警視庁 - みる会図書館


検索対象: シナリオ 2016年6月号
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1. シナリオ 2016年6月号

刺青殺人事件 しづかに瞼を開いて研三を見た研三の研三「よく呑み込めませんが : んだからこそ常太郎はそのルートを辿っ 頬に光り滴るものを見た 英一郎が帰って来て て同病患者である目当ての人物を簡単に探 間 英一郎「常太郎が常習的な麻酔薬中毒ーー・モ し当てたのです決して無駄にはなりませ 早川「 : : : 絹枝が研三君に送った三幅対の写ヒ中患者であることが x x x x の結果証んお願いします , 真を兄の常太郎が一目見て即座に事件明されました」 ( 解説の声 ) 「阿片窟の追究林澄江の捜索を依頼した の真相を見破った以上解決の鍵はその入早川「それだ ! どうして今までそれに気が つかなかったろうそれさえ判っていれば 後早川博士は研三を伴って東劇へ 墨の写真にある筈だ」 東劇を辞去すると長駆京浜国道を疾駆して 犯行は未然に防げたかも : : : 」 研三「はい」 卓を叩いて立ち上る早川それまでの死横浜へ 早川「そして短時日の間に目ざす相手を探 し当てた」 灰を思わせる面貌に鬼気に似た精気が本牧のサン・エスホテルへ 漲って そこから再び国道を引き返して常太郎の屍 研三「はい」 早川「僕には恐ろしいこの事件の輪廓は朧げ早川「行きましよう警視庁へ ! 警視庁の体の発見された代々木の現場へ 解説の声に従って描写の数場面 ( ストッ ながら掴めているのだが常太郎がその相全能力を発動してこの兇悪犯罪者を駆り出 さんけりや : : : 及ばすながらお手助けしま プウォッチの大写を併用したら如何 ) 手を何処で発見したか : : : それが判らん それさえ突きとめられたら : すどうかそちらでも協力して下さい彼 やっ 電話がか、って来たとの報らせに英一 奴 ! 一切の嫌疑をこの早川に向けて犯跡代々木の現場に近づく自動車の内 を昏まそうとたくらみおった ! そうはさ早川「いくら ? 何分か、ったね ? 郎起って行く 早川しづかに せないよ ! 」 研三「〇〇〇分」 いやいや 早川「〇〇〇分だねよろしい 早川「僕の立て、いる仮説は恐らく間違いあ 車は停めるに及ばないこれから真ッ直ぐ 疾駆する自動車の中 るまいと信じるが例えばだねーー . 」 松下兄弟を両脇に意気軒昂たる早川 警視庁へ帰ってくれ給え」 早川例の問題の写真を取り上げて 早川「この事件には写真の陰画と陽画ネガ早川「どうかまず第一に全警視庁管内の阿片 とポジの理論が巧みに応用されているのだ窟ーーー乃至類似の麻薬取引の疑いのある警視庁の建物 松下の部屋に急ぎ入る早川と研三 つまり我々は犯人の巧妙な技巧に眼を眩場所を虱潰しに洗いあげて林澄江と名乗 英一郎待ちかねたように迎えて されて黒を白とし白を黒として眺めて るーーー絹枝の写真に瓜一一つの女を探して下 しいます必すいます絹枝も常太郎英一郎「早川先生 ( ※早川さんが先生に変っ いるのだ一旦陰画と陽画が反転すれば初さ、 も兄妹揃って麻薬中毒患者に相違ありませ ている ) 恐れ入りました麻薬常習者の連 めて真相が明らかになって来る訳なんだ」 107 ー

