8 1 2 ア 9 シアにおける事故被害克服の総括と展望一九八六ー二〇一 この二〇一一年版 故件 六』。序文、本文六章、結論部、参考文献情報を含めて全一一 科 『ウクライナ政府報告 フ 発活 成ト 書』に比べれば、ロシ 〇二頁。 = 一〇年間におよぶ事故被害対策の総括、健康調査デ 構 リ常 ータの評価、今後の政策課題などについてまとめられている。 ア政府報告書のスタン のオ組 界 』フの量プと 世二〇一一年版『ロシア政府報告書』に五年間の蓄積を加え、 スはずっと保守的であ 書び策曝ノ化 告よ施被 三〇年の総括として提示されたのが今回の報告書だ。 報おたの = 況り、健康被害に関する 報告書の作成には、保健省、農業省、放射線衛生基準を管府臣け員チ状考記述も乏しい。個別の 政大拶向業るの参 ア態挨に響作響けン 轄する「連邦消費者権利保護・福祉監督局」や放射線医学の 学者による論文であれ シ事の化影束影お一論 ロ常裁小線収的に組ゾ結ば、ロシアでもウクラ 研究拠点であるロシア保健省管轄「国立医学放射線研究セン 非総最射び学邦取染 ター」、科学アカデミー附属「原子力安全発展問題研究所」 イナでも、より積極的 版フ一害放よ医連の汚 年コミ被のおのア服能行 など、政府機関の専門家が参加している。 に「がん以外」の健康 チデ故故民故シ克射移 プカ事事住事ロ害放の 監修を務めた「非常事態省」は、災害復旧、動乱・軍事行 被害を指摘するものも ある。 動による被害からの住民防護を担当する防衛機関である。チ 文章章章章章章 序 1 一つム 3 4 5 エルノブイリ事故被害に関する問題も同省の管轄である。 それではなぜこの 核武装国ロシアの国防機関である以上、非常事態省が原子 『ロシア政府報告書』を今、取り上げる必要があるのか。理 力の維持・推進に不利になるような、原子力被害情報を積極由は、これがロシア政府としての公式見解を示したものだか 的に出すとは思えない。実際、この二〇一六年版『ロシア政らである。 府報告書』も、健康被害の認定に積極的とは言えない。 個別の学者チームの意見ではなく、政府機関の見解を一小し 同じチェルノブイリ被災国のウクライナは、二〇一一年版 たものとして読むことができる。この報告書に書かれたこと 『政府報告書』で「がん以外」の多種の疾病にチェルノブイリ を、非主流派の異端学説として退けることはできない。 原発事故の影響を認めている ( ウクライナ緊急事態省『チェルノブ 日本で福島第一原発事故の健康影響を否定する立場をとる ィリ事故から二五年【将来へ向けた安全性ーー二〇一一年ウクライナ国 医師たちは、これまで『ロシア政府報告書』やロシア国立医 家報告』今中哲一一監修・京都大学原子炉実験所発行 ) 。 療機関の専門家の論文を引用してきた。この二〇一六年版だ
解としてはそれを認めないダブルスタンダードが続いてきた。 二〇〇〇年までの時期に住んでいた親から生まれた子孫の ところが二〇一六年版『ロシア政府報告書』は「汚染地域 放射線の影響による遺伝性疾患の割合は、ロシア平均指標 の〇・〇八 % である。五 0 以上 / ( 退去対象地域及び移住権 に住民が居住することによる次世代の健康への影響」という 項目を設けて、放射線被曝の影響による遺伝的疾患の可能性 付き居住地域 ) の場合、ロシア平均指標の〇・四 % である。 界 世を論じている。 前者 ( 訳注二 5 五 0 の地域 ) では住民一三〇万人に対して、 それによれば、「先天異常 ( 形成不全 ) 、変形、染色体異常」 一生涯のうち一六〇件の遺伝的要因による疾患が、後者 の件数が、近年 ( 二〇一〇 5 二〇一四年 ) 、汚染地域でロシア全 ( 訳注】五 0 以上の地域 ) の場合、住民二三万人に対して一生 国平均より統計上有意に高い ( 前者は一〇万人に二五三件で、後 涯のうち一四〇件の遺伝的要因による疾患がありえる。一一 者は一〇万人に二〇九件 ) 。