人が「病気・介護・事故」などを機に、下流老人に没落する業だという構図がはっきりとしてきた。ここから生ずる世代 事例が急増しているという。生活保護受給世帯一五九万世帯 間格差と分配の適正化という問題意識を持たねば、金融政策 のうち七九万世帯が高齢者世帯であり、「貧困化する高齢者」 に過剰に依存して調整インフレを実現しようとする政策は社 問題も深刻である。高齢者のうち所得のすべてが年金の人が 会構造の歪みを招き、間違った国へと向かわせるであろう。 世約五割を占め、厚生年金に加えて企業年金を得る最も恵まれ 人生は欲と道連れであり、高齢者が潜在する経済不安の中 た年金受給者でも年金収入の上限は五五〇万円前後である。 から、アベノミクスを支持する、い理に至るのも分からなくは 確かに、高齢者の平均貯蓄額 ( 二〇一四年 ) は二四六七万円と ない。しかし、歴史の中での高齢者の役割を再考するならば、 意外なほど高いが、一〇〇〇万円以下が三六 % 、一一〇〇〇万 社会活動の現場で体験を重ねてきた世代として、後から来る 円以下が六〇 % で富は偏在しているのである。つまり安定し 世代に道筋をつける知恵を働かせるべきである。とくに、戦 た経済状態にある高齢者層が確実に圧縮しているといえよう。後日本の産業化と国際化の現場を支えた世代として、マネー 「老後破産」について、 Z スペシャル三〇一四・九・二 ゲームと金融政策では経済社会が空洞化することに厳しい視 八放送 ) を単行本化した『老後破産ーーー長寿という悪夢』 ( 新 点を向けるべきではないのか。少なくとも、後から来る勤労 潮社、二〇一五年 ) は注目すべき現実を報告しており、年金生者世代の貧困化に目を配らねばならない。自分の生活だけが 活は些細なきっかけで破産へと追い込まれる危うさを思い 安定していればよいというのではなく、高齢者らしい社会へ 知らされる。また、週刊東洋経済は、下流老人特集 ( 二〇一 の配慮と成熟した知性が問われている。三浦展が『下流老人 五年八月二九日号 ) やキレる老人特集 ( 二〇一六年三月一九日号 ) と幸福老人』 ( 光文社新書、一一〇一六年 ) で描き出すごとく、「資 と支えるコミュ一一ティを失った高齢化社会の断面に迫る企画 産がなくても幸福な人」と「資産があっても不幸な人」が存 を積み上げており、高齢化の現実を深く考えさせられる。こ 在するのが高齢者社会の実態である。我々は可能な限り幸福 うした潜在不安を抱える高齢者、とりわけ中間層から金持ち な高齢者社会の実現を図るべきで、「多世代共生」、「参画」 老人にかけての約一一七〇〇万人が金融資産、株式投資に最も 「多元的価値」が幸福老人を増やす鍵であることは確かであ 敏感な層であり、「とにかく株が上がればめでたい」という ろう。高齢者自身が与えられるのではなく、自分でやるべき 心理を潜在させ、アベノミクス的資産インフレ誘発政策を支 こと、やりたいことに向き合うことがまず大切であり、そう 持する傾向を示す。結局、アベノミクスの恩恵を受けるのは、 した視界からは、日本が「この道しかない」として向かおう 資産を保有する高齢者と円安メリットを受ける輸出志向型企 としている方向には静かなる疑問が浮かび上がるはずである。
