学智は社員に指示して、同僚の言う場所に「待て ! 話を聞け ! った。なんとしても、開を見つけて説得する 走った。向こうから見られないよう、建物の路地から路地へ、転がるように走ってい つもりだ。 4 / ノ々、手荒に説得する必要がある 陰に隠れて窺うと、野球帽とマスクで顔を隠く。学智も後を追ったが、開は足が速い。 かもしれない。・目ハ刀は・不来、そ , つい , っことは した男が、黒いシャッとだぼっと太いパンツ ーー猪俣のマンションに逃げ込むかもしれ得意なのだ。 ガし 姿で、所在なく立っているのが見えた。 マンションから少し離れたコンビニの前 暗いのではっきりしないが、たしかに開に途中で足を止め、携帯で傳社長に電話しなで、待っことにした。ほかに選択肢がない。 似ているようだ。学智が見た時には、開は啓がら、猪俣のマンションに向かった。 マンションのそばに、黒いミニバンが路上 天の手下に殴られ、顔が腫れあがっていた。 「社長、しばらく会社から出ないでくださ駐車しているのが見えた。ただでさえマンシ マスクをしているのは、顔の傷を隠すためかい。開が会社の近くで待ち伏せしていたんでヨンの出入り口が見えにくいのに、邪魔な車 もしれない。右手をポケットに入れているのす。声をかけたら逃げましたが、猪俣のマンだと、軽く苛立ちを覚えた。リアウインドウ は、刃物でも持っているのかもしれない。 ションに行くかもしれない。私はあいつを捜の色が濃くて、車内が見えない。 だが、決め手になるものはない。 しにいきます。社員を何人か残らせて、会社ふと、嫌な予感がした。 とっさに、学智は腹を決めた。 の出入り口に鍵をかけてくださいー 見覚えのある野球帽が、向こうの角を曲が 「開 ! 」 『学智、馬鹿なことは り、周囲の様子を窺いながらマンションに近 呼びかけながら、建物の陰から出た。男の傳が何か言いかけたが、学智は電話を切っづいていく。開た。やはり戻ってきたのだ。 激しい動揺が見てとれた。 た。猪俣のマンションへは、徒歩十分もあれ学智は、開がマンションの階段を一一階に上が ーーやはり開だ。 ばっく。開は、まっすぐマンションに向かうるまで、コンビニで待つつもりだった。 傳社長にまで危害をほすつもりかと、頭ことはないだろう。誰もついてこないと確信 開がミニバンの横を通りすぎた瞬間、車の に血が上った。開が身を減ほしたのは、開自が持てて初めて、猪俣のマンションに逃げ込スライドドアが開いた。振り返った開が、 身のせいだ。職のない彼を拾ってやった傳む。だから、開よりずっと早く到着するはず「うわっーと叫んで、つんのめるように逃げ だった。 に、恩を感じるどころか、あだで返すとは。 ようとした。車から飛ひ出した三人の男が、 マスクから覗く目が、憎しみをこめてこち急いでマンションに向かった。途中で傳社開に飛ひかかった。 らを睨み、開は脱兎のごとく駆けだした。 長から何度も着信があったが、あえて出なか ーー啓天の仲間だ。 272
のなのか、ずぶ濡れとなっていた。 伸ばし、上り框に腰掛けたままゴクリと喉を「ちがう」 素っ気ない返事に、番頭は話の継ぎ穂がっ 近くで見ると、黒の紋付である。着古した一つ鳴らして呑んだ。 くれなくなった。 もので、赤茶に色褪せている。それも夏物で「お侍さま、こんなものでよろしければ はなかった。 番頭が小皿に塩昆布を盛ってくると、侍は文武に励むものの、仕官が叶わない浪人だ ろうか。それにしては一分もの金を出した 放った一分金と着古した紋付、加えて夜半湯呑を盆の上に置いた。 であれば押込みか辻斬りと思ったかもしれな「看板どおり、上方からの下り酒のようだ」と、辻褄を合わせられないでいるのだ。 みくち 「へい。伏見の樽の、開けたてでございま三ロで湯呑を空にした侍は、また明日の今 ごろ参ると、釣銭をそのままに出ていった。 しかし、悪相ではないばかりか、おたきかす , 雨は上がっていた。 