とこいつだった、みたいな。 「おー、まあた『すえぞう』忘れちまったい ! ちっ ! 舌を鳴らしたこと数知れず。 このチビは、内輪では『すえぞう』と呼ばれております。 飛竜って、どいつも名前つけてなかったのよね。いまさら言っても遅いけど。 読者から名前募集するとかいう手もあったなー、読者参加っていうのも楽でいいよなー ま、それはまた別のお話、別の機会にまわしましよ。その時にはどうぞご協力よろしく D さて、次の四巻目では、もう二つ、時のを手に入れます。冒頭から、やつばり一騒動 おこさずにはいられないのが、ディーノ。聖戦士たることを承諾する条件に、ファラ・ を要求します。ルージェスの一行も次の場所に向かった彼らに追いついてきて、ファラ・ハン か狙われ、ディーノやシルヴィンが悲惨な目にあう・ : : ・ そーいう感じで終わっております。 最後になってしまいましたけれども。 この作品を出版してくださいました、講談社様。 毎度毎度手を変え、バリエーション豊富な厄飛を押しつけております担当の小林様。ビ ギナーにはありがちなことです D とりあえず大目にみてください ( いつまで続くやら ) 。 ねら した
202 れず、駆けだしながら怒った。 まもの 「眠れる魔物を呼び起こせ ! 我等が血の盟約に従わせるのだ ! 少々の犠牲は構わぬ、魔 通も。も、生きて王都に帰すな ! 我々の館を、街を守るのだ ! 」 領主の駆けてゆく方向は、ディーノたちのいる客間のある場所。 力ある者を食らえば、それはすなわち己の力となる。 そして彼は。 食らった者の特徴たるものをも、自在に自分のものとして取りこむことができた。 若さも、美しさも何もかも。 歳みた者のような口調も、彼がそれなりの時間を生きてきたゆえだ。 どれほど肉体の若さを手に入れても、習慣や老いた精神までも若返らせることはできな ディーノが顔をあげた。 胸に抱かれたままだったファラ ・ハンは、びくんと体を緊張させる。 しつかりとした造り、防音さえなされているかと思われる分厚い壁を通して、かすかに何 かしらただ事でない物音が聞こえていた。 「迎えが来た」 おのれ
と囲んでしまわねばならないような、おおげさなものが描かれる必要性はないのだ。 シルヴィンの言ったことを思い返し、レイムは眉をひそめる。 「ええ、そう。だから、わたし慌てて : ファラ・ ハンを捜したのだ。 しかし。 まもの 「それ、変だ。魔物 : : : 、ただの魔物じゃない。何かが違う : : : ! ひりゅう 断片的な言葉をつぶやきながら、レイムはシルヴィンが示した方向に飛竜の向きを変え 「わたしも行きますー ディーノの後ろから、ファラ ・ハンが名乗りをあげる。 の蜥土たるべき場所は、あらゆる不思議が混在していておかしくない場所。 蜥印が解かれているならば、魔が溢れだすあの闇色をした柱の存在がなくては変だ。 時のの存在するはずだったのも、その地点なのだ。 その責任を負うファラ・ ハンがそこに向かわねばならないのは、道理である。 ディーノは素早く飛竜を動かし、レイムの真上まで飛んだ。 片腕でひょいとファラ・ ハンを抱きあげ、レイムの飛竜の上におろす。 まゆ
170 歌詞にこめられた意味と、鶴という讎。 まどう うた せいこう 精巧につくられた歌は謡われて、そのまま魔道となることができる。 魔道士たるものが『謡う』ということは、多分に術としての色彩を帯びているのだ。 レイムは気がついていないが、優秀な歌謡いとしての彼の歌声は、魔道士としての確固た る実力とあいまって、しぜんと効力を発している。 そしてまた、歌そのものに愛されてきたレイムの存在自体が、特別なものなのだ。 心地よく伸びる歌声と、忠実に響になぞってゆく音。 謡う彼の心を反映し、不思議の波動が放たれる。 心なごむ歌声に、すべてのものが賛同し、振り向かずにはいられない。 集まらずにはいられない。 たとえ図していても、絶滅の第される動物たちをあれだけ集めることは容易ではない。 ましてや離れがたい気分にさせることなど、ひどく困難である。 やかた コニーの母親同様、通いであれ、館で働いていたひとは、誰一人街に帰っていない。 「ねえ、少しだけ、コニーにお歌謡って ! 」 手をつないで歩きながら、コニ 1 はレイムにお願いした。 「歌だけなら、歩きながらでもいいよ」 まち
