ArticIe Special Feature 特集震災と企業法務 震災と金融業務 I. はじめに 金融は , 経済の血流 , 企業の財務的基礎 , 個 人の生活インフラなど , 平時から社会活動の重 要な要素を構成しており , 震災によって企業及 び個人が被害を受けた状態 ( = 有事 ) から復興 する上でも金融による支援は不可欠といえる。 本稿では , 預金業務 , 証券業務 , 保険業務 , 貸金業務等といった金融業務を担う企業 ( 典型 的には , 銀行・協同組織金融機関・系統金融機 関などの預金等取扱金融機関が預金業務及び貸 金業務を , 証券会社などの金融商品取引業者が 証券業務を , 保険会社・少額短期保険業者など が保険業務を , 貸金業者が貸金業務を担う企業 として挙げられる。以下 , これらを総称して 「金融機関等」という ) が震災時及び震災復興 支援においてどのように対応すべきかについて 整理を行う。 なお , 文中 , 意見にわたる部分は , 筆者らの私 見であり , 所属する法律事務所の見解ではない。 Ⅱ . 総論ー震災による被害と被災者支援・ 復興支援における金融機関等の役割の概観 震災によって企業及び個人が受ける被害や直 接的・間接的影響は様々であるが , とりわけ金 融機関等による支援が重要な意味を成すのは , ① : 企業の役職員及び個人の死亡や負傷といっ 弁護士 小田大輔 Oda Daisuke 弁護士 吉田和央 Yoshida Kazuo た人の生命・身体に関する損害 , ② : 企業及び 個人の所有物 ( 企業の営業所・工場等及び個人 の住居等を含む不動産 , 並びに , 企業の事業設 備及び個人の生活用品等を含む動産 ) の滅失や 毀損といった物的損害 , ③ : ① , ②に伴う企業 活動及び個人生活の継続性・連続性の断絶 ( 企 業の事業の停止・縮小及び個人の休職・休学 等 ) に起因する企業の経営・財務状況及び個人 の生活状態の悪化 ( 資金ショート , 既存の借入 れの返済延滞 , 当面の資金ニーズの発生などを 含む ) についてである。加えて , ④ : ③の状態 から復興していく過程で発生する新たな資金 ーズ , ⑤ : ① ~ ③に伴う各種手続・義務の履 行の不能や遅延 ( ① , ②に伴う重要書類・証明 書類等の紛失・散逸等による金融取引や金融機 関等に対する手続上の支障を含む ) , ⑥ : その 他金融機関等へのアクセスチャネルの拡充など 有事であるからこそ重要性を増す利便性の向上 も挙げられる。 これら① ~ ⑥について金融機関等の果たす役 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 保険は , 地震によって生じた人の生命・身体 (1) 保険給付と免責 1 . 生命保険・損害保険 金融機関等の役割 Ⅲ . 各論ー震災復興支援における 割は , 概ね次頁表のように整理できる。 49
同組合 , 漁業協同組合 , 政府系金融機関 , 貸金 業者 , リース会社 , クレジット会社及び債権回 収会社並びに信用保証協会 , 農業信用基金協会 等及びその他の保証会社である。業態を問わず 与信業務を取り扱っている業者が広く連携して 同ガイドラインに則した債務整理を行うこと で , 被災した債務者の債務負担の軽減と再生の 支援に取り組むことが期待されている。 3. 手続や義務履行の免除・猶予 , 必要書類の省略・簡素化 震災による重要書類や証明書類等の紛失・散 逸等を復旧・回復するためには一定の期間や厳 格な手続を要するのが通常であるが , その間に も当該書類等を用いて履行すべき手続の必要性 が生じたり , 履行すべき義務の期限が到来する ことがある。被災者支援のためには , その ギャップを埋めるべく金融機関等の柔軟な対応 が求められる。 熊本地震要請においても , 上記で既に引用し たもののほか , ・今回の災害による障害のため , 支払期日が 経過した手形については関係金融機関と適 宜話し合いのうえ取立ができることとする こと。 ( 同 1. ④ ) ・今回の災害のため支払ができない手形・小 切手について , 不渡報告への掲載及び取引 停止処分に対する配慮を行うこと。また , 電子記録債権の取引停止処分又は利用契約 の解除等についても同様に配慮すること。 ( 同 1. ⑤ ) ・損傷した紙幣や貨幣の引換えに応ずるこ と。 ( 同 1. ⑥ ) ・国債を紛失した場合の相談に応ずること。 ( 同 1. ⑦ ) ・有価証券紛失の場合の再発行手続について の協力をすること。 ( 同 2. ② ) ・生命保険料又は損害保険料の払込について は , 契約者の被災の状況に応じて猶予期間 の延長を行う等適宜の措置を講ずること。 ( 同 3. ( 3 ) ) [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 といった内容が盛り込まれている。 4. その他 ー営業時間・エリアの拡張 , 支援策の周知 そのほか , 震災後という混乱期には特に金融 機関等へのアクセスチャネルの拡充などの利便 性の向上も金融機関等の責務である。 熊本地震要請でも , ・休日営業又は平常時間外の営業について適 宜配慮すること。また , 窓口における営業 ができない場合であっても , 顧客及び従業 員の安全に十分配慮した上で現金自動預払 機等において預金の払戻しを行う等災害被 災者の便宜を考慮した措置を講ずること。 ( 同 1. ( 10 ) ) ・被災者支援措置について実施店舗にて店頭 掲示等を行うとともに可能な限り顧客に対 し広く周知するよう努めること。 ( 同 1. ( 11 ) , 2. ④ , 3. ④ ) ・営業停止等の措置を講じた営業店舗名等 を , 速やかにポスターの店頭掲示等の手段 を用いて告示するとともに , その旨を新聞 やインターネットのホームページに掲載 し , 顧客に周知徹底すること。 ( 同 1. ( 12 ) , 2. ⑤ , 3. ⑤ ) などが求められている。 Ⅳ . 結語 震災時及び震災復興支援において金融機関等 に求められる対応は本稿で紹介した支援策にと どまらず , さらに多岐に亘る。早期かっ抜本的 な復興支援のためにも金融機関等が果たす役割 は大きい。 もとより , 上でも述べた善管注意義務に違反 しないことや健全性の確保とのバランスを図る ことは前提としつつも , 金融機関等としては , 各種支援策を積極的に講じることを通じて , そ の公共性や社会的責任を果たすことが重要であ るといえる。
えた金融機関等の側の対応によって実現される い経済情勢の変動」といった事態が生じたとは ( もちろん , 要請を踏まえるまでもなく , 金融機 いえない旨判示している。 関等が自主的な判断により対応することもある ) 。 2. 既存の借入れに係る条件変更等の柔軟化 , 平成 28 年熊本地震に関連しては , 同年 4 月 当面の資金ニーズへの柔軟な対応 , 15 日 , 財務省九州財務局長及び日本銀行熊本 復興資金融資の柔軟化 支店長の連名で , 各金融機関 ( 銀行 , 信用金 庫 , 信用組合等 ) , 証券会社等 , 生命保険会社 , ( 1 ) 貸金業者からの借入手続の弾力化 損害保険会社 , 少額短期保険業者及び電子債権 震災時には , 被災者が , 貸金業者から返済能 己録機関に対し , 「平成 28 年熊本県熊本地方の 力を超えない借入れを行おうとする場合に , 所 地震に係る災害に対する金融上の措置につい 定の必要書類を用意できないなど , 貸金業法に て」 5 ) ( 以下「熊本地震要請」という ) が発出さ 定める手続等が問題となって , 本来なら借りる れている 6 ) 7 ) 。 ことができる資金を借りられないという不都合 ( ア ) 熊本地震要請の要請事項のうち , 各金 が生ずるおそれがある。 そこで , 平成 28 年熊本地震を契機に , 同年 融機関による既存の借入れに係る条件変更等の 柔軟化 , 当面の資金ニーズ ( 借入れ ) への柔軟 4 月 22 日内閣府令第 40 号により , 貸金業法施 行規則が改正され , ( i ) 総量規制の例外とされ な対応 , 復興資金融資の柔軟化に係るものとし ている「社会通念上緊急に必要と認められる費 ては , 用」の借入手続等の弾力化 , ( ⅱ ) 総量規制の例 ・災害の状況 , 応急資金の需要等を勘案し 外とされている個人事業主の借入手続の弾力 て , 融資相談所の開設 , 融資審査に際して 提出書類を必要最小限にする等の手続の簡 化 , ( ⅲ ) 極度額方式によるキャッシング ( 総量 規制の枠内貸付け ) の借入手続の弾力化 , ( ⅳ ) 便化 , 融資の迅速化 , 既存融資にかかる返 済猶予等の貸付条件の変更等 , 災害の影響 総量規制の例外とされている配偶者の年収と合 算して年収を算出する場合の借入手続の弾力化 を受けている顧客の便宜を考慮した適時的 確な措置を講ずること。 ( 熊本地震要請 1. といった特例が認められた 4 ) 。 ⑧ ) 貸金業者には , 当該改正を踏まえ , 被災者に ・「自然災害による被災者の債務整理に関す 対する資金仲介を果たしていくことが求められ るガイドライン」 ( 後記 ( 3 ) 参照 ) の手続 , ている。 