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検索対象: シナリオ 2016年6月号
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1. シナリオ 2016年6月号

の子孫より、現世のおのれを取るというのとき「 ( 気づいて ) いい加減にしなさいっ ! 」幾右衛門「 ( 取り ) 菅原屋、一貫文。寿内さん、 か、この恥知らすめ ! 」 大音声で一喝する、とき。固まる一同。 一一貫と四百文」 幾右衛門「こら ! 喧嘩はつつしめと言うてとき「悪いのは御上でしよ。御上のせいで私寿内「そんなに呑んどらんぞ ! 」 おろうが ! 」 らが争うなんて、そんな馬鹿な話があるも十兵衛「そうか。銭もないのに、皆よく呑める 篤平治「 ( 入ってきて ) そうです ! つつし んですか ! 」 なあと感心してたんだが、そうか、ツケか」 みましよう。ね。つつしみましよう ! 」 新四郎、息子を抱き寄せ、 幾右衛門「善八さんは : : こりや多いな。四 皆を引きはがし、座らせる。 新四郎「私にはとても : : : 家族を路頭に迷わ貫と五百文」 篤平治「浅野屋さんから、さらに五百貫の申すような真似は、できませぬ : : : どうかも善八「あ、いま、あいにく持ち合わせが : : : 」 し出がありました」 う、勘弁してください : 篤平治「しかしこれは、たいした額だ : 仲内「なんと ! 」 と」「・ : : ・、も、ついい わたしが出します ! 」 くらあります ? 」 寿内「それでは、店は : : : 浅野屋は、潰れて一同「え ? 」 伝五郎「ツケの他にも、今まで出し渋ってた しまうぞ」 連中が、小銭ならばと : : : 」 篤平治「もとより、潰す覚悟だったようですー 同・表 利兵衛「合わせれば、五十貫文にはなりまさ一 上町の方から、天秤棒をかついだ伝五郎 あ」 篤平治「ということで、残りは、三百貫文 と利兵衛ら人足たちが来る。担いでいる 字幕「五十貫文Ⅱ三百万円』 のは : : : 大量の銭。 篤平治「これで残り、二百五十貫文か : : : 」 一同の目が、新四郎に集まる。 下町の方からは、同じように大量の銭を 新四郎「・ : ・ ( 、つつむく ) , 詰めこんだ背負子を背負った平八らが 穀田屋・帳場 ( 数日後の昼 ) 寿内「あんた、いまの話を聞いておったの やってくる。 ばつんと座っている十三郎。その手には、 か ! 」 幾右衛門「おい、おい何だそれは」 手紙。 また新四郎につかみかかる寿内。 とき「ツケですよ、うちの」 音右衛門の声「父上の大願のお話、二百五十 新四郎「聞いておりました ! 聞いておりま篤平治「こんなに」 貫文ほど足らぬと聞き、仙台の三浦屋さん したが・ : ・ : 」 とき「いっか、いっかと思ってたら六年ですからお借りしました」 一同、揉み合いになる。 よ ! まったく、ノロマなんだから。いっ 十三郎の前には、一一百五十貫文を借りた いつの間にか戸口に、泣いている子供が になったら千両集まるの ! 」 証文。 いる 平八「旦那様方もお願いします ! 」 音右衛門の声「私は、三浦屋さんで奉公させ 新四郎の、幼い一人息子だ。 とッケをまとめた紙片を差し出す平八。 ていただきます。その十年分の給金を前借 4