しかし、これをすべてチェルノブイ 〇〇〇年以降に生まれた子孫の放射線による遺伝性疾患の リ原発事故による汚染の影響と認めるわけではない。汚染地 割合は、一一〇〇〇年より前に生まれた子孫の場合と比べて 域において行なわれる特別健診の影響で、遺伝的疾患の検出 五分の一である 件数が増えている可能性も指摘する。 同報告書が遺伝的要因による疾患のリスクを認めるのは、 ここで言われている「ロシア平均指標」がどのくらいで、 汚染地域の住民から二〇〇〇年までに生まれた子どもたちの どのような計算式で汚染地域における「放射線の影響による ケースである ( それ以後に生まれた子どもには、遺伝性疾患と両親の遺伝性疾患」の割合が導き出されるのか、詳細な説明はない。 被曝量との相関関係が見られないと指摘 ) 。 そのため、この割合の計算がどの程度妥当なのか、評価する 同報告書は、より汚染度の高い地域 ( 五 0 以上 / 邑の住民 ことは難しい から二〇〇〇年までの時期に生まれた子どもの世代に、「放 しかしここで重要なのは、今まで『ロシア政府報告書』で 射線の影響による遺伝性疾患」の割合が相対的に高いという。使われることのなかった「放射線の影響による遺伝性疾患」 該当箇所を引用する。 という言葉が使われていることだ。そして限定的にせよ、そ の「放射線の影響による遺伝性疾患」があると認めたことだ。 二〇〇七年勧告に則した保守的評価では、汚染度 ニ五年間の特別健康診断の成果 が一 05 五 0 / 扁 ( 特恵的社会経済的ステータス付きゾーン ) に
217 健康診断を続けてきた。事故の健康影響に関して、三〇年間 0 一口シアはどこまで のデータの蓄積がある。広い地域の住民を被災者と認め、全 、被災者を対象とした定期的な健康診断が始まるのは、一九九 一年に「チェルノブイリ法」が成立してからのことである。 健康被害を認めたカ 界 世 チェルノブイリ原発事故の健康影響に関しては、議論が続 いている。調査機関や研究者によって評価は大きく異なる。 イ そうしたなかで、今年、事故三〇年を記念して二〇一六年版 よ ノ 『ロシア政府報告書』が発表された。 ~ 告 今年の報告書では、チェルノブイリの健康被害について、 一 - = = = これまでの『ロシア政府報告書』とは異なる見解が示されて いる。五年前に刊行された二〇一一年版 ( 本誌三月号で一部紹 〔版 介 ) と比較しても、いくつか大きな変化が見える。 年 0 結論から言えば、収束作業員の「血液循環器系疾患」、「甲 状腺がん」にセシウムの汚染が影響している可能性、被災二 故 世への遺伝的影響が、認められた。これらの健康被害につい て、これまでの『ロシア政府報告書』では「考えにくい」と されるか、または一言及すらされていない。ロシアが、三〇年 間の健康調査を踏まえて、どのようにチェルノブイリ事故に よる健康被害を認めたのか。以下、要点を伝えたい。 ニ 0 一六年版『ロシア政府報告書』はなぜ重要なのか この報告書の正式名は『チェルノブイリ事故三〇年ーーーロ おまっ・りようロシア研究者。著書に「 3 ・ⅱとチェ ルノブイリ法・・・ー再建への知恵を受け継ぐ」「原発事故国 家はどう責任を負ったかーーウ クライナとチェルノブイリ法」 尾松亮 ( ともに東洋書店新社 ) ほか。 今年四月二六日で、チェルノブイリ原発事故 ( 一九八六年 ) から三〇年が経過した。主要被災国 ( ロシア、ウクライナ、ペラ ルーシ ) では、事故三〇年を記念したシンポジウムが開かれ、 新しい報告書や論文が発表されている。 これらの国では、チェルノブイリ原発事故被災者に対する 1 ン第 4