利用による効果等の説明を含め , 同ガイド ②主務官庁の要請に基づく銀行等 , 証券会社等 , 保険会社等の対応 ラインの利用に係る相談に適切に応ずるこ と。 ( 同 1. ⑨ ) 金融業が規制業種であるという性質から , 支 援策のうち多くは , 金融機関等を監督する主務 が挙げられる。 ( イ ) 各金融機関による当面の資金ニーズ 官庁から金融機関等への要請 , 及び , それを踏ま 一三ロ 1 三 日〕く http://www.fsa.g0jP/neWS/22/S0n0ta/20110311ー3. html) ) 。 7 ) 農林水産省は , 既往融資に関して , 償還猶予などの 措置を適切に講じるよう , 関係金融機関に要請している ( 農 林水産省「平成 28 年熊本地震による被災農林漁業者への支 援対策について」〔平成 28 年 5 月 9 日〕 3 ( 3 ) ( イ ) く http:〃 www.maff.go.jp/j/press/kanb0/bunsyo/saigai/160509—2. html) ) 。 4 ) 同様の特例は , 東日本大震災の際にも設けられた ( 平成 23 年 4 月 28 日内閣府令第 21 号 ) 。 5 ) 九州財務局ウエプサイトく http://kyusyu.mof.go.jp/ rizai/pagekyusyuhp016000()94. html) 6 ) 同様の要請は , 東日本大震燹の際にも発出された ( 内閣府特命担当大臣 ( 金融 ) 自見庄三郎 = 日本銀行総裁白 川方明「平成 23 年 ( 2011 年 ) 東北地方太平洋沖地震にかか る災害に対する金融上の措置について」〔平成 23 年 3 月 11 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 52
表震災による被害・影響からの復興と金融機関等の果たす役割 被害・影響 ①人の生命・身体に関する損害 ②物的損害 支援策 生命保険 傷害保険等 損害保険 既存の借入れ ( 主債務及び保証債預金等取扱金融機関 務 ) に係る条件変更等の柔軟化 担い手 保険会社・少額短期保険業者 ③企業の経営・財務状況 / 個人の生 当面の資金ニーズ ( 借入れ , 預金 活状況の悪化 な対応 復興資金融資の柔軟化 ④新たな資金ニーズ 手続や義務履行の免除・猶予 ⑤手続・義務の履行の不能や遅延 必要書類の省略・簡素化 営業時間・エリアの拡張 の払戻し , 資産の換金 ) への柔軟証券会社等 ( 資金ニーズ〔資産の 保険会社・少額短期保険業者 貸金業者 ( 資金ニーズ〔借入れ〕 について ) 換金〕について ) 預金等取扱金融機関 貸金業者 全金融機関等 全金融機関等 ⑥その他 ( 利便性の向上 ) 支援策の周知 に関する損害 , 物的損害を回復する上で重要な 役割を発揮する。典型的には , 人の死亡等を保 険事故とする生命保険 , 傷害等を保険事故とす る傷害保険等 , 物損等を保険事故とする損害保 険が挙げられるが , このほかに , 地震の発生自 体を保険事故とする地震保険もある。 他方で , 保険には地震を原因等とする場合に は保険金の支払義務を免責する地震免責条項が 定められる場合があり , 実務上 , かかる免責条 項の適用範囲や射程が問題になることも少なく ない。 ( ア ) 損害保険 損害保険の地震免責条項として , 地震によっ て生じた損害に対して保険金を支払わない旨の 条項が設けられる場合がある。この場合 , 損害 保険会社としては , その適用により契約 ( 約 款 ) 上保険金の支払を免れることができるが , 当該地震免責条項自体の解釈が争われることが ある。 例えば , 個人賠償責任保険に関する地震免責 条項における「地震」の解釈について , 東京地 判平成 23 年 10 月 20 日 ( 金判 1392 号 45 頁 ) 1 ) 日本生命相互保険会社の約款を参照く http:〃nissay- kids.j p/pdf/shiori/2016/mirainokatachi/02. pdf 〉 50 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 は , 「戦争 , 噴火 , 津波 , 放射能汚染などと同 じ程度において , 巨大かっ異常な地震 , すなわ ち社会一般ないし当該保険契約の契約者におい て通常想定される危険の範囲を超えて大規模な 損害が一度に発生し , 保険契約者の拠出した保 険料による危険の分散負担が困難となるような 巨大な地震」であると限定解釈したのに対し て , その控訴審である東京高判平成 24 年 3 月 19 日 ( 金判 1392 号 37 頁 ) は , そのような限 定解釈を行うことは相当でなく , その規模や被 害の及ぶ地理的範囲等とは無関係に , 地震と相 当因果関係のある損害は地震免責条項の対象に なる旨判示した。 ( イ ) 生命保険 生命保険においても , 災害関係特約において 地震免責条項が規定される場合がある。ただ し , 損害保険の地震免責条項のように一律の地 震免責が定められるのではなく , 例えば , 地震な どにより死亡 , 入院等の保険金の支払事由に該 当した被保険者の数の増加が当該保険の計算の 基礎に影響を及ばすときは , 保険金を削減して 支払うか又は支払わないことがある旨規定され 1) ,
( 預金の払戻し ) への柔軟な対応に係るものと しては , ・預金証書 , 通帳を紛失した場合でも , 災害 被災者の被災状況等を踏まえた確認方法を もって預金者であることを確認して払戻し に応ずること。 ( 同 1. (1) ) ・届出の印鑑のない場合には , 拇印にて応ず ること。 ( 同 1. ② ) ・事情によっては , 定期預金 , 定期積金等の 期限前払戻しに応ずること。また , 当該預 金等を担保とする貸付にも応ずること。 ( 同 1. ( 3 ) ) が挙げられる。 こではいわゆる預金の便宜払いが想定され ているが , 金融機関等の健全性確保とのバラン スからは , 預金証書 , 通帳 , 届出印を不要とす るとしても , なりすましの防止のために , 例え ば , 暗証番号 , 本人確認書類 , その他本人確認 情報 ( 金融機関に届けられている氏名 , 生年月 日 , 住所 , 電話番号 , これまでの取引状況等 ) の提供を顧客に求めることや , 便宜払いの金額 に一定の上限を設けることも許容されるし , か っそうすることが適切であると考えられる 8 ) 。 ( ウ ) 当面の資金ニーズ ( 資産の換金 ) への 柔軟な対応に係るものとしては , ・届出の印鑑を紛失した場合でも , 災害被災 者の被災状況等を踏まえた確認方法をもっ て本人であることを確認して払戻しに応ず ること。 ( 同 2. ( 1 ) ) ・災害被災者から , 預かり有価証券等の売 却・解約代金の即日払いの申し出があった 場合に , 可能な限り払戻しに応ずること。 大輔 = 星野郁也 ] 参照。 実務」 ( 金融財政事情研究会 , 2011 年 ) 77 頁 ~ 79 頁 [ 小田 8 ) 荒井正児ほか編著「震災法務 Q & A ーーー企業対応の ( 同 2. ( 3 ) ) 済することができなくなった個人を対象に債務整理を円滑に 10 ) 同ガイドラインは , 東日本大震災の影響で債務を弁 abstrac レ disaster—g レ disaster-guideline—()l. pdf 〉 9 ) <http://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/ 特集 / 震災と企業法務 ・保険証券 , 届出印鑑等を紛失した保険契約 者等については , 申し出の保険契約内容が 確認できれば , 保険金等の請求案内を行う など可能な限りの便宜措置を講ずること。 ( 同 3. (1)) ・生命保険金又は損害保険金の支払について は , できる限り迅速に行うよう配慮するこ と。 ( 同 3. ② ) が挙げられる。 ( 3 ) 自然災害債務整理ガイドラインの適用 金融機関等による既存の借入れに係る条件変 更等の柔軟化の方策としては , 「自然災害によ る被災者の債務整理に関するガイドライン研究 会」により策定された「自然災害による被災者 の債務整理に関するガイドライン」 ( 平成 27 年 12 月 ) 9 ) の適用という方法がある。 自然災害の影響によって , 住宅ローン等を借 りている個人や事業性ローンを借りている個人 事業主は , 既往債務を抱えたままでは , 再ス タートに向けて困難に直面する等の問題が生じ るおそれがある。特に , 地震等で居住用建物や 事業用建物が全壊しても , ローンは残ってしま い , 被災者は , 震災前の住宅ローンを支払い続 けながら , 新しい住宅のために新たな住宅ロー ンを組み , 二重にローンを支払っていくことを 余儀なくされるという問題 ( いわゆる「二重 ローン問題」 ) が指摘されている。