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検索対象: 世界 2016年10月号
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1. 世界 2016年10月号

職員すべてが過剰に被曝する事態になることが想定されたこ が事故対応に支障をきたしたとは考えておりません」として いるが、原子炉は安定するどころか、一五日午前九時には毎 とから、注水作業やバラメーターの監視など、原子炉を安定 化させるために必要最低限の人員を残して、一時的な退避行時一万一九三〇″という高い空間線量率が記録されるほ ど大量の放射性物質を外部に撒き散らしている。その後も同 動がとられたものです。 したがって退避した者たちについては、その後、一部は福様に高い値の放射性物質の放出が記録されている。 なぜこれを「支障をきたしたとは考えてない」と言えるの 島第一に戻って、事故対応に従事しています。あくまで退避 だろうか。対策本部の要員数の不足が事故対応の失敗をもた は緊急避難的な措置であり、外部からの支援等も踏まえれば、 らすことになったのではないか。 この退避によって免震重要棟での短時間の要員減少が事故対 。「過剰な被曝の危険性というこ 東電の説明はこうだ 応に支障をきたしたとは考えておりません。 なお、補足的に言えば、あくまで事故対応については、状 ともある逼迫した状況の中で、 ( 作業の必要性と被曝の危険性の ) バランスを勘案して、最低限必要な人数として約七〇人を残 況に応じて必要な要員を確保すべきものと考えています。福 島第二への一時退避は、福島第一で対象とする要員全員を福したというものだ」と。 そもそも「災害時の対処についての機能を満たすために必 島第二に常時滞在させることを意図したものではありません。 朝日新聞が報道されて大きく取り上げられましたが、その際要となる対象の要員を積み上げて」いったはずの対策要員な のに、「最低限必要」と言われても、いったい何を基準にし に当社として公表したとおり、撤退したというつもりは毛頭 なく、これについては ( 朝日報道時の ) 当時の見解と変化はあ て構成したものなのかが、不明だ。マニュアルがあるくらい だから″塩梅″でやっていいはずはない。 りません。撤退ではなく、あくまで一時退避です。一時退避 撤退問題が起こった一五日朝は、事故発生時以上に緊迫し はするけれども、必要な人員は福島第一に残って必要な作業 た事態が起きていた。それにもかかわらず、なぜ事故発生直 に従事していたということです。 後よりも大幅に人数を減らした六九人を第一原発に残したの 書 調 か。そもそもこの六九人は全員が対策本部の要員だったのか 東電の回答には事実の誤りがある。 田 吉 まず「原子炉を安定化させるために必要最低限の人員を残六九人には当直長など中央制御室要員も含まれている。当直 解して」「この退避によって免震重要棟での短時間の要員減少長ら中央制御室要員は対策本部要員とは本来別枠として捉え

2. 世界 2016年10月号

うやって授業の中で原発事故のことを扱うのか、悩んでいま ロシアは原発推進国だ。公教育の授業の中で、先生が子ど す。社会的な問題を話そうとすれば、賠償の話とかに触れる もたちに「チェルノブイリの悲劇」を歴史として語ることは ことになるし。そうすると賠償をもらっている家の子どもと、 できても、「脱原発の理念」を説いたり、原子力政策を推進 そうでない家と、いろいろあるから」 する政府を批判するようなことはとてもやりにくい。 カーチャは答える。 それでも、程度の差はあれ汚染を受けた地域に住んでいる 「別に、東電が悪いとか、だれの責任だとか授業でそこま のなら、子どもたちに「特に汚染されている場所はどこか」 で言う必要はないと思うんです。ただ、放射性物質の拡散が 「放射線は体にどんな影響をあたえるのか」「それを避けるた あって、放射線量が高まった地域があるのなら、そのことを めに何ができるのか」を伝える。「放射線防護」という必修 子どもに伝えて、測定の仕方とか、放射性物質のたまりやす 科目はない。「健康 ( 保健体育 ) 」「エコロジー ( 理科の一部 ) 」な い植物とか、町の中でホットスポットがある場所とか、そう どの授業の中で、できるだけ多くの時間を割いて教えてきた。 いう知識を伝えていけば、いんじゃないですか。 それは政治的にニュートラルにできることだ。 そうすれば、子どもたちが余計な被曝を避ける助けになり 福島県内の学校では、年に二時間程度放射線にかかわる授 ます」 業を行なっている。文科省の定めた必修科目がない以上、学 社会科とか国語の授業で無理にやる必要はない。それぞれ 級活動のうちせめて年二 5 三時間は「放射線学習」にあてる の教師が勉強して、自分が担任するクラスのホームルームと というのが県の出した方針だ。県内各地の学校で、この二時 とい , っことだ。 、課外活動でやればいい、 問、カ = 間の学習活動の中で、先生方は子どもたちが放射線について の 「ロシアでは、教育システム自体が、子どものことを考え 理解できるよう工夫してきた。公表されている事例を見ると、 か て作られているんじゃないでしようか。今の日本では、そう模型を使ったり、イラスト入り教材を使ったり、カーチャた イ プはなっていないから」 ちがやってきたのと同様の真剣な試行錯誤が見える。 ル 理科の教師が言う。 しかし、二時間で何ができるというのか。カーチャ自身、 チ そんなことはない。「原発事故」について、また「原発の 先生からいくら言われても、「見えない」放射線への意識を 年 是非について」授業の中で取り上げることの困難は、カーチ持っことができなかった。放射線防護は、繰り返し、年齢に 事ャも理解している。 合わせたわかりやすい習慣づけが必要だ。