ら一五年の三四六万円と年額五六万円も減少しており、 いか業主も含まれ、六五歳以上の雇用者は一三 % 程度であり、雇用 に消費が冷却し生活が劣化しているかが分る。 条件も非正規雇用が大半となるため大きな所得は望めない。 この段階で確認しておきたいのは、働く現役世代の可処分 だが、高齢者層は現在の勤労者世帯を形成する世代 ( 現役世代 ) 所得がピーク比で、年額八四万円も減ったという状況では、 よりも相対的には恵まれているといえる。日本が右肩上がり この世代が高齢化した親の世代の面倒をみて経済的支援をす の一九六〇年代から八〇年代にかけて壮年期を送り、勤労者 る基盤が失われているということである。もっとも、戦後七 世帯の可処分所得が増え続けた環境の中で一定の貯蓄と資産 〇年というプロセスにおいて、「親に孝行」といった儒教的 を確保できた世代だからである。東京に吸収されたサラリー 価値を失わせる社会構造を作ってしまったともいえる。都市 マン層をイメージしても、郊外にマンションの一部屋程度は に産業と人口を集中させて高度成長期を走ったことにより、 手に入れローンを払い終えて定年を迎え、一定の貯蓄と金融 資産を手にしているというのが一般的高齢者であろう。 「核家族化」が進行し、一九八〇年に三八 % にまで増やしてい た核家族 ( 単身者、夫婦のみ世帯、母子・父子家庭 ) の比重は、 総務省家計調査・貯蓄篇を基に、国民の金融資産保有状況 二〇一〇年には六一 % となり、現在は六五 % になっていると ( 二〇一四年 ) をみると、貯蓄の五八 % 、有価証券七二 % は六〇 推計される。つまり、「家族」の性格がすっかり変わってしま 歳以上の世代が保有している。つまり、株価の動きに最も敏 、世代間の支えあいが困難な社会となっているのである。 感で、金融政策主導で、日銀の買いだろうが 働いている現役世代でさえ生活が劣化している状況の中で、 による株式投資の拡大だろうが、株高誘導政策に最も共感す 働いていない人が多い高齢者の経済状況は、さらに厳しい る土壌を形成しているのが高齢者である。ただし、高齢者の 六〇歳以上の無職の世帯の可処分所得 ( 年金 + 所得ー社会保険 ) 経済状態は一般論で単純に判断できないほど、一一極分化が進 は、平均年額一七八万円で、平均生活費は二四八万円 ( 「家計 んでいる。人口の二七 % 、三四〇〇万人が二〇一五年時点で 調査年報」 ) 、年間七〇万円足りないとされ、その分は資産を の高齢者人口だが、あえて高齢者を経済状態で分類するなら 取り崩していると思われる。それ故に高齢者の就業志向は高 ば、約二〇 % ( 七〇〇万人 ) が「金融資産一〇〇〇万円以下で、 まっており、総務省就業構造基本調査 ( 二〇一二年 ) によれば、年金と所得の合計が一一〇〇万円以下の「下流老人」であり、 ン ス 男性における就業者の比重は六〇 5 六四歳で七三 % 、六五 5 約一五 % ( 五〇〇万人 ) が「金融資産五〇〇〇万円以上で、年 の六九歳で四〇 % 、七〇 5 七四歳で三二 % 、七五歳以上一六 % と 金と所得の合計が一四〇〇万円以上の「金持ち老人」、残りの 脳なっているが、ここでの「就業者」には雇用者、役員、自営約一三〇〇万人が「中間層老人」といえるが、この中間層老
2 9 それから、「彼は警備の会社に九年も雇われてて ( 鉄砲を買 えるらしい。そういえば、この近くのおすし屋で働いてた十 CD える ) 、その警備会社はという名前で、アメリカの九 八歳のダブル ( ハーフとは言わない。二つの文化を背負ってるので。 十 % 以上の核機関の警備をしているといわれる。彼はフロリ うちはトリプル ) の若者に将来何になる ? と訊ねたとき、 ダの郡立裁判所に入る人が銃を身に隠してないかを検査する 「 O—< 」と答えたんです。これにも驚きましたね。この若 係をしてたが、しばしば殺人や大量殺人に興味があると話を 世者は英語も日本語もできました。うちの孫は外国語はええ加 するので、そこの保安官がに彼を解雇してくれと頼み、 減です。スペイン語もオランダ語も出来ませんし、日本語な んて、なかなか。 —に注意人物と告げ、—のリストにも載っているが、 は彼を他の傘下の会社 ( 核産業 ) の警備に移動させた 古い「タイムズマガジン」に、若者の憧れの仕事ラン だけで銃を持っ許可は与えていたという」 ( 『ニューヨーカー』 キングが載ってました。一位グーグル、一位ディズニー、四 誌 Eric Schlosser) 位アップル、五位—、七位マイクロソフト、八位 O —、 スティーヴン・ホーキング博士が予言してたことが現実に 四十二位軍隊。 なって来てますね。 先月、フロリダのオーランドのゲイのクラブで四十九人も の人が射殺されました。前にもお話ししましたように、銃規 。れン下。稿 制を日本であれほど完璧にできた国がいつまでもに遠【すてる分い 得す自さでずメてす原す 、の月 慮してもたもたしてるうちに、何人殺されますやら。国内で。まを、下まいコしま、ま着 がり歳、のりみしも必店しこ 戦争でも起きる可能性は無きにしも非ずです。これだけも戦 5 間度限組いで書記ずい数 明必さは ア を、下に ・ヒ 争帰りのを抱えた若者がわんさといて、動く物は何・公さ 0 由をわ 8 字蛯品 , 支何胆 先上て却 / 高こ自」問 = 0 作ビお 9 でも撃っ習慣がついてますからね。おそろしや、おそろし・をのには一を口一のラま眸 5 广絡のし返 、同 真頒黔 , 内、発。褪鴛軅 齢をて否下 〔与そるテン・モ以期未頁 ( 回 、あ。メロ、枚 8 円 3 りト橋編年票 0 可承 オーランドの殺人者はムスリムですが、「»-a タイムズ」 たユプジ 、万 ~ 切ッ』、伝取の了 によると最初の妻は、彼がステロイドを呑んでて、少し変やア、しキ = ポ上 ( 刷。 2 め〒一界名」り載ご 、ヒラがしる資一拠印 0 て年締 = 区紲氏払切掲 ったと言うてます。また、他の人は、彼はゲイの傾向があっ 一フグすとえ募ラをい用とり代 のおま 誌まと考応力もトさ採料審第送千 グ本いこの て、相手にふられたと言うてます。
たとえば、選挙直後の朝日新聞による世論調査では、与党逃れられなくなります。次は衆議院選挙ーーっまり政権選択 の獲得議席が過半数を大きく上回った理由として、「安倍首 の選挙です。民進党はじめ野党は、まずそれぞれ自分たちの 相の政策が評価されたから」と答えた人は一五パーセントで 政策、政権構想を高く掲げて闘わなくてはいけない。 す。自民党、安倍首相への評価は必ずしも高くない一方、 その中で、今後、党内できちんとしたマネジメントが求め られるテーマがあります。 世「野党に魅力がなかったから」と回答した人は七一バーセン トに達しています。 一つはいま言われた憲法です。岡田代表は、安倍政権下で 選挙応援で各地を回って、三年前の参院選よりは、民進党 の憲法改正については反対、今回の選挙でも「三分の二阻 止」を主張しました。 に期待する声もあると思いました。しかし、街頭演説のあと 商店街を歩いていると、「どんなに聞こえのいいことを言っ 安倍自民党は今回含め過去四回の選挙で、すべて経済を前 ても胸に響かない」「民主党は嘘つきだ。『高速タダ』と言っ 面に出して闘いました。しかし、その後の国会では、選挙の たのに、ここまで来るのに私は高速料金を払った」とおっし 時には明確に争点になっていなかった特定秘密保護法や安全 やる方がいた。三年三カ月間の民主党政権の失敗と、その後 保障法制を数の論理で強行採決した。乱暴な手法が続いてき の党のあり方に対して、失望、不信感が払拭されていないと たことをふまえて、岡田代表が安倍政権下でまともな憲法論 議ができるのかと懸念したことは、理解できます。 肌で感じました。 