論説と判例批評 たけだしようすえかわひろし 竹田省・末川博創刊 民商法雑三 第 146 巻第 6 号 ( 9 月号 ) 《論説》 A 5 判並製 , 、 1 4 。頁 ( 1 1 月上旬発売予定 ) 予価 1 , 950 円 ョーロッパ共通売買法規則提案ーー消費者保護のための正しい方向性か ( 二 ・シュテファン 《判例批評 , 判例紹介 , 労働・社会保障判例紹介 , 家事裁判例紹介ほか》 新聞・雑誌広告のご案内 ・ヴルプカ 小社の刊行物につきましては , 毎月の新刊書を中心として以下のような新聞および雑誌広 告を行っております。ご利用ください。 [ 新聞広告 ] * 朝日新聞毎月 2 日付朝刊 ( 但し 1 月・ 8 月は除く ) 第 2 面下の全 5 段で新刊をご案内。 * 毎日新聞毎月月末の朝刊第 1 面の 3 段 8 割で新刊書のご案内。 * 日本経済新聞毎月 2 回 , 朝刊第 1 面の 3 段 8 割で新刊書のご案内。毎月 27 日は 3 段 6 割 で雑誌「ジュリスト』最新号の内容紹介。 以上 3 紙のほか不定期で読売新聞に , また北海道新聞 , 中日新聞 , 西日本新聞のプロック 紙 , 東京新聞 , 静岡新聞 , 新潟日報 , 京都新聞 , 神戸新聞 , 山陽新聞 , 中国新聞 , 熊本日日 新聞 , 愛媛新聞等の地方紙にも 3 段 8 割で新刊書を紹介。 [ 雑誌広告 ] * 法律雑誌法律時報 , 法曹時報 , 法律のひろば , 法学セミナー , 受験新報 , 季刊労働法 ( 以上毎号 ) , 判例時報 ( 隔月 1 回 ) など。 * 経済雑誌経済セミナー ( 毎号 ) , ェコノミスト ( 毎月 1 回 ) , 週刊東洋経済 ( 2 月・ 9 月 除く毎月 1 回 ) , など。 9 ・ 27 ~ 87
つの事柄、すなわち①福祉国家のなか ナルミニマムを前提にすることで、 て今日焦点となっているのは、セーフ ティネットの議論であり、その意味内「セーフティネットのなかにも生存権の公的年金、②公的年金の下部構造、 容をめぐって争いが起きており、しかや社会権の考え方が取り入れられるべ③公的年金のパフォーマンス、という幻 もセーフティネットをナショナルミニ 問題を主題化することに固有の視点を窓 きーという著者の指摘は、法律学の観 点からしてもあらためて確認しておきおいている。そして、それらの主題を斎 マム的に読み替えていくことも可能だ さきに紹介した著者の福祉国家の理論 からである。つまり、双方の違いを認 たい点である。 的枠組みに依拠しながら検討が加えら 識した上で、ナショナルミニマムのな ク年金社会学 れることになる。たとえば、③のパフ かに含まれていた要素をセーフティネ オーマンスの問題については、「 ( 全 「年金社会学の構想」という章で ットの考え方に生かすことが、「政治 は、一一〇〇四年の年金改革について検体社会に対して ) 社会統合 / システム 的に正しい途なのだろう」というのが 討が加えられ、年金改革が必要になっ統合」、「 ( 資本制に対して ) 商品化 / 著者の立場なのである。 脱商品化ー「 ( 家父長制に対して ) ジ 確かに、家族や企業や地域社会が、 てきた背景と改革内容について詳しく エンダー化 / 脱ジェンダー化に分節 論じられている。ただしこの章では、 社会的安全網の構築にあたって一定の 化して考察することになるとしてい そのことを論じる前提として ( あるい 役割を果たしうるだろうことは間違い る。 ないし、そうした文脈を取り込むこと は論じていくための視点を得るため 以上のことは、著者自身が述べてい に ) 年金問題に対する社会学的アプロ についてセーフティネット論には適し ーチに関する検討がなされている。著るように未だ「暫定的な素描」の段階 ている面がある。