みがそのまま採用されたことを意味し , 公取委の判断 要素及び手法は一貫しているものと言える。また , のような立証方法は , 間接証拠を , 意思の連絡・交 渉 , 連絡・交渉の内容 , 行動の一致の 3 つに分類し て整理する立場である , 3 分類説 ( 実方謙二・独占禁 止法〔第 4 版〕 172 頁 ~ 176 頁及び金井貴嗣ほか編 著・独占禁止法〔第 5 版〕 50 頁 ~ 53 頁 [ 宮井雅明 ] 参照 ) にも沿っているものと思われる。 ただし , 論点 ( 1) に関する特徴として , 日経新聞の 役割を挙げることができる。すなわち , 本件における 意思の連絡においては , 日経新聞に本件各値上げ記事 が掲載されたことによる「地均し」が重要な役割を果 0 意思の連絡の認定において新聞発表が一定の役割を 果たしたものに , モディファイヤー価格カルテル事件 ( 東京高判平成 22 ・ 12 ・ 10 審決集 57 巻 ( 第 2 分冊 ) 222 頁 ) がある。しかし , 最初から値上げに関する記 事掲載が意識されていたわけではなく , また 1 社に よる先行値上げ手段及び 2 社による追随手段として 同記事掲載が利用された同事件とは異なり , 本件にお いては , 最初から被審人及び 9 社によって日経対策 が重要視され , 本件各値上げの記事掲載により全体と して値上げの旨が一気に決定し , 遅くともその後の委 員会開催までには意思の連絡の存在が認められた。な お , 上記モディファイヤー価格カルテル事件における 意思の連絡は , 最後に値上げの新聞発表が行われた日 までに成立したとされた。 したがって , 本件は , 最初から業界紙利用が念頭に おかれ , それを本件各値上げのための手段として積極 的に利用して全体の合意に漕ぎ着けた点に特徴がある と思われる。 論点②について , 公取委は , 審決要旨Ⅳで 挙げたことをもって純果糖と他の異性化糖との 間に性状の違い等はあるものの , 純果糖も特定異性化 糖に含まれ , 本件各合意の対象であるとした。 不当な取引制限における一定の取引分野をどのよう に画定するかに関しては , 大きく分けて , 結果的に違 反行為の対象が一定の取引分野になるという見解と , 企業結合における一定の取引分野の画定に影響を受け たと思われる , 商品の需要または供給代替性によって 個別に画定されるべきであるという見解に分かれてい る。確かに供給者が必ずしも外部から見て合理的な判 断に基づき , 一定の取引分野を定め , 違反行為を行っ Ⅲ 110 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 たのかについては必ずしも言い切れない場合があり , また , 違反行為の対象がただちに一定の取引分野にな るというやり方を広げていけば , 不当な取引制限にお ける当然違法の原則導入と同様の結果をもたらす可能 性があるという指摘は一理あると思われる ( 白石忠志 = 多田敏明編著・論点体系独占禁止法 47 頁 ~ 48 頁 [ 渡邉恵理子 ] 参照 ) 。 しかし , 一般的には不当な取引制限を行っている事 業者は自らにとってもっとも効果の高い商品・役務と 地理的範囲をすでに設定していて , 公取委による不当 な取引制限における一定の取引分野の画定は事業者に よる設定後に行われることになる。したがって , 公取 委は改めて違反行為が対象としている商品・役務や当 該行為によって影響を受ける範囲を検討し , 画定する ことになるため , 決して自動的に不当な取引制限の対 象イコール一定の取引分野になるわけではない ( 菅久 修一編著・独占禁止法〔第 2 版〕 36 頁 ~ 40 頁 [ 品川 武 ] 参照 ) 。 実際に元詰種子力ルテル事件 ( 東京高判平成 20 ・ 4 ・ 4 審決集 55 巻 791 頁 ) においても「一定の取引分 野は , 不当な取引制限が対象とする取引及びこれによ り影響を受ける範囲を検討した上で , その競争が実質 的に制限される範囲を画定することをもって決定され るべきであ」るとされている。 本件において公取委は , 結果的に違反行為の対象が 一定の取引分野になるという見解を採ったが , そもそ も企業結合が競争に与える影響は , 将来のことであっ て , 直接的な場合だけでなく間接的な場合もあり , ま た競争が促進されることになる場合もあれば , 反競争 効果が大きい場合もある。そのため , 一定の取引分野 画定に際し , 需要や供給の代替性等について具体的・ 個別的に検討する必要がある。一方 , 不当な取引制限 は , すでにある範囲において反競争効果が起きている 場合が多く , 競争に与える影響も企業結合に比べると 直接的であることが多い。したがって , 不当な取引制 限における一定の取引分野画定は , 企業結合における それとは背景や性質が異なっており , 被審人が主張す るように , 主に製品の需要代替性の観点から検討する 必要性は相対的に低いと思われる。