2. シナリオ 2016年6月号

刺青殺人事件 指紋を残すような馬鹿者にこんな企画が出 それを手にしている自動車の内の英一郎英一郎「ふン : : : それで最上久とお前との学 来るものですか ( 解説の声 ) 「早川博士の指紋も研三のそれ校関係は ? その入墨の秘密に就いて今日こそ打明ける も現場に遺された四つの指紋には該当し研三「中学の先輩で : : : 確か大学では応用化 学をやった筈ですそれで兄貴の会社でも からと呼び出しをかけたその上に刺青の研なかったでは誰の指紋だ ? 」 ・ : 化学工場の設計なんかを手伝い自分で 究と刺青標本の蒐集にかけては我れ人とも 沈痛に考え込んでいる同乗している研 にマニアたる事を認めている私とその医学 三と課員 は荻窪に買うたアトリエを実験室に改造し て何やら研究をやってるんだって云っ 上の弟子たる松下君しかもその研三君は てました」 警視庁捜査第一課長たるあなたの弟さんだ 英一郎「最近お前との交際は ? 」 犯人はそれを知っていてちゃンとそれま で計算に入れた上でその目の前からその (O ・ =) 研三「セルバンの酒場でちょいちょい お目当ての入墨の胴体をこれ見よがしに持 英一郎「お前も入墨夫人をめぐる男達のナム ハア・エックスか ? 」 ち去ったのだフ、、フ、、・ : : ・ 引警視庁の玄関を入る松下の一行 頭に繃帯した最上久 研三「腐るなア僕アそんな・ : 英一郎「・ : 宿酔と負傷で多少まだフラつき気味の足英一郎「俺だって腐るぜ捜査課長の弟が と消えた煙草をほいと棄てると バラバラ事件の連累者では : : : 」 早川「松下君 ! 」 取りで出て来かけて研三とばったり 指紋係が馳け込んで来る 早川フィと起っ 最上「よう松下君」 指紋係「課長ありましたツ案外簡単に見 早川「これが早川の指紋一ッくらいで解決研三「最上さん ! どうしました ? 」 つかりましたよ臼井良吉この二月に横 つくものならーー結構 ! お役に立たせて最上「いやア : : : 昨夜銀座で酔ッ払ってネ 浜の刑務所から出て来ています」 頂きますよ」 与太者相手に武勇伝を実演して 指紋カードとそれに貼付の臼井の写真 一晩こ、の留置場へ御厄介ッて始末で さっさと部屋へ上って指紋係の前へ繃 記載要項に眼を走らせて サ醜態々々 ! ひどくやられたと見えて 帯したま、の手をグイと突きつける まだズキンズキンする : ・ 英一郎「ふーむ ! 」 と緊張する英一郎 8 卓上のブサーー釦を押す英一郎の指 英一郎指紋係に 英一郎「外の分も急いで ! 」 捺される早川の指紋 何種類もの指紋採集紙 捜査課 英一郎書類から書類に忙しく眼を曝し ながら研三に 自動車警視庁の前へ ほか

3. シナリオ 2016年6月号

6 月シナリオ 8 週間講座 朝の部 「僕のヤバイ妻」 「奇跡の人」 「不機嫌な果実」 「最後のレストラン」 (CX) (NHKBSI レミアム ) ( テレヒ朝日 ) (NHKBS プ レミアム ) 「警視庁捜査 1 課 9 係」 ( テレビ朝日 ) 「破裂」 (NHK) 黒岩勉 岡田惠和 小山正太清水友佳子 谷岡由紀子 真部千晶・大川俊道・保正和之 浜田秀哉 出身ライターの方々が手掛けています。 シナリオの基礎技術こそがプロをうみます。 6 月 17 日 ( 金ト 8 月 5 日 ( 金 ) 毎週金曜日 ( 全 8 回・週 1 回 ) 昼の部午後 1 時半 ~ 3 時半 / 夜の部午後 5 時半 ~ 7 時半 6 月 18 日 ( 土ト 8 月 6 日 ( 土 ) 毎週土曜日 ( 全 8 回・週 1 回 ) 朝の部午前 10 時半 ~ 12 時半 ☆欠席の場合は、フォローシステムがあります。 ☆お試しシナリオワークショップ 金曜コース 土曜コース 会場 6 月 7 ・ 10 ・ 11 日開催ご予約下さい。 シナリオ・センター青山教室 ( 地下鉄銀座線・千代田線・半蔵門線「表参道」駅・下車 3 分 ) 受講料入学金 3 , 000 円授業料 22 , 000 円計 25 , 000 円 ( 教材費・税込 ) ※お問い合わせは、 URL:http://www.scenario. CO. jp メー丿レ scenario@scenario. CO. jp 〒 107 ー 0061 東京都港区北青山 3 ー 15 ー 14 シナリオ・センター S 係へ。 TEL 03 ー 3407 ー 6936 FAX 03 ー 3407 ー 6946 シナリオを シナリオ・センター 学びたい人のための 青山・表参道

