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検索対象: 書斎の窓 2012年5月号
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1. 書斎の窓 2012年5月号

社会論」には危機感を抱いていたと思 の姿勢はかなり一貫していて、晩年のをしておられた一九九一年、同審議会 う。「活力ある福祉社会」 ( 第一一臨調の日記 ( 一九八八年一一月一五日 ) のなかの下に将来像委員会という組織が設置 された。社会保障制度審議会は、一九 スローガン ) に対して批判的な論陣をでも、経済企画庁の住宅関係の会議に はっていたし、当時の社会保障研究所出席したときの感想を次のように記し九五年に最後の勧告を出すことになる の所内でも、「活力ある福祉社会」をている。「二時から経企庁、住生活部のだが、この委員会は、その準備作業書 の一環として設置されたものであり、 批判的に検討する懇談会 ( 研究会 ) が会。一二世紀をめざして住宅ストック 開催されていた。第一一次臨時行政調査をというが、公共財でもない住宅に助私もその委員の一人に任じられた。こ の委員会では、ゲストスピーカーを招 会の専門委員も、「社会保障はもっと成規模を拡大するとは国民生活局らし 充実する必要がある」との理由から、 いて研究会を開催し、自由に議論する くない感覚ー ( 『福武直自伝社会学と こともあった。そのなかの一つの研究 その就任を断っていたと記憶する。こ 社会的現実』福武直先生追悼文集刊行 会で住宅が取り上げられ、早川和男氏 のように、当時の先生は、社会保障の 会、一九九〇年、四九八頁、強調は引 か講師として招かれた。同氏は、住宅 熱心な擁護者として知られていた。 用者 ) 。 がヨーロッパ諸国では社会政策として ところが、その先生にとっても社会 これは福武先生に限ったことではな 保障とは、何よりも年金・医療・福祉 い。社会保障制度審議会の勧扱われており、日本でも、住宅政策が であった。福祉が社会保障のなかで年告で一九四八年に発足したが、いわゆもっと重視されるべきだと力説され た。この研究会での討論のさいの隅谷 金や医療に比べて疎かにされている現る「橋本行革」によって二〇〇一年に 状を嘆き、福祉も、年金や医療と同様廃止された ) の会長をしておられた隅先生の発言が印象的で、いまでも記憶 に重視しなければならないとの持論を合三喜男先生の場合も同様だった。隅に残っている点が二つある。一つは、 「そのような社会政策の概念は日本の 繰り返し主張されたが、その先生も、 合先生は、最晩年、社会政策としての 学会では通用しない」というものであ 住宅を社会保障の一分野として扱うべ住宅政策に熱心だったが、当初から、 そうだったわけではない。 きだとまでは、主張はしなかった。こ 先生が会長り、もう一つは、「住宅政策を行おう

2. 書斎の窓 2012年5月号

である。 イスラーム主義運動が苦闘の歴史をを再構築した。本書の強みの一つは、 ホスト国との関係が問題になったの歩んだのと同様に、私の研究活動も苦こうした膨大な一次資料や聴き取り調 が一九八〇年代だったとすれば、彼ら難の連続であった。なかでも、まとま査に基づいている点であろう。 の活動が国際化したのが一九九〇年代った資料がないことが最大の問題だっ 拙著では、以上のようなイスラーム であった。米国や英国を中心とする国 た。というのも、彼らの亡命下の活動主義運動の歴史を、ナショナリズムと書 の関係から読み解いた。イスラーム国 際社会が、イスラーム主義運動の活動は近隣諸国に加えて欧州にもわたって に介入するようになったことがその背おり、各地で機関誌などを地下出版し家の建設を目指すはずのイスラーム主 景にあった。 一九九一年の湾岸戦争ていたために、資料が世界中のあちこ義運動が、次第にイデオロギーとして のナショナリズムを色濃くしていった 後、フセイン体制後の受け皿を作るた ちに拡散しているからである。むろ めに、米国はイラク反体制派にテコ入ん、数十年前に地下出版され、文書館理由を解明したかったからである。 ナショナリズムを作り上げるという れを行い、彼らの活動領域が欧米まで にも集積されていない一次資料を集積 問題は、フセイン政権でも重要な課題 広がったからである。こうした状況のするのはかなりの困難がともなう。 中で、一九八〇年代にイランから再亡 そこで私は、一九八〇年に亡命活動であった。イラクのみならず、ポスト 命した勢力が、イラク・ナショナリズ の中心地であったイランのテヘランやコロニアルな状況の中で国家建設を進 ムを掲げ、愛国心を強化していったの 宗教界があるコム、一九九〇年代に活める途上国において、ナショナリズム である。 動を展開したシリア、レバノン、ヨルをどのように作り上げるかは共通した このように、イスラーム主義運動ダン、そして英国で、亡命反体制活動政治課題だろう。私が着目したのは、 こうした国家とナショナリズムの形成 のメンバーと接触し、彼らから集めら は、亡命と分裂の歴史を歩んできた。 戦後イラクにおける内部対立や政治的れる限りの資料を収集した。活動家やに、フセイン政権のみならず、反体制 混乱の背景には、以上のようなイスラ現在のイラク国会議員へのインタヴュ活動を展開してきたイスラーム主義運 ーム主義運動が経験した対立の歴史、 ーも行った。そして、各地で収集した動も関与しており、そのことが戦後イ ラクの国家建設にも大きな影響を与え 苦闘が反映されている。 一次資料に基づいて、歴史的変容過程