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検索対象: 正論 2016年9月号
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1. 正論 2016年9月号

と聞かざらん。哀れ血に鳴くその声を」 みると、「よくぞ我々の本心にわだかまっていた気分に筋 道を与えてくれた」という反応が小さくなかったからで 老人は、自分がかって大怪我をさせたその妹の声が、 病状が悪化するにつれ、「哀れ血に泣いている」かのよ ある。妻への看病と世論への反逆で、この老人、思わず知ら ほととぎす ず自分が前期高齢者とやらの一人であることにすら気づ うに、つまり不如帰の声に聞こえてならないでいた。あ とで知ったのだが、妹のほうも老人の気持ちを察して、 かぬといった調子の騒がしい日々が続いていたのである。 帰り道で亭主にいったそうだ、「兄は私がもうじき死ぬ 気掛かりであった妹が死に、そのニ日後に と思っているのね」。 九・一一テロが発生し、「死の恐怖」とは何かについて 妹が最後に入院したときにも老人は病院を訪れた。た 考えざるをえなくなるうち、「アメリカのイラク侵略」の だ、彼にできたのは妹の手をじっと握りつづけているこ あとテロリストの味方呼ばわりされた とだけで、一言も発せなかった。「頑張れ」といっても 札幌の ( 二番目の ) 妹の癌病が次第に重篤になり、札詮ないし、「済まなかった」というのも今更である。「お 前のことは、俺の生きている限り、思いつづけている、 幌で開いていた塾に向かうついでに見舞に寄ってみた。 すると、例によって「あれを食べよ、これも食べよ」と俺にはそれしかできない」と伝えんがため、そのすでに の ( 病人からの ) 親切攻めにあってすっかり参ってしま手相にまで死相の出ている彼女の手を長いあいだ握りつ づけていた。彼女のほうも、わずかに力を込めて、握り 、老人は昼間から酒ばかり飲んでいた。時間がやって ていね きて妹の亭主がその家のあった手稲から札幌まで車で送返してくれたようであった。 るという。すると妹も同行するといいはじめた。これが 彼女は六人の兄妹のなかで目立って独特の性格をして いた。自分が犠牲になるのを厭うことを知らず、自分の 兄妹の最後の別れとなるかもしれぬと思って彼女はそ、つ したのであろう。老人が何とはなしに「青葉茂れる桜井 苦しみを表すことを嫌い、人に尽くすことを当然のこと ま 6 さつら としか思わず、まるで「市井の聖女 , のようにみえてな の」と ( 好きな歌「桜井の ( 楠木正成と正行の親子の ) ずさ らなかったのである。 そのせいなのであろう、彼女 別れ」の一番を ) ロ遊むと、妹が、生来の病弱からきた の葬式には近所の住人が一一五〇人も線香を上げにきたそ ハスキ 1 な声で「その歌、大好きなの。もっと歌って」 。で、数日後に彼女がとうとう五十八歳で亡く という。で、と、つとう問題の六番目まできてしまった。 なり自宅にその死体が寝かされているのを、老人は一時 「共に見送り見返りて、別れを惜しむ折からに、またも さみだれ 間ばかりも、周囲が訝るほどにじっと見詰め、かっての 降りくる五月雨の、空に聞こゆるほととぎす。誰か哀れ