に関しては見解が分かれるものの , 基本的には 原々決定を取り消した原決定に対し , 要旨 , 刑 訴法 90 条で「適当と認めるとき」とされてい 事後審的なものと理解されているということが る以上 , その判断は , 受訴裁判所の裁判官の良 できるであろう ( 河上和雄ほか編・大コンメン タール刑事訴訟法〔第 2 版〕⑨ 659 頁 [ 古田 心に委ねられていると解されるから , 適当でな いと認めながら保釈したような場合が違法に該 佑紀 = 河村博 ] ) 。 当主が , 本件では受訴裁判所は適当と認めて この点に関し , リーディングケースと Ⅱ 保釈したのであるから , これを取り消すことは なる判例として , 最ー小決昭和 29 ・ 7 ・ 裁判の良心と独立を侵害するものである , と主 7 刑集 8 巻 7 号 1065 頁 ( 以下「昭和 29 年判 張された。そこで , 昭和 29 年判例は , そのよ 例」という ) があり , 同判例は , 保釈許可決定 うな所論に応じて , 違法かどうかにとどまら に対して , 抗告裁判所は , 同決定が違法かどう ず , 不当かどうかも審査しうると判示したもの かにとどまらず , それが不当であるかも審査で であって , 「不当」も審査できるとしたのは , きる旨を判示している。 所論がいう「違法」のみならず , 保釈の判断が ここにいう不当との意味については , 刑訴法 裁量を逸脱しているかを抗告審が検討しうる , 90 条の裁量判断には合理性が要求されている すなわち実体判断についての審査が可能である ことや , 抗告審が基本的には事後審的な性質を ことを示したものと解され , 受訴裁判所の裁量 有することにも照らせば , 受訴裁判所の裁量の の範囲内にとどまる判断について , 抗告審が心 範囲内にとどまる判断について抗告審の心証と 証比較の結果「不当である」として取り消す余 異なる場合 ( すなわち , 抗告審が受訴裁判所の 立場であれば裁量保釈しないという場合 ) をい 地を認めたものとは解されないところである。 このように , 抗告審では , 受訴裁判所 うと解するのは相当ではなく , 受訴裁判所の判 Ⅲ の判断が委ねられた裁量の範囲を逸脱し 断が委ねられた裁量の範囲を逸脱して不合理で て不合理であるかどうかを審査することになる ある場合をいうものと解される。 と考えられることに照らせば , 抗告審が , 受訴 なお , 昭和 29 年判例の説示を一見すると , 裁判所の判断を覆す場合には , その判断が不合 「違法」かどうかの審査のほかに「不当」かど 理であることを具体的に示すことが要請される うかの審査もできる , すなわち受訴裁判所の裁 ものと考えられる。 量の範囲内にとどまる判断について抗告審の心 この点 , 場面は異なるが , 刑事控訴事件にお 証を優先させ「不当である」として受訴裁判所 ける事実誤認の審査については , いわゆるチョ の判断を取り消すことを許容する趣旨に読めな コレート缶事件判例 ( 最ー小判平成 24 ・ 2 ・ 13 いではない。しかし , 同判例がそのような解釈 刑集 66 巻 4 号 482 頁 ) が , 「刑訴法は控訴審の を示したものといえるのかについては , 同判例 性格を原則として事後審としており , 控訴審 の具体的事案を踏まえて検討する必要があるよ は , 第 1 審と同じ立場で事件そのものを審理す うに思われる。 るのではなく , 当事者の訴訟活動を基礎として すなわち , 当該事案は , 第 1 審において , 被 形成された第 1 審判決を対象とし , これに事後 告人両名は , 審理中 , 刑訴法 89 条 3 号ないし 的な審査を加えるべきものである。第 1 審にお 4 号に該当するとして , 保釈請求が却下されて いて , 直接主義・ロ頭主義の原則が採られ , 争 いたところ , 実刑判決前にされた保釈請求に対 点に関する証人を直接調べ , その際の証言態度 し , 第 1 審裁判所が実刑判決宣告後に保釈を許 可したというものであり , このような具体的事 等も踏まえて供述の信用性が判断され , それら を総合して事実認定が行われることが予定され 実関係に照らせば , およそ保釈を認めた原々決 ていることに鑑みると , 控訴審における事実誤 定の判断が不合理であり , 裁量逸脱が明らかな 認の審査は , 第 1 審判決が行った証拠の信用性 事案であった。ところが , 特別抗告では , その 100 1 一 = [ Jurist ] September 2016 / Number 1497
論旨 1 点目は , 原審の採用した法 132 条の 2 の不当性要件の判断基準 ( 上記Ⅱ 1 の ( ⅱ ) ) は 誤りである旨をいうとともに , この点に関する 原審の事実認定やこれに基づく評価の適否を争 い , 本件計画を前提とする本件分割は同条の不 当性要件に該当しない旨をいうものである。 論旨 2 点目は , 法 132 条の 2 の行為主体要件 の「その法人」とは , その規定の文言に照らせ ば , 更正又は決定を受ける法人のみを意味する と解すべきであり , 「次に掲げる法人」 ( 同条各 号に掲げられている法人 ) を意味するとした原 審の判断は誤りであるというものである。 本判決は , 論旨 1 点目 ( 不当性要件 ) につき 判旨 I 及びⅡのとおり判断し , 論旨 2 点目 ( 行 為主体要件 ) につき判旨Ⅲのとおり判断し , 論 旨にはいずれも理由がないとして , IDCF の上 告を棄却した。 