日本人 - みる会図書館


検索対象: 小説推理 2016年12月号
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1. 小説推理 2016年12月号

だろ。下手をしたら人質事件に利用されう ったというだけで、その周辺情報は一切な 律子が即座に首を振った。 「仲介者の捜査も含めて、 o — < に協力を仰 「〈白雪姫〉は民間人ではありません。北陸ぎますか」 アル・カイーダが来日してテロターゲット 新幹線テロを手伝ったれつきとしたテロリス律子が提案した。 として東海道新幹線を撮影したのか。日本で トです。その切り札を出せばは人質「在トルコ米大使館に o—< のオフィスがあテロを起こすなら新幹線がいいのではないか になんか使わずに、次の一手に利用しようとります。〈白雪姫〉がと接触していとの雑談程度の話題から、ネット上の画像を するはずです」 たとしたら、が情報を持っている可能拾って保存していただけなのか、わからずじ 「次の一手とは ? 」 性があります。現地でパーティ三昧の日々をまいだった。 「 " 米国の傀儡国家 ~ である日本国内での、送る日本大使館の出向組や武官より、情報量 o—< が本気を出してくれないと質の低い イスラム組織によるテロです。これに成功しはけた違いです」 情報しかもらえない。トルコの米国大使館に たら、世界に大きなインパクトを与えられる律子は古池の了承を得る前に立ちあがっ駐留する o—< に突然電話やメールをして と—は気が付くはずです も、日本の依頼など後回しだろう。 一般的に、日本国内でイスラムテロ組織が 律子は米軍厚木基地に駐在する o — < 支局 テロを起こすことは不可能と一一一一口われている。 日本の公安機関と、米国の諜報機関である員、ロバート・アキャマに連絡を入れた。 島国で外国人の数が圧倒的に少ない日本で、 o—< は密接な関係を築いているとは言い難初対面は大使館のパーテイだった。、日系三 絶対的マイノリティである彼らがテロを準備 敵対しているわけでもないが、あちらが世で日本語が堪能。それを武器に自ら通訳な するにはあまりに目立つからだ。 日本を重要視していないことも確かで、日本どを買って出て饒舌に日本語を駆使してはい 三部は懐疑的である。 側が調査依頼を出してもすぐに返事がこないたが、ネイテイプの日本人からするとやはり 「そう簡単に日本人がと接触できる上、散発的な情報しかもらえない可能性もあカタコトだ。 とは思えないな。だいたい〈白雪姫〉はアラった 0 日本人の顔でたどたどしい日本語を話す様 ビア語を話せるのか。ある程度、影響力のあかって、アル・カイーダのアジトから東海子を微笑ましく見ていると、酒の勢いもあっ る幹部への仲介者が存在しないと、下っ端に道新幹線の写真が出てきたという情報が o—てか「バカにするな」と激昂されたことがあ 捕らえられて弄ばれておしまいになりかねな < からもたらされたことがあった。写真があった。 こ 0 0

