考え - みる会図書館


検索対象: 本の雑誌 2015年12月号
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1. 本の雑誌 2015年12月号

らえて、日常ネタに困ったとき考え抜いていることが前提。プ の緊急対処法を今こそ体系的にロでもこれで失敗しているエッ 整理し、今後に活かすことにすセイが多い気がする る。まず真っ先に思いつくのは、 作戦 3 【もともと自分が詳し 作戦 1 】ネタを探しに外出すい何かについて読者に紹介する 自分が一般の人よりずっとよ だ。何度も試した方法だが、 く知っていることを紹介すれ よほど珍しい場所に行ったとしば、それだけで読者には目新し 7 月から新聞で連載をしていちろんそれはわかっていたが、ても、なぜか書けないことが多い情報になる。私もジェットコ 何か見つけようと期待しすースターやベトナムの盆栽など る。毎週 1 回、半年間の期限付半年と思って油断したのが甘かい きというので引き受けたのだ ぎているのが、裏目に出ているについて書いたすぐに書ける が、思えば物書きになって年、女性誌にも日常ェッセイを書のか 5 回ぐらい外出すればなという点で重宝するが、興味の いていて、ジャンルがパッティんとかなりそうだが、その時間ない人にはどうでもいい話であ 週刊連載は初めての経験だ り、かっ、すでに書いたことの 今、全行程の半分が過ぎたとングしているうえ、日々これとはない。 いって面白いこともない。月 1 ころだが、死にそうである 作戦 2 】歴史上の事件や有名焼き直しになるので、それを読 夕刊のお気楽ページなので、 の女性誌でさえネタ不足できゅ人の生涯などについて要約し、んだことのある読者にはマンネ あんまり堅苦しくないことを書うきゅう言っていたのに、そこそれに対する自分の感想や考えリ 作戦 4 】ファンタジー 政治的な内容と特へ週 1 連載を放り込んだ私はアをくつつける。 定商品の宣伝以外なら何を書いホウとしか言いようがないっ要約部で文字数が稼げるうえやりたい夢を想像で膨らませ こん てもいし 、と軽い感じで頼まれ、まりは金に目がくらんだのであに、賢そうなエッセイになるのる。こんな家に住みたい、 がメリットだが、感想や考えにな旅がしたい、 こんなものが欲 つまり日常ェッセイみたいなもった しかし引き受けたものはガタ相当な本気が人ってないと、つしいなど。無責任で何でも言え のかな、と気軽に引き受けたら 地獄だった。思えば昔から日常ガタ言っていてもしようがなまらない読書感想文みたいなもるので、有効な手段ではあるが、 ェッセイは苦手なのだった。も このピンチをチャンスととのになる。常日頃それについてよほど面白いことを想像しない ひるね書録・宮田蛛己 2015 年 9 月の記 、 8 ・ロた 、 0 ご る

