務執行の性格を有する選挙権の行 使の主体としての適格性に疑問が ある者ということかでき、受刑者 一般について欠格事由を定めるこ とには、公明かっ適正な選挙の実 施との間に相応の関連性が肯定で きることは上記に述べたとおりで ある。これらによれば、受刑者一 般について欠格条項を定めること が公明かっ適正な選挙権行使の確 保のために必要不可欠なものとま では認め難いことをもって、公職 選挙法ⅱ条 1 項 2 号の規定が立法 府の合理的裁量の範囲を逸脱する ものとまで解することはできな おって、憲法改正の国民投票と 公務員の選挙権はおのずとその内 容が異なるものであり、法律の定 める欠格条項について両者に差異 があるのは、立法府が、受刑者に 対する制裁として国民投票におけ る欠格事由を定めるという選択を しなかったとい一つことであって、 このことをもって、公職選挙法ⅱ 条 1 項 2 号に合理性かないという ことはできない ニ国家賠償請求が認められるか 国家賠償法 1 条 1 項は、国又 は公共団体の公権力の行使に当 たる公務員が個々の国民に対し て負担する職務上の法的義務に 違反して当該国民に損害を加え たときに、国又は公共団体がこ れを賠償する責任を負うことを 規定するものであるところ、国 会議員の立法行為又は立法不作 為が同項の適用上違法となるか どうかは、国会議員の立法過程 における行動が個々の国民に対 して負う職務上の法的義務に違 反したかどうかの問題であり 立法の内容の違憲性の問題とは 区別されるべきものである。そ して、上記行動についての評価 は原則として国民の政治的判断 に委ねられるべき事柄であっ て、仮に当該立法の内容が憲法 の規定に違反するものであると しても、そのゆえに国会議員の 立法行為又は立法不作為が直ち に国家賠償法 1 条 1 項の適用上 違法の評価を受けるものではな 。もっとも、法律の規定が憲 法上保障され又は保護されてい る権利利益を合理的な理由なく 制約するものとして憲法の規定 に違反するものであることが明 白であるにもかかわらず、国会 か正当な理由なく長期にわたっ てその改廃等の立法措置を怠る 場合などにおいては、国会議員 の立法過程における行動が上記 職務上の法的義務に違反したも 、リト勺こ、その立法 のとして佰タ白 ( 不作為は、国家賠償法 1 条 1 項 の規定の適用上違法の評価を受 けることかあるとい一つべきであ る ⑦本件においては、上記のとお り公職選挙法ⅱ条 1 項 2 号が憲 法に違反するものとはいえない から、公職選挙法ⅱ条 1 項 2 号 に係る立法行為及び同号を廃止 しない立法不作為に国家賠償法 上の違法は認められない。 79 ・法律のひろば 2016.10
き、両議院の議員の選挙においてによって差別してはならないと定 投票をすることによって国の政治めているほかは、選挙人の資格に に参加することができる権利を国ついて具体的な規定を定めていな 民に対して固有の権利として保障 いことを併せ考慮すれば、選挙人 しており、その趣旨を確たるものの資格の制限 ( 欠格条項 ) を定め とするため、国民に対して投票を ることについては、憲法のこれら する機会を平等に保障しているもの規定に照らしておのずと限度は のと解するのが相当である。 あるものの、立法府に一定の裁量 その一方で、選挙権は、その行 か認められているものと解され る。 使の結果に鑑みれば、このような ◎選挙権確認等請求事る。 個人の主観的権利という性格を持 このような憲法の規定の趣旨に 件 一公職選挙法ⅱ条 1 項 2 号が憲っと同時に、国家機関としての選鑑みれば、選挙人の資格の制限で ( 広島地方裁判所 法の規定に違反するかについて挙人団の一員としての公務としてある欠格条項を定める立法の憲法 平成囲年 7 月日判決 ) ( 公職選挙法 ) の性格を併せ持つものと解され、 適合性については、当該立法府の 控訴 ⅱ条 1 項次に掲げる者は、選憲法条本文が「両議院の議員及判断が合理的裁量の範囲内にある 本件は、受刑者である原告が、 びその選挙人の資格は、法律でこ 挙権及び被選挙権を有しない か否か、具体的には、立法目的が 次回の衆議院議員及び参議院議員 2 号禁固刑以上の刑に処せられを定める。」