2. シナリオ 2016年6月号

いうのが今回ドラマの軸の部分に入ってい た。動物がいつばい住んでる町って、それ作ってるんじゃないかと思う。相当選び抜 る。動物が喋る映画ってこれまでもたくさ これまで 自体はそんなに魅力でもない。 かれた精鋭集団で、失敗しちゃったら、す んあったと思うんですけど、そういう視点 のディズニーの映画でもいろんな動物が出 ぐ切っていくのか知らないけど ( 笑 ) 。人 が今回入ったというのは実はもの凄いアイ てきたじゃないかとそういうなかで、今、選とその舵取りを、プロデューサーなり脚 ディアで、お客さんは気づかないかもしれ 本のチーフなりが、ちゃんとやってるとい やる意義のある切り口を見つけてきた。一 、つことなんじゃないでしよ、つか ないけど、リサーチに一年間かけた価値は年間のリサーチの成果でもあるだろうし、 ストーリー・ トラストの中で出てきたいろ あると思った。 高橋監督よりプロデューサーの力を感じ んなアイディアもあるだろうし。 る映画 ディズニー映画の新しさを感じ 高橋 た。実はディズニー映画苦手だったんです高橋インタビューのときにも言いました 小林「ズートピア」でいろんな動物たち けど、それだけ多くの人が関わって、 が共存しているというのはアメリカの象徴 よ。勧善懲悪で。ディズニーランドは好き でもあるし、映画自体もいろんな人が集 なんですけど ( 笑 ) 。でも、「アナと雪の女ろんな意見を言い合うことで、軸がぶれ ていくみたいなことはないのか日本の感 まって、監督も複数いて、脚本家も複数い 王』がすごくヒットして、評判を聞いてた ら、どうやら悪者を作ってないらしいあ覚だととっちらかって、話がまとまらない て、みんなで一つのものを作るという映画一 んじゃないかみたいな。それだけの人が関 れ、変ったのかなと思ってたところに『べ の作り方と合致しているのも面白い あと、主人公が途中で代わったというの一 わって、どう舵をきってまとめていくのか イマックス』もあり、今回試写を観に行っ も、ビックリしたポイントでした。中盤ま て、ほんとにびつくりした。ディズニーか 聞いてみたら、「自然とそうなる」みたいな ではキツネのニックのほうが主人公でした びつくりしました。それは現場の雰囲気が これを作ったのかという衝撃がありました。 というのは、へえ 5 と思いましたね。原作 子供も楽しめるといいながら、現代への問 いいのか、何なんでしようね 当日、詳しくは聞けなかったんだけ物だったりすると、制作途中で主人公が代 題提起となるテーマを扱ってる。恐怖で心 わってしまうなんてありえないんですけど、 を縛るとい、つところがありましたけど、ま ど、どういう基準で脚本家たちやスタッフ さに仮想の敵を作って、やっちまえ ! みを編成しているのかそれが大事なんじや相当大胆な変更ですよね。日本の悪口みた いになっちゃいますが ( 笑 ) 、例えば一年 たいな。戦争が起こる最初のスタート、そ ないかと思って。「俺が」「俺が」的な人は 間かけたプロジェクトで、ここまで時間を ういう根源的なことというか心に相当切り最初から選ばれないんじゃないでしようか 込んでるなというのは凄く感じました。で かけて構成とかプロットを練ってきたから ( 笑 ) 。何本も作っていく中でふるいにかけ られて、こ、つい、つジャンルで困ったときに、 には、これを捨てるなんて絶対ありえない、 すから皆に観ることを勧めてます この人だったらアイディア出してくれる、 ということになるわけです。後から入って 小林この企画を情報で知ったときは、ど 、ついう見方をしたらいいのか分からなかっ きた人が言ってもなかなか聞いてもらえな みたいに確実な人を呼んできてチームを

