〔連載〕公共政策を考える 空間のなかの公共政策 である。しかし、そのうち北海道、岩 地方自治体のなかには東京に出張所、 自治体の東京事務所 手県、山口県および福岡県は同会館に いわゆる東京事務所をおいているとこ 都道府県の東京事務所について興味「分室」を持っている。都道府県会館 ろがある。四七都道府県および二〇政 令指定都市はすべて東京事務所をもっ深いのは、その大部分が都道府県会館にまったく活動拠点を持たないのは広 に入居していることである。都道府県島県だけである ( これ自体興味深い事 ており、中核市や特例市、さらには一 会館は、国会議事堂の間近にあり、地象であるが、その意味するところは現 般市や町のなかにも東京事務所をもっ 在は不明である ) 。都道府県は一県を 下鉄でいえば、有楽町線、半蔵門線、 ているところがある。 筆者はかってある教科書に、東京都南北線の「永田町駅ーから地下通路を除いて、都道府県会館という一つの 「空間」に出張所を構えているのであ のお隣の神奈川県や横浜市ですら東京使って徒歩一分という便利なところに 事務所をもっていると書いたことがあある。この立地の良さは、同会館がそ これは一体何を意味するであろう る。しかし、その後、実は東京都ですの役割の一つとして掲げている「東京 窓 、かワ・ ら東京事務所を構えていることを偶然における地方自治の拠点」に物理的な 自治体の東京事務所についての研究斎 根拠を与えている。同会館とは別の場 に知り、衝撃を受けた。 所にオフィスを構えているのは五道県は皆無であるが、一般的なイメージは、 真渕勝 第 3 回
日本の中央地方関係の中央集権性を象 第一一についていえば、東京都庁と霞的な配置とは言えないのである。 徴する存在ということである。すなわヶ関との距離は、地下鉄の駅と駅の間 空間と学習 ち、東京事務所は、地方自治体が中央 だけで言えば、一一〇分余りであるから、 省庁に陳情する際の拠点として、ある陳情のためにであれ、呼びつけに応じ 自治体間の「横並び競争」という現窓 いは中央省庁が自治体職員を呼びつけ るためであれ、都庁舎から職員はすぐ 象は、これまで行政学において頻繁に斎 て各種の指導を行うのに便利であると に行くことができる。東京事務所をわ指摘されており、最近ではより広く政 いう理由から置かれていると理解されざわざ開設する必要はない。 賃料も決治学において「政策波及ーという文脈 てきた。 して安くはないはずである。 の中で言及されるようになっている。 しかし、この理解では、第一に都道 とするならば、東京事務所を、中央ある政治体 ( ( 国や自治体 ) が、ライ 府県会館に集中していることを説明し から地方であれ、地方から中央であれ、 バルあるいは目標と見なしている政治 にくく、第二に東京都ですら都道府県垂直的な意思疎通のための拠点とだけ体から政策を学び、導入する、あるい 会館に東京事務所を構えていることは見るのは、かなり無理があると言わざはよく考えもせずにとりあえず模倣す 説明できない。 るをえない。むしろ、都道府県の間の るという現象を記述する概念である。 第一の点についていえば、中央省庁水平的意思疎通のために存在している 日本国内に散らばっている地方自治体 ( 霞ヶ関 ) が都道府県を低いコストでと見るべきではないだろうか。 が東京都内に出張所を構えているとい 「支配」するために東京事務所を開設 ところが、政令指定都市に目を転じ う「空間ー配置は、これと何らかの関 させているのであれば、分割統治ると事情が異なる。二〇ある政令指定係があるのであろうが、その意味する (divide and conquer) する方がよ都市の場合、九市は日本都市センター ところは未知数である。とくに、都道 いはずであり、事務所は分散させなけ にオフィスを構えているが、それ以外府県と政令指定都市とでは東京事務所 ればならない。さもなくば地方は意思 は市政会館や全国都市会館などに事務の「空間」的な配置が異なることは、 統一して中央に刃向かうこともある危所をおくなど、相当に分散している。 多いに興味が持たれる。 険極まりない存在になるからである。 水平的な意思疎通にとってあまり効率
