長田 - みる会図書館


検索対象: 文藝 2015年 spring
46件見つかりました。

1. 文藝 2015年 spring

とばくはいってみた三上はもう一度 りずっと長かった。 「どないしよ」 「おかしいなあ」 長田は思っていた。便所まで遠いがな、そう思っていた といった。大きな音がして神永が戻って来た。 ばくは電気をつけた。三上は電気に反応もせず寝ていた。 「来てん来てん」 また出て行こうとした。ばくは意味がわからず 三上はとても明るい広場にいた。たくさんの黒人がサッカ 1 を と神永はいい、 していた。三上もまじりたいけど、まぜてもらえそうになかった。神永の後をついて出た神永は家の前の道の先を手で指していた。 長田は小便が我慢できなくなってきた。だけどまだ廊下は続いそこに長田がいた長田は裸足で、ズボンをひざまで下げて、自 分のちんこをじっと見ていた ている。便所まで持ちそうにない。間違いなく後で叱られるけど、 漏らしてしまうよりましだと長田は考えた。こういうところが長「何しとんあいつ」 ま ーく力いった。 田はバカだ。漏らそうと、廊下で小便をしてしまおうと、どちら にしても叱られる。長田はちんこを出した。たくさんの毛がはえ「知らん」 といって神永は ていた。三上がからかった毛だ長田はほんとうはこれが嫌で仕 方がなかった。誰にもいってなかったけど、はえかけたとき、そ「長田 ! 」 したたけどはえてくる速度とカの方がずっと強かった と声をかけた。だけど長田は気がっかない。 の都度抜、 ーこ突き当たり、渡れなくて困 三上は広場の外に出て、大きな月 ( から、抜いていたのに、気がつけばあっという間にはえそろって しまっていた。長田は毛を上から見ていた。長田にはまだ見慣れっていた。 ばくたちは長田に近づいた。長田はじっと自分のちんこを見下 ないものだった。風呂屋でよく見るおっさんのちんこと変わりが なかった。 ろしながら、ときどき手で毛を触っていた。 三上は一人で広場から出た。誰もいなかった。家に帰りたいの「長田」 ・こけど、家がどっちかかわからなかった。道を聞こ - フにも誰も 神永がもう一度声をかけた。 おばあちゃんは泣きながら土手を歩いていた遠くに海が見え ない。広場の黒人に聞いても三上の家なんてたぶんどの人も知ら ていた よい。それに言葉がわからない 「どないしよ」 と神永が長田の肩を叩いた 三上がいった。寝言だ。 ばくは三上を見た。 「ん」 と長田が振り向いた 「何て」

2. 文藝 2015年 spring

「何よ ! 」 神永はゲームセンターに、こ。 右腕のひじの近くにシャツをま 「死ね」 いてゲームをしていた。傷を見せてもらうと、刺されたというよ 「お前が死ね」 り切られていた。傷はまだかわいていなくて、肉が見えていた。 前田のお母さんは去年死んだ。ばくと三上と長田は葬式に行っ「縫わんでええん ? 」 神永はいなかったと思う。前田はすごく泣いていた。泣きな「ええわ」 からばくたちに 「縫うた方がええんちゃう」 「ありかとう」 「ええわ」 し」、つ、」 0 「まさしは」 「いや別に」 「逃げた」 と長田がいった。前田のお父さんもばくたちに といったのは長田だ。長田は横で見ていたのだ。歩いていたら 「どうもありかとう」 後ろからまさしが声をかけて来て、振り向いたら、すぐ後ろにま といった。お父さんはヒゲがのびていた。のばしていたわけじさしがいて、一人でいて、何かを横に払った。カッターだった。 ゃない。ばくたちは何もいわなかった。 ばくと三上が神永の傷を見ているとき、小学生の男の子がばく 「ごしゅうしようさまです、ていうねんて」 らを見ていた。神永がそれに気がついて、傷を小学生に見せた 帰り道三上がいった。 「お前のせいやど」 「葬式のとき」 長田がいった。ばくと長田は川沿いを歩いていた。神永は帰っ 「誰がいうとったん」 た。三上も帰った。 「おかん」 「お前のせいで切られとんねん」 「ほんな何でそういわへんねん」 長田はそ一フいっこ。 長田がいった。 「神永がそういうたんか」 「腹へったな」 「あいつがそんなんいうわけないやん。お前がどないかせなあか ま ーく力いった。 んのんちゃうん」 長田はいっこ。 神永がまさしに刺された。三上から電話があった。長田から電「どないかって何が」 二ロカかかって来たのたと三上はいっこ。 「何がて何やねん」 、、 0

