立學界 表紙画 柳智之「荒木一郎」 表紙・本文デザイン日関口聖司 、′目次レイアウト日井手口智人 月号 目欠 新連載 立ロ不重 O 「 ga(ni)sm 『シンセミア』『ピストルズ』に続く、 " 神町トリロジー。完結篇、ついに始動ー 中原昌也悲しみの遺一言状 り一學界新賞受賞第 砂Ⅱ文次熊狩 杉本裕孝弔い 渡谷邦籠崎さんの庭で一年半期。雑誌優秀 評論千葉一幹 人よ震災こ、 に向き合ったか メランコリー・カタリ・喪の作木 作 ④の 埠 4 リ 4
ています。当時の僕にとって瀬川さん と本数契約になった。僕は舞台はあま はキーマンで、彼かいたことは大きか ■どうしても映画がやりたかった り好きじゃなくて、どうしても映画の つ、、 0 世界に行きたかった。本数契約という 瀬川さんは喜劇映画監督の印象が のは、要するに、映画俳優として映画 今年は荒木さんの歌手デビュ 1 五 会社が認めてくれたということで、そ 強いですが、メロドラマからフィル 十周年記念ということで、オーチャー ム・ノワールまであらゆるジャンルを れは金云々じゃなくて、ある種の名誉 ドホ 1 ルでのコンサートに続き、十月 としてでかいわけです。 十五日からシネマヴェーラ渋谷で「荒手がけた。東映の「列車」シリーズな あの当時は、日本映画は今とは全然 ど、寅さんで大ブレイクする前の渥美 木一郎の世界ーと銘打った特集上映が 違っていた。だって、僕が歌を歌いだ 清が主演で、抱腹絶倒の面白さでした。 組まれます。荒木さんは、これまでに した頃、石原裕次郎が「歌謡曲 荒木真面目な人だから、一緒にし も歌手よりも映画がやりたかったと折 ると喜劇の人っていう感じはしないけ ベストテン」に出ると、とにかく日活 に触れて話されていますが、今日は映 のスタッフがダーツとついてきて、ス どね。瀬川さんとはテレビもやってい 画俳優としてのキャリアを中心にお聞 タジオでわがもの顔で振る舞っている。 ます。坂上二郎主演の『夜明けの刑 きしたいと思います。 テレビを見下してるわけです。それぐ 事』など、大映テレビの刑事ものでね。 先日亡くなった瀬川昌治監督は、 一番最初に出た映画は、日活の吉永らい、映画はすごかった。大映で勝 かなり初期の頃、俺の 「荒木一郎は、 ( 新太郎 ) さんと仕事をさせてもらう 小百合主演の青春もの『風と樹と空 映画に出ているんだよ」とよくおっし と、人間の体よりもでかいライトかタ やっていました。『お、 と』 ( 六四 ) です。続いて石原裕次郎 、雲 ! 』『地 1 ンと用意されていてね。今は、「こ 主演の「殺人者を殺せ』 ( 同 ) にチョ 獄の波止場』 ( ともに六五 ) の頃ですか ロッと出た。東映とは、テレビの『特れで撮れるの ? [ っていうような照明 ら、歌手デビュ 1 の前ですね。 しかないもの 荒木そうです。僕はもともと役者 別機動捜査隊」シリ 1 ズにゲスト的に 出させてもらっていたから、そこでつ 『 893 愚連隊』はオールロケに になろうと思っていたから。瀬川さん ながっているんです。 よる撮影が新鮮でした。 の『お、 、雲 ! 』では結構大きい役 荒木東映京都撮影所の十何年かぶ 最初に注目されたのが、中島貞夫 で扱ってもらって、それがきっかけで りの現代劇だったから。それまではぜ 監督の「 893 愚連隊』 ( 六六 ) ですね。 東映と本数契約をすることになるんで んぶ時代劇でしよう。京撮 ( 東映京都 荒木『 893 愚連隊』から、東映 す。だから瀬川さんにはすごく感謝し