ら受取った手拭を押しいただく手つきは、江「そうか、伏見か」 ねお 戸根生いの侍そのものの色を見せていた。 ふたロめを呑むと、凄みを見せていた目が「いやあ、見事でした。あれこそ、江戸っ子 侍です。酒呑みの、鑑だね。男のあたし 居酒屋の小僧が冷や酒を運んでくると、盃わずかに和んだ。 が、惚れました」 いったい、なに者なのだろう。 ではなく湯呑をと命じた。 あお 女のわたしだってと、喉まで出かかったこ 下世話な居酒屋ではない。湯呑で呷る客を番頭とおたきは、目を見交した。 知らないのか、小僧がキョトンとした顔のま塩昆布をつまむ箸が、男っぽい色を立てとばを呑んだおたきだった。 た。女の持っ箸はありきたりだが、男の手つ ま立っていた。 実家に泊まったおたきは、居酒屋にあらわ きには独特の艶を含むことがあった。 おたきが立って、湯呑を取ってきた。 れた侍が瞼の裏に貼りついてしまい、ひと晩 「おひとつ、どうぞ 「女。わたしの手に、なにか 「ご無礼をいたしました。その、手つきに品寝つけないでいた。 徳利を手にする女に、男は黙って湯呑を突 き出した。 おたきが生まれてはじめて胸をときめかせ一一 不 の 女の酌に馴れているらしく、目も合わせず「馬鹿を申せ。竹刀だこのある手に、品などた男ということになる。 「男をね、好きになったところでさ、添い遂七 に湯呑を口にした。卑しさがまったくなかつあるものか , 一」 0 げられるはずなどないわ , 侍は横を向いた。番頭が笑いかけた。 おたきだけでなく、町内の女ともだちみな -4 口から酒を迎えに行くことなく、背すじを「剣術道場の先生でしたか」 かがみ
ったく城の声が耳に入らないようだ。このくが、蒼汰は大泣きするばかりで受け取ろうと ーーあれは、また来るぞ。 らいの子どもがこうなると、もう手のつけよしない。ホノ力は蒼汰の肩に手を置いて、コ じわじわと、こちらのパーソナルスペース うがない。小さい怪獣のようなものだ。 ップを渡そうとしていたがだめで、自分の分に侵入されるような、嫌な気分になった。 ホノ力が食器棚から、自分用のプラスティを持って遠巻きに眺めている。 ックのコップと、耐熱ガラスのコップを出そ「あの、ほんとにすみません。蒼汰、もう帰 うとして、手をすべらせた。ガラスは割れなるわよ , かったが、それは床に落ちてころがっていっ伊森が声をかけるが、蒼汰は動かない。そワンルームマンションは、夕日に照らされ 一」 0 の時、伊森がパッとサンダルを脱いで、小走て、ずいぶん美しく見えた。 「こら ! 」 りに廊下を駆けてきた。 傳社長に教えられた、開の昔の住まいは三 思わず叱りつけると、一瞬ふたりがびくり「勝手に上がって失礼します。蒼汰 ! あん階だ。もちろん、開はもうそこには住んでい と黙り、蒼汰がひきつけを起こしたように、 た何やってるの ! 来なさい」 ない。一一階に「猪俣」という表札を見つけ 大声で泣き始めた。ホノ力は城の声に耐性が子どもの手をつかみ、引きずるように玄関た。それが、開とパチンコ屋で会って意気投 あるからか、けろりとしてコップを拾っていに連れていく。彼女の姿を、城はやや呆然と合したという「イノマタ」かもしれない。 る。 見守っていた。 どうやって確かめようか 「どうかしましたか 「ほんとにすみませんでした。今日はこれでマンションを見上げながら、学智は考えて 伊森が心配そうに玄関からこちらを覗きこ失礼しますね。ホノカちゃん、これに懲りずいた。猪俣と開の、関係の深さがわからな んでいた。どんどん、事態は収拾のつかない に、またうちの子と遊んでやってね」 い。ひょっとすると、開は猪俣の部屋に転が 方向に向かっている。 頭を下げ、蒼汰にも下げさせながら、慌たりこんでいるかもしれない。窓からこちらを 「いや、大丈夫です。私の声に驚いたようだしく玄関から出ていく。 見下ろしている恐れもある。 火 でー 今日はこれで失礼しますね。 ワンルームに男ふたりが住めるだろうか。 の 城はホノ力の手から落としたコップを取殊勝な態度だったが、そう言った瞬間の、追い詰められた開なら、どんな場所でもと頼 り、流しに置いた。別のコップを出して、ホ伊森の満足げな表情を、城は見逃さなかつみ込むかもしれない。 ノ力と蒼汰にジュースを注ぎ、差し出したた。 思い切って一一階に上がり、猪俣と書かれた 2