3. 文藝 2015年 spring

「わからへんから聞いとんじゃ」 「ずるいねんお前」 ばくは急に、胃の下が痛くなった。 「何がじゃ」 「何がじゃて何がじゃ」 「俺の何がずるいねん」 「やられたんお前やろ ? 何で神永にばっかりやらすねん」 「やらしてないわい 「やらしてるやん」 やらせてはいない。だけど長田のいうことはわかる。 「頼んでないもんー 「きたなこいつ」 「何がきたないねん」 「何で神永が切られなあかんねん」 「知らんやん」 「きたなっ ! 」 「お前も見てたんちゃうんか ! 」 「ああ」 そうだ。長田だって神永が切られたとき横にいた。なら助けら れたはずだ。でもたぶん無理だ 「神永切られてんのに隣で見てたんやろ ! ほんな何で助けへん ねん ! 」 「隣ちゃうわ ! 」 「お前かってずるいやん ! 」 長田がずるいとはばくは田 5 っていない。 「何や ! ゃんのか ! 」 ばくと長田はつかみ合いになった。ばくも長田もいつもっかみ 合いだ神永のようにうまく殴ったり蹴ったりできない。ばくは 長田の耳を指にひっかけていた。長田はばくの胸ぐらと首のあた りをつかんでいた。涙が見えた。長田とけんかなんかしたくない。 「何泣いとんねん」 「アホか泣いてないわい」 「泣いてるやん」 「指が目に入ったんじゃ」 ばくは手をはなした。長田も手をはなした。指の先が白くなっ ていた。その後ばくらは黙ったまま別れた 星も見えない。 神永は痛いだろうか 今日は月が空にいよい。 熱とか出してないだろうか。ばくは長田につかまれた首の皮膚が 少し痛い。ばくは防寒着のフ 1 ドをかぶって、ロのところまでチ ャックを閉めて、母がいくつも並べた、冬だから枯れて何もない 植木鉢の奥のすみにしやがんで目をとじる 白な くあ神何神神 見と永で永永 え神は泣のは る永いい前寝 のはっとに て は思たんば 0 1— く た 腕け のど た く 傷ば ロ ばを 切は ら は れた泣て とずてる き泣い る舌 りて の く な面 て っ倒 る 鳥の会議

4. 文藝 2015年 spring

と長田がいった。 「そんなんいうたら、俺らもやん」 「探しに行こ」 と長田がばくを見なからいい とばくかいった。 「な、やつばりバラけん方がええやん」 「うん」 と続けていった。 と神永がいって、ばくたちは着替えに神永の部屋へ戻った。部「でもなあ」 ま ーく力いった。 屋に入った途端、三上が目をさまし、神永を見て 「良かった 「一つになって探すより、四つになって探す方がそらええよな」 し」、つ , 、 0 「だからいうてんねんわしは」 「何が」 「でもお前音痴ゃん」 と神永がいうと、三上は 「音痴ちゃうわ。普通に歌えるわ」 「おばあちゃん、海の方へ行きよったで」 「その音痴ちゃうやん。わかるやん。方向音痴いう意味やん」 し」、つ、」 0 「ほなそういえや ! 」 「邪魔くさいやんー ばくたちはまず、外へ出た。そしてそれから、まとまって探し「探そ」 ーく力いった。 た方か良いのか、、ハ ラけた方が良いのかの相談をした。三上のい 「探すわいや ! それをどないしてやろかいうとんやろがい ! 」 っていたことをばくたちはまだ真に受けていない。まず長田は 三上が怒鳴った。 「バラけん方がええんちゃう」 といった。すると三上が 「何切れとんねん」 長田がいった。 「そらバラけた方が良い」 といった。神永は ? と三上か聞くと 「切れてないわい 「バラけんのは良いけど、 例えば三上がどっかで見つけたとして、「切れてるやん」 「切れてない ! 」 ここへ戻って来れる ? し」、つ , 、 0 「長田、ここら何となくわかる ? 」 「わかるやろ」 神永が長田にいっこ。 と三上はいったけど、三上にはここらの土地勘はひとつもない。 「たぶんわかる」 長田がいった。 それに三上はものすごい方向音痴だ。