2. 正論 2016年9月号

り。なんでそこ ? と思っちゃ、つ。 今回の選挙でもびつくりしたのは業は割とすぐに撤退する傾向があっ幻 正直に言うとたぶん私は根っこで「最低時給を千五百円にアップ」って、撤退したところに中国企業が入 は本来左に近い ( 笑 ) と思う。朝日て書いてあった。千五百円よ、それってくる。中国の企業はどんなにて 新聞のファンタジ 1 の世界にしてもも時給でよ。たぶん、この人たち、んやわんやしようが決して撤退しな 共産党の世界だってそのまま実現で実現しないことをあえて言うんだな い。たくましいし、しぶといですね。 きたらそりゃあ素敵よ ヾ 1 ッ AJ と思っちゃった。 エジプトでも日本企業カノ 井上氏そりゃあ、耳に聞こえのよ 八時間できっちり帰れる社会を訴いなくなった。革命だから、という い理想論ばかり並べるからね。だいえている人たちもいたけど、見た理由で一回帰ったわけですが、元に たい、平和がいいなんてのは当たりら、ほとんどおじいちゃん、おばあ戻すのはけっこう大変なんです。そ 前で、戦争がしたい人なんて誰もい ちゃんばっか。「八時間で帰らせろれでどうなったか、といえば、家電 ませんよ。にもかかわらず、まるで ー。八時間働いて終われる社会にし量販店の一階のフロアが中国と韓国 安倍首相が戦争をしたがっているかろ 1 」って言っている人はもう引退の家電で占められて、日本のソニ 1 のように喧伝するのはどう考えてもしてんだよ ( 笑 ) 。 とか端っこに追いやられてしまった おかしい。これってデマであり、国 んです。せつかく築きあげた経済の 即時撤退に走る日本企業の落し穴 民をバカにしているとしか思えな 実績がストップして、しかも他国に 反原発も一緒。原発がなくてやフィフィ氏バングラデッシュのテもっていかれちゃう。これもしつか っていけるならそれは理想だろうけロ事件で少し気になることがあつり考えないといけないことだよ。 ど、今すぐに実現できるわけがなて、今回殺された人たちって現地の井上氏ところでカラオケの技術屋 い。けど彼らはすぐに原発をなくせインフラ整備に従事されていたんでさんのころ、出張で韓国に行っても と主張する。電気を供給する電力会すね。ほとんどがに所属しのすごく腹立っことがあったんでし 社の事情など様々なことを考えれていて難に遭っているんですが、事よう ? ば、そんなこと不可能なのにね。 件を機に撤退を決めちゃったんですフィフィ氏そう。整形しろって フィフィ氏そう。でもね、例えばね。この手の事件があると日本の企 ( 笑 ) 。

3. 正論 2016年9月号

井上氏韓国人から言われたの ? そまり韓国では「こうあってほしかっ ただね、海外ではそういう価値観 れってムチャクチャ失礼な話だと思た、という理想をベ 1 スに歴史を描でも結構アピ 1 ルしたもん勝ちで、 うけど。笑えない話だよね。 いているということのようですね。どれだけ出しやばっていてもアピ 1 フィフィ氏そう。韓国人の美意識フィフィ氏彼らの美意識ではそれルしたほうが、速く浸透しちゃう。 をまざまざと感じました。確かに韓で国としてうまくまとまっていれば日本は出しやばらない。おしとやか 国の方って化粧がすごく上手い。しそれでいい。本質的なものは見なくで図々しさがないところが、美徳だ あがりはみんな一緒なんだけどね。てもいい、と考える。一方、日本のけど、海外ではこれが美徳じゃなく でもいくら顔を繕ってもきれいな男性は化粧しなくていい、 ありのまて損をしてしまう。 ら、ナチュラル、でも不細工でいるまでいいと言う人が、多いですよ井上氏そのとおり。韓国が歴史を よりはいいというのが韓国人男性がね、厚化粧されるぐらいだったら。捏造しても、日本の外務省は何も反 女性に求める美意識なんですよ。 井上氏でもさ、子供がお父さんに論してこなかったでしよう。直ちに これは日本と明らかに違う。で、そもお母さんにも似ないって不自然す反論せず、放置してきた結果、今の うした彼らの美意識というのは国のぎない ? 最悪の日韓関係を作り出してしまっ 意識にも通じるところがあって、繕フィフィ氏また整形すればいい、 たわけだからね。フィフィの話を聞 っていても、真実でなくても綺麗にと考えるんだろうけど、でも、そんきながら改めてそう思うな。黙って 見られることが大事だという韓国のな社会、おかしいよ。世界の各国は いることが美徳だとか、もうそんな 価値観に似ている気がするんです。一応に顔とか表面的なもので選ぶの時代ではないんだよね。摩擦を恐れ」 井上氏彼らは歴史まで整形してしではなく、実力で選ぶ社会にしてい て反論を手控えていてはダメ、間違 まうからね ( 笑 ) 。韓国史に詳しい歴きたいと思っているでしよう。それっていることは即座に反論して徹底申 オ 史学者によると、韓国ドラマ「宮廷に対して見た目や表面を取り繕えば的に議論すべきなんです。 ラ 、それでよければそれでいいじ 女官チャングム」などはファンタジ 「売春大国」韓国に追及資格あるの ? フ 1 の世界で、史実とは遠くかけ離れやないかっていうのが彼らの価値観 たスト 1 リ 1 だというんですよ。つでそれが罷り通るんだから。 フィフィ氏ところで韓国が「売春認

