地方公共団体 - みる会図書館


検索対象: 人事院月報 2016年10月号
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1. 人事院月報 2016年10月号

うになった場合に、民間の加害行為により 国民が被害を受けた際の賠償責任の在り方 は検討を要する論点となる。公務である以 上、民間に委ねたとしても、国家賠償法が 適用され、国・地方公共団体が賠償責任を 負うとする考え方もありうるが ( 注リ、他 方で、民間が自らの計算と責任で行うこと を重視し、通常の民間と同様の不法行為責 任を負うべきであるとすることも考えられ る。具体的な紛争においては、国家賠償法 の立法趣旨、同法を巡る社会状況の変化に 応じて判断されるが、その中で、公務のと らえ方、公務の国民への提供の在り方につ いての本質的議論が必要となろう。 本稿は、公務を担う主体が公務員のみで なく、多様な形で官民協働の状況がみられ ることを法制度の面から提示したものであ るが、あわせて、公務を公務員自身が担う ことの意味を改めて問い直すとともに、公 務の民間委託・民間開放等の官民協働の場 において公務員が果たすべき役割を明確化 していくことが必要となろう。官の立場か ら、国民のために公務の質と効率性向上を 真に導くような、公務の改革ー官民協働を 含めーに積極的に取り組む視点をもっこと が望まれるところである。 ( おばた・じゅんこ ) ( 注 1 ) 筆者は、かって、行政減量・効率化有識 者会議委員三〇〇六年一月 5 ) 、行政刷新 会議議員三〇一二年五月 5 ) などを務め、 行革に関与した経験がある。なお、本稿では、 官民協働としたが、「官」の中には、地方公 共団体の「公」も含むものとして用いてい る。 ( 注 2 ) 山本隆司「民間の営利、非営利組織と行 政の協働」芝池・小早川・宇賀編「行政法 の争点〔第三版〕」二〇〇四年一五四頁、角 松生史「行政事務事業の民営化」同一五二 頁、拙稿「官 ( 公 ) と民の役割分担ー行政 法における最近の変化」法律時報八一巻二 号六六頁等。 ( 注 3 ) 米丸恒治「建築基準法改正と指定機関制 度の変容」政策科学 ( 立命館大学 ) 七巻三 号二五三頁、塩野宏「指定法人に関する一 考察」『法治主義の諸相」一一〇〇一年有斐閣 等。 ( 注 4 ) 実際には、地方公共団体の建築主事であっ ても、偽装を看過して確認を下していた状 況がみられたため、確認業務の民間開放自 体が問題の本質ではなかったといえよう ( 拙稿「建築基準法と耐震構造偽装事件」 学術の動向一一巻六号五八頁、阿部泰隆「対 ・行政の戦略法務第八回耐震強度の偽装」 ビジネス法務一一〇〇六年四月号一〇〇頁等 ) 。 ( 注 5 ) 高橋明男「駐車規制」ジュリスト一三三 〇号一一一頁、北村博文「違法駐車対策に関 する制度改正について」警察学論集五七巻 九号一三頁、国家公安委員会・警察庁「事 業評価書ー新たな駐車対策法制の導入」 ( 平 成一九年一二月 ) 等。 ( 注 6 ) 拙稿「公物法と a-æ—に関する法的考察」 『塩野宏先生古稀記念・行政法の発展と変 革上巻』有斐閣二〇〇一年七七三頁、日本 版研究会編著「日本版のガイ ドライン』大成出版社一九九八年等。 ( 注 7 ) わが国における刑務所では、運営 のほとんどを民間に委ねているイギリスの 刑務所とは異なり、刑務官のみがな しうる権力作用が存在しているため、公務 員による業務と民間事業者の業務が混在し ている ( 法務省「刑事施設における業務の 6 0 報 委託の在り方に関する研究会」報告書一一〇 月 〇八年 ) 。 ( 注 8 ) 「公共施設等運営権及び公共施設等運営事事 人 業に関するガイドライン」内閣府二〇一三 年六月、倉野泰行・宮沢正知「改正 法の概要 C 15 ⑤ー法改正の背景・意月 義等ー」金融法務事情一九二五号八四頁 5 一九三〇号八〇頁。拙稿「法のさら なる活性化に向けて」ジュリスト一四一一 号二頁。 ( 注 9 ) 成田頼明監修「指定管理者制度のすべて」 改訂版第一法規一一〇〇九年、稲葉馨「公 の施設法制と指定管理者制度」法学 ( 東北 大学 ) 六七巻五号七〇七頁等。 ( 注川 ) 総務省地域カ創造グループ地域振興室 「地方公共団体における公共施設等運営権 制度導入手続調査研究」三〇一四年三月 ) では、指定管理者制度と O-E—制度の重畳 的適用について論じている。 ( 注Ⅱ ) 橋本博之「「競争の導入による公共サービ スの改革に関する法律」案についてー公私 協働・契約手法の導入という観点から」自 研八二巻六号三五頁、内閣府公共サービス 改革推進室「公共サービス改革法 ( 市場化 テスト法 ) 入門」ぎようせい二〇〇六年、 拙稿「公共サービス改革法と官民役割分担」 地方自治一一〇〇七年一一月号一一頁等。 ( 注 ) 公共サービス改革法成立時に、職業安定 法の特例、国民年金法の特例、戸籍法等の 特例が定められた。市場化テスト終了事業 一覧 http://www.soumu.go.jp/main- con ( en ( Z000425565. pdf ( 注ロ ) 拙稿「国家賠償法の適用範囲について ( 上 ) ( 下 ) ー民間委託等官民協働による行 政活動をめぐってー」法曹時報六四巻一一号 二三七頁、六四巻三号五〇三頁等。 ( 注凵 ) 最高裁平成一九年一月二五日判決 ( 民集 六一巻一号一頁 ) 。民間のモラルハザードに 陥るなどの批判もありうるが、被害者に対 する関係で、行政の責任を広く認めること は、一種の安全弁としての機能も果たしう るとも考えられる。なお、民間が負う責任 としては、国家賠償法三条による求償にせ よ、契約上の責任にせよ、それ自体は存在 していると解すべきである。