そのような 債務者が一定の要件を満たした場合に , 法的倒 産手続によらずに , 債権者と債務者の合意に基 づき , 債務整理を行う際の準則として策定され たのが , 同ガイドラインである 10 ) 。 同ガイドラインの適用対象債権者の範囲は , 銀行 , 信用金庫 , 信用組合 , 労働金庫 , 農業協 進め , 生活再建を促すために策定された個人債務者の私的整 理に関するガイドライン研究会「個人債務者の私的整理に関 するガイドライン」 ( 平成 23 年 7 月 ) く http:〃www.kgl. or.jp/guideline/pdf/guideline. pdf 〉に係る対応を通じて得ら れた経験等も踏まえ , より一般的な自然災害に係る債務整理 の枠組みとして策定されたものである。 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 53
当該地震免責条項の適用自体が保険会社の ( 合 理的な ) 判断に委ねられている場合が多い。 今般の熊本地震に際しても , 各生命保険会社 は , 被災した顧客の契約について , 災害関係特 約における免責条項を適用せず , 災害関係保険 金・給付金の全額を支払うことを決定してい る 2 ) 。 ②地震免責条項の不適用と 善管注意義務との関係 地震免責条項の不適用は , 被災者に対して保 険金が全額支払われるという点では , 被災者支 援の意義を有するものと評価することができ る。では , 各保険会社においては , 被災者支援 を目的として , 地震免責条項の不適用を決定す ることができるか。 まず , 一律の地震免責条項が定められている 損害保険においては , 損害保険会社としては , 当該条項を適用して契約 ( 約款 ) 上保険金の支 払を免れることができるのであるから , 当該条 項を無視して積極的に保険金を支払えば , 善管 注意義務違反の問題を惹起する可能性は否定で きないと考えられる。 他方 , 地震免責条項の適用自体が保険会社の 判断に委ねられている生命保険については , 生 命保険会社としては , 合理的に , すなわち , 保 険の計算の基礎への影響に加えて , 被災者支援 やレピュテーションの観点などを総合的に勘案 の上で当該条項の不適用を決定したのであれ ば , それが善管注意義務違反につながることは 基本的にないと考えられる 3 ) 。 このように , 保険会社が地震免責条項の不適 用を決定できるか否かについては , 当該条項の 規定ぶりに照らして個別に検討する必要があ る。 2 ) 生命保険協会ウエプサイトく http:〃www.seiho.or.jp/ data/billboard/disaster02/pdf/20160415. pdf 〉。同様の決定 は , 東日本大震災の後にも行われたく ht ゆゾ / w “既ⅲ。 . or. jp / data/billboard/disaster01/inf002/pdf/20110315. pdf 〉。 3 ) 保険金を支払うことが震災の復興に沿うものであり , 企業の社会的責任 (CSR) の履行としての要素も持っとの評 特集 / 震災と企業法務 ( 3 ) 補論ー信用保証契約における 地震免責条項の取扱い なお , 保険に類似するものとして , 信用保証 契約においても , ( 1) で述べたような地震免責 条項が設けられる場合がある。例えば , 住宅 ローンの保証約款には , 「戦争 , 地震 , 内乱及 びこれらに類似の事変に基づいて , 社会的混乱 又は著しい経済情勢の変動によって生じた損 害」について免責と定められることがある。 もっとも , このような信用保証契約の地震免 責条項は , その適用について保証会社に裁量が 認められていない点において生命保険の地震免 責条項と異なり , 地震等が生じたことのみなら ず「社会的混乱又は著しい経済情勢の変動」が 生じることが免責の要件とされている点におい て損害保険の地震免責条項と異なる。 かかる「社会的混乱又は著しい経済情勢の変 動」の意義について , 東京地判平成 26 年 7 月 22 日 ( 平成 24 年 ( ワ ) 18492 号・平成 25 年 ( ワ ) 7474 号 ) は , 個別的に保証会社の保証事業の 存立が危ぶまれるような社会一般的に大多数の 履行遅滞が発生する程度の社会的混乱又は著し い経済情勢の変動が認められるかを検討すべき であるとした。