な杭をどこからか持ち出し、頭上高く持ち上いとだめなの : : : さがさせて」 強い風にたなびく薄の穂。正気を失ったよ げるとカ任せに新たな場所へ打ち込んだのでまるで巨大な墓標のような杭を背にし、雲うな桔梗の顔。それを運んでいく荷車。無数 ある。杭を引き抜いた三つの孔、それに新し雀は視界の定かでない段蔵の心象の奥へと進の赤蜻蛉。 そして、再び朧月夜。凶相の段蔵が両手に い杭の根一兀からは止めどなく鮮血が噴き出む。 し、 鎌を握り、桔梗を手籠めにした者たちの喉を / 川のように雲雀の足許を濡らしてい すると、突然、景色が変わる。 こ 0 朧月夜だった。風に流される朧雲のせい次々と切り裂いていく。夥しい骸。血の海の 「くいが : : : あたらしい、大きなくいを、おで、地上は月明かりと闇が交互に綾を織りな中、ただ一人、逃げ去る服部保俊。 しいえ、しゅしている。 巨大な陥穴と怯えた保俊。いつのまにか変 じさんが自分でさした e: らのおじさんと同じかおをしているけど、べその下で、雲雀は信じ難い光景を目の当たわり果てた姿となった土髑髏。 またしても、場面は変わり、凶相の段蔵が : いったい、どうりにした。 つの人のようにも見える : いうこと : : : でも、この新しいくいが痛みと十数名の黒い影が蠢いている。その中央で片目片腕となった甲山白雲斎と対峙してい くるしみの原因にまちがいはない : : : あれ ? 蒼い燐光を放っ桔梗が泣き叫んでいた。その ききようさん : : : どこへいったの ? 」 上に覆い被さっていたのは、若い頃の土髑 雲雀は蒼い燐光を見失ったようで、激しく髏、千賀地服部保俊だった。 動揺する。 なんと、桔梗が伊賀で千賀地服部の者たち その言葉を聞きながら、邪見羅にも雲雀がに手籠めにされた夜の光景を、雲雀が目撃し 見ている景色が見えてきた。同調が始まっててしまったのである。容赦のない乱妨だっ 「雲雀、あまり無理をするんじゃねえぞ。こその悲惨な光景に、見開いた雲雀の両眼か れ以上続けられなさそうだったら、兄ちゃんら大粒の泪が滴り落ちる。 「 : : : なんということを : : : 」 に合図を出せ。すぐに目隠しをしてやる 「・ : ・ : わかった : : : でも、ききようさんがい そこからは、眼前の光景が次々と変わり、 なくなっては、だめ : : : おじさんの心にいな断片しか見えなくなった。 一」 0 段 日 diablo 伝 海 道 ■定価 : 上・ [ 本体 15 + 税 下・一 + 税 惡再び ! ! 川中島合戦ー。信玄 VS 謙信の陰で、忍者ちの 熱い闘いがあった。正史には残らない、血湧き肉躍 疾風怒濤の戦国裏戦記 ! ! 双葉社 287 魔縁
コ」心配は無用です。この件については社長「それからもう一つ。今回の記事の掲載を中た。宮野と福富はそれを見送ってから、三好 も社運を賭ける覚悟でいますので」 止するという条件で、五百万円という金額をの車に同乗して四谷に向かい、レンタカーを 福富は悠然と応じる。もちろんはったり提示された話もーー」 返して、しんみち通りに向った。 で、社名を貸しただけの社長にそういう覚悟「ちょっと待て。それは取材とは関係ないだ先ほどの懐石料理の店は、味には満足した があるはずもない。失敗すればあとがないろう」 ものの高級すぎて量の点で食い足りなかった が、そんな気配はおくびにも出さない。 村田は慌てふためく。