しかしそれらの編み であり、今後に待たなければならない 目が粗く安全網としての役割を担えな者は、それを「年金社会学」と呼んで いこともある。それを不幸な出来事 いるのだが、評者にとってとりわけ興部分もかなりあるようである。だが、 ( 運・不運の問題 ) として済ましてし味深かったのは、この年金社会学の枠社会保障法学の観点から年金問題を考 えていく際、こうした年金社会学とい まうならば、それは権利ではなく恩恵組みについての議論である。 その内容について詳しく紹介する余う視点から得られるものは多々あるよ の問題となってしまだろう。最終的な うに思われる。たとえば、年金制度を 裕はないが、年金社会学では、次の三 責任を国家が引き受けるというナショ
化原理ーー一八ー一九世紀初頭学説の 管理職労働者の法的地位ーー日米独 の労働法における適用除外と特別規制 一断面ーー 若狭彰室 崔碩桓〈資料〉 に着目して り乙 一一〇一一年の国際司法裁判所裁判官 事業遂行者の責任規範と責任原理⑨ ( 発売元有斐閣 ) ーー使用者責任とその周辺問題に関す 選挙の結果について長嶺安政é 斎 る再検討ーーー 中原太郎 一一〇一一年の国際法委員会委員選挙 書 ( * 定価には消費税額が含まれています ) の結果について 三上正裕 〈判例研究〉 アジア・アフリカ法律諮問委員会 最高裁判所民事判例研究 ( 民集六四 法学協会雑誌第巻第 8 号 東京大学判例研究会 (< 0 0) の最近の動向ーー 巻八号 ) 〈論説〉 総会間活動および二〇一一年開催され ( 法学協会発行、定価四四〇〇円 ) グループ企業の規制方法に関する一 た第五〇回年次総会を中心として 考察田 加藤貴仁 石垣泰司 管理職労働者の法的地位ーー日米独 國際法外交雑誌第Ⅲ巻第 1 号 の労働法における適用除外と特別規制 〈紹介〉 〈論説〉 山内惟介著『比較法研究第一巻 に着目して田 崔碩桓 O における科学の役割ーー 協定の限界と近年の体制内の変化 方法論と法文化』 ( 日本比較法研究 民事控訴審の構造に関する一考察 所研究叢書七九 ) 佐藤やよひ ドイツと日本における 内記香子 ( 国際法学会発行、定価一一五〇〇円 ) 控訴審の誕生と展開を追って 国連安全保障理事会における立憲主 佐瀬裕史 義の可能性と課題ーー国際テロリズ ムに関する実行を素材として 社会経済史学第巻第 2 号 〈判例研究〉 丸山政己〈論説〉 最高裁判所民事判例研究 ( 民集六〇 産業組合による生産・流通過程の統 巻六号 ) 東京大学判例研究会国際経済法における規範構造の特質 制ーー、無限責任竹館林檎生産購買販売 とその動態ーー立憲化概念による把 ( 法学協会発行、定価三八〇〇円 ) 信用組合の事例 握の試み 白井泉 伊藤一頼 ハンプルクの陸上貿易一六三〇 5 一 〈研究ノート〉 法学協会雑誌第巻第 9 号 八〇六年ーー内陸とバルト海地方へ 軍縮分野における多数国間条約の交 〈論説〉 の商品流通 菊池雄太 渉枠組みについて 福井康人 グループ企業の規制方法に関する一 創業期の横浜正金銀行ーーー貿易金融 加藤貴仁「戦争が条約に及ぼす効果ーの正当 考察 * 学会誌紹介 *
数学する , 科学する力を育てる ふじむらのぶゆき 藤村宣之著 東京大学教授 ( 1 2 月上旬発売予定 ) 数学的・科学的リテラシーの心 A 5 判並製カバー付 250 頁 予価 2 , 940 円 子どもの学力はどラ高まるか 978 ー 4 ー 641 ー 17388 ー 0 P 旧 A 調査 , TIMSS 調査 , 全国学力・学習状況調査 , 独自の国際比較研究などから見えてき た , 日本の子どもたちの数学的リテラシーと科学的リテラシーの実態とは。リテラシーの育 成に関する協同的探究学習を用いた実践研究も紹介。