2. 本の雑誌 2015年12月号

いまから二十年近く前のこと。刑事をやっている知人己」光模様などが詳らかにされる。十五字詰め四段組で七ペー ジにもわたって、ニュースでは決して出てこない、実際 からある雑誌を見せてもらい、その内容に仰天したこと がある 理の殺人事件捜査が明かされるのである。 雑誌とはいえ、書店で売られているわけではない。さ これだけでも満腹だが、「新捜査手続問答」という、 らには雑誌コードの記載もなければ、価格も書かれてい 刑事課長と刑事との問答形式で、逮捕状を準備した上で ない。四十ページ弱を中綴じで製本した、その雑誌の表件 の任意同行について語る企画があったり、「日誌」のタ 誌 イトルで、その月に表彰された警官の名前と担当した事 紙の片隅には「取扱注意」の文字があった。 風景画の描かれた表紙をめくると、週刊誌のように、 件が掲示されていたりする。 事 まず一色グラビアの写真が目に飛び込んでくる。それぞ すべてが初めて目にする内容のこの雑誌のなかで、と れの写真につけられたキャプションは「被圭暑を鉄パイ くに新たな発見だったのが、巻末に掲載された「刑事の プで殴打している状況を再現する被疑者」だったり、「死 顔」という特集だ。一一人の刑事が顔写真付きで登場し、 の その同僚が人物像を語るという企画なのだが、そこで当 体をシーツに梱包した状態」といった、ストレートな内 意 容だ。ちなみに、キャプション通りの姿勢で写真に登場 人を紹介する際に、「落としのヒデさん」や「指紋のプ する被疑者は本人だという。 ロ・ヤマさん」といった″呼び名。が登場するのだ。 注 刑事の呼び名といえば、ついテレビドラマ グラビアベージに続くのは「指名手配被疑者捜査強化 扱 月間に対する座談会」という特集だ。そこでは、各都道 『太陽にほえろ ! 』を思い出してしまうが、ま 取 府県警の刑事たちが集まり、実際の事件を例に挙げ、ど さか本物の刑事もそのように呼び合うとは考え もしなかった のようにして指名手配犯の摘発に結びついたのかを語り 合っている。 と、ここまで思わせぶりな書き方をしておい さらにページをめくると、今度は事件ルボの体裁でま て恐縮だが、じつはこの雑誌、全国の刑事だけ とめられた特集が現れる。冒頭のグラビアベージで紹介 に配られる完全なる部内誌である。そのため一 している殺人・死体遺棄事件について、実際に捜査に関 般人が読むことはできない。警察庁刑事局刑事 わった警部による書き下ろしのレポートだ。そこでは捜 企画課が作成する、刑事による刑事のために編 査の端緒から、その具体的な内容、被疑者による犯行の まれた同誌のタイトルは、『第一線』という ・一ごロ ・一ごロ

3. 本の雑誌 2015年12月号

自費出版の出現と形態はいうまで 出版業界小説としての ~ 籌提もなく、また皮肉でもなく、出版 = ま ( 版依 〉一出島業界の売れ行きの鈍化と完全にク 「マイストーリー私の物語」の読み方を一一 ) 。聞大 子第、、新・ロスしているつまり、出版業界 Ⅱ藤脇邦夫 強第一一 ( 、嬉装が前年比をクリアできなくな 0 て きた 2005 年前後から、この手 ここで改めて断るまでもなく、もともとの出版物の新聞広告が多くなってくるとい 今年、朝日新聞で連載されて話題になっ た林真理子の「マイストーリー」 ( 以下、自費出版というのは、通常の出版業界とはう具合だ。 そして、この新しい自費出版の方式は、 タイトル略 ) がやっと一冊になって刊行さ違う、別の業界とされていた。これは別に、 れた。普段、ほとんど新聞小説を読まない偏見でもなんでもなく、単なる事実であ出版社の収益に対する考えを大きく変えた 僕も、連載当初から、何故か毎日読むようる。これを証明する単純な確認事項があといわれている。つまり、一般的な出版物 になっていたが、それは、やはり小説の舞る。書店で販売されているかどうか、このの場合、出版社は本に対する制作費用をす べて賄い ( 当然ともいえるが ) 、しかも印 台背景が、自費出版の出版社であっても、一点に尽きる もともと、自費出版云々の前に、あるジ税まで支払うということになっているが 出版業界だったからだろう。 この小説の書評は、もちろん舞台となっャンルだけのために作成される出版物とい新しい自費出版方式では、そもそも印税が ている自費出版について触れないわけにはうのは以前より存在していた。企業の社不要な上、制作費用まで全額負担してくれ いかないだろうが、あくまでも背景だけと史、趣味の世界の私家版、遺族、家族による著者 ( スポンサー ) が出現する。これは して扱われるだろうと思い、僕は今回、ある追悼集といった具合で、定価付けがなく、出版業界としてまさに福音といっていし えて、この小説を出版業界小説として読ん一般には流通しない出版物、これが一般的画期的な出版収益システムともいえる。一 度こうした発想を持ってしまうと、従来の でみることにした。そうすることによっな自費出版物の定義だった。 この、「書店には流通しない、限られた一般的な出版方式がいかにもリスキーで、 て、著者がどこまで意図したかどうかわか ジャンルの価格付けのない出版物」という不安定なものであり、収益の予測が付かな らないが、現在出版業界が抱えている、 ギャンプル的な投資に見えてくるから ろんな問題が否応なく浮き彫りになると思定義が崩れたというか、変わっていったの はいっ頃からだっただろうか。この新しい不思議だ。そうすると、従来の出版社の収 われるからだ。

