三鷹市への配慮のようだった。 品川区のはずれ、馬込に隣接したいまは西遠距離通学の行き帰りを使って、本は時間を山本有三の記念館なんて、興味ないんだけ 大井と呼ばれる地域にあった、ハンパに柄のかけて読む遅読派の私が、わずか二日で読みどな。面倒くさいと思ったが、記念館に着い ずいぶん立派なお屋敷だった。 悪い学校だった。一学年下に、当時は渡辺順終えた。清冽な気配がただよう一方で、全篇てびつくり。 子という本名でテレビの歌番組の司会もしてをとおして「さびしさ」が通奏低音のように洋風建築で、外装はクリームイエローという か、観光地にある女の子が喜びそうな″かわ いた、後の黛ジュンがいる。たまに昼休みに流れる小説は印象に残った。 カフェレストランのようだ 彼女の教室を覗いてみても、テレピ出演や米これも巌谷氏の本から。「田中英光という男 これを見て、亀井勝一郎が書いた、田中英 軍キャンプ巡りで忙しいのか、一度も渡辺順は、酔っぱらうと、まったくでたらめになり、 手がつけれられない。 / 亀井勝一郎氏がその光の「よし、生意気な奴だ」の意味がわかった。 子の顔を見たことはなかった。 受験も終わって、あとは卒業までやりたい酔態ぶりを次のように書いている。 / 「或る日、『路傍の石』とか、タイトルからして辛気臭く 放題という、荒んだ空気が三年生の教室を支やはり太宰家で、山岸外史と、私と、そこへ教訓垂れそうな作家が、こんな豪邸に住んで いいのかよ、と。記念館の前庭に、大きな黒 配していく。そんな学校生活から逃避する気英光が来て、四人で飲んで大いに酔って、夜

6. 本の雑誌 2015年12月号

京メトロ丸ノ内線の新宿駅西口側改札の目の 口を開けると等身大の梅宮辰夫がエプロン姿で たたずんでいるから、思わず身を引いてしまう 前、新宿駅の西口改札からもほど近い が、たっちゃんだけではない。台所の前に見えるピン 新宿メトロ食堂街の地下一階と地下二階に山下書店新を クの自転車は「ドレミまりちゃん号」の新品 ! で、カ 宿西口店はある。改札を出たところ、地下二階にある ゴの両サイドの天地真理が満面の笑みを浮かべてい のが第二店で、第二店の横の階段を上った地下一階に る。ほかにも新婚さんいらっしゃい ! マクラだの > あるのが第一店だ。さらに第一店の正面にある階段を ジョッキーの白いギターだの、芸能関係の懐かしグッ 上ると新宿西口の地上に出る。つまり山下書店新宿西 ズが所狭しと床に転がっているが、床から目を上げる ロ店はメトロ食堂街の一角にあるが、実際には各路線 と部屋を取り巻く本棚に収められているのはすべてタ 改札ロと地上を結ぶ人通りの激しい往来に面した路面 レント本。プロインタビュアー吉田豪氏の書庫兼物置 店とイメージしたほうがわかりやすいかもしれない。 には三十棹ほどの本棚が並び、五千冊以上のタレント しかも狭くて小さい店である。契約面積は第一店が四 本が収められているのだ。十年前に越してきた当初は 坪、第二店は二坪しかない営業中は夜の間シャッタ 自宅兼仕事場として使っていて本棚も壁際だけだった ーの中にしまってある什器を使い、若干スペースを広 そうだが、あっという間に本棚が増え本が増え、生活 げて陳列しているが、それでも狭小だだが、坪単価 不能となったため、現在は近所に自宅兼仕事場を構え は全国有数。その売上げを支えているのは新宿西口の ているという。ちなみに自宅のほうが本は多いらしい ( 笑 ) 。 オフィス街に通う四十代五十代の男性ビジネスマンだ。第二 それにしても驚異的な数のタレント本で、しかも同じ本が 店は改札に近い分、女性客も多いそうで、女生誌、コミック などもあるが、第一店はほとんどが男性。時代小説文庫の発何冊も並んでいるのである ! たとえばコロムビア・トップ ・ライトの『珍ゲームと福引』は装丁違いのパージョンが最 売日には店頭に並ぶのを待っている常連客も少なくないらし も多いとか、並べて初めてわかる違いが各々にあるらしい 文庫は時代物とミステリー、単行本は雑学系や戦記物の ノンフィクションが目立つが、客層に合わせて特化した品揃さすが資料の鬼だが、「最近はこの部屋にあまり来ないので、 こんな本があったんだと驚くこともある」という。所有者に えであり、逆に言えば四十代五十代のピジネスマンの興味が も新発見のある専門古書店のような書庫なのである。 いま、どこにあるかが一目瞭然の棚でもあるのである 東 本棚カ当 見たい・ , 吉 入