判旨 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号によ る改正前のもの ) 132 条の 2 にいう「法 人税の負担を不当に減少させる結果となると認 められるもの」とは , 法人の行為又は計算が組 織再編税制に係る各規定を租税回避の手段とし て濫用することにより法人税の負担を減少させ るものであることをいい , その濫用の有無の判 断に当たっては , ①当該法人の行為又は計算 が , 通常は想定されない組織再編成の手順や方 法に基づいたり , 実態とは乖離した形式を作出 したりするなど , 不自然なものであるかどう か , ②税負担の減少以外にそのような行為又は 計算を行うことの合理的な理由となる事業目的 その他の事由が存在するかどうか等の事情を考 慮した上で , 当該行為又は計算が , 組織再編成 を利用して税負担を減少させることを意図した ものであって , 組織再編税制に係る各規定の本 来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用 を受けるもの又は免れるものと認められるか否 かという観点から判断するのが相当である。 新設分割により設立された分割承継法 Ⅱ 人が当該分割は適格分割に該当しないと 最高裁時の判例 して資産調整勘定の金額を計上した場合におい て , 分割後に分割法人が当該分割承継法人の発 行済株式全部を譲渡する計画を前提としてされ た当該分割は , 翌事業年度以降は損金に算入す ることができなくなる当該分割法人の未処理欠 損金額約 100 億円を当該分割承継法人の資産調 整勘定の金額に転化させ , これを以後 60 か月 にわたり償却し得るものとするため , 本来必要 のない上記譲渡を介在させることにより , 実質 的には適格分割というべきものをこれに該当し ないものとするべく企図されたものといわざる を得ないなど判示の事情の下では , 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号による改正前のもの ) 132 条の 2 にいう「法人税の負担を不当に減少 させる結果となると認められるもの」に当た る。 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号によ Ⅲ る改正前のもの ) 132 条の 2 にいう「そ の法人の行為又は計算」とは , 更正又は決定を 受ける法人の行為又は計算に限られるものでは なく , 同条各号に掲げられている法人の行為又 は計算を意味する。 ( 判旨 I ) について 意義及びその該当性の判断方法 I . 法 132 条の 2 の不当性要件の 解説 この点については , 将来の同種事案におい いう ) の判旨 I と同様の判断を示した。 判タ 1424 号 68 頁 ( 以下「ヤフー事件最判」と り , ヤフー事件に係る最ー小判平成 28 ・ 2 ・ 29 同じであったところ , 本判決は , 判旨 I のとお 事件 ) におけるヤフー及び国の主張と基本的に 主張は , ヤフー事件 ( 法人税更正処分取消請求 れた。そして , この点に関する IDCF 及び国の ないし判断方法をどのように解すべきかが争わ て , 不当性要件の意義やその該当性の判断基準 かどうかが最大の争点であり , その前提とし 分割が , 法 132 条の 2 の不当性要件に該当する 本件においては , 本件計画を前提とした本件 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 95
244 頁は , 「・・・・・・近年の企業組織法制の大幅な 緩和に伴って組織再編成の形態や方法は相当に 多様となっており , 組織再編成を利用する複 雑 , かっ , 巧妙な租税回避行為が増加するおそ れがあります。 これらの組織再編成を利用 した租税回避行為は , ・・・その行為の形態や方 法が相当に多様なものとなることが考えられる ことから , これに適正な課税を行うことができ るように包括的な組織再編成に係る租税回避防 止規定が設けられました〔法 132 条の 2 〕。」と している。 本判決は , 上記のような立法当時の資料から うかがわれる同条の立法趣旨に照らし , 同条の 不当性要件の解釈につき , 制度濫用基準の考え 方を採用する旨を明確に示したものと考えられ る。 補足するに , 経済合理性基準においては , 「純経済人の行為として不合理・不自然である か否か」という基準が用いられるところ , 組織 再編成は売買契約や雇用契約などの典型契約と は異なるため , 必ずしも一般的な取引慣行や取 引相場があるわけではなく , 多数の企業が関与 して複雑かっ巧妙な租税回避行為が行われた場 合 , そもそも純経済人 ( 特殊な利害関係のない 一般的な経済人 ) の行為として自然かっ合理的 な組織再編成とは何かという議論の出発点から その審理判断に困難を来し , その不当性を適切 に判断し得ない場合もあり得ると考えられる。 そのような実務的な観点からも , 法 132 条の 2 の不当性要件の該当性の判断基準として経済合 理性基準をそのまま用いることは , 組織再編成 という事柄の性質上 , 必ずしも適切ではないと 考えられる。 ( イ ) この点に関し , ヤフーは , 法 132 条の 2 の不当性要件につき , 同条が法 132 条の枝番 であることや , その文言の共通性から , 同条 1 項で採用されている経済合理性基準を採用すべ き旨を主張し , さらに , 法 132 条の 2 を「租税 回避」の否認規定であると位置付けた上で , 金 子宏教授らが唱える通説的な「租税回避」の概 念に「制度の濫用」は含まれないとして , 同条 最高裁時の判例 は制度の濫用を対象とするものではないとも主 張していた。 