4. 本の雑誌 2015年12月号

たとかそういうことを遠慮会釈なく書いてい 義耕治人は、壮絶というより凄絶な人生を送っ る。円地は、谷崎潤一郎賞の選考委員をしてい 地ている。はじめ詩を書いていて千家元麿に師 菊 て、この = 一部作を受賞させ、同じ選考委員の武第、 ~ の・宀豕 事、のち川端康成を頼るが、妻とともに辛酸を ン 田泰淳から選評のすべてを使って批判された。 なめて精神に異常を来し、川端の妻の弟に土地 だが、実際に作品を読んでみて、私は円地が正 デを貸したところから紛争になり、川端没後も川 しいと思った。武田は川端康成と親しく、川端 端を恨んで『うずまき』などの私小説を書い も自分が選考委員をする野間文芸賞を受賞しているのだ。 た。世間に知られるようになったのは、妻が痴呆となるさま 中条ュリという天才少女作家としてデビューした宮本百合 を描いた『天井から降る哀しい音』『そうかもしれない』な 子の生涯が壮絶であるのはいうまでもない。投獄されること どの諸作品で、桂春團治と雪村いづみで映画化もされた。 いらくさ 数次、獄中で今でいう熱中症で死にかけて釈放されたが、五 萩原葉子の『蕁麻の家』は、それを書いたということに壮 十代での早すぎた死は、その後遺症も与っていた。その『伸絶さのある私小説である。父朔太郎が、いかにその母の圧制 子』『二つの庭』は、最初の夫との結婚と離婚、湯浅芳子と に苦しめられ、葉子も迫害されて廃嫡されようとしたところ の同性愛的関係を描きつつ、日本で初めて、最近はやりの母を、瀕死の病床にある朔太郎の首ひと振りで、葉子の継嗣と と娘の対立を描いた優れた私小説である。 しての地位は保全される。だが世間はこの小説に冷淡だった 戦後になると、何といっても島尾敏雄『死の棘』が壮絶私 ことを、私は自分の小説が受ける冷淡な扱いとあわせて考え 小説だろう。もっともこれは、単に夫が浮気をしただけなの る。世間はなぜか、尊属を悪く言う小説を許さないのである だが、そこから妻が狂気するという展開になるところが凄く、 吉村昭は、歴史小説作家とみられており、短編幻想小説も ただし息子や娘は本当に迷惑だったらしい。ところでこれに知られているが、私小説も書く。うち、弟の死を描いた『冷 ついては、なぜか浮気相手の女が誰か、ということを私はま い夏、熱い夏』はやはり優れた作品だが、私として逸したく ったく気にせず、桐野夏生の『—Z 』を読んで初めて気づき、 ないのは、小説ではなく自伝とされる『私の文学漂流』であ くろやなぎふみ そこで愛人とされているのが、変名ながら明らかに畔柳一一美る。吉村ほどの作家が、四十近くまで、四回芥川賞候補にな なので、慌ててあれこれ調べていたら、梯久美子が『新潮』 って受賞できず、一度などは誤って受賞したと連絡があり、 に連載している「島尾ミホ伝」で、「現在の会」の増永香と文藝春秋まで行ったら間違いだったという悲劇すらあった。 いう人であることが分かり、拍子抜けした。 この壮絶ともいえる文学漂流は、読む価値ありである。