として、明文で選合理的であり、その立法内容が目 の総選挙において投票することが れたその執行を終わるまでの者挙人の資格を法律の定めに委ねて的達成の手段として必要かっ合理 できる地位にあることの確認を求 いることからすれば、憲法は、法的なものであるか否かという基準 めるとともに、平成年貶月日 合憲の枠組み 律が合理的な理由に基づき選挙人によって判断すべきと解するのが に実施された衆議院選挙において 国民の代表者である議員を選挙の資格の制限 ( 欠格条項 ) を定め相当である。 選挙権の行使を否定され、精神的 ることを許容していると解され によって選定する国民の権利は、 なお、選挙人の資格を有するこ とについては争いのない在外国民 苦痛を受けたとして、国家賠償法国民の国政への参加の機会を保障る。 そして、憲法は、条 3 項で成について、日本国内に住所を有し 1 条 1 項に基づき、慰謝料 100 する基本的権利として、議会制民 万円及び弁護士費用万円の合計主主義の根幹を成すものであり 年者による普通選挙を保障するとていないために選挙人名簿に登録 ろ 120 万円並びにこれらに対する民主国家においては、一定の年齢定め、条ただし書において、両されないこと、在外公館の人的物 ひ の 上記投票日から支払済みまで、民に達した国民の全てに平等に与え議院の議員の選挙人の資格につい 的体制を整えることや在外国民に 律 法 法所定の年 5 分の割合による遅延られるべきものである。 候補者個人の情報を適正に伝達す ては、人種、信条、性別、社会的 損害金の支払を求めた事案であ 憲法は、国民主権の原理に基づ身分、門地、教育、財産又は収入ることの困難性など、主として投 5 公攵力主月 一三ロマイ
票制度の技術的な問題、事務処理 とし、そのことが選挙が公明かつの行使を制限することには、一定理的裁量の範囲を逸脱するもので 上の問題を理由に、国政選挙にお適正に行われることに資するとしの正当性、合理性が認められると はなく、刑罰に伴う制裁として必 いうべきである ける選挙権の行使の全部または一た趣旨と解される。この点、受刑 要かっ合理的なものと解される 部を認めないことの憲法適合性が者は、執行猶予が付されることな そして、選挙人の資格の制限で なお、受刑者であることをもっ ろ 問題となった事案に対する最高裁く、あるいはこれが取り消されてある欠格条項は、一定の明確な基て、当然に公正な選挙権の行使を ひ の 判所平成年 9 月日大法廷判決受刑している者であることに照ら準をもって定める必要があるとこ期待できないとまでは認められな 律 法 ( 民集巻 7 号 2087 頁 ) と、 せば、類型的に見て、法秩序に違ろ、受刑者は、違法性の高い反社 いというべきであるし、選挙の公 本件では事案を異にする。同判決反する程度が著しく、一般社会と会的行為を行った者であるか、重正という観点のみから考えた場 は、選挙人の資格があることにつは厳に隔離されるべき者であり 大な結果を生じさせた者であるか合、受刑者一般について欠格条項 いては異論がなく、専ら投票制度遵法精神の欠如も著しいというこ又は同種の違法行為を繰り返してを定めることが公明かっ適正な選 上の問題によりその行使ができな とができ、公務執行の性格を有す いる者であって、法秩序に対する挙権行使の確保のために必要不可 い事案について判示するものである選挙権の行使の主体としての適違反の程度が著しい者であるこ欠なものとまでは認め難いという るところ、憲法は一定の範囲で法格性に疑問がある者ということが と、受刑者であることが選挙権のべきである。しかしながら、公職 律により選挙人の欠格事由が定めできる。また、受刑者は、禁錮以欠格事由となるのは、その刑の執選挙法ⅱ条 1 項 2 号及び 3 号の欠 られることを許容しており、その上の刑に処せられた者であり、一 行を受け終わるまでの期間であ格事由は、収賄の罪や選挙犯罪を 憲法適合性については同判決の基般社会から隔離された刑事施設に 刑罰の軽重、すなわち法秩序犯した場合に選挙人の資格が制限 準とは別の枠組みによるべきであおいて処遇を受けるという刑の性に違反する程度に対応した期間が される範囲や期間を加重した同項 る。 