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検索対象: 世界 2016年9月号
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1. 世界 2016年9月号

大人に贈る子どもの文学一 日の沈む国から・ー 新刊案内に表示した発売日は小社出庫日です 8-2016 他 の そ 随 2 評 本 日 本の楽しみや慰めなくして子ども時代を生きのびることは 6 9 9 2 0 [ できなかったという著者は、児童文学研究者となり、優れ た作品や評論の翻訳に情熱を注いだ。子どもの文学の価値 ノ 7 書 カ図売 いのくまようこ氏は、を明らかにして大人たちに知ってもらいたい、 と願い続け製 児童文学者 上般発 て六〇年。子どもに向かって書く作家たちの真髄に迫り、 六劇 幸福を描く多様な物語の世界へと読者を誘う。 四国・ 他 の そ 円 随 0 0 論 2 評 ー政治・社会論集 本 日 頁 国内的文脈と国際的文脈の「戦後ーのズレ、「災後ーと「戦後」の共存という事 加藤典洋 力とうのりひろ氏は、 態が、この社会の新たな問題を考えるための指標として浮上している。『敗戦後←館 文芸評論家 ) 論』『戦後入門』と刺激的な議論を展開してきた著者の、災後日本社会論。 カ図 →発 六 8 四 ◆私たちがいま、直視すべき日本社会の実相 ◆人生を新たな目で見直すために 9 月日発売 4

2. 世界 2016年9月号

世界 SEKAI 2 0 1 6 . 9 ー 210 目Ⅲ 査ための飼料 ( 飼料用 欠いては、構造改革に 類調 乳況米ではない ) 用地、あ よる生産コスト削減も 取 る、ま放牧地として 移 意味をなさない。土地 類摂し。 推 年肉養 栄活用することが、最 を主たる生産要素とす の 類働善の選択肢のように る農業の価格競争力は 入 出 3 年魚労 0 生見える。 圧倒的に天賦不動の土 地資源に依存し、可変 物そのように言えば、 産 年果 タ輸出拡大による成長農 的な資本や労働 ( 技 支 図 菜デの余地はあるという 易術 ) が関与する余地は 3 年野 0 貿 答えが返ってきそう 極めて小さいからであ 3 円 だ。しかし、輸出が 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 る ( これは農業経済学の 3 年 . ・月・ . 加 0 8 7 6 広 ) 4 っ t) 2 1 つ」っ 4 5 ( 0 7 3 輸入増大による国産 イロハのイである ) 。最 米・エ 人 3 農産物の市場縮小を も競争力の強い世界の 0 年加 理め合わせる可能性国々との競争力の差は、経営規模拡大や生産資材コストの削 0 LO 0 ロ 0 0 LO 0 LO 4 ( 0 っ 0 CV ( こ 1 一 1 はゼロである。輸出減で埋まるものではないのである。それは戦後フランス農業 額は年々増加してお が実証したことではなかったか。 り、特に二〇一三年以降の増加は著しいが、それでも貿易赤 細切れの何十枚もの田んばを合わせて計三〇ヘクタールを 字 ( 輸入超過 ) 増加は止まらない ( 図 2 、輸入が二〇〇九年から一 耕す日本の最大規模稲作経営が、一枚三〇ヘクタールの田ん 時的に急減しているのは、穀物国際価格の急落と円高の急進のため ) 。 ばを計数千ヘクタールも耕す米国の稲作経営に勝てるはずが E--AO-«が実現すれば輸入はますます増えるだろう。それでも、 ない。日本の主食用米と競合するカリフォルニア米中粒種の 構造改革による生産コスト削減で輸入品に対抗できると言う 国際価格はトン七四五ドル ( 今年三月平均 ) 、一ドル一二〇円 のだろうか としてもトン八万九四〇〇円、六〇キロ当たり五三六四円だ。 それこそ安倍農政の根本的誤りである。適切な国境保護を 日本主食用米の平均生産費 ( 二〇一四年 ) 、一万五四一六円の 図 1 1 人 1 日当たり食品消費量 輸出額一 ( 年 )