その中にあって、今回の選挙で民進党は三二議席を獲得し ただ、希望的観測で二つ申し上げるなら、まず公明党は三 分の二の議席を占めた「改憲勢力」としてカウントされてい ました。三年前の一七議席と比較すれば、若干の回復傾向に ある。また野党共闘については、前回は一人区での野党獲得 ますが、その支持母体である宗教団体は、九条を含む憲法改 議席は岩手と沖縄の二議席でしたが、今回は一一勝一一一敗。 正論には相当慎重な姿勢をとっています。ですから公明党ま 共闘ゆえに離れた票もあるとは思いますが、三二の一人区全 で憲法改正論を拙速に進めるとは考えづらい 部で野党統一候補を立てたことで、票の受け皿ができた。大 もう一つ、先ほど挙げた安保法制などと違って、憲法改正 成果とまではいきませんが、各党バラバラで闘っていたらも には、最後に国民投票の手続きがあります。国民の意思によ っと悲惨な結果になっていたはずです。 る歯止めがかかるわけで、自民党側も、これまでのような無 しかし、ここで満足していたら、民進党は野党の地位から茶が通るとはさすがに考えていないでしよう。 特集 1
動的になり、その中でリペラルな言説や動きが中枢を占める いるとなると、強い意志を持った人が出てきたら何でもでき に至った時期がありました。それが、いつの間にか完全にネ てしまう。そのことにもう少し危機感を抱くべきです。 オリペラリズムに収斂され、もはやネオリべラリズムは自由 議院内閣制の母国イギリスですら二〇一一年に議会任期固 主義の一派とも呼べないような、単なる既存の大企業支配に 定法を定め、無制限の解散はできなくなっています。アメリ なってしまった。今回、それに対する抵抗運動の中からリべ 力では、世界最強の軍隊の最高司令官でもある大統領を選ぶ ラルな市民運動が立ち上がり、共産党ですら大きく変化して に際して、長い時間をかけて、その人物について国民的な議 います。従来型の教条主義的な団体行動なのか、それを打破論をします。これらに鑑みると、国民的な議論もなく首相の もっ する超人があらわれるのを待つのかという形ではない、 座に就き、自由に解散権を行使して国会議員としての地位を と緩やかな個々人のつながりの中で、少しずつ現状を変えて奪うということは、相当に問題ではないか。改めて七条解散 いく取り組みが、市民社会の中で相当程度広がりつつありま 説でいいのかを問題にしなければいけないと思います。 す。ただ、それを政党政治でプレークスルーするのは容易で 中野いっからか単純に、憲法に明確な根拠が一切ないに はなく、今回は足踏みを余儀なくされてしまった。 もかかわらず、解散は首相の専管事項だとされ、多くの人は 青井「セカンドチャンス」に関係すると思うのですが、 そういうものだと思い込んでいるか、特に問題意識を持たな 衆議院が任期満了したのはいままでにたった一回で、内閣総 いでいる。残念なのは、メディア、ジャーナリズムに身を置 理大臣の解散権行使による任期途中での解散が常態化してい く人たちが現状追認、事なかれ主義に陥って、議院内閣制に ます。それが、非常に強い。ハワーを持っ安倍政権の下での選おいても解散権は制限されるのが世界的潮流だという議論や、 挙に次ぐ選挙で、あたかも信任を得ているという外観づくり そもそも何で首相の専管事項になっているのかについての議 に使われてきた。この無制限の衆議院の解散はやはり変なの 論を喚起することがなかった。むしろ首相が争点を隠してう のではないか。憲法の定める議院内閣制という政治構造の難し まく逃げ切ったとか、勝てばいいという論調が主流で、選挙 市さが露呈している。流動性が出て来たいまの「セカンドチャ のゲーム化に鈍感になっています。企業の支配がメディア業 す 返ンス」を生かさないと、悪い先例が積み上げられて、憲法の 界に浸透していることの現れでしようが、いまのままで、も 打下での政治が不安定化する一方ではないでしようか。強大な し改憲が発議されて国民投票に向かうことになったら、決し 力を持つ人がいつでも解散できるとなると、ただでさえ不安 てメディアの中での自由闊達な議論は存在しないだろうとす 改 定化するわけですが、さらに市民社会が政治から分断されて でに予見できるくらい恐ろしい状況だと思っています。 特集 1
