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1. 世界 2016年9月号

いなかったからだ。 「今回も票 ( 友人票 ) を何票とってきて「問題は、あらゆる国が他国からの侵 山口氏が最激戦区の兵庫を遊説してい いる、と、上には報告しておくから」と略を前提として自衛権を主張し、武力を 強化しており、その結果として、現実の た七月二日。壅示・渋谷の街頭で「学会言われたという。 四世」という創価大学の卒業生が野党系「絶対に負けられない法戦 ( 選挙 ) だ。国際社会に人類の生存を脅かす戦争の危 世候補のイベントでマイクを握った。 勝・つて池田先生にお応えしましよう ! 」険が充満していることです。しかし、こ 「創価学会男子部の一一ユーリー ダーと改選数が四に増え、九年ぶりの議席奪の国際社会に存在する戦力に対応して しても活動しています。本来なら公明党還が至上命題になった愛知でも、反対の " 自衛。できるだけの戦力をもとうとす 支持者であるはずですが、ちょっと無理声が上がった。昨年、安保法案撤回を求れば、それはますます強大なものになら です。怖いですけど、友達減るんですけめる九〇〇〇筆を超す署名活動を党本部ざるをえません。それゆえ、武力による ど、でも、指をくわえて、権力を暴走さに届けた安城市の副支部長、天野達志さ自衛の方向は、すでに行き詰まってきて せているわけにはいかないんですよ」 んもその一人だ。両親の代からの信者で、いるといえましよう」 ( 聖教ワイド文庫『二 「池田大作先生は自衛権を強くして平これまで選挙のたびに公明候補を支援し十一世紀への対話 ( 中こ 和を守ろうなんて一言も言っていないでてきたが、参院選ではなどで「安安保法制が国会で審議中だった昨年八 す : : : なんでいま創価学会、公明党は、保法廃止ーを訴える野党候補への投票を月。天野さんは「平和安全法制がいかに 安倍さんとグルになって好き勝手やって呼びかけた。「自民党にすり寄る党や学平和に寄与するか」と公明党の国会議員 いるんでしようか」 会執行部に猛省してもらいたい」というが安保法制を解説するビデオが流された 演説の動画はネット上で瞬く間に広が願いからだった。 学会の会合が終わった後、県内を統括す 反対者に共通するのは、池田氏は集団る幹部に尋ねた。 大阪で地域の票読みを担当していた学的自衛権の行使に否定的だったと考えて「ビデオを見たのは、私たち学会は安 しることだ。 会員の男性活動家も、安保法制廃止を掲 保法制に賛成ということですか」 げて小林節・慶応義塾大学名誉教授が立池田氏は英国の歴史家、アーノルド・ 「いや、私たちが応援している公明党 ち上げた政治団体「国民怒りの声」の応・トインビー氏と一九七一一 5 七三年にがどういう政策展開をしているか学ぶビ 援に回った。事情を察した地域の幹部は行なった対談でこう語っている。 デオなんだ」 特集 1 つつ ) 0