3. 世界 2016年9月号

なのだろう。そして、この二〇一八年を「日本におけるロシ 背景には、中国の海洋覇権をめぐる関係諸国との対立が深 ア年」、「ロシアにおける日本年」とすることで合意したとい 刻化している事情がある。中国の突出を防ぐうえで、ロシア う ( 毎日新聞、一一〇一六年五月八日付 ) 。 が果たせる役割は大きいだろう。アジア太平洋の安定を守る 次なるマイルストンは、九月初旬にロシア極東のウラジオ ためには、ロシアを中国の追従国にさせず、中国に対してバ ストクで開催される東方経済フォーラムである。安倍総理は ランスを保てる立場にしておく必要がある。この点で、日米 ウラジオストクを訪問し、プーチン大統領との次の首脳会談 は認識を共有しているはずである。 に臨む。またそこに至るあいだには東京とモスクワで二度の もっとも、アメリカにとって死活的に重要なのもまた、中 次官級会談が持たれ、安倍総理がソチで提案した「新しい発国との関係である。先ごろ勤務先の研究所で、米中経済の連 想に基づく未来志向のアプローチ」について協議されるとい 関性について基礎的な調査をした。米中経済は貿易面では産 う。おそらくこれは、将来の日ロ関係のあるべき姿を両国間 業分野と工程の両面で補完性があり、安定していると考えら で共有し、それに向けて協力関係を積み上げていくというこ れること、他方金融面では、最近数年間の変化として、中国 とかと思われる。会談の具体的な中身は不明だが、やってみ が対米輸出で獲得したドルがアメリカに還流しなくなってい る価値はあるだろう。日、ロ新時代が開かれる可能性はある。 る様子が見てとれ、中国政府が外貨準備の運用を米国債一辺 倒から分散し、戦略的に多様化していることなどがわかった。 最後に、アメリカが日ロ交渉をどうみているかについて、 が、それでも米国債の保有残高は維持している。 簡単に述べて小稿を締め括りたい。日本はアメリカの警告を アメリカにとり、中国はアジアでもっとも重要な権益であ 無視してロシアとの関係を改善しようとしている、と危ぶむ る。したがって私たちは、アメリカと中国が、常により緊密 渉向きもある。しかし、安倍外交の基軸が日米関係の揺るぎな な関係の構築をめざすのは当然のことと考えなければならず、 交 い安定にあることに疑いはない「四月、アメリカ国務省のス 米中関係の深化と再構築が着々と進められていると見ておく たポークスマンは記者の問いに対し「我々はアメリカが日ロ接 必要があるだろう。「共産圏分析家などは偉そうな顔をして 近の蚊帳の外に置かれているとは思っていない」とはっきり いるが、本当に難しいのは米国の動向の分析なのだ」とは、 ク答えている ( ウォールストリート・ジャーナル、二〇一六年五月五日 一九七一一年の米中国交正常化時を振り返った故牛場信彦兀駐 ス モ付 ) 。 米大使の感想である。

