アフリカ - みる会図書館


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1. 世界 2016年12月号

世界 SEKAI 2 0 1 6 . 1 2-14 8 の基地に置いている。そしてそれは日本の南スーダン作戦へ フリカ諸国軍隊養成を任務の中心へシフトした。この o—e というのは O ( 合同、つまり多国籍 ) 、— ( 陸海空を含む全軍 ) 、 の貢献、さらには日本の世論を憲法改定へ導く底流につなが る。それを米国の対アフリカ戦略の全体から眺める。 ( 任務 ) 、 ( 軍 ) の略で、九〇年代から始まった米軍再編 を構成する基本コンセプトだ。合同統合任務軍「アフリカの ~ 、米主導のアフリカ国際軍事再編ー自衛隊は下請け軍のリーダーに 角」の活動では、米軍・米国際開発局、現地大 米国がアフリカ対策に本腰を入れ始めたのは一九九八年頃使館、非政府団体 (zeo) の軍・民共同作戦拡大・深化が のことだ ( 米議会調査局「アフリカ軍】米国の戦略的関心とアフリカ進んでいる。つまりカの衰えていく米軍事力の負担を地元に における米軍の役割」二〇一一年七月一三日 ) 。冷戦終結後の猛烈 できるだけ下請けさせ、同時に軍・民共同作戦により効率よ な中国のアフリカ進出に立ち遅れた米国は二〇〇六年にアフ く軍事介入から復興開発へ費用対効果を最大に引き出す。 リカを専門に管轄するアフリカ軍創設を決め、二〇〇八年、 ところで自衛隊スタッフがアフリカ軍のドイツの総司令部 独立した地域軍の一つとして誕生させ、総司令部をドイツの に派遣されたという小さな記事を数年前に見かけた。またジ シュトウットガルトに置いた プチでは合同統合任務軍「アフリカの角」と海自隊員が 軍の役割・性格には二一世紀における米国の軍事戦略がは な関係を築いている。日本は同盟国として段階的に合同統合 つきりと投影されている。例えば①戦闘・抑止の能力は維持任務軍に一体化していくのは間違いない。そこで注目してい するが、②バートナー諸国の力も借り、できるだけアフリカ ただきたい。軍民共同が日本では自衛隊・国際協力機構 (— 諸国の自前の軍事力の育成に主眼を置き、米軍はその指導役 緊密化の形で準備されてきたことだ。第一次安倍内 を担う、③総司令部は軍人、文民 、バートナー諸国軍事代表閣の二〇〇七年の法改正で、活動に対し外 から構成、④アフリカ軍の作戦は、当初から軍・民が一体化 務省の案件ごとの計画・活動の監督を廃止し、二〇一五年二 し、軍事活動段階から復興開発へとシームレスに作戦を展開 月、他国軍への支援を禁じてきた政府開発援助 (o=«) 大 ーー等だ。 綱を見直し、民生目的・災害援助など非軍事目的に限り他国 その中核の役割を果たす実働部隊として、合同統合任務軍 軍への援助を可能にした。自衛隊との密接な軍・民 「アフリカの角」 (o—e;æ-=o«) がジプチに配備された。 共同は米軍主導の合同統合任務軍「アフリカの角」の軍・民 同軍は元々、 9 ・Ⅱ後の世界規模の対テロ戦を任務に創設さ 共同と同期同調している。まるで行程表が存在しているかの れたが、二〇〇九年後半、対テロ戦よりも軍・民共同でのア ようだ。意味深い文言を記す。

