121 ー 2 0 1 6 年参院選 票率が高くなっている。重視した人が一党に投票する傾向が強かったのであり、 は、憲法と原発・エネルギー政策を最重 番多かった年金・医療では自民党の得票依然として経済政策のイシューオーナー要視した人びとの間である。ここでは共 率は三割強に留まっているものの、そうシップは自民党の手中にあったことがわ産党も票を伸ばした。ただ、グラフの横 かと言って民進党が全体の得票率を大きかる。その意味では、アベノミクス継続幅が示すように、憲法を最も重視した人 く上回る票をこの分野で集めた訳でもなを訴える自民の選挙戦略は的を射ていた。はーー一一〇一四年総選挙時の五 % からは 。つまり、経済重視の有権者ほど自民民進党の得票率が自民党を上回ったの急伸したがーー全体の一六 % 、原発・エ ネルギー政策は三 % に過ぎない。問題関 心を同じくする人びとの間では高い支持 憲法 を集めたものの、その関心が有権者の大 率 半に広がるまでには至らなかった。 得 自民党が経済政策でイシューオーナー 各 シップを握り続けていることの背景とし の て、有権者による景気評価の後退が一服 都年金・医療 していることが挙げられる。図 3 ( 次 権 有 頁 ) は、一四年衆院選と一六年参院選に 見教育・子育て おける景気評価を比較したものである も産業政策 ーー目Ⅱ ~ ( 両調査に回答した有権者のみを比較 ) 。二〇 最 一四年と比べて、「かなり良い」と「や を財政・金融物 政 や良い」を合わせた肯定的な回答は減少 各 したものの ( 一七 % ↓一三 % ) 、同時に 2 外交・安全保障 「やや悪い」と「かなり悪い」を合わせ 明産新他「た否定的な回答も減少した ( 五八 % ↓五 公共維の そ五 % ) 結果、全体としての景気評価は一 自民 進 民
世界 SEKAI 2 0 1 6 . 1 0 ー 12 0 図 1 当選者が重視した政策 加 2 0 ■自民 ロ公明 ■民進 ■共産 ロ維新 選択割合 その他 原発・エネルギー政策 社会資本 震災復興・防災 憲法 地方分権 政治・行政改革 環境 治安 雇用・就職 年金・医療 教育・子育て 農林漁業 産業政策 財政・金融 外交・安全保障 の訴えは各候補者、 ーー岡田代表、江田憲司代表代行は旧通 そして有権者に届い産省出身ーー内で重視したのは一割止ま たのだろうか。東大り、そして共産党ではゼロであった。他 谷口研・朝日調査で方、憲法 ( 改憲・護憲を問わず ) について は、候補者と有権者は、民進の一一割、共産の五割が重視する の双方に対して、今中、自民ーーー安倍首相は年頭の記者会見 回の選挙で重視したで「参議院選挙でしつかりと訴えてい 政策を回答してもらく」と発言したにもかかわらずーー・で重 っこ 0 視したのはわずか二名、公明ゼロで、野 図 1 は、主要政党党陣営から「争点隠し」という批判を招 の当選議員が上位一一一いた。地方分権や政治・行政改革などで つまでに各政策を挙独自色を出したいおおさか維新の会 げた割合を示したも ( 現・日本維新の会 ) も含めて、従来以上に のである。外交・安「何を争点にするか」自体が争点になる 全保障、産業政策、選挙であった。 憲法、原発・エネル この点を有権者の側から示したのが、 ギー政策で与野党間図 2 である。同図では、棒グラフの太さ のカの置き所の違いが各政策を最も重視した人の割合を、そ が目立つ。たとえば、して高さがそれぞれの政策を重視した人 ( 3 ) 自民党と公明党の当びとの間での各党得票率を表している。 選者の三割弱が産業比較的多くの有権者が関心を寄せてい 政策を重視していたた外交・安全保障、財政・金融、教育・ のに対して、民進党子育て、雇用・就職などでは自民党の得