質上、それに伴う制裁として、そ定められており、選挙権の制限の 4 号及び 5 号、同条 2 項並びに同 の社会参加が一定の範囲で禁止、 範囲が不当に広範であるとはいえ法 252 条と同様に、罪を犯して 2 公職選挙法ⅱ条 1 項 2 号の憲制限されることはやむを得ないと ないことに照らせば、受刑者につ刑に処せられたことに伴う制裁と いうべきであり、このことは憲法 法適合性 いて選挙権を認めないこととする して定められたものと解される 公職選挙法ⅱ条 1 項 2 号が受刑上も予定されているものと解され立法は、制裁の手段として合理的そして、同法ⅱ条 1 項 2 号が、受 者について選挙権及び被選挙権を る。このような刑罰の性質からすな範囲内のものということがで刑者に対してその刑罰に伴う制裁 有しないものと定めたのは、受刑れば、選挙権の重要性を考慮してき、また、公明かっ適正な選挙のとして選挙人の資格を制限した趣 者が、重大な犯罪を犯し、一般社 も、一定の刑罰を受けた者に対し実施との間にも相応の関連性を認 旨に一定の正当性、合理性が認め めることができる 会とは厳に隔離されるべき者として、その刑罰に伴う制裁として、 られ、選挙権の制限の範囲が不当 て拘禁されていることに着目し法秩序に対する違反の程度が著し 以上によれば、受刑者であるこ に広範であるとはいえず、その手 て、そのような者に対する制裁と いことを理由に、選挙権を認めるとを欠格事由とする公職選挙法ⅱ 段としても合理性が認められるこ して選挙人の資格を停止すること にふさわしくない者として選挙権条 1 項 2 号の定めは、立法府の合と、受刑者は、類型的に見て、公
自治六法 改正公選法 ( 18 歳選挙関係 ) ・番号法・行審法などの重要改正の施行に対応 ! 平成 29 年版ーの 地方自治法令研究会【編集】 A5 判・定価 ( 本体 4 , OOO 円十税 ) ◆地方自治法、公職選挙法、地方公務員法及び地方財政法の 主要 4 法には、簡潔な条文解説の他に参照条文・読替条文・ 通知・実例・判例を 2 色刷りで収録。 ◆昨年末に成立した地方自治法施行令改正 ( 随意契約事由の対 象拡大 ) をはじめ、第 190 回国会で成立した行政機関等保 有個人情報保護法の改正など、重要改正に完全対応。 ◆本年 I 月に施行された番号法、本年 4 月に施行された地方 公務員法 ( 人事評価関係 ) や改正行政不服審査法など、重要 法令が立て続けに施行されたことに伴い、内容を刷新。 ・本編に収録の全法令はもとより、新たに行政不服審査法施行令・施行規則や、女性 活躍推進法、成年後見利用促進法などを追加し、合わせて 759 本を全文収録 ・頻繁に改正のある地方税法などは、施行日別の条文を掲載。複雑な未施行を読み 解かなくても必要な時点の条文が一目で分かる。 ・目当ての条文にシャンプする「しおり」により、スヒーディーな条文検索が可能。 ・法令間の引用は、リンク機能で一瞬で表示 0 礬きようせい き・うせい 燉方自令第究会 - ムロ去 自六 -29 改正地公法 ( 人事評価関保 ) ・番号法・行法などの施行に 伴し昞容を願。地方自治法行令や行政強関保有 第個人報保第法などの新改正に発全対応。 、地方自治法や地方ま員法・地方財設法はもちるん、 年載年版トビノクス 発ー獵の重響改正については . 無料で補を興行します . 好評の「電子版」ダウンロード・サービス付き ! リー TEL : 0120-953-431 [ 平日 9 ~ 17 時 ] FAX 0120-953-495 [ 24 時間受付 ] http : //shop. gyosei. jp 〒 136 ー 8575 東京都江東区新木場 1 ー 18 ー 11 [ オンライン販売 ] お近くの書店または弊社 までご注文ください。