2. 人事院月報 2016年10月号

0 ションプラン」では、一〇年間に二一兆円共施設等運営権が設定され、民間事業者の 設制度は、もともと条例主義で構築されて報 院 の事業規模目標を掲げ、新たなビジネス機運営がなされており、愛知県道路公社の有おり、指定管理者が行う管理についても、 事 人 会の拡大、地域経済好循環の実現、公的負料道路についても、一一〇一六年一〇月より契約による委託ではなく、管理の代行とい 担の抑制が目指されている。 公共施設等運営権が設定される予定である。 う形で、使用許可等の権限それ自体を行使明 については、二〇一一年の 今後、コンセッション事業は、水道事業させる法的構成がとられている。公務員で 法改正で、「公共施設等運営権」が五四年 や下水道事業、文教施設、公営住宅等にも はない指定管理者たる民間会社、公益法人 ぶりの「物権」として創設され ( わが国は対象事業を拡げていくことが目指されてお ・一般法人の社団・財団等が行政処分を行 物権法定主義をとっているため、一九五七 り、新しい官民協働の形が出現することが う仕組みがとられているため、公の施設に 年のダム使用権以来の物権の創設であっ 注目されよう。ただし、公共施設によって 関する独特の公民の協働方式が出現してい た ) 、民間が公共施設を運営する際の新し は、様々な個別法令により律せられ、そこ るといえよう。総務省による「公の施設の い法的枠組みが誕生したことが注目されよ では公共施設等運営権のような新たな法的指定管理者制度の導入状況等に関する調査 う。公共施設等運営権の付与は、コンセッ 地位を前提としない法令の定め・運用が存結果」三〇一六年三月 ) によれば、地方 ション方式といわれ、登記され、抵当権の する場合もみられる。新しいコンセッショ 公共団体で指定管理者制度が導入されてい 対象とされることによって、民間事業者に ン事業拡大のためには、このような制度上 る施設は七六、七八八施設で、その約四割 よるより安定的な公共施設等の整備・運営 の隘路を抽出して積極的に制度上の手当を の施設で、民間企業等 ( 株式会社、 ZæO を可能にするものである ( 注 8 ) 。 行っていくことも必要となろう。 法人、学校法人、医療法人等 ) が指定管理 国・公共団体が公務として行ってきた公 者となっている。 共施設の運営については、従来から民間委 「公の施設」の指定管理者制度 指定管理者制度については、との 託はしばしばなされていたが、今回創設さ 一一〇〇三年の地方自治法改正で導入され 関係にも留意する必要があり、異なる制度 た指定管理者制度は、「公の施設」につい れたコンセッション方式により、運営を行 をどのように円滑に運用するかについて、 う民間事業者に、法的に確固たる地位が付 て、従来の契約による管理委託の制度に代制度的工夫も必要になるところである。と 与され、民間による公務の遂行の新しい法 え、指定された民間業者等が、使用許可等りわけにおいて新しく創設された公 的枠組みが構築されたことになる。現在は、 の行政処分を含めて、法的な管理作用を行共施設等運営権との関係では、両制度を重 但見飛行場三〇一五年一月 ) 、関西国際 うことが特徴である ( 注 9 ) 。地方公共団体畳的に適用する場合の手続き、進め方につ 空港・大阪国際空港 ( 二〇一六年四月 ) 、 のスポーツ施設、美術館等について、民間 いて明確にすることが肝要であろう ( 注。 仙台空港三〇一六年七月 ) 等の空港や、 の手法を採り入れた効率的な管理・運営が 国立女性教育会館 ( 二〇一五年七月 ) で公 行われることが想定されているが、公の施 市場化テスト ( 官民競争入札 )