前々回・前回の都知事選で野党側の候発信、第二〇代、戦後九人目の都知事との中でもっとも早く立候補を表明し、そ 補者として次点の結果を得、選挙後も都して都民が選んだのは、小池百合子氏でれだけマスコミへの露出も多く、さらに 知事職に意欲をもって準備を進めてきたあった。初の女性都知事である。 自民党都連を悪役に仕立てて都議会「冒 兀日弁連会長の宇都宮健児氏は、野党が保守分裂の中で、主な政党の支援を受頭解散」を記者会見でぶちあげるなどの 界鳥越俊太郎氏の推薦で足並みを揃えたこけず、安倍政権が有権者の半数近い支持話題性を提供したこと、退路を断って進 とから、支援者の間に対立的状況が生まを得ている状況で自民党を向こうに回しむ姿勢から決断力や「強さ」をアピール れることを避けるため立候補を辞退した。て、二九一万二六二八票 ( 得票率四四・四したこと、初の女性知事となることなど、 一方の自民党側は、環境大臣や防衛大九 % ) という都民の支持をもぎとったこ多く挙げられようが、ここでは都民・有 臣を歴任した小池百合子衆議院議員が六とは特筆されるべきだろう。小池氏には権者の政党不信の強さと野党側の戦略的 月二九日に早々と立候補を表明、これを世代を超えて支持が寄せられ、朝日新聞失敗の一一点を取り上げたい。 「スタンドプレー」と反発した自民党都の出口調査によれば、支持政党をもたなそもそも、都知事選挙で政党が選挙戦 連が他の候補者の擁立を模索し、それにい無党派層からも五一 % の支持を得た。 を主導して勝利したケースは、一九八七 対して小池氏側が逆に都連を「悪役」に次点は増田氏 ( 一七九万三四五三票、得票年、鈴木都政三期目の選挙が最後である。 仕立てて劇場型選挙を展開した。 率二七・四〇 % ) 、野党統一候補の鳥越氏は。、鈴木が四期当選を果たした九一年は自公 結局、自民党側は、国交省官僚から岩三位 ( 一三四万六一〇三票、二〇・五六 % ) にが磯村尚徳を擁立して敗北している。九 手県知事を経て総務大臣を歴任し、近年終わった。 五年には無党派の青島が当選、自民・社 は「地方消滅」論で地方自治をめぐる論なぜ小池氏は圧勝したのか。「政治と会・公明などが推薦した官僚出身の石原 議を提起していた増田寛也氏を擁立、 カネ」で二代にわたり知事が辞職する中信雄を退けている。この時には大阪でも 池氏の展開する劇場型選挙とは異なり、で、実務的でクリーンな印象のある ( 少タレント出身で無所属の横山ノック知事 実務型の手堅い行政手腕を前面に出す選なくとも週刊誌等で「政治とカネ」をめぐるネが誕生したことから、無党派の存在感と 挙戦を展開していくこととなった。 ガテイプな報道は見当たらない ) 増田氏が、既成政党への不信感を印象づけた。 ■小池圧勝への文脈 巨大与党の支持を得て選ばれてもおかし 一九九九年も保守分裂の中で、自公推 七月三一日午後八時。投票が締め切らくはなかったはずである。 薦の明石康は六九万票で大敗、政党推薦 れると同時に報道各社は「小池当確」を 小池氏勝利の要因としては、主要候補のない石原慎太郎が当選している。
一片山善博。「日本を診る」 . 連載 都議会改革は都庁改革 案するのだが、この独特の政策形成プロセスにおいては、 ■急務の都議会改革 往々にして提案者である知事よりも先に都議会自民党議員の ・先の東京都知事選挙は、小池百合子氏の圧勝に終わった。 その小池氏が選挙期間中に主張していたことの中で最も印象方が内容を把握し、各局との協議を通じて行われる修正や調 整を経て、内容が固まるのだという。 に残ったのが都議会改革である。立候補を表明した際に打ち そもそも一一元代表制を採るわが国の地方自治制度のもとで 出したのが「都議会の冒頭解散」で、これは都議会自民党会 は、知事や市町村長などの首長が責任を持って議案を作成し、 派に対する挑戦状であると、マスコミは報じていた。 それを議会に提案するのが本来のやり方である。議案の説明 また、都政はどなたがどこでどのように決めているのかさ ところが、都の つばりわからないとも訴えていた。これは都議会自民党会派責任は当然首長が果たさなければならない。 仕組みでは、知事の知らないうちに各局と都議会自民党との 内にある「政策推進総本部」のことが念頭にあっての発言だ 間で既に議案の内容がセットされているのだから、知事はま ろう。