5. 本の雑誌 2015年12月号

はどのようなものだったかなんと、つつ目を覚ましてから夜眠るまでに思ったことれようが金や名誉や名声を得たいという気 立っている彼女に「おい、お慶、日は短いや起きたこと、普段通りのごく平凡な一日持ちは捨てきれない。妻はあの頃とかけ離 のだぞ」というくらいなのだ。少し年上のも彼を通すと特別な一日のように感じられれて変わってゆく夫をどうにも許せなかっ る。自分が嫌いだったり、ちょっとしたこた。いわば男のエゴと女のエゴとの戦いを お慶にとってそれは親一兀離れた奉公先にい るかわいい弟がスネた程度に映っただろとに思い悩んだり、幸福は一生来ないのだ描いた作品だ。 う。彼を待つあいだ、海に向かって石を投と思ってしまったり。このあと彼女は誰よ⑤「待っ」。昭和十七年一月ごろ執筆。 りも優しい女性になれただろうか。またふ「京都帝国大学新聞」の依頼に応じ三月五 げながら彼女が夫にいう言葉。それを聴い て彼はどれだけ救われただろう。明るい未たたびお目にかかれる日は来るのだろうか。日発行号に掲載予定のはずが、内容が時局 来しか感じさせない最後の場面に初めて読④「きりぎりす」は昭和十五年十一月のにふさわしくないという理由で掲載取りや 「新潮」に発表された。親や親戚のすすめめとなり、六月に博文館の雑誌「女性」に る縁談を断り周囲の反対を押し切ってま掲載された。内容は一一一 = ロ、謎。一一十歳の娘 小さな駅へ毎日誰かを迎えに行 で、貧乏だがどこか他人とは違って見えるの私は、 彼女が誰を待っているのかは最後まで 画家の「あなた」のもとに嫁いだ「私」のく。 これまでとこれからを独白で綴る傑作。貧わからない。それは人間ですらないのかも 乏でも工夫一つで幸せを得られた生活が個しれないもしかすると希望 ? 救い ? それ 展の成功によりにわかに裕福になった途とも死 ? んだ私ももらい泣きした。 「短篇小説コンクール」の結果も見事当端、夫は金に執着し、恩人の悪口すら平気最後の一文で彼女の見ている世界が、お 選。同点で一位を分け合ったのは上林暁でで言い、人の意見をさも自分の考えのようもむろに読み手側の視点に変わる。ぼつん と座って何かを待ち続ける彼女を見掛ける あった。 に話す薄っぺらな男になってしまった。 ③「女生徒」は「黄金風景」のひと月後「私」はそんな夫を軽蔑し別れを決意する。日は来るのだろうか。 に発表された作品。昭和十四年一月から八ある夜、自分の背骨の真下で鳴くきりぎり⑥「花火」も昭和十七年。「文藝」十月 月まで、甲府で新婚生活を送ったこの時期すの声を一生忘れず、背骨にしまって生き号に掲載された。昭和のはじめ東京の四谷 に住む、やや高名な洋画家の鶴見仙之助に が彼の一生で最も安定していたのではないてゆく決心をしながらそんなことを思う。 いつでも男は見栄っ張りだ。俗物と言わは勝治と節子という子供がいた。今で言う芻 か。「女生徒」は父を亡くした少女の独白。 女生徒 ) んア