3. 世界 2016年10月号

は違うだろうが、メダル数も過ク ! 」とマスコミが煽り立てる安心、安全、そしてフェア。私出ではない、真心、そして環境保 去最高というから、全体的に日 ことにも非常に違和感を感じた。 たちは、メダルの輝きではなく、 護への強いメッセージがこめら 本の躍進が目立ったオリンピッ 競技を終えたばかりの選手たち輝くアスリートの表情を見たい れた印象に残る開会式であった。 のである。 クだったのだと思う。四年越し 冫間髪いれず、東京オリンピッ 東京五輪で、私たちはそのよ の想いを実らせた選手たちには、 クへの抱負を語らせ、またそう うな開会式ができるだろうか。 リオオリンピックを通して、 祝福の言葉を贈りたい。 しなければならない空気を作っ 私がひときわ感動を覚えたのは、 そして次の開催国に胸を張って しかし、今回のオリンピック ているような印象を受けた。な開会式である。予算不足、準備 バトンを渡せるだろうか。「お を前にしたゴタゴタは一体何だ ぜ、今回のリオオリンピックに 不足といわれており、正直なと もてなし」の心は大事だが、まか ったのだろう。リオオリンピッ りまちがってオリンピックを国 ついての取材に注力できないの ころ期待はしていなかった。し クが決まった当初から囁かれて か。今回で引退を決めている選かし、見てみれば、プラジルと威発揚の場にするようなことは いた政治不安と財政難は、直則 手にむかっても、東京オリンピ いう国の歴史を盛り込んだ素晴 してほしくない。日本だからこ になっても解決の糸口がっかめ らしいショーであった。予算は ックについて言及させるさまに そ、世界に発信できる平和のメ ず、大国のひとつであるロシア は閉ロするものがあった。 ッセージがあると信じている。 ロンドンオリンピックの一〇分 のドーピング疑惑、それに続く 一方で、リオを終え、バトン の一だそうだ。予算ありきの演 ( 山形市・歳・インストラクター ) 出場禁止命令。治安も悪いとさ を渡された日本には様々な課題 れ、選手自身もその応援に向か がある。平和の祭典が、特定の 身近な話題や本誌へのご意見、ご感想な う人も、緊張を強いられたので国や団体、組織の利権にまみれ どをお寄せ下さい。 はないだろうか。スポーツを通ることだけは、断じて許しては マ〒一〇一ー八〇〇一一 ( 住所は不要 ) 岩波 ならない。アスリートファース じて、文化・国籍の違いを乗り 書店『世界』編集部・読者談話室係まで、 一一一〇〇字以内でお送り下さい ( 掲載分に 越え、平和な世界の実現を目指 トの精神をいまここで見直して は謝礼進呈 ) 。 す。こうしたオリンピックの理 いく必要があると思う。参加し マメールでの投稿も受け付けます。 念やひたむきに努力した選手た たアスリートが、ベストを尽く sekai@iwanami.co.jp まで。「読者談話室係」 ちに、水を差すような報道ばか せる舞台を用意する。その心構 宛と明記して下さい 室りが目についてしまい、非常に えで見れば、過剰な演出や装飾、 マ〆切は九月一六日 ( 金 ) 必着。 談残念に感じた。また、ことある見栄を張った箱モノがいかに不マ投稿はお返しいたしません。また、文意 読ごとに「次は東京オリンピッ 必要なものであるかが分かる。 を損なわない範囲で手を加えさせていただ 9 1 くことがあります。どうそご了承下さい。 九月号宮本憲一論文、一二七頁下段一三 行目〈二〇一四年に認定を打ち切った〉を 〈二〇一四年には認定を打ち切るに等しい 疫斗 ~ 案件をきびしくした「新通知」を出し た〉に、同一五行目〈紛争の解決のために は被暑の申請を再開し〉を〈紛争の解決 のためには「新通知」を撤回し〉に、それ ぞれ訂正します。 ( 編集部 ) 連載の「八方ふさがり、八つ当たり」は 今月休載します。