この総本部なるものが存在することについては、筆者 っとうな説明責任を果たしようがない。 も都庁関係者から一度ならず聞かされたことがある。都の主 一方、実質的に議案の内容を決めた都議会自民党も、説明 要政策については、都庁各局があらかじめこの総本部に持ち 責任を果たすことはない。形式的には議案は知事が提案した 込み、そこで了解が得られてから具体的に予算案に盛り込ん ものであり、都議会自民党に属する議員たちは他の会派の議 だり条例案の作成に着手したりするのだという。 予算案にしても条例案にしても、いずれも知事が議会に提員と同じく、形式上は議案を知事から受け取る立場でしかな かたやま・よしひろ 一九五一年生まれ。 前鳥取県知事、元総務大臣。 慶應義塾大学法学部教授。 世界 SEKAI 2 0 16.10
石原の二期目から猪瀬・舛添都政まで、東・大田・渋谷 ) で行なわれた都議補選と比結果が一定程度見られたと評価すること 自公は対立候補こそ立ててはいないもの較すると、より明確に状況が見えてくる。が可能だろう。 問題は、なぜ鳥越候補がここまで支持 の、政党が前面に立っ選挙戦は行なって補選は四区とも自民党候補が当選した いない。都知事選においては実質的に無が、台東区では野党側が共産党に、大田されなかったか、という点にある。 党派の勝利が三〇年近くにわたって続い区が民進党に候補者を一本化、新宿・渋・鳥越氏はなせ大敗したか ていると言える。小池勝利は、その文脈谷では一本化はなされず、民進・共産の「都知事選は国政じゃないんだから、 安保法制とか憲法とか言ってないで、と においても理解することができよう。 候補が立候補している。 ■野党統一候補の大敗 四つの区の「一本化」された候補およにかく生活の問題を鳥越さんは言うべき 都知事選に先立っ七月一〇日の参院選び民・共の各候補の得票合計と鳥越候補だと思う」 において、東京選挙区では、自民 ( 二の得票を比較してみると、新宿では鳥越都知事選の告示日の一四日、鳥越候補 人 ) ・公明の候補が得た得票を合計する候補は民進・共産候補の合計票の五〇・ヘの応援演説を引き受けつつ、 と二三〇万〇一五七票となる一方、民進六 % しか得られていない。台東区では五 ( 現在は解散 ) の奥田愛基氏は右のよ 党 ( 二人 ) ・共産党・社民党の野党三党の六・六 % 、大田区が五〇・四 % 、渋谷区にうにツィッターで発信した。 鳥越候補が野党支持者の信頼をも得ら 四人の候補の得票合計は一一三九万〇七八至っては四一・四 % しか鳥越候補は得ら 八票である。与党側に「日本のこころをれていない。参院選で野党に票を投じたれなかった最大の要因は、鳥越氏がそも 大切にする党」の一〇万票あまりを加え有権者の四割しか、鳥越候補を支持しなそも都政への関心を持っていなかったと いう点に求められよう。 ると与党側がかろうじて上回るものの、かったのである。 互角であることは間違いない。 補選の投票率は参院選と比べて若干高参院選の結果から改憲への危機感を覚 選 だが、都知事選で野党統一候補の鳥越いがほば同じ状況であり、しかも野党側え、「参院選と違う結果」を出すために 事 氏が得た票は、参院選で野党側が得た票の得票合計は、四区とも、参院選に比べ決意したという、告示前日の立候補表明。 京 の五六 % あまりにとどまった。これは野て上乗せする結果を出している。台東区その記者会見で「 ( 他候補の ) 公約は読ん 東 一党の「共闘」の成果がまったく失われての野党統一候補 ( 共産 ) は、参院選のでません。関心なかったから、読んでな 潮 いることを意味している。 民・共・社の得票合計を上回る票を得てい」と言い、都政の課題についての記者 いる。この意味で、補選では野党共闘のからの質問に「知らない」「これから」 世都知事選と同時に四つの区 ( 新宿・台