2. 世界 2016年12月号

「ある国防総省職員はアフリカ軍の成否は、この軍 ( の存 夢見る人と皮算用 在 ) によって今後の五〇年間、米部隊のアフリカ駐留を不要 二年ほど前、首脳に会った米国のアフリカ専門の にできるかどうかだ」 ( 前出米議会文書六頁 ) 。つまり米国は今 コンサルタントが内緒話を教えてくれた。「そのの 後、米部隊を極力アフリカで展開しない方針なのだ。同盟国 人はね、日本人は未だに夢見る人なんですよ、とからからと 日本の自衛隊・共同活動は、恰好のオルタナテイプ これ 嘲笑したのだよ」。つまりこれまでの純粋に人のため、世の になる。南スーダンはその試金石と考えて間違いない。 ための日本の開発・人道援助を笑い飛ばしたのだ。この内緒 が安倍政権が強引に安保関連法を成立させ、見え透いた言い 話を示唆するようなインタビューを二〇一五年秋、新しく— 逃れを連発し陸自南スーダン駐留を続けようとする理由では ないだろうか。 —0< 理事長に就任した北岡伸一氏が英国日刊紙で行ってい る。一言で要約すると、今後の日本の援助は戦略的に日本の 現在の国連南スーダン軍は自衛隊と韓国軍の他は周 国益にもなる案件を優先する、ということだ。だが安倍首相 辺のアフリカ諸国から成る。南スーダンがもし安定したとし や北岡氏が期待するほど、援助が簡単に国益に結びつくとは ても、アフリカ各地ではつぎつぎに紛争の火種が燻っている。 国 の 限らない。南スーダンが良い例だ。 安倍首相登場以来の安全保障分野に関する不可解なほど強引 通 東アフリカの石油問題専門家は「南スーダンの石油埋蔵は 普なやり方を、米国の軍事政策の行程表に対応したものとすれ ば、これほどの国民と国家への侮辱はない。そもそも安倍首 早ければ一〇年後には枯渇すると推定される。現在、南スー ダンに残ったのは中国とマレーシアの石油会社だけだが、枯 の相が憲法改正を唱える最大の理由は、敗戦後の米国による押 戦し付け憲法から自主憲法を作ることだったはずだ。それが現 渇前に中国は南スーダンを捨てるだろう」と言う。南スーダ ンの国家収入の九八 % は石油代金だ。中国が石油を掘りつく 実には国の根幹である安全保障政策と関連法、憲法再解釈が すまで守り、中国撤収後そのような国を丸抱えにすることが 護米国の希望を組み入れた動きだったとしたら、これほどの裏 本当に戦略的で日本の国益になるのだろうか。 切りはあるまい っ 南スーダンに詳しい人道支援関係者が警告する。「駆けっ 結びの警告は、ーには対テロ戦争の有志国 駆 け警護で武力を使えば、首都だけでなく全国で攻撃した部族 ン連合にも対応が想定されている点だ。安保関連法により自衛 の敵とみなされ襲撃を受けることになる。平和維持軍の派遣 一隊は有志国連合の後方支援参加が法律上できるようになった。 南これが私の最大の懸念だ。 は政治的な解決がない限り、無意味だ」

3. 世界 2016年12月号

間を疾走した。終点前には、映画に登場するべルサイユを縮 小したような見事な庭園の頂上に宮殿に擬した博物館の建物 南スーダン「駆けっ が立っていた。 「ベルギーの国土の六〇倍も大きいコンゴ ( コンゴ民主共和 け警護」と「戦争の 国 ) は一九世紀「ベルギー国王の個人的な持ち物だったそう です。この建物や庭園はコンゴから得た富で造られたのです できる、普通の国」 よ」と、さんは言った。コンゴは世界有数の各種鉱産資源 6 たにぐち・ながよジャーナリスト。ベルギー 国だという。 国際記者連盟財務兼副会長。プリュッセル在住。著 2 本当の 書に「 Z<FO ーー変貌する地域安全保障』、『サ。 ~ ー 博物館に入ると、まず目に飛び込んだのが中央奥の大理石 イバー時代の戦 争』 ( いずれも岩の主柱にフランス語、オランダ語で誇らしげに刻まれた「べ 話をしよう谷口長世 波新書 ) 等。 界ルギーはアフリカに文明をもたらした」という言葉だった。 数十年経ても宗主国意識が丸出しだ。唖然とする私にさん は「プリュッセルの高級住宅地にモブッ御殿と呼ばれる現ザ 生き続ける植民地時代の構造 ィール大統領の邸宅があります。彼は子供たちをここの外交 もうかれこれ四〇年近い前のことになる。ベルギーへ渡っ 官子弟用の学校に通わせていますよ。モブツは南仏にも別邸 た当初、とにかく右も左も分からない、まごまごした暮らし を構え、どのくらい海外資産があるか不明なのです」と苦笑し を始めた頃、日本の総合商社マンのさんの一家と知り合っ た。そしてさんは、「商社の人間にはベルギーはアフリカ た。プリュッセルで現地法人社長を務める r-n さんも、奧さん と欧米諸国を結ぶハプとしてとても重宝なのです」と言った。 もカラリとした、まことにオープンな人柄で、会うたびにい 私はずっと勘違いしていた。第二次世界大戦後、次々に欧 ろいろなことを教えられ、目から鱗が落ちるように視界が広 州の国々から独立したアフリカ、中東、アジア諸国は、旧宗 がっていく気がした。ある週末、さんから、「郊外の中央主国とピタリと縁を切ったものと考えていた。だがベルギー アフリカ博物館に一緒に行きませんか」と電話で誘われた。 も、オランダも、フランスも、英国も、各々の旧植民地諸国 教えられた通り市電番に乗ると、半時間足らず、煩雑な市と連綿と、巧妙に植民地時代の構造を温存しているのだ。こ 内からは想像もできない、紅葉で深紅や黄金色に染まった林 れらの旧宗主国の都市には、旧植民地からの移民、出稼ぎの

