ることを課せられていた。 滅亡の危機を = 角れても、それまでの生命がどれ一つとして残っていないのでは、事実上の 世界壊滅となんらかわりはないからだ。 ゝ。どれほどの時間がかかるのか 植物も動物も皆、生命の輪をつなぐ大切な仲間に違いなし 予測できない以上、減少し滅亡してゆくそれらの種族を見逃すわけにはいか 希望するひとびとにも、世界が救われたときに目覚めるように「眠る』措置をとることが 許可された。 へんぼう 現状に不安をいだく者、変貌する時代についてゆけぬ弱い者たちは、自らその勧めに従っ ていった。 / 。 後こ残った者たちに、少しでも多くの食糧なりが行きわたることが願われた。 やかた うわさ びよう 多くの地方領主の館の地下には、それらの者を収容する廟がいくつも急造されたという噂 が流れた。 こうしやくりよう だか、ここ。カルバイン公爵領においては。 訪れた魔道士は誰一人として王都に戻ることはなかった。 『眠りたい』と申しでて館の門をくぐった領民たちもまた、誰一人として「魔道によって」 時代に適応できない人間は、たとえ世界が復興しようとも足手まといになることが目に見 「眠る』者はいなかった。
無理をしてはいけない。 どんなに努力してもそれがなされないときには、必ずなんらかの理由があるはずだ。 ただ力で押すだけではどうにもならないこともある。方法や時が不適当な場合もある。も う一度、落ち着いて考えよ。自分の内なるもの、外なるものの確認をせよ。 ひとたび動きだしたものを中断し修正することは、はなはだ困難なことである。原点に 戻って物事を行うほうが、手直しするよりも容易である。すべてを反古にして再び最初から やり直すことは、もっとも適切だが二重の手間を要する。かかる時間は倍ではすまない。 って時を選ぶことはいけない。時に追われていてはいけない。 時が逃げきることはまずない。本物の時は逃がしても再びめぐりくる。ただし、めぐりき た時が、自分にとって都合がよいとは限らない。時待つ者は常に余裕をもち身構えよ。 たましい 知ること、記憶することは、人間にのみ魂に刻むことを許された行為である。必要なる物事 は、けっして忘れさることはない。断片であれ、どこかに引っかかるべき部分をもっている。 知り、伝え残していくことこそ、今という時間に生きる我々に与えられた使命である。知 これらにもすべて時があることを考えればよい ること、忘れることを恐れてはいけない。 適したことをせよ。続けられることをせよ。視界を広くもてることをせよ。 そしてなによりも、自分を信じることが大切なのである。 〈自由人テイムジン・アシャス覚「賢者オルロフ」の項より抜粋〉
朝起きスズメの僘つばりです。 しょ 目覚ましは使ってません。自力で起きます。なーんか時間に縛られるのって嫌いなのね。 でも、だからって朝の時間にだらしないってわけじゃないです。 自分で決めた時間に「起きる』んですよ。毎日、ほば同じ時間に。たまーに起きられない ときがあったりすると、体調悪いなーなんてね。 起きた瞬間から元気なひとだから、わりと時間めいつばいの有効活用かな。 今のところ目開いて二十分で家を出る、そんな生活してます ( 専業作家ではないので ) 。 朝御飯はちゃんと食べましようね D 一日のうちでもっとも重要なのが朝御飯。食べない で学校行ったりしてるひと、注意ね。脳ミソが栄養不良になっちゃうんですってさ。 あわたし食べるときはかなりしつかり食べたり、まるつきり食べなかったり、わりと極端な こともあるけども、今のところ偉そうに一一 = ロえるかな。ここんとこ毎日しつかり食べてます。 ハンのときもあるけども、朝、御飯食べるときにはお代わりします D 寝過ごしちゃって あ一し J カき」
たた 時間なかったときには、お茶碗に山盛りのつけて、しやもじで叩く。むりやり二杯分のせ はぶ る。とにかくのせてお代わりする手間ひまを省く。お昼まえいつもより早くお腹空いたら、 「今日は叩き方が甘かったかなー」なんてね D で。夜更かしもわりと平気。でも朝七時に起きるには、午前三時が臨界点。 土曜日とか、祭日前ならそれでもいいんだけどね。翌日いつでも寝れるし。ふだんでも、 ばーっとしながら本の整理して読みふけってたら、すぐに日付変更線越えてるのよ。 理想としましては、せめて毎日平均して六時間以上は睡眠時間が欲しいものです。 休みとなると、嬉しいのかしら、いつもより朝早くから目が覚めたりするんですよ。夜更 かししてても、起きる時間はやつばり早いわけね。まず、いつもといっしよ。朝寝坊でな ゝ 0 困ったもんだね。 まるで寝なくても平気みたいな感じだけど、実際そうじゃないし。 たた 不規則が祟るとねー、夕方くらいが一番眠くなるのよ。ときどき午後六時とか八時とか、 他人様の信じられないような時間に仮眠とって、布団の中で平和に眠ってたりしてます。 ナポレオンや福沢諭吉にや、とってもなれないね。 わたしってば、そんなひとです。
159 平行神話 時間稼ぎの必要性は、すぐになくなった。