世界 SEKAI 2 0 1 6 . 1 0 ー 12 2 アベノミクスを「評価する」と「どちら ーシップも失われていない。野党共闘は、 3 悪 かと言えば評価するーを合わせた肯定派憲法を争点化することによって改憲反対 な が三〇 % 、「どちらかと言えば評価しな派の票の掘り起こしに一定程度貢献した ロ い」と「評価しない」を合わせた否定派ものの、アベノミクスの失速を有権者に が三五 % と、賛否は拮抗している。 印象付けることは奏功せず、結果的に前 や や 加えて、安倍内閣が消費税率引き上げ回衆院選時の「消極的選択」としての自 ロ を再延期したことも自民党に有利な材料民投票が継続した格好である。 も となった可能性がある。消費税率につい で 野党共闘は一定の効果 て、当初の予定通り二〇一七年四月に一 ロ〇 % へ引き上げるべきという回答は全有今回の参院選で注目されるのが、三二 郎権者の一三 % に留まったのに対し、一八の一人区で成立した野党共闘であった。 や年以降に引き上げるという意見が一三 % 、民進党は、一三年参院選では二勝一一九敗 中長期的に現行八 % に据え置くという回と惨敗した一人区で、今回は一一議席を 浪答が四四 % と、このタイミングで消費増獲得した。 年 年 な 税を避けたことは多数によって支持され野党共闘の効果について、比例区にお ■ た。とくに、このうち一八年以降に先送ける県別の共産党票から推定したところ、 四年から少なくとも極端には悪化してい りするという安倍首相の「新しい判断」共闘がなければ、野党統一候補が勝利し ない。円高や株価が伸び悩み、個人消費を共有する有権者の間では、比例区でのた一一選挙区のうち八つで自民候補が逆 は弱い一方で、雇用統計は好調が続くな自民得票率が五〇 % と高水準だった。 に当選した可能性がある。東大谷口研・ ど、プラス、マイナス両面のニュースが ここまでの分析結果を整理すると、経朝日調査データ上も、比例区では共産党 伝えられていることを反映している。 済指標が伸び悩む現況でも有権者の景気に投票した有権者のうち、一人区では八 これに伴って、アベノミクスに対する評価は大きく損なわれておらず、従って割が野党統一候補に投票しており、多く 有権者の評価もそれほど悪化していない。経済政策に対する自民のイシューオーナの共産党票が民進党 ( 系候補 ) に流れた 図 3 有権者の景気評価 割合 ( % ) 0 2 ( 4 )
12 5 ー 2 0 1 6 年参院選 分かれるところである。この点を考えるは、賛成派が六六 % 、反対派が二五 % で反対か」を聞いた場合は、賛成派が優勢 上でも、単なる改憲の賛否を超えた、現あり、議席のほば三分の二を改憲賛成派である。 が占めた。今回の参院選では、民進党をしかし現下の問題は、憲法のどこを改 在の議員と有権者の立ち位置を明らかに しておきたい。 除いても自民・公明・維新・こころの四正する / しないかである。そこで具体的 図 6 は、憲法改正への賛否を参議院議党の議席が三分の二に達したことが報道な項目に関する意見に目を転じよう。今 員 ( 今回の当選者と非改選議員 ) の所属政党されたが、個別の議員レベルでは、二〇回の政治家調査では、改憲派に対して、 別に示したものである。まず議員全体で一二年からすでに衆参両院議員の七〇 % 具体的にどの項目を改正すべきかを質問 した ( 複数回答可 ) 。 以上が改憲派である。 まず、自民党の参議院議員 ( 当選者と非 政党別では、自民・維新の議員全員が 改憲賛成派。公明には反対派はいないも改選議員 ) では、「自衛隊または国防軍の のの、賛成派は七割で、中間的な立場を保持を明記する」 ( 回答した同党参院議員の 取る議員がいる。民進は六割が反対派で七二 % ) 、「緊急事態に関する条項を新設 ある一方、改憲賛成派も一一割いた。民進する」 ( 六九 % ) を挙げる者が突出してい 慚党内には「護憲勢力」と見られることをる。また、同党の憲法改正草案にもある 嫌う議員も多く、今後の改憲論議や野党通り「家族のありかたに関する条項を新 共闘継続の是非といった点を占う上での設する」を挙げている議員が多い ( 三二 ポイントとなるだろう。共産は全員が反 % ) のも特徴である。 