7. 本の雑誌 2015年12月号

( その辺のこといっか原稿用紙百枚ぐらとして中野翠『上等少女趣味皿コラム』の い書きたい ) 、今回の新聞報道で私がオ広告が載っているーーーを購人し、新御茶ノ 日 ャッと思ったのは金親の本名が山村和行水から千代田線で千駄木に出る。津野海太 書 ね べとなっていたことだ。山村というのは養郎さんのトークショーは七時半からだが、 ( し 子先の名字で、去年離婚してからはまたその前に会場「古書ほうろう」に行き、文庫 のの地、 元の金親に戻っていたはずなのに ( ペー本四冊 ( その内、横溝正史『金田一耕助の 大スポール・マガジン社発行の『大相撲カモノローグ』は掘り出し物だと思う ) 買う。 祐と聞 、士名鑑』の平成一一十七年版でも金親和行九月五日 ( 土 ) 朝、きのう買った『相撲』 内撲証日 となっている ) 。四時少し前、家を出、九月号に目を通していたら、「『大相撲歴代 坪湘鹸朝 三茶の文教堂、渋谷のブックファースト名力士 200 人名鑑』についての検証とお 九月ニ日 ( 水 ) 三時半過ぎ、家を出る前に覗くが、相撲雑誌は一一誌共まだ出ていない詫び」という記事が載っている。六月に出 朝日新聞の夕刊に目を通していたら、衝撃九月三日 ( 木 ) 朝、きのう渋谷のブックフたそのムックに関して、「選定基準が不明 的 ( というかやつばし ) な事件が目に人っアーストで買ったムック『時代を創った相確、写真が違う、なぜ大関より関脇のほう かねちか て来る。元十両金親の熊ヶ谷親方逮捕だ。撲部屋物語』 ( ペースポール・マガジン社 ) が扱いが大きいのか、何の順番に並んでい 私はここ十年ぐらいずっと金親のことをウに目を通していたら、またも ( たぶんこのるのかわからない、内容の誤りがあまりに オッチしている ( いっか「カネチカっとい連載で三回ぐらい指摘した ) 「輩出問題」多すぎるなど、多くのお叱りや苦情」が届 うひょこひょこおじさん」という珠玉の作を発見する。つまり、「明治時代後期に輩いていて、その「検証とお詫び、なのだが、 このムックは『相撲』編集部はまったくノ 品を描き上るつもりだ ) 。金親 ( 熊ヶ谷 ) 出した大横綱常陸山」とあるのだ。 のことを白鵬を育てた親方と言う人もいる九月四日 ( 金 ) 三茶の文教堂で相撲雑誌一一ータッチで、「相撲に明るくない編集者が が、それは違う。金親は白鵬が育ってから誌買ったのち、四時半頃、神保町に出て古独断で作ったため、選定力士からして不可 宮城野親方になり、あるしくじりにより熊書会館覗き、『本の雑誌』の第一一十九号と解な箇所が多く、全くお恥ずかしい内容」 ヶ谷に降格されたのだ。元十両が何故部屋三十号と昭和四十年代の『早稲田文学』二になってしまったという。そしてそのデタ の親方になれたのかと言えば、それは先々冊と穂高亜樹『創刊誌大研究』 ( 大陸書房ラメを具体的に取り上げて行く。例えば、 代の未亡人の娘と養子縁組したからだが昭和五十七年 ) ーーー巻末に「好評発売中、関脇藤ノ川豪人の写真が、「弟子の幕内服 読 一三ロ