4. 世界 2016年10月号

世界 SEKAI 2 0 1 6 . 1 0 ー 15 6 断は基本的に当直長が実施する。また、発電所の緊急時対策が該当」する、としている。 本部を統括管理する発電所対策本部長には原子力防災管理者 ただ、東電はこの回答で、要員数はその「社内マニュア である発電所長がその任にあたることと原子力事業者防災業 ル」では「具体的な人数の指定はなされていない」とし、 務計画で定めており、発電所緊急時対策本部を支援する本店 「災害時の対処についての機能を満たすために必要となる対 緊急時対策本部は、社長が本店対策本部長になり統括管理を 象の要員を積み上げていった結果として、結果的に約四〇〇 行うこととしている。なお、社長が不在の場合には副社長ま 人という人数になったということ」と回答した。 たは常務取締役の中から選任することとしている」 ( 傍線筆者 ) さらに東電広報部は「約四〇〇人という数字は、あくまで 重要なのはその数だ。吉田所長は調書で、発電所 ( 現場 ) 社内マニュアルで緊急時の対策をとるうえで対象となる要員 の対策本部の要員数を約四〇〇人と証言している。少なくと の総計であり、その人数がいなければ緊急時対策本部が構成 も事故発生当初は事故対応における司令塔Ⅱ対策本部にはそ できないという性質のものではない」とも主張している。 れだけの人数で構成される必要があった。 東電の主張に従えば、事故発生当時、「災害時の対処につ いての機能を満たすために必要となる対象の要員を積み上げ 東電「要員対象は約四 00 人」 て」いくと約四〇〇人になるのだから、四〇〇人という数字 その根拠になるものを、本誌の照会に対し、東電は単に が「社内マニュアル」に記載されていようがいまいが、結果 「社内マニュアル」としか説明してない。 的に約四〇〇人が対策本部の要員数なのであり、「その人数 まずは東電の主張を整理してみようーー。 がいなければ緊急時対策本部が構成できないという性質のも 『世界』編集部への二〇一六年八月一一六日の東電広報部に のではない」と言っても、対策本部としての機能を実態とし よる回答 ( 以下断りなき場合はこの東電回答を指す ) によると、 て、果たすことができないのではないか。 「東日本大震災が発生した当時に準備されておりました社内 まずは現地の対策本部の要員数が、約四〇〇人だったとい マニュアルにもとづき、約四〇〇人を要員対象としていまし う点について齟齬のないことは確認できた。 た」としており、これは吉田調書の内容と符合する。誰がそ 撤退した (.5äは支援組織の該当者だったのか の要員になるかについては、「所長、ユニット所長、各班 ーー発電班、保安班、復旧班などの班長、そのメンバーなど もう一点、本稿で検討しなければならないのが、第二原発