解としてはそれを認めないダブルスタンダードが続いてきた。 二〇〇〇年までの時期に住んでいた親から生まれた子孫の ところが二〇一六年版『ロシア政府報告書』は「汚染地域 放射線の影響による遺伝性疾患の割合は、ロシア平均指標 の〇・〇八 % である。五 0 以上 / ( 退去対象地域及び移住権 に住民が居住することによる次世代の健康への影響」という 項目を設けて、放射線被曝の影響による遺伝的疾患の可能性 付き居住地域 ) の場合、ロシア平均指標の〇・四 % である。 界 世を論じている。 前者 ( 訳注二 5 五 0 の地域 ) では住民一三〇万人に対して、 それによれば、「先天異常 ( 形成不全 ) 、変形、染色体異常」 一生涯のうち一六〇件の遺伝的要因による疾患が、後者 の件数が、近年 ( 二〇一〇 5 二〇一四年 ) 、汚染地域でロシア全 ( 訳注】五 0 以上の地域 ) の場合、住民二三万人に対して一生 国平均より統計上有意に高い ( 前者は一〇万人に二五三件で、後 涯のうち一四〇件の遺伝的要因による疾患がありえる。一一 者は一〇万人に二〇九件 ) 。しかし、これをすべてチェルノブイ 〇〇〇年以降に生まれた子孫の放射線による遺伝性疾患の リ原発事故による汚染の影響と認めるわけではない。汚染地 割合は、一一〇〇〇年より前に生まれた子孫の場合と比べて 域において行なわれる特別健診の影響で、遺伝的疾患の検出 五分の一である 件数が増えている可能性も指摘する。 同報告書が遺伝的要因による疾患のリスクを認めるのは、 ここで言われている「ロシア平均指標」がどのくらいで、 汚染地域の住民から二〇〇〇年までに生まれた子どもたちの どのような計算式で汚染地域における「放射線の影響による ケースである ( それ以後に生まれた子どもには、遺伝性疾患と両親の遺伝性疾患」の割合が導き出されるのか、詳細な説明はない。 被曝量との相関関係が見られないと指摘 ) 。 そのため、この割合の計算がどの程度妥当なのか、評価する 同報告書は、より汚染度の高い地域 ( 五 0 以上 / 邑の住民 ことは難しい から二〇〇〇年までの時期に生まれた子どもの世代に、「放 しかしここで重要なのは、今まで『ロシア政府報告書』で 射線の影響による遺伝性疾患」の割合が相対的に高いという。使われることのなかった「放射線の影響による遺伝性疾患」 該当箇所を引用する。 という言葉が使われていることだ。そして限定的にせよ、そ の「放射線の影響による遺伝性疾患」があると認めたことだ。 二〇〇七年勧告に則した保守的評価では、汚染度 ニ五年間の特別健康診断の成果 が一 05 五 0 / 扁 ( 特恵的社会経済的ステータス付きゾーン ) に