分との関係が詳しくは書かれていない 「鉄砲玉の美学』の音楽は、最初 の中で自分が何をやるべきかが大事。 から荒木さんに依頼されていたんです から、現場で作っていくわけ。でも渡 僕は小説を書くときも、「これと同 カ じものが書ける人がいるんだったらや 瀬は、俺に対して最初は「荒木さん」 と田 5 うんた。人にも、たとえ だったのが、人気が出るにつれいつの 荒木そう、音楽は自分が全部やっ らないー 間にか「荒木」になって ( 笑 ) 。中島 ています。頭脳警察のプロデュースを ばかけている眼鏡が似合わないやつが さんが一番かわいそうだったのは、渡やっていたから、その音楽を使おうと。 いると、「なんで人の眼鏡をかけてる 瀬主演の『鉄砲玉の美学』 ( 七三 ) だね 「ふざけるんじゃねえよ」という の ? 」って言う。生き方というのはそ 中島さんが ( 日本ア 1 トシ - フい - フものたと田 5- フんたつまり、自 あのタイトル曲は強烈です。 アタ 1 ギルド ) で撮ったやくざ映画で 荒木この音を入れれば主人公の気分の役割をやるべきだよね。自分が出 すね。 たーカ出たくないかじゃなくて、 持ちがもっと出るだろうと。芝居でそ れが出てくれば、もっといい映画にな 「自分が出ればこうなるだろう」とい っただろうね。これまでいろんな映画 - フことを老ぎんる ー羽仁進監督との奇妙な関係 にからんできたけど、 たとえば、僕と羽仁進監督との付き 『鉄砲玉の美学』 荒木あれは渡瀬の「自分がやりた は、「あのときこうしていたら」と悔合いは、最初に「不良少年』 ( 六一 ) という自我が強く出すぎた。せつ を見た時のショックが大きかったんで いが残る一本です。あれは中島貞夫を す。 かく中島さんがで撮るんだから、 もっと評価させるいい機会だったのに 東映色を消さなければダメなのに。 すごい監督がいる、この人に会いた 本当に残念。 、とっていた 「鉄砲玉の美学』のホンはすごくいし 人の世には流れがあって、その流れ 次に「彼女と彼』 から、それをいかに中島貞夫風に料理 ( 六三 ) があって、長谷川明男という、 するか。そのためには一本気の渡瀬が 自分とほば同年代の若いやつを起用し生 『日本春歌考』出演は「頼む 主演じやダメなんだよ。中島さんは本 ているんだけど、見ていて、「なんだ画 からやめてくれ」とレコード 当はあの役は自分みたいな役者にやら よ、これ」と思うわけ。「羽仁さんの わ 会社の人に土下座されました せたかったんだと思う。でも僕はロケ もし僕がこ ことを全然わかってない。 7 に行かないから主役はできないという れをやったら・・・・ : 」 のがあるから。 そう思っていた時に『ハロー ・ O
映画のはずですが、あさま山荘事件を シネマヴェーラ渋谷の特集では、 の事務所によく出入りしてたんだよ。 一度東映にも連れて行って、プロデュ 『脱出』 ( 七 (l) という、東宝でお蔵入連想させるシーンがあるという理由で お蔵入りになったんですよね。 りになった荒木さんの主演作を上映し 1 サーの天尾完次さんに、「こいっ何 よしのり 荒木今見るときっと、悪くないと ます。監督の和田嘉訓は、異色作『自 とかならない ? 」と話もした。彼女は ころもあると田 5- フんだ。ちぐはぐと、 耳にサソリの刺青をしているから天尾動車泥棒』 ( 六四 ) でデビューし、寺 うか、見られるシーンと、これは見ち 山修司の小説『あ、荒野』をもとにシ さんはよく覚えていて、「愛のコリー ゃいられないというシーンかバラ、ハラ ナリオを書いた人です。 ダ』について記事が出たとき、「主演 に出てくるんじゃないかな。現場で強 荒木あれは、全然ダメな監督だね。 の松田英子、あれは市川魔胡だよ。耳 く抵抗して「それじゃ駄目だ」とやっ 現場での指示がめちゃくちゃなんだよ。 にサソリの女、紹介してくれたじゃな たところと、「もういいや」と流しち 他に石橋蓮司、原田大一一郎、ピ 1 トマ い」と言われて、僕は全然知らなかっ やったところかあると思 , フ。 ック・ジュニアが出ていてね。これじ たからビックリしたよ。やらなくて良 たた、その映画を通じてビートとは ゃあダメだってみんなが言うわけ。そ かったなと思った ( 笑 ) 。 すごく仲良くなってね。その後、中島 ういう時、僕はいつもリ 1 タ 1 格にな 荒木さんの音楽の大作「僕は君と さんの『ポルノの女王につばん っちゃうんです。僕が、「どうしよう 一緒にロックランドに居るのだ」は、 >< 旅行』の主題歌を歌ってもらった。 