同判決は , その上で , 東日本大 震災においては多数の死者 , 被害者が発生し , 金融機関も債務者に対して債務の返済猶予等の 措置を講ずることが求められ , 実際に金融機関 もそうした措置を講じていたことは認められる としても , 当該事案における保証会社は , 東日 本大震災後も経常利益を増加させており , 東京 証券取引所への上場を果たしているのであるか ら , 東日本大震災によって , その保証事業の存 立が危ぶまれるような社会一般的に大多数の履 行遅滞が発生する程度の「社会的混乱又は著し 価も不可能ではないと思われる。そして , このような「企業 の社会的責任」への配慮が , 原則として経営判断の問題であ り , 善管注意義務・忠実義務違反を生じないことは , 一般的 に認められている ( 江頭憲治郎編「会社法コンメンタール ( 1 ) 総則・設立 [ 1 ] 」〔商事法務 , 2 開 8 年〕頁 [ 江頭 ] ) 。 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497
商事判例研究 平成 26 年度 21 における取締役の責任 MBO が頓挫した場合 東京大学大学院 プームパット・ ウドムスワンナクン Poompat UdomsuvannakuI 東京大学商法研究会 神戸地裁平成 26 年 10 月 16 日判決 平成 21 年 ( ワ ) 第 34 号 , X 対 YI ・ Y2 ・ Y3 ら , MBO 株主代表訴訟事件 / 金融・商事判例 1456 号 15 頁 / 参照条文 : 会社法 423 条 1 項 事実 し , 算定結果は DCF 法で 646 円 ~ 908 円などとされ た。 B 社は , C 社 ( 訴外 ) に , A 社の株価算定を依頼 して二段階買収 ( 本件 MBO) を計画し , 実行に移し を図るため , A 社の非上場化を企画し , その手順と 現状を打破し , A 社プランドの認知向上と浸透拡大 ( 訴外 ) ( 投資ファンド ) は , じり貧状態にある経営の する提案がなされた。 A 社の創業家一族および B 社 18 年 , 金融機関から本件 MBO を含む経営改革に関 新を図ったが , 売上は一向に改善しなかった。平成 売上が減少し続けた。平成 16 年 , A 社は経営陣の刷 勢にそぐわないようになったため , 平成 8 年以降 , 会社である。時代の変化とともに , 販売形態が社会情 A 社 ( 訴外 ) は , 女性用下着の製造等を行う上場 た。一方で , A 社は , D 社 ( 訴外 ) に , 株価算定を 依頼し , 算定結果は DCF 法で 1104 円 ~ 1300 円など とされた。公開買付者側と A 社の社外取締役である Y3 ・ Y4 ・ Y5 ( 被告 ) ( 以下「 Y3 ら」という ) は交渉 し , 公開買付価格を 1 株につき 8 開円とするとの合 意が成立した。これを受け , A 社は本件公開買付け に賛同する旨の意見を表明した。ところが , 本件公開 買付期間中に , 本件買付価格の算定手続に違法または 不公正な点があった旨の内部通報が寄せられた。そこ で , A 社は第三者委員会を設置し調査を行った。 最終的には , A 社の取締役会は , 本件公開買付けに ついての A 社の意見表明に至るプロセスには重大な 利益相反行為が介在していたとして , 意見を変更し , 本件公開買付けに賛同できないと決議した。 B 社は不 賛同表明を受け , 本件 MBO 基本契約に基づき , 創業 家一族に対し , 本件公開買付けへの応募を撤回するよ う請求し , 創業家一族は本件公開買付けへの応募を撤 回した。その結果 , 応募株式数が買付予定数の下限に 満たなかったため , 本件公開買付けは不成立となっ 0 A 社の株主である X ( 原告 ) は , A 社の創業家一 いる」。 務』 ( 以下「 MBO 完遂尽力義務」という。 ) を負って 計画した上 , その実現 ( 完遂 ) に向け , 尽力すべき義 して , 『企業価値の向上に資する内容の MBO を立案 , は , その実施に当たって , 上記善管注意義務の一環と 伴うのが通常であることなどにかんがみると , 取締役 の問題である上 , その実施に当たっては巨額の出費を いては会社の存亡にかかわる重大な会社経営上 「・・・・・・ MBO は , 企業価値の維持・向上 , ひ 請求一部認容。 なったと主張し , 損害賠償責任を追及した。 したことから , A 社が無駄な費用を支出することと らが善管注意義務に違反したため , 本件 MBO が頓挫 Y3 らに対し , 本件 MBO を行うに際し , YI ・ Y2 ・ Y3 ある Y2 ()I の親 ) ( 被告 ) および社外取締役である 族で取締役兼代表執行役である YI ( 被告 ) , 取締役で る。」「そのため MBO の実施にあたっては , 公開買付 く , これに情報の非対称性という構造的な問題も加わ 2 然的に利益相反関係が生じ得るだけでな 「・・・・・・会社の非公開化を目的とする MBO は , Ⅱ [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 119