前回、五年前に刊行された二〇一一年版『ロシア政府報告 けは認めない、ということはできないはずだ。 日本の首相官邸の公式サイトでは、二〇一四年一月一四日書』でも、「血液循環器系疾患」や被災二世への遺伝的影響 は認定していない。住民の健康被害として唯一認めた「甲状 付のロシア保健省管轄「国立医学放射線研究センター」副所 腺がん」についても、事故時未成年でヨウ素被曝した人々の 長イワノフ教授のメッセージ「福島県民の皆様へ」を掲載し、 みの問題としている。 同教授の福島県における甲状腺がんについての見解 ( 原発事 5 ( 3 ) について二〇一六年版『ロシア 以下、上記 ( 1 ) 故の影響は考えにくい ) を紹介している。 政府報告書』がどう記述しているか、二〇一一年版および国 そのロシア政府が、今回の報告書で原発事故による「がん 際機関による報告書と対比しながら分析する。 以外」の健康被害を認めた。ここに一小された見解は、日本に おいてチェルノブイリの知見を参照する際に、最低限、考慮 ( 1 ) 収束作業員の「血液循環器系疾患」 すべき前提となる。 二〇一一年版『ロシア政府報告書』では、先立っ数年にお ニ 0 一六年版の健康被害に関する見解 いて、チェルノブイリ収東作業員の新規疾病および障害認定 原因のうち、血液循環器系疾患が多いことを指摘している 冒頭で述べた通り、この二〇一六年版『ロシア政府報告 ( 新規疾患全体の一八・六 % 、障害認定全体の四八・七 % ) 。しかし同報 書』の転換点は、 ( 1 ) 収東作業員の「血液循環器系疾患」、 ( 2 ) 「甲状腺がん」にセシウムの汚染が影響している可能性、告書では、これら血液循環器系疾患が「被曝を原因とする」 とは認めていない。 ( 3 ) 作業員や被災住民の子どもの世代への遺伝的影響、を の また二〇〇八年の報告書は、収束作業員に 限定的ながら認めたことである。 ( 国際原子力機関 ) か や ( 世界保健機関 ) など国際機関は、チェルノブイリ原血液循環器系疾患が多いというデータがあることを指摘しな イ がらも、原発事故の影響とは認めていない。以下、該当部分 発事故の健康被害として、上記のような被害を認めていない。 ル を引用する。 「チェルノブイリフォーラム報告書」三〇〇六 ) や Z O チ ( 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 ) 一一〇〇八年報 年 ロシア連邦の復旧作業者の一つの研究により、放射線量は 告書では、上述の健康被害について「別の要因によるもの」 心血管疾患の死亡率と脳血管系疾患の罹患率の両方と統計 事と説明するか、または言及すらしていない。
学的に有意に関連しているという証拠が提供された。観察 心不全、脳血管症などの血液循環器系疾患が多いことは指摘 された脳血管疾患の過剰は、作業したのが六週間未満の されてきた。しかし、『ロシア政府報告書』でここまで明確 に、放射線被曝による血液循環器系疾患があり、それが原因 人々、および累積線量が一五〇を超える人々と結びつけ られている。しかしながら、肥満、喫煙習慣、およびアル で死亡したと認めたのは初めてである。 界 世 コール消費等のような因子に関して、その研究では調整さ さらに二〇一六年版『ロシア政府報告書』では、放射線被 れなかった ( 『放射線の線源と影響』一〇〇八年報曝を原因とする血液循環器系疾患による収東作業員の死亡が 告書〔日本語版〕六一一ー六三頁 ) 今後も増える可能性を指摘する。 確かに血液循環器系疾患は多いが、「喫煙」や「アルコー 放射線被曝による血液循環器系疾患のリスクが、今後も重 ル」などの影響かもしれない、という。 要であると仮定すれば、二〇一六年時点で生存している それに対して二〇一六年版『ロシア政府報告書』は、第四 「ハイリスクグループ」の収東作業員 ( 七二〇〇人 ) のうち、 章「事故の医学的影響」で、次のような見解を示した。 さらに約五五〇件、放射線被曝が原因の血液循環器系疾患 による死亡が予期される ( 同報告書 ) 一九八六年 5 二〇一六年に記録されたこのハイリスクグル ープ ( 筆者注】後述 ) における一四〇〇件の血液循環器系疾患 ここで放射線被曝による血液循環器系疾患が生じたとされ による死亡件数のうち、三六四件を放射線によって引き起る「ハイリスクグループ」とは、チェルノブイリ原発事故収 こされたものと位置づけてよい ( 『ロシア政府報告書』一〇五頁、 東作業員のうち、作業従事期間六週間未満でかつ一五〇ミリ シーベルト以上の被曝をした作業員である。 