に福島に入ったのを皮切りに七月九日ま権交代が起きることはないのに「民進党、に入れた無党派層は約五〇 % しかなく、 での実質的な選挙期間に一一一一都道府県で共産党で政治が不安定になる」といった ほとんど自民党候補と差がなかった ( 七 月一一日付新潟日報、熊本日日新聞 ) 。激戦と 街頭演説をしたが、重点区と位置づけたものばかりだった。 これらの一人区には、青森、福島、新潟、こうした選挙区の街頭では「アベノミ伝えられ有権者の関心が高まり、安倍氏 世長野に三回、山梨、三重などには二回と、クスはいつまでも道半ばと言えていし が遠ざけようとした政権に批判的な無党 他の選挙区が実質「無風区」であったこ民間企業で予定通りに実績を上げなかっ派層が投票に行ったことが、改選一人区 ともあるにせよ、異例ともいえる複数回たら倒産してしまう」 ( 五〇代男性 ) 、「前での野党候補の勝利につながったことが の応援に入った。 回選でには反対と言っていた」分かる。 併せて自民党は徹底した組織戦を展開 ( 四〇代女性 ) などの声が多く、安倍氏の結局、劣勢だった候補は安倍氏が重点 した。国会議員の秘書団を激戦区に集中演説では野党候補への投票を考える有権的に支援しても敗れた。個別政策に焦点 的に投入し、後援会や支援企業回りを徹者を翻意させることはできなかった。 があたり、アベノミクスが否定された時、 底的に行った。期日前投票に行くよう促さらに青森で九・〇六ポイント、新潟いかに自民党への支持が弱いものなのか し、投票すると交付される「投票済証明三・九五ポイント、長野五・一四ポイントを如実に表した格好となった。前回選で 書」の提出を求める陣営もあった。安倍など、激戦となった選挙区では前回選よ一一敗しなかった改選一人区で、自民党は 氏も市町村長や地方議員、有力企業の幹り軒並み投票率が上がった。しかも出口福島の岩城光英氏、沖縄で島尻安伊子氏 部らに自ら電話をかけ、支援を求めたと調査を見ると、投票率が上がった選挙区の二閣僚を含め、計一一敗を喫した。 される。 では、あまり上がらなかった選挙区に比 都市部で強い自民党 だが安倍氏は、有権者がなぜその選挙べ、野党候補に投票した無党派層の割合 ロ 区で野党候補を支援しているのかを気にが高い。例えば新潟では無党派層の約六改選一人区で苦戦が続いても自民党が していないのか、あるいは答えがないの六 % が野党統一候補の森裕子氏に投票し、勝利を収めることができたのは、これま か、街頭演説で「個別争点」にはほとん自民党候補に投票したのは約三〇 % だつで地方・郡部に偏っていた支持を、都市 ど触れなかった。強調したのは、アベノたが、地震もあって投票率が〇・八四ポ部でも広げていることが背景にある。自 ミクスの成果と野党批判、参院選では政イント下がった熊本では、野党統一候補民党は都市部が大半の改選複数区で擁立 持集わ
事故で明らかになったように、実際の避難、被害の救済など は四年間二七回を数え、高知市民は二人の無罪を信じた。し の住民対策は自治体の責任である。新潟県や滋賀県の知事が かし判決では、裁判長は高知バルプの公害を厳しく批判した 原発再開について慎重で、事実上反対しているのは重要であ が、被告の行為を正当防衛と認めず、社会秩序を犯したとし る。原発再開に反対の鹿児島県知事が誕生したように、今後て罰金刑を科した。被告の山崎圭一は優れた技術者で、機械 自治体の首長に原発反対派が増えてくるであろう。この機会 メーカーの社長であり、事務局長坂本九郎は長年小学校の教 に原発の設置、操業再開について、より厳しい協定、さらに 師を務め、市民から尊敬を受けていた。 自治体の承認の権利が求められてよいのではないか。 この事件のあと汚染企業の高知バルプは市から撤退した。 ◆非合法の差し止めの教訓 ドプ川とされていた江ノロ川には清流が戻って市民の憩いの 戦後史の中で、市民運動が「二つの道」を閉ざされて、暴場所となり、魚の死滅していた浦戸湾は今や魚の宝庫となっ 力を使わざるを得なかった公害事件がある。高知バルプエ業 ている。私は宇井純らとともにこの異例の刑事事件の被告の 生コン投入事件である。高知。ハルプの排水が住宅地の中を流 証人として二人を弁護した。