5. 文藝 2015年 spring

神永はその山を見ていた 「ケン、とかがええよな」 「えらいときに産気づいてもて。飛行機はそこら中に爆弾落とし 「長田ケン ? 」 はるし、わたし忘れへん」 三上がいった。 木の枝に小さな鳥が止まって鳴いていた 「うん」 「まさるさんとこは、奥さん元気 ? 」 「地名やん」 おばあちゃんがばくにいった。長田が目を丸くしてばくを見た。 「住所どこですか、長田ケンです」 ま ばくはまさるじゃない。 ーく力いった。 「きれいな奥さんやもんねえ 「長田ケンてどこ」 おばあちゃんがいった。 「知らん」 「まだピアノやってはんの ? 」 「そんな県ないやん」 おばあちゃんがばくの顔をのぞきこんだ。長田と三上がばくを 「ない ? 」 見た。神永は庭の木を見ていた。 三上がいった。 「転校するん ? 」 ばくはとても小さな声でいった。 長田がいった。 「そらよろしいわ。また聞かせてほしいわあ」 「わからん」 おばあちゃんはいっこ。 神永がいった。 おばあちゃんが入ってきた。 「泊まって行けや」 「庭の木にみかんがなってるわ」 駅前のそば屋で神永にカレーをおごってもらっているとき、神 僕たちは見に行った。庭には何本もの木があったけど、どこに 永がいった。 もみかんなんかなかった。 「うん」 「まだ青いけどな、ここのみかんは甘いからな、みんなで食べ」 まくよすぐこ、つこ。 ばくらは何もいわなかった。 「やった」 「あんたはそこで生まれたんや」 おばあちゃんが神永にいった。おばあちゃんが指さした場所は長田がいった。 「何か寝巻きある ? 四本の木に囲まれた、少し盛り上がった、小さな山だった。 三上がいった。 「その下の防空壕でな」 鳥の会議

6. 文藝 2015年 spring

亠尸か聞こえた。 三上がいった。 「きよしちゃん。きよしちゃん」 「黙って食えや」 「誰」 長田がいった。神永は何もいわない。遠くで大きな物音がした。 長田がいった。 神永が出て行った。 「おばん」 「何できよしちゃんなん」 神永がいった。 三上がばくに聞いた 「きよしちゃんて誰」 神永のおばあちゃんはサイダーの瓶とコップを落として割って しまっていた。 「おとん」 「きよしちゃん。きよしちゃん。きよしちゃんどこ」 「大丈夫 ? 神永はばくらを見て、立ち上がり、部屋の戸をあけて 神永がいった。おばあちゃんは割れた瓶とコップと、こばれて 泡をたてているサイダ 1 を見ていた。三上はほとんどせんべいを といった。長田がばくの顔を見た。おばあちゃんが、お菓子の食べてしまった。 入った容れ物を手にして入って来た。 「おとん、きよしていうんや」 「せんべいあるから食べー 「うん」 「うん」 「神永きよしゃて」 神永が受け取った。 長田が笑った。 「サイダー飲むか」 「漫才師みたいやな」 おばあちゃんがいった。 「お前のんが漫才師みたいやろ。長田せんた」 「飲む ? 」 三上がいった。 神、水がば′、、らに聞いこ。ば′、、らは - フな、ず・いた 「せんた、って名前誰がつけたん」 「うん飲む」 「おとん」 神永がおばあちゃんにいっこ。 長田がいった。 「あんたは昔からサイダー好きやったからな、買うといたんやで」「嫌すぎて死ぬわ」 とおばあちゃんはいい、 出て行った。長田はもうせんべいを食「そうなんや」 べていた 「嫌やろ、せんた、て」 「しめってる」 三上とばくが笑った。 「ここ」