2. 世界 2016年9月号

117 で「環境破壊」に関する最初の社会科学の学際的国際シンポ ジウムを開いた。この会議では ( 国民総生産 ) は福祉の 指標にはならず、これまで社会的費用Ⅱ外部不経済として対 噐髯彎諟象にしなかった公害・環境問題を評価して経済に内部イする のヘ ことなどを決め、さらに最後の東京決議で、基本的人権とし て環境権を提唱した。その後公害研究委員会は、一九七一年 全生 みやもと・けんいち一九三〇年生まれ。大阪市立 大学名誉教授、滋賀大学名誉教授。財政学・環境経済 9 には『公害研究』 ( のちに『環境と公害』、岩波書店刊 ) という最 学専攻。「戦後日本公害史論」 ( 岩波書店 ) で第一〇六 保再 初の学際的環境総合誌を機関誌として発刊した。一九七九年、 回日本学士院賞受賞。ほかに「恐るべき公害』 ( 共著、 岩波新書 ) 、「環境経済学新版」「維持可能な社会に向 かって」「日本社会の 境域 環境政策の後退を阻止し国際・国内的な環境問題の前進を図 可能性』 ( 以上、岩波一、ろうとして、公害研究委員会は日弁連公害対策委員会などと 書店 ) など著書多数。 界 《環地宮本憲一 相談して日本環境会議を結成した。これが今日国内外で活動 し、環境 ZCO の理論的支柱となっている。この初代の理事 公害問題は、足尾鉱毒事件をはじめ戦前から深刻な事件を 長は都留重人 ( 現在寺西俊一 ) 、事務局長は私 ( 同大島堅一 ) で あった。 引き起こしている。この悲劇の足尾の二の舞はしたくないと して、戦前公害防止対策も進んでいたのである。ところが、 第一〇六回日本学士院賞を受賞した拙著『戦後日本公害史 戦争によって公害・環境問題の研究は断絶した。戦後の国語 論』は、『恐るべき公害』出版後五〇年の研究の成果である。 の辞書には公害という一言葉はなく、一九六四年京都大学衛生 それはこの公害研究委員会の共同研究に負うところが多い。 工学の庄司光と私が執筆した『恐るべき公害』 ( 岩波新書 ) が環境経済・政策学会は植田和弘や寺西俊一らによって一一一年 最初の公害問題の学際的啓蒙書である。これと前後して、都前に結成された。まだ若い学会であるが、地球環境問題が国 留重人を委員長として、日本最初の学際的な公害研究委員会際政治経済の重大問題になったことの反映で、研究者が増え、 が設立されたが、 集まった研究者は七人しかおらず、うち経会員は一四〇〇人を数える。半世紀前には公害に関心を持っ 済学者は三人であった。世界社会科学評議会は都留重人を中 経済学者が三人しかいなかったことを思えば、この分野がい 心に公害研究委員会を事務局にして、一九七〇年にレオンチ かに急激に重要な研究対象になったかを示している。研究は エフ、カップ、サックスなど内外一流の研究者を集め、東京 広がり、国立大学で環境経済学関連の講義は行われているが、

3. 世界 2016年9月号

9 口先だけで構造的な問題を解決しようとしているように思え 見えてくる政府の責任 ます。この問題を解決するためには大量の、大規模な投資を 計画的に行うことが必要なのです。仕事と家庭のバランスを 新川構造改革について、アベノミクスでは古いスタイル とるためには、社会民主主義的なプログラムが必要だともい を踏襲しているだけであるということでしたが、そもそも経 界 世えましょ , つ。 済の構造改革というものを政府がどこまで主導できるのか、 新川増税については、確かにあなたのおっしやることは すべきなのかという懸念もありますが。 正しいと思います。ただ日本の消費税率は、ご存じのように、 ルシュヴァリエ政府の責任は大きいと思います。 ヨーロッパの付加価値税とくらべると、非常に低いわけです かのやり方がありますが、まず、これは既に行われているこ から、増税の関心がここに集中するのは、やむを得ない面が とですが、最も実績の高い企業、たとえばトヨタのような企 あると思います。法人税率の引き上げですが、これは政治的業を、直接的あるいは間接的に支援することが考えられます。 にみて危険性が高いですよね。グロー バル化された今日の世 そうすることで、 - その企業は、市場のシェアをさらに拡大し しこと 界では、つねに資本の国外逃避の恐れがある。法人税率を引 ていくことができます。これは特定企業にとってはい、 き上げようとすると、企業は国外に事業拠点を移すという ですが、もはやそれが日本経済全体にとっていい効果をもた らすとはいえなくなっている。 「脅し」をかけられる。 しかも日本の場合は、そのような「脅し」に対する拮抗力 第二に、経済成長に貢献していない企業が、保守的な経済 がありません。このことは、あなたが指摘したような問題、 システムゆえに生き残っている場合がありますので、そのよ つまりある企業はかってないほどの収益を上げているにもか うなシステムを改善するという方法がある。ただしそのよう かわらず、それが社会に還元されていないという問題にもっ な企業は、日本経済の成長には役立たなくとも、過疎地のコ ながっていると思うのです。 ミュニティにとっては重要な役割を果たしていることがあり 社会民主主義的な戦略について、私は懐疑的です。その考ますので、ただ整理すればよいというわけにはいきません。 えに反対しているわけではありません。ただ労組の衰退や世 そこで私の本では、第三の案を提示しています。それは業 論の動向、財政状況などを考えると、日本でそのような戦略 績良好な企業の積極面を他の企業に、そして社会全体へと波 及させる可能性を追求するという案であり、「調整」と呼ば が人々を動員する力を持ちうるとは思えないのです。 れます。またトヨタを例にとれば、一九七〇年代下請会社は