4. シナリオ 2016年6月号

研三じりじりして ※以上早川の声による解説に併って描研三「先生じゃその疑問は一応後廻しに町角で刑事が手を挙げる 写さるべき状景は逐一縷述に堪えないのするとしまして : : : ではなぜ犯人はあ 自動車停る で省略しますこれは精密なコンティ の晩から翌朝へかけて我々ーー・先生に私 刑事走り寄って ニュイティーを必要とする領域でもあり それに支配人の稲沢を何とか彼とか理由刑事「現場から連絡がありまして : : : 河畑京 ますので を作ってまでわざわざ兇行の現場へ呼び寄子が最上の家を出ましたそうです」 せたんでしようか ? 早川「ほう ! ( と安堵に似た溜息をついて ) : い、かね君の云う通り無事に帰ったか : 場面は現実に返る ( 夕方になっている ) 早川「絹枝が : 研三たまりかねたように手を振って 殺してはならない筈のその絹枝が現に殺英一郎「先生 ! 」 研三「先生々々 ! ちょっと待って下さい されていると云う事実をだよ絹枝を知っ早川「うむ ? 」 先生は今竹藏を殺すのは財産と絹枝と一一 ている我々に確認させる必要からさ」 英一郎「犯人は覚悟を極めたらしいですね ツながら手に入れようが為だと申されまし研三「確認させる必要 ? 」 あの女を殺したところでもはや処置なし たが : : : 肝心の絹枝を殺せば目的の半分は早川「必要以上だ第一問題の入墨の胴体と観念して無事で帰してやったのでしょ 吹ッ飛んでしまう訳ですが がなくなっているとなれば嫌疑は先づ一 、つ」 早川「うムなるほどそうだ絹枝を殺し 応僕に向けられる第一一絹枝が八時四十早川「うむ : : : 」 てしまったのでは目的をなくす如何にも分まで生きていたことは隣りの妻君が認め 絹枝は殺せないうむ絹枝を殺すことは ているんだから兇行はそれ以後すなわち別の町角 出来ん ! 」 最上久が警視庁に留置されていた時間中に 張番の刑事手をあげて自動車を制す 皮肉な冷たい笑い 行われたと云うアリバイが成立する」 自動車徐行して止まり一同降車 電話 その刑事が先に立って案内して行く 研三「常太郎を殺したのは ? 」 刑事が聞いて英一郎に 早川「麻薬のルートから共犯の女を探し当て 刑事「河畑京子が唯今最上久の実験室へ入り られて危険を感じたので先手を打って常太 事件の翌日刑事が電話を借りて本庁へ ましたそうです」 郎をおびき出した例の謎の両腕の肘か 掛けていた ( その向側あたりに最上の 英一郎「よしではばつほっ仮本部へ出向く ら先に繃帯をしている女を使って : : : 多分 住宅があるつもり ) の八百屋か蕎麦屋 とするか早川先生御足労ですが : 告白するとか自首して出るからとか云い か薬屋か : : : 休養してびったり表を閉 している くるめて : : : だろうと思うこれこそ想像 の域を一歩も出ないが その狭い横路地に入る松下の一行 走る自動車の中 ( 窓外は夜になっている ) ね」 110 ー