4. 世界 2016年12月号

衝突事案が「戦闘」ではないのか、と訊かれ、「法と 報道されるようになったとき、本誌〇九年三月号に「狙いは の関係、参加五原則との関係も含めて『戦闘行為』に アフリカのエネルギー資源確保だ」と題し、その真の狙いは は当たらない。、 法的な議論をすると、『戦闘』をどう定義す 「中国の爆発的なアフリカのエネルギー・鉱物資源獲得攻勢 るかということに、定義はない。『戦闘行為』はなかったが、 に対する、米欧の中央アフリカ全体を覆う巻き返し作戦だ。 武器を使って殺傷、あるいは物を破壊する行為はあった」。 『海賊退治』はソマリアとその背後に広がる広大な中央・西ア フリカを包む米欧主導の軍事と安定・開発作戦の橋頭堡だ」 さらに稲田防衛大臣は「私が視察をした首都ジュバの中は落 と書いた。「赤いニシン」という西洋の表現がある。人々の ち着きはあったと思う」と述べた ( 共に z:t*l 〇月一二日付デ ジタル版より ) 。 目を都合の悪いことから逸らしたい時、持ち出す突拍子もな これをジュバや南スーダン各地から戻ったばかりの人々に い話題のことだが、一言で、海賊は「赤いニシン」だった。 いずれにせよ、橋頭堡になったのがジプチである。ジプチ 逐語訳して聞かせたら、とんでもない、大変危険な状況です 共和国は紅海の入口のアデン湾の奥、ソマリアと対岸のイエ よ、と誰もが仰天した。腰の引けた日本の新聞は「治安の悪 化した」等とこれまでは安定していたかのように書くが、首 メンの海峡が最も括れた戦略上要衝の地にある。南スーダン 国 の やコンゴ民主共和国等の資源諸国に近い。長年、フランスの 都や地方の方々で戦闘は二〇一三年暮れから始終起きていた 通 普 ーバルピースインデックス」 アフリカ最大軍事拠点で、同国の外人部隊養成地でもあった。 のだ。国際的に権威ある「グロ 二〇一六年版番付で、南スーダンは世界でシリアに次ぐ最も そこに米軍が基地を構え、海賊退治の参加諸国もやってきた。 の危険な国、同二〇一五年版番付では世界で三番目に危険な国 海上自衛隊は海外初の自衛隊基地を、当初は「海賊対策作戦 戦に選ばれた。 @-EO 五原則をとても満たさぬ状況を日本政府参加の海自艦船・同哨戒機メンテナンス施設」と言い繕って とはひた隠し、今に及んで小学生にも笑われかねぬ詭弁を弄し 置いた。「最初は外交官や各国軍人用の食堂でポツンと一人 で食べている日本人職員を見かけたが、そのうち米軍基地に 護続けているのだ。安倍政権はなぜ、それはどまでして自衛隊 見劣りしない威容の基地が出現した」 ( ジプチ外交筋 ) 。日本に を南スーダンに置き続けたいのだろう。近隣のソマリアに焦 っ 点を移し、その謎を解こう。 とっても海賊は「赤いニシン」だったのだ。二〇一二年一月 駆 ン から南スーダン派遣の陸自・施設部隊との連携は明らかで、 ダ ソマリア沖海賊は「赤いニシン」だった 今後のアフリカと周辺の自衛隊活動の拠点なのだ。 ス 南 だが米国は、はるかに広範な目的と組織上の役割をジプチ ソマリア沖海賊が二〇〇八年初秋から国際報道に大々的に