公明党の議員は、八八 % が「環境権に 賛対派だった。 改 有権者の意見はどうだろうか。今回の関する条項を新設する」、六三 % が「プ 有権者調査の回答者のうち、改憲賛成派ライバシー権に関する条項を新設する」 は四二 % 、中立派は三三 % 、反対派は一一を改正すべき項目として挙げ、「加憲」 五 % だった。バネル調査である点に留保を主張する同党の方針が広く共有されて いる。他方で緊急事態条項 ( 一三 % ) や が必要だが、単純に「憲法改正に賛成か、 図 6 憲法改正に対する賛否 ( 参議院議員 ) 明新進産 体民 全自公維民共 5 2 1 OO 1 OO 22
世界 SEKAI 2 0 1 6 . 1 0 ー 12 4 図 5 拒否政党の割合の変化 。 0 5 0 5 0 5 0 5 0 5 0 . .5 4 4 3 3 2 2 1 選択割合 政党 ) を尋ねることがある。共産党との選挙協力によって得られた票 図 5 は、各党の拒否率の推移と失った票ーーを正確に推定するのは困 をまとめたものである。共産難である。それぞれの部分をどのように 党を拒否政党として挙げる有見積もるかが、新しい民進党執行部のか 民 自権者の割合は、三六 % ( 二〇じ取りに影響を及ばすであろう。 〇九年 ) ↓四二 % ( 一〇年 ) 憲法改正をめぐる同床異夢 ↓四二 % ( 一二年 ) ↓三八 民 % ( 一六年 ) と高止まりして今回の参院選の結果、自民と公明の連 2 民いる。ここには野党共闘とは立与党に、維新、日本のこころを大切に 一関わりなく民進党・共産党のする党を加えた「改憲四党」の議席が参 両方を拒否する保守層も含ま議院議席の三分の一一に達した。安倍首相 社れるが、民進党を拒否政党とは、開票日のインタビューで「これから して挙げなかった有権者 ( 全はいよいよ憲法審査会に議論の場がしつ 体の八割 ) 中でも、共産党をかり移っていって、そこで議論し、どの 拒否する有権者は三分の一を条文をどのように変えるかについて集約 一占める。 されていくんだろうと思います」と述べ 維新の党が分裂し、同党残たほか、同月末には維新の橋下徹前代表、 年留派と民主党が合同したため松井一郎代表らと会談し、憲法改正に向 に、二〇一四年衆院選と一六けた連携について意見交換したとされる。 年参院選の二時点の調査から、今後首相が憲法改正に踏み込むのか、 野党共闘の効果ーーー旧民主党それとも表向き改憲に意欲を見せながら、 にとっては、維新の党残留派実際には経済運営や自らの自民党総裁任 との合併で得られたはずの票、期延長などに軸足を置くのかは、見方が 2010 年 2016 年 公明
12 3 ー 2 0 1 6 年参院選 ことが裏付けられた。 権者の間にも窺える。二〇一四年調査で 権者と候補者別に示したものである。 しかし、調査結果からは、負の側面も共産党候補の民進党 ( 民主党 ) に対す自らを民主党寄りと回答した有権者のう 浮かび上がる。図 4 は、二〇一四年と今る感情温度は、二〇一四年から一六年にち、今回の調査でも民進党寄りだとした 回の民進 ( 民主 ) 党と共産党に対する感かけて急激に向上したが ( 一三度↓七四人びとのイデオロギー ( 最も左〇から最 情温度 ( 強い好意当〇〇から強い反感日〇ま度 ) 、民進党候補から共産党への感情温も右ⅱ一〇までの数字で表したもの ) は平均 での数字で表した好咸 ) を、各党寄りの有度は、参院選時でも五〇度未満であり、四・八なのに対し、この間に支持政党を 片想いのような関係が見て取れる。この民主党寄りから自民党寄りに変更した有 背景には、民進党保守派の警戒感がある。権者は五・五。もともと民主党を支持し 主 民補 当候自分の立場を左右 ( イデオロギー ) 対立軸ていた保守層の一部が自民党に旗幟を変 民上に位置付けてもらう質問への回答で、更した。民進党が共産党との選挙協力に 自らを左寄りとした民進党候補は、共産踏み切ったことへの反発も一因として挙 者党を四九度とほば中立的に見ていたのにげられよう。 