4. 世界 2016年9月号

が醸成されるのは、大前提としておかしい 中野戦後の憲法論争は、九条を守るのか変えるのかとい う議論がどうしても中心でしたが、現状はそれにとどまらな すべて、それこそファウンデーションから変えてしまお 界 世うというところまできています。あるいはおおさか維新に典 型的に見られる「ネオリペ的改憲論」ーー九六条改憲論もそ うだと思うのですがーーーは憲法を統治の道具として扱ってい る。国家権力に箍をはめるものとして憲法があるのではなく て、統治機構改革の延長として、時代に合わないものから変 くせもの えていくというもので、こちらのほうが曲者ですね。 新自由主義的な政治の特徴は、かっての一党独裁の共産主 義が「革命が失敗しているのは革命が足りないからだ」とい う論理に陥るのと同じように、「改革がまだ成功していない のは改革が足りないからだ」と、常に改革を標榜するわけで、 そのある種のなれの果てが憲法に手をつけようという議論で す。放っておくとアベノミクスがうまくいかないのは憲法が 悪いからだという話にすらなって、第三の矢のうちの一本に なるかもしれない。そういう議論の飛躍によって統治機構の 部分でクセ球ーーおおさか維新が参院選で具体的に挙げたの は、教育の無償化、統治機構改革、憲法裁判所の設置ーーを 投げて議論を集約させようという、いわゆる「お試し改憲」 の立場に立っと、安倍さんの任期中に可能だし、そこで抵抗 感をなくすような方向で攻めてくる可能性はある。 青井とすると、なんで憲法を改正したいのかがわからな 持集 1 = 、 ~ たが いと言えばわからない。なんで憲法改正したいんですかね。 中野歴史修正主義、いわゆるリビジョニズムと、憲法を リバイズ ( 改訂 ) したいという別の意味でのリビジョニズム が通底していると思うんです。それは戦後の体制そのものを、 サンフランシスコ体制から戦後の日本国憲法含めて、押し付 けられたと感じている人たちが、少しずつでも変えたいとい う情念が根幹にある気がします。 青井同感です。日本国憲法以降がいやなんだろうと思い ますね。その前に戻りたいというか、日本国憲法によって押 し付けられた価値観も含めて性に合わないということになる と、「理由なき改憲」にほば近くなるわけです。前近代と近 代とが倒錯しているともたぶん思っていない。むしろいまが 倒錯状況であって、天皇を戴く「特別な国」なんだから、倒 錯した状況をもとの正常に戻したいという気持ちがうかがわ れる。もはや理性的な議論の対象ではないと思うんです。 中野そうですね。ことの性質上、二極化した議論にしか なり得ない。落としどころを探るような議論の乗り方をして もむだだと思います。 右派のこの情念は、戦後ずっとそうだったわけではなくて、 自民党は結党以来六〇年間、改憲を目指してきたかのように 言いますが、真っ赤な嘘です。実際は、九〇年代の半ばぐら 、には、党是としての改憲論を除くことさえ検討していた。 それがまさに先ほどのリべラリズムの時期だったんですが、 その自民党がいまなぜここまで先祖返り的な様相を呈してい

5. 世界 2016年9月号

「改憲」を 打ち返す 市民のカ 対談 中野晃一 青井未帆 特集 1 なかの・こういち一九七 0 年生まれ。東京大学文学部哲学 科およびオックスフォード大学 哲学・政治コース卒業、プリン 当 " ( ′しストン大学で博士号を取得。現 在、上智大学国際教養学部教授。 専攻は比較政治学、日本政治、 政治思想。著書に「戦後日本の 国家保守主義ー内務・自治官僚 の軌跡」 ( 岩波書店 ) 、「右傾化 する日本政治」 ( 岩波新書 ) など。 〈あおい・みほ一九七三年生 まれ。国際基督教大学教養学部 一第、ー社会科学科卒業。東京大学大学 院法学政治学研究科修士課程修 了、博士課程単位取得満期退学。 」 ( を ( 現在、学習院大学大学院法務研 究科教授。専攻は憲法学。著書 心価に「憲法と政治』 ( 岩波新書 ) 、「国 〃川家安全保障基本法批判」 ( 岩波 ブックレット ) 、「改憲の何が問 = を「〔題か ( 共編著、岩波書店 ) など。 市民の政治参加第一幕 ーー参議院選挙の結果、衆参両院で改憲の発議に必要な三分のニの 議席を改憲勢力が確保しました。この現実を受けて、これから安倍 界政権の改憲の動きをどう封じていくのか、そして市民が自分たちの 手で政治を変えることができるのか、戦略を含めてお話しいただき たいと思います。まず選挙の総括を、中野さんにお願いします。 中野参議院選挙は極めて複雑かついびつな選挙制度で戦 われています。民主党政権だった六年前の参院選ですら、得 票数は民主党が上回っていたにもかかわらず、結果的にはい わゆる「ねじれ国会」となって菅政権失速の大きな要因にな りました。今回の参院選は、民主党がその後崩壊に近い形で 下野し、野党が分断されて極めて弱体化した中で迎えたわけ です。この状況をどうにかしないと三分の二を阻止できない ということで、市民が後押しする形で、三二ある一人区のす べてで野党共闘が成立し、候補の事実上の一本化がなされま した。一人区はそもそも人口が少なく、原発立地も多く、自 民党に有利なところです。結果、一一の選挙区で勝利をおさ めたのは一つの成果だとは言えます。しかし一人区以外では、 それぞれの選挙区のサイズによっては野党共闘が実現せず、 比例区に関しては様々な構想が出ては潰え、それぞれの政党 が独自の比例名簿で戦う形になりました。 私が市民連合にかかわる中で自分なりに立てていた戦略で は、立憲主義の立場に立っ野党四党が改憲勢力に明確に対峙