もねえよな」と言うと、蓮司なんかも もともと天井桟敷の芝居のために書か 主役をやって音楽もやるのは嫌なので。 「そうだよな」って賛同するんだけど、 れたそうですが ビ 1 トに歌わせたら、最初、あまりに いざ監督が来ると、蓮司が一番最初に 荒木寺山修司さんから頼まれたん きれいに普通に歌うから、ずつこけた 「はい、わかりました」みたいにオ だ。アレン・ギンズバーグの長篇詩 サルだ ね。「お前、半分は黒人の血を引いて ちゃ - フ。しかも、蓮司はリハー 「吠えるに曲をつけてもらえないか、 いるんだろう。お前にあてて曲を書い とすごい面白いのに、本番では全然面 それを・ < ・シーザー ( 天井桟敷の たのに、なんで歌謡曲風に歌うんだ 白みがなくなっちゃう。その頃は、本 音楽・演出 ) が演るからというので、 よ」と言ったら、歌い方を変えて、ど あの歌を作ったんです。で、渡したん番に弱い役者だった ( 笑 ) 。まあ、そ んどん良くなった。あれは本当におか ういう感じで現場はすごく面白いんだ 、、こけど、そのままになっちゃったから、 しかったよ。 けど、監督には常に抵抗してた。 じゃあ自分でやってみようかと思って、 一九七一、七二年に、荒木さんは レコーディングしたんだ。 西村京太郎の原作ですから、娯楽
中尾寛治と浜田豊と僕とで全面的に書は全くゼロになっちゃった。登場人物 荒木羽仁さんが電話をかけてきて、 か放浪するところが似ているといえば フランスで全部撮ったけど全然気に入き直して、ララスチック・ビープル』 というきちんとしたホンを作った。そ似ている。だからあのホンには僕は参 らないから、音楽をやってくれ、ただ 加してないんだよ。だけど音楽はやっ れを読んだ羽仁さんが、絶対、自分に し予算が十万しかないと。で、映像を てあげたかったから、ちょうどその頃 やらせてくれと言うわけ。だけど、さ 見せてもらったんだけど、途中で寝ち やったのね。終わってからいろいろ指 つきの渡瀬の話じゃないけど、「これ僕がプロデュ 1 スしていたメープル・ リーフをぶつけて、レコ 1 ド会社の予 摘したら、「え、なんで寝てたのに分は羽仁さんの映画じゃないから、違う かるの ? ーと言うから、「寝てても分のをやろうよ」と言ったら、羽仁さん算を入れて映画が安くならないように は「いや、自分の作風を変えても、絶した。なんだかんだ言って羽仁さんが かるよ」って。十万円じやできないか ら、レコード会社のフィリップスに話対こういうものを撮りたいんだ」と言好きだから手伝うんだけど、面白い関 う。それででやることが決まっ 係だよね。 を持って行って、主題歌をマイク眞木 、、 0 ーー続いて、大島渚監督の「日本春歌 と前田美波里に歌わせて、そこから製 しかし始まったら、羽仁さんは脚本考』 ( 六七 ) についてうかがいます。 作費を取って映画を完成させたんです。 大島さんは後年、「戦場のメリークリ だから結構きれいな音楽がついている。家二人を抱き込んで、自分のやりたい スマス」でデヴィッド・ボウイや坂本 ように勝手にどんどんホンを書き換え ちゃった。それが「午前中の時間割龍一を起用しますが、『日本春歌考』 ・『日本春歌考はツィていた が同時代の人気歌手をキャスティング り』になるわけだけど、出来上がった した最初のケ 1 スではないかと思いま のを見て、自分が書いたのと全く違う 一九七〇年代の初頭、羽仁さんの す。ここでの荒木さんは、映画そのも 『午前中の時間割り』 ( 七一 l) では荒木映画だから、僕は降りると言ったわけ。 のの不可解さを象徴する圧倒的な存在生 さんは脚本にも参加していますね。 「プラスチック・ピ 1 プル』は、主人 人 画 荒木あれは本当にひどい話で、羽 公が富士山を目指して、最後は海を泳感で迫ってきます。 映 荒木あの人の中の営業的な戦略、 いで行って終わる話でね 仁さんとケンカしたんだ。鰐淵晴子の わ プロデューサー感覚が大きいんじゃな じゃあ、最初のプロットとはかな 彼氏のタッド若松というカメラマンが いかと思うね。今、人気が出てきたや り違いますね。 いて、鰐淵を通じて彼と仲が良かった。 つを使うという。『日本春歌考』は、 荒木全く違う。最初にあったホン 彼が書いてきたホンが面白かったから、