3. シナリオ 2016年6月号

十三郎「・ : ・ : 」 音右衛門「 : きょ「遊んでいるようで、あなたはちゃんと 甚内「父は、この銭を御上に上納し、伝馬の 聞いていました」 御役目を減らして頂けるよう、お願いをす幾右衛門「しかし、そういうことは教えてく甚内「だから今、父上と同じことをしている るつもりでした」 れねば。皆に何と言われておったか、知っ ではありませんか」 十三郎・篤平治・幾右衛門「 ! 」 とるじやろ、つ」 十三郎「 : : : 」 甚内「ケチ、しみったれ、守銭奴、ですか」 篤平治、奮然と立ち上がり、出て行く。 先代甚内、臨終の場。 床に伏している先代甚内を、家族が囲ん 臨終の先代甚内 仲内の家・玄関 でいる 先代甚内「この事は決して他所に漏れぬよ、つ 奥から寝ほけ顔で出てくる仲内。 先代甚内「わしが駄目なら、おまえが : : : 」 にせよ。どのような謗りを受けようとも、 三和土には、篤平治が待っていた 気にするでない。誰かに誉められたくて、篤平治「今すぐ、お出で願いたい」 甚内「私が駄目なら私の子が : : : 何代にわ やるものではない」 たってもよいから、この志を捨てず、宿場 中町 5 上町の通り が立ち行くように、この銭を使ってほしい、甚内「父の教えです。冥加訓と申す書物で、 どんどん歩いてくる篤平治。ついていく と : 陽明学の流れを組んでおります。幼き頃に 仲内。 十三郎「そんなことは、一言も聞いておら くどいほど読み聞かされました」 仲内「こんな夜更けに、何事ですか」 ん ! 」 篤平治「 : : : ( 答えない ) 」 きょ「それも、あの人の意向です。あなた 回想。書物「冥加訓』を読む先代甚内 仲内「もしや、例のことをお仲間に話したの が継いだ穀田屋を、巻き添えにするなと先代甚内「決して恩に着せず、報いを求める ですか」 ことなく、行、つべきことを行い・ 篤平治「話してはいないが、いずれバレます」 十三郎「・ : 真面目に聞く幼い甚内と、ふざけている仲内「それはそうだが : : : しかし、再度嘆願 甚内「しかし、何も知らないはすの兄様の方 十三郎 するにせよ、ある程度間を置かねば、御上 が、かえって宿場の救済に奔走し、穀田屋 に ~ 礼とい、つことに : さんを潰す勢いだ」 十三郎「しかし、私はちっとも聞いていなかっ篤平治「あんたは、どっちを向いて仕事をし きょ「 ( 笑って ) 親子というものは、よく似た」 てるんだ ! 」 るものですね」 きょ「聞いていたのですよ」 仲内「・ : 十三郎「 ? 」 篤平治「苗字だの帯刀だのを許されて、侍に 4

4. シナリオ 2016年6月号

JWGB 幸 いといけないんですよね。 ないですけど、「この人は俺って言うキャラだ 演出部記録課 けど、ここだけ僕になってるのはわざとです シンプルな話ならいいんですけど、 他のパートは助手さんがっきますけど、み ちょっと複雑な話だと困る。あと回想シーンが なさんの場合は ? か」って監督に聞いたら「わざとだ」って仰っ ほとんどっかないですね。 て。で、現場では俳優さんのほうが気を遣って、入ってきて違う人が演じる場合。これ名前が出河島 入っていきなりそのパートの責任者にな てないとほとんど分からない。テロップだらけ 「俺」に直してる。あ、これはきっと今までずつ る になっちゃ、つ。それはちょっと最悪だなと田 5 と「俺」って言ってるからなんだな、って。監 幸縁 でも演出部だと思っているから。一人の いながら、無理やり名前を呼ばせるのもなあっ 督に確認したら「いいよそれで」って「俺」に戻っ ートだけど、演出部の一員という感覚です。 て。も、つ少しさりげなく名前を呼んでもらえる たり。そんな細かいこととか考えながら読みま 赤澤 私も「演出部記録課」って感じ。 すね。 といいかなって ( 笑 ) 。 だからこそ監督や助監督に口を出して 幸縁 幸縁さんの台本の読み方は ? あと名前がいつばい出てくるのを、どこ ートにはロ出さない。 いくわけだから。違うパ 困ったことに、習慣で時間かかっちゃう で言わせるんだとか。全然この人の名前出てき てないから誰かわかんないとか んです。もっとさらっと読みたいのに、映像河島 とにかく現場では一人なんで。やつばり 最近多い。前は必ずこの人が誰かという 化して人が歩いたりするのを想像しちゃうか協会を存続させなきゃいけないなっていうの はそこですね。大変です。 のをちゃんと「〇〇さん」ってドラマの中で紹ら、普通のサスペンス小説読んでも、ものす ) 」 皆さんはどうやって協会に入ったんです く時間がかかる。まず一回目は尺計ったりしな 介させるというのはルールみたいにあった。今 いけど、読んだらその印象、イメージは最後ま は台詞の前に名前が書いてあるだけ。誰の名前 師匠が「入りなさい」と ( 笑 ) 。 も出てこなくて、突然携帯に電話がかかってきでキープする。その後、するっと読めればそれ はたぶんいいホンだと田 5 うけど、メモだらけに 松竹のスタッフルームの横を歩いてい て名前が出る。 なっちゃうのは結構キッい。昔、読んでて「 ? 」たら「どうしてあなたは入らないの ? 」って。 河島誰だそれ、って。 私はスクリプターは全員協会に入るも 幸縁 何とかしてよと思って、前の方で無理やが頭にピンピン出ちゃって止まっちゃって「こ サルがあると、監督のホンで尺出せっていうんですか」って言ったんだと勘違いしていました : り名前呼ばせたり。リ、ー 私は当時円谷プロで三人でシリーズを が「これどこで名前言ってる ? 」って直せるん ことがある ( 笑 ) 。 回してやってたんで、そのうちの一人に勧誘さ だけど、そ、つじゃないと誰の名前も聞かないま河島あとアクションとかね。読めない 生理的に流れていかない、ついていかなれて、じや入らなきやと。もちろん一人のパ ま終わっちゃうってのが正直ある ( 笑 ) 。それ トとい、つこともあったし、私には師匠がいない いと、感情入れてる分だけ止まっちゃう。前に は最近配慮に欠けているかな。 耳が痛いです ( 笑 ) 。それは悩むんですよね。戻ってもよくわからなかったり。あとは何をので。いろんな人の話も聞きたかったし、知り たかったし、これは入ろうと思って。 実生活では確かにそうそう呼ぶもん言いたいのかなとか、書いてないけどこのシー じゃないかもしれないけど。 ンが大事なんだなっていうイメージは自分のーー実際入ってみて、どうでした ? 横のつながりができてよかったです。 そこが嘘と本当の皮膜で、脚本家がやらな 中で作っていきます。 赤澤 幸縁 幸河 赤澤