6. 本の雑誌 2015年12月号

編集後記 11 月下旬刊行の書籍『ワンコイン古着』 ( 中嶋大 2 ス 介著 ) の作業が大詰めです。同書は、ワンコイン = 500 円以下で買えて格好良い ( ラルフローレンやー ピームス等のプランド多数 ) 古着の世界をガイドジ した一冊。かって重度の古本中毒だった著者は、 3 年前、突如古着の面白さに開眼。以来、古着屋な つ で年間 1000 着を買いまくる古着中毒者に。そん な著者の古着熱が全頁に漲ってます。使えるショま ップリスト付。せひ、この本を手に古着屋へ ! 【み】つ く ヤクルトスワローズの試合を、この一か月ほどで、盛 10 回は観に行きました。 14 年ぶリのリーグ優勝り のおかけです。公式戦、クライマックスファイナが ルステージ、日本シリーズと、倍々ゲームかのよれ うにチケット代金が高くなっていきました。 1 4 く 年に一度のことだからと、奮発しました。来年もな つ こんなに強かったらどうしようかと、ファンとし てあるまじき考えが頭をよぎリます。お金よリ大し 切なのはヤクルト。貯金をがんばリます。【は】ま ま 切手を貼り忘れた封筒が戻ってくる。 10 年前にし 同じポカをした時は投函した瞬間に気づき、集荷 までポスト前で待っていたが、今回は寝耳に水。 日々うつかリ度が高まるこの頃、社長の旧 PC が ついにダウンし、新マシンが稼働。購入から苦節 田 3 カ月、長かった・・・。粛々と下版中、「だめだ、 せんせん動かない ! 」の声が。えつ、もう壊れた んですか。「いや、話がせんせん動かないんだよ」 おじさんニ人組絶賛執筆中。間に合うのか ! ? 【ま】 新聞等の報道でご存じの方も多いと思いますが、 本の雑誌が第 63 回の菊池寛賞を受賞しました ! ス いやあ、驚いた。受賞の知らせをもらった時は電 話の向こうの人が狸か狐に違いないと疑ったのだ が、ためしに頬っぺをつねってみたら痛かったの で夢でもない。それにしても現実だとわかるとう れしくてたまらないものなんですね、受賞って。 うれしくてうれしくて毎日夢心地というのか、仕 事に身が入らないのも菊池寛のせいにしてしまう くらいなのである。 12 月 4 日に贈賞式があるが、 当日はとても平静でいられそうにない。本屋大賞 で授賞者の側を過去 12 回体験してきたが、受賞 者の側は初体験で、受賞作家のみなさんもこんな 心持ちで来ていただいていたのだろうか。そう思 うと本屋大賞実行委員会の一員としてモチベーシ ョンがぐわわんと上がるのである。 今月で浅生ハルミン、日下潤一、宮田珠己、荻 原魚雷、久田かおリ、五氏の連載が終了。別の機 会にまた改めて活躍してもらいますのでお楽しみ に。また堀部篤史、徳永圭子、青木大輔、三氏は 舞台を変えての再登板。こちらも乞ご期待 ! 【浜】 136 特集 ☆さあ、今年も年間ベストの季節がやってきた ! 本誌が選ぶノンジャンルのベスト間に加え、 cnu- 、 ミステリー エンターティンメント、現代文学、時 代小説、ノンフィクションの六大ジャンルの年間べ ストがここに集結。出版トピック対談に私のベス ト 3 でお祭り気分もマックスの新春特大号なのだ ! ス 0 年 度 次号 予告 20 ー 6 年月特大号 本の雑誌 12 月号第 40 巻 12 号 ( 通巻 390 号 ) 2015 年 12 月 1 日発行 定価 ( 本体 667 円 + 税 ) 5BN978-4-86011-352-0 C0395 編集発行人 / 浜本茂制作 / 市村慶子 編集部 / 松村眞喜子宮里潤 ( 株 ) 本の雑誌社 〒 101 -0051 東京都千代田区神田神保町 1 -37 友田三和ビル 5F 電話 03 ( 3295 ) 1071 振替口座 : 00150-3-50378 れ p : / / Ⅲ山山 . Ⅲ ebdOku. 」 p /