発達と学習に関心をもつ多様な層に 主 よ 目 次 第 1 章教育心理学の視点からリテラシーを考える 第 I 部リテラシーの現状と学力モデル 第 2 章数学的リテラシーの現状 : 国際比較調査の心理学的分析 第 3 章科学的リテラシー・読解力の現状 : 国際比較調査の心理学的分析 第 4 章学力の心理学的モデル 第Ⅱ部数学的リテラシーの国際比較 第 5 章数学的リテラシーの国際比較 I : 中国 , アメリカ合衆国と日本 第 6 章数学的リテラシーの国際比較Ⅱ : シンガポール , 中国と日本 第Ⅲ部数学的・科学的リテラシーの育成 第 7 章「わかる学力」としてのリテラシーを高めるには : 協同的探究学習の提案 第 8 章数学的リテラシーを高めるには I : 小学校算数における協同的探究学習 第 9 章数学的リテラシーを高めるにはⅡ : 中学校数学における協同的探究学習 第 10 章科学的リテラシーを高めるには : 中学校理科における協同的探究学習 第 1 1 章数学的・科学的リテラシーの育成とこれからの日本の教育 ①有斐閣アルマ旧 te 「 est しらいとしあきつづきまなぶもり ( 1 1 月下旬発売予定 ) 白井利明・都筑学・森陽子著 大阪教育大学教授・中央大学教授・大学非常勤講師 四六判並製カノヾー付 やさしい青年心理学新版 270 頁 予価 1 , 995 円 978 ー 4-641 ー 12481 ー 3 青年を取り巻く環境・状況から心理的諸問題 , さらに青年を理解するための方法まで , 青年 心理学の基礎知識をわかりやすく紹介。旧版刊行以来の新しい動向をふまえて , 内容を刷新。 「変わらない」「社会の影響を受ける」「社会をつくる」一一青年の本質に迫る入門書。 第 1 章 主 な 目第 2 章 次 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 85 青年期へのアプローチ 自己形成のすじみち 認知の発達 家族のなかの青年 学校のなかの青年 地域に育まれる青年 第 7 章 第 8 章 第 9 章 第 10 章 第 11 章 第 12 章 就職と労働 青年期と非行 ひきこもる青年とその対応 青年期と性 歴史のなかの青年 青年を理解する方法
書斎の窓 No. 619 2012 年 1 1 月号 《目次》 ・ : 野家啓一表Ⅱ 東北の地から⑦「リスク社会」を生きる 鉄道と刑法②最初の列車内殺人事件と最新の最高裁判例・ : 和田俊憲 リレー連載・国際法 ・ : 濵本正太郎 われわれは国際法の教科書をいつまで書き続けるのか ・ : 真渕勝 公共政策を考える②時間のなかの公共政策・ 日本の境界 ( 国境 ) 地域から「市民社会」を考える : ・古川浩司 経済史研究の「むかし」「いまー「これから」 ・ : 杉山伸也 ーー社会経済史学会編「社会経済史学の課題と展望」の刊行によせて 不思議の国の社会調査④ 質的調査・量的調査 / 定性的調査・定量的調査 ・ : 佐藤郁哉 アー下 & サイエンスとしての社会調査 中国を歩く、世界をみる⑨お酒の工場には隠し事がある・ : 丸川知雄 ・ : 益田仁 非正規雇用で働く若者たちと希望 : ・ カナダのアラセプンレポート⑤完 : ・ : 関口礼子 ・ : 佐々木憲一 考古学と社会⑨旧石器時代遺跡捏造事件について 児童文学の宗教的ロジック⑦心の秘儀と迷宮 中村圭志 ミヒャエル・エンデ「モモ 【書評】武石彰・青島矢一・軽部大〔著〕 ・ : 金井壽宏 『イノベーションの理由ーーー資源動員の創造的正当化』 【書評】武川正吾〔著〕 ・ : 秋元美世 『政策志向の社会学ーー福祉国家と市民社会』 学会誌紹介・ : 編集室の窓 : 新刊案内 ( 月 ) : ・巻末 〔表紙〕デザイン神田程史 57 52 42 37