3. 人事院月報 2016年10月号

動きもみられる。 地方公共団体への申請が一四一、六〇七件 ② O-LL— (Private Finance lnitiative) は、公共施設の設計から建築、維 本稿では、民間開放あるいは官民協働のた で三一 % であったのが、二〇一五年には、 申請件数総数五五〇、三二〇件中、地方公持管理までを一体として民間事業者に委 めに法整備がなされた右記の事象を概観し、 ね、その民間資金により効率的な公共施設 共団体への申請が七三、四四〇件で一三 % 若干の今後の課題を提示することとしたい。 の整備を行うものとして、イギリス・サッ に減じており ( 「最近の建築確認件数等の チャー政権で導入されたものであったが、 状況について」国土交通省 ) 、現在で 3 公務の民間開放のための法制度 は、ほぼ九割近くが民間の指定確認検査機わが国においても、二〇〇三年に法 行政の業務の民間開放の例 ( 民間資金等の活用による公共施設等の整 行政が自らの業務として行ってきたもの 関に建築確認を申請している状況が認めら れる。国民生活に身近な住宅の建築の際の備等の促進に関する法律 ) が制定され、庁 を民間に開放した例として、国民に身近な 行為としてすでに定着している制度とし 建築確認という行政処分を私人が行う代表舎の建替えや、学校、プール、公民館、病 院など多様な施設で、が実施されて て、建築確認の民間開放及び駐車違反車両的例となっているととらえられよう。 きた。は、本来、徹底した契約主義 続いて、二〇〇六年の道路交通法改正に の確認業務の民間開放がある。一九九八年 によることが特徴であるため、わが国の法 の建築基準法改正によって、民間の指定確よる、駐車違反取締りのための放置 ( 駐車 制との接合上の課題も存するところであっ 認検査機関による建築確認が導入され、従違反 ) 車両の確認事務の民間委託が社会的 たが ( 注 6 ) 、わが国においても、刑務所 に注目を集めた。違法駐車の取締りについ ~ 来、地方公共団体の「建築主事」が行って か ては、放置車両であるとする事実確認につ ( 最初の例として、山口県美祢市の美 きた「公権力の行使 ( 処分 ) 」を、大臣 ( 知 いて民間が行うものであって、正面から民祢社会復帰促進センター一一〇〇七年四月開 事 ) の指定を受けた民間の指定確認検査機 の 間機関が公権力の行使を行うものとしては始 ) も実施されるようになり ( 注 7 ) 、刑務 度関が行うことになった ( 注 3 ) 。このような 施設のような行政の古典的業務にまで、官 法状況下で、一一〇〇五年以降、耐震強度構造位置付けられてはいない。違反の摘発とい 民の協働が生まれていることは注目される う性格から、それを民間に委ねることへの 働 計算書偽装事件が起き、その中に、民間の 民指定確認検査機関による確認を得ていた建異論もありうるところであったが、駐車違ところである。 の実施方針が策定・公表された事 の築物が数多くみられたため、確認業務の民反の取締りのような業務には民間を活用 で し、警察はその人的資源をより中核の業務業は、これまで国の事業が六九事業、地方 間開放の是非についても議論を呼んだとこ 野 分 ろであった ( 注 4 ) 。 公共団体の事業が四一三事業、その他公共 に投入すべきであると考えることも可能で 務 公 あり、古典的な行政活動の代表である警察法人の事業が四五事業で計五一一七事業と広 二〇〇七年 5 二〇一五年の建築確認の申 報 月 く及んでおり三〇一六年五月現在 ) 、二 請先の推移をみると、二〇〇七年は申請件分野において、官と民の協働がなされた例 院 としてみることができよう ( 注 5 ) 。 〇一六年五月の「推進アク人 数 ( 計画変更を除く ) 四五三、三一〇件中、 3 0