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法律です。文字どおり被災者の生活基盤をお金 で支援して生活再建を促すという仕組みです。 ただし , 運用場面では , 事業と生活を完全に分 け , 生活の部分にはお金を出すけれども , 事業 の部分にはお金を出さないというルールが非常 に厳格に守られています。例えばタバコ屋さん があって , 2 階が住居だとすると , 2 階部分に は支援金を出すが , 1 階のタバコ屋が壊れても 支援はしませんという , 一般常識に照らすと , おかしな運用になっています。 想は制度全体に共通 根底にある救助の思 な支援制度ですが , この 3 つが代表的 Matsui Hideki 松井秀樹 しているところがあ ります。 松井中野さんは , 企業に対して防災や BCP 等についてア ドバイスをしておら れる立場だと思うの ですけれども , 災害 後の救済ということ では , 津久井さんの お話と同じ感想をお 持ちですか。 中野私も正に津久 井さんがおっしやっ たことと同感です。企業の関係で言うと支援策 はほとんどないと思っていただいたほうがいい と思います。私が今 BCP の話をしているのは , だからこそ , 事前に被災をしないような準備 , 被災をしても大きなダメージを被らないような 準備をしていきましようという意味での事業継 続計画 , BCP を策定しましようということを 推進しているのです。 そして , 先ほど津久井さんがおっしやったよ うに , 企業は支援側に回れ , というのが , 実は 今の日本の法体系だと思います。災害対策基本 法では , 企業は業務を継続して被災者支援対 策 , それから防災対策に協力する努力義務を負 14 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 うという規定になっているわけです。では , そ のための支援策はあるかというと , 特別な支援 等は用意されていないということなので , 正に これは企業が自身で事前に準備しなければいけ ない法体系になっているということだと思いま す。 Ⅱ . ニ重ローンに関する法制 松井ありがとうございます。それでは , 個々 の問題に入っていきたいと思います。まず , 東 日本大震災でも問題になったし , 遡れば阪神・ 淡路大震災なのでしようけれども , 二重ローン の問題があります。こちらは , 個人であって も , 事業者であっても生じうる問題ですが , こ 松井法人については , 恒久的な制度ではない 津久井はい。 ね。 れ , 熊本の震災でも適用されているわけです ことですが , これは今年の 4 月 1 日から施行さ すね。金融機関もそれに則って対応するという ラインが策定され , 恒久的な制度となっていま 松井個人については債務整理に関するガイド 立てでいくというのが定着しつつあります。 インで , 法人に対しては債権買取りという 2 本 は , 個人に対しては自然災害債務整理ガイドラ 設するとのことで , 二重ローンの対策について 回の熊本地震でも , RE Ⅵ C が同種のものを創 れて , 債権買取りを軸に支援をしています。今 談センター」や「産業復興機構」が立ち上げら 庁の支援に基づいて , 各被災県に「産業復興相 上げられました。同種の事業として , 中小企業 とで , 東日本大震災事業者再生支援機構が立ち があります。東日本大震災だけの特例というこ をして , 事業の後押しをしていくという仕組み なっています。一方 , 法人には , 債権の買取り 理に関するガイドライン」で対応する仕組みに 度 , すなわち「自然災害による被災者の債務整 津久井個人に対しては , 被災ローン減免制 のでしようか。 はどのような解決の法律や枠組みができている の二重ローン問題は東日本大震災を経て , 現在