まや七〇〇〇人の従業員を抱え、年間 酸化炭素を液体のなかに封じ込めて逃あって、ビールの泡をだすためではあ 三〇万トンの白酒を生産する能力を持 かさないようにする技術とはどういう りませんーと丁寧に訂正してくださっ っている ( 写真 1 ) 。ちなみに、日本の ものなのだろうか。ある日本のビール スリランカでビール工場を見学した主要洋酒メーカーを網羅している日本é 工場を見学したとき、案内の女性が ときは、運転手が工場の門番にチップ洋酒酒造組合のメンバーが一一〇一一年書 「最後に二酸化炭素を吹き込みますー に出荷したウイスキーは総計七九八七 と説明したので、「やつばり泡を出すを渡して裏口から入ったので、工場の ために二酸化炭素を補強しているんで舞台裏もかいま見ることができた。ス万リットルだった。ウイスキーの比重 リランカ有数のメーカーだけあって自を〇・九とすると、これはだいたい七 すかーと私が尋ねたら、「缶とビール の間の隙間に入れて酸化を防ぐためで動化された工場だったが、最後の瓶詰万一一〇〇〇トンに相当する。つまり、 で め工程のところで時々爆音がしてガラ中国四川省の田舎にあるこの一社だけ れ で日本のウイスキー出荷量の四倍以上 スビンが飛び散る。ビンの中に二酸化 の白酒を作る能力を持っている。中国 炭素を吹き込むので、ビンに傷があっ ン タる の白酒消費のすさまじさが想像できる たりすると、内側からの圧力に耐えら をま ~ 。〕蔵き ゞ」ろ , っ のが れず爆発するのだという。なるほどビ 穀物を土に埋める場面はこの会社の ンをきちんと検査することの重要性が 白せ ホームページなどでも紹介されている よくわかったが、日本のビール工場で のわ 階酔最初にビンの検査を入念に行うのもやので、もう秘密ではないのかもしれな いが、中国の白酒メーカーにはまだま はり最後にスリランカのビール工場と 国百 だ隠し事がある。最大の隠し事は酒の 中国の白酒に話を戻すと、冒頭で紹値段である。ウイスキーにしてもワイ 真 写 ンにしても、大まかに言って値段は希 介した工場はその後大発展を遂げ、い
する一連の著書があり、本書もその一 めぐって、社会保障法学の規範的な視味づけである。 ca —は、まだどこにも存在しないと冊を構成している。実はこのシリーズ 点と経済的合理性の視点とが対立する いう意味ではユートピアである。他方に属する本には、共通して「福祉国家 ようなとき、年金社会学はその状況を と市民社会」という副題が付されてい で現実の社会保障に関する改革はピー 読み解くための有益な視点を提供して ルとなりがちである ( あるい る。副題としてそうした表現を使い続 くれるだろう。あるいは、そうした対 けている理由について、著者は、「 ( そ 立を評価しようとするとき、年金社会は、そうならざるを得ない ) 。だが、 れが ) 一九八〇年代半ば以降、現在に 学が提供することになるであろう実証現実の動きがピースミールだからとい って、政策に関する思考もピース いたるまでの私の研究関心をいちばん 的な知見の有する意味は大きいように 思う。 ルであるべきだとい , っことにはならな よく表していると思われるからであ 、 0 0 ルの改革を進めるため るー ( はしがき ) と述べている。 クベーシック・インカム こうした「福祉国家と市民社会」と にこそ、それらを方向づけるためのユ ートピアの思考が必要なのである。っ いうタイトル設定に見られるような視 べーシック・インカム (m—) を論 野の広さは、「ピースミーレとユ じた章では、をめぐって議論されまり、の構想に関する議論が、 ていることが、包括的に、そして適切「社会保障制度の抱える諸問題を照射ピア」の議論に見られる奥行きの深さ ルの改革に対すと相俟って、本書を社会学以外の領域 し、現在のピースミー かっ平易に紹介されている。でど の者にも近づきやすく、また得るとこ る評価の基準を提供するもの」となる のようなことが問題にされているのか ろの多い一書にしている。社会学ばか というのが著者の捉え方なのである。 