4. 人事院月報 2016年10月号

二〇〇六年に、競争の導入による公共 市場化テストは、本来、同一の業務につい らえられるが、今後は、このような制度ツー サービスの改革に関する法律が制定され、 て、官が実施する場合と民が実施する場合 ルを用いながら、どの範囲まで民が担うの 官 ( 公 ) のやっている仕事を「市場化テス とを競争比較させ、より効率的な方に業務が適切か、あるいは、民が担う場合の民の ト」にかけることによって、公共サービス を委ねるというものであるため、その過程で、 活動の主導性、創意工夫・ノウハウの活用 の質の向上とコストの削減を目指す制度が官が自ら実施する場合についての公務の質など、効率性を高めるための制度の運用の 導入された ( 注リ。同法では、行政庁の民 ・量・効率性を明確に提示し、検証するこ在り方も工夫されるべきであろう。 間事業者に対する報告徴収・立入検査・質とになるという利点も存する。公務員がこ なお、今後の問題として、公務として将 問検査権、指示等の権限が定められ、他方れまで自ら行っていた業務について、様々な来的にも存続が必須の業務について、公務 では、民間事業者については、法律上に、 角度から客観的に評価・分析するとともに、 員以外の者に委ねた場合に、人的資源が将 契約に従って公共サービスを実施する義務提供すべき公共サービスのレベルを改めて来にわたって維持できるかという持続可能 が定められ、さらに、秘密保持義務を課し、 確認・設定していくことは、公務の改善の性の問題がある。このような見地からは、 みなし公務員の規定が置かれている。通常ために意義が大きいというべきであろう。 公務を担う人材の最低限の確保は意図的に の民間委託とは異なり、契約手法に加えて、 行っていく必要があり、民間委託を行う場 合にも、基本的ノウハウの維持に配慮して 公共サービスの適正・確実な実施とその実 4 公務分野での官民協働の課題 ~ 効性確保のために法律で権限を付与してい おくべきであろう。 わが国で、以上のように、行政が行って か る点で、わが国行政法の伝統的底流であっ また、公務の領域を民間に委ねた場合に、 いた個別業務について、個別法律によって、 点 観 た法律に基づく権力作用と契約主義とを 指定した民間機関に業務を開放したり、あ民間事業者の加害行為により国民が被害を の 度 ミックスする新しい手法がとられたものと るいは、一般的制度としての、指定管理者被った際の損害賠償責任の帰趨も問題とな 制 法理解することができよう。また、業務の遂制度、官民競争入札 ( 公共サービス改革法 ) る ( 注リ。わが国では、戦後、国家賠償法 働 行において行政が行使することが認められ等によって、民間に委ねる途を開いてきた。 が制定され、公務員の加害行為の被害者に 民ている「公権力の行使」についても、特定その際、単なる契約ではなく、法律に基づ 対しては、当該公務員自身ではなく、国・ の 公共サービスとして、法律に規定すること く監督、監視、民間業者への義務付け等の 公共団体が賠償責任を負うとされ、被害者 で 野 によって、契約上の受託者である民間業者様々な仕組みを設けることによる、いわば、 側は、相手の無資力のリスクなく、賠償金 分 務 が行使することが認められるため ( 注リ、 日本的な民間開放の進み方をみることがで を受けることができる。ところが、同様の 公 わが国の伝統的な「公権力の行使」型の行 きる。このような制度は、行政の業務・サー 公務を公務員自身ではなく、委託された民 報 政活動を民間との協働で行うための制度的 ビスを公務員のみに委ねるのではなく、民間が行った場合、あるいは、公務であった朗 工夫がなされている。 間も含め、・官と民の協働で担う姿としてと ものが民間開放され、民間事業者が行うよ人 5 0