4. 正論 2016年9月号

本へ帰れるというので急いで大連へ来まが、今時はそういう生活をして割合御金相談員 a したが、其は全く望みのないのでした。 に困らずに居た人達が ( 不明一字 ) って【七月一一十五日、問診した三十三才の婦 其の時大連のホテルは、新京から女学生来ます。 人】 が ( 不明一字 ) 名計り避難して来て居ま 自分が見た目では全体婦人が十人居る性病という事が分り入院を進めしが、 した。丁度其の隣室に私も居ましたら十とすれば 1 が親弟妹を食わす譌め身を犠どうしても一度帰りたいと申して私達の 六才の女学生をソ連の司令の所へ連れて牲とした人、 4 が商売人、 5 が普通の事務所へ来られたので、病気の恐ろしい 行きまして、あやうく陵辱を受ける所を人、其の内 2 が奥様、 3 が娘です。中に事、内地へ帰っては決して思う様な養生 私が見るに見兼ねてとび込み身代わりとは親が立派にありながら千五百円の絹靴が出来ぬ事を呉々も言いきかせ入院を進 なりました。 下がはきたい為めに露助とダンスホ 1 ルめました。ようよう決心して入院いたし 其の時は皆ゃんやと云って感謝して来に手を組んで行ききっ茶店に出入りしてますと約東されました。丁度 ( 不明三 れましたけれ共、 ( 不明一字 ) ではあの得意となって歩いて居る人もあります。字 ) は中京へ出張して居りましたので、 人は挺身隊だといわれてさげすまれるのそういう人達を厳しく取りしまって頂中京病院へ送院して来ましたので玄関で で最早やけくそとなり、一度しみのついきたい。日本の婦人がそういう気持ちに出迎えましたら、其の婦人直に私の前へ た体だどうでもなれという気持ちでとうなるのは、一つは日本の男性が余り女を来られて先生申し訳ありません、先生か とう商売としてしまいました。 下に見て万事がけいべっして居るのに反ら色々と親切な御話を聞かされても余り 露亜語が出来るので或る時は通訳となして、露助は女を大切にし車に乗る時で話が良すぎるから之は又だまされて何れ って一 ( 不明三字 ) たりして居りましも手を貸すとかオ 1 1 を着る時も手伝にか連れて行き売りとばされるだろうか た。そうして食物や色々の果物が入手すうとかいう優しい仕打ちに好感を持っとらにげ帰ろうと一一、三人で相談して居た るので避難民の気の毒な人々は物をやつの御話です。 が余り先生から進められるから一先行っ て助けて居りましたが、ー リ揚者の中には かかる打明け話を聞きますと今時の引て悪かったらにげ出そうと話をして来て ( 本人の名 ) といえば知って居る人も沢揚婦人に対して益々婦人相談所の任務の思えばこんなにきれいな広々とした病院 山ありますと力になってます。今迄の人重き事をつくづく感じます。 で本当に気持ちがよい、こうゆう所で養 は大抵食えない人が ( 不明三字 ) ました 生させて頂ければ結構だと、本当にすみ 210