ここからも分かるように、収束作業員のうち、記録に残る チェルノブイリ収束作業員には血液循環器系疾患で亡くな被曝量が一五〇ミリシーベルトを超えるグループに限定した った人々がおり、それらのうちの一部は「放射線被曝の影認定である。すべての収東作業員に、血液循環器系疾患のリ 響」であるというのだ。 スクを認めているわけではない。 これまでも収東作業員の死因として、心臓虚血症、心筋症、 また収東作業員の死因としての血液循環器系疾患の原因と 傍線筆者 )
「チェルノブイリの健康被害についてはすべて結論がでて積に基づき、被災国ロシアがようやく心血管症について一定 の見解を示せるようになった。そう言えるのではないか。 いる」という意見がある。 原発事故から三〇年後の現在にいたるまで、チェルノブイ しかしそれならばなぜ、同じ国〈ロシア〉の政府報告書で、 リ被災国 ( ロシア、ウクライナ、・ヘラルーシ ) では、被災者とそ 健康被害の評価に五年前との変化が出てくるのか。 の子どもたちを対象にした健診を行なってきた。 「血液循環器系疾患」、「甲状腺がん増加に対するセシウム ロシアでは原発から遠く離れた地域 ( たとえばチェルノブイリ の影響の可能性」、「遺伝的要因による疾患」。 から約八〇〇畑のトウーラ州 ) も含め、健診を続けてきた。上述 どれも、チェルノブイリ被害を調査する一部の研究者たち の通り、対象者には被災二世も含まれる。だからこそ、ここ が以前から指摘してきたことだ。ウクライナでは二〇一一年 まで紹介してきたような健康被害の分析、評価ができるのだ。 の政府報告書で、すでにこれらの健康被害を明確に認めてい このような健康診断を可能にしたのが、チェルノブイリ法の る。さらに、この間政権交代のないロシアの場合、政治的な 理由では、この健康被害評価の変化は説明がっかない。 「全被災者対象の生涯続く健診」という規定だ。 「はっきりいえない」とされてきた多くのことについて、 甲状腺検査にとどまらない検査項目 データと議論の蓄積によって、明確に言えることが増えてき たのではないか。 「本法一三条に示された市民および一九八六年四月一一六日 以降に生まれたそれらの市民の子どもは、『ロシア連邦市民 たとえば、収束作業員の心血管症については、国際機関も に対する無料医療支援国家保障』プログラムの枠内における 被曝の影響を全否定してきたのではない。「継続した調査を 問 らしてみないと分からない」という立場であった。たとえば— 義務的医療保険の対象となり、一生涯にわたり特別健康診断 か ( 予防医学的健康管理 ) を受けなければならない」 や等が共同でまとめた先述のチェルノブイリフ これは、チェルノブイリ法二四条からの引用である。 ブオーラム報告書 ( 二〇〇六 ) は「急性放射線症候群を患ったこ ル とのある作業者や、他の高い被曝を受けた作業者の治療や毎 「一三条に示された市民」とは、収束作業員、汚染地域住 チ 年の健診は続けなければならない。 これには心血管症の定期民、汚染地域からの避難者すべてであり、皆が「一生涯」特 年 別健康診断の対象となる。 検診も含む」 ( 四五頁 ) と指摘していた。このチェルノブイリ チェルノブイリ法に基づく保健省令で、被災地のレベル 事フォーラム報告書から一〇年後の今、三〇年の健康調査の蓄