低破対して、右寄りの同党候補の対共産温度こうした保守派の共産党への抵抗感が、 民主党と維新の党の合併効果を弱めた可 は三八度と冷淡であった。 さらに、民進党寄り・共産党寄りの有能性もある。二〇一四年衆院選の比例区 産補権者の感情温度を見ると、互いに対するで維新の党に投票した有権者の間で、一 共候 感情温度は五〇度未満のままでーーーもと六年参院選でも民進党に投票した人は三 一 % ( 棄権を除く ) に止まった。旧維新票 もと候補者ほどは敵対的に見ていなかっ たせいもあるが この間にほとんど改のうち、四〇 % は分裂したおおさか維新 とくに共産党候補と共産の会が獲得し、一七 % が自民党へ流出し 産権善していない。 共有党寄りの有権者の間で、民進党への感情た。 東大谷口研・朝日調査では、しばしば 温度にギャップがある。 保守派の共産党に対する抵抗感は、有「今後絶対に投票したくない政党」 ( 拒否 図 4 民進 ( 民主 ) 党・共産党への感情温度 民進 ( 民主 ) 党に対する感情温度 共産党に対する感情温度 ■ 2014 年ロ 2016 年 0 9 8 7 6 5 4 3 2 1
いからである。実際には議案の内容に大きく関わっていても、 議会との関係でこの二つの要素を満たすには、議案提出の 答弁や説明を求められることはない。 前にそれらが無傷で可決される段取りを整えておかなければ 都の政策についていったい誰が責任を持つのか。都政はど ならない。それには、あらかじめ都議会多数会派との間で話 なたがどこでどのように決めているのかわからないとの小池 をつけておくのが最も合理的かつ手つ取り早い。こうした文 氏の批判は、おそらくこんな事情を背景にして出てきたはず脈の中で、半ば必然的に出来上がったのが都議会自民党会派 だ。たしかに都議会改革は急務だと言っていし 内の「政策推進本部」なのだろう。 ー無謬主義、事なかれ主義との訣別 このやり方だと、都議会のすべての会派に話をつけている そもそもわが国の地方自治制度では、例えば予算案の編成 わけではないので、議案に公然と反対する会派も出てくる。 権は知事にのみ属していて、都議会にはない。ところが、そ しかし、いくら少数派が反対しても、多数派がそれを蹴散ら の編成権の一部 ( しかも重要な一部 ) が事実上都議会自民党会 かしてくれるので、議案処理については何も心配はな、。 派に移ってしまっている。条例案も都民にとって必要なもの た、議場で厳しい質問をぶつけられることがあっても、それ を知事が責任を持って提案すれま、、 のこ、事前に都議会自 が議案の処理結果に影響を及ばすことはないので、慇懃な答 民党の了承を得られたものしか提案しない。こんな歪な仕組弁をしておけばやりすごせる。 みにしてしまったのは誰の責任か。都議会自民党だけの責任 こうしたやり方は、東京都に限ったことではない。全国の かといえば、必ずしもそうではない。むしろ執行部側にこそ 多くの自治体に共通してみられる光景である。そこでは、議 原因の多くがあると、筆者は睨んでいる。 案を議会がよく吟味した上で修正したり、否決したりするこ その最大の原因は、政策形成における都庁の無謬主義と事とはない。議案をめぐってさしたる議論が展開されることも なかれ主義だと思う。この場合の無謬主義を多少誇張して言 ない。万事を予定調和的に処理するのがもつばらである。 診えば、都庁で作成した予算案や条例案は完璧であって、修正 つつがなく議案が通ることはむしろ望ましいという考えを 本を加えられる箇所などあってはならない。ましていわんや、 持つ自治体関係者は多い。ただ、この根回しによる事前調整 否決されることなど決してないとの自負である。もう一つの 方式の弊害は大きい。議会の多数会派と密室でこそこそと相 の 善事なかれ主義とは、公の場での面倒な論争を避けるために、 談してものごとを決める。そこでは一部の声の大きい議員の 片それが出ないような環境を整えておこうとする心理である。 利害が反映する可能性を排除できないが、それを外から見る