6. 世界 2016年9月号

まやかし 考える 「ポスト・デモ クラシー」社会で シュトレーク・ ーマス 論争から インタビュー 「強い農業」の ルポ 動くか、 北方領土問題 インタビュー 「生前退位」から 特 寄 稿 イギリス・ショックのあとで 当とユーロの行方ー 分断された社会は乗り越えられるのかー離脱国民投票後のイギリ , 今井貴子 ( 成蹊大学 ) 英国離脱を読み解く 木・・一旦 ( 東京経済大学 ) ヨーロッパを引き裂く四つのべクトル ハーバーマス訳・解説上一一島憲一 ( 大阪大学名誉教授 ) デモクラシーか資本主義か ? シャンタル・ムフ訳・解説Ⅱ片岡大右 プレグジットは有益なショックになりうる 目」ーー「安倍農政」が「ヨーロツ。ハ型」農業から学ぶべきこと 北林 ~ 一幵后 ( 農業情報研究所 ) 川 一農業成長産業化とぢ妄本 ( 糒 ( 田耕一 ( 九州大学名誉教授 ) 憲法からみた天皇の「公務」そして「生前退位」 「革新と断絶」から読み解く生前退位 原武史 ( 放送大学 ) 象徴天皇制の〃次の代〃 高嶺朝太 (T&CTOffice) 一トランプ・サンダース現象におびえる軍産複合体 ソチからウラジオストク、、「未来志向アプローチ」の行方西、 ( 分、ム明 ( = 「ノミスト ) モスクワから見た日ロ交渉 中曽根行革からアベノミクスまで 日本経済の大転換 セバスチャン・ルシュヴァリエ ( フランス社会科学高等研究院 ) 、聞き手日新川敏光 ( 京都大学 ) ( 大阪市立大学・ ). ーー環境保全の地域再生へ 宮本憲一 滋賀大学名誉教授 ) 一戦後日本公害史の教Ⅱ 一三ロ ュルゲン・ 156 1 1 7 164 195 4 4 139 1 1 2 146