5. シナリオ 2016年6月号

「ほらこの間まで妙な男が夜昼なしに 研三ペンを擱いて起っ 捜査第一課長松下英一郎氏その人である 探し廻っていた林澄江ッて云うーー 玄関に上る英一郎 さアその時は殊勲者である不詳の弟の前 「あ成程 ! 澄ちゃんだ ! 」 にシャッポを脱いで頂きましようか」 研三「お帰り ! ( と迎えて ) 今日は何か収穫 「まさか ! これが澄公って筈はなかろう ありましたか」 けどさ : : : 」 いやちょっとあった 英一郎「無い 繁華な十字街 ( 大俯瞰景 ? ) 「ちょいとちょいと ! 誰かあの子の裸見例の臼井が新橋辺のパン助にお馴染が たことある ? 」 あって一週間に一度か一一度その女の所へ その街角の新聞売場 「裸 ? どうして ? 」 通って来るって聞込みがあったんだこ、 貼出してある大書の見出し 「だってあの男澄ちゃんの写真を見せ まで来りやもう時間の問題さ」 「下北沢町バラバラ事件新容疑者逮捕 ては此の女の背中に何ンとか丸ッて云う研三「僕の方にもちょっとばかりありまして さる」 入墨が有りやしないかって聞いて廻って いたじゃないの ! 」 英一郎「お前私立探偵を開業したのか下 盛場の一角 「あ、そうそ、つ ! 」 手売ってトゞのつまりはまた俺を腐らす その新聞売場の貼出し 彼女等の背後に刑事の一人 ( 既出 ) が のが落だろう」 「刺青殺人事件新展開犯人は被害者の 立って 研三「そう来るだろうと思ってましたよ」 情夫か ? 」 そのおしゃべりを聞いている 地下鉄入口の 英一郎「どこで掴んだ ? 」 女の一人それに気附いて 研三「今朝の一番の朝風呂で ! 」 新聞社の速報台の 「いけ好かないよう旦那 ! 立聞きなん英一郎「何だ ? かしてサ ! 」 研三「日ク云イガタシ ( 朗読口調イロハ 等々 : : : の場面へ重ねて臼井の捕物騒ぎ 刑事「失敬々々 ! 今の話だがね : : : 」 歌留多を詠み上げるあの悠長な調子で ( 露地から露地へ逃走する臼井警官隊 刑事ポケットを探して ) 云ワヌガ花素人ホド怖ィモノハ無 の追跡威嚇発射逮捕護送警視庁に 刑事「此の男と違うかね」 ィ大モ歩ケバ棒ニアタル朝風呂ハ三文 入るまでーーー ) 差出した臼井の写真 ノ徳細工ハ流々仕上ゲヲ御覧ジロ」 重ねて 今し方まで書いていた研三の手記の大写 「結論ーー常太郎が真犯人を摘発し得た としたら ? 誰よりもお腐り遊ばすのは ( 夜 ) 研三が手記を書いている 表の方に英一郎の帰って来た気配 婆やさんの声 へ 110 取調べの状況 その陳述に伴って視覚化される場面描 「聴取書」の部分大写