法である」と主張したが、大審院は浜・国府津方面行き列車の東京市内最 「被害額の算定は控訴院の職権である後の駅は大森駅である。そこで、窃取 からそれを非難しても上告理由にはな の時点までに新橋駅ー大森駅間の価値 が費消され、乗車券に残されていたの らない」として上告を棄却している は大森駅ー彦根駅間の旅客輸送の価値 ( 大審院明治三七年一月二九日判決・ 大審院刑事判決録一〇輯一〇七頁 ) 。 であると考えてみる。当時の同区間の 運賃は資料がなく不明であるので、次 金乗車券の価値の費消 のような計算をしてみよう。 新橋駅ー彦根駅間は、まだ丹那トン 大審院によって上告理由としては排 斥されているものの、弁護人の主張のネルが開通していない当時の経路と同 、津 沼 ように乗車券の価値は購入額のまま維じく御殿場線 ( 国府津駅ー御殿場駅ー 沼津駅 ) 経由で計算すると、現在の営 持されるのではなく事後的に減少する ものと解し、本件の乗車券の価値が窃業キロは四六一・七であり、そのう 常の窃盗罪で起訴され、東京地裁の判 決を経て東京控訴院は同罪の成立を認取の時点で一六銭を超えて費消されてち新橋駅ー大森駅間は九・五、大森 いると考えられれば、被害額は五円未駅ー彦根駅間は四五一一・一篇である。 めたため、被告人が上告した。 弁護人は「鉄道乗車券の価格は爾後満であり、通常の窃盗罪ではなく建造この距離の比で乗車券代三円三八銭を において常にその支払額と同一である物外軽窃盗罪で処罰すべきであると解按分すると、新橋駅ー大森駅間の価格 は約七銭、大森駅ー彦根駅間は約三円似 わけではないのに、控訴院判決は支払する余地も生ずる。 本件の一審裁判所は東京地裁である三一銭となる。 った運賃額をもって窃取の時点におけ 窓 そうすると、費消されずに残されて斎 る乗車券の価格と認定しその理由を証から、被告人が逮捕されたのは東京市 書 ( た乗車券の価値三円三一銭に被害現 これは違内であったとしよう。当時の新橋発横 拠によって明示していない。 森 一品川 御殿場 国府津 丹那トンネル
小説募集 0 第 8 回 文学賞 H ー YO 0 A 3 U G A K U 5 H 0 0 0 ■■ ■置第 ーデ大賞 1 編 200 万円 ーぐ予定 【募集作品】日本語で書かれた未発表小説 テーマ・ジャンルは不問。千代田区縁の人物 や区内の名所・旧跡、歴史などを題材にした 作品を歓迎します。 ( ただし、このことの有無が 選考の基準とはなりません ) 【応募資格】年齢・住所・職業は問いません 【原稿枚数】 A4 サイズの用紙に 40 字 X40 行 ( 縦書き ) で 印字し、 30 枚以内 【選考委員】作家 : 逢坂剛氏・唯川恵氏・堀江敏幸氏 【お問合せ】〒 102-8688 千代田区九段南 1-2-1 千代田区文化スポーツ課「ちょだ文学賞」係 電話 03-5211-3628 ※詳細は区ホームページ・募集要項でご確認ください 主催 / 千代田区共催 / 読売新聞社後援 / 小学館 協力 / 三省堂書店・東京都書店商業組合千代田支部 神田古書店連盟。東京堂書店。 ( 社 ) 日本書籍出版協会 本の街神保町を元気にする会 応募締切 平成 25 年 4 月 30 日 千代田区 80
ジュリスト増刊 みきこういちゃまもとかずひこ 三木浩一・山本和彦編 慶應義塾大学教授・一橋大学教授 B 5 判並製 ( 1 2 月中旬発売予定 ) 民事訴訟法の改正課題 264 頁 予価 3 , 000 円 978 ー 4-641 ー 1 1399 ー 2 現行法施行から 15 年が経ち , 改正への気運が高まっている。本書は , 研究者・実務家が 2 り , 具体的立法提案を通じ , 現行法の解釈・運用上の問題点を考察する上でも責重な文献 ! 