しかし , 法 132 条の 2 が法 132 条の枝番と なっていることは , 法 133 条以下の条番号の変 更を避けるための立法技術上の措置というべき であり , 不当性要件の解釈に直ちに影響するも のとはいえないし , 立法趣旨が異なれば , 同一 の文言であってもその意義や内容に差異が生じ ることはあり得るというべきであり , 法 132 条 1 項との文言の同一性もその解釈の決め手とな るものではないと考えられる。また , 「租税回 避」の概念についても , その意味内容は多義的 であり , 不当性要件の解釈の決め手となるよう なものではなく , ヤフーの上記主張はいずれも 採用し難いものと考えられる。 ②濫用の有無の判断に係る考慮事情 ( ア ) 本判決は , 上記 ( 1) の不当性要件の意 義に続けて , 「その濫用の有無の判断に当たっ ては , ①当該法人の行為又は計算が , 通常は想 定されない組織再編成の手順や方法に基づいた り , 実態とは乖離した形式を作出したりするな ど , 不自然なものであるかどうか , ②税負担の 減少以外にそのような行為又は計算を行うこと の合理的な理由となる事業目的その他の事由が 存在するかどうか等の事情を考慮した上で」と している。 この部分は , 端的にいうと , 濫用の有無の判 断に当たっては , ①行為・計算の不自然性と , ②そのような行為・計算を行うことの合理的な 理由となる事業目的等の有無との 2 点を特に重 視して考慮すべきである旨をいうものと解され る。そして , これらの考慮事情は , 経済合理性 基準の具体的な内容に係る通説的見解とされて いる「〔行為・計算が〕異常ないし変則的で租 税回避以外に正当な理由ないし事業目的が存在 しないと認められる場合」 ( 金子・前掲〔第 20 版〕 471 頁 ) に含まれている 2 つの要素を , 組 織再編成の場面に即して表現を修正し , 特に重 要な考慮事情として位置付けたものであるとい えよう。このような本判決の判断方法は , 制度 濫用基準の考え方を基礎としつつも , その実質 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 85
最高裁時の判例 の「その法人」とは , その規定の文言に照らせ とどまってさえいれば法人税法施行令 ( 平成 ば , 更正又は決定を受ける法人のみを意味する 22 年政令第 51 号による改正前のもの ) 112 条 と解すべきであり , 「次に掲げる法人」 ( 同条各 7 項 5 号の要件が満たされることとなるよう企 号に掲げられている法人 ) を意味するとした原 図されたものであり , その就任期間や業務内容 審の判断は誤りであるというものである。 等に照らし , A が乙社において同号において 本判決は , 論旨 1 点目 ( 不当性要件 ) につき 想定されている特定役員の実質を備えていたと 判旨 I 及びⅡのとおり判断し , 論旨 2 点目 ( 行 いうことはできないなど判示の事情の下では , 為主体要件 ) につき判旨Ⅲのとおり判断し , 論 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号による改正前 旨にはいずれも理由がないとして , ヤフーの上 のもの ) 132 条の 2 にいう「法人税の負担を不 告を棄却した。 当に減少させる結果となると認められるもの」 に当たる。 判旨 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号によ 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号によ る改正前のもの ) 132 条の 2 にいう「そ る改正前のもの ) 132 条の 2 にいう「法 の法人の行為又は計算」とは , 更正又は決定を 人税の負担を不当に減少させる結果となると認 受ける法人の行為又は計算に限られるものでは められるもの」とは , 法人の行為又は計算が組 なく , 同条各号に掲げられている法人の行為又 織再編税制に係る各規定を租税回避の手段とし は計算を意味する。 て濫用することにより法人税の負担を減少させ 解説 るものであることをいい , その濫用の有無の判 断に当たっては , ①当該法人の行為又は計算 I . 法 132 条の 2 の不当性要件の が , 通常は想定されない組織再編成の手順や方 意義及びその該当性の判断方法 法に基づいたり , 実態とは乖離した形式を作出 ( 判旨 I ) について したりするなど , 不自然なものであるかどう か , ②税負担の減少以外にそのような行為又は 1 本件においては , 本件副社長就任が , 法 計算を行うことの合理的な理由となる事業目的 132 条の 2 の不当性要件に該当するかどうかが その他の事由が存在するかどうカ : 等の事情を考 最大の争点であり , その前提として , 不当性要 慮した上で , 当該行為又は計算カ , 組織再編成 件の意義やその該当性の判断基準ないし判断方 を利用して税負担を減少させることを意図した 法をどのように解すべきかが争われた。 