6. シナリオ 2016年6月号

近代欧風建築の邸宅ーーーと原作にあり と爆発するように笑い出した傍若無英一郎「その手の御負傷は ? 」 人な刺すような毒々しい笑い 早川「これかね ? 昨夜ある屍体の胴体から 早川の玄関 打ち切るようにびたと笑い熄めると 入墨を剥ぎ取ったのだよ上手の手から水 が洩れるのでちょっと刃物が上ってね . 女中さんが英一郎と密談しているところ早川「君い狭い露路の下水の縁に落ちてい へ急いで出て来る槇子夫人 た僅かこれッほちの硝子のカケラだ君の英一郎「昨夜 ? : : : 昨夜の ? 」 英一郎と研三槇子夫人に案内されて廊忠実な部下達がそれと気付かずあのドサ早川「八時半から十時の間さ」 下を早川の書斎へ クサ紛れに踏みつけて跡形もなしにしてし英一郎「その : : : 胴体は : : : 誰の ? 」 卓に凭れて何かやっていた早川振返っ まわないとも限らないしその点発見者早川「それは云えないね秘密を誓ってやっ て の僕が取敢えず保管しておいた方が時宜を た仕事だから : : : 」 早川「御用はこれなのでしよう ? 」 得た処置じゃなかったのかねえ」 英一郎「如何なる理由があっても申されませ 白紙の上に載せてある乾板、四ッ五ツに 英一郎いささか受太刀 んか」 割れていたのを寄せ集めて一枚の恰好に英一郎「 : : : それやあなたは入墨の研究者と早川「云えないと云ったら云えないねー 纏めたので欠損したま、の個所もある 英一郎勇を鼓して しては世界的な解剖医学では日本に何人と 早川「これがそのポジ ! 」 云われる栄誉ある地位にいらっしやるそ英一郎「一こと一ことだけお答え下さい 早川キャビネ版のプロマイド陽画を英の権威を以て発言なさるので一応尤もらし それは : : : 野村絹枝と何等かの関係があ一 一郎の前に押しやる乾板が割れている くは受取れますが結論犯人捜査の正常 りますか ? 」 ので画面に亀裂のズレは見えるがほゞ を軌道を紊乱されることに 早川「・ : 完全に整っている 早川「君君 ! マニアだからね僕は ! 良英一郎「ありませんか ? 」 全裸の女体の背面写真 識ある普通人として判断してくれちゃ困る早川「ある ! 」 綱手姫の刺青の見事な図柄 よ拾って見たら入墨の乾板と判ったら 廊下に足音がして 「あの捜査課長の松下さんに警視庁から御 早川「これは絹枝の身体に大蛇丸の入墨をし君むざむざ人手に渡せるものかねマニ た彫安の手に成る綱手姫の図柄だね」 アのマニアたる所以さ標本にしたいと思電話が : : : 」 件 英一郎「困りますなア殺人事件の現場から う入墨があったら殺してでもその胴体から 事 電話室 人重大な証拠になるかも知れない物件を勝手剥ぎ取りかねん況や乾板のカケラ如きに 青 英一郎が聞いている に持ち去られるなどと云う事はーー . 」 於いておやだ ! 」 早川「うむ ? 英一郎「大へん不躾ですが・ : きらりと早川の眼が睨むように光る 英一郎ズバリと斬り込む 玄関 ワ」 8 8