を第 ( 今年、歌手デビュー五十周年を迎える荒木一郎氏は 一 ~ 朝 ~ 気天才シンカーソングライターとしてだけではなく、 ・映画俳優としても唯一無二の存在だ み」、 ) 一中島貞夫、大島渚、村川透らクセのある名匠と組んた【 ( - 貴重なエピソードで綴る、極私的日本映画史 を当ー ー荒木一郎」 わが映画人生 インタビュ 映画美女と色男 聞き手・構成・高崎俊夫 撮影・三宅史郎
元は若い大学生 ( 田島敏男 ) が書いた シノブシスなんだ。 っとむ あれは田村孟と佐々木守のホンが 最初にあったんじゃないんですか 荒木いや、そうじゃない。『日本 春歌考』というタイトルは決まってい たけど、シノブシスは違うんだ。大学 生の話で、青春もので、すごく面白か った。それを読んで、これは絶対にや りたいと思った。レコ 1 ド会社のビク ターとしては、「空に星があるように」 が売れて、これから第一一弾を出す、ス ターになっていくという時に、『日本 春歌考』なんていうタイトルの映画に 出るなどとんでもないわけで。プロデ ューサーとかディレクターが、土下座 して「頼むからやめてくれ」って言っ てきましたよ。その頃は大島渚といっ てもまだ巨匠ではなく、なんかェロ映 画を撮っている人という感じしかない わけ。でも、僕は役者魂みたいなもの で、これは絶対出るしかないと。それ で出るんだけど、台本がまたどんどん 変わっていく。 田村孟さん、佐々木守 さんがつねに現場に来ていて、大体こ んな感じというシノブシス的なものが 元のシノブシスで、変えられた台本は 撮影当日に配られるわけ。それに役者僕のやることじゃないという感じがあ が各自、セリフを書き込んでい った。自分の感覚が、最初とは全然違 うわけですよ。だから、セリフをしゃ 自分のセリフを ? べらず、スト 1 リーとは関係ないとこ ろで自分の人格を作っていこうとした。 ちょっと不思議な映画ですね。最後の ほうなんて、小山明子さんが出てきて、 「なんじゃこりや。さつばり分かんね えよーと思ったもん ( 笑 ) 。共演した 串田和美とかと、「何これ ? ーとか言 い合って。しかしあいつらはそういう くせにすぐに迎合するから : : : あのキ 供 ャストの中で吉田日出子はけっこう硬 真派で、自分がこうだと思うものをはっ 島 大 きり出していた。彼女とお互いの役に 子 督 ついて話し合って、「私は荒木さんの 和 島 ことを好きな感じで」と言うから、 考 歌 ン 「そうたよね、そのほうかい ( 、ね」と 春 ロ 言って、セリフには何もないんだけど、 ヒ その感覚で行こう、と決めたりして。 荒木そう、自分のセリフを。でも あの映画で一番強烈な印象を残す 僕は逆に、自分のセリフが書かれてい のは「満鉄小唄」を歌う吉田日出子と ると消して、できるだけセリフをなく 「よさほい節」を歌う荒木さんです。 荒木あと、あの映画はなんといっ していった。僕が気に入っていたのは
た場所に並んで突っ立ち芝居ばかり 荒木ナイフ使いという設定には何でも絶対存在感を出せるぞ、という自 負があってやったんだけど、自分が見カメラが動かせるカメラマンもいない。 の意味もないから、ナイフにつなげな た限りにおいては、できてない。やっ そういうことを勉強しなくなっている いと面白くないと思って、最初に河原 のは、日本にちゃんとした映画館がな ばり台本で書いてもらわなければそこ で悪い奴らが女の子を強姦する時に、 しとい - フのか大きいと - フ までの役はできない。思い上がるな、 自分は木を拾ってきてナイフで削り出 荒木さんはご自宅に完全設備のホ という感じだよね。作品としては良か すというシーンを作った。木を削るう ームシアターがあるんですよね。 