5. 人事院月報 2016年10月号

地方事務局の今 東北事務局管内の紹介 5 東日本大震災からの復興をはじめとして 5 東北事務局長秋庭能久 当事務局は、全国に九ヶ所ある地方事務 仙台塩釜港は、我が国の国際拠点港湾一 局 ( 所 ) の一つとして、杜の都である宮城 八のうちの一つであり、東北唯一の拠点と 県仙台市に置かれ、東北六県 ( 青森、岩手、 なっている。港は四つの港区 ( 仙台港区、 宮城、秋田、山形、福島 ) を管轄している。 塩釜港区、石巻港区、松島港区 ) に分かれ その所掌は、管内における一般職国家公務 ており、この度、そのうちの仙台港区 ( 以 員の採用試験、人材確保活動、地方機関職下「仙台港」という。 ) を見学させていた 員を対象とする研修、民間給与実態調査、 だく機会を得た。 給与支給状況の監査、苦情相談、職員団体 この仙台港は、仙台湾に面して仙台市、 の登録などであり、公務員制度の適正な運多賀城市、七ケ浜町にまたがる大規模港で 営の確保を担っている。また、管内には、 あり、本年七月に昭和四六 ( 一九七一 ) 年傾斜、エプロンの沈下、クレーンレールの 約一万九千人 ( 対全国比約七 % ) の一般職 の開港から四五年を迎えたところである。 蛇行、基礎杭の一部損傷等の被害を受けた 国家公務員が様々な職場で働いており、平主な取扱貨物は、コンテナのほか、完成自 ほか、ガントリークレーンなどの荷役機械 成二三三〇一一 ) 年三月一一日の東日本動車、原油、天然ガス、飼料などであり、 も全て使用不能となってしまった。また、 大震災からの復興をはじめとする諸課題の これらの集積・輸送拠点となっている。 民間施設でも、大型貨物船が専用岸壁に乗 解決に努めているところである。 仙台港は、このように東北の物流を支え り上げて荷役機械を破壊するなど大きな被 本稿では、まず復興に関連する公務の現 る役割を担ってきたが、東日本大震災の際害を受けた。さらには、ふ頭に保管されて 場を紹介させていただき、続いて沿岸部の に太平洋沿岸の港と同様に未曾有の被害を いたコンテナ約四、四〇〇個や多数の完成 被災地の話題、最後に公務の規範となる史受けたところである。仙台港の地盤は約五自動車が津波により散乱・流出し、航路に きっすい 跡をそれぞれ紹介させていただきたい。 〇センチ沈下し、特に被害が大きかったの 沈んだものもあったため、通常の吃水での は、北米に就航する定期大型コンテナ船が 利用ができなくなったとのことである。 仙台塩釜港 利用していた高砂二号岸壁であり、護岸の 仙台港の整備、管理等を行う東北地方整 4 ナ テ ン 台 2016 10 月号人事院月報 30