2. 小説推理 2016年12月号

ドが誕生した。のちに日本人になる集団が枝「違いません」 本人↓マヤ人↓アマゾネスという理屈は。 「日本人もマヤ人も同じモンゴロイド : : : で分かれしたのが三万八千年前。モンゴロイド村木老人が喜多川先生の一一一一口葉を認めた。 「ならば : : : 日本人とマヤ人が枝分かれでな も日本と南米 : : : 。どうしてそんな離れた場の一派はその後、一万四千年前辺りにはべー リング海峡を渡ってアメリカ大陸へ進出しく、同じ一派であることが証明されなければ 所に同じ人種が ? 」 : : : 少なくとも否定できないだけの証拠を挙 「移動したんだよ」 た。その一部がマヤ人になったのだろう。た しかに時系列的には矛盾はない。アジアのモげられなければ、あなたの " 日本人がマヤ人 喜多川先生は面倒くさそうに答えた。 ″日本人がアマゾネスになっ ンゴロイドが日本を通さないで北米、南米にになった″ 「そんな長い距離を ? ー 渡ったのか、それとも日本を通して渡ったのた″説は崩壊することになりますな」 ミサキさんは素で驚いている。 「日本人がマヤ人になった可能性を否定する 「別に驚くには当たらない。人類の発祥はアかは判らないけど。 ことは誰にもできませんー フリカだって以前、話しただろう。忘れたの「モンゴロイドの一部が日本にやってきて、 違う一部が南米に渡ったとしたら、両者には「もしそれが事実であるならね」 か ? 」 「つまり人類は、アフリカからあらゆる場所共通項があるはずだ。日本人と南米人が同じ喜多川先生と村木老人の間に火花が散っ た。ような気がした。 に移動したんですよ。ヨーロッパにもアジアモンゴロイドから分かれたのならね , 「喜多川先生の仰った通り、私は卑弥呼Ⅱア 「そうなりますね」 にも。もちろん南米にもね」 僕は喜多川先生の説明を補強する。 喜多川先生もミサキさんも同じ " 原日本人マゾネス : : : その前段階として、卑弥呼Ⅱマ 「じゃあモンゴロイドが南米に渡ってアマゾとも言える一派がアジアで枝分かれして一部ヤ人、すなわち日本人とマヤ人は同系だとい る ネスになったとしても驚くには当たりませんは日本人になり一部はアメリカに渡った″説うことに気がっきました」 れ なのか。 ねー 村木老人が調子に乗って話しだす。墓穴を作 で ムッとした。 「村木さんにしても、卑弥呼という固有名詞掘っているとも知らずに。 を使ったということは、それなりに日本とマ 「時系列的にも矛盾ありませんよね ? 」 喜多川先生が頷く。 ャ近辺の間に共通点を見いだしているに違い 人類が誕生したのが一一十万年から十五万年ない。だからこそ卑弥呼という言葉が出た。 明その後、五万年前にアジアにモンゴロイ違いますか ? 」 九杯目には早すきる、 蒼井上鷹 庫 葉 定価 本体 629 円 + 税双

3. 小説推理 2016年12月号

を稼ぐ気なら、土地勘のある地域のパチンコで、真面目な苦労人の傳までが、危うく会社た傳が、教えてくれたのは、運送会社に勤め 2 屋に逃げ込むのではないか。 を失うところだった。自己中心的すぎるし、ている間に、同じワンルームマンションにい た日本人のことだった。 啓天が、開に金を持たせていたはずはなギャンプル依存にも感心しない。 。元手をどう工面したか知らないが、パチしかし、開の人生を金で縛り、彼の家族や『イノマタという名前たったと思う。引っ越 親族まで事件に巻き込んだのは啓天だ。そのしてしばらくはロもきかなかったが、近所の ンコなら少額でもかまわないはずだ。 開は、中国から日本に来て、まず池袋の傳せいで、開はいっか中国に戻る日が来たとしパチンコ屋でばったり出くわして、それから 少し喋るようになったと言っていた。開はカ 社長の運送会社に勤め、それからやはり池袋ても、彼らに顔向けできないだろう。 の馮社長の会社に転職した。馮からけた後そう考え、ハッとした。 タコトの日本語を話せたから』 は、千葉の市原に潜伏していたそうだ。 開が中国人コミュニティに顔を出せやはりパチンコ屋が、キーワードになりそ 学智は、まず池袋近郊のパチンコ屋を一軒ば、すぐ啓天に連絡が行く。 ずつ回り、開を捜した。 啓天と〈赤い虎〉は、中国人たちに顔がき「当時の住所を教えていただけませんかー サングラスをかけて顔を隠し、客のふりをく。特に、開がよく知っているような、後ろ諦めたのか、傳はもう学智の調査を止めよ してふらりと店内を一周する。平日でもパチ暗い何かを抱えている中国人たちに。〈赤いうとはしなかった。素人の調査など、うまく ンコ屋はそれなりににぎわっていて、六割、虎〉が捜していると聞けば、彼らは迷わず密いくはずがないと、たかをくくっているのか 七割と埋まった座席を、ひとつずつ確認す告するだろう。隠していれば、後で何をされもしれない。 る。 るかわからない。親族にすら連絡は取れな当時、開が住んでいたのは、区立図書館の 、。よ当然、そのことにも気づいているだ近くのワンルームマンションだという。歩い やみくもに捜し回っているという気がしなし尸。、 いでもないが、他の手を思いっかない。しかろうから、中国人コミュニティと距離を置くて行ける距離だった。傳社長が保証人になっ し、開はどこにもいなかった。 はずだ。開が助けを求める相手は、日本人したと聞き、あらためて開の自己中心的な裏切 り行為に嫌悪感を覚えた。 捜しながら、学智が考えていたのは、啓天かありえない。 『開が知っている日本人 ? 』 急いでそちらに向かう途中で、携帯に電話 が破壊した開の人生だった。 パチンコ屋を出て、傳社長に電話をかけ、 がかかってきた。華華だった。 むろん、開本人には同情できない。恩義の ある雇い主を騙し、大金を奪った。彼のせい尋ねてみた。しばらく首をかしげるようだっ『学智さん、大丈夫 ? さっき早めにお店に