146 「部屋を用意できるか ? 少し休めばすぐに出ていく ディーノはわざとらしい仕草で、ばさりと左手で髪をきあげる。 ぶれ、 領主だろうとなんだろうとお構いなしの無福な格好だ。そうしてもそれがみように絵にな る、目を惹いてやまないというのが、憎らしい 格好いいディーノのそれに喜んで、小さなはディーノの腕に再び飛びついた。 丈高な態度に出るディーノをやわらげるために、ファラ ・ハンが口を開く。 いとま 「できるだけ早く、お暇いたしたいと思っております。疲れていたうえに驚くことがありま しゆったっ したもので、このまま出立というのも辛いくらいですの。ご親切に甘えてばかりで、本当 に勝手な申し出なのですけれど : : : 」 はあく 世界がどのようなものなのかを把握しきれていないファラ・ ハン。しかし彼女はそれ以外 でも、ディーノにあらゆる面で頼り、守ってもらっていることを否めない。 もしも彼が肉体的に限界を感じて休息を欲しているとすれば、それはとても重要なこと 領主は、これを快く受け入れた。 従者に命じて、二人をに部屋から送りだす。 完全に立ち去ったのを見送って。 、たけだか こころよ にく
124 気楽なレイムの口調に、シルヴィンは驚いて目を見はる。 やかた 「あそこって、領主の館よ ? 」 のこのこと行って簡単に中に入れてもらえるような場所ではない。 レイムは、にこっと笑った。 「大丈夫。心配しないで」 お人好しそのもののレイムに、シルヴィンは出す言葉もなかった。 むまう シルヴィンは心配などしていない。ただ無譓ではないかと思っただけだ。 見ているといらいらするが、心の中をあらいざらいぶちまけて傷つけてしまうのは、あま りに醵な仕打ちであり、自分がとんでもない意地悪になってしまうので、やめる。 どちらかというと、レイムはいじめられやすい性格をしている。彼がそうと自覚していな いのは、大抵の場合気がっかないからであり、その性質ゆえについ構いたくなってしまう者 ひごか の庇護下にありやすいからだ。レイムの庇護者はいつでもなんらかの有力者である。 レイムよよく、〉もの鞍の後ろにくくりつけた荷物の紐をほどく。 袋を下ろしかけ、はっと顔をあげて、茫然と見つめているシルヴィンに隨笑みかけた。 「あの、遅くなってしまったけれど。助けてくれてありがとう」 実直に生きてきた者だけに許された、素直なきとおる部だった。
256 ぐしゃぐしゃの櫺の髪と黄色い舐歯が、異臭を放っている。 四つんばいで来たその男の後ろから。 まどうし 魔道士の衣装をまとった男が、空中を滑るようにしてやってきた。 こうたく そでぐち 袖口からのぞく左手は、冷たい光沢を放っ金属の義手である。 「どこに行っていた e: 遅いぞケセル・オークー 娘は。 たた 公女ルージェスは、怒りにまかせ、言葉を叩きつける。 かえる かっこう ルージェスの乗る木の下で蛙みたいな格好で座りこんだ男が、きゅーんと鼻を鳴らし、首 をすくめる。 激しいで名を呼ばれた当事者は。 魔道士ケセル・オークは。 うやうや 涼しい、何食わぬ仕草で、ルージェスに向かって恭しく礼をする。 「なにぶんにも成功した獣人は貴重でありますゆえ。魔道による移動をしました後、しばら びき く様子をみておりました。これも選ばれし戦士たる美姫ルージェス様の為を思えばこそ」 とうとうと話し続けようとするケセル・オークを、引きはがした木の皮を投げつけて、 ルージェスがさえぎった。 わかったー 「もうよい すべ