を、とりあえず知りたいというのであ りではなく、福祉国家と福祉社会にか れば、まず本書のこの章を読むことを構想について検討を行う際、踏ま かわる諸問題に関心を有する様々な領 おすすめする。ただし、評者の個人的えておきたい観点だと思う。 域の人におすすめしたい。 な関心を引いたのはその点ではなく、 クおわりに ( あきもと・みよ東洋大学社会学部教授 ) 窓 ミールとユートヒ 本章の副題 ( ピース の 斎 冒頭で触れておいたように、著者に アの弁証法 ) として示されているよう 書 な、著者によるに関する議論の意は専門的な研究書とは多少系統を異に
# 書評 武川正吾 [ 著 ] 政策志向 の 社会学経お『政策志向の社会学 気川正翦 ーーー福祉国家と市民社会』 ( 有斐閣 , 2012 年 6 月刊 ) 四六判 354 頁 3465 円 ( 税込 ) にも読んでもらいたいと思い、また、 世 クはじめに 研究者以外の読者にも読んでもらいた いと思ったからである」 ( はしがき ) 。 美本書は、社会学と公共政策との関連 社会福祉や社会保障に関する制度や について、著者が二〇〇〇年代の半ば 以降に執筆した一三の論文を一書にま政策の法学研究を守備範囲としている 元 とめたものである。現在までに著者が評者が、そのタイトルに「社会学」の 火刊行した著書の中には、専門的研究に文字が入 0 ている本書の書評を引き受 特化したいわゆる専門書とは多少系統けたのも、「社会学者以外の研究者に も読んでもらいたい」という著者の言 を異にするタイプのものが存在する 葉があったからである。 ( 『福祉国家と市民社会』一九九一一年、 『福祉社会の社会政策』一九九九年、 ク本書の構成 『地域福祉の主流化』一一〇〇六年 ) 。本 本書の章立てを紹介すれば以下の通 書もそうしたタイプに属する一書であ る。 りである。 著者は、こうしたタイプの本につい 第 1 章公共政策における社会学ー て次のような位置づけを与えている。 ー公共社会学のために、第 2 章一一 「日本の小説の分類で『中間小説』と 一世紀型の社会政策ーー一一〇世紀的 いう言い方がある。純文学と大衆文学 前提を問う、第 3 章福祉社会のガ の中間に位置する小説といった意味で バナンスーーー多元主義とレジーム、 ある。私は、本書にいたる一連のシリ 第 4 章セーフティネットかナショ窓 ーズで、専門書と一般書の中間をねら ナルミニマムか 社会政策の理斎 った。社会政策は学際的な領域である 念、第 5 章生活保障システムの危 から、本書を、社会学者以外の研究者
なってきている。たとえば、あるオン調査法を並べてみるやり方である。事上げられる調査報告書の文体が基準と ライン書店で検索してみたところ、質例研究、ライフヒストリー分析、イン なっている場合もある。つまり、特定 的研究に関するキーワードをタイトル フォーマルなインタビュー、現場調査、 の調査技法や主として用いられるデー や副題に含む書籍は一〇〇点以上にの フィールドワーク : : : と技法の名前をタの種類だけでなく、調査報告書が ばっていた。 並べ立ててみると、その場は一応納得「科学論文ーというよりは、むしろ全 ところが、困ったことには、それらのしてもらえる。もっとも、こういう定体として小説や物語のような性格を持 本にあたってみても、肝心の「質的調義の仕方だと、色々と不都合な面も出っ文章になっているものを質的調査と 査ーあるいは「質的研究」という一一 = ロ葉自てくる。たとえば、これらの調査法で呼ぶことも多いのである。 体に関する明快な定義をなかなか見つ は数値データを扱うことも多い。 最大公約数的な定義 データの種類ということであれば、 けることができない。これは、かなり奇 妙であり、また不思議なことでもある。 