6. 人事院月報 2016年10月号

郵便はがき 1 0 2 ー 8 7 9 0 2 0 2 料金受取人払郵便 麹町局承認 1003 ( 受取人 ) 東京都千代田区飯田橋 2 ー 1 5 ー 5 差出有効期間 平成四年 3 月 日経印刷株式会社 31 日まで 〔切手不要〕 愛読者カード係行 lll トト ll " 卍いⅢ フリガナ お名前 ご住所 TEL ご職業 男・女 亡メ館 1. 会社員 ( 業種 2. 団体勤務 ( 業種 3. 公務員 ( 国家・地方 ) 4. 教師 5. 自営業者 6. 学生 ( 小・中・高・大・専門・短大・その他 ) 7. 主婦 8. その他 ( ご勤務先または学校名 E メールアドレス メールによる新刊案内等をお送りいたします。ご希望されない場合は空欄のままで結構です。 今後の企画の参考およひ品に関するご案内に利用させていただきます。 当社での個人情報の取り扱いについてはホームページをご覧ください。 ( http: 〃 www.nik-prt.co.jp )

7. 人事院月報 2016年10月号

2 0 公務分野での官民協働 ついてもその担い手が公務員であるか否か報 5 法制度の観点から にかかわらず、多様なとらえ方が可能であ院 人 ることを前提に議論していく必要があろう。 号 月 上智大学法科大学院教授小幡純子 2 「公務」「公権力の行使」の民間開 放・官民協働 「公務」と「公務員」 価することが可能であろう。 ところで、筆者の専門である行政法の観 公務の世界で、公務員をスリム化し、民 本来、公務員が担うべき仕事は、その時 点からみると、公務の領域には、私人の同 間のできることは民に委ね、公務員は公務代・社会ごとに異なり、古典的には夜警国 意なくして権力的作用をなしうる権限 ( い 員でないと行えない真の公務に注力すべき家から福祉国家への移行は周知のところで わゆる「公権力の行使」 ) が法律で公務員 であるという行革の流れはかなり以前から あり、一般に、社会が複雑化し、高齢化社 に授権されている場合など、通常の民間の 進行しており、そのための様々な取組が行 会、環境問題への対処、予測される諸々の 活動領域にはみられない部分が中核に存す われてきたことは周知のところである。わ るため、公務領域の民間開放、あるいは官 災害〈の備え等、課題が増大する現代にお が国は、諸外国と比較し、必ずしも公務員 いては、「公務」といわれるものの範囲が 民協働については、法制度上の手当が必要 の数が多いとはいえず、むしろ少ない方に 拡大せざるを得ない状況にあるが、その場 な場合もしばしばみられた。これまで、建 入るにもかかわらず、公務員数削減の方向合にも、公務員が自ら仕事をかかえるか、 築確認の民間開放、違法駐車の民間委託等 への圧力は大きく、その結果、公務員の行民間が行う業務として制度を構築するか、 の個別法での対応のほか、、公共サー う仕事をできるだけ効率化していくととも あるいは、これまで民間が自由に行ってい ビス改革法、公の施設の指定管理者制度な 、民間委託、民営化等を進めていくこと た活動に新たに規制を行うか、多種多様な ど、基本的な官民協働のための法制度が が唱えられてきた。筆者は、これまで、行状況がみられる ( 注 2 ) 。そもそも、公益を 様々に用意され、行政法学上の重要な研究 政の減量効率化など、様々な場面で行革に 対象とされてきたところである。 追求する活動が公務であると概念づけたと しても、公益と私益という区別自体が、社 も取り組んできたが ( 注 1 ) 、人数が減らさ 建築確認の申請先は、民間の指定確認機 関が九割近くとなり、また、では、 会・環境の変化によって変化しうるもので れる公務員にとっては苦い改革になること 近時、法改正によりいわゆるコンセッショ は否めないとしても、鳥瞰するならば、従あり、公益法人・一般法人・ ZP* 〇法人・ ン方式の、公共施設等運営権という物権が ボランティアの方々をはじめとして、民間 来の公務の分野に民間の異質な新しい視点 新設され、新成長戦略の下、事業規模の拡 会社であっても、公益を追求する活動を行 が入り、官と民が協働していくこと自体は、 大を目指した取組がなされるなど、新しい 公務の活性化を導くものとして積極的に評 うことは可能である。したがって、公務に