8. 本の雑誌 2015年12月号

いまから太宰につい 苦痛。 これを書いている、いま、家賃滞 て、締め切りがとっくに - 、一納で借りていた部屋を追い出され、 過ぎたので、急いで書か ねばならない : ・だが以 ( 、本などすべて強制的に不動産屋の用 意した遠くのコンテナにプチ込ま 前からまるで太宰には興 味が持てなかった。 れ、取り出すには手間と費用がかか る・ : もっとも太宰の本など、断捨離 寧ろ、嫌いいや「嫌 で真っ先に捨てたような覚え ( 酔っ い」みたいな積極的に感 じるものすらないたた て「もう一一度と読んでやらないぜ、 ただ無関心。興味ない。というか、おは関心がないので当然スルー。「偶然だクソ野郎 ! 」と怒鳴ってゴミ箱の底に叩 けど、いやな場所に来ちゃったな。不愉き付けた記憶すら ) もあるので、そんな 勉強や仕事で読まざるを得なかった、 ムダな経験に使った時間を返して欲し快」と捨て台詞を吐いて帰った ( 余談だ苦労してまで参照するもんか いとすら思う が、京都の適当な寺の近くをあるいてい だが「太宰について書きたくない : ・興 味ない : 荷とか理由つけて原稿落とした 『人間失格』『ヴィョンの妻』『斜陽』たら、そこに谷崎の墓があるのを知り、 くらいは読んだのかな・ : でもまったくついでに寄って手を合わせた。するとそい」と呟きながら、街を彷徨っていたら、 殆ど記憶がない。あるのは読んでいるの瞬間、細雪が降り始めた : ・自分が生涯目の前に BOOK OFF が仕方なく、棚 とき、正直退屈過ぎて「オレはなんで、たった一度、文学に愛されていると思えにあるだけの太宰の文庫本を購人。マン こんな究極興味ないものに時間割いてた瞬間・ : もう一一度とないだろうし、今後キツかサウナで泊まる費用から、千数百 円の出費。イタすぎる いるのだろうか・ : 」という独白が、ひもなくて結構 ) 。 何故、ここまでして太宰が全然好きに真っ先にファミレスに行き、のんびり たすら反復された記憶のみ。 以前たまたま用事があって玉川上水なれないのか、真剣に考えるべきなのだとコーヒー飲んで十分にリラックスして の、太宰が情死した場所の近くを通っが、とにかく身体も拒否反応。ケガラわから、仕事に向かう。心から嫌だけれど、 たことがあったが、やはり基本太宰にしいものに触れてしまったかのように、太宰の本を一冊、手に取る。 ファミレスと 放屁と 『人間失格』 Ⅱ中原昌也