決めつけるように福と、宮野は張り切って穴場だという海鮮の店 「じゃあ、きようの話は決裂だな。あんたた富が言う。 に案内した。 ちは正義漢を装ってそんな無茶な話を持ち出「いや、今回の記事の信憑性に関わる重要な「まあまあいい線まで押せたんじゃないの。 すが、それに応じる馬鹿が世の中にいると思事実ですから。良心あるジャーナリストとし今夜の一発で億の金を引っ張り出すのはいく うのかね て等閑視するわけにはいきません」 らなんでも無理だから。でも村田にしたら、 「そういうことでけっこうです。さっそく来「待ってくれ。いまここで結論を出せと一一一口わもう逃げようがないじゃない 月号に掲載する準備を進めますので。記事はれても困るんだよ。少し猶予をもらえんかね」 いつものお気楽モードに戻って宮野が言 もう出来ているんだったね ( 水谷君 ? 動揺を隠せない村田の足元を見るように、 う。しかし福富は慎重な口ぶりだ。 「そりや万全ですよ、全一一十ページの大特集気のない調子で宮野が応じる。 「まだ楽勝気分に浸るほどじゃないな。猶予 です。あとはきようの追加取材の結果を書き「どうやってもあと一一日ですけど。それまでをくれと言ったのが引っかかる。もっともあ 加えるだけですから」 に結論を出してください」 の局面じゃ、こっちもほかに手がなかった」 「追加取材 ? なにを書き加えるんだね」 「わかったよ。一両日中にこちらから連絡す「たった一一日でおれが喋った内容を全部ひっ 村田がうろたえて問い返す。けろりとしたる」 くり返すようなことが、村田に出来るわけな 調子で宮野は答える。 意気消沈したように村田は言った。 いよ。五百万なんて額はけち臭いけど、でも 「そりやもちろん、こちらが取り上げた疑惑 向こうから言い出したんだから自白したよう について、村田さんが全面否認したことはち なもんでしよう」 孤 ゃんと書いておかないと」 宮野は意地でも楽観視したい様子だが、鷺 「その点は君たちもフェアじゃないかー 会食を終え、村田はタクシーで帰って行っ沼の感触でも勝負は五分五分で、福富の危惧
「あ、そこまで一一 = ロう」 丹波くん。やりにくい弟子は、持ちたくない 2 葉 「一言っちゃった ? よねえ」 「磯村さん、言っときますけど、おれ、弟子「こっちだって、教えるふりして、関根くん に、色々やっちゃったっていいんだよ。まだ じゃないスからーーー」 す 「何言ってるのよ、弟子そのものじゃない教えてない、えげつないこと、いつばいある の。わたしから色々教わってるしさあー からねえ」 】、ふつ - 、にに前強 「でも、おれ、猫の動きからも教わってます「いつばいあるんだ」 ・ー、伝 . = ろ緒当ま から。だけど、おれ、猫の弟子じゃないでし「もちろん。関根くんみたいなひと、いつば 神や一刊 = いいるからさあ よ , つ」 ル」が・、 「これだもんなあ」 「あ、きみ、わたしと猫を比べるの。それつ オ第ク象青・よ 際限なく続きそうであった。 て、ちょっと、失礼じゃない ? ー 当一 : やわ世 話を打ちきったのは、磯村露風であった。 「比べてないス」 「好きにしてもらえばいい。 両方納得ずく 「ところでさあ、丹波くん。うちの要望は、 「それにさあ、一番肝心なのは、関根くん、 で、リングにはあがってもらいたいからね きみ、わたしより弱いでしよう。先生と弟子あっちに伝えてくれた ? 道田薫は、顎を引いてうなずいた。 って、そこんとこがかなり重要じゃないの」 「ええ」 「で、どうなのよ」 「弱くはないでしよう」 「だって、いつも、わたしの技にかかってる「だそうです。試合直前でもーー」 じゃない 「そりゃあ、よかった」 「あれは、そうした方が技を覚えやすいから「そのかわり、向こうも、同様にチェックを姫川源一一一と、磯村露風は、ほぼ同時に会場 へ姿を現わした。 させて欲しいと言ってました」 でしよう」 「もちろんさ。こっちだけというわけにはい 派手な入場曲もなければ、呼び出しもな 「だから、それが弟子ってことじゃないの」 「じゃ、一回、教わるふりして、本気出してかないしね。ねえ、道田さんー ただ、会場は、どっと沸きあがった。 磯村露風が、道田薫を見やった。 みていいのかなあー 最を