7. シナリオ 2016年6月号

中から林澄江を見かけたものがあると云う 三人兄弟の入墨写真を見てこの秘密を英一郎「〇月二十七日に最上久君と演舞場へ 報告が続々集って来ていますそのまた澄知っているのは早川だと云ったのは当り前行かれた七時半の閉場まで一緒に見物さ 江を兄の常太郎が躍起になって阿片の のことなんですよところがその有り得れて : : バア・セルバンへ引揚げられた ル 1 トからルートへ探し廻っていたとの証 べからざる三すくみが兄妹三人に彫り分け そこで最上君が酔っ払って大喧嘩をし一 拠も挙って来ています . : とそ、つで られている現にれッきとした証拠の写真晩警視庁の御厄介になった : ・ 早川「御苦労さまー が三枚あるところで下北沢事件当夜僕が したね」 ござ と早川慇懃に 手掛けた或る夫人の入墨こそ彫り分けられ京子「その通りでムいます」 早川「河畑京子を呼んでおいて頂けたでしょ た三幅対の一ツの綱手姫だったとしたら英一郎「え、と演舞場での坐席は ? 、つ、か」 ・ : 恐るべき秘密がこ、に潜んでいるので京子「この前のお調べの時に切符をお見せし 英一郎「迎えにやってありますからもうやすだからーー・」 たよ、つに思いますが : : : 」 がて : : : 」 このとき刑事入り来たって河畑京子の英一郎「あ、これこれ ! ト列の x 番 x 壁間の京浜地方大地図に向い立ってあ 来着を告げる 番の二番続きー ちこちと目測していた早川 早川訊問要項のメモを英一郎に渡して京子「はい 早川「松下さんどうやら僕の仮説は可能の 耳語 英一郎「実はちょっとそこんところに喰 現実性を加えて来ました」 河畑京子刑事に導かれて入り来たり い違いがあるようで : : : 丁度当日演舞場へ一 英一郎「え ? 」 顔馴染の早川さんを見て 行っていた者であなたのすぐ後の椅子に はず 早川「恐らく外れん ! 蛇は蛙を呑み蛙は京子「あら先生 ! 」 いた者が開演中ずーツとあなたお一人 ナメクヂを呑みナメクヂは蛇を溶かす とあでやかに会釈する だったと申出て来ているんですが : : : 」 そう云う俗言を御存知でしよう所謂三す 早川退いて室隅にあり微笑をかえす 京子度を失って瞬間茫然としかけ くみと云ってこの三つを一人の人間の身 英一郎京子に椅子をす、めて 体に彫ることは入墨師のタブーーー・絶対に英一郎「どうも御苦労さま河畑京子さんで京子「そんな : : : そんなことが ! 禁物となっておりひいてまたたとえ一 したね」 何かの間違いか人違いで : : : 」 つづ、彫り分けるにしても肉身のものに彫京子「はい」 英一郎「それからも一人演舞場の案内人 り揃えるつまり三幅対を血縁者に彫って英一郎「先日お尋ねした件でちょっと補足であなたが開演から終演までお一人きり はならないこと、されているだから彫安的にご説明願いたいことが二三ありますの だったことを証言していますあなたは当 ほどの入墨師がいくら酔狂でも我子の身 日玉虫色のワンピースに真珠の首飾りを して居られたと申していますが違います 体に彫る筈はないので : : : 死んだ常太郎が京子「どうぞ」

8. シナリオ 2016年6月号

刑事教室に入る 轟音通過 ) 刑事早川に令状を差出す 綱手姫の見事な図柄 早川「松下君 ! 」 刑事「警視庁へ御出頭を願います」 研三「先生 ! ここれは綱手姫 ! 絹枝 早川の態度が改まった 早川冷然と黙殺して の妹の珠枝が彫っている筈の : : : 」 刺すような峻酷な口調 早川「松下君」 早川黙って例の破片乾板から拡大複早川「この事件の当初ある新聞が表題に刺 研三「はい」 写した一葉を研三に押しやる 青殺人事件と銘打ったまさしくこの一聯 早川「兄さんに連絡して僕の自宅へ来ても 研三両図柄を並べ較べる全然同一 の殺人事件の根底は入墨に発しているそ らってくれないか」 研三「珠枝 : : : 珠枝ですかこれはツ ? れと知っていてなぜ入墨に就いての探究 早川「図柄は同一の綱手姫だがそれは珠枝を疎略にしているのかね ? 彫安の三幅対 ではない」 早川の部屋 が二ッある ? ーー馬鹿なツこれだけの事 早川と松下兄弟一二者一二スクミの形で険悪研三「じゃ : : : だ誰ですツ」 件をたくらむ奴を捕えるのに根本の入墨に な沈黙の裡に対峙 早川「絹枝の大蛇丸と兄の常太郎の自雷也と対してそんな浅薄な観念で以て処理出来 列車の轟音が近附いて来る ( 剥製を指して ) それとで三幅対をなす彫るものかねッ : : : 」 英一郎意を決した風に 安自慢の傑作なんだ」 研三必死の面持で 英一郎「率直におき、します率直にお答え 英一郎冷静にかえり鋭く 研三「先生ッ先生 ! 兄に協力してやって一 下さい : : : 博士 ! あなたはあの事件の英一郎「早川さん仰有って頂きましよう ! 」 下さい解決の手がかりを与えてやって下 あった晩入墨のある或る胴体を処分した早川「云えないねこれは或る著名な社会人 さい ! 」 と仰有ってでしたね ? 」 地位あり名誉ある人の細君だたゞ前 早川その表情のない暗い眼でじっと研 早川「あ、 半生の素性が良くなく汚辱の世界に生い 三を見る 英一郎「その入墨の胴体は絹枝事件に関係あ 育って若気の至りから彫ったのだが : ・ 研三縋らんばかり りとも仰有ってでしたね ? 」 終生悔み恥入っていたわしとは生前の約研三「先生 ! 先生ッ ! 」 早川「あゝ云った」 東によって絶対名前を出さない條件で 早川瞑目沈思 冷然と顎をしやくって こうして手に入れることが出来たのだよ 研三満眼の涙肺腑を絞って胸底に 早川「あれだよその入墨はー そう云うことは時々ある昨晩手に入れた入 喰い、る真卒の叫び 兄弟振り仰いで新しい剥製の入墨額を墨も大体それに似た経緯からだ」 研三「先生 ! お願い致します ! 」 見て同時に驚きの声を発し研三弾英一郎「それじやア入墨三兄妹の三幅対の外 瞑目した早川の頬に仄かに血が昇るか じかれたように走り寄る ( 列車の汽笛と に彫安作の三幅対が別にも一ッある訳です と見えたーーびくりと顎頤が動いた いきさっ 106 ー