4. 世界 2016年9月号

た報道各社のグループインタビュー。集 団的自衛権の行使に道を開き、多くの憲 公明党安倍派の誕生 法学者から「憲法違反」と指摘された安 全保障法制について、「党創立者の池田 名誉会長も理解されていると考えます か」と問われた山口氏はロをつぐんだ。 明ロ後と安月共 夜山午、補、 6 に 一の日候た ( も 「それは直接うかがう機会がありませ ら党ⅱ認し一と カ明公成タは 利公月党作以真 んので、私には答えようがありません」 勝る明がポ写 党す相公営た の握倍 「まさかが実現」から六〇年 創価学会が国政に進出したのは六〇年 、表相一る首日通 前。一九五六年の参院選だ。池田氏が陣 みなみ・あきら朝日新聞政治部記者。ニ 00 九年より青木幹 雄氏の地元・出雲の政治風土を描く連載「探訪保守」などを執筆。 頭指揮した大阪選挙区で、元プロ野球選 一一〇一三年四月からは大阪社会部で都構想の取材にあたり、ニ〇一五 年一〇月より公明党担当。著書に『ルボ・橋下徹』 ( 共著、朝日新書 ) 。 手の白木義一郎氏が社会党現職や自民党 元職らを打ち破って当選。当時三万世帯 時の写真だ。「世界の恒久平和の礎を築の学会員を基盤として、二一万八九一五 「池田名誉会長の理解」を問われて く」と綱領に掲げ池田氏が創立した公明票を獲得したことから、「『まさか』が実 公明党の山口那津男代表が机に飾る一党の歴史が詰まっている。 現」と言われた戦いだ。 枚の写真がある。 しかし、今回の参院選で、山口氏は 創価学会の原田稔会長は年初の一月八 創価学会の池田大作・名誉会長と、中「平和の党」で池田氏とともに歩んでき日、東京・信濃町の「常勝会館」に集め 国の首相だった周恩来氏。一九七四年、た支持者が知りたい核心部分を説明できた全国の幹部を鼓舞した。 日中国交正常化を後押しした池田氏が訪なかった。 「本年は、広布拡大の金字塔『大阪の 中し、周氏の入院先に招かれて会談した六月一四日の参院選公示前に行なわれ戦い』から六〇年の佳節でもあります」 南彰 特集 1 ま