ものであって , 組織再編税制に係る各規定の本 (I) この点について , ヤフーは , 法 132 条 来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用 の 2 が法 132 条の枝番であることや , 不当性要 を受けるもの又は免れるものと認められるか否 件に係る文言の共通性等に照らし , 同族会社の かという観点カら判断するのが相当である。 行為計算の否認規定である同条 1 項の不当性要 甲社カ : 乙社 0 発行済株式全部を買収し 件に係るいわゆる「経済合理性基準」 ( 最二小 Ⅱ て完全子会社とし , その後乙社を吸収合 判昭和 53 ・ 4 ・ 21 訟月 24 巻 8 号 1694 頁の原審 併した場合において , 甲社の代表取締役社長 である札幌高判昭和 51 ・ 1 ・ 13 訟月 22 巻 3 号 A が上記買収前に乙社の取締役副社長に就任 756 頁「もつばら経済的 , 実質的見地において した行為は , 乙社の利益だけでは容易に償却し 当該行為計算が純粋経済人の行為として不合 得ない多額の未処理欠損金額を上記の買収及び 理 , 不自然なものと認められるか否か」 ) を採 合併により甲社の欠損金額とみなし , 甲社にお 用し , かっ , その具体的な内容として , その通 いてその全額を活用することを意図して , 上記 説的見解とみられている「〔行為・計算が〕異 合併後に A が甲社の代表取締役社長の地位に 常ないし変則的で租税回避以外に正当な理由な Ⅲ 83 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497
て , 同条の不当性要件の判断に関する議論の基 礎となるものであることから , 第一小法廷 ( ヤ フー事件最判 ) と第二小法廷 ( 本判決 ) の説示 の相違に係る解釈上の議論が生じることは望ま しいことではなく , 判旨 I の内容が上記のとお り統一されたことは , 納税者の予見可能性及び 法的安定性の確保という観点や , 下級審におけ る無用な議論の回避等の観点に照らし , 望まし いことであったように思われる。 なお , 本判決の判旨 I とヤフー事件最判の判 旨 I は , 内容的には同一であるものの , 第一小 法廷と第二小法廷においてそれぞれ審議された 結果として同様の判断がされたものと解される ため ( すなわち , 一方の判決がもう一方の判決 を引用又は参照している関係にはない ) , その 判例としての意義や重要性において優劣はない ものと考えられる ( 以上の点は , ヤフー事件最 判の判旨Ⅲと同じ内容である本判決の判旨Ⅲに ついても , 同様である ) 。 判旨 I の判断がされるに至った経緯やその具 体的内容等については , ヤフー事件最判の解説 において , 既にその詳細を説明していることか ら , そちらを参照されたい。 Ⅱ . 本件計画を前提とする本件分割 は法 132 条の 2 の不当性要件に 該当するか ( 判旨Ⅱ ) について 1 本判決は , 法 132 条の 2 の不当性要件に 係る当てはめの前提として , ①組織再編税制の 基本的な考え方 ( 法 62 条・ 62 条の 2 等 ) 及び その趣旨 , ②譲渡損益の計上を繰り延べる適格 分割の要件として , 完全支配継続見込み要件が 設けられている趣旨 ( 施行令 4 条の 2 第 6 項 ) について説明している。不当性要件該当性の判 断に当たっては , 判旨 I のとおり , 「組織再編 税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸 脱する態様でその適用を受けるもの又は免れる ものと認められるか否か」が問題となるのであ るから , 具体的な当てはめの前提として , 問題 となっている各規定の「本来の趣旨及び目的」 を明確にしておくことは必要かつ重要であると [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 96 考えられよう。 ところで , 組織再編税制で課税上の取扱いが 異なるのは , まず第一に , その組織再編成が適 格か非適格かという点にある。すなわち , 適格 組織再編成の場合には , その移転資産等につい て帳簿価額による引継ぎをしたものとされ , 譲 渡損益のいずれも生じない ( 法 62 条の 2 以下 ) のに対し , 非適格組織再編成の場合には , その 移転資産等を時価により譲渡したものとされ , 譲渡損益を益金又は損金の額に算入しなければ ならない ( 法 62 条 ) 。したがって , 組織再編成 における租税回避でまず想定されるのは , 不当 な行為又は計算により , 本来は非適格組織再編 成であるものを適格組織再編成とし ( 適格作 り ) , あるいは , 本来適格組織再編成であるも のを非適格組織再編成とする ( 適格外し ) 場合 である。そして , 組織再編税制の立案担当者に よる平成 13 年当時の講演録等からも , 「適格外 し」について , 法 132 条の 2 の典型的な適用場 面の一つであると考えられていたことがうかが われる ( 日本租税研究協会・企業組織再編成に 係る税制についての講演録集 70 頁 [ 朝長英樹 ] 等 ) : 彡・・い 0 本件は , 後述のとおり , IDCS の未処理欠損 金額のうち約 100 億円を IDCF の資産調整勘定 の金額に転化させるため , 本来は適格分割であ るものを非適格分割とするべく , 適格分割の要 件を満たさないこととなるように事実関係が殊 更に作出された事案であるということができ , 法 132 条の 2 の適用場面として立法時から想定 されていた「適格外し」が実際に行われた事案 であるということができよう。 2 具体的な考慮事情についてみると , 本判 決は , 不当性要件該当性の当てはめにおいて , まず次の ( 1) 及び②の点を指摘している。 (1) 本件の一連の組織再編に係る行為の 意図等 本件の一連の組織再編に係る行為は , IDCS が有していた未処理欠損金額のうち平成 22 年 3 月期以降は損金に算入することができなくな る約 124 億円を余すところなく活用するため ,