呈 さ 叮数理法務のすすめー / 録一「法の財務分析」等実務上有用性が高いテー 日を →マを、事例を用いて解説。 <L0 判三八 00 円 諟行政不服審査機関の研究 行政不服審査制度の役割を明らかにする。 有碓井光明著 <LO 判 一ニ〇〇〇円 , 国際行政法の存立基盤 イ 5 6 2 著者が遺した多くの論攷 山本草ニ著 / 兼原敦子・森田章夫編 3 3 ( 0 の中から今後の国際法学を研究していく上で重要な四篇を厳選。 0 す 会 <LD 判 定 二、冫九 0 〇〇円 " フランス法返遠請求の諸去理 ドイツ法や日本法とは異な 齋藤哲志著◎原状回復と不当利得 襯のる独自性を強く残すフランス不当利得法の特質を明らかにする 田 8 み <LO 判 区税 田費 七七 0 〇円 倒産法の実践 代消 千 伊藤眞・園尾隆司・多比羅誠 / 編集委員加々美博久・小林信明 才ロ千晴元最高裁判所判事・弁護士喜寿記念出版 岡伸浩・髙山崇彦 東は 四六判 1 Q 示 一 = 一 00 円 続・千曲川の岸辺 伊藤眞著◎伊藤眞随想録Ⅱ 古稀を迎えてなお研究・教育活 動に精励する著者が、最近の活動や思い至った出来事等を綴る まむ POCKET2017 民法 ( 家族法 ) ・刑訴法最新改正織り込みー ノ、、ノ平 2 年 編集代表山下友信・山口厚 変型判一八五ニ円。ホ西 斐・収録法令ニ 0 ニ件 〈新収録法令〉ヘイトスピーチ対策法、犯罪被害者等基本法、更 有 生保護法。〈主な改正〉行政個人情報保護法、公職選挙法、地方自 治法、民法、消費者契約法、会社法施行規則、家事事件手続法、刑 法、刑事訴訟法、育児介護休業法、児童福祉法、特定商取引法等。 0 ー 新刊案内 編集代表 八八 0 〇円 民法・刑訴法 重要改正 応第 - 響なま・置 202 0 は <LO 判 化を第け等 す 2 でに竹下賢幅 き 0 法の時空 抜 >< 税平和の希 ~ 拠を問、つ、 代 つ」 4 LO 0 <LO ト一 / ロ、 u) ( . / 9000a. 初宿正典編 四世紀後半以降のドイツ憲法史ないし政治・社会史的な観点に 基づき、カール・シュミットと個人的にも学問的にも様々な関 稲電わりを持ち、激動の時代を生きた五人のユダヤ人法学者を追う。 早 Q. 0 〔上巻〕〔下巻〕 , 〔戈田和茂先生古稀祝賀論文集 都、冫 京 井田良・井上宜裕・白取祐司・高田昭正・松宮孝明・山口厚編 < 5 上製 / 9 9 4 頁・ 8 6 8 頁 / 各 2 5 0 0 0 円 刑法公心ム刪〔第 3 版〕 <LO 上製 / 624 頁 / 4000 円 高橋則夫著 刑法の行為規範と制裁規範という視点から犯罪論・刑罰論を展 開する。新たに刑の一部執行猶予に関する法改正、多数の重要 判例を盛り込む。法科大学院・法学部生必読の本格的体系書。 成会社法重要判例〔第 2 版〕 酒巻俊雄・尾崎安央・川島いづみ・中村信男著 並製 / 196 頁 / 2000 円 重要判例について、事実関係と判旨を丁寧に示し、争点の指摘、 判例の意義や位置づけ、射程、今後の課題等を明示する。新た に 7 件の判例、コラムを追加した会社法判例教材の決定版。 ◆ 法秩 新
具体的な改正案の検討は自殺対策を推般の法改正において、我が国の自殺対策し地方公共団体の責務が十分に果たされ 進する議員の会を中心に行われ、同会にの根幹をなす自殺対策基本法に改めて位るように必要な助言その他の援助を行、つ。 ものとされた。 おいて 5 回にわたり計団体へのヒアリ 置づけられたものと考えられる ングを行ったほか、関係府省等へ意見照 ろ 会を行い、インターネット上で意見公募 4 自殺予防週間・自殺対策強化月の 2 基本理念の追加 ( 2 条 ) を行った上で、平成年Ⅱ月日、議員 律 法 間 ( 7 条 ) の会としての改正案が取りまとめられ自殺対策は、生きることの包括的な支 援として、全ての人がかけがえのない個 これまで大綱に基づいて行われていた 改正案は平成年 2 月日の参議院厚人として尊重されるとともに、生きるカ自殺予防週間 ( 9 月川日から 9 月間日ま 生労働委員会に「自殺対策基本法の一部を基礎として生きがいや希望を持って暮で ) 及び自殺対策強化月間 ( 3 月 ) を法 を改正する法律案」として委員長提案でらすことができるよう、その妨げとなる律上位置付けた。また、自殺予防週間に こ資するための支援とそれおいては、啓発活動を広く展開するもの 提出されて全会一致で可決され、同月諸要因の解消 ! 