7. 世界 2016年9月号

の転換がある」。それは農業政策の「農民化」による産業主 層の傾斜を予告するものであった。 義の克服を意味する。 「六一年基本法」に代わるものとして制定された「九九年 食料・農業・基本法」は、「食料の安定供給の確保」と「多 産業主義を護持する日本農政 面的機能の発揮」を政策目標に掲げた。そしてその実現のた めに「必要な農地、農業用水その他の農業資源及び農業の担 日本はフランスの「一九六〇年農業基本法」に倣う「六一 い手が確保され、地域の特性に応じてこれらが効率的に組み 年基本法」により、農業だけで他産業従事者と同等の所得を 確保できる「自立経営」の育成を図る「産業主義」農政に乗合わされた望ましい農業構造」を確立することによって「農 業の持続的な発展」を図るとともに、「農業の生産条件の整 り出した。しかし、これは完全に失敗した。高度経済成長に 備及び生活環境の整備その他の福祉の向上」によって「農村 よる他産業従事者の所得の想像を超える上昇で「自立経営」 の振興」を図るとした。 は遠のくばかりだった。離農農家が手放す農地を残る農家が 「六一年基本法」が「農業のにない手として、幾多の困苦 集積して自立経営が創出できるという想定も完全に狂い、兼 に堪えつつ、その務めを果たし、国家社会及び地域社会の重 業化ばかりが進んだ。農地政策は農地改革の基本精神である 自作農主義を護持することで借地による規模拡大を阻む一方、要な形成者として国民の勤勉な能力と創造的精神の源泉たる 使命を全うしてきた」 ( 前文 ) と称えた農業従事者は、ここで 田中内閣の列島改造計画 ( 一九七一一年 ) 以来転用規制が緩和され、 は農地、農業用水その他の農業資源と並ぶ単なる「生産要 土地投機、農地価格暴騰を引き起こした。六〇年代以降、ガ 素」 ( モノ ) に還元される。非効率な生産手段 ( 農家 ) は容 ット、とりわけアメリカの圧力の下での農産物輸入自由化・ 赦なく切り捨てられる。農村は用排水路等の共同管理を通じ 関税引き下げは自立経営を吹き飛ばした。 て農業の持続的発展を支える単なる「手段」に還元される。 想 この事態を受けて、政府は、 ( 「自立経営」ではなく ) 中核的 「産業主義」的要素はむしろ強まったのである。 う「担い手」たる農家を確保することが農政の最大の課題だと 一方で、フランス・農業の命綱となった「多面的機 と言い始めた ( 一九七四年「農業白書」 ) 。しかし、それは産業主義 業 農政の放棄を意味しない。「担い手」とは将来の「自立経能」支払は、「日本型直接支払」 ( 「多面的機能支払」「中山間地域 産 等直接支払」「環境保全型農業直接支援」からなる ) に矮小化された。 成営」の卵であり、自立経営を諦めたわけではないからだ。そ それは、水路の泥上げ、農道の路面維持、農用地の維持・管 農れは失敗した「産業主義」の放棄ではなく、産業主義への一 ( 6 )

8. 世界 2016年9月号

においては離脱派が過半を占めたという。つまり、未来によ たドン・キホーテのような敗退であった。 り大きな責任を担う若者が欧州共同体の中で生きることを期 二つ目は、直前予想でいわれていた「共産党の躍進」が外れ、 前回の参院選の当選者八人を下回る六人にとどまったことで待しているのに、老人たちがその道を塞ぐ選択をしたという ことで、深く考えさせられる。そして、注視すべきは、現代 ある。比例区での共産党の得票率は前回より一 % 伸びたとは 日本の社会的意思決定における高齢者が持つ意味であろう。 いえ、直則予想では「一〇人以上の当選も」とみられていた 政権の政策の行き詰まりと代替案なき野党の悲劇 にもかかわらず躍進は幻に終わった。共産党が主導した野党 選挙戦の最終局面で迷いが交錯したとはいえ、大勢として 共闘は与党に対抗可能な選択肢を提示したともいえるが、共 国民はアベノミクスの継続を選んだ。正気の議論をするなら 産党候補に対する民進党内の拒否反応で共産党自身の議席に ば、アベノミクスの論理などとっくに破綻しており、「道半 つながらなかった。むしろ共闘によって「確かな野党」とい ば」「この道しかない」などといえるものではない。二〇二 ってきた共産党の輪郭がばやけ党勢拡大にはならなかったと 〇年に名目で六〇〇兆円を実現してその果実を国民が 指摘できる。共産党としてはジレンマを抱えながらも国民政 享受することなど虚構にすぎないと気付きながらも、国民の 党への脱皮に向け今回の結果を前向きに総括すべきであろう。 多くが「株高誘導の景気刺激」という共同幻想に乗っている。 三つ目は、一八歳からの政治参加がもたらした意味である。 今回の参院選から投票年齢が一八歳に引き下げられ、約二四何故か。それが都合がよいと思う人たちがいるからである。 〇万人の若者が投票権を得たが、注目された一八歳・一 . 九歳表「アベノミクス三年半の総括」を凝視したい。経世済民、 経済の根幹である国民生活、実体経済は全く動かない。米国 の投票率は四五・五 % であり予想外に高かった。全体の投票 がリーマンショック後の緊急避難対策とした異次元金融緩和 率は五四・七 % である。これまでの投票行動の傾向では、総 を見習って「第一の矢」とし、日銀のマネタリーベースをほば じて高齢者層の投票率が七割近い水準を推移してきたのに比 し、二〇代の投票率はその半分程度であった。この傾向が続四〇〇兆円の水準にまで肥大化させ、金利もマイナス金利な どという異常事態に踏み込んだ。ご本尊の米国が実体経済の けば、日本の政治的意思決定は、「老人の老人による老人の 堅調を背景に量的緩和を終え、政策金利の引き上げ局面を迎 ンための政治」となるであろう。話は逸れるが、六月の英国の ス えているのに、日本は「出口なき金融緩和」に埋没している。 離脱を巡る国民投票において、英国の二〇代の若者の六 の また、財政出動を「第一一の矢」とし、消費税引き上げも出来 六 % はに留まることを支持した。四三歳が分岐点で、そ ぬままさらなる財政出動を模索し続けている。「金利の低い 脳れ以下の若者の過半は残留を支持、それ以上の年齢の層