いし事業目的が存在しないと認められる場合」 は , 組織再編税制の趣旨 , 目的又は個別規定の 趣旨 , 目的に反することが「明らか」であるも ( 金子宏・租税法〔第 20 版〕 471 頁。なお , 同・租税法〔第 21 版〕 478 頁も参照 ) という のに限られることから , 納税者の予測可能性を 基準を採用すべきである旨主張した。具体的に 害するものではないとする反論もされていたが ( 第 1 審判決及び原判決にもそのような趣旨を は , 「法 132 条の 2 の不当性要件は , 私的経済 述べる部分がある。その他 , 訟月 61 巻 1 号別 取引プロバーの見地から合理的理由があるか , 冊 254 頁以下 [ 関根英恵 ] 等参照 ) , 十分な反 すなわち純経済人の行為として不合理・不自然 論となっているかには疑問の余地がないわけで な行為又は計算か否かという観点から判断され るべきである。そして , 純経済人の行為として はなかった。 ( 3 ) このような議論状況の下 , 租税法学界 不合理・不自然とは , 行為が異常ないし変則的 で , かっ , 租税回避以外に正当な理由ないし事 や経済界から , 不当性要件の判断基準があいま 業目的が存在しない場合をいう。」と主張した。 いなままでは組織再編成への萎縮的効果が生じ これに対し , 国は , 法 132 条の 2 の立法趣旨 るおそれがあるなどとして , 法 132 条の 2 の不 等に照らし , いわゆる「制度濫用基準」を採用 当性要件の意義及びその該当性の判断方法につ すべきであると主張した。具体的には , 「法 き , 最高裁による明示的な判断が示されること を期待する声が上がっていた ( 中里実ほか 132 条の 2 の不当性要件については , 組織再編 「〔座談会〕租税訴訟における法務と税務の 税制における各個別規定の趣旨 , 目的に鑑み ギャップ ( 上 ) 」 NBL1055 号 16 頁 [ 中里 , 佐藤 て , ある行為又は計算が不合理又は不自然なも のと認められる場合をいい , 租税回避の手段と 修二 ] , 日本経済新聞平成 27 年 6 月 8 日付朝刊 15 面など ) 。 して組織再編成における各規定を濫用し , 税負 本判決は , 以上のような経緯等の下で , 上記 担の公平を著しく害するような行為又は計算が これに当たる。」と主張した。 の点につき判旨 I のとおり判断し , その考え方 を明確にしたものと考えられる。 ②上記の両見解については , 当事者双方 2. 判旨 I の内容について から多数の有名な租税法学者や法 132 条の 2 の (I) 不当性要件の意義 立案担当者による鑑定意見書が提出されるなど ( ア ) 本判決は , 判旨 I の冒頭において , して争われたところ , 第 1 審及び原審は , 前記 「〔法 132 条の 2 の不当性要件〕とは , 法人の行 事実Ⅱ 1 のとおり説示して , 制度濫用基準の考 為又は計算が組織再編税制に係る各規定を租税 え方を基礎とした判断基準である趣旨目的基準 回避の手段として濫用することにより法人税の を採用した。 負担を減少させるものであることをい〔う〕」 しかし , 本件の第 1 審判決及び原判決には多 数の評釈等が示されたところ , その内容をみる としている 政府税制調査会法人課税小委員会の「会社分 と , 第 1 審及び原審が採用した趣旨目的基準に 割・合併等の企業組織再編成に係る税制の基本 批判的なものが多数を占めている。その批判の 的考え方」 ( 平成 12 年 10 月 ) は , 「第五租税 論拠には様々なものがあるが , 最も代表的な論 回避の防止組織再編成の形態や方法は , 複雑 拠は , 一般の納税者にとって , 組織再編税制の かっ多様であり , 資産の売買取引を組織再編成 趣旨 , 目的や個別規定の趣旨 , 目的は必ずしも による資産の移転とするなど , 租税回避の手段 明確なものではなく , 趣旨目的基準の下では納 として濫用されるおそれがあるため , 組織再編 税者の予測可能性を確保することが困難であ り , 租税法律主義 ( 課税要件明確主義 ) の趣旨 成に係る包括的な租税回避防止規定を設ける必 に反するというものである。このような批判に 要がある。」としている。また , 中尾睦ほか・ 改正税法のすべて〔平成 13 年版〕」 243 頁 ~ 対しては , 不当性要件に該当する行為・計算 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 0 1 = 84