5. 世界 2016年9月号

その後の被害拡大以後の、一九六四年の大企業の公害防止投 公害の社会的特徴は被害が高齢者、年少者、身障者などの 資も設備投資の一・七 % にすぎなかった。後に公害裁判などで 生物的弱者に集中することである。一九八七年大気汚染の政 規制が強化された一九七五年の公害防止投資が一七 % であっ 府認定患者約一〇万人の六一一 % 以上が高齢者と年少者である。 たことから類推できるように、明らかに最大限利潤を上げる また被室暑の大部分は低所得者や低級中産階級の社会的弱者 ために公害防止投資を省略していたのである。さらに急成長 である。このため自力救済は不可能であり、社会的な救済制 のために集積利益を上げようとして、ほとんどの新鋭の重化度が必要である。しかしそのような制度は一九七四年までな 学工業の工場は、交通・通信などの社会資本が充実し、市場 かった。さらに公害・環境破壊の特質は健康障害・死亡、復 の大きな三大都市圏と瀬戸内の臨海部に集中した。それと軌 旧不能な自然・文化財破壊のように不可逆的絶対的損失を出 を同じくして一九六〇年から七五年にかけて地方から大都市 すことであるため、被害が発生してから補償の原理を働かせ したがって、予防 圏に一五〇〇万人の人口が移動し、全国の半分の人口が集積 て金銭賠償しても、もとの状態に戻らない。 した。交通手段が軌道から自動車に代わったことと相まって、 が公害・環境政策の基本である。しかし環境影響評価法 ( 環境 アセスメント法 ) ができるのは一九九七年のことで、深刻な公 大都市圏は産業・人口の「集積の不利益」としての公害が発生 害が広がっている時に公害の救済制度も予防措置もなかった。 したのである。戦前の日本人は節倹を美徳としていたが、企 ◆三島・沼津・清水ニ市一町の公害予防闘争 業の大量生産は大量消費生活様式を生み出した。この消費生 日本の学会や行政機関は新しい社会問題に直面すると先進 活の変化のために大量の廃棄物が生まれ、これがゴミ戦争と 言われるような処理の困難を生み、新しい生活公害となった。 国の欧米に先例や研究がないかを探す慣習がある。公害は産 このように急速な成長とアメリカ的な近代化の経済が環境業革命の前後からあり、イギリスの N 三 sance やドイツの lmm デま n の法理があるが、第二次大戦後、経済の全過程で を破壊し公害の源泉となったのだが、それを規制すべき公共 部門は住民の健康や生活環境を守るための法制や行政組織が有害な化学物質が大量に使われ、巨大な環境破壊が日常的に 訓不備であった。むしろ企業活動を助成するために大規模な公起こるような公害・環境問題には、これらの法理は適合でき の 共事業を行って、自ら環境破壊を進め、公害を発生させた。 ない。六〇年代中期までは欧米にも環境法制はなく、環境規 史 このように公共部門は市場の失敗を是正するのでなく、政府 制官庁もなく、日本に参考になる事例はなかった。 日の失敗が重複して、日本の公害は多様化し、空前の被害を出 こういう絶望的な状況を破ったのは、地域住民の公害反対 戦したのである。 の世論と運動である。中でも公害史の転機を作ったのは一九

6. 世界 2016年9月号

するには社会保障のリバタリアン的ヴァージョンであるべー 格と権限で、はたしてグロ ーバル化した多国籍企業や金融資 シックインカムの実現が鍵となるだろう。 本による租税回避を効果的に抑止しうるかどうかが鍵となる。 表の右上 (<) (*) では、経済競争は市場に任せる反面、 このことに失敗すればグローバル経済への不本意な適応が避 社会統合については伝統資源を動員し、経済的な新自由主義 けられず、結果的には右上の (<) (>-) との見分けがっか なくなっていくだろう。 と政治的な新保守主義を組み合わせていくことになる。そこ では社会保障のコミュニタリアン的ヴァージョンである家族 以上はあくまで大雑把な分類に過ぎないが、忘れてならな や地域による社会保障の代替が鍵となるだろう。しかし、伝 、のは、各国民経済はこの四つの中から自由にみずからの未 統資源のこうした機能主義的利用は伝統資源そのものの枯渇来を選べるわけではないことだ。それぞれの社会はこうした を早める。それゆえ国家の情緒的一体感を保っための恒常的組み合わせの中からすでに一つの現実を選択しており、あく なイデオロギー補給が必要となり、それが国内におけるマイ までその場所を出発点としていずれかの方向に小さな一歩を ノリティの権利保護を困難にする可能性がある。 踏み出すことができるだけだ。一つの国民経済をこの四つの 表の左下 ( ) ( * ) ではグロー バル化の進展を不可避な 象限のいずれかにあてはめる伝統的な資本主義類型論も、今 過程として受け入れ、国境を越えた再分配を主要な要求とし ではもう有効性を持たないだろう。したがってこの表の四象 て掲げるだろう。そのためには文化的社会的帰属性を超えた 限は一種のペクトルとして理解する必要がある。 規範的要求についての国民の同意が必要となる。そこでは、 このことはまた上記二組の対立軸がかってのようなイデオ ロギー的排他性を主張できなくなることも意味している。そ 超国家的制度を通じた富裕層や多国籍企業への課税と、各国 内でのその再分配が鍵となるだろう。国内に格差が広がると、 のような排他性に固執すれば、ヨーロッパは絶えずこの四つ のべクトルの間で引き裂かれていくだろう。むしろ多党連立 っ抽象的な規範要求は容易に大衆の情緒的な反エリート主義、 型政権を通常の形態とみなし、さまざまな組み合わせを通じ 反普遍主義を惹起する。したがって普遍主義的な政治文化育 成のための教育も必要不可欠となるだろう。 て国民がグローバル社会の複雑性を学習していくことのほう を 表の右下 (n) (*) では、再分配を求める社会民主主義 。したがって国民を強引に二者択一の前に立たせ が望ましい 的政策がもっ規範的要求と伝統資源の動員との調和がめざさ る国民投票にはきわめて慎重でなければならない。社会の学 ョれる。ここでは、文化的社会的統合に依拠する国民国家の資習成果はひとつの政権のもとで多数の規則の東となって実定 , 特集 2