9. 本の雑誌 2015年12月号

連続的ØLL 話・ 相倉久人さんの死 「相倉久人の超ジャズ評論集成」の 山下洋輔の序文に驚く ・鏡明 はそういうことも減ってきた 「ジャズは死んだ」と発言してジャズの世 問題は、わたしがその状態で満足界をかき回したジャズ評論家ということ しているということだろう。知人がで、過激なおじさんが来ると思っていたら、 亡くなったことを知らないというのすごく柔和で、わたしたちの話をニコニコ は、まずいかもしれない。それでも聞いてくれる人で、安心したと言うか、ず 知らなければ、その人はわたしの中っと前から知っている人のように思えた では生きたままな訳で、それもいいもしかしたら、あのときの相倉さんは、大 のではないかという気もする 森、牧の二人の話を聞いていたわたしと似 でもまあ、先日の幻世紀のべた様な気分だったのかも知れない。そんな スト 100 の選択会議で、大森、牧ことを言うと僭越かも知れないが、相倉さ そうか、相倉久人さん、亡くなっていたという一一人の事情通というか情報の固まりんは自分の評論の中で、マイルス・デヴィ んだ。七月八日 のような二人の話は楽しかったなあ。知らスと自分が良く似ているなんて書いてしま 平井和正さんが亡くなったときも、何ケなかった話が幾つも出てきて、わたしの情う人だ、わたしがこう言ったところで怒ら 月も経ってからそれを知った。わたしの知報量が一挙に何倍にもふくれあがった。もないだろう。 っている世代の人が、その年代に人ってきっとも、翌日にはほとんど忘れているんだでもどうしてこの柔和な人が「ジャズは たということだ。しかしなあ、何ヶ月も経けれどもね。何ヶ月に一度は、こういうチ死んだ」なんて言ったのだろう。わたしと ってから知るというのは、どうなんだろう。ャンスがあれば いいなあ。本当にそう思っしては「ロックは死んだ」とか「は死 理由ははっきりしていて、いわゆるネッ んだ」とか言う人は基本的に信用しない。 トのニュースというのは全く見ないし、基思い出した。相倉さんと初めて会ったのま、「神は死んだ」という例外はあるけれ 本、テレビか雑誌が情報源になるわけで、は、「」で日本のロックを始めとど。と言うより、みんなアレの焼き直しだ ま、遅くなるよなあ。このハイスピードなするアルバムのベスト川を選ぶという企画と思えるから、信用できないんだ。相倉さ 情報の時代にあって、取り残されている。のときだったんじゃないか。七〇年代の終んは信用できる評論家のように思えたか 数年前までは、色々人と会って、そこで知わりか八〇年代の初めの頃のことだ。誰もら、不思議だった。でもそのとき、わたし るということもあったが、そう一一一一口えば最近が若かったころだ はそのことを尋ねなかった。何となく聞く 100

10. 本の雑誌 2015年12月号

・ハイマントウロウ 裏路地の小さな薄汚れた店で、ギ中国名では洋金花や白曼陀夛と言われてい ヨーザを食べながら「午後はどうする。これほどいっせいに咲き誇ったプルグ る」と相談すると、なぜかきつばりマンシアを見るのは初めてである と「植物園に行こう」と断言され「美しい。美しすぎる」だが、「かなり危 た。パスで行けばすぐだという。植険な花」だ。日本画家の田中一村が赤い 物園の人口に運転手つきの電動のカ鳥、アカショウビンとともに描いた絵が頭 ートがあったので、それに乗ることに浮かんだ。幻想的な花の風景に自分の体 にした。無論お金は取られる。広大が溶け込んでいくようであった。 な植物園に足を踏み人れた瞬間、歩「行くわよ」キタキツネの一声で我に返 り、カートに乗り込んだ いていては日が暮れると確信した。 夕方いくらか風が出てきて寒くなった頃 やはりカートが正解であった。 六千種以上の亜熱帯植物が生育すに、もときた門の前に出ると、なんと章青 る植物園は南国の花がいたるところ年のピカピカに磨かれた黒い車が待ってい ウェイシェンマ に咲いて、夢心地になる。見るべきた。私は思わず「カ什幺 ( なぜ ) 」と叫ん 区ポイントでカートは止まり、アジアでいた ト“最大のサポテン園ではじっくり三十 、 0 〒 い分ほど時間をとってくれる ◆新刊「人生のことはすべて山で学んだ』 ( 沢野 ひとしの特選日本の名山 / 海竜社 ) がⅱ月に発 私はプルグマンシア、通称エンジ 0 ろ 91 売されます。 エルストランペットの花の前で釘付 ナ日イ ◆サイン会と懇親会 、ト ) けになった。下向きに垂れ下がった 、ンにナャ 月 6 日 ( 日 ) 午後 1 時 5 、午後 4 時 5 花が甘い香をただよわせている。美想雲堂松本市大手 4 ー グら′ ( 8 7 ー 8 4 ・つ」 ( 乙 ケイ一 しいが有毒な成分を持っており、ロ 月 9 日 ( 水 ) 午後 7 時 58 時半 にすると錯乱状態になり死に至ると ネ窰をこ 書泉グランデ千代田区神田神保町 1 ー 3 ー 2 7 きだち いう。「木立朝鮮朝顔」とも呼ばれ、 谷 oco ー 3295 ー 00—— ( 5 階売場 ) 131