5. シナリオ 2016年6月号

刺青殺人事件 微生物のカで 人とペットに安心・安全消臭 曇くだけ簡単 ! 粉末タイフ 迷路へ追い込む為の小細工なんだよそれ研三「えゝツ」 早川「遠山の金さんとか一心太助とか時 にねえ犯人は異常神経の持主だから・ : その店内 代劇映画でよく入墨の場面が出るだろう 仮本部となっていてすでに先発の課員研三「最上久が 達が詰めている 早川「二人三人と続けて人殺しをして平気で 更に取り出して並べる一葉ーー「歌麿を いられるなんてどう考えたって気違い 報告を聞く英一郎 めぐる女達」のスチール歌麿描く美女 じゃないかね本人は狂ってないつもりで 研三手記に書き入れの手をとめて頭を の背中の山姥と金太郎の入墨の場面 も狂ってる証拠には飛んでもないところ 振る で馬鹿な間違いをしでかしている入墨研早川「墨にニスを混ぜて素肌の上にかく映画 研三「まだ僕には解けません」 のあれと同じものなんだ本当に肌に墨を 究家の僕を容疑者にする計画で居りながら 早川「もう直ぐ判るネガとポジが反転され その僕の眼の前にこんな子供だましに似た入れて彫ったものではない全身の図柄の て黒が白に白が黒に : : : 」 場合には入墨師は大事を取ってその下絵を 研三「ねえ先生あの朝どこの誰からともな物をーー」 一度全身へかいて見るその下絵に過ぎな 差出した写真破損乾板からコッピーし く知れす現場にか、って来た電話わざわ いのだよこの綱手姫は : : : 」 た綱手姫の入墨写真 ざ壊して棄て、おいた写真の乾板最後に 刑事が一人慌しく走り込んで英一郎に は常太郎の皮膚まで剥いだ : : いくらあア早川「僕はこれを見た瞬間にこの事件の真 耳語 リバイのためにもせよそんなにまでせん相の一端を即座に見抜いたのだ」 英一郎聞いて早川を顧み けりゃならん必要があるでしようか」 研三「え ? 」 英一郎「来ました」 早川「それらはみんな捜査方針を混乱させ早川「これは君入墨の写真じゃないよ」 と た 見 を す こ シ ばた 時すて 文告せ 注報さ 臭いのお悩みを解決します ! 強力安心 ' 誚見安全 ヘット・カビの バイオ消臭剤 楽天 通算 148 週 ランキング Q 検索 バイオミックス バイオ消臭剤通販専門店禦・ 嘛境ショッフ コヒタセロイ http://www rakuten. co. jp/kohitaseroi/ 回議 ■お問い合わせ B0120 ー 4321 ー 80 ( 平日 8 : 00 ~ 16 : 0 の