5. 正論 2016年9月号

母の日本観は最期の日まで変わらなじていなかった ( 私の母はアメリカいって、彼の行為は間違っていたと いえるだろ、つか ? もちろんノ 1 で かった。 人で、父も結婚後しばらくしてシン 日本の敗戦は、道義性あるいは非ガポ 1 ルからアメリカに移住したある。もし男が他の男の財布を奪わ 道義性とは関係がない。これは非情が、祖母はついていかなかった。私んとして襲い、それが成功したから といってその男は賞賛されるべきだ かっ冷酷な事実だが、米国のほうがもシンガポ 1 ルに残った ) 。 より強く、より戦争への準備が整っ近年、日本でも、・・ル 1 ズろうか ? もちろんノ 1 である。 ていた。 なぜ日本は、敗戦を間違った行為 ベルトに当時の日本が騙されていた 当時の米国は膨大な工業力と、豊ことが、数々の証拠とともに知られの証としてみるのだろうか この世は勧善懲悪のテレピドラマ 富で手つかずの資源を自国領域内にるようになった。 1941 年肥月の 持っていた。島国である日本は国外開戦直前まで日本は真剣に和平交渉ではない。必ずしも正義や徳が勝利 の資源・軍事ネットワ 1 クを保持しに臨んでいたが、ル 1 ズベルトにとするわけではない。悲しいかな、こ てこれに対抗しようと努めたが、現っては時間稼ぎでしかなかった。日れは単純な事実である。 地の抗日ゲリラの抵抗で泥沼の戦い本をアメリカと戦うよう仕向けるエ祖母に一度、こう尋ねたことがあ へと引きずり込まれ、米国との戦い作も行われたようだ。祖母の考えをる。「日本が正しいことをやったと いうならなぜ、たくさんの抗日派が に効率よく集中することができなか裏付けていると思う。 った。 いたの ? 」。彼女の答えは次のよう 私自身も「日本は敗戦したのだか なものだった。 祖母が、当時の日本で唯一批判的ら間違っていたのだ」という考えは にみていたのは、日本の指導者が次馬鹿げていると思う。なぜならそれ家族から虐められた子供が虐待か の事についてもっと注意深くあらねは「勝てば官軍」という野蛮な考えら解放され、優しい保護者に庇護さ れても、反抗的な態度をとることが ばなかったということだ。米国を信の裏返しだからだ。 じたことが愚かだったのだ、と。祖子供を救うために燃え上がる建物ある。彼は恐怖と憎しみだけを植え 母はアメリカという国をまったく信に飛び込んだ男が焼け死んだからと付けられ、優しさの意味を理解する

6. 正論 2016年9月号

い道を知らないから。 所詮、人間じゃない、神様がノベル、新しいものをつ 西部新しいものといえば、小説、小説といっていま くるのなら話は別ですが、もしも人間が謙虚でしたら、 すが、英語の「ノベル」というのも、もともと新しい説俺如きがつくった新しいものだから、相当欠陥だらけだ という意味です。直訳すると、小説家じゃなくて、新説 ろうと、インチキだろうと思って、自己宣伝しませんよ 家です。そもそも、すべてとは言いませんが、小説家達 ね。「俺はたいしたもんだ」という自画自賛があるから の比較的多くを僕が馬鹿にしてるのは、新説を吐くとい 「俺がつくった新しいものだ」というふうな宣伝が生ま う人間はいかがわしい、何の根拠があって何万年、何千 れる。もし謙虚さがあればあんなに宣伝しまくらない 年、何百年というクラシカルな歴史をお前ごときが超え 黒鉄思えば遠くへ来たもので、本当は、釣り針はか て新しいものを書けるんだ、傲慢にもほどがある、と思 なり価値のあるものだったわけですね。しかし、これ うからです。坪内逍遥の頃は、所詮、文章なんか書いて も、魚の身になってみるとたまったもんじゃないわけで すよ。自画自賛が人類のエネルギ 1 になったわけです。 るのは男の風上に置けないのであって、世の中の役に立 っことをやれという気風があって、軟弱な男は物書きだ 基幹になったわけで。そうすると、自画自賛やらないと ったわけ。そんなこと、坪内逍遥達はわかっているか 生きていかれないですよ。 ら、「我々のは小さな説です、小説ですから、勘弁して 西部でも、自画自賛の仕方の中にも、ペロッと舌を くださいね」という遠慮深さがあったと思うんです。 出して「実はたいしたもんじゃねえかもしれないんだけ ノベルとはスペルは違いますけど、ノ 1 ベル賞だっ れどね」という、そういうュ 1 モアなしの自画自賛は、 て、ダイナマイト技術の開発者がつくった賞ですよ。こ 年柄年中、イノベ 1 ションの名においてなされると、こ 慧 智 れ、人から聞いた話だけど、ノ 1 ベル賞をつくったの ちとらとしては、ムカ 1 ッとくるわけです。 の は、ノ 1 ベルの弟が死んだとき、ダイナマイト製造者だ 黒鉄如何なる状況でもユ 1 モア、諧謔は必要です。儒 か武器製造者だか商人だかが死んだというのが誤報が流 それがなくなって、ヌケヌケと、ただ金がすべてだとな れて、本人であるお兄さんのノ 1 ベルが「自分は武器業 っちゃった。もはや禁忌の領域に入っちゃっているの瀬 者と思われてたのか」と慌てて、賞金を創設したのが始 に、禁忌だと気がっかない。 めだそ、つですよ。たぶんそうでしよう。 もうちょっと現代的にいうと、昔、男の自画自賛とい 2