ったと - フけど。 ちに小さな人形ができて、それを車に 荒木うちのホームシアターは映像 あれは監督の思い入れが強くあった つるして走って行く時にパチンと撃た から、いい映画になったんだと思うよ も音響も完璧で、それで観ると同じ映 れて、死ぬ。最初のホンでは僕の役は 画でもまったく違って見えるんだ。日 それで終わりなの。その方がいいと思 いまだに評価が高い。最初の公開から 本には、ちゃんとした映画館が一館も ずいぶんたってから、名画座ではなく ってたんだけど、野田さんに、「もっ ないんですよ。自分がプロデュ 1 スす 東映の本線で再び封切られたんだ。び と生きてよ」って頼まれて、結局ずつ つくりしたよ。 れば、アメリカに匹敵する映画館が作 と最後まで出ることになった。杉本美 れる。その映画館でハリウッドの芝居 あの頃の東映は、中島さんや野田 樹演じる刑事と僕との戦いなんて、脚 とは何かというのを見せれば、絶対に さんのような狂気を秘めた監督が、会 本には全然なかった。野田さんがどん お客は入るし、そこから拡がっていく 社の敷いた路線を利用してとんでもな どん話を膨らませて、毎日、チラシみ つまり、ちゃんとした映画館が一つ出 たいな紙に書かれたものか当日分だけ くアナーキ 1 な作品を撮っていたんで すね。 来れば、あとはみんな真似するからね。 配られるんだ。だから、自分がいっ死 日本のエンターティンメントに革〈叩を 荒木面白いよね。当時はテレビの ぬのかも分からないそういう現場で す。 世界にも和田勉さん、久世光彦さんら起こせるんだ。やつばり、一般の人が かいて、アナーキーなところがあった。 映画を好きになってくれなかったらア生 杉本美樹に向かって言う、「おま ウトなんだよ。その映画館で映画本来画 そういう型破りな人がどんどん消えて えなんか信用しちゃいねえんだ」の一 の圧倒的な面白さに目覚めれば、そこ 言がまたいい。 いって、今は映画もテレビも、日本の わ から日本映画が変わっていくんじゃな 荒木もう忘れたけどね。だけど、 エンタ 1 ティンメント全体がお利口さ んばかりになって、つまらないよ。テ いかと思っているんだけどね。 あの映画は、自分が驕りたかぶってい ( 八月一一日収録 ) たと反省させられた。セリフがない役レビドラマを見ても、みんな指定され
きると思っていたんだ。深作監督だし、 かったと思う。でも、あれを入れたら、 当時、中島監督作で最もびつくり 完全に「モグラ」が主役になっちゃう 当然やりたいと思っていたけど、体調 したのは、『現代やくざ血桜三兄弟』 降りるしかな の問題だから仕方ない。 ( 七一 ) です。やくざ映画のふりをし 代わりに出演した拓ばん ( 川谷拓 荒木さんは中島監督ととても相性 たアンチやくざ映画ですよね。主役が 一一 l) にとっては、よかったよね。その 菅原文太かと思っていたら、後半、荒が良いと思える一方、深作欣一一監督と は結局、接点が見つからなかった印象後結局、深作さんとは一本もやってな ーテンの「モ 木さん演じるさえないバ いから、深作さんはこの事情を知らな を受けます。 グラ」が一挙に話をさらってしまう。 東映側は当然、僕が悪いと言って 荒木ああ、全然そうじゃない。深 荒木そうなんだよね。あれはでも、 いるたろ - フ。それはそ , フい、フものたし、 作さんと僕はすごく合うんだけど、条 台本だと「モグラ」のことがもうちょ しようがないですね 件の問題なんだ。『仁義なき戦い代理 っと書かれているんだよ。だけど、カ 先ほどの「血桜三兄弟』では、共 戦争』 ( 七三 ) を降りたのは、全く自 ットされたんだ。「モグラ」が鉄砲玉 演した渡瀬恒彦さんが、荒木さんとの 分の体の問題でね。最初に東映が条件 の小池朝雄さんを刺しにいくんだけど、 公園のシ 1 ンで演技開眼したという、 くのは を出した時、「広島のロケに行かなく 完成した映画では、刺しにい 有名なエビソードがありますわ。 