6. シナリオ 2016年6月号

刺青殺人事件 その一軒「牡丹」と看板の出ている店の の板敷きでそれに続いて二間ほど座 敷がある 横露地 拡げた朝刊 お兼先導して入る デカデカと「下北沢の惨劇刺青殺人事 柳湯の内儀のお兼がそこに研三を待た 流し元では簡単服を着た薄汚ない小 件」の大見出し絹枝の写真新聞を見 せておいて露地へ消える 女が鼻唄で流行歌をうたいながらゴソゴ ているのは番台のお兼で「おや ? ーと見 ( 以上のコースを辿って行く二人の描写 ソやっている 入った次の瞬間「あんた ! お前さーん」 の上にカプせる解説の声 ) と前後も考えず番台から飛降りて男湯 「この当時はまだ入墨は法律で禁せられて 上眼づかいに三白眼でジロリと研三を見 る へ おりましただから此の禁制を犯して入 お兼奥の間の閉切った襖の外に立って 新聞を手に男湯の硝子戸を明けたお兼 墨をしようとする連中は所謂ヤクザ者や お兼「あんた大変 ! 彫常さんの妹が殺さ 犯罪者の類が多いのでそれらを相手に法お兼「常さんちょっと覗かせて貰いますよ」 れてサーあんた常さんから何も聞いてな網をくゞって生業とする入墨師は警察関係 「あ、」とか「うむ」とか云ったらし かったの ? いくゞもった男の返事 を恐れ禅ることが甚しく彫常こと野村 お兼少し明けて研三を招く 云いかけて研三の存在に気附き 常太郎が復員後その所在を明らかにしな はツとして口を噤む かったのもこうした事情に基づいてのこ 勝造ザプリと湯を流して 部屋には黒い油紙を敷き詰めた上に とだったのです」 座布団を数枚縦に並べて若い女が打伏せ 勝造「お粗末 ! 」 待っている研三 に成り坊主枕を両手で堅く抱き締めて と桶の片附けに起っ お兼が小走りに露地の奥に姿を現して 口に手拭を咬えている 研三「勝ッあん ! 」 眼顔で招く 図柄は吉野山道行両腕から腰にかけ 勝造「へ ? て一面の桜の花をあしらった中に鼓を 研三「折入って頼みがあるんだがねー 表から這入ったところは土間 手にした静御前と狐忠信が背中一杯に 表向きの商売に見せかける為だけの一杯 描かれているが大半は筋彫だけで 渋谷駅で省線を降りる 呑み屋のお寒い調度が並べられてい る やっと一部分ポカシにか、っている 市電通りを青山の方へ暫く歩いて左へ折 右手に持った針東で左の中指と薬指に れ焼跡の中に並んでいる急造のハ お兼「新聞社関係の方って云ってあるんです ラック 挿んだ筆の墨汁をすくい取っては膚に打 から呉々もそのつもりで・ : ・ : 」 っ その中に五六軒の飲食店が軒を並べて 土間続きに調理場への狭い通路 いる 女の口から大きな息が洩れて身体が大き 暖簾を潜ってそこへ這入った所が茶の間