7. 文藝 2015年 spring

長田がいった。 「ほんな、長田と篠田で、あっち」 「何かいえや ! 」 と神永は玄関を出て左を指して 長田がいった。 「探して」 「うん」 「三上は俺とあっち探そ」 と右を指した。 神永は小走りで探していた。三上も必死について行くのだけど、 神永には自 ばくと長田は黙って歩いていた。夜中だったので誰も歩いてい疲れてきた。でも「疲れた」とは神永にはいえない。 ここは駅からも遠いので、とくにそうだ。電信柱と、電気分のおばあちゃんだ。三上だって探しているのが自分のおばあち の消えた家がいくつもあった。坂もなく、目印になるような建物やんならそうなる。だけど三上にはおばあちゃんはいない。三上 の生まれる前に死んだ。三上は小走りでおばあちゃんを探す神永 もなかったので、ばくらは迷わないように注意して歩いていた。 の後ろ姿をいつまでもおばえていた。ずっと年をとったとき、何 「おらへんなあ」 かの拍子にそれを思い出した。そしてそれを思い出すたび、少し 長田がいった。 かなしい気持ちになった。そして必ず神永はそういうのを嫌うや 「おばあちゃーん、とか呼んだ方がええんちゃう ? ろな、と思った。事実、嫌う 長田がいった。 「うるさいか」 月にいた。おばあちゃんは ばくたちはまたおばあちゃんの家の ~ ! 長田がいった。 どこにもいなかった。神永はあわてていたばくらはそうでもな 「夜中やしな」 藤谷治 藤谷治 、 0 現代罪悪集 誰もが犯しうる、現代の「七つの大罪」 「亡失」「等閑」「匿名ー「紐帯」「雷同」「黙過」「増益ー 日常に地続きで潜む狂気を描く、初の短篇集。 つ、」 0 ・本体 1500 円十税 ISBN 978 ー 4 ー 309 ー 02339 ー 7 河出書房新社 東京都渋谷区千駄ヶ谷 2-32-2 tel. 03-3404-1201 www.kawade. CO. jp

8. 文藝 2015年 spring

神永がいった。 「うん」 父は仕事をやめた ま′、よ、つこ。 前田が三浦と山本を連れてばくたちの前に来た。三浦と山本は、 「付き合うって何するん」 とばくがいうと坂口は下を向いた。廊下の角に坂口の友達の前坂口とときどき一緒にいる二人だ に ( た前田とは同じ小学校「何であんなひどいこというんよ」 田が見えた。この二人はいつも一緒 ~ 則田かばくにいっこ。 だったから、昔からよく知っている。四年のときに算数の時間に 「サッカン泣いてるやん」 小便をもらしたことも知っている。 ばくはしばらくそのままでいたけど、坂口が下を向いたまま何「何が」 「何がちゃうわ」 もいわないので、神永たちのところへ戻った。すぐに長田が 長田が笑った。 「何て」 といった。ばくは坂口に呼び出されていたことを長田と三上と「何わろとんねん、長田坊主」 「え」 神永にしゃべっていた。だからばくは 長田がいった。 「付き合ってっていわれた」 し」、つ , 」 0 「え、ちゃうわポケ」 「誰がポケじゃ 「うそゃん」 「お前じゃ」 と三上がいった。神永もばくを見た。 「うっさいプタ」 その日の昼休み、小さく複雑に折られた手紙がばくの机の中に 「誰がプタよ」 入っていた。そこには 前田はそんなに太っていない。だけど胸が大きい。小学校で最 初にプラジャ 1 をしてきたのは前田だ 放課後、体育倉庫の横にきてください。坂口真美 「お前や」 「プタちゃうわ」 と書かれていたたからばくは放課後そこへ行った。 「前ちゃん行こ」 「ほんで何ていうたん」 三浦が前田にいった。 と長田がいった。ばくは坂口にいったままをいった。 「行け行けプタ」 「え。そんなんいうたん」 鳥の会議