日に参議院本会議においても全会一致でを支えかっ促進するための環境の整備充とし、自殺対策強化月間においては、相 可決された。 3 月日に衆議院厚生労働実が幅広くかっ適切に図られることを旨談事業等の自殺対策を集中的に展開する 委員会、同月日には衆議院本会議におとして、実施されなければならないこものとされた。もっとも、啓発活動の実 いてそれぞれ全会一致で可決され、成立と、また、保健、医療、福祉、教育、労施に当たっては、啓発活動によって悩み し、 4 月 1 日から施行された ( 注 5 ) 。 働その他の関連施策との有機的な連携がを相談するに至った方へ対応する体制を 図られ、総合的に実施されなければならあわせて整えておく必要があり、一方、 ないことが規定された。 相談事業等を集中的に行う場合、そのよ 六改正自殺対策基本法の概要 うな事業を実施しているという情報が悩 みを抱えている方まで届くためには、悩 目的規定の改正 ( 1 条 ) 3 国の責務の改正 ( 3 条 3 項 ) みを抱えている方の周囲を含めた啓発活 目的規定に「誰も自殺に追い込まれる 自殺対策を「生きることの包括的な支動が不可欠である。その意味で自殺予防 ことのない社会の実現を目指して、これ援」として行うためには、国民一人ひとに係る啓発活動と相談事業等の自殺対策 に対処していくことが重要な課題となつりに身近な地域において、それぞれの実はいわば「車の両輪」であり、自殺予防 ていること」が加えられた。 情に応じたきめ細やかな対応を行うこと週間及び自殺対策強化月間における事業 「誰も自殺に追い込まれることのない が不可欠であり、このような対応に当たの実施に当たっても、どちらにより重点 って地方公共団体が担う役割は少なくなを置くかの違いはあれ、啓発活動と相談 社会の実現」は、平成年に見直された 大綱の副題とされているものであり、今 い。このため、国は、地方公共団体に対事業等の自殺対策を一体的かつ効果的に
た効果的な施策として実施すべきも は我が国で初めての大綱が閣議決定さと、また、厳しい経済情勢を背景としたに の」、「国、地方公共団体、医療機関、事れ、大綱の下、内閣府において、関係省自殺の社会的要因である失業や倒産、多 業主、学校、自殺の防止等に関する活動庁、地方公共団体、自殺防止等に関する重債務問題の深刻化への懸念から、追い を行う民間の団体その他の関係する者の活動を行っている民間団体とも連携しっ込まれた人に対するセ 1 フティーネットば 相互の密接な連携の下に実施すべきもっ総合的な自殺対策を推進する体制が整の一環として、地域における自殺対策のひ った。 の」と定めた。 強化が喫緊の課題となっていたことを踏律 法 自殺対策基本法に基づき、政府は、政 まえ、内閣府において、補正予算におい 府が推進すべき自殺対策の指針として、 て 100 億円の予算を計上し、都道府県 三地域における自殺対策の推 基本的かっ総合的な自殺対策の大綱 ( 以 に当面 3 年間の対策に係る「地域自殺対 下「大綱」という。 ) を定めること、大 策緊急強化基金」を造成した。基金事業 綱の案の作成や自殺対策に必要な関係行 自殺対策基本法及び大綱に基づき、政の内容については、国が提示した対面型 政機関相互の調整、自殺対策に関する重府においては関係府省において様々な取相談支援事業、電話相談支援事業、人材 要事項について審議し、その実施を推進組が行われてきた。その中でも川年間の養成事業、普及啓発事業及び強化モデル する「自殺総合対策会議」を内閣府に設自殺対策の取組のもっとも大きな変化と事業の 5 つのメニューの中から、都道府 置すること、毎年、国会に、我が国におして挙げられるのが、平成幻年度補正予県及び市区町村が地域の実情を踏まえて ける自殺の概要及び政府が講じた自殺対算により創設された地域自殺対策緊急強選択し、実施された。 策の実施の状況に関する報告書 ( 自殺対化基金とそれに基づく地域における自殺その後基金は累次の補正予算において 策白書 ) を提出することとなった。また、 対策の取組の進展であろう。 実施期限の延長・積み増しが行われ、地 国及び地方公共団体が講ずべき基本的施平成幻年当時、地方公共団体における域における自殺対策の実施における重要 策として、調査研究の推進、国民の理解総合的な自殺対策は、国における自殺対な財源となった。