民事 行為又は計算」の意義 前のもの ) 132 条の 2 にいう「その法人の 3. 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号による改正 に当たるとされた事例 減少させる結果となると認められるもの」 132 条の 2 にいう「法人税の負担を不当に ( 平成 22 年法律第 6 号による改正前のもの ) を前提としてされた当該分割が , 法人税法 発行済株式全部を分割法人が譲渡する計画 2. 新設分割により設立された分割承継法人の れるもの」の意義及びその該当性の判断方 担を不当に減少させる結果となると認めら 前のもの ) 132 条の 2 にいう「法人税の負 1. 法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号による改正 成 26 年 3 月 18 日 / 第 2 審・東京高判平成 27 年 1 月 15 日 / 判タ 1424 号 83 頁 ( 民集登載予定 ) / 第 1 審・東京地判平 平成 27 年 ( 行ヒ ) 第 177 号 , 法人税更正処分等取消請求事件 最高裁平成 28 年 2 月 29 日第二小法廷判決 Tokuchi Atsushi Hayashi Fumitaka 前最高裁判所調査官徳地淳 最高裁判所調査官林史高 事実 ①上告人である株式会社 IDC フロン ティア ( 原告・控訴人。以下「 IDCF 」 という ) は , 平成 21 年 2 月 2 日 , ソフトバン ク株式会社 ( 以下「ソフトバンク」という ) の 完全子会社であったソフトバンク IDC ソ リューションズ株式会社 ( 以下「 IDCS 」とい う。当時 , 多額の未処理欠損金額を保有してい た ) から , 新設分割 ( 以下「本件分割」とい う ) により設立された。② IDCS は , 同月 20 日 , ヤフー株式会社 ( 以下「ヤフー」という ) に対し , IDCF の発行済株式全部を譲渡した ( 以下「本件譲渡 1 」という ) 。③ソフトバンク は , 同月 24 日 , ヤフーに対し , IDCS の発行 済株式全部を譲渡した ( 以下「本件譲渡 2 」と いう ) 。④ヤフーは , 同年 3 月 30 日 , ヤフーを 合併法人 , IDCS を被合併法人とする吸収合併 最高裁時の判例 ( 以下「本件合併」という ) を行った。 以上の経緯の下で , IDCF は , 本件各事業年 度 ( 平成 21 年 2 月から同 24 年 3 月 31 日まで の間の 4 事業年度 ) に係る各法人税の確定申告 に当たり , 本件分割は法人税法施行令 ( 平成 22 年政令第 51 号による改正前のもの。以下 「施行令」という ) 4 条の 2 第 6 項 1 号に規定 されている完全支配継続見込み要件 ( 要旨 , 分 割後に分割法人と分割承継法人との間に当事者 間の完全支配関係が継続することが見込まれて いるという要件 ) を満たしていないため , 法人 税法 ( 平成 22 年法律第 6 号による改正前のも の。以下「法」という ) 2 条 12 号の 11 の適格 分割に該当しない分割 ( 以下「非適格分割」と いう ) であり , 法 62 条の 8 第 1 項の資産調整 勘定の金額が生じたとして , 同条 4 項及び 5 項 に基づき , 上記の資産調整勘定の金額からそれ ぞれ所定の金額を減額し損金の額に算入した。 これに対し , 四谷税務署長 ( 処分行政庁 ) は , 組織再編成に係る行為又は計算の否認規定であ る法 132 条の 2 を適用し , 上記の資産調整勘定 の金額は生じなかったものとして所得金額を計 算した上で , IDCF に対し , 本件各事業年度の 法人税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦 課決定処分 ( 以下「本件各更正処分等」とい う ) をした。 本件は , IDCF が , 被上告人である国 ( 被 告・被控訴人 ) を相手に , 本件に法 132 条の 2 は適用されないなどと主張して , 本件各更正処 分等の取消しを求める事案である。 なお , 関係法令の定めや事実関係等の概要 は , 本判決の判文を参照されたい。 Ⅱ . 原審の判断の概要 1. 法 132 条の 2 にいう「法人税の負担を 不当に減少させる結果となると認められる もの」 ( 不当性要件 ) の意義 法 132 条の 2 が設けられた趣旨 , 組織再編成 の特性 , 個別規定の性格などに照らせば , 同条 が定める「法人税の負担を不当に減少させる結 果となると認められるもの」とは , ( i ) 法 132 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497