が、勝手に報道をエスカレートさせて、火に金でけりがつくかもしれないという意識が働宮野がああだこうだと料理の講釈をし、嬉 油を注ぐのはいつも君たちじゃないのかねー いているからだ。案の定、村田は戸惑ったよしそうに応じる仲居の声が入る。仲居が挨拶 村田は突然マスコミ批判に転じる。黙ってうに問い返す。 をして立ち去ると、待ちかねていたように村 いた福富が口を開く。 「誌面に載せるかどうかについては、話し合田が切り出す。 「耳に痛いお言葉です。しかし逆に一一一一口えば、 いの用意があると言っていたじゃないか」 「こういうことは、金銭で決着をつけるとい 我々にはそういう力があるということです。 宮野の揺さぶりがよほど利いたのか、村田うのが世間の通り相場だと思うがー 舐めてかかると痛い目に遭いますよ」 は馬脚を現した。 「お金で ? それは想定外のお話ですー いよいよ本性を現したようで、ロ振りが穏「我々としては誠意をもってお話をさせても宮野は滅相もないという調子で応じるが、 やかなだけに不気味な圧力がある。 らったつもりですが、村田さんは頭から否定内心でほくそ笑んでいるのが目に見える。 「それは君、脅迫じゃないかね。こう見えてするだけ。けつきよく平行線ですから、やは「君たちの話を聞いていると、必ずしもそう も私は警察官だ。その私を強請ろうとはいいり掲載に踏み切るしかないと思うんです」 とは思えないんだがね 度胸じゃないか , 素っ気なく応じる福富に、村田の口調がや村田が言っクズ刑事と宮野たちが結託して 居丈高に言い返す村田に、福富はまったくや弱気になる。 いるとまではまだ気づいていない様子だが、 動じない。 「それじゃなんのために会ったのかわからんここまでに披瀝した情報の根幹部分が、そこ 「脅迫なんかしてませんよ。金品を要求してだろう。君たちの根も葉もないでっち上げをから漏れ出したものくらいには考えているだ いるわけじゃないし、暴力を振るっているわ否定する気持ちは変わらんが、時間と金をかろう。 けでもない。あくまで紳士的に取材をさせてけて法廷で争うのも馬鹿馬鹿しい。私としてそのクズ刑事たちに関しては分限処分とい もらっているだけです。これが脅迫罪に当るは、お互いが損をしないかたちでことを落着う究極の手を打ったから、自分が訴追される んなら、テレビから新聞から、記者はすべてさせたい」 心配はなくなった。宮野はマルサが動いてい 刑務所行きじゃないですか , 「お互いが損をしないかたちとは ? る話もほのめかしたが、兄の口座の件にして 福富はおそらく、してやったりと笑ってい 福富は空とぼける。焦らして向こうから尻も、杉内たちに渡った金の件にしても、ここ孤 ることだろう。ここまでの話で村田のほうか尾を出させる作戦だ。仲居がなにか運んできで初めて出した新ネタで、村田はマルサから ら脅迫という一言葉が出てくるとい , っことは、 たようで、村田はいったん口を閉じる。 流れた話だと理解しているはずだ。