とのコメントを紹介している。ペラルーシで昨年の時点でも 一七歳以下の甲状腺がんが「他国より明らかに多い」という 事実を前にして、コノブリヤ副院長は首をかしげる。「半減 期が三〇年の放射性セシウムなどによる低線量被曝がどう影 響するかもわかっていない」という。ストリナャ氏が指摘す るのと同じ状況が、・ヘラルーシにもあるようだ。 これらは、現場の医師たちの長年の診断に基づく経験論で ある。ロシアではいまのところ「セシウムの影響による甲状 腺がん発症」を、政府として認めたわけではない。 二〇一六年版『ロシア政府報告書』では、「未成年として ョウ素被曝した人々」のうち、「セシウムの汚染度が高い地 域に一定期間住んでいる」層に、甲状腺がんが特に多いと指 摘する。セシウムの汚染だけで甲状腺がんが生じると認めて いるわけではない。 このことには注意が必要だ。 また同報告書は被災地住民対象の健診を行なっていること が原因で、一定のスクリーニング効果が生じている、との見 ら解を示してもいる。 か プ ( 3 ) 「放射線の影響による遺伝的疾患」 ル 直接事故を体験していない、被災二世以降の世代への健康 チ 影響は、最も評価が難しい問題の一つである。 年 実は、チェルノブイリ被災者保護制度は、放射線の遺伝的 事影響がありうることを前提に組み立てられている。具体的に はチェルノブイリ法二五条が、一定の条件付きで、被災二世 にも社会的支援を認めている。 このチェルノブイリ法二五条に即して、ロシア保健省の研 究機関 ( 連邦国家機関「モスクワ小児科・小児外科研究所」 ) は「児 童の疾病・障害と放射線要因の影響との因果関係確定技術」 ( 二〇一〇 ) というマニュアルを発行している。同マニュアル には次のように述べられている。 ロシア連邦において、「チェルノブイリ原発大災害の結果 放射線影響を受けた市民の社会的保護」法 ( 訳注】チェルノ プイリ法 ) に示された被災者カテゴリーに該当する児童に、 放射線起因の疾病の増加が記録されている。先天性形成不 全、常染色体優性遺伝型の希少遺伝症候群 ( 第一七番染色体 に関連する症候群、ハジュ・チーニー症候群、ヨハンソン・プリザー ド症候群等 ) も含む遺伝子・染色体異常、悪性を含む新生物、 神経・精神疾患などが、ロシア全体の指標を著しく上回っ ている しかしなどの国際機関や国連科学委員会の報告書 は、被曝が原因で遺伝的疾患が生じる可能性を認めていない。 二〇一一年版『ロシア政府報告書』でも、被災一一世への遺伝 的影響についての記述はない。ロシアでは被災者保護制度上 は、遺伝的影響があることを前提としながら、政府の公式見
しては、「ほかの要因が影響していることもありうる」とも 人々は多い。また、汚染地域住民の間でも同様である。二〇 指摘する。「被曝だけの影響ではない」という含みを残した 一一年版『ロシア政府報告書』によればロシアの主要被災四 認め方だ。三〇年のデータ蓄積に基づいて、「否定できない 州における住民の疾病のうち、最も多いのが、やはり血液循 部分だけしぶしぶ認めた」という印象がぬぐえない。 環器系疾患である ( 全体の一七・八 % ) 。 チェルノブイリの収東作業員たちは、仲間で心血管症に苦 これら住民の疾患と被曝の関係をどの程度認めるのか、そ しむ人々が増えたことを実感している。筆者が本年四月に取れとも「別の要因」で説明するのか、その問題に二〇一六年 材したロシアの収東作業員の数名は、「心血管症は被曝によ版報告書は答えを出していない。 るもの」という確信をもって語っていた。「被曝による心血 管症」は、彼らにとっては当たり前の経験的事実である。実 ( 2 ) 甲状腺がんの要因としてのセシウムの影響 ? 際に、それらの多くの循環器系疾患が「チェルノブイリ原発 「甲状腺がん」は、チェルノブイリ原発事故の影響で増加 事故被害」と認定され、補償されてきた。 したことをやも認める数少ない健康被害の一 また長年チェルノブイリ被災者の健康調査を行なってきた つである。ロシア政府も、自国のチェルノブイリ被災地で、 専門家も、「心血管症が被曝の影響であることは決着済み」 被曝の影響で甲状腺がんが増加したことを認めている。 との見解を示す。たとえば、非常事態省附属ニキフォロフ記 しかし「被曝の影響で甲状腺がんが増えた」というとき、 念緊急・放射線医療全ロシアセンターのアレクサニン教授は、 これまでの『ロシア政府報告書』では幾つかの条件づけがあ 本年四月筆者に対して、「血液循環器系疾患が放射線被曝に った。