が定める「法人税の負担を不当に減少させる結 果となると認められるもの」とは , ( i ) 法 132 条と同様に , 取引が経済的取引として不自然 , 不合理である場合のほか , ( ⅱ ) 組織再編成に係 る行為の一部が , 組織再編成に係る個別規定の 要件を形式的には充足し , 当該行為を含む一連 の組織再編成に係る税負担を減少させる効果を 有するものの , 当該効果を容認することが組織 再編税制の趣旨・目的又は当該個別規定の趣 旨・目的に反することが明らかであるものも含 むと解することが相当である ( 上記 ( ⅱ ) の基準 を「趣旨目的基準」という ) 。このように解す るときは , 組織再編成を構成する個々の行為に ついて個別にみると事業目的がないとはいえな いような場合であっても , 当該行為又は事実に 個別規定を形式的に適用したときにもたらされ る税負担減少効果が , 組織再編成全体としてみ た場合に組織再編税制の趣旨・目的に明らかに 反し , 又は個々の行為を規律する個別規定の趣 旨・目的に明らかに反するときは , 上記 ( ⅱ ) に 該当するものというべきこととなる。 2. 法 132 条の 2 にいう「その法人の行為 又は計算」 ( 行為主体要件 ) の意義 法 132 条の 2 の「その法人の行為又は計算」 の「その法人」は , その前の「次に掲げる法 人」を受けており , 「その法人の行為又は計算」 は「次に掲げる法人の行為又は計算」と読むべ きであって , 同条の規定により否認することが できる行為又は計算の主体である法人と法人税 につき更正又は決定を受ける法人とは異なり得 るものと解すべきである。 3. 不当性要件の当てはめ 本件副社長就任は , IDCS 及びヤフーのいず れにとっても , ヤフーの法人税の負担を減少さ せるという税務上の効果を発生させること以外 に , その事業上の必要は認められず , 経済的行 動としていかにも不自然・不合理なものと認め ざるを得ないのであって , 本件副社長就任の目 的が専らヤフーの法人税の負担を減少させると いう税務上の効果を発生させることにあると認 められ , 仮に上記目的以外の事業上の目的が全 82 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 くないとはいえないものと認定する余地がある としても , その主たる目的が , ヤフーの法人税 の負担を減少させるという税務上の効果を発生 させることにあったことが明らかであると認め られる。これらの点を総合すれば , 井上が本件 買収時に IDCS の役員であり , 本件合併時にそ の取締役副社長であることによっても , 本件合 併において , 双方の経営者が共同して合併後の 事業に参画しており , 経営の面からみて , 合併 後も共同で事業が営まれているとは認められ ず , IDCS の未処理欠損金額をヤフーの欠損金 額とみなしてその損金に算入することは , 法 57 条 3 項及び施行令 112 条 7 項 5 号が設けら れた趣旨・目的に反することが明らかである。 したがって , 本件副社長就任及びそれを前提 とする計算は , 法 132 条の 2 の不当性要件に該 当すると認められる。 4. 行為主体要件の当てはめ 本件副社長就任の行為の主体が IDCS 又は井 上であってヤフーではないとしても , 上記 2 の とおり , 本件副社長就任に係る IDCS の行為を 否認し , ヤフーの法人税につき更正をすること ができるものと解される。のみならず , 本件副 社長就任の経緯等を総合すれば , 本件副社長就 任については , 法 132 条の 2 の適用において , ヤフーの行為とも認められるというべきであ る。 Ⅲ . 上告受理申立て理由と本判決 ヤフーが原判決を不服として上告受理申立て をしたところ , 第一小法廷は , 本件を上告審と して受理した ( ただし , 次の論旨 1 点目及び 2 点目以外の論旨は , 受理決定の際に排除されて いる ) 。 論旨 1 点目は , 原審の採用した法 132 条の 2 の不当性要件の判断基準 ( 上記Ⅱ 1 の ( ⅱ ) の趣 旨目的基準 ) は誤りである旨をいうとともに この点に関する原審の事実認定やこれに基づく 評価の適否を争い , 本件副社長就任は同条の不 当性要件に該当しない旨をいうものである。 論旨 2 点目は , 法 132 条の 2 の行為主体要件
Contents 一 2 Page 56 木村敬 74 河上正ニ lnformation Lounge 熊本地震の現場から 消費者委員会一 霞が関インフォ 電力託送料金に関する調査会報告書について 民事国立大学法人が所持しその役員又は職員 最高裁時の判例 が組織的に用いる文書についての文書提出命令 の申立てと民訴法 220 条 4 号ニ括弧書部分の類推 適用ほかー最ー小決平成 25 ・ 12 ・ 19 民事法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号による改正 前のもの ) 132 条の 2 にいう「法人税の負担を不当 に減少させる結果となると認められるもの」の意義 及びその該当性の判断方法ほか 最ー小判平成 28 ・ 2 ・ 29 民事法人税法 ( 平成 22 年法律第 6 号による改正 前のもの ) 132 条の 2 にいう「法人税の負担を不当 に減少させる結果となると認められるもの」の意義 及びその該当性の判断方法ほか ー最ニ小判平成 28 ・ 2 ・ 29 刑事受訴裁判所によってされた刑訴法 90 条によ る保釈の判断に対する抗告審の審査の方法ほか ー最ー小決平成 26 ・ 1 1 ・ 18 刑事刑事施設にいる被告人から交付された上訴 取下書を刑事施設職員が受領した場合と刑訴法 367 条の準用する同法 366 条 1 項にいう「刑事施設 の長又はその代理者に差し出したとき」 ー最ニ小決平成 26 ・ 1 1 ・ 28 加本牧子 76 徳地 ・林史高 80 徳地 ・林史高 91 伊藤雅人・細谷泰暢 99 馬渡香津子 103