4. 小説推理 2016年12月号

使い、交通事情や鉄道に関する情報はすべて座席数は約六万八千と、日本最大の規模を誇があることが予想された。 頭に叩き込んだ。極端に言えば、地方から上る。アジア圏でもほとんど類を見ないほど大ただ、写真や動画などだけでは不明なこと 京してきた人間に道を聞かれても、答えられきい。阿南総理が開会宣一一一一口を行うのはグラウも多い。それについては、自分の目で確かめ るだろう。 るしかなかった。狙撃ポジション、あるいは ンドのいずれかの場所になるはずだったが、 当然だが、新国立競技場煉ひその周辺につ総理の周辺には何十人ものがつく。 逃走経路なども含めて考える必要がある。 いても徹底的に調べていた。モエドからの依厳重な警備が敷かれるだろう。とても近づ狙撃による暗殺がファーストオプションだ 頼は、七月一一十四日のオリンピック開会式でくことはできない。遠距離狙撃以外、暗殺のったが、こだわるつもりはない。いずれにし ても、現場を見なければならないだろう。 の阿南総理暗殺だったが、その手段について手段はないとモエドは考えたはずだ。 新国立競技場内にいる人間を外部から狙撃開会式まで後、約三カ月。時間はなかっ は暗に射殺を示唆されていた。 モエドの狙いはわかっていた。としする場合、その距離はどんなに接近できたとた。 コヨーテはまっすぐみどりの窓口に向か ては、世界中に生中継されている状況で、阿しても千メートル以下にはならない。それ以 、成田工キスプレス、新宿、と日本語で言 上の超遠距離狙撃ということも十分に考えら 南を殺害してほしいのだろう。 った。一一十分ほど待っことになりますと説明 その映像が流れれば、ケネディ暗殺以来のれた。 衝撃を全世界に与えることができる。結果とその距離で暗殺を成功する技術を持つ者を受けたが、別に構わなかった。 「新宿から山梨の甲府へ行きたい」路線図に して、の力を誇示することが可能になは、世界という水準で見ても三人といない。 るはずだ。 そして自分がベストのスナイバーであること目をやりながら言った。「そこまでの切符は ここで買えますかー そして、もうひとっ理由がある。自分の狙は、誰の目にも明らかだ。モエドとしては、 もちろんです、と係員が笑顔でうなずい 自分を選ぶしかなかっただろう。 撃能力に対する信頼だ。 新国立競技場は敷地面積約十一万一一一千平方殺害手段について、最終的には任せるとモた。この男は自分を日本人と思っているだろ メートル、建物の建築面積は約七万一一千平方エドは言った。コヨーテ自身、自分の技術でう、とコヨーテも笑みを返した。ネイテイプ メートル、延べ面積約十九万四千平方面積と最も自信があるのは狙撃だったから、そのつの日本人と同じレベルで日本語の会話ができ もりだったが、新国立競技場の立地、建物のた。 いう巨大建造物た。 北京からインターネットを通じ、山梨県甲 規模などを子細に検討すると、かなりの困難 建物自体の高さは最高で約五十メートル、 2 -6