7. 世界 2016年9月号

9 もあれば、宗教や言語や、あるいはネーションの場合もある。 らすことになってしまうのではないか、というのだ。もちろ また旧ソ連の崩壊後に中部および東ヨーロッパの国々におい んのこと、「ネオリべラルな経済モデルおよび社会モデルの てナショナリズムが予想された通りに生じたが、こうした観上からの押しつけ」をテクノクラシーの立場から強引に押し 点から見れば、このナショナリズムも、「旧来の」国民国家通すならば、生活状況の同一化を強要したと言えるかもしれ 世内部に生まれつつある分離運動と社会心理的には同等のもの ない。だがまさにこの点でこそ、民主主義に相応した意思決 であろう。 定プロセスと、市場に相応したそれとの差異を消すような見 東ヨーロツ。ハの場合も分離運動の場合も、アイデンティテ 方をしてはならないのだ。 イが「歴史のなかで自然に生れてきた」というのは、虚構で もちろんのこと、地域の経済振興に関して、あるいは国家 ( 8 ) あり、統合の障害を理由づけるような歴史的事実ではない。 行政の合理化に関して特定の国家に対してなされる施策に関 こうした種類の退行現象は、経済と政治が失敗した結果生 して、ヨーロッパ次元で民主主義的な正当性をもって決定が じる徴候なのだ。経済と政治が、必要な程度の社会的安定を なされるならば、そうした決定はなるほど、社会構造の統一 生み出してくれないからである。各地域やネーションが社会 化をもたらすかもしれない。しかし、政治的に近代化を促進 的文化的な多様性を生み出しているのは、他の大陸と異なる するならどんなものであれ、同一化の強要になるといった疑 ツ」、つ ヨーロッパの特徴であり、これ自体は、障害ではない。 念を抱くならば、それは、経済生活や生活形式の家族的類似 した多様性は、政治統合は国家規模でのみ可能であるとし、 性なるものをコミュニタリアニズム的なフェティッシュにす そうした小国の乱立という形にヨーロッパを固定化するもの るだけでしかない「ついでに言えば、今日では似たような社 ではない。 会的インフラ構造が世界的に広がっていて、ほとんどすべて これまでのふたつの反論は、より緊密な政治同盟がはたし の社会が「現代」社会となっているが、実はそうした拡大こ て機能し得るか、そして安定を保ち得るかという問題に関す そはいたるところで、逆に生活形式の個性化と多様化を引き ( 9 ) るものである。次に第三の反論でシュトレークは、そうした 起こしているのだ。 政治同盟がはたして本当に望むに値するかどうかと論じる。 そして最後に四番目の反論として、ヴォルフガング・シュ 南ヨーロツ。ハの経済文化を北ヨーロッパのそれに政治的に同 トレークは、法治国家的な民主主義における平等志向という 化させてしまうならば、当該地域の生活形式の均一化をもた潜在的な力は、国民の共通性によってのみ、それゆえに国民 特集 2