年にわたって討議を重ねてきた「民事訴訟法改正研究会」での研究成果をまとめるものであ 主 目 次 I 改正提案編 ( 計 26 項目 ) 事実の主張に関する規律 事案解明協力義務 必要的共同訴訟 共同訴訟的補助参加 独立当事者参加 ( 権利主張参加 ) 独立当事者参加 ( 詐害防止参加 ) 訴訟脱退 訴訟承継 ( 参加承継・引受承継 ) 早期開示制度 法的観点指摘義務 釈明義務 争点整理手続終了後の失権効 当事者照会 電話会議システムによる双方不出頭の期日にお Ⅱ ける手続 陳述書 文書提出義務 文書特定手続 証言録取制度 秘密保持命令 控訴審の規律 通常抗告の即時抗告への一本化 抗告状の写しの相手方等への送付 再審事由の明文化 第三者再審制度の導入 司法妨害に対する制裁 第三者情報提供制度 座談会編 座談会一一民事訴訟法の改正提案をめぐって 別冊ジュリスト 213 号 ひぐちのりおかきしまよし 樋口範雄・柿嶋美子・浅香吉幹・岩田太編 いわたふとし あさかきちもと 東京大学教授・東京大学教授・東京大学教授・上智大学教授 ( 1 2 月下旬発売予定 ) B 5 判並製 アメリカ法判例百選 272 頁 予価 2 , 730 円 978-4-641-1 1 513 ー 2 アメリカ法の特徴・面白さがわかる著名な判例を紹介する。事案と判旨をできるだけ詳しく して読者が考えるための素材を提供することに重点を置いた「英米判例百選」の特徴を引き 継ぎつつ , アメリカ法中心に再編して講義での利用の便をはかった。 主 目 次 I 公法 (1) 統治構造 ②連邦制 ( 3 ) 人権の保護 Ⅱ Ⅱ Ⅳ V Ⅵ Ⅵ 刑事法 裁判過程 不法行為法 契約法 財産法・信託法 ビジネス法 [ 計 124 件 ]
金は楽しく使いたいものだからである。 大部屋主義と個室主義にはそれぞれ ー }-- 技術と空間 生産は地方でも可能であるが、消費は 一長一短ある。大部屋主義では電話機 は少なくて済むし、隣の人から仕事の 物理的な空間のもつ意味は、の都市でしかできないこともあるのだ。 発展と活用によって希釈されると言わ物理的な空間の配置が、によって仕方を学ぶことができるが、人間関係 れたことがある。が発展すれば、 変えられるほど簡単ではない、一筋縄での煩わしさはある。個室主義では仕 人里離れた地方でも起業でき、成長さではいかない次元であると考えられる事に集中しやすいが、サポりやすいと ころもある。日本において、いっから、 せることができると主張されたりもし理由の一つである。 話は脇にそれてしまったが、自治体そしてなぜ大部屋主義が採用されてい た。その通りであるという感想と、そ うではないという感想とが筆者には同が東京事務所を撤収する動きが見られるのかは寡聞にして知らないが、時代 居している。後者の感想の原因は、成ないのは、の発展では解消できな 劇では、城詰めの武士たちが机を並べ い任務を帯びているからではないかとて仕事をしているのが普通であるから、 功を収めている企業の経営者たち 思われる。 随分と歴史があるのであろう。 が六本木ヒルズを代表とする東京都心 行政学者の大森彌が指摘しているよ にオフィスを構え、自宅を構えている 大部屋主義 うに、職場のレイアウトは仕事の分担 ことである。人はその理由を、対面し 日本における執務形態を特徴付ける の仕方と連動している。大部屋主義で ての意思疎通が重要であるからだと説 明する。それも確かにあるだろうが、 ものとして大部屋主義というものがあ は、机を並べている区画のなかでの各 口実にも聞こえる。 る。、役所であろうと民間企業であろう職員の職務分担は曖昧であり、相互に 収穫逓増産業である ( つまり、勝者と、幹部クラスを別にすれば、大勢の助け合うこともあるが、個室主義では〃 総取りの産業である ) 産業で成功職員が一つの場所で机を並べて仕事を各職員の職務分担は職務記述書などに 窓 している。欧米ではルーティンの業務よって明確に示されている。 を収めれば、巨万の富を手にできる。 職場のレイアウト、すなわち「空間」斎 それを有意義に消費するためには「人を行っている職員ですら個室を与えら の区切り方は、職員の能力の生かし方、 れていることと対照的である。 里離れた地方ーは選択肢には入らない。