7. 本の雑誌 2015年12月号

そのまま受け人れることができたんですか もマシにしたくて、袖口をまくったり、スうとしていたはず カートのウエストを折ってウンと短くした「当時はだぼっとしたのが流行で。アルマ ? これは違うと思う部分はなかったの ? ーニとかダナキャランとかカルバンク「受け人れるべきところは受け人れざるを り、いろいろ頑張ったものだ。 とまれ、学生服感覚でスーツを着ているライン。よくあるところです。ちょうどそ得ないんですけど、それでも自分にも考え としか思えない人、電車の中でもよくみかの頃ウオン・カーウアイの映画が好きだっはあるんですね。僕もそんなにしよっちゅ けるのである。身体にきっちり合わせるだたんですよ。トニー・レオンのスーツ姿にうスーツを買うわけではないから余計に譲 やられちゃって。アジア人でスーツを着これない部分があって。 けで、全然違うのになあ : で、森さんである。中肉中背で、学生服なすヒントって、ウオン・カーウアイの映でも向うは理論攻めで言って来るわけで すよ。もうギリギリ。怖かったもん。やり も良く似合っただろうし、写真の部署にい画くらいしかないじゃないですか」 るとはいえ、一時期は週刊誌の編集者だつわかる。わかるよ。洋画やなんかのとりを楽しむ余裕とか全然なかった」 たので、スーツを着ていたという。そう、外国人モデルのスーツ姿を見てると結局ガそこまで何を揉めたのだろう。 週刊誌の編集者は、毎日スーツが鉄則なタイのいい奴らのスーツ姿には敵わないみ「。ハンツの裾丈です。今はクッションを人 れないのが流行りらしくて、すごく短くし ぜかというと、いっ何時どんな事件が起きたいな気持ちになっちゃうもんなー るかわからないから。国会議事堂でも自民「鴨田さんが凄いと思うのは、ヨーロピアたがるんですよ」 へえ、あれクッションって言うんだ。立 党本部の記者会見場でも、警視庁でもどこンで受け継がれている伝統的な形式を、一 でも行けるのは、スーツだけなのだ。ほら度日本人の体型に置き換えて、コーディネったときに足の甲にかかるゆとりといえば いいだろうか長さ次第でくしゆくしゆっ ねー。新聞記者も、文化部以外はスーツがイトしているんですよね。普通だとアチラ 多いのはそのため。なのにこれが繰り返しではこうなんですみたいな受け売りで押さと折れた感じからシュッとまっすぐまで、 になるんだけど、「着てればいいんだろ」れるじゃないですかそうじゃなくて、向ニュアンスがいろいろ変わるところだ。名 な身体に合っていない残念なスーツ姿が多うのルールをどう日本人の体型に当てはめ前は知らなかったけど、やたら短いのが流 行中なのは知っていた。今をときめくメン るかっていうことを考えている」 その方が警察や政治家から睨まれない ほーう。でもさ、森さんは高野さんや宮ズプランド、トムプラウンが、すごいです とか、処世のなにかがあるのだろうかね でも森さんは、残念にスーツを着ていた田さんと違っていろいろこだわりがあっ皆さん画像検索してみてください。。ハンツ タイプではないだろう。積極的に着こなそて、鴨田さんの蘊蓄のすべてを、そっくり丈の短さに驚嘆しつつ、次号に続く。

8. 本の雑誌 2015年12月号

歴史とは現在から過去を振りポピュラー音楽を辿ることによ ータブルな記録再生メディアとド。そこには世界に稀に見る急 返った視点で語られるある種のって描き出された異色の戦後日しては、日本国民にとって画期進的な都市開発を礼賛したナレ 物語であるゆえに、どの点とど本レコード史である。多くの音的な存在だったレコード。にも ーションが収録されているが の点を結ぶかでそのストーリー楽史はヒット曲やエボックメイかかわらず、レコード盤は当時現在振り返って聞いてみれば、 は随分と変わってくる。語り手キングな音楽家の仕事によって非常に高価な存在だった。そこそれが相当無理のあるものだっ の多くは強い光を放つ、目立っ辿られる。しかし、レコードとで廉価なソノシートが開発さたことがよくわかる。万博など た点ばかりを選択するため、星いうメディアにとってそのようれ、高価なステレオセットに代国を挙げてのイベント時にはか 座のように既知の歴史観が生まな存在はごく一握りであるどこわり、再生にはポータブルプレならず大量のレコードが生産さ れることになる。しかし、弱い ろか、その周縁には音楽ソフトイヤーが普及、その存在はまたれた。それらをいま再生すれ 光しか放たない無数の小惑星をですらないレコードも大量に生たく間に身近なものとなる。雑ば、豪華絢爛な録音に、万博が 結ぶことによって現れる異形の産されていたのだ。著者日く誌の付録、企業の用配布物、いかに産業の活性化をうながし 歴史観というものも当然存在す「大ヒットしたレコードが有名学校や組織の記念品に、膨大なたのかを肌身に染みて感じるだ る。今回は、見過ごされ、忘れ人だとしたら、ここで紹介して数のレコードが生産された。例ろう。大人のおもちゃ屋で販売 られつつあるものを結ぶことでいるレコードたちは、いわば一えば、東京オリンピック開催をされたムードミュージック、無 語られる斬新な戦後史本 3 冊を般人」。ヒットチャートを辿る前にして東京都各区が配布した名の歌い手たちが吹き込んだプ ご紹介。 だけでは見過ごしてしまいがちフォノカードと称される、カーライベートなレコード。才能の 『レコードと暮らし』 ( 田口史な、暮らしのそばにあったレコドに薄いビニールシートを貼りある歌い手や、名前が知れ渡っ 人 / 夏葉社一三〇〇円 ) は、非 ードの歴史が綴られている。ポ付けて溝を掘った簡易レコー た一握りのミュージシャンでは なく、これら無名の音盤にこそ、 子 祥 語られる機会の少ないわれわれ 堀部篤史 田 酢務大衆のつつましい暮らしが記録 久事 暮 井井されているのだ。 ヒットチャートに残らない 忘れ去られつつある昭和の音 無名の音楽で振り返る昭和 楽遺産といえばジャズ喫茶も同 新刊めったくたガイド