今年の初め、久しぶりに当時の れる江ノロ川を硫化水素の悪臭芬々たるドプ川にし、高知県資料を集めるために高知市を訪ねた。そこで浦戸湾を見下ろ の母なる浦戸湾を死の海にしたことに抗議した「浦一尸湾を守 す丘の上に地元の経営者たちが寄付をして作った山崎圭一の る会」は、企業や県と交渉を重ね、あらゆる合法的な行動を顕彰碑を見た。国家は彼を罪人としたが、地元は彼を浦戸湾 したがその要求は阻まれた。一九七一年六月「守る会」の代 の自然を回復した義人・恩人として表彰しているのである。 表山崎圭一と坂本九郎は万策尽きたと考え、発生源の高知バ 環境権による差し止めが裁判所で認められなかった時代に起 ルプの排水管を生コンクリートでうめて、工場排水を一二時 こった事件といってよい。これは重要な教訓である。もし裁 間止め、一時的に環境回復の実験をした。多くの市民がこの 判所で人格権や環境権に基づく差し止めが認められず、政府 行為をやむを得ないものとして支持したので、検察当局は六 が地方自治を無視して自治体の環境保全の決定を認めない場 訓カ月間ためらっていたが、威力業務妨害罪で起訴した。この 合には、高知。ハルプ事件のような事件が起こらないとは言え よい。もしまたこういうことが起こるようでは民主主義国家 史裁判は刑事事件にもかかわらず、異例の公害裁判の形をとっ てすすめられ、被告側は八人の研究者を含む証人をたて、高 にとって、恥辱ではないか。 ◆環境権と憲法 知。ハルプの犯罪的な行為を告発し、一一人の行為は環境破壊を 戦止める正当防衛で、裁かれるのは高知バルプだとした。公判 日本環境会議は設立の時から環境権の確立を主張してきた。
117 で「環境破壊」に関する最初の社会科学の学際的国際シンポ ジウムを開いた。この会議では ( 国民総生産 ) は福祉の 指標にはならず、これまで社会的費用Ⅱ外部不経済として対 噐髯彎諟象にしなかった公害・環境問題を評価して経済に内部イする のヘ ことなどを決め、さらに最後の東京決議で、基本的人権とし て環境権を提唱した。その後公害研究委員会は、一九七一年 全生 みやもと・けんいち一九三〇年生まれ。大阪市立 大学名誉教授、滋賀大学名誉教授。財政学・環境経済 9 には『公害研究』 ( のちに『環境と公害』、岩波書店刊 ) という最 学専攻。「戦後日本公害史論」 ( 岩波書店 ) で第一〇六 保再 初の学際的環境総合誌を機関誌として発刊した。一九七九年、 回日本学士院賞受賞。ほかに「恐るべき公害』 ( 共著、 岩波新書 ) 、「環境経済学新版」「維持可能な社会に向 かって」「日本社会の 境域 環境政策の後退を阻止し国際・国内的な環境問題の前進を図 可能性』 ( 以上、岩波一、ろうとして、公害研究委員会は日弁連公害対策委員会などと 書店 ) など著書多数。 界 《環地宮本憲一 相談して日本環境会議を結成した。これが今日国内外で活動 し、環境 ZCO の理論的支柱となっている。この初代の理事 公害問題は、足尾鉱毒事件をはじめ戦前から深刻な事件を 長は都留重人 ( 現在寺西俊一 ) 、事務局長は私 ( 同大島堅一 ) で あった。 引き起こしている。この悲劇の足尾の二の舞はしたくないと して、戦前公害防止対策も進んでいたのである。ところが、 第一〇六回日本学士院賞を受賞した拙著『戦後日本公害史 戦争によって公害・環境問題の研究は断絶した。戦後の国語 論』は、『恐るべき公害』出版後五〇年の研究の成果である。 の辞書には公害という一言葉はなく、一九六四年京都大学衛生 それはこの公害研究委員会の共同研究に負うところが多い。 工学の庄司光と私が執筆した『恐るべき公害』 ( 岩波新書 ) が環境経済・政策学会は植田和弘や寺西俊一らによって一一一年 最初の公害問題の学際的啓蒙書である。