8. 人事院月報 2016年10月号

「エキスパート」に思う ひろば やはり、長期間同じポストで仕事をしてい 「マスコミの人ってすぐ担当代わっちゃう 議員の在り方について「税制だけじゃだ る海外の交渉官に一日の長があるように感 よね・ : 」と残念がられるのは日常茶飯事だ。 め。政策全体や世界のことも勉強しないと じられたし、日本政府代表団の中でも比較 報道機関の中にも専門性の高い記者もい いけない」と語っていた。「エキスパート」 的長く携わっているメンバーからは海外の るし、個人的にも、一年担当したところよ の発言としてはやや意外とも取れる一方、 交渉官との人脈の太さが垣間見えた。 りは二年担当したところのほうが、情報が もっともでもある。幅広く学ぶことでこそ 筆者が公務員行政を担当していた年にま 自分の中に蓄積されている実感は強い。三 専門性が磨かれるということなのだろう。 とめられた人事院の年次報告書は、「在任年以上やればなおさらだろう。自分ももう 期間の長期化」の必要性を取り上げ、「少 少し同じポストを長く担当し、何らかの分 筆者自身、今後「エキスパート」の道を なくとも三年は異動させない方針をとるこ 野の「エキスパート」になれれば : ・との気歩むのか、はたまた「ゼネラリスト」にな と」などを提言している。なかなか今の日持ちを持っこともあるが、現在三〇代半ば るのかも分からない。そもそも自分の人事 本では海外の交渉官ほど長期間同じ問題に の筆者が現場の記者としてやっていけるの は自分では決められないことが大半だ。 一貫して携わることが難しいとは思う。現 は恐らくあと一〇年程度。それを考えると、 そんな中で今何をなすべきかを考える 状は「三年」も道半ばと言ったところだろ ある程度幅広い分野を経験することも重要と、その時その時で経験を糧にし、知識を なのか、と考えることもある。 積み上げていくことがやはり大切なのかも しれない。 くそ真面目のようにも当たり前 もっとも、筆者自身も「在任期間の長期 そんな時にふと思い出し、ある人物に取 のようにも思えるが、そんな積み重ねが 化」にはほど遠く、ある意味で行政マンと 材したメモを引っ張り出した。その人物は、 べースにあってこそ、「エキスパート」に 似たような状況にある。東京本社で新人時長きにわたって自民党税制調査会の「イン なるにせよ「ゼネラリスト」になるにせ 代を過ごし、地方支局で約三年、その後再ナー」と呼ばれる幹部を務めているべテラ よ、道が開けてくるのではないかという思 び東京本社に戻り五年余り。地方支局では ン国会議員。ご存じの通り、自民党税調の いを抱いている。 行政、、経済、事件、裁判など何でも一人で インナーは長期間税制に関わっていること やってきたため専門性を語るレベルには至 による専門知識と、複雑な利害を調整でき らず、東京に戻ってきてからは担当分野が る政治力を兼ね備えるまさに「税のエキス ほぼ一年ごとに代わっている。 パート」だ。 頻繁に担当が代わってしまうのは筆者だ このべテラン議員は、筆者が自民党税調 けでなく、他の同僚や同業他社の記者もお を担当していた当時から後進の指導に積極 おむね同様の傾向と言える。取材先から 的に取り組んでいたが、筆者に対し、若手 ( あいきよう・しんご ) 39 人事院月報 .8