7. 正論 2016年9月号

まるきっかけになればと思う」「巻投票制を利用して九条 ( 戦争放棄 ) 手法をさんざん持ち上げた。その背 2 町の挑戦が十分な機能を果たしてい などの憲法改正に持ち込むのではな景には、当時はまだ、「民意」はコ ないこの国の間接民主主義に、大きいかという警戒感は広くある。従っントロール可能だという認識があっ て今後の論議は、憲法改正と切り離てのことだと思われる。自分たちの な反省を迫ったことは間違いないー リ 1 ドで「民意」はどうにでもっく と、最大限に住民投票を持ち上げした土俵を確認した上で議論を進め る。それもこれも原発建設反対が多ることが望ましい」と述べているこられるというエリ 1 ト意識が見え隠 数を占めたからだ。逆の結果が出てとだ。国民投票を行えば、場合によれする。それとともに、直接民主主 いれば、このような内容にはなってっては「民意」は 9 条改正にも賛成義こそが民主主義の本来の形態、最 する。だから、制度として国民投票善の形態であり、代議制などの間接 翌日付の「主張・解説」欄にはを導入する場合には憲法改正と切り民主主義は直接民主主義を実現する ことが技術的に困難であるがゆえに 「国民投票具体論義始める時」と離せという主張である。 いう小林暉昌編集委員の論説を載これまた、ご都合主義も甚だしいその代替措置として、あるいは次善 せ、「重要政策の決定に国民投票のが、自らが支持する結果が出そうなの策として採用されているに過ぎな ような形で意見を聞くことに八二 % テ 1 マについては国民投票や住民投いという認識がある。 『』 ( 19 9 6 年 8 月四日 が賛成」という同年 7 月に実施した票を行え、逆の結果が出そうなテ 1 ー日号 ) の「新潟・巻町原発住民 自社の世論調査の結果を引いて「世マについては国民投票・住民投票は 投票住民軽視の国策に反乱」と題 論調査の驚異的数値をかみしめて、行うなということである。 する特集で朝日新聞調査研究室主任 各党は国民投票制の導入に本気で取 直接民主主義への橦憬 り組んだらどうだろうか」と、国民 研究員の田島義介氏は「民主主義の このようにかって朝日は住民投票原点は古代ギリシャから代議制では 投票制の導入を勧めている。 ご愛敬なのは「政治的には、国民や国民投票という直接民主主義的ななく、直接民主主義にある」と述べ