また、平成年度補正 の増進、人材の確保、心の健康の保持に策の本格的な推進を受けて数年前から開予算においては、新たに地域自殺対策強 係る体制の整備、医療提供体制の整備、始したところが多く、本格的な取組が全化交付金の制度を導入し、同年度及び 自殺発生回避のための体制の整備、自殺都道府県で行われているとは言えす、市年度に実施する自殺対策事業に充てられ 未遂者に対する支援、自殺者の親族等に町村に至っては、年川月末に決定した 対する支援、民間団体の活動に対する支自殺対策加速化プランに基づき自殺対策地域自殺対策緊急強化基金は、すべて 援などが掲げられた。 担当の部局等が設置されるよう働きかけの都道府県と、 1400 を超える市区町 平成四年 4 月、内閣府に自殺対策推進を行ったばかりという状況にあった。こ村において活用されたが、この基金を呼 室が設置され、自殺総合対策会議の事務のような中で、平成川年以降、年間の自び水として、各地方公共団体における自 局機能を担うこととされた。同年 6 月に殺者数がⅡ年連続して 3 万人を超えたこ殺対策の企画・立案・実施の体制が整え 進
特集自殺予防対策ー自殺者減少社会の実現へ 自殺対策基本法施行 1 0 年の成果と課題 る計画の例を踏まえると、今後所管省庁 展開していく必要があると思われる 6 都道府県・市町村に対する交付 ( すなわち厚生労働省 ) において計画策 金の交付 ( 条 ) 定に関するガイドライン等が示されるこ 5 都道府県自殺対策計画等 ( 条に規定する計画を策定して自殺対 とが想定される。また、自殺対策計画は、 条 ) 大綱と当該地域の自殺実態に応じた形で策を推進する都道府県及び市町村を財政 都道府県は、大綱及び地域の実情を勘策定されることになるところ、大綱は平面から支援するため、国は、これらの計 案して、都道府県自殺対策計画を定める成四年夏頃の見直しが想定されており、画に基づいて当該地域の状況に応じた自 ものとされた。また、市町村は、大綱及各地方公共団体は、ガイドライン等の国殺対策のために必要な事業、その総合的 び都道府県自殺対策計画並びに地域の実の支援体制の整備状況や大綱の改定に向かつ効果的な取組等を実施する都道府県 情を勘案して、市町村自殺対策計画を定けた作業状況等も踏まえて、それぞれの又は市町村に対し、当該事業等の実施に めるものとされた。 地方公共団体において対応することにな要する経費に当たるため、推進される自 殺対策の内容その他の事項を勘案して、 法律による地方公共団体に対する計画ると思われる。 予算の範囲内で交付金を交付することが なお、特に市町村自殺対策計画につい の義務付けは、地方分権の観点から見直 される傾向にあるが、今後の地域におけては、小規模地方公共団体等の事務負担できることとされた。 「三地域における自殺対策の推進」 る自殺対策の実施に当たっては、いわゆ等も考慮し、ガイドライン等で示された るサイクルを確立していくこと内容等に関する指針を満たす限り、他ので述べたとおり、これまでも国において が重要であると考えられること、また、法律の規定による計画のガイドライン等は累次の補正予算により地域の取組を支 にもみられるように、自殺対策のみを定援してきたところであり、このような財 包括的な生きる支援である自殺対策をい わばナショナル・ミニマムとしてすべてめた計画だけでなく、他の関連分野の計政面での支援について法律上明文化した の地方公共団体において実施する必要が画と合わせた総合計画において自殺対策ものである。なお、平成年度において あることなどから、あえて計画策定を義を盛り込むことや、複数の市町村が共同は、地域自殺対策強化交付金を初めて当 初予算において計上しており、地域にお して一つの広域的な計画を策定すること 務付けたものと考えられる。 自殺対策計画は、法定ではあるものなども許容するように解釈・運用されてける自殺対策に係る自主的な財源も組み いくものと考えられる。さらに、既に自合わせつつ、継続的な取組を支援するこ檢 の、あくまでも自治事務の一環として作 ととしている 成されることになると整理され、その内殺対策計画に該当する計画を策定してい ろ 容や作成時期についても、一義的には当る地方公共団体においては、今般の法改 ひ の 該地方公共団体において判断されること正により必ずしも新たに自殺対策計画を 律 法 になる。一方、障害者基本法に基づく障策定し直すことは要しないものと考え 害者基本計画など、他の法律の規定による。