だろ。下手をしたら人質事件に利用されう ったというだけで、その周辺情報は一切な 律子が即座に首を振った。 「仲介者の捜査も含めて、 o — < に協力を仰 「〈白雪姫〉は民間人ではありません。北陸ぎますか」 アル・カイーダが来日してテロターゲット 新幹線テロを手伝ったれつきとしたテロリス律子が提案した。 として東海道新幹線を撮影したのか。日本で トです。その切り札を出せばは人質「在トルコ米大使館に o—< のオフィスがあテロを起こすなら新幹線がいいのではないか になんか使わずに、次の一手に利用しようとります。〈白雪姫〉がと接触していとの雑談程度の話題から、ネット上の画像を するはずです」 たとしたら、が情報を持っている可能拾って保存していただけなのか、わからずじ 「次の一手とは ? 」 性があります。現地でパーティ三昧の日々をまいだった。 「 " 米国の傀儡国家 ~ である日本国内での、送る日本大使館の出向組や武官より、情報量 o—< が本気を出してくれないと質の低い イスラム組織によるテロです。これに成功しはけた違いです」 情報しかもらえない。トルコの米国大使館に たら、世界に大きなインパクトを与えられる律子は古池の了承を得る前に立ちあがっ駐留する o—< に突然電話やメールをして と—は気が付くはずです も、日本の依頼など後回しだろう。 一般的に、日本国内でイスラムテロ組織が 律子は米軍厚木基地に駐在する o — < 支局 テロを起こすことは不可能と一一一一口われている。 日本の公安機関と、米国の諜報機関である員、ロバート・アキャマに連絡を入れた。 島国で外国人の数が圧倒的に少ない日本で、 o—< は密接な関係を築いているとは言い難初対面は大使館のパーテイだった。、日系三 絶対的マイノリティである彼らがテロを準備 敵対しているわけでもないが、あちらが世で日本語が堪能。それを武器に自ら通訳な するにはあまりに目立つからだ。 日本を重要視していないことも確かで、日本どを買って出て饒舌に日本語を駆使してはい 三部は懐疑的である。 側が調査依頼を出してもすぐに返事がこないたが、ネイテイプの日本人からするとやはり 「そう簡単に日本人がと接触できる上、散発的な情報しかもらえない可能性もあカタコトだ。 とは思えないな。だいたい〈白雪姫〉はアラった 0 日本人の顔でたどたどしい日本語を話す様 ビア語を話せるのか。ある程度、影響力のあかって、アル・カイーダのアジトから東海子を微笑ましく見ていると、酒の勢いもあっ る幹部への仲介者が存在しないと、下っ端に道新幹線の写真が出てきたという情報が o—てか「バカにするな」と激昂されたことがあ 捕らえられて弄ばれておしまいになりかねな < からもたらされたことがあった。写真があった。 こ 0 0
「あ、やつばり″マヤ人。って呼んでるん村木老人の話を聞いたミサキさんが拍手を代わりにミサキさんが空しい抵抗を試み した。喜多川先生は溜息を漏らしている。 嫌みな女 : ・ 「順番は合ってますね。逆じゃありません「それがスペインの入植者たちがアマゾネス 「だいたい′ ′マヤ″という言葉もスペイン人よ。卑弥呼が生きていたのは西暦一一百年代なに遭遇した何よりの証拠ではないですか ? が勝手に呼んだだけだ。マヤ人自身はそれぞんですから、スペインの入植者たちが遭遇し僕は咄嗟に反論を思いっかなかった。なん たというアマゾネスが卑弥呼の末裔でもおかだか腹が立って腹が空いてきた。 れの部族名で呼んでいるだけなんだよ」 「一口ステーキを召しあがれ」 「どうしてスペイン人たちは " マヤ ~ って呼しくはないですよね ? 」 んだんですか ? ー 「そうですね。因みに南米の女集団も女だけ絶妙のタイミングでミサキさんが料理を出 「諸説あるがマヤ文明最後の大規模な都市国の戦闘集団だから古代キリシャの神話に準えしてくる。いつの間に作ったのだろう。しか 家″マヤパン″から″マヤ″の音が残ったとてアマゾネスと命名されたんです」 も客の注文も聞かずに勝手に出してくるのが いう説が一般的た」 「すごい話ですよね。もしかしたらアマゾン〈シベール〉ルールなのか。 「アヤパンみたい」 川は、アマゾネスに遭遇した場所たからアマ「焼いて、うっすらと醤油をかけただけです 何だ ? アヤパンって。 ゾン川と呼ばれるようになったんですか ? 」けど、素材がいいから食べてみてください」 「スペインの入植者たちがアマゾネスに遭遇「よく判りましたね。