9. シナリオ 2016年6月号

刑事「どこで ? 女将「最上さん ? はあ昨日の昼過ぎから見槇子「はいあのう : : : 」 えてますえ、それからすーっとまだ刑事「しょッちゅうですか夜分に家を明け早川「言える事と言えない事がある法律に 泊って居られますお連れ ? ほほほ られるのは ? 」 抵触する惧れのある或る種の行為は大体明 言の限りで無いよ」 ・ : お馴染さんらしいがタ方東京から来槇子「いえ : : : あのう」 刑事無礼なるいんぎんさを以て られましてネ」 刑事「行先は御存知なのですか ? 」 刑事「警視庁へ御同行願いましようか」 槇子「い、えそれが : : : 」 早川「今日は学校で講義のある日だ是非に 云いかけて夫人あ ! と云う ホテルの一室 と云うなら逮捕状を持って来給え」 刑事も振り返る背後に早川が立ってい 河畑京子あわて、べッドから飛び る今外出から帰って来たというところ 起きてカーテンを翻して隣室に姿を消す 刑事入る久のツそりと起き上る スーツケースを提げている 大学の教室 門前を去って行く自動車のひヾき これは階段式の医学教室で 久てれたように頭を掻いて とそれ以上のことは脚色者の想像と この刑事気骨あり早川の威圧にたじ 久「醜態々々 ! とんでもない現場を押え 創造の埒外にある世界です従って此の一 られちゃって : : : え、河畑京子と一緒な ろがず対抗して斬り込んで行く 刑事「昨夜代々木で遺棄屍体が発見されま んで : : : 来てます ! 」 場面に於ける早川博士の言動は私の能 力の範疇以外に属しますので一切を演出一 久の視線の向くところ・ーーカーテンの彼した」 者に委ねるの外はありません 早川「ふん」 方の人の気配 解剖台上には屍体があります 久「六時過ぎに桜木町駅で落合う約東でし刑事「通称彫常絹枝の兄で野村常太郎と 助手と演習当番の学生とが執行していま 云う男ですー たのでその時刻にこ、を出て迎えに行き す それから一緒に伊勢崎町で佛蘭西映画を一早川「ふん」 松下研三が聴講者の一人として列席して 本見まして : ・ 刑事「全身に彫った自雷也の入墨が見事に剥 いる事が不自然に過ぎるようでしたら後 ぎ取られてしまっていました」 卓上にあるその映画のいくらか皺く ちゃになったプログラム 述の場面を教室から研究室なり刺青標 早川「・ : 件 本室なりへ代替して下さい 刑事「失礼ですがそのお鞄には 事 早川博士の講義のテーマが屍体よりの 早川「死んだ人間の身体から剥いだ入墨の皮 人早川博士邸玄関 青 皮膚剥離にあることは論を俟ちません 膚が這入って居るよ」 刑事を前に度を失っている槇子夫人 刺 その室外に待っている刑事一一名 刑事「どう云う経路で入手されました」 槇子「はい実は昨夜は : 講義終って学生達出て来る 刑事「お帰りなさらなかったのでしよう ? 」早川「わし自身此の手で剥いだよ」