5. 小説推理 2016年12月号

を握っている。 「アラビアではライオンですし北米ではバケ「宗教 ? 」 ツを運ぶ少女という具合です , 「はい。そこが違っていたら、やつばり日本「もしかしたらマヤ文明が滅んだ本当の理由 「マヤでは ? 」 人Ⅱマヤ人説は成りたたないと思うんです。はアマゾネスかもしれませんね」 喜多川先生が訊いた。 「マヤは多神教です。いろいろな物に神が宿「ん ? 何の話だ ? 」 「男性の数が少なくなった事です , 「ウサギを抱いた月の女神です , っていると考えてたんですー 「ええ ? マヤ人も月にウサギがいるって思 「日本と同じですね」 「あ」 アニミズムの世界 : 一神教とは異な僕は思わず声をあげてしまった。 ってたんですか ? 」 る。 「それがマヤ文明が滅んだ本当の理由なんで 「はい」 「時と場所を隔てた日本とマヤは月のウサギ「アマゾネスがいたことはスペイン人のフラすよ。原因は判りませんけどマヤでは男女比 ンシスコ・デ・オレリャーナが証言していまが崩れた。その象徴的な事象がアマゾネスの によって繋がっていたんですねー ミサキさんがしみじみとした口調で一一 = ロう。す。そしてアマゾネスは地理的にマヤ人の可出現です。そして男女比のバランスが崩れた 「さらに決定的なのは文字ですー 能性がある。そしてマヤ人と日本人には抜きマヤ人たちは、もはや文明を維持する力がな 差しならない共通点がありました。逆から辿くなって滅んだ」 「文字 ? 」 「ええ。マヤの文字は母音と子音を一文字でれば日本人↓マヤ人↓アマゾネス。つまり」店内に静寂が訪れた。 ミサキさんはニコッと笑った。 「マヤですー 表す表音文字と意味を示す表意文字が混ざっ 「日本人がアマゾネスになった可能性がここ 「え ? 」 て使われているんですー 「それって日本とまったく同じですよね ? 」に指摘されたんです」 ミサキさんはゴプレットに注がれたカクテれ ら 「そうなんです」 僕も喜多川先生も反論できない。それはミルを差しだしている。 作 「非常に近い感性の人たちだと感じます。でサキさんが発した笑みの魔力のせいなのだろ「簡単に一一 = ロえばラムとパイナップルジュース一 , つかワ・ を混ぜたトロピカルカクテルです。おいしい ミサキさんは右手の人差し指を立てて頬に「少なくとも日本人とマヤ人は共通の記憶をですよ」 当てた。 喜多川先生は無一一一口でマヤを口に運んだ。 有した種族だとは言えそうですー ( 第三話・了 ) 「宗教はどうかしら ? 」 歴史学者を差し置いてミサキさんが主導権

6. 小説推理 2016年12月号

やかに主張している。 かっては躍動的な栗色であった髪は真っ白「最近ではネット配信なんてのもあります 未亡人となったアイリーンは、ここで一人になっていたが、まぎれもなくあのアイリー よ」 暮らしをしているということだった。 ノバークリッジだった。 「ネットとか、そういうのはもうさつばり アイリーン・ ークリッジは、冲央大学卒実花はすぐに立ち上がって名刺を差し出よ。若い頃は好奇心いつばいであんなお仕事 業後、外資系大手商社の日本支社に就職しす。 もやってみたけど、今になってみると、もう た。そのときナツメダ・トレーディングの御「はじめまして。黎砦社特撮旬報編集長の神恥ずかしいばっかりで」 曹司に見初められ、結婚して家庭に入った。部と申します。このたびは突然のことにもかひとしきりそんな話をした後で、実花はバ だが、結婚生活は幸せとはほど遠いものだかわらずお時間を割いて頂き、ありがとうごッグからジャネット・アンドリュースの腕時 ったと推測される。当時の週刊誌記事によるざいます」 計を取り出した。 と、故棗田信克氏は自宅にもろくに帰ること「いいのよ、私は時間だけはたつぶりある「お電話では細かいことまでお話しできませ なく派手な女遊びを続け、挙句の果てに健康の。お客だって滅多に来ることはないし」 んでしたが、今日お伺いしましたのは : : : 」 を損なって不自由な体となり、アイリーン夫日本での暮らしが長いだけあって、ネイテ佐伯からそれを託された経緯について詳し 人に途轍もない苦労をかけたという。やっとイプの日本人よりも品のある日本語だった。 く話す。 解放された夫人が、鎌倉に引き籠もりたくな実花はテレビの中のアイリーンが、吹き替え アイリーンは助監督時代の佐伯についても る気持ちも分かるような気がした。 ではなく、常に達者な日本語で話していたこよく覚えていた。 呼び鈴を鳴らすと、ヘルバーらしい女性がとを思い出した。 「佐伯さんがずっとこれを : 応接間へ通してくれた。よい香りの漂う気持「お目にかかれて光栄です。私、『地球要塞』腕時計を手にとって眺めながら、アイリー ちのいい部屋だった。アンティークなソフアも『ワンダーマスク』も大好きですから」 ンがしみじみと漏らす。 の座り心地も申し分ない。 「あなたみたいにお若い方が ? 」 「見覚えがありますか」 そのまま寝てしまいはしないかと心配した「ビデオで観てるんです、私達の世代は」 「ええ、間違いなくジャネットの時計よ。安 が、まったくの杞蛩たった。客を少しも待た「ああ、そうでしたの。うちでは入れており物だけど、どんな服にも合うって彼女、重宝 せることなく、女主人の棗田アイリ 1 ンが入ませんけど、ケープルテレビでもよくやってしてたわ。あの頃、私達はいつもお金がなか ってきた。 いるそうね」 ったから。なくなったことまではさすがに覚