めに帰すべからざる事由によるものである場合 は 3 カ月 ) を超える提出遅延は , 上場廃止事由 になる ( 東京証券取引所の有価証券上場規程 601 条 1 項 10 号 , 同施行規則 601 条 10 項 2 号 参照 ) 。 しかし , 前記 V 4 で述べた特定非常災害法 に基づく特例措置があり , 東日本大震災や熊本 地震に際しては , 有価証券報告書等の提出期限 について , その措置がとられている。 また , 特定非常災害への指定に基づく特別措 置がとられない場合であっても , やむをえない 理由により提出期限内に提出できないと認めら れる場合は , あらかじめ財務局長等に内閣府令 に定める承認申請書を提出することにより , 承 認を受けた期間まで提出期限を延長することが できる ( 金商幻条 1 項・幻条の 4 の 7 第 1 項・ 194 条の 7 第 1 項 , 金商令 39 条 2 項 12 号の 2 , 企業開示 15 条の 2 ・ 17 条の 15 の 2 ) 。 2. 臨時報告書と適時開示 上場会社は , 重要な災害 ( 当該災害により被 害を受けた資産の帳簿価額が当該会社の最近事 業年度末日における純資産額の 100 分の 3 以上 に相当する額である災害 ) が発生し , それがや んだ場合で , 当該災害による被害が会社の事業 に著しい影響を及ばすと認められる場合には , 遅滞なく臨時報告書を提出しなければならない ( 金商 24 条の 5 第 4 項 , 企業開示 19 条 2 項 5 号 ) 。「それがやんだ場合」とは , 災害が引き続 き発生するおそれがなくなり , その復旧に着手 できる状態になったときをいう ( 企業内容等開 示ガイドライン 24 の 5 ー 20 ) 。なお , 連結子会 社に重要な災害が生じた場合や当該会社または 連結会社の財政状態 , 経営成績およびキャッ シュ・フローの状況に著しい影響を与える事象 13 ) 金融庁「有価証券報告書等の提出期限に係る特例措 置について」 ( 平成 23 年 3 月 16 日 , 6 月 22 日 ) , 同「平成 28 年 ( 2016 年 ) 熊本地震に関連する有価証券報告書等の提 出期限に係る措置について ( その 1) 」 ( 平成 28 年 4 月 20 日 ) 。 特集 / 震災と企業法務 が発生した場合も , 臨時報告書の提出事由とな る場合がある ( 企業開示 19 条 2 項 12 号・ 13 号・ 19 号 ) 。 震災の際の臨時報告書の提出時期について は , 東日本大震災や熊本地震の際は , 金融庁よ り , 地震という不可抗力により臨時報告書の作 成自体行えない場合は , そのような事情が解消 した後可及的速やかに提出すれば , 遅滞なく提 出したものと取り扱われるとの見解が示され た 13 ) 。また , 東日本大震災の際は , 金融庁よ り , 重要な災害の発生に係る臨時報告書につい て , 被災資産の帳簿価額の算定ができない場合 は , まず重要な災害が発生した旨の臨時報告書 を提出し , 概算額・見積額を算定した段階で , その額を記載した訂正臨時報告書を提出するこ とで差し支えないとの見解が示された 14 ) 。 さらに , 震災が発生した場合 , 上場会社は , 証券取引所の規則に基づいて適時開示を行うべ き場合がある。典型的には , 軽微基準に該当し ない「災害に起因する損害」の発生がこれに該 当する。開示する際には損害見込額の開示も求 められるが , その算定に時間を要する場合は , まず見込額が現時点では不明である旨を速やか に開示し , その後 , 見込額が算定できた時点で 速やかに追加開示すべきこととされている 15 ) 。 その他 , 震災による影響は , 「債権の取立不能 又は取立遅延」 , 「保有有価証券の含み損」 , 「そ の他上場会社の運営 , 業務若しくは財産又は上 場株券等に関する重要な事実」等の適時開示事 由に該当しうる。 事業年度・連結会計年度に係る決算短信につ いては , 遅くとも決算期末後 45 日以内に開示 し , 期末後 50 日を超える場合は , 遅延の理由 等の開示を行うという運用がなされているが , 東日本大震災の際には , 証券取引所より , 震災 14 ) 金融庁・前掲注 13 ) 平成 23 年 3 月 16 日。大谷潤 「有価証券報告書等の提出期限に係る特例措置」金法 1920 号 ( 2011 年 ) 6 頁。 15 ) 東京証券取引所上場部編「会社情報適時開示ガイド ブック〔 2015 年 6 月版〕」 ( 東京証券取引所 , 2015 年 ) 324 頁。 [ Jurist ] September 2016 / Number 1497 35