二〇一一年版では「これらの地域 ( 訳注【被災四州 ) で らより引き起こされることはすでに決着のついた議論。どの程 は、住民の間に甲状腺がん発症の頻度が増加した」と明確に 度が被曝の影響で、どの程度が他の要因と複合作用している 認めている。しかし、甲状腺がん発症リスクのあるグループ と認めるのは、事故当時〇 5 一七歳の子どもだけである。こ のか。それが現在の議論だ」と述べている。 二〇一六年版『ロシア政府報告書』が健康被害と認める血 れは、一八歳未満の未成年が放射性ョウ素を甲状腺に取り込 チ 液循環器系疾患は、上述の「ハイリスクグループ」作業員の んだ場合のみ「甲状腺がん」の原因になりうる、という前提 年 場合だけである。 で評価しているからだ。 故 事 しかし、それ以外の作業員でも、血液循環器系疾患を患う 事故の翌年以降に生まれた子どもたちには、被曝による甲
6 ・福島第一原発 3 、 4 号機の水漏れ検月日に関電は大阪高裁に保全抗告申し立て。長に、中電浜岡原発の廃炉決断を申し入れ。 知器台からの通信が一・時途絶。東電発表。同日島根県の溝ロ善兵衛知事が、中国電が同日福井県議会が、原発内に冷却期間の 5 同日鹿児島や熊本などの市民人が国の原島根原発 1 号機の廃炉計画を原子力規制委員年を超えて保管される使用済み核燃料と廃炉 子力規制委を相手に、九電川内原発 1 、 2 号会に申請することを了解すると発表。 作業の原子炉にも核燃料税課す条例案可決。 同日四電が伊方原発 3 号機の原子炉に核燃 機が新規制基準を満たすとした設置変更許可 静岡県牧之原市の西原茂樹市長が、 の取り消しを求める訴訟を福岡地裁に起こす。中電の株主総会で浜岡原発の廃止案賛成表明。料を入れる作業開始。同日に完了。 15 7 原告が会見。提訴は間日付。 同日原子力規制委が運転開始年超の高浜体。 、ー 254 日こ関電高浜原発か 同日原子力規制委が、東北電女川原発 2 号原発 1 、 2 号機の運転延長を認可。年間。 同日日本原燃カ 2 2 レ ら出た低レベル放射性廃棄物 ( ドラム缶 14 機敷地内の断層を現地調査。 同日国の政策を検証する行政事業レビュー 6 ・福島県川内村で避難指示が解除。 が開催。パワーへの経産省の補助金「役割 80 本 ) を低レベル放射性廃棄物理設センタ ( 六ヶ所村 ) に受け入れ発表。 6 ・福島県浪江町が、東電に計 115 億を終えた」。来年度から廃止要請。 8 6 2 2 万円の損害賠償を請求。公有地の損 6 ・幻東電の広瀬直己社長が、当時の清水 6 ・静岡市の田辺信宏市長が中電株主総 害賠償請求は双葉町に次いで 2 例目。 正孝社長が炉心溶融という言葉を使わないよ会で浜岡原発廃止議案に白票を投じると発表。 6 ・祐東電の第三者検証委員会が炉心溶融う社内に指示していたことについて隠蔽と認 6 ・福島第一原発のタンクからの汚染水 の判断基準があったのに公表が遅れたのはめ、謝罪。第三者検証委員会が推認した「官漏れ。東電発表。 同日福島県浪江町が、避難指示解除に向け 「当時の清水正孝社長が『炉心溶融という言邸の指一小」については再調査せず。 葉を使うな』と社内に指示」とする報告書。同日米国のディアプロ・キャニオン原発がた住民懇談会を仙台市内で開催。 官邸側からの要請を「推認」とも。当時の菅年に閉鎖へ。運営するバシフィック・ガ 6 ・舛大分県内在住の男性 1 人が、伊方原 ス・エレクトリック社が発表。 発 3 号機の運転差し止めを求める仮処分を大 直人首相と枝野幸男官房長官は反発。 同日女川原発 2 号機で非常用ディーゼル発 ・福島第一原発で協力企業作業員が移分地裁に申し立て。 同日鹿児島県薩摩川内市の岩切秀雄市長が 電機の潤滑油 0 ・ 3 >-a 漏れ。東北電発表。 動中に仮設階段を踏み外し、右足骨折。 