7. シナリオ 2016年6月号

るべく始まる、テンポよく、畳み込まれるから、この映画は面白いのである。だから、書けるのはいつのことかと一人になって、溜 シ 1 ンの連続。米兵のレイプ事件。海軍復員この脚本は素晴らしいのである。出て来る人息をついてしまった。今でもついている。た 兵姿の菅原文太演じる主役が女を助ける。そ間に皆、野望があり、強さや弱さ、ずるさがぶん、一生、溜息をついているだろう。 こから彼が主役であり、たぶん、仁義ある人ある。いわば、皆、血が通っているからこそ、 なのだろうと客は思う。それから、日本刀でどのシーンにも、まるで自分がその場に居合 この脚本の素晴らしさを一つ一つあげてい 容赦なく人を切りつける荒くれた若者たち。わせたような臨場感があり、登場人物達と一ると、きりがないが、何よりも感銘を受けた たぶん、この人達には仁義がないかもと思い、体となって緊張し、怒り、悲しみ、あるいは、のは、一つの題材に向き合う笠原さんの脚本 ピストル強盗に入る三国人に、警棒しか持た菅原文太演じる広能にじれったくなって、も家としての在り方である。この脚本集に笠原 ないゆえ、何の抵抗もできない警官たち ( 平う仁義はいい。 怒れ、爆発しろと叫びたくなさんが書かれた創作ノートがある。仁義なき 和ポケ世代であるので、この辺は戦後史を勉るのである。 戦いは実際にあった事件を元にした作品であ るが、事件というものについて、笠原さんは 強して、始めて何故かが、後に分かった ) ~ 法とはこ、つい、つことかと思っている、っちに、 余談だが、東映京都撮影所に仕事で行っこう書いている。少し長いが引用する 若者たちで組が結成されてしまう。あれよあた時、「極道の妻」などを書いた、尊敬する、 「現実の事件というものは長い年月の間の、 れよという早い展開に客も思わす、前のめり大先輩である高田宏治さんと食事をする機会しかも様々な人間関係の、殆ど無限とも言え になる があった。その時、聞かれた。「君は一作品る程の瑣末な出来事の連関の上にたっている。 そこで一服かと普通、思う。が、笠原さん、でだいたい、しつかりと何人の人間が描けそれを描くには、言わば膨大な分量のデータ が必要なのであるが、スピーディなアクショ 一服どころか客をひと時も休ませない。結成るかい ? 」その頃、「ビーバッブハイスクー と同時に内部分裂が始まる。誰が誰を裏切るル」という漫画原作の作品を脚色していたのン映画を作るのに、そこまで丹念に描くこと か、予断許さず、と言うより、想像する時間で、多少 ? いや、結構、見得もあって「まあ、は全く不可能である。それに、事実の連関を すら客に与えす、フリーマントルのスパイ月 人ぐらいは描けると思います」と答えた どこかで省略することになれば、当然事件の 説なみ、いや、それ以上の速さでハラハラドところ、「まだ、そんなもんかい。浦人以上、由来そのものを変質せざるを得ないものであ キドキの話が進んでいく。話を進ませていくしつかり描けないとだめだな」と軽くいなさる。実録と言っても実録に近いという意味で のは、数えたのだが、人近くの登場人物達れ、がつくりしたことがある。初めて読んだあり、すべて虚構であり、また、虚構にする である。その人数が一人一人、主役周辺は勿笠原さんの脚本に打ちのめされ、少しでも近のでなければ、制作にあたってプロの脚本家 論だが、映画上、端役と呼ばれる人間まで、くにと半歩半歩と進んできて十数年後、また、や監督はいらないはすである。実際には、ど しつかりと、完璧に描き分けられている。だ高田さんに打ちのめされ、思うような脚本がの程度実録に近づいて描くかというのは悩み -0