7. 小説推理 2016年12月号

と、大田黒は、いう。 ざと、別のきき方をした。 ね。確か、まだ小学校の一年生でしたかねー レ」、い , っ 「モンゴルの何を調べていらっしやるんです「向こうでは、日本人にも、会いましたか 「その娘さんの名前は、確か典子さんとい , つか ? 「主として、モンゴルの歴史ですー と、いうきき方をした。 んじゃないですか ? , 「ああ。そんな名前でしたね」 「戦争中の、日本とモンゴルとの関係もです「そうですねえ。いく度に、日本人に会いま と、いったが、今、どこにいるか、きこ , つか ? すねえ」 とはしなかった。 「そうです。刑事さんもそれで、私を選んで「今年も、いかれるんですか ? 」 「いろいろと、話していただいて、参考になアヘンのことを、ききにこられたんでしよう 「いって、みたいですね」 りました」 「その時、私も、同行していいですか ? 」 と、いって、十津川は、腰をあげたが、そと、大田黒は、笑っている。 十津川は、わざと、そんな質問をしてみ の時、部屋の隅の写真が、気になった。 「いや、私は先生に、戦争中の日本陸軍が、 アヘンで戦費をまかなっている話をききたい 一瞬、大田黒は「え ? , という表情を作っ 三人の男が、写っている。日本ではない。 外国の風景である。テント造りの家カノ ヾ、ヾッと思ってきたんですが、戦後もよくモンゴルたが、すぐ、笑顔になって、 クに写っているから、モンゴルか。 にいかれていたんですね ? 」 「申しわけないが、私は、仕事というか、勉 三人の男のひとりは、大田黒である。しか「最近は、日本とモンゴルの関係が、角力な強のために、モンゴルへいくのであって、ど し、十津月カ気になったのは、ほかの一一人のどを通じて親密になっているので、私も、モうしても、ひとりで、自由にモンゴルのなか 男のほうだった。 ンゴルを、再認識する気になって、毎年、訪を見て回りたいので モンゴル人の服装だが、どう見ても、あのれているんですが、戦後のほうは、アヘンとやわらかく、拒否した。 は関係ありませんよー 「この写真は、いっ撮ったんですか ? 五人組のなかの一一人である。 レ」、い , っ と、十津川が、きいた。 「これ、モンゴルですね ? ( では、一緒に写っている日本人一一人は、ど「確か、五年前の一月です。粉雪が舞ってい と、十津川が、きいた。 「ああ、そうです。仕事の関係があるので、 , ついう関係ですか ? ) ましたねー と、質問してみたかったが、十津川は、わと、いったが、一緒に写っている一一人の男 一年に一回くらいは、いっていますよ」 一」 0 426