これと前後して、都前に結成された。まだ若い学会であるが、地球環境問題が国 留重人を委員長として、日本最初の学際的な公害研究委員会際政治経済の重大問題になったことの反映で、研究者が増え、 が設立されたが、 集まった研究者は七人しかおらず、うち経会員は一四〇〇人を数える。半世紀前には公害に関心を持っ 済学者は三人であった。世界社会科学評議会は都留重人を中 経済学者が三人しかいなかったことを思えば、この分野がい 心に公害研究委員会を事務局にして、一九七〇年にレオンチ かに急激に重要な研究対象になったかを示している。研究は エフ、カップ、サックスなど内外一流の研究者を集め、東京 広がり、国立大学で環境経済学関連の講義は行われているが、
した公認、推薦候補のうち、北海道の一票するケースだ。東北の改選一人区でのそれが強い支持によるものというよりは、 人をのぞき当選したほか、比例代表でも出口調査を報じた新聞各社の報道をみる「個別争点」がなく、現状では「自民党 一九議席を獲得し、小泉プームに湧いたと、青森、福島で自民党支持層の一五 % 以外に選択肢がない」という弱い理由に 二〇〇」年の第一九回参院選の二〇議席弱が野党候補に流れていた。「二割もな加え、アベノミクスの恩恵を地方よりは に次ぐ議席数を得た。 いのか」と思われるかもしれないが、自受けている人が都市部に多いためではな かって自民党は公共工事や手厚い農業民党支持層は野党で最も支持率が高い民いかと思われる。 保護策などの予算措置を背景に地方で圧進党の約二倍あることから、一〇 % でも、 「貯金」と「定数増」 ロ 倒的な支持を得る一方、自民党支持層が自民党候補者から相当な票数が流れ、野 少なく、批判的な無党派層が多い都市部党候補者との差を縮めてしまう。一一つ目改憲勢力が三分の一一に達することがで では得票率が低かった。自民党が野党だは自民党や保守層が分裂し、候補者をそきた理由として、前回選による「貯金」 った二〇一〇年の一三回参院選では、自れぞれ立てたり、どちらかが野党候補支と選挙制度改革に伴う「定数増」があっ 民党の比例代表の全国得票率は二四・〇援に回ったりする「内部分裂型」のケーたことも指摘しておきたい。定数の三分 七 % で、北陸や九州では三〇 % を超えるスで、山形や山梨がこれにあたる。山形の二にあたる一六二議席を得るには、こ 県もあったが、壅曇神奈川、愛知ではでは自民党支持層の約三〇 % が野党統一の参院選で七四議席に達すれば可能だっ 約二〇 % しか得票できなかった。ところ候補の無所属舟山康江氏に投票した。三た。非改選議員のうち、「安倍政権下で 略 倍が今回は、全国得票率が三五・九一 % とつ目のケースは、おととしの沖縄県知事の憲法改正に賛成する」とした、井上義 安 な一〇年より約一一ポイント上がる一方、選や、政権交代した〇九年の衆院選時の行氏、渡辺美知太郎氏、松沢成文氏、ア 周 かって「弱かった」三都県でも全国得票ように、自民党支持層の半数前後が野党ントニオ猪木氏の無所属四人と、改憲を た 推進、容認する四党議員で八八議席もあ 率と比べてマイナス一 % 前後しか落ち込候補に入れるというケースである。 に ったためだ。 手まず、約三四 % を獲得したのである。 この参院選では、こうした負けパター を 自民党が選挙区で負けるパターンは主ンが都市部ではほとんど出現せず、自民前回の第一一三回参院選は、旧民主党政 の に三つあるとされる。一つ目は自民党支党支持層は九〇 % 以上が自民党あるいは権から自公政権に戻って半年しかたって 分 おらず、自民党は選挙区と比例代表を組 持者でありながら、造反し野党候補に投公明党の候補者に投票していた。ただ、 、。特集 1