特集自殺予防対策ー自殺者減少社会の実現へ 自殺対策基本法施行 10 年の成果と課題 を前に進める大きな推進力となってき殺総合対策推進センターにおいて情報を策の「æao< サイクル」の確立に向け た。そして、この川年間の取組を進める蓄積し、分析を行うことによって、新たどのような施策が必要かという観点から 中で明らかになってきた様々な課題につな政策提言につなげ、各地域におけるきの検討が大きな論点となると思われる。 いて、法施行から川年の節目に反映させめ細やかな対策の企画立案に還元すると ることにより、自殺対策基本法を自殺対 いう、国と地域の連携による自殺対策の ( 注 ) ( 1 ) 現在は内閣府事務官 ( 大臣官房総務課 ) 策の新たな局面における推進エンジンに 「 O < サイクル」を確立していくこ ( 2 ) 制定当初の自殺対策基本法の条文については、平 することを狙ったものと考えられる とが、今後の課題となると考えられる。 厚生労働省への業務移管と改正自殺対 一方で、現状において、地方公共団体成年 8 月日現在、内閣府ウエプサイト h をく、 www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/19html/basic.hョ1ーにお 策基本法の両者に共通するのは、「自殺における自殺対策の取組に地域差がある いて参照可能であることを確認している。 対策を更に前に進めていくためには、地ことも指摘されている。改正自殺対策基 方公共団体における取組の進展が不可欠本法の施行前に市区町村において自殺対 ( 3 ) 地域自殺対策緊急強化基金と自殺死亡率 ( 人口川 であり、これを推し進めるために最適な策に関する計画を策定していたのは、国万人当たりの自殺者数 ) の関係について統計学的手法 を用いて分析したものに、澤田康幸、上田路子、松林 体制を作る必要がある」という考え方にが把握している範囲では全市町村の約 3 基づくものということである。厚生労働割にとどまっている。また、都道府県及哲也「自殺のない社会へ経済学・政治学からのエビ 省へ業務移管は、同省の持っ保健、医療、び政令指定都市に設置され、当該自治体デンスに基づくアプローチ」 ( 有斐閣、平成 % 年 ) が 福祉、労働等の分野において地方公共団及び管下市町村の自殺の実態分析や自殺ある。 体等と強いつながりを活かして地域にお対策計画作成のサポートを行、つこととさ ( 4 ) 決議本文については、参議院ウプサイト h をく /www.sangim.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/189/i ける取組との連携を強化することがねられている「地域自殺対策推進センター」 069 ー 060201. pdf 参照 いであり、改正自殺対策基本法に盛り込についても、設置されているのは全体の まれた自殺対策計画の策定の義務付けや約半数にとどまる。さらに、各地方公共 ( 5 ) 改正後の条文については、電子政府の総合窓口 (e -gov) 法令検索システム http ://law. e-gov. go.jp/ 交付金の規定は、全国のどの市町村で生団体で実施する自殺対策事業について、 htmIdata/H18/H18H0085. html を参照 活する住民であっても、地域の実情に即財政負担を理由に実施に消極的になる、 したきめ細やかな自殺対策の恩恵にあず又は、本来必要な事業よりも国庫補助率 ( 6 ) 詳細は、文部科学省ウエプサイト h をミ w. (. 0 かることができるようにするための枠組の高い事業を優先する地方公共団体が出 go 」 p/b-menu/shingi/chousa/sh0tou/063-5/gaiyou/ 0 つ」 1351873. htl ゴを参照 みととら、んることができる。 