有斐閣 S シリーズ おおこしよしひさ 大越義久著 東京大学教授 刑法総一 旧版刊行後の法改正や重要判例に対応すると共に , 共犯と身分に関する記述を見直した。 に理論的な基礎を置き , 細かい議論に立ち入らず , 大きな筋道を追いながら読み進められる。 コンバクトテキストとして定評のある S シリーズ刑法総論が 5 年ぶりに改訂。結果無価値論 四六判並製カ / ヾー付 262 頁 刪第 5 を ・ 1 , 785 円 978-4-641 ー 15941 ー 9 ( 1 2 月上旬発売予定 ) 第 1 章 主 な 目第 2 章 次 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 刑法を勉強する前に 刑法とは何か 刑法の任務は何か 犯罪とは何か 構成要件該当性 違法性 第 7 章 第 8 章 第 9 章 第 10 章 第 11 章 第 12 章 有責性 未遂 正犯と共犯 罪数 刑法の適用範囲 刑法改正について ( 1 2 月上旬発売予定 ) 有斐閣 S シリーズ おおこしよしひさ 大越義久著 東京大学教授 刑法各 = 四六判並製カノヾー付 256 頁 刪第 4 版 ・ 1 , 995 円 978 ー 4 ー 641 ー 15942-6 刊行後の重要判例を補充するとともに , 平成 23 年の刑法改正までに対応。 法各論について , 総論同様 , 筋道を追って読めるように工夫されている。第 4 版では , 旧版 コンパクトなテキスト・ S シリーズ刑法各論の 5 年ぶりの改訂版。多岐多様な論点のある刑 な 次 はじめに 第 1 部個人法益に対する罪 第 1 章生命・身体に対する罪 第 2 章自由に対する罪 第 3 章名誉に対する罪 第 4 章財産に対する罪 第 2 部社会法益に対する罪 第 1 章公共危険罪 63 第 2 章偽造の罪 第 3 章賭博・富くじに関する罪 第 4 章公衆の感情に対する罪 第 3 部国家法益に対する罪 第 1 章国家の存立を危険にする罪 第 2 章国家の作用を侵害する罪 第 3 章我が国の外交作用を侵害する罪
0 有斐閣アルマ旧 te 「 est たなかこうじつるだせいじはしもとみほふじむらのぶゆき 田中耕治・鶴田清司・橋本美保・藤村宣之著 京都大学教授・都留文科大学教授・東京学芸大学教授・東京大学教授 四六判並製カバー付 新しい時代の教育方法 3 1 0 頁 予価 1 , 890 円 978 ー 4 ー 641 ー 12479 ー 0 教職課程「教育の方法及び技術」に対応した , 新しい時代におけるスタンダードテキスト。 教育方法の歴史と理論を体系的に概観できるよう , わかりやすくコンバクトにまとめ , 実際 の教育実践においてどのように生かしてゆくのかを考えていく力の育成までを視野に入れた。 全序章今なぜ , 教育方法の学なのか 標・内容論 学習とは何かー一学習論 な第 I 部教育方法の歴史と展望 第 5 章 目 学力をどう高めるかーー一学力論 第 1 章西洋における教育思想と教育方法 第 6 章 次 授業をどうデザインするか 第 7 章 の歴史 第 2 章日本における教育改革と教育方法 第 8 章 教育の道具・素材・環境を考える 何をどう評価するのか 第 9 章 の歴史 第 10 章 教科外教育を構想する 第 3 章現代教育方法学の論点と課題 どのような教師をめざすべきか 第 11 章 第Ⅱ部教育の方法 第 4 章子どもは何を学ぶかーー教育目 有斐閣ブックス きみづかよしひこ なごゃあきら 君塚仁彦・名児耶明編 東京学芸大学教授・五島美術館学芸員 A 5 判並製カバー付 現代に活きる博物館 254 頁 予価 2 , 205 円 978 ー 4 ー 641 ー 18342 ー 1 博物館学を初めて学ぶ人・学芸員を目指す人の為の入門書。