10. シナリオ 2016年6月号

鳴っている電話機へ寝巻姿の婆やさんが 兄弟憮然としてなお寝床にあり し場で研三の背を流している柳湯の亭主 掛ってまだ睡気の醒め切らぬ声で 室内すでに早くも暁色の仄かなるを漂わ 勝造 ( 研三以外の客と云っては全くしな 婆やさん「はいはい : : : 警視庁の ? : ・ す びた御老体とその孫の童女だけ ) お睡みでいらっしゃいますが : 英一郎やがてに肺腑から押出す声研三「勝ッあんの弁天小僧は確か本所の彫 奥の方から英一郎の大きな声 英一郎「事件の真相は確実に早川博士の手に安ッて名人が彫りかけたのだったね ? 」 英一郎「起きてる起きてるよ ! こっちへ ある、そしてあらゆる疑点は博士に集注し勝造「左様で・ : ・ : 」 切替えて ! 」 ているーー研三 ! もしも博士が犯人だと研三「筋彫のま、で残ってる所が多かったの 切替スイッチに掛る婆やの手 したら : : : ? に近頃急に埋って来たようだが : 研三答えす 勝造「へへへ・ : 枕許の卓上電話を取上げる英一郎 英一郎ふたたび 研三「相当いい腕前の彫師らしいが : : : 誰か 英一郎「僕松下 ! うむうむ : : : 待っ英一郎「事件のテーマは入墨にある、そして 入墨の中心に : : : 博士が居る ! 」 勝造「へへへ : 振返って研三に 何事かに思い当った研三の眼 研三「ねえ、勝ッあん ! 彫師には彫師の仁一 英一郎「竹藏の屍体解剖の結果の所見だ」 屋外を通り過ぎる電車のチンチンカンカ義があって筋彫のま、に成ってるのを後か 研三心得て即座に鉛筆をとり筆記の構 ン : : : 響音 ら彫り埋めるのは彫りかけた当人かでな え 研三すっと起っ きやその直系の弟子に限られてるように聞 英一郎「死亡時刻二十七日から二十八日英一郎「どうした ? 」 いてるんだが彫安の弟子ッて云えば倅の常 ・ : 待った ! 絹枝の殺されたのが二十七研三「今の一番電車でしよう ? 僕朝風呂へ 太郎、彫常一人の筈なんだが」 日の夜だとして竹藏の死んだのと時間的行って来ます」 (o ・ =) 勝造まづい顔をして流しの仕事にまぎ なズレは ? ーー、ん ? 虹 い ? 二人殆んど らせて答えず 同時刻か竹藏の方がいくらか後かも知れ 7 9 「柳湯」の暖簾 研三「常太郎が南方から帰還したと云う確か ・ : うむうむ・ : : ・」 眉の剃り跡の青く匂やかな婀娜ッほい な筋はないんだが、勝つあんの弁天小僧を 女房 ( お兼 ) が掛けている 彫りついでいるのは : : : 彫安作の自雷也の 浜松屋の店頭に胡座をかいた弁天小僧の入墨を背中に背負てる男とは違うのかね 五代目似顔の刺青ーーが画面一杯に動い ている。これは全部仕上っていなくて筋 勝造ぎくり ! としてにがり切って 彫のま、の部分が少々ある風呂場の流 た ! 」 卓上電話受送話機が掛けられる ( 0 ・