8. 世界 2016年9月号

病院や学校などの生活のインフラが脅かされているという不投票実施の意向が示されている。 満、不安を募らせていった。 このような社会の分断がもたらす問題には、今日までに幾 ■国民投票で顕わとなったイギリス社会の亀裂 度となく警鐘が鳴らされてきた。たとえば近年、「特権的な キャメロン首相、そして残留賛同を党の方針とした労働党 五 % ・リスク意識を高め不安定な七五 % ・社会的に排除され 世、、 カこれら支持に鞍替えした人々を全く説得できな た二〇 % 」社会であるといわれ、リスクの多様化ゆえにそれ かったことは、昨年に投票した人の九五 % が今回の ぞれのグループ内でも連帯が生まれないとも指摘された。だ 国民投票で離脱票を投じたことに明らかである。そればかり からこそ、一九九〇年代以降、参加と自立の基盤を提供する か、昨年保守党を支持した人のうち五八 % が離脱に回り、労 社会的包摂が政策論議の俎上に載ったのである。しかし、政 働党でも支持者の三七 % が離脱に流れた。労働党では、伝統策アイディアの分厚い蓄積がなされてきたにもかかわらず、 的左派の立場から性来は反統合主義者であったジェレミー 今日まで分節化の進行を押しとどめることはできなかった。 コービン党首が、意図的に残留支持の運動をしなかったとい 離脱の結果を受けて、離脱派のリーダーたちは、誤った情 う非難が高まり、党首への不信任が出され、党首選が行なわ 報や誇大表現で国民を欺き煽動したとして各方面から仮借な れることになった。プレア以後の労働党もまた鋭く分裂して い非難を浴びた。「軽率にも」離脱票を投じたことを後悔す いるのだ。 る人が続出したとも報じられた。しかし、一七四〇万人を超 政党システムの流動化の一因は、イギリス社会に走るいく える人々が一時的な煽動や感情のままに行動したとみなすの つもの深い亀裂にあり、それが国民投票ではっきりと浮き彫 は説得力に欠ける。むしろ、その実現可能性はともかくとし りになった。離脱賛同者のうち、職業と年収に密接にかかわ て、分断された社会のなかで何かを取り戻したいという意思 る学歴別では、大卒者はおよそ三割だったのに対して低学歴 の現れであったとするべきではないだろうか。そうであるな 層は七割、年代別では、十八歳から二四歳までは三割以下に らば、彼らは何を手に入れようとしたのか 対して五〇歳以上では六割を超えた。連合王国のうち、残留 イギリスはトリレンマを超えられるか 支持はスコットランド、北アイルランドで、ウェールズ、ロ ンドンを除くイングランドの地域は離脱派が過半を占めた。 「コントロールする力を取り返せ」。ファラージら離脱派の スコットランドでは早くも、イギリスからの独立を問う住民 ーダーは国民投票を前に強調した。コントロールの対象は、 特集 2

9. 世界 2016年9月号

での税と社会保障の政策は生煮えだった、あるいは奥行きが 足りなかったことをふまえて、人間の尊厳を大事にした生活 保障、財源論を正面切って打ち出すということだと思います。 井手私がずっと引っかかっているのは、昨年、共産党と 界 世の選挙協力について懸念しておっしやった「シロアリ」発言 です。この発言を踏まえてもなお、政策的に合意が可能であ るかぎり、野党共闘はあってしかるべきだとお考えですか。 前原政策がないまま枠組み論になることのリスクを伝え たくて、あのような発言をしました。過激ではありましたが、 政策を置き去りにした枠組み論は不毛です。政策に主体性を もち、有権者の信頼を勝ち取ることが私たちの最重要課題で す。枠組み論ありきでは議論が逆立ちしてしまう。政策論議 を深め、共闘のフェイズをさらに進化させる。政策論議のす えの共闘努力こそ、私たちの責任だと思います。 自社さ ( 自民党・社会党・新党さきがけ ) 政権を振り返っても、 同じことが言えるはずです。安倍首相も、今回の参院選では 「民共批判」をずっとやっていましたが、一九九四年の代表 選では「村山富市」と書いて、一票を投じています。そうし て自社さ政権が誕生した。その後、社民党へと変わりました が、自衛隊を認め、日米安保を認めて、その結果として、今 回の参院選では獲得議席一という政党になったわけです。 私は政治思想的にセンターライトだと言われますけれども、 センターライトからセンターレフト、そしてリべラル層まで 特集 1 、 : 包容していく懐の広さ、深さが求められていると感じていま す。私は民進党を大事にしていきたいし、野党第一党として 一一度と同じ失敗をしない責任がある。多様な意見をいかしつ つ、できるだけ党内部にミシン目を入れない、社会の分断だ けでなく、党の分断を避けなければいけな、。 井手私としては、すべてを包み込むセンターの思想のな かに、右や左の線を引かないでほしい ( 笑 ) 。 右・左の垣根を超えて、そこにヒューマンという視点を入 れていくことによってセンターへの道をこじあけることは歴 史的な課題でもあります。社会保障や教育には、右も左もあ りません。そこにあるのは人間の未来だけです。 前原そのとおりですね。私は友人に、「我われが目指す 内政の基本的な考え方は社会民主主義だ」と言っていました。 でも、その社会民主主義が今日、さらに日本の状況にそくし たものへとプラッシュアップされた気がします。 井手私も、分断を生まない社会、希望も不安も分かち合 う社会は、結局は政治への信頼を回復しないかぎり、実現し ないと思います。 そのためにこそ、腰を据えて骨太な政策を打ち出す。そこ に社会像や国家像をちゃんと重ねていく。今日前原さんがお っしやったことが実現するのなら、「真ん中への道」が切り 拓かれるのではないかと思います。 ・・・・・・・・・・本日はどうもありがとうございました。 ( 構成・編集部堀由貴子 )