9. 世界 2016年9月号

カ国に入った同地域の国は六カ国。内訳はインド ( 世界の兵器 を欧州からアジアへ移す」と唱え始めた。何のことはない。 輸入に占めるシェアは一四 % ) 、中国 ( 同四・七 % ) 、豪州 ( 同三・六 その肚の中は前項で述べたようにアジアの軍事市場がどんど % ) 、パキスタン ( 同三・三 % ) 、ベトナム ( 同一一・九 % ) 、韓国 ( 同 ん成長するのに合わせ、軍事産業の国際共同体は大いにアジ 二・六 % ) と続く。特にベトナムは同時期に兵器輸入が六九九 ア市場で皆、稼ぎましようということだ。米国はかっての冷 % という驚異的な伸びを記録した。この急増は、南シナ海の 戦時代の主要兵器市場であった欧州についても、ウクライナ スプラトリー諸島をめぐる中国との領有紛争深刻化への対応紛争を機に、ロシアの脅威に対し Z<E*O の軍備を強化すべ とみられる。のウェゼマン上級研究員は「中国が きだと唱え、ジリ貧だった欧州同盟国の国防費を微増へ転じ 輸入と国内生産の双方で軍事力を増強し続けており、インド、 るのに成功した。欧州市場でもアジア市場でも、世界の軍事 ベトナム、日本など近隣諸国も大幅に軍事力を強化してい 産業には明るい見通しが生まれていた。中東、アフリカの兵 る」と分析した。 器市場については言うまでもない。欧州戦域ではウクライナ 一方、中国は同の発表によれば主要兵器輸出で 内戦を機に、米国主導の Z<+O とロシアの対立の構図が蘇 二〇一一 5 一五年の五年間に、それより前の五年間に比べ八 った。アジア戦域では Z<*0 のような同盟はないが、米国 機 危八 % 増加し、フランスを抜き世界の兵器輸出の五・九 % のシ 主導下に日本、韓国、豪州、ニュージーランド、さらにフィ ナ ェアを占めた。兵器輸出トップの米国、同二位のロシアには リピン、ベトナムなど東南アジア数カ国にインドが加わる緩 南 はるかに及ばないが、「一〇年前と比べ、飛躍的に高性能・ いグループが次第に形成され、中国・北朝鮮と対峙する構図 れ の兆しがある。 Z<+O とロシアの軍事対立は互いに分かり ハイテク兵器の製造能力を持った」 ( 同上 ) 。「死の商人」国際 成 造共同体の人々にとって南シナ海の不穏な状況は、願ってもな 合った、管理された持続的な構造の上に成り立っている。こ ″黄金のチャンス々なのだ。情勢緊迫によってアジア全域れと対照的に、アジアではすべてが始まったばかりで、各国 に 体 の兵器市場が一層膨らむ期待感では、米欧、ロシア、日本の が錯綜した関係にあり、不安定さは南シナ海の危機の後、一 同 際軍事産業も、そして何よりも中国の軍事産業も完璧に共通し 層深刻化するだろう。 国 た立場にある。 ◆語られぬ「軍備管理」とオルタナテイプ安全保障 人 商 ◆「軸足をアジアへ移す」の真意 ーグの平和宮の周囲には、ジャワ通り、バリ通りなど旧 の 死 しばらく前から米国は、中国の軍事力拡大をにらみ「軸足 蘭領東インド ( 今日のインドネシア共和国 ) に由来する名を冠し