てくることを懸念する指摘もある 、ま ろ その上で、中長期的には、各地方公共政府においては、平成年夏を目途に ( 7 ) 同センターの発足に至る検討の経過については厚 ひ の 生労働省ウエプサイト http ://www.mhlw.go.jp/stf/ 団体がそれぞれの自殺対策計画に基づく 大綱の見直しを行うこととされている 律 法 s 三 n /other ー syoug htr 三三 d “ 267038 を参照。 施策を実施することにより、その成果のが、見直しに当たっては、業務移管及び 検証・評価が可能となる。これを国や自改正自殺対策基本法が目指すこの自殺対 ( あらかき・かずあき )
llllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll の他の方法により効率的かつ効果 にての希望を持っことができる社会的に行うもの ( 以下「まち・ひと・ 環境の整備に資する事業、移住及しごと創生寄附活用事業」とい び定住の促進に資する事業、地域う。 ) に関するもの ろ 社会を担う人材の育成及び確保に◎生涯活躍のまち形成地域 ( 人ひ 律 資する事業、観光の振興、農林水口及び地域経済の動向その他の自 法 産業の振興その他の産業の振興に然的経済的社会的条件からみて、 資する事業、地方公共団体が地域地域住民が生涯にわたり活躍でき = = = = = = = = = = = = = = = = = = 三 = = = 一 = = = = = = = = = = = = = = = = = 一活を送りつつ、継続的なケアを受再生を図るために取り組むことかる魅力ある地域社会を形成して中 ◆地域再生法の一部を改正する法けられる「生涯活躍のまち」の制必要な政策課題の解決に資する事高年齢者の居住を誘導し、地域の 律 度化を行うものである。主な内容業 ) 持続的発展を図ることが適当と認 ( 平成囲年法律第号 ) は次のとおりである ②地域における就業の機会の創められる地域をいう。 ) において、 冖平成年 4 月日公布 地域再生計画に記載すること出等のための基盤となる施設の整中高年齢者の就業、生涯にわたる 公布の日から施行〕 ができる事項について、次に掲げ備に関する事業 ( 道路、農道又は学習活動への参加その他の社会的 【地方創生推進交付金、地方創生 るものを追加する 林道であって政令で定めるものの活動への参加の推進、高年齢者に 応援税制、「生涯活躍のまち」制 ⑦都道府県まち・ひと・しごと 2 以上を総合的に整備する事業、 適した生活環境の整備、移住を希 度等】 創生総合戦略又は市町村まち・ひ下水道、集落排水施設又は浄化槽望する中高年齢者の来訪及び滞在 本法は、①地域再生計画の記載と・しごと創生総合戦略 ( 以下「地であって政令で定めるものの 2 以の促進その他の地域住民が生涯に 事項を追加し、②地方公共団体の方版総合戦略」という。 ) に定め上を総合的に整備する事業、港湾わたり活躍できる魅力ある地域社 自主的・主体的な事業で先導的な られた事業であって次に掲げるも施設及び漁港施設であって政令で会の形成を図るために行う事業 ものを支援するための「地方創生ののうち、地方公共団体、事業者、定めるものを総合的に整備する事 ( 以下「生涯活躍のまち形成事業」 推進交付金」の創設、③地方公共研究機関その他の多様な主体との業 ) という。 ) に関するもの 団体が行う地方創生プロジェクト 連携又は分野の異なる施策相互の④地方版総合戦略に定められた ①の⑦の事項が記載された地 に対する企業の寄附についての税有機的な連携を図ることにより効事業であって⑦の①又は②に掲げ域再生計画が内閣総理大臣の認定 制優遇措置を講ずる「地方創生応率的かつ効果的に行われるものそるもののうち、地方公共団体が法を受けたときは、①の⑦の事業に 援税制」の創設、④中高年齢者がの他の先導的なものに関するもの人からの寄附を受け、その実施状要する経費に充てるため、政令で 移り住み、健康でアクテイプな生①就業の機会の創出等に資する況に関する指標を設定することそ定めるところにより、予算の範囲 ひろば法律速報 ( 第 190 回国会成立法律より )