5. 世界 2016年10月号

れてしまうのではないかという不安をもっている、それが半 「不要なもの」にされる不安 世起則以上に高まっているということです。 障害の「社会モデル」に則って考えると、社会が不要とす これから何を考えていくべきなのか、メッセージからいろ る人間は時々刻々と変化します。たとえばかっては黙々と働 いろな方の、しばしば矛盾する視線を取り込んだときに、大 界 きく二つの方向性が見えてくるように思います。 くコミュニケーション下手な人の価値が認められていたのに、 世 そうした仕事が機械で置き換えられるようになって、いわゆ 一つは、これは私自身も、今回の呼びかけ人の人たちも、 皆に言えることだと思いますが、各人各様に頼る先が少なか るコミュニケーション能力が強く求められるようになった。 消費の場でも、生産の場でも、長期的に安定して見通しのつ ったのではないか。施設にしか頼れない知的障害の人、過重 きやすい関係性が崩れ去って、めまぐるしく配置や距離の変 労働の中でヘルプが出せない状況の施設職員、依存物質以外 わる関係性へと変化した。そのなかで、コミュニケーション に頼れない依存症者、精神医療に囲い込まれてしまった精神 障圭暑、犯罪の予測と治療という無理難題を強いられる精神が苦手な人、自閉傾向の強い人は「障害化」させられる。 時代とともに、場所とともに、不要なものとされる人の範 科医 : : : 親も、福祉的なサポートが得にくい地域では、養育コ 囲が広がっていきつつある。しかもその「不要」の基準が流 ストとされるものを全部引き受けなければいけない。それで、 誰かに依存先を広げることができない状況に置かれている。 動化しているというか、いっ変化するかわからない世の中で、 依存先が少ないと暴力の加害者や被害者になるリスクが高 / 極端に言えば、みんなあす新しい障害者になるかもしれない。 「障害者の問題は他人事ではない」と言うときのテンプレ まることは、すでに事例の蓄積によって部分的に示されてい ートは、誰でもいっ交通事故に遭ったり病気になったりする ます。まずすべての人に依存先を保障することを考えないと かもしれないという想像力止まりだったと思います。でも、 いけないし、依存先が存在するという情報を、きちんとみん なが見られるようにしておく必要もある。それに逆行する世 社会が求める範囲がどんどん厳しくなることで、あした障害 者になるかもしれないというリアリティが増している。それ の中の動きに対してはアラートを出さなければいけない場面 こそ自分の周りの学生さんや介助者の方と話していても、不 もあると思います。 もう一つ、今回、ぎりぎり潜在化していたものの蓋が開い 要なものとされる恐怖とどう折り合いをつけていくのかを、 たと思うのは、恐らくみんな、あした自分が不要なものにさ それぞれ意識している気がします。

6. 世界 2016年10月号

いからである。実際には議案の内容に大きく関わっていても、 議会との関係でこの二つの要素を満たすには、議案提出の 答弁や説明を求められることはない。 前にそれらが無傷で可決される段取りを整えておかなければ 都の政策についていったい誰が責任を持つのか。都政はど ならない。それには、あらかじめ都議会多数会派との間で話 なたがどこでどのように決めているのかわからないとの小池 をつけておくのが最も合理的かつ手つ取り早い。こうした文 氏の批判は、おそらくこんな事情を背景にして出てきたはず脈の中で、半ば必然的に出来上がったのが都議会自民党会派 だ。たしかに都議会改革は急務だと言っていし 内の「政策推進本部」なのだろう。 ー無謬主義、事なかれ主義との訣別 このやり方だと、都議会のすべての会派に話をつけている そもそもわが国の地方自治制度では、例えば予算案の編成 わけではないので、議案に公然と反対する会派も出てくる。 権は知事にのみ属していて、都議会にはない。ところが、そ しかし、いくら少数派が反対しても、多数派がそれを蹴散ら の編成権の一部 ( しかも重要な一部 ) が事実上都議会自民党会 かしてくれるので、議案処理については何も心配はな、。 派に移ってしまっている。条例案も都民にとって必要なもの た、議場で厳しい質問をぶつけられることがあっても、それ を知事が責任を持って提案すれま、、 のこ、事前に都議会自 が議案の処理結果に影響を及ばすことはないので、慇懃な答 民党の了承を得られたものしか提案しない。こんな歪な仕組弁をしておけばやりすごせる。 みにしてしまったのは誰の責任か。都議会自民党だけの責任 こうしたやり方は、東京都に限ったことではない。全国の かといえば、必ずしもそうではない。むしろ執行部側にこそ 多くの自治体に共通してみられる光景である。そこでは、議 原因の多くがあると、筆者は睨んでいる。 案を議会がよく吟味した上で修正したり、否決したりするこ その最大の原因は、政策形成における都庁の無謬主義と事とはない。議案をめぐってさしたる議論が展開されることも なかれ主義だと思う。この場合の無謬主義を多少誇張して言 ない。万事を予定調和的に処理するのがもつばらである。 診えば、都庁で作成した予算案や条例案は完璧であって、修正 つつがなく議案が通ることはむしろ望ましいという考えを 本を加えられる箇所などあってはならない。ましていわんや、 持つ自治体関係者は多い。ただ、この根回しによる事前調整 否決されることなど決してないとの自負である。もう一つの 方式の弊害は大きい。議会の多数会派と密室でこそこそと相 の 善事なかれ主義とは、公の場での面倒な論争を避けるために、 談してものごとを決める。そこでは一部の声の大きい議員の 片それが出ないような環境を整えておこうとする心理である。 利害が反映する可能性を排除できないが、それを外から見る