9. 本の雑誌 2015年12月号

そんなにダメな感じがしなくて、むしろ岩小説といえば二葉亭四迷の『平凡』なんだ妙が先に世に出ちゃうわけね。結局、美妙 野泡鳴のほうがダメだよね よ。あの人って主著が三作だけじゃない。 が先に出るけど、スキャンダルがあって失 西全然ダメですね。山師だし。 『浮雲』『其面影』と『平凡』。自然主義が脚して、若くして死んでしまう。でも紅葉 坪変な缶詰工場も作って ( 笑 ) 。 盛んだった頃だから、自然主義の。ハロディにひどい目に遭わされてるはずなのに、す 西秋江は晩年も、失明はしたけど七十近みたいな形に書いてたんだけど、『平凡』ごくいい追悼をしてるんですよ。臨川書店 くまで生きましたから。あの人がダメと言って、めちゃくちやで面白いよ。ダメ男小から「山田美妙集」が出てるでしよ。第九、 われるのは小説の内容のイメージと、人に説で 十巻が評論、随筆集で、尾崎紅葉の追悼が 軽んじられるキャラクターゆえですよね。西明治でリアルにダメな作家というと柵人ってるんだけど、いい追悼なんだよね。 坪不思議だよね。秋江って博文館に勤務山人。漣山人の弟子で、泥棒をやって刑事それに美妙って晩年は不遇のように思われ してるし、中公にも勤務して、西園寺公望事件になってそのまま消えた人なんですけてるけど、染井霊園にあるお墓はものすご が開いた文士招待会の人選もしている。意ど、これが人間としては一番ダメだったんく手人れがいいわけ。つまり、子孫に恵ま じゃないかと 外と重要なことをしているんだよね れてる。染井には二葉亭の大きな墓もある 西要所要所でいますよね。昔、秋江ー , ま徳坪一番ダメなんだけど、宮武外骨が柵山んだけど、二葉亭は遺族がいないから、朽 田秋江と名乗っていたんですよね。秋声と人の小説全集を出してるよね ち果ててたんですよ 一字違い。それを秋声に遠慮して、自らも西そうでしたね。骨を拾ってあげたじゃ ーー三鷹の禅林寺は森鵐外と太宰治の墓が 文名あがっていたのに改名するくらいだかないけれど、やつばり何か反骨精神を刺激向かい合ってるじゃないですか。両方とも ら人間的にちゃんとしてるんですよ ( 笑 ) 。するものがあったんでしようね。たぶん硯そんなに綺麗じゃないですよね。 しいよね。 坪「文壇無駄話」。あれ、 友社系の態度に外骨は腹が立ったんじゃな西手は人ってないですよね。太宰の墓で 西あれは勉強になります ( 笑 ) 。生き証いかな。事件になったときに、尾崎紅葉た思い出すのは、英光が墓前で死んだので、 人ですからね ちは知らんぶりしたんですよね。弟子の鏡昔、十年くらいよく行ってたんですよ。そ 坪ゴシップなんだけど、八木書店から出花が自分を凌駕するほどの人気がでたときしたら庫裡で太宰の複製色紙とかグッズを た近松秋江全集だと、四段組で三巻くらいの妬み方もすごかったって言いますし。 売ってるんですね。それで嫌になっちゃっ ある ( 笑 ) 。すごいポリューム。よくあれ坪山田美妙との関係も変だよね。紅葉とた。完全に商売ですからね。 だけ書いたよね。それで、明治時代のダメ美妙って、最初は一緒にやってるけど、美坪英光といえば、林真理子さん。あの人