学芸員として最低限身につけて おきたい基礎理論や歴史 , 法制度から , 各種博物館の特徴 , 仕事の実際までを平易に解説。 変化し続ける博物館の姿を捉えた , 現場をイメージしながら学べる実践的テキスト。 《第 I 部》博物館とは何かーー - 考えるための視点 主 第 1 章博物館をどのように考えていこうとするのか ( 君塚仁彦 ) / 第 2 章博物館の歴史を考える ( 君 よ 塚仁彦 ) / 第 3 章博物館の法と制度 ( 君塚仁彦 ) / 【 CoIumn ①】学芸員の研修 ( 幅大 ) 目 《第Ⅱ部》博物館学芸員・博物館職員の仕事 次 第 4 章美術館学芸員の仕事 ( 名児耶明 ) / 【 column ②】美術館における図録の編集 ( 渡川直樹 ) / 第 5 章歴史や民俗を扱う博物館学芸員の仕事 ( 君塚仁彦・武士田忠 ) / 【 Column ③】鉄道文化財と博物館 ( 岸由一郎 ) / 第 6 章地域自然を扱う博物館学芸員の仕事 ( 浜口哲一 ) / 第 7 章動物園の仕事 ( 日橋一 昭 ) 《第Ⅱ部》 21 世紀における博物館の役割と課題 第 8 章博物館における保存科学 ( 建石徹 ) / 第 9 章映像アーカイプの保存・活用と博物館 ( 濱﨑好治 ) / 第 10 章戦争を記憶する場としての博物館 ( 君塚仁彦・黒尾和久 ) / 第 11 章建築・ミッション・運営 の現代的変容ーー拡張するアメリカのミュージアム ( 新田秀樹 ) / 第 12 章生涯学習社会と美術館教育活 動 ( 塚田美紀 ) / 【 co ⅳ mn ④】科学系博物館の教育普及活動 ( 田邊玲奈 ) / 第 13 章地域社会と博物館 ーー博物館は何のために運営され , 何を創造されるのか ( 君塚仁彦 ) ( 1 2 月下旬発売予定 ) ( 1 2 月下旬発売予定 ) 1 73
駅の窓口で預かり、荷扱車掌の管理の線の東西区間の乗換駅として同線の要貼付し、新橋行き列車の荷物車に載せ た。その行李は駅名札の記載に従い藤 もと旅客と同じ列車の荷物車等で運搬衝であった。 被告人の乗務列車の発車前、国府津沢駅でおろされることなく終点の新橋 し、下車駅の窓口で引き渡すという手 駅では、沼津方面から到着した列車の駅まで送られた。これを被告人は同駅 荷物託送サービスを提供していた ( い の小荷物掛から騙し取ったのである。 荷物車から手荷物がおろされ、新橋行 わゆるチッキ ) 。 被告人は旧刑法の次の三つの罪で起 手荷物の形状や送り先駅などの情報きの列車への積替え作業と、国府津駅 は授受簿に記載され、管理者が、発駅で下車する旅客に引き渡すべき手荷物訴された。①「藤澤驛ーの駅名札をは がした官文書毀棄罪、②「新橋驛」の の仕分け作業が行われた。本件の被害 の小荷物掛↓列車の荷扱車掌↓着駅の 小荷物掛と引き継がれる際、常にこの者は、東海道線を京都駅から藤沢駅ま駅名札を作成・貼付した官文書偽造行 で旅行する予定で、手荷物として行李使罪 ( 行李の詐欺はこれに吸収され 授受簿によって管理された。手荷物に は、八角形・松型・山型など多様な形を預け自らも列車を乗り継ぎ国府津駅る ) 、③行李の中から織物等を領得し た窃盗罪 ( 行李の詐欺とは別に成立す に達したが、都合により同駅で途中下 の紙に番号が記された合鑑が付けられ る ) である。東京地裁判決を経て東京 車することになり、手荷物についても て特定可能にされた。さらに、いちい 控訴院は三罪の成立を認めた。 ち合鑑の形・番号と授受簿の記載とを同駅での引き渡しを求めた。 そのため、国府津駅では被害者の手 被告人は、このうち②について、 照合しなくても済むように、管理者の 便宜のため合鑑には手荷物の送り先駅荷物を巡って混乱が生じた。客扱車掌「駅名札は荷扱車掌や駅小荷物掛の便 である被告人は荷扱車掌による手荷物宜のための単なる内部的なメモにすぎ を示す「駅名札ーが貼付された。 当時は丹那トンネルの開通前で、東の積替え作業を手伝う際、その混乱にず、鉄道庁の権威と信用をそなえるも 乗じて被害者の行李に付された合鑑かのでまよ、ゝ 海道線は現在の御殿場線を経由してい ( オしカら、官文書と解するべき窓 。被告人が乗務を開始した国府津駅ら「藤澤驛ーの駅名札をはがし、別途ではない」などと主張して上告した。斎 これに対して大審院は、「本件の駅 は御殿場ルートの始点であり、東海道「新橋驛」の駅名札を作成して合鑑に