7. 世界 2016年10月号

は日本赤軍のような過激派組織がやるものだとの思い込みが おわりに あるのかもしれない。しかし、現在の格差社会、若者と高齢 層に忍び寄る貧困は明らかにテロリズムの土壌を肥やしてい テロは地域とテーマを変えながら進化し拡散している。今 る。以下の事例と世界のテロ事件とを比較対比してほしい。 はイスラム国のテロが注目を集めているが、その特殊性に目 ・一一〇〇八年六月、秋葉原無差別刺殺事件 ( 犯人が突入したト を奪われて、現代世界が作り出している巨大なテロ環境とそ ラックで三名、ナイフで四名が絶命、動機として若者の派遣労働実態が の脅威を忘れてはならない。 問題視されたが、直接原因はネットの書き込みトラブルとされた ) 一言でいえば、テロはガンに非常に似ている。ガンは自分 ・一一〇一五年六月、東海道新幹線列車内放火自殺 ( 年金・生活 の細胞がガン化する。テロリズムも、社会の一部がテロ化す 保護に不満の七一歳男性が放火。火災により一名死亡。動機として年 るのだ。元が自分自身だから、病巣を外科的に除去しても、 金・生活保裔題、高齢者の貧困と孤独などが指摘された ) ガン細胞は転移し、強引な手術は生命を危うくする。最近の ・一一〇一六年七月、相模原障害者施設事件 ( 施設の元職員が重 ガン治療は、放射線治療や化学療法と同時に、体の免疫性を 高めてガンを予防する医療を重視する。生活のストレスを減 度障生暑一九人を刺殺、犯人は衆議院議長障害者対策を進言 ) これらは精神に異常をきたした個人による、あるいは自暴 らし、発がん性物質を含む食品の排除、定期的な運動、十分な 自棄になった者の暴発犯罪として報道されているが、どうだ 睡眠などが重要な対策だ。逆に喫煙をやめず、仕事のストレ ろうか ? イスラム国や難民問題との接点こそないが、格 スから不眠症で深酒を繰り返す生活でま、、 。しくら病院を増や 差・貧困・差別・隔離などを背景とし、政治的動機を伴った し新薬を投入しても、ガンの発生を止めることはむずかしい。 威現代テロリズムの萌芽が表れているのではないか ? テロリズムも全く同様である。社会が不健康な状態でテロ の 日本の公共施設や繁華街、原子力施設などの防御態勢はほ の発生と拡大を止めることは困難である。中東・アフリカで ム の社会破壊とヨーロッパにおける難民問題は国際社会にすさ 厚とんど無いに等しい。日本でテロ対策というと、共謀罪新設 や監視体制の強化、そして警察や自衛隊の増強がすぐテーマ まじい規模でテロの萌芽を育てつつある。同時に強調したい テ に上がるが、テロは旧来の警察や軍隊で防御し抑制すること のは、テロリズムは中東だけに起因する問題ではないことで す 透 浸 はできない。まず何よりも、世界のテロリズムの現実を正確ある。社会のひずみがあるところには必ずテロリズムが発生 域に把握し、日本社会を現代テロリズムから防御する方策を構 する。日本も例外ではなく、今からでも地道な努力によって 生築していかなければならない。 日本社会のテロに対する免疫能力を高めていく必要がある。 ロ