乱れてすり変わった聖書の中身は、彼が知るよりももっとずっと高度な魔力で時間を費や し、影響されている。 ここに来て、突然に文字の置き変わってしまったレイムの聖書ほど、簡単にはいかない。 時のを取りだすために解放された通の蜥土は、この館に仕える魔道士たちの手で、 再び蜥明された。 まほうじん 館を取りまく魔法陣の解除作業は、レイムが一手に引き受けた。 魔物の術中にはまり、家に帰ることも家族のことも忘れて館で働き暮らしていたひとびと は、魔法陣の解除作業を門の前で待ちかまえた。 聖なる斧レプラ・ザンの発した聖光によってひととおりの浄化はしたが、運よくそれを れた魔物がいるかもしれない。 ファラ・ ハンとシルヴィン、ディーノは飛竜で上から眺め下ろし、それらを捜した。 たいした時間もかけず、問題なく魔法陣は取り除かれた。 壁づたいに二頭の飛竜が館の周辺を飛び回り、逃れて行く魔物がいないかを確認する。 平予期された最悪の事態にはならなかったようだ。 ほっと肩からカを抜き、飛竜を戻そうとしたシルヴィンの背後で。 ・ハンが、あっと小さな声をあげた。 幻ファラ まりよく
おとめ 翼ある乙女ファラ・ ( ンの具現の第は、遠く離れたこの地でも聞きおよんでいた。 いち早く公女は出発してファラ・ ハンと合流せねばならない。 だが、そのために必要な準備が整わないのだ。 ファラ ・ハンが遂に具現したというのに、こっちは事態が何も進展しないまま一週間が過 ぎている。 ファラ ・ハンたちが出発前の眠りについているため、目覚めるまでは王都を離れないとわ かってはいたが、我がままでではかり高い公女には、我慢の限界でもあった。 しようぞく りゅうび 公女は朝から出発用の勇ましい装束に着替え、いらいらと柳眉を逆立てている。 今この領地にいる二人の兄公子たちは、ささくれだっ公女の気持ちをなだめにか、単なる 気まぐれでか、いれかわり立ちかわり公女の部屋にいりびたっていた。 公子それぞれで、ただ本を読んでいるだけだったり、お茶を飲んで時間をつぶしているだ へた けだったり、下手な詩や音楽を楽しんでいたり、何をするかはまちまちだ。 先走ろうとする公女の行動を規制するには最適の監視役だったが、それはけっして公女や 世界のためを思っての行為とは思えない。 おのれ 持てあます時間で、救世主たる己の使命に酔う愚かなる妹の姿を楽しんでいるようにも見 える。 こうしやく この地で生まれ育った上二人の兄公子たちは、父であるカルバイン公爵に似て、穏やか
第十一章追っ手 じの法陣を解かれ、館で働いていたひとびとは、魔物に化かされていたの日常か ら、本来の時間を取りもどした。 領主そのものにほかならなかったおかげで、魔物の支配下にあったとはいえ、もともとこ たみ の領地の民である者には、いっさいの手出しはなされていなかった。 まどうし 被害を受けて殺されたり食われたりしたのは、王都から派遣されてきた魔道士や旅人たち だけである。 魔道士の神秘の力をもってしても音信不通である各所も、内情は案外このようなものであ るのかもしれない。 領主の幼い頃からこの家に仕えてきた侍従長の老人は、魔物と見した後の領主にも、 ひとのままで間近く仕えていた。 この者の記憶をつうじて、どうして聖戦士たちの出現を待ちかまえるようにして、花火を しゆくえんもよお 打ちあげるなどの祝宴が催されたのかが知れた。
202 れず、駆けだしながら怒った。 まもの 「眠れる魔物を呼び起こせ ! 我等が血の盟約に従わせるのだ ! 少々の犠牲は構わぬ、魔 通も。も、生きて王都に帰すな ! 我々の館を、街を守るのだ ! 」 領主の駆けてゆく方向は、ディーノたちのいる客間のある場所。 力ある者を食らえば、それはすなわち己の力となる。 そして彼は。 食らった者の特徴たるものをも、自在に自分のものとして取りこむことができた。 若さも、美しさも何もかも。 歳みた者のような口調も、彼がそれなりの時間を生きてきたゆえだ。 どれほど肉体の若さを手に入れても、習慣や老いた精神までも若返らせることはできな ディーノが顔をあげた。 胸に抱かれたままだったファラ ・ハンは、びくんと体を緊張させる。 しつかりとした造り、防音さえなされているかと思われる分厚い壁を通して、かすかに何 かしらただ事でない物音が聞こえていた。 「迎えが来た」 おのれ
200 遥かなる高みから、彼らの目指す場所目指して巨大な影が矢のように降下していた。 それよりすこし遅れて、もうひとつの影が舞い降りてきている。 一瞬上を見やったシルヴィンの飛竜が、仲間たちの到着に高らかに一声いた。 まほうじん レイムはシルヴィンに魔法陣を探してくれるように頼んでおいた。 こころよ 快く引き受けて、シルヴィンは飛び立っていったはずだ。 まもの まっさっ どうして彼女が魔物と人間を見分けて、魔物を抹殺するためにここに来ているのか、レイ ムにはわからなかった。 そしてなぜここにだけ、これほどの数の魔物がいるのかも、わからない。 まち 街のほうでも、魔物がひとのふりをして混じっているのだろうか。 思いをめぐらせ、レイムは首を振る。 あの街の寂れ方は、乏しい物資にようやく命をつないでいる、けなげなひとびとのもの 魔物に支配されている街ではない。 ではここは。 ひとのふりをして活動していた魔物は。 いったいなぜそんな茶番を演じる必要があったのか。 はる