8. 正論 2016年9月号

と、デ 1 タをどんなふうに取ったかで、いかようにもな する。しかし、知らないやつにやらない。理由は、知ら るでしよう。病気と煙草と関係があるのか、こういうと ないやつは人殺しである可能性があり、そいつが生き延 きに人工知能を使ったらいいんです。人工知能に世界中びてあと十人殺したら、何で臓器移植したかわからない の煙草のデ 1 タを入れて、結果、「タバコは体に悪くな から」とね。しかし、何の反応もなかった。 い」っていったら、みんな、都合の悪いことになっちゃ 黒鉄読解力がないんでしようね。昔はさっきの一万 うわけです。ついでに、南京大虐殺の資料も全部入れて 人の少数派が、鋭敏な触覚でものを考えてやっていたん て、パッパッパッとやったら「虐殺はない」、真珠湾攻ですが、どうやら今はみんな忙しいらしい ( 笑 ) 。 撃だって入れてみるといい。アメリカ国家は正しいかと 西部ォズワルド・シュペングラ 1 が「文明の没落」 いう時に、アラモの砦とかも入れて・ : 。そうすると、た で、こういうことを書いているんです。第一次世界大戦 まったもんじゃないでしようね。 ( 笑 ) 中ですが、結局、人類はダメだ、新しい技術を新しい宗 西部煙草の場合、医者の問題ですよね。医者がよく 教にしてひたすら進んで滅びるだろうと。それで最後数 ああい、つことを言、つ。 行で、こんなふうなことを書いている。だからして、芸 黒鉄医者の友達がいつばいいるんですが、よく彼ら 術だとか哲学だとか、そういうことをやっても何の役に に、「何百人も殺した奴が、血だらけで『助けてくれ』 も立たないことはやめてーニヒリズムの極致ですがー と言ってきたら、助けるか」と聞いてみると、みんな ーみんな、エンジニアかマネ 1 ジャ 1 にでもなって、こ 「助ける」と言うんです。「そういう教育を受けた」と の世の滅びを早めるように努力しろと。それで終わるん ね。僕が「おかしいだろ。そんな奴の命を助けたら、ま ですね。まあ、それは正しいでしようが、僕としては、 慧 た殺すんだぞ」と言っても、それでも「助ける」とい 没落に協力する気は起こらない。負けを覚悟で、新しい智 ものには「最後尾から付いていけ」と言っておきたい。儒 西部昔、臓器移植の是非が問題になった時に、いま 黒鉄まあ、しかし、大きく考えれば、世界には元か の黒鉄さんの話と同じことを書いたことがあるんです。 ら何の意味もないわけで、すると、あくまでチョイスの頼 「俺は、自分の臓器が移植に使えるとしても、自分の知 問題しかなくて、芸術が最後の砦だと思うんですけど 3 ね。 っている人に、いい人と思うやつには臓器あげることは 2

9. 正論 2016年9月号

たか . 聞かれ「私を含め専門家はら、共産党の敵になっちゃうわけ四面楚歌に。その三浦さんを、な みな残留と思っていた。心まで読ね」とまとめてた。三浦さんは社ぜか和田参院議員 ( こころ ) が批 み切れなかった」。正直に不明を民党の吉川代議士も追及。少子化判し論戦に。三浦さんじゃなく共 恥じたのはいいだけど、なら専門 問題では自民党で、元厚労大臣の産党を批判すべきだったのでは ? 家とは言えないのでは ? その田村代議士も追及してた。 : : : 政終盤は憲法改正がテ 1 マ。自民 後、各党代表が「豊島先生に質治家が評論し、評論家が質問形式の田村さんは、自民党草案を「そ のまま通すとは思ってないーと半 問タイム。みんな政治家なのに評で主張を展開する奇妙な展開に。 論ばっか。豊島さんが退場し「い野党席の津田大介さん ( ジャ 1 ナばディスりながら「 9 条は発議す よいよこれから参院選の問題へ」 リスト ) は「みんなが聞きたい話ら難しいと思っている」。公明党 が聞けなかった」と全党をバッサは「安保法制で 9 条の限界まで議 論した。変えない。国防軍も否定 まずで生活の山本参院議 です」。 員が安倍政治を大批判。他方、改 田原さんから「どこを変えた 革の荒井さんは一定評価。ただし保守を皮肉る自民議員 : 「憲法改正は時期尚早ーとも言っ い ?. と聞かれた田村さん、「た てた。 後半のテ 1 マは即応予備自衛官とえば 102 条 ( 憲法尊重擁護義 朝 続く討論のテロップは「各党にが勤務する当店注目の「安全保務 ) 」と返答し、四面楚歌に。続 見 ズバリ聞く ! 」だったけど、どの障」。三浦さんが共産党を「自衛けて「どういう連中が草案を作っを 党もズバリ言わず。分析や評論、隊を何年かけて廃止するのか , たの ? 」 ( 田原 ) と聞かれ「保守冖 「自衛隊員も見ている番組なの的なエッジの効いた方々ですね」嘲 説明や釈明ばっかだった。 自公側の席には三浦瑠麗さんで」「自衛隊員に何を望むのか」と返答し、スタジオは爆笑に。その ( 東京大学講師 ) も出演。共産党と追及。田原さんが「憲法違反でうか、保守って、自民党内でも番 セ の宮本代議士を鋭く追及し、田原も活用するって、自衛隊員にかわ組内でも笑われ者なんだ : ・ 9 ( フリークの娘・セイコ ) 引 さんが「中小企業が大きくなったいそうだよ」と総括し、共産党は ( 田原 ) 。