8. シナリオ 2016年6月号

て下さいと」 ましたが ? 」 篤平治「ええ、ええ。陸奥の茶が馬鹿にされ篤平治「 ( 十三郎に ) 何とかなりませぬかな」 篤平治「浅野屋 : : : ( 暗くなる ) ー るのは、都から遠いからです。ならば箔を十三郎「 ? つければよい。そうすれば伊達の殿様どこ篤平治「あなたの弟さんですよ。京で稼いだ 浅野屋・外観 ( 夜 ) 銭の半分はむしり取られました」 ろか江戸にまで名が響き : ・ 冒頭に登場した、吉岡一の大店の威容。 十三郎「弟のことは言わんで頂きたい」 甚内「増々、商売繁盛ですな」 酒造り唄が聞こえてくる。 篤平治「わかります。同じ兄弟でえらい違い 篤平治「まあ、そうなりますな」 だ。片や、御上に物申す、片や、守銭奴 甚内「それを見越してお貸ししたのです。あ 貶同・酒蔵 なたの知恵をもってすれば、この程度の利十三郎「誰も彼も、己のことしか考えておら 蔵人たちが酒造り唄を歌いながら作業を ぬのだ」 息の返済など、容易きこと」 する、活気に満ちた蔵の中。 篤平治「あ、私はそんなことありませんよ 浅野屋甚内 ( 当代 ) の声「帰られたと聞きま篤平治「・ : 実際私の茶にしたって、いずれ必ずこの宿 してな」 4 一 場の名産になりますからな」 煮売り屋「しま屋』・前 ( 夜 ) 十三郎「めいさん : : : 」 トボトボと歩いてくる篤平治。 同・奥の間 篤平治「何の名産もなければ、宿場はすたる一 呼ばれた篤平治の前に、浅野屋の主・当客「 ( 出てきて ) じゃ、ツケといて」 一方です」 代の甚内 ( れ・冒頭の先代甚内の子。実 同・中 十三郎「 : : : そこまでお考えだったか」 は十三郎の実弟 ) 。 篤平治「そうなんです。それが言いたかった その甚内に : : : 字幕『造り酒屋・質屋女主人・とき ( 肪 ) 「あいよう」 んです。考えがないわけではないんですー 中を覗く篤平治。奥の席に、十三郎がいる 浅野屋甚内』。 酒と肴を持ってくる、とき。 篤平治「 ( 入っていき ) おかみさん、お酒くだ 篤平治「さすが浅野屋さん、お耳が早い」 さい 篤平治「しかしですね、それには新たに茶の と銭の東や、一分銀を差し出す。 とき「あら菅原屋さん、おかえりなさい。若木を育てねばならないし畑も今の倍にはし る篤平治「ひとます、利息だけですが」 たいなのにこ、つ利息か高いとど、つにもな いお嫁さんもらったんだって ? 」 ) 」甚内「 : : : ( 笑顔で、金を勘定する ) 」 らない。穀田屋さん。あなた直訴なんかす 息篤平治「しかし、なんとかなりませぬかな。篤平治「 ( ため息をつき ) 狭い町ですね」 利 ・ ( ジロリと、酔眼で篤平治を見るより、貯め込んだ銭を宿場に落とすよう、 畑を増やそうにも、こう利息がきつくては十三郎「・ 殿 弟さんに : 篤平治、急に黙り込む。 十三郎とは違う卓に座る篤平治。他に客 甚内「お公家様から茶の命銘を賜ったと聞き

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父と向かいあって、幼い十三郎と、甚内。私の名前は外して下さい。決して名を売り てるんだ。それでも出せぬか」 十三郎の声「論語だか孔子だか今もって分か たいわけではありませぬからな」 また客が来る。対応する番頭。 らぬが、七つの私にはさつばりじゃった」 茶畑をどんどん下りていく十三郎。 善八「うちの身代では、二百貫でも : : : 」 退屈そうに聞いていた十三郎、席を立ち、篤平治「 : ・ 幾右衛門「だったら、なんで出すなんて言っ 庭へ。 たんだ」 十三郎の声「だが、弟は違った。わずか四つ 客が続々と入ってくる。 か五つだというのに、そりゃあ、よう聞い 善八「いや、それが : : : 勘違い、としか : ・ ておった」 幾右衛門「だから、何をどう勘違いしたんだ」 おとなしく父の教えを聞く、幼い甚内の 中町の通り ( 昼 ) 篤平治「肝煎。ここは帰りましよう。無理矢 賢そうな顔。 のんびり歩いてくる十兵衛。 理というのも : ・・ : 」 すれ違う人々が深々とお辞儀していく。 番頭「旦那様 ! すいません、お店の方を ! 」 2 元の篤平治の茶畑 ( タ ) 両手を合わせて拝む老婆もいる 店内はいつのまにか大繁盛している。 十三郎「父は、私を見限ったのだ。家の身代十兵衛「 : ・ ・ ( わけが分からないが、悪い気善八「 : : : ( 呆然 ) 」 を守るために、賢い弟の方を選んだのだ」 はしない ) 」 客の一人「善八さん ! 見直したぞ ! 」 篤平治「そうとも言い切れぬでしように」 別の客「 ( 魚をかかげ ) これ食って、精つけて一 十三郎「弟は、父に似ておる。頭が良い。商善八の店・店内 ( 数日後の昼 ) くれ ! 」 売も上手い。守銭奴で、しみったれたとこ 帳場にうなだれて座っている善八。 篤平治「 ( ため息をつき ) また話が漏れまし ろまで : : : 私は同じ造り酒屋に養子に来て、 篤平治と幾右衛門が来ていて、 たな」 実家に負けぬよう頑張ってはきたが、しか幾右衛門「勘違いって、何をどう勘違いした幾右衛門「困ったもんだ。金を出したものが し : : : 簡単に一千貫文も出されては、とて んだ ? 」 敬われ、出さない者が白い眼で見られとる もかなわん」 善八「 : : : 何とかせねばならんのう」 篤平治「それとこれとは話が違う」 幾右衛門「困ったのう。今さら取り下げるな善八「あの : : : 出します。一一百貫。出させて 十三郎「いや、そうなのだ。私には、何もない」 どと言われても : ・・ : ようやく目処が立ちそ ください ! 」 篤平治「十三郎さん : : : あんたよもや、父や うな時に・ 弟を見返すために、この話を始めたわけで 客が来たのを番頭が対応する 龍泉院・奥の一室 ( さらに数日後の昼 ) はあるまいな ? 」 幾右衛門「あなたの所と早坂屋のところは、 瑞芝和尚 ( ) に寄進の銭を収めている 十三郎「五百貫はそのままでよい。しかし、 一律五百貫文という決まり事さえ免除され 寿内。 ■タイトル「その翌年。明和七年 ( 一七七〇年 ) 」 っ 4