8. 小説推理 2016年12月号

していなかった。 も、限りなく高いと考えていいだろう。 「量はどれぐらいですか ? ー ジャミリが貴賓席に爆弾を埋設することは十年前、はゾアンべ教国議会にも議全部かどうかまだわかっていないが、と一一 簡単だっただろう。彼らには三年以上の時間員を送り込んでいたほどの勢力を誇ってい宮がヘルメットを外した。新田の同期で、滝 があった。実際に現場で作業をするのはジャた。その後、内部分裂を繰り返し、かっての本もよく知っていた。 ミリたちだ。 力は衰えているとはいえ、当時のは敵「今のところ約四キロ。予測では、爆発すれ 指示を出すのは日本人社員だが : シャミリ対国家に無差別テロを宣一言していた。日本もば半径五十メートルにあるすべてのものが粉 たちはパスを携行していたから、作業時その有力なターゲットのひとつだった。砕される。当然だが貴賓席はーーー」 間以外に関係者として担当部署に出入りする (-) はジャミリをテロ実行グループのリーダー 一一宮が真四角の顎を手でこすった。跡形も ことも可能だった。他人の目をごまかすこととして、日本に潜入させていたのだろう。 なく吹っ飛ぶ、と長谷部が両腕を肩の辺りで は難しくなかった。 滝本は顔をしかめて、 , ため息をついた。不開いた。 警視庁がジャミリたちの顔写真をアメリカ快な澱のようなものが胃の中で蠢いていた。 「説明するまでもないが、貴賓席には阿南総 大使館を通じて照会したところ、四人の男は十年前からテロの準備をしていたというの理をはじめ、文科大臣、スポーツ省大臣、オ ゾアンべ教国人であることが判明した。ゾアは、日本人にはとても理解できない心理だ。 リンピック担当省大臣といった政府要人が入 ンべ教国は中東の小国に過きないが、国内に何を考えていたのか。 る予定たった。皇族についても同様だし、世 いくつか反体制派が存在し、その中に最も過右手にあったエレベーターのドアが開き、界各国から招待されたも列席すること 激な原理主クループにしてテロ集団、 一一人の男が出て来た。一人は警視庁警備課長になっていた。爆発が起きれば、全員が即死 o があることは警視庁も把握していた。オリの長谷部で、もう一人は警備部機動隊爆発物しただろう」 ンピック開催に当たり、最高レベルで警戒が処理班、 QOQ の一一宮という警部だった。新爆弾の構造は、と新田が質問した。細かい 必要な組織だ。 田君、と長谷部が声をかけた。 ことは省くが、と一一宮が持っていた携帯電話 「大量のセムテックス、つまりプラスティッを見せた。 四人の男は cn—o が本拠地としているパパ ス大聖堂に熱心に通っていて、ジャミリの兄ク爆弾が発見された」 「これが起爆装置だ。ひとつじゃない。予備 はのメンバーだったこともわかった。 ちょうどこの嶼下だ、と踵で床を蹴った。を含めて十台あった。確認したところ、電源 はスリープモードになっていた。タイマーが ジャミリ本人が cn—o メンバーである可能性やはりそうですか、と新田がうなずいた。

9. 小説推理 2016年12月号

こういう細工物をお好きでしたかー が殺され、犯人もわからないまま事件が忘れか」 「まったく聞いたことがありません」 去られる。宮本さんはそういう状況に耐えら「近いうちに上海から引き揚げるつもりなの 「では、なぜ持っていたのでしよう」 れますか。どんな事情で殺されたのか、真相で」 「石ロ静子さんに贈るつもりだったのでは。を突き止めたいと思いませんか」 「内地へ戻るんですかー でも、これで強盗殺人の線は消えますね。金「勿論、知りたいです。とても知りたい」 「まだ決めていません。いまの日本の状況じ 銭目的で襲ったのであれば、これに気づかな 「だったら、私を雇いませんかー や、 , つつかり、里帰りしないほ , つがいいよ , っ 「えっ いで立ち去るはずがない」 な気もしてね」 「はい、仰る通りです。したがってエ部局警「エ部局警察を退職したあとも、私がこの事高雄は目を細め、茶をひとくち飲んだ。 察でも、抗日テロと怨恨の線で捜査すること件を追いかけて犯人を見つけ出す」 「私は若い時分から上海にいるので、日本よ になりました。ただ、学者さんがああいう殺「大変ありがたいお話ですが、なぜそこまりもこちらに愛着があるほどです。だが、も され方をするのは、ちょっと珍しい」 し、戦局が悪化して日本軍がこの街から退く 「上海自然科学研究所の所員は、以前にも、 高雄はにやりと笑い、新しい煙草に火をつとなれば、ここに残っていちゃ危ない。大陸 抗日ゲリラに誘拐されて、殺されたことがあけた。「目的は金です。それ以外の動機は何に住んでいる日本人は、自分たちで想像して るんですー もありません。本当は、こういう話は石ロ静いる以上に他民族から憎まれています。軍人 「その事件なら知っています。でも、六川さ子さんに持ち込むのが一番いいんですが、あや一般人の区別なく、女子供であることも免 んの場合は犯行声明が出ていないし、例の株の人は、どう見ても金を持ってるようには見罪符にはならない。やっかい事に巻き込まれ の話も気になります、 えない。勤務先での扱いや、本人の格好を見る前に、さっさと逃げ出さなきや。金はその 「未解決のまま高雄さんが退職なさったら、ればわかります。それにひきかえ、あなたはために要りますー 別の方が捜査を引き継ぐんですか」 官費で、政府と皇軍のために働いている方「若い頃というと、第一次上海事変よりも前 王 「いいえ、たぶん、そうはならない。上海租だ。戦時下でも給与は安定しているでしょですか の い破 界では殺人事件は日常茶飯事です。私が手をう。そこから、ほんの少しだけ分けて頂けれ「そうです。昔の上海はよかったですよ。 離せば、もう誰も顧みないー高雄は短くなつば」 まとは比べものにならないほど輝いていた。 た吸い殻を灰皿で揉み消した。「大切な親友「どうして、そんなにお金が欲しいんですまさに地上の楽園でした。金さえあれば、ど R