東京大学ものづくり経営研究シリーズの第 7 弾 ふじもとたかひろ 藤本隆宏編 東京大学教授 1 「人工物」複雑化への挑戦 ( 2013 年 1 月中旬発売予定 ) A 5 判並製カバー付 430 頁 予価 3 , 990 円 設計立国日本の産業競争力 978-4 ー 641 ー 16399 一 7 序章なせ今「人工物複雑化」を論じるのか第 6 章人工物の複雑化と設計プロセス クとチャンスを冷静に見極めなければならない。日本の現場と産業が目指すべき道を示す。 うべきか。この厳しい時代の雇用を支えるのは既存産業の進化した現場であり , 企業はリス 環境問題 , 安全対策など地球規模でさまざまな制約に直面する今日 , 日本企業はどこに向か ( 藤本隆宏 ) 第 I 部基礎編複雑化の論理 ( 藤本隆宏・朴英元 ) 第Ⅱ部応用編複雑化対応の諸相 次第 1 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 複雑化分析のフレームワーク ( 藤本隆宏 ) 人と人工物の分業と協業 ( 奥野正寛・渡邉泰典 ) 複雑設計のシミュレーション分析 ( 大隈慎吾・藤本隆宏 ) アーキテクチャ研究再考 ( 立本博文 ) 「複雑化問題」への多元的対応 ( 藤本隆宏 ) 第 7 章 第 8 章 第 9 章 第 10 章 第 11 章 第 12 章 終章 家電と自動車 ( 上野泰生 ) 電子部品 ( 糸久正人 ) デジタル複合機 ( 福澤光啓 ) 複合加工機 ( 鈴木信貴 ) 電源管理 ( 安本雅典 ) 船舶開発と造船産業 ( 具承桓・加藤寛之 ) 「複雑化時代」の企業と産業 ( 藤本隆宏 ) 一橋大学日本企業研究センター研究叢書 3 うえはらわたるささきまさと やましたゆう ふくとみげんふくちひろゆき ( 1 2 月上旬発売予定 ) ・福地宏之・上原渉・佐々木将人著 山下裕子・福冨 一橋大学准教授・京都産業大学准教授・東洋学園大学専任講師・一橋大学准教授・一橋大学講師 A5 判上製カ / ヾー付 日本企業のマーケティングカ 280 頁 予価 3 , 675 円 978 ー 4-641-16398 一 0 日本企業のマーケティング戦略は業績に結びついているか。あるいは , そもそもマーケティ ング戦略はきちんと立案・実行されているか。また , 販売の最前線にいる営業との関係はど うなっているか。 250 近くの事業体の実態を明らかにし , 問題点克服への道を探る。 主 な 目 次 序章今 , なぜ「マーケティングカ」なのかーー戦略と組織 第 1 部問題意識と調査の概要 第 1 章マーケティング研究の射程ーー問題意識の変遷と日本企業 第 2 章調査の概要ーーー対象企業のプロフィール 第 2 部日本企業に「マーケティング戦略」はあるのか 第 3 章マーケティング戦略の策定ーー欧米流のマーケティングは日本企業でも成果をもたらすのか STP から導かれるマーケティング・ミックス 第 4 章 4P はどう決められているか 第 3 部マーケティング戦略を支える組織プロセス 第 5 章「強い営業」のジレンマーー営業活動はマーケティング戦略を支えるのか 第 6 章マーケティング戦略を補完する事後対応ーー営業の現場対応と戦略変更 第 7 章戦略策定のためのマーケティング・インテリジェンス - ーー広告代理店との連携と依存 第 4 部マーケティング戦略を左右する組織パワー 第 8 章マーケティング戦略は誰が決めているのかーーーマーケティング部門の影響力 第 9 章マーケティング戦略はどこで決めるべきかーー海外進出と現地法人の影響力 終章日本企業のマーケティングカーー - 危機からの再生のために 71