ていいんだったら出る」と言っていた 「モグラ」がやくざになりたかったか 荒木映画の役の上では僕が渡瀬の んだ。その当時、京都まで行くので体 らという風につなげちゃっている。で 下っ端だけど、実際は自分の方が先輩 も本当はそうじゃなくて、花売り娘調がもうギリギリで、広島まで行くの だからね。「血桜 5 」の時、渡瀬は俺 はちょっと無理だから、それだけは勘 ( 早乙女ゅう ) のために行くんだ。花売 にべッタリくつついていて、俺が出て 弁してくれと。それで向こうも「分か り娘が小池さんにやられちゃって、病 いるシ 1 ンはほとんど全部、横にいて りました」と 院に入院している。「モグラ」が見舞 衣装合わせしている時、深作さんが見ていて、笑って面白がっていた。彼 しに行くと、娘が顔をこんな腫れさせ もそのぐらい気持ちが入っていたから、 いいな」「かっこ、 ちゃって、それを見ているうちに決断横で「かっこ 俺が芝居をつけて。「渡瀬、こうやっ って何回も言う。自分も気持ちが入っ するんだけど、その場面が大幅に切ら て、こうやって」と全部動いてみせて、 ていたそれをいきなり、やつばり広 れちゃったから、お客には分からない 面白いシーンを作っていくんです。脚 島ロケだと言われて、どうにもならな わけだよ。頭にきて抗議したんだけど。 いよね。向こうは、なし崩しで説得で本はすごく優れているけど、渡瀬と自 あのシーンを入れたほうがずっと面白
池玲子、杉本美樹などが所属するプロ ダクション「現代企画」を作られて、 その経営をしながら東映映画に出演さ れます。一方で村川透監督の日活ロマ ンポルノ『白い指の戯れ』 ( 七 (l) 一 主演され、注目されました。 荒木あの頃は東映や日活に女優さ んを入れ、ポルノの黒幕みたいにな ちゃっていたたから、自分がそれに 出るというのは抵抗があった。ただ、 渡哲也のマネージャーから渡された、 くましろたつみ 神代辰巳さんが書いた「スリ」ってい うホンがすごく面白くて、役者として これはやりたいなと田 5 った。舛田利雄 さんの助監督をやってきた村川という 新人監督が撮るので、石原プロが全面 的に応援するという。それで、日活と 話して、アートシアター的なものを口 マンポルノの中に取り入れていくのな ら、やってもいし し」い - フ話になっこ んですよ 『白い指の戯れ』は日活ロマンポ ルノのイメージを一新しましたね。 荒木そう、日活もちゃんと考えて いたと思う。タイトルは荒木一郎を一 してね。 自分が演出したのは、伊佐山ひろ子 と初めて寝るところ。村川が撮れない っていうから、じゃあ俺がやるよ、つ て。タバコを持ちながら伊佐山を裸に して行くのを、タバコ中、いに撮ってい 常にタバコをキャメラがナメなか ら彼女の肌を撮って、タバコがだんだ 活ん減っていく。主人公はスリだから、 皮によって手口叩のよ , フにプラジャーか 脱がされ、パンティが脱がされ、裸の ひ女の背中がべッドに倒れ込むところに 村 佐 タバコの灰が先にポロッと落ちる。そ 督 - の背景では、株式市況のニュースが 「何円安、何円安」と冷たい感じで流 れ ュ あのシーンは全部自分 の七れている : が演出しています。その背中がべッド に倒れ込むところで、べべ ( 伊佐山ひ ろ子 ) がいきなり「うわ、あちい ! 」 村川さんは徹底したアクション映 って叫ぶからびつくりした。知らなか生 人 画派ですもんね。 画 ったけど、タバコの灰っていうのは、 映 荒木だから、セックスシ 1 ンが撮落ちてすぐはまだ熱いんだよ ( 笑 ) 。 わ れない。ワンシ 1 ンは、まるまる僕が 確かに村川監督はその後一一本、ロ 演出した。撮影の姫田 ( 真佐久 ) さん マンポルノを撮りますが、明らかにエ ロスの人ではないですよね。 「こうやって、こうやって」と指示 番にして、ポスターもそれまでのイメ ージを変えてと、いろいろ決まりを外 している。ロマンポルノだから、セッ クスシ 1 ンを四つ入れるという決まり かあるんだけど、村川はそんなに撮り たくないわけ。