10. 小説推理 2016年12月号

その後も情報交換のたびに似た態度を取ってひっくるめてテロ活動の理山つけとしてい動を把握していた。秋の人事異動を待たずし た。日系人だが米国籍であり、純粋な日本人ます。沖縄の米軍基地問題もしかり。北陸新てたった一人、公安一課に戻った律子を、周 を必要以上に見下す人物。彼ならコントロー幹線テロ以上のインパクトを世界に与えるた囲の捜査員たちは不思議そうに眺める程度 ルしやすい。律子は専用回線の通話口に出ために次のターゲットとして有効なのは、米軍で、深入りしようとはしなかった。 アキャマに尋ねた。 基地以外にありません。米国を巻き込んだら隣のデスクの刑事が何の捜査をしているの 「『名もなき戦士団』はご存じですね。次の世界中に衝撃が伝わりますからねー か知らない。それが、公安だ。 テロターゲットに沖縄の米軍基地が候補に挙アキャマからため息混じりの了承を律子は がっているという情報がありました」 引き出した。すぐにトルコの在外公館から情午後一一一時ちょうど。トルコ現地時間は朝九 0— < を動かすためにたったいま律子が思報を確認すると一一 = ロう。 時。秒針がを回ったのを確認し、律子は即 いついた偽情報だ。 律子はトルコとの時差を確認した。サマー座にトルコ・アダナの米国領事館に連絡を入 「そんな情報はこちらには入っていない。信タイム中なので、日本の方が六時間早い。まれた。領事館内にある o—< 分局につないで びよう性は ? 」 だあちらは夜明け時で電話確認しても無駄もらう。ここから先はネイテイプアメリカン アキャマはぶつきらぼうに言う。乱暴な様だ。 との会話となる。留学経験がない律子は大学 は、こちらの要求をはねのけようとしている首都アンカラに米国大使館が、イスタンプ受験程度の英語で対抗しなくてはならない。 とも感じる。律子はあえて英語で答えた。 ールとアダナにそれぞれ領事館がある。 o—自然と肩に力が入った。 「あまり高くない。しかしそちらは信びよう < 支局があるのはアンカラだが、絡電話に出たのは男性分局員だった。すでに 性が低いという理由から、アル・カイーダのみの情報が収集されやすいのはアダナの領事 o—< 日本支局から依頼のメールは受けてい 米同時多発テロ情報を無視してあのような結館だろう。シリア国境から最も近い都市だ。 ると答えると、早ロだが端的な英語で続け 果を招いた過去がありますよね。 律子は午後三時になるのを待って、直接アた。 女 腹が立ったのか図星だったのか、沈黙があダナ領事館に連絡を取ることにした。、それま「メールを見て、ミス O のことを思い出し階 十 った。予想通り。律子は次は日本語で続けでに、デスクの引っ越しと係長クラス以上のた」 一」 0 「ミス O ? 役職者へあいさっ回りをする必要があった。 「『名もなき戦士団』は国内の社会問題を全校長の一声で課長クラスはすでに律子の異コフッカ市内の協力者から、の活動翫