「量的データ」 ( 数値中心のデータ ) と そこで、授業では、左にあげるよう 「質的データ」 ( 文字や画像など数値化 な、調査技法、データ、文体という三 定義の難しさ が困難ないし余り意味を持たないデー つの要素を入れ込んだ、言うなれば最 本務校では主として調査法の講義をタ ) の区別は比較的容易につけられる。大公約数的な定義を紹介して済ませる 担当しているのだが、用語の定義があしかし、研究全体の性格を包括的に定ことも多い。 いまいなままでは、解説を進める上で義する名称としての「質的調査」の意 不便なことも多い。受講生たちも納得味内容を明確に定義するのは、それほ 主にインフォーマル・インタビュ してくれない。そこで、これまで色々 ど容易なことではない。 や参与観察あるいは文書資料や歴史 な定義の仕方を試してみた。 実際、質的調査というと、主として 資料の検討などを通して、文字テキ窓 まず思いついたのは外延的な定義法、扱われるデータのタイプだけでなく、 ストや文章が中心となっているデー斎 書 つまり、通常質的な技法とされているそれらのデータを使って最終的に書き タを集め、その結果の報告に際して
ナショナルミニマムであった。だが今 な変容をこうむり、どのような問題が は、まさにそうした前提である。つま 生じているのか、また、かかる問題を日ではそれに代わってセーフティネッ り、二一世紀型福祉国家においては、 トが言及されることが多くなってい それらの前提が成り立たなくなっておどのような方向で解決すべきか ( 換一一 = 〕 る。著者によれば、これはグロー すれば、生産レジーム・再生産レジー り、それらにかえて、脱ジェンダー 化、雇用 ( 賃労働 ) の相対化、環境政ムの変化にどのように適応していくべ化などの社会・経済的な環境の変化を きか ) 、といったことに関する議論が受けた福祉国家レジームの転換の帰結 ヾル化とローカ 策の必要性、グロー ル・ジャスティスといったことに応答展開されている。結論部分のみを示せだという。ポスト国民国家的な位置に ば、生産レジーム・再生産レジームのある新しいレジームでは、国民や国家 していく必要があるというのである ( 第 2 章 ) 。そして二一世紀型の福祉国変化の中で求められていることは、社を前提にしないセーフティネットの方 家のありようを考えていくために、著会的包摂と個人化であり、二一世紀のが据わりがよい。実際、ナショナルミ ニマムでは国家責任や国家の義務とい 社会政策はそれらをいかに現実のもの 者が提示しているのが、国家目標 ( こ う考え方が前面に出てくるが、セーフ として構築していくかが問われている こで焦点となるのは福祉政治の問題 ) 、 ティネットでは必すしもそうではない 給付国家 ( 再分配構造 ) 、規制国家というものである。ただし言うまでも し、民間部門もまたセーフティネット 問われるべき主要な論点は結論 ( 規制構造 ) という福祉国家の三つの 側面と、「資本制」 ( 生産レジームの問そのものよりも、その結論にいたる過の担い手となりうるのである。そもそ 程の方にある。残念ながらここでそれもセーフティネットの意味は、「無制 題 ) と「家父長制ー ( 再生産レジーム 限な ( あるいは可能な限り制約のな 実際に本書に の問題 ) という福祉国家を位置づけるを紹介する余裕はない。 い ) 競争を前提に、そこから脱落した 目を通して、ぜひその過程を確かめて 二つのコンテクストを踏まえて構成さ 者に限って完全を保証するーという点 れる福祉国家研究のフレームワークでみて欲しい。 にあることを忘れるべきではない。 ある ( 第 5 章 ) 。 彡セーフティネットか ただし、著者は他方で、両者の違い窓 本書の総論部分にあたるいくつかの ナショナルミニマムか を強調するだけにとどまるべきではな斎 章では、こうした理論的枠組みに基づ 、とも指摘している。現実問題とし かっては、福祉国家の理念と言えば いて、日本の福祉レジームがどのよう