10. 世界 2016年9月号

を補償する個別農家 ( あるいは農家集団 ) への直接支払に改め、 三分の一ほどだ。最大規模の一五ヘクタール以上経営の生産 費、一万一五五八円と比較しても半分以下である。進次郎改③環境保全効果の高い営農活動を行うことに伴う追加コスト を支援する「環境保全型農業直接支援」を飛躍的に拡充すべ 革でさらに農機具費二七五一円、肥料費一〇八七円、農薬費 きである。からは離脱し、先に述べたようなフランス 八七〇円、計四七〇八円を半額に減らしても、平均生産費は ーの買いたたきに 山地農業に倣って、グローバル化とスー 一万三〇六二円、最大規模経営の生産費も九二〇四円に減る も負けない真に「強い農業」の構築を目指すべきである。 だけだ。日本の米生産費を米国産レ・ヘルにまで引き下げるに 生産効率を最優先し、最大限の物質的富の「生産」を目的 はどうしたらよいのか、想像もできない。 とする「強い農業」では、安倍首相が言うような ( 二〇一三年 これは牛肉についても同様だ。日本で比較的安い交雑種の 三月の施政方針演説 ) 息をのむほど美しい棚田、伝統ある文化、 部分肉仲間相場 ( 卸売価格、一一〇一五年三月ー一一〇一六年一月平均 ) 美しい故郷は決して守れない。それは、このような日本人に は米豪からの輸入価格の二 5 四倍になる ( 二〇一五年時点 ) 。 とっての至上の価値を破壊するだけである。 畜産クラスターや資材価格引き下げで、どうしてこの差が理 められようか。 1 ) F 「一・ pe 「 net, 「ésistance paysanneS,P 「 e〔・e・ n 一 ve 「・一 ( a 一「 e ・ de E•--'@-A は輸入増大による国産農産物市場の縮小に帰結、日 Grenoble,1982 本農業を成長どころか破滅に追い込むだろう。 ( 2 ) 小稿「フランス山地政策の胎動」『レファレンス』一九九八 年五月号、「フランス山地農業問題とその対策」『レファレンス』一 これを要するに、農業成長産業化の土台はすでに掘り崩さ 九八五年一〇月号 れており、はその跡かたさえ取り払うということだ。 ( 3 ) 同「共通農業政策 (O<P-) の改革とフランス農業の対 農業成長産業化は安倍政権が妄想する空中楼閣にすぎない。 応ーー『生産主義』克服の視点から」『レファレンス』一九九六年一 想ではどうすればいいのか。まず、「日本型直接支払」は 二月号 ( 4 ) 同「農業交渉における農業の『多面的機能』」『レファ う型直接支払に改めるべきである。すなわち、①水路の泥上 レンス』二〇〇〇年三月号、五二頁 とげ・農道の路面維持などの地域の共同活動を支援する「多面 ( 5 ) 同「方向転換目指すフランス農政ーーー新農業基本法制定に向 業 的機能支払」は、ト ′規模・兼業農家を含むすべての個別農家 産 けて」『レファレンス』一九九九年三月号、五八頁 成 ( あるいは農家集団 ) に支払われる最低限の所得保証直接支払に ( 6 ) 中村宗弘『近代農業思想の史的発展』丸善出版サービスセン ター、二〇〇七年、二三三頁 農改め、②「中山間地域等直接支払」は平地に対するハンディ なかま