8. 世界 2016年10月号

ありますけれども、まず、ここにいる人間が、ここというの は免震重要棟の近くにいる人間の命にかかわると思っていま したから、それについて、免震重要棟のあそこで言っていま すと、みんなに恐怖感与えますから、電話で武藤に言ったの 世かな。一つは、こんな状態で、非常に危ないと。操作する人 間だとか、復旧の人間は必要ミニマムで置いておくけれども、 それらについては退避を考えた方がいいんではないかという 話はした記憶があります。その状況については、細野さんに、 退避するのかどうかは別にして、要するに、二号機について は危機的状態だと。これで水が入らないと大変なことになっ てしまうという話はして、その場合は、現場の人間はミニマ ムにして退避ということを言ったと思います。それは電話で 言いました。ここで言うと、たくさん聞いている人間がいま すから、恐怖を呼びますから、わきに出て、電話でそんなこ とをやった記憶があります。ここは私が一番思い出したくな いところです。はっきり言って。 質問者それに対して、おふた方、武藤さんなり、本店側の 人間に対して電話したときの向こうの反応はどうでした ? 回答者別にどうということではなくて、そういう状況かと いうことなんです。それでだとか、そうではないとかい う話ではないんですけれども、私は、そういう危険があるよ と、わかったと、そういう感じなんですね。私の行動として は、廊下にいた協力企業の方のところに行きまして、みんな、 よくわからないでばーっと見るなりしていますから、この人 たちを巻き込むわけにいかないと思って、一生懸命やってき ましたけれども、非常に大変な状況になってきて、みなさん、 帰ってくださいと。退避とは言わないです。帰ってください と。帰っていただければというお話をして、あとはこっちに 戻って来て、こっちも声なかったですよ。その時点で。あと は待つだけですから。水が入るかどうか、賭けみたいなもの ですから。それだけやったら、あとはほとんど発言しないで、 寝ていました。寝ていたというか、茫然自失ですよね。 質問者それは、弁がなかなか開かないとか。 回答者開いたんです。開いたんですが、なかなか圧が下が らないところから、弁を開けるところはまだ操作ですか ら、何やっているんだ、どうなっているんだとなるんですけ れども、弁が開いたにもかかわらず、圧が落ちない。そ ら、見たことかと。結局、サプチャンのほうが高いですから ね。落ちないんではないかと。落ちないで、燃料がどんどん 水位が下がっていっているなと。もう一つは、あまり時間が なかったものですから、ポンプが、消防車の燃料がなくなっ て、水を入れるというタイミングのときに、炉圧が下がった ときに水が入らないと。そこでもまたがくっと来て、入れに 行けという話をしていまして、これでもう私はだめだと思っ たんですよ。私はここが一番死に時というかですね。

9. 世界 2016年10月号

店 ) からの引用である ( 傍線は筆者。以下同 ) 。 加るのが順当で、実際の対策本部要員数はさらに少なかったこ 6 とになる。 吉田所長が調書で「何度も死んだと思った」という状況が それにしても、東電は「災害時の対処についての機能を満訪れる。ここが撤退問題が本格的に議論される端緒になる。 一四日の一八時二八分のテレビ会議でのやりとりを見てみる。 たすために必要となる対象の要員を積み上げていった結果」 界 として本部対策要員数を算出するのだから、この一五日の朝 世 1 にいったい何が必要な対処で何が必要ではない対処だったの すみません、《ピー音》ですけど。、 ま、消防車のほ か、その明確な理由と基準を明らかにしなければならない。 うが、どうもオイルを入れまわっていたのですが、ちょっと、 この点も東電に再質問する。 なんか手間取っているみたいで、消防車がいま止まっている そして、もう一箇所、回答に誤りがある。「一時的な退避可能性があります。すぐオイルを入れまわっていますので、 行動がとられたものです」「撤退ではなく、あくまで一時退 すぐに復旧すると思いますが。 避です」という点だ。 ええ、いまポンプ回っていないんですか。 翌日一六日になっても第二原発に撤退した所員の八割以上 —u- と思いますけど。 が第一原発に戻っていないことは前回までの本連載で詳述し 本店ちょっと整理しましよう。いま何台持っていて、何台 ている。東電がいう「一時」とはどの程度の期間を指すのか、 不具合で、何台生きていて、それから、これから何台来るの また結局、第二原発に撤退した所員のほとんどが戻ってきた のはいつなのかーー。東電とのやりとりを通して撤退問題の e-l-L 言われているのがどのポンプか分からないです。 2 号 事実を本誌読者に提示していくつもりだ。 の注水に使っているポンプなんだったら、そりやまずいです よ。 「消防車かいま止まっている可能性があります」 •-I-L ええっとね、 2 号のほうは回っていると思います。 •-u- どっちなんですか。 次に撤退までの過程について順を追って検証していく。 この過程で第一原発の緊急時対策本部を第一一原発に用意す 大元の水の汲み上げのほうが、多分もうそろそろ燃料 るとのやりとりが出てくる。以下のテレビ会議でのやりとり が切れるという話が、いま現場にいた人から情報が入ったん で。すみません。かもしれません。 は『福島原発事故東電テレビ会議時間の記録』 ( 岩波書