10. 世界 2016年9月号

ハシナ首相を「暴君」として現政権を敵イデオロギーは、インターネットを通じ な国家建設を進めた経緯があるからだ。 てバングラデシュへの影響力を強めてい また、二期連続の政権党となった視する姿勢を明確にしていた。 は、全方位外交方針のもと、インド、中とすると、日本人七人が死亡した今回る。同国においてインターネットを使用 国、ロシア、日本などの非イスラム教国の事件は、日本人が標的になったわけでしているのは全体の一割に過ぎないこと はなく、外国人の非ムスリムが対象となを考えれば、実行犯が富裕層であったこ と密接な関係を築いてきた。昨年には、 インドとの長年の懸案事項であった地上り、その中に残念ながら日本人が含まれとにも合点がいく。 マレーシアへの留学や海外旅行の経験 国境線画定の合意をとりつけ、良好な一一てしまったと考えるのが妥当である。 国間関係をアピールした。中国からは潜犯行時間の夜九時過ぎは、イスラム教に加え、海外で職を得た人びとと接する 水艦をはじめとする軍装備品を、ロシア徒にとって就寝前最後の礼拝の時間帯に機会も多い富裕層は、欧米中心の国際社 からは原子力発電所を購入するなど、小 あたる。ラマダン中は一般的にイスラム会においてイスラム教徒が置かれた、時 国ならではの全方位にわたる外交を推し教徒の宗教意識が高まることから、礼拝に理不尽ともとれる状況に敏感だった可 進めた。 をする人も普段に比べて多い。特に礼拝能性もある。 二〇一四年のハシナ首相訪日、安倍首が重要視されている金曜日のこの時間帯今回のテロは、こうした社会への不満 相来訪を経て、日本もべンガル湾産業成に高級住宅街のレストランにいるのは外と、イスラム主義層に対する政治的抑圧 状況に対し、社会を正すのは自分たちで テ長地帯構想を打ち出し、総額六〇〇〇億国人の非ムスリムである可能性が高く、 る それを理解した上での犯行であったことあるという動機づけが何らかの形で こ円の支援を約束している。 このように、歴史的にも欧米社会とのは想像に難くない。コーランの一節を暗によってなされた結果、実行に移された 巻 国親和性が高く、世俗的な政治体制に加え、唱できた者は命を助けられたとの証言もと考えられる。 な ・南アジアは不安定化するか 政権による非イスラム諸国とも良好あり、実行犯が非ムスリムだけを殺害し 健 よ , っとしたことか , つかがえる。 <:-a 政権による強権体制が維持され、 な関係を築く積極的な外交姿勢から、 一ングラデシュは徐々になどの国際武また、事件は裕福な家庭で育った若者野党との対話が進展しなければ、同様の テロが継続するのは間違いない。 の装勢力のターゲットになっていった。— によって実行された。—r.n やアルカイー 世は二〇一四年に広報誌ダービク六号で、ダなどの国際的な武装主義勢力の思想や経済成長によって富裕層・中間層が増