9. 人事院月報 2016年10月号

地方事務局の今 ようなものであろうか。 れている状況を実感することができた。大 正中立、清廉潔白の精神、そして高い倫理 その大石には、次の四句十六字が刻まれ 観が求められる。また、国民と接する時に 震災から五年半が経過してもなお福島では ている。 は丁寧かっ謙虚であることが大事である。」 風評被害に苦しむ生産者の方々がいると聞 と話をさせていただいた。小職のったない話 いており、大変心が痛むところである。福 爾俸爾禄 が研修員の心にどれだけ深く刻まれたかは定島の今後の復興に向けても微力ながらカに 民膏民脂 かではない なりたいと思いを強くしたところである。 下民易虐 が、管内に 上天難欺 ある戒石銘国 て 解釈は、「お前 ( 武士 ) の俸給は、民が の存在が国 仙台に赴任してちょうど一年が過ぎよう し とあぶらして働いたたまものより得ているの 入民全体の奉としている。仙台は、気候もほど良く、美 じ である。お前は民に感謝し、いたわらなけ 味しい食べ物、お酒もあり、街と自然が融 鹹仕者として をればならない。 この気持ちを忘れて弱い民 本の自覚をも 合する都である。また、東北人の特徴とし 復達を虐げたりすると、きっと天罰があろう っための一 て語られることの多い実直さ、粘り強さな 丐ぞ。」とされている。 つのきっか どについても、こちらで縁あって知り合っ 災 けとなれば これは、五代藩主 ( 丹羽家七代 ) である た皆さんに共通して感じるところである。 たかひろ いわいださくひ 丹羽高寛が、藩儒学者の岩井田昨非を招へ 幸いである。 引き続き、管内で活躍する国家公務員はも 本 日 いし、綱紀の粛正、藩士教育等の藩政改革 また、二本松城の入口には、戊辰戦争に とより、被災地で活動する方々、地域経済 東 を推進するなかで、昨非の進言により、藩 おいて官軍と戦い命を落とした二本松少年 の発展に貢献されている方々などへの敬意 紹士の戒めとするために命じて刻ませたもの 隊の悲劇を伝える銅像があるほか、城の中 を胸に抱いて職務に当たりたい。 の 内 で、寛政二年 ( 一七四九年 ) に完成してい 腹には、落城の際に重臣が割腹自刃した場 管 局 る。なお、この戒石銘の起源は、中国にあ もある。その中には官軍との抗戦ではなく 務 事 るとされており、五代十国時代 ( 九〇七年恭順を主張していた家臣も含まれており、 5 九六〇年 ) まで遡るとのことである。 組織の要職にある者の責任の取り方、その 小職は、管内の各地方機関に新たに採用覚悟について考えさせられたところである。 された職員を対象とする研修 ( 新採用職員 なお、本年八月に一一本松市を訪れた際に 研修 ) において講話を行う機会を得た際に、 は、除染した土を詰め込んだフレコンパッ この戒石銘を紹介しつつ、「公務員には、公 クが野積みされており、まだ除染が行なわ ( あきば・よしひさ ) 33 人事院月報 8

10. 人事院月報 2016年10月号

苦情相談 ( 事案数 ) の府省別内訳 ( 常勤・非常勤 ) 平成 26 年度 平成 25 年度 項目 府省名 常勤 非常勤 常勤 非常勤 ム計検査院 人 事院 閣官房 内 内閣法制局 内 閣府 宮 内庁 公正取引委員会 警察庁 金融庁 消費者庁 復興庁 総務省 公害等調整委員会 消防庁 法務省 公安調査庁 外務省 財務省 国税庁 文部科学省 文化庁 厚生労働省 中央労働委員会 農林水産省 林野庁 水産庁 経済産業省 資源エネルギー庁 特許庁 中小企業庁 国土交通省 観光庁 気象庁 運輸安全委員会 海上保安庁 環境省 原子力規制庁 不 明 別表 平成 27 年度 常勤 非常勤 1 1 つ」 5 CO 1 CO つ」 4 4 CO つ」 1 「イ 1 8 6 ワ」 1 ワ」ワ」 1 ワ」 1 8 4 CO 1 5 1 つ」っ乙 1 1 つ」 8 8 3 1 1 1 8 4 8 1 2 148 7 107 2 つ」「イ 6 っ乙尸 0 8 1 1 CO 46 29 40 ワ」乙・つ」 1 3 1 1 33 85 31 23 83 28 35 73 っ乙幻 4 【 0 っ乙 4 つ」 8 CO 1 一 0 1 6 1 っ乙 6 4 4 つ」 4 ワ」 7 つ」 6 4 「 / つ」ワ」 6 CO 「イ 6 1 24 72 72 1 9 1 9 「 / CO 6 1 4 3 109 592 2 6 3 1 1 1 7 150 1 OO 499 ロ 苦情相談は、人事院公平審査局職員相談課 ( 電話 . 03 ー 3581 ー 3486 ) 又は各地方事 務局・沖縄事務所で受け付けています。 ( 電話、手紙、面談 ) 電子メールによる相談は、人事院ホームページ (http://www.jinji.go.jp/counseling/ index. htm) からアクセスすることができます。 25 94 66 576 1 14 計 2016 10 月号人事院月報 2 イ