10. シナリオ 2016年6月号

井上淳一 「優しさはき弱さの言い訳」だったのかもしれないけれど ( 脚本家・映画監督 ) 瀬尾みつるさんに最後に一目会うためというより、一人残さ ん一番安いものなのだろう、その中、ミイラのようにやせ細っ た瀬尾さんがオレンジ色のトレーナーを着ている。前日の深夜 れたお母さんの顔を見るために、京都へ向かった。新幹線で京 に亡くなってから、時間足らずでの火葬。ああ、葬儀場に置 都なんて、いつ以来だろう。とにもかくにも金がなく、京都で いておく時間を最短にしたかったんだと気づく。すべてはお金。 撮影した「戦争と一人の女』の準備から舞台挨拶に至るまで、 そこまでだったとは : 移動はすべて夜行バス。撮影中を除けば、宿泊はすべて瀬尾さ 瀬尾さんとはシナリオ作家協会の忘年会や理事会で会うだけ んがお母さんと暮らす小さなマンションだった。普通なら、年 下の同業者が監督になり、多少なりとも脚光を浴びれば嫉妬し の仲だったのだが、「戦争と一人の女」を京都で撮ることにな そうなものだが、瀬尾さんはいつもやさしく迎えてくれた。そ り、それを知った瀬尾さんが「ギャラはいらないからーと参 んな一人息子をお母さんは「この子はやさしいだけが取り柄加を申し出てくれた。生活は大丈夫かと頭を掠めたが、こち らも超低予算映画の貧乏所帯。渡りに船とメイキングをやっ だからー「いつになったら、モノになるのか , と嘆いていたが、 てもらうことにした。そればかりではない。僕ばかりではな 瀬尾みつるとはそういう人だった。そうやって生き、大した作 く、スタッフやキャストまでもが自宅に泊めてもらうわ、一泊 品も残せず、借金に借金を重ね、貧困に喘いで、亡くなった。 通夜、葬儀は本人の意志でやらないと聞いていたが、遺体が 2 5 00 円のゲストハウスに泊まって撮影していた我々の朝食 置かれた葬儀場に行って、それが理由でないことを知った。遺の準備を当時別歳だったお母さんにやってもらうわ、ボラン ティアスタッフを何人も瀬尾さんが講師をやっていた京都造形 影すらなく、花瓶に盛られた小さな花でさえも「これはこちら 芸術大学から連れてきてもらうわで、大活躍してもらった。 の厚意で用意しました」と葬儀社の人が言っている。棺もたぶ 追悼・瀬尾みつる 130 ー