10. 世界 2016年10月号

3 5 ー「語り」に耳を傾けて でした。「障害者はいないほうがいい」「人間としてではなく、 に緊張関係があります。私は一八歳のときに、山口から東京 動物として生活を過ごしている」「車いすに一生縛られてい に出てきて独り暮らしを始めました。「誰にも頼らず一人で る気の毒な利用者も多く存在する」ー・・ー・そうした言葉にふれ 生きていける」ことではなく、「必要な助けを、必要なだけ て、なぜ、脳性まひの当事者団体「青い芝の会」神奈川県連得られる」ことこそ本当の自立であるというのが、自立生活 合会の行動綱領に、「われらは愛と正義を否定する」と掲げ 運動が確立した考え方でした。実際に、地域での自立生活は、 られたのか、今回の事件はそのまま教えていると感じました。 不特定多数の介助者のサポートなしには回りません。それは、 綱領の文案をつくった横田弘さんの頭にあったのは、当時家族でもない見ず知らずの人に、シャワーを浴びたり着替え 相次いでいた障害児殺しのこと、特に、一九七〇年に起きた、 をしたり、そういう非常に無防備な面をさらす日常があると 横浜市の母親が脳性まひの一一歳の娘を殺害するという事件で いうことです。そこには、たとえばもしも熱湯をかけられた した。母親の置かれた環境への同情が集まって、減刑嘆願運 ら、本気で暴力を振るわれたら、自分にはなす術がないとい 動が起きたのに対して、神奈川「青い芝の会」は、殺された う恐怖心とか怯えも生じうる。 子どもの立場から激しく抗議しました。母親は、「この子は その本質的に脆弱な関係性をどうするか、これまで半世紀 なおらない。こんな姿で生きているよりも死んだほうが幸せ かけて先輩たちま、、 しろいろな道を模索してきました。とに なのだ」と考えた、でも、そんな一方的な愛ならいらない、 かく介助者と対話して信頼関係を育むという方向性はその一 と横田さんは言っているわけです。もし殺された子に障害が つです。あるいは、依存先を分散する。不快な介助関係にな なかったら世間は同じことを言うだろうかと、減刑嘆願運動 ったとき、「その人にしか頼れない」という状況は危ないので、 に潜む優生思想を早い段階で暴いたのが、横田さんをはじめ 多くの介助者を登録して、「この人がだめならこの人」と数 とする「青い芝の会」の運動だったと思います。 で勝負する。さらに、お金を払うことも一つの方向性でした。 比較的最近まで、介助・介護はほとんど無償労働だった。そ ニ 0 0 0 年以降の地殻変動 こからお金を媒介に、必要なサービスが安定して提供される もうひとつ、容疑者の男性が元施設職員だったことで、否介助関係を取り結ぶ仕組みが構築されてきた。 応なしに自分と介助者との関係性を考えてしまった仲間も少 ただ、二〇〇〇年代から、だんだん介助に関わる若い人の なくないと思います。障害者と介助者のあいだには、潜在的 層が変わってきた印象をもっています。そういう人ばかりで