きみやから ない不気味な輩が多いと聞きおよんでいる。 こんなものかもしれないという腰測もあって、この不気味な魔道士は、案外しぜんと受け 入れられている。 そのような雰囲気を感じさせるそのことこそが、大いなる術者 % ででもあるかのような 気をおこさせている。 「見てのとおりだ、ケセル・オーク」 まほうじん ベルク公子は、魔道士に向かい、顎で中庭の魔法陣を示す。 ごうしゃ ゆかうえ 呼びかけられた魔道士は、豪奢な毛皮の敷きつめられた床上を音もなく滑るように移動 し、わずかに公子たちに近づいた。 ひもの 人間の乾物のような老魔道士は中庭を見向きもしない。 「知れたこと。神聖なるは運命の公女を指し示しております。御身に流れる高貴なる しゅ うらな 血には及ばないながらも、種を同じくするひとの命をもってされる絶対の占いでございま す。よもや疑われることもありますまし ゝ。ルージェス・イース・カルバイン公女こそが世界 を救う一の存在にございます。それゆえに、この老いたる魔道士ケセル・オークがはるば るお迎えに上がったのでございます」 乾いた声部でうように、魔道士は公子たちに語りかけた。 まどうし この魔法陣に書かれた複雑で難解な超古代文字を解読できる者は、高級魔道士のうちにも すべ
無理をしてはいけない。 どんなに努力してもそれがなされないときには、必ずなんらかの理由があるはずだ。 ただ力で押すだけではどうにもならないこともある。方法や時が不適当な場合もある。も う一度、落ち着いて考えよ。自分の内なるもの、外なるものの確認をせよ。 ひとたび動きだしたものを中断し修正することは、はなはだ困難なことである。原点に 戻って物事を行うほうが、手直しするよりも容易である。すべてを反古にして再び最初から やり直すことは、もっとも適切だが二重の手間を要する。かかる時間は倍ではすまない。 って時を選ぶことはいけない。時に追われていてはいけない。 時が逃げきることはまずない。本物の時は逃がしても再びめぐりくる。ただし、めぐりき た時が、自分にとって都合がよいとは限らない。時待つ者は常に余裕をもち身構えよ。 たましい 知ること、記憶することは、人間にのみ魂に刻むことを許された行為である。必要なる物事 は、けっして忘れさることはない。断片であれ、どこかに引っかかるべき部分をもっている。 知り、伝え残していくことこそ、今という時間に生きる我々に与えられた使命である。知 これらにもすべて時があることを考えればよい ること、忘れることを恐れてはいけない。 適したことをせよ。続けられることをせよ。視界を広くもてることをせよ。 そしてなによりも、自分を信じることが大切なのである。 〈自由人テイムジン・アシャス覚「賢者オルロフ」の項より抜粋〉
年度変わりの時期であります D 初版リアルタイムで呼んでくれている方には年度で、今これを書いているわたしには年。 四月と一月。少しタイムラグがありますが、きりのよい区切りの季節ということで。 やつばりこ ーいうのって、ちょっとばっかし気が引きしまっていいですねー D 根性ない しだらしないものだから、こんな時期がないと、本当、だらけつばなしになってしまうわ。 えー、とにかくも心機一転というやつで、新しい気持ちで顔をあげていきましょ D で、わたしは年末、鬼やかにお話を書こうと思い立ちまして、クリスマス前の日曜日、 ラとかすみ草を気前よく買いこみました D 一度自分の為に買ってみたかったのね。一日 べったりワープロ打ってられるのは、この年末年始の休みかお盆休みくらいだし。やつばり 真紅のバラとかすみ草のコンビって、ロマンチックじゃない D ところがこれ、扱いが悪 かったのか一週間もたなかった。懲りないわたしは、た瑟日にまた買うのよ。ちょっと値段 落としたけど。それでも、うーん、こいつ、なーんか元気なくなってきたぞっ ! 下手なの はなばさみ か花鋏で肉択んで、薬指の指先に二つも目ン玉みたいに血マメまで作ったのにつ。ふえ : き ちくしょー 異しいっ : また明日買いに行くぞーっー ( たぶん値段は落ちる ) あまあね、一日がかりのプリントアウトのあいだは美しき花を愛でたわけだし、落ちこまな かたやま いわ。片山先生の最新刊「ドラゴン・フィスト 3 』はあったし D 正月から余裕なのか忙し % いのカ