10. 正論 2016年9月号

さらにその数日後、この九・一一テロの解釈をめぐっ う立場からすると ( 退歩というよりも ) 混迷袞弱とみえて ならないのだが、 て「発言者」が少し大がかりな座談会を催した。そこで ともかくその大変革には大がかりなテ 3 口が随伴する」と考えるのを過激と呼ぶなら、この老人、 ( 日露戦争で「非戦論」とい、 2 小教的境地をとった ) 内村鑑 三の無教会派キリスト教に造詣の深い新保祐司氏が「あ たしかに ( 考え方の上で ) 過激でなかったことは、二十二 のビン・ラディンとイエス・キリストの類似という ( 老歳になると同時に左翼に属することを辞めて以来、もっ 人の ) 発言は大いに示唆的であった」と発言した。この老と正確には三十三歳で連合赤軍事件をみてからずっと、 一度もなかった、ということだけである。既存の法律か 人、テ 1 プ起こしの段階で、この新保氏の指摘を、あちこ ちからの余計な反発を招きそうだと予想して、一度は削 ら刑罰を受けることを覚悟の上で、既存の法律体系を破 ろうかと思った。しかし、観光バス内でのこととはいえ壊するのが、軽率や野蛮の咎に当たる場合が少なくない のは確かだ。しかし、既存の法律を操る者たちが被支配の 本気でいったことは確かなので、そのままにしておいた。 それからである、西尾幹二氏と入江隆則氏が本誌で 立場にいる者たちにたいし専横や抑圧に狂奔するなら、 たとえばイラク侵略の如き「国家テロ」をアメリカが仕掛 「元左翼過激派の許し難きテロ弁護」といった調子の老人 けるなら、それに「不法の武力行使」としてのテロで対 批判を長々と展開したのは。さらに、各種メディアから 九・一一テロを否定しないという理由でこの老人はそれ抗する者たちが出てくるのはむしろ自然の成り行きだ。 まで以上にパ 1 ジされ出した。西尾氏に至っては、「この そういえば、田原総一朗氏が「朝日系 ( 左翼 ) から嫌 われている上に、今度の件で産経系 ( 反左翼 ) からも嫌 男、イエス・キリストと会ったこともないのに、ビン・ラ われるとは、こいつ、なかなか豪気ともいえるが、存在 ディンと似ているとは何事ぞ」と怒っていた。こんな訳の わからぬ言動で満ちているメディア界に向かって、この 抹消の危機に入るのではないか」と ( どうやら好意的な 一言でいえば 老人の反論がどんなものであったか、 意味合いで ) 評しているとある編集者から聞いた。それ はその通りだが、この男にとっては、そんな場所取り 「近代主義的な意味での革命はすべてテロで、そのテロに よって文明の進歩とやらがもたらされたのだとみなして気を遣うようなやり方は、自分の性に合っていないの で、そんなことをしてしまうと、以後、文章を書く気力 きた連中に、アルカイ 1 ダ・テロを批判する資格はない」 が失せてしまうことのほうが心配なのであった。 という趣旨だったのだがーー詳しくは繰り返さない。 ここでいっておきたいのは、「文明は、それが進歩か退 いずれにせよ、九・一一テロ問題はこの老人の頑張り 歩かは価値判断によることで、というより近代主義を疑所であり、たとえ一人になっても、アメリカの国家テロ