諸説ありますが、その「うまい」 とい , つのは ? さっそく喜多川先生がロに運んでいる。 説が有力です , 僕の疑問を村木老人にぶつけた。 そこは気がっかなかった。 「体力がっきそうだ」 る 「インカ帝国を征服したフランシスコ・ピサ「スペインの入植者たちがアマゾネスに遭遇「ありがとうございます」 れ ら ロは一五四一年にも南米遠征を敢行しているした話は公式な記録には載っていないはずでたしかにうまい 作 で んですが、そのときに随行していたフランシすが ? 」 「ところで . 一口ステーキの旨味を堪能しているときに スコ・デ・オレリャーナが大きな川沿いで女喜多川先生が一一 = ロうと村木老人はロをモゴモ だけの戦闘集団に遭遇したんですよ ミサキさんが口を開く。 ゴするだけで一言も反論できない。 「それがアマゾネス ? 」 「でもアマゾン川の名前が残っているんです「さきほど " マヤ文明を減ほしたスペインの 「そうです」 よね」 入植者たちがアマゾネスに遭遇した ~ って仰 る。
の自前の煙草から一本出して渡してやると、で読むことが出来る。雑誌も可能だが、ホッれこそ意気投合して、新たな犯罪が誘発され 飛びつくように受け取り、すぐさま口にくわチキスの芯は、事前に担当官が紙紐に交換しる可能性は高い。だから被留置者同士の過度 えた。武本はライターで火を点けてやる。 てから引き渡す。貸し出すボールペンは市販な接触はもとより、会話内容にも担当官は耳 「すんません」 されているものとは異なり、軸のみで先端かをそばだて、内容によっては注意をする。 煙草を唇に挟んだまま片手で拝むようにしらボール部分が〇・五ミリのみ出ている。ペそうなると被留置者の自由時間は、押送や て礼を一一一一口う。 ンを垂直に立てないと文字が書けないため被取り調べ、一日一人の面会人、弁護士の接見 「沁みるなあ 5 」 留置者からは不評だが、わずかでも尖っていがなければ、八畳の房内で満室ならば男性四 深く吸い込んだ煙を鼻から吹き出して九十るものは凶器となりうるという理由で、この名で、静かに座っているか、寝転がるかのど 一一一番が満足げに言った。 特注品を使用し、さらに食事時の都度回収すちらかだ。 運動と言っても、担当官の指導の下、被留る。 そのため運動の時間は被留置者にとって、 置者に運動ーー決まった体操等を本当にさせ昼食までは自由時間。十一一時に昼食。その少しは自由になる貴重な時間た。この時間内 はしない。実際は、房の外に出して気分転換後、十七時の夕食までまた自由時間。一一十時 をさせる時間た。 から総検ーー被留置者の所持品を確認し、貸 4 留置場の一日の流れは決まっている。朝六し出した官本とポールペンを回収する。この 時半起床、七時までに洗面と布団の片付けとときに被留置者の眼鏡も回収する眼鏡の弦 房内の清掃。七時頃から朝食。八時から平日やガラスも凶器となりうるからだ。回収した 警官は奔る のみ、被疑者一人あたり十五分から一一十分の眼鏡は起床時に引き渡す。その後、洗面、就 運動。同時間に五日に一回、夏場は月曜と木寝の準備をし、一一十一時消灯。留置場内で 曜に交代で入浴。九時から被留置者の所有物は、これが毎日繰り返される。 である自本の引き渡しとポールペンの貸し出自由時間といっても、被留置者は房の中で 庫 し。及び一日三冊までの官本の貸し出し。被自由気ままに好き勝手には出来ない。もとよ 文 Tachimori Megumi 留置者は自分の所有物の本ならば、持ち込みり留置場は事件を犯したと見なされる被疑者 日明恩 , 禁止内容に該当しなければ、房内に持ち込んが入る場だ。それだけに情報交換したり、そ 振り向くな。 洋明けない夜は 第法と現実の狭間で 二苦悩する刑事たち。 当それぞれの信念の つ行き着く先は 第用回 3 円一 + 税 149 ゆえに、警官は見護る