9. 文藝 2015年 spring

神永がいった。 神永は部屋 ( こ、た。神永は学校に来てなかった。だからばくと 「別に」 ま ( く力いった。 三上と長田は、五時間目で学校を出て、川沿いを歩いて、神永の 家へ来た。 怒鳴り声が聞こえた。男だ。年寄りの声だ 神永の家は二間で、神永は奥の部屋こ ロ ( したそこでばくと三上「おのれあ ! 何遍いうたらわかるんじゃ、おお、こら " こ しかしば と長田とでたばこを吸っていた。神永は吸っていない 聞きとれなかった。 その後も言葉は続いていたけど、 くたちの吸っていたたばこは神永のたばこだ。 「裏のじじいや」 「木い切られとったやろ」 神永がいった。 長田がいった。 「誰 ( こいうとん」 「どこの」 「おばんがおんねん」 ま ーく力いった。 「おじんがおばんにいうとん ? ま 「川のとこの。ちゃうわ、公園の」 ( く力いった。 あの木じゃない。ならまだあの木には鳥たちがいる 「どっきまわしたろかリおお、こら " 】おんどら、この」 「何で切るんやろ」 後が聞きとれない。 長田がいった。 「のどかわいた」 「チェ 1 ンソー」 と三上が勝手に冷蔵庫からコーラを出してきた。ばくらはいっ 三上がいった。 もって - フた。 「その何でとちゃうわ」 「ぬるいコーラ飲んだことある ? 」 「ほなどの何でや」 長田がいった。 「切る理由や」 「ある」 「何をや」 神永がいった。 「木いをや」 「ある」 「切れ、いわれたんちゃうん」 三上がいった。 「誰に」 「ある」 ま 「知らんがな」 ( く力いった。 「目え痛い 「まずいよな」

10. 文藝 2015年 spring

「何しとん」 た。今日は天気が良い。必ずお父さんは海のどこかで釣りをして ま ーく力いった。 いる。お父さんさえいればもう大丈夫だ 「何が」 「おばあちゃんちゃうん」 長田がいった。 三上はロにしていった。川 の向こうを歩く女の子のことを三上 「外やで」 はいっていた。おばあちゃんなら大変だあのままはぐれてしま ( く力いった。 ったら見つけられなくなる。神永に教えてあげなきやと三上は思 「いやちんばがな」 ったけど、どうやって神永に知らせたら良いのかわからない。 長田がいった。 突然長田が 「おっさんみたいで嫌ゃねん」 「さむつ」 長田はとても悲しそうな顔をした。神永とばくはひざまでズボ といった。そしてひざまでおりたズボンを見て ンをおろした長田を見ながら 「わ」 「うん」 と引っ張り上げた。そして 「自分ら何しとん」 要」、つ , 」 0 「でもここ外やから、家戻ろ」 し」、つ、、 0 「お前が寝ばけてこんなとこ来るからやん」 三上は川を渡りたくて、だけどどうして良いのかわからなくて、 とばくか ( い、神永か笑い 右へ歩いたり、左へ歩いたりしていた。それでも橋らしきものは「帰ろ」 見えなくて、途方に暮れて、河原にしやがみ込んだ。河原にはた と家に戻って、玄関に入った時、神永が、おばあちゃんの寝て くさんの石があった。三上はその石の一つを拾って、川へ投げた。 いる部屋の戸があいているのに気がついて 向こう岸を誰かが歩いていた。子供だった。女の子だった。三上「あれ」 おばあちゃんの部屋をのぞいたばくと長田も続いて はその子をずっと見ていた。女の子は三上から見て左へ向かって のぞいた。おばあちゃんがいなくなっていた 歩いていた。三上が立ち上がり、その方を見ると、海が見えた。 おばあちゃんは泣きながら歩いていた。だけど声を出してはい 「おばあちゃん」 なかった。声を出さずに、涙だけ流しながら、そしてそれをとき神永が声を出した。だけど何の返事もどこからもしない。家中 どき拭いて、海へ向かって歩いていた。海へ行けばお父さんに会三人で探したけど、おばあちゃんはいなかった。 えると思っていたおばあちゃんのお父さんは釣りが大好きだっ 「えらいこっちゃ、やろ ? 鳥の会議