同日学習会「なぜ野良犬は政権にすり寄る 6 ・福島検察審査会が、福島第一原発事市議会本会議で、高レベル放射性廃棄物最終 愛玩大になっていくのか ? 朝日新聞『吉田故後に高濃度の放射能汚染水を海へ流出させ処分場について「受け入れる考えはない」。 調書』報道取り消しから考える」が都内で開たとして告発された東電と幹部らを不起訴と同日九電玄海原発 3 号機での燃料の 催。講師はジャーナリストの斎藤貴男ら 3 人。した福島地検の処分について不起訴相当議決。使用差し止め訴訟の控訴審判決で、福岡高裁 6 ・大津地裁が高浜原発 3 、 4 号機の運同日大分県の中津市議会が伊方原発 3 号機が控訴を棄却。 7 日 3 日に上告断念を表明。 環境省が福島第一原発事故で出た放 転を差し止めた仮処分決定についての関電に の再稼働の中止を求める意見書を可決。 報 月よる執行停止の申し立て却下。関電は高浜原 6 ・市民団体「浜岡原発を考える静岡ネ射性物質を含む指定廃棄物などの最終処分計 原発 3 、 4 号機からの核燃料取り出し発表。 7 ットワーク」が静岡県御前崎市の柳沢重夫市画で福島県、富岡、棆葉両町と安全協定締結。
3 9 ー沖縄という窓 されていたことが分かった。老朽化した施設をより運用し た七〇名の職員もまた、基地建設の抗議行動の警備要員に やすい場所にまとめる、最新鋭の基地施設が日本のお金で 充てられている。米軍関係者の起こす犯罪から私たちを守 まかなえる、米軍にとっては「理想の基地」が完成する。 るはずが文書には「妨害活動への対応 ( 警備関係 ) 」とあ リ。ハッドエ事 すでに米司令官は上院軍事委員会で「高江へ 彼らのバト った、監視されるのは「私たち」だったのだ。 , ロールが始まってからも、米軍関係者による飲酒運転や事は年内に終了する」との見通しを伝えているのだ。 菅義偉官房長官はいつも通りのトーンで「ヘリ 故が起こり続けている。 設で北部訓練場の過半返還が実現すれば沖縄の米軍基地のま 高江をぐるりと取り囲むように配置されるヘリバッドの し うち、すでに二つが完成され、運用されている。沖縄防衛面積約二割が減少する。基地負担軽減にも大きく資する」筆 とコメントした。いくつもの証拠を前にしてもなお正当化で 局の測定データによると、二〇一六年六月だけで夜間の騒 を押し通す政府、政府発表を鵜呑みにする報道、そして日咬 音回数は三八三回に上り、その数は二〇一四年度の月平均 本人の多くはこの経緯に目を向けることもなく自らの血税ん の二四倍だ。琉球新報が東村全小中学校を対象にした調査 を投入しその遂行を承認している。とても自然に、無意識 では「学校で飛行機やヘリコプターの音が気になったこと 志 に、「知らなかった」という言葉を並べる必要もないままに。 があるか」との質問には七七 % が「ある」と回答、「オス そして追い討ちをかけるように国は辺野古移設に関し沖 プレイの音で怖いと思ったり、嫌な気持になったことがあ るか」には三八 % が「ある」と回答している。騒音の影響縄県を提訴した。県側は「まず問題の根本解決を」と協議さ を求めていたが、この四か月半の協議開催時間の合計はわ で睡眠不足となった児童らが小学校を欠席する例も出るな 城 ずか四五分だ。国はなりふり構わず辺野古陸上部の工事再山 ど、健康被害や学習環境の悪化についても報告されている。 開も予定している。四四年前の「復帰」で基地からの脱却ん また、沖縄タイムスが報じているように、米海兵隊がま と平和憲法を求めた私たち、しかし私たちに与えられたも剛 とめた報告書には「米軍北部訓練場の使用不可能な土地を 元 のがあったのか。改憲に向けた動きや国の沖縄に対する態 返還する代わりに利用可能な訓練場を新たに開発し米軍に ム 提供される」「普天間代替施設建設が進行しているキャン度を目の当たりにし、沖縄が日本である意味はどこにある のかと考えている。 ( おやかわ・しなこオキスタ共同代表 ) の プ・シュワプなど北部は目覚ましい変化を遂げる」と明記