5. 世界 2016年12月号

人々の多住地区もある。「植民地政策」は、南北諸国の平等 民地時代を経験した。主に北部はイスラム教徒のアラブ人、 と平和のタテマエの下に「復興開発政策」と看板を変えた。 南部 ( 現在の南スーダン ) はキリスト教徒の黒人が住む。英国 だがホンネはエネルギー・鉱産資源を巡る権益の最大限保持植民政策の本髄である「分断させ、統治するーという基本通 だった。資源を ( 多くが事実上、独裁者から ) 買う一方で、およ り、北部中心の支配構造が築かれ、スーダンの南北の根深い そあらゆる兵器を中東やアフリカ諸国に売りつけた。これら 対立を深めた。一九五六年独立後、一一度にわたる内戦が起き、 の膨大な兵器がなければ、今日の戦乱は違った形になったろ 一九七〇年代の石油発見が結果的に住民に災厄をもたらした。 う。そして長年の巨額の開発援助にもかかわらずアフリカ諸 南スーダンの油田がスーダン全体の七五 % の産出量を占める。 国では飢餓、貧困が今も深刻だ。 一一〇〇五年、石油権益の詰めやそれに絡む国境線画定の争点 冷戦終結に伴い、こうした旧来の南北利権の構造に新しい を棚上げし、包括和平合意に達した。そして一一〇一一年独立 プレーヤーが乱入した。中国である。さらに、まったく異な を問う住民投票の結果、同年七月、南スーダンが誕生した。 る次一兀で米国が絡む。そしてその後ろに米国に背中を押され 誕生には米国の積極的な後ろ盾があった。問題は南スーダン た首相・安倍晋三の率いる日本が「戦争のできる、普通の の石油を運ぶバイプラインがスーダンを通過していたことだ。 国 の 国」を掲げ追従している。この国際関係の構図が、南スーダ 油田もバイプラインも中国国有石油会社のほば独占状態にあ 通 普 ン情勢と自衛隊の「駆けつけ警護」問題の隠し絵である。そ る。中国は両国の関係安定に否応なく巻き込まれることにな つつ ) 0 の隠し絵を解きほぐしていくことにしよう。 で の 二〇一三年一二月、南スーダンの首都ジュバで、対立する 争 「石油に呪われた国」南スーダンと中国 キール大統領 ( 国内最大のディンカ族 ) とマシャール前副大統領 二〇一一年七月、南スーダンはアフリカ大陸で最も新しい ( 二番目に大きいヌエール族 ) の話し合い中、謎の戦闘が外部で 護独立国になった。国土は日本の約一・七倍で、人口は八〇〇起こり、以来、各地で内戦状態が発生した。二〇一五年キー 万以上から一一〇〇万の間。ただし一一〇万以上の難民がウ ル派とマシャール派は停戦・和平に合意し、今年、暫定統一 っ ガンダなど隣接する国外へ逃がれ、国内ではそれを大きく上政府が発足したが七月、首都ジュバでキール・マシャール共 駆 ン回る難民が出ており正確な数字は不明だ。 同記者会見の最中、「謎の」 ( 注・信頼筋 ) 大規模戦闘が発生し、 一全体の流れを捉えるため、スーダン共和国からの離脱前の 兵士・民間人合わせ数百人の死者が出た。 南時代に遡る。スーダンもまた他のアフリカ諸国同様、長い植 以上が南スーダンの概略だが、南スーダンの紛争調停関係

6. 世界 2016年12月号

2 5 くて、現実です。社会のあらゆる階層から本当に素晴らしい 素晴らしい人たちが正しいことをしようとしている。 選挙戦中、プラックの有権者の間であなたに対する評価が思わ しくありませんでした。あなたを支持したのは四人に一人に満たな 界かった。どうしてそうだったのだと思いますか ? cn 答はかなり単純です。ビル・クリントンとヒラリー・ク リントンは、何十年もの間アフリカ系アメリカ人のコミュニ ティの中で大変強いルーツを育ててきました。クリントン夫 妻は、プラック・コミュニティ内で大変人気が高い、それだ けの話です。年配のアフリカ系アメリカ人の女性の間では支 持者は一〇人に一人でした。私たちはコテンバンにされまし た。しかし、選挙戦の終わり頃には、若いプラックとラティ ーノの有権者の大多数を勝ち取りました。それはとても、と ても目覚ましいことでした。実際、コミュニティのいくつか では全体的にラティーノの票を勝ち取ることになりました。 あなたの長年の支持者と話をしましたが、彼らが感じていると ころでは、あなたが負けた理由の一部として、あなた自身は公民権 運動の履歴があるのに人種問題について話すことに気まずさを感じ て 〔遮って〕いいですか、これは私が話したくない問題の一 っ・ーーー自分のことにのめりこむようなことは避けたいのです。 あなたについて話そうと思ってこの話題を出したわけではあり ません。私の関心は、人種差別についてのお考えを聞きたいのです。 それは主に階級の問題としてーー経済的不正義の副産物として見て いるのですか。または、それ独自の別個で違った問題なのですか ? 答は複雑です。いい質問ですが、今はそれについて議論 することは望みません〔無表情に睨みつけ、沈黙する〕。 ヒラリーを左側にブッシュする わかりました。では、言及されていた若い有権者について話し ましよう。予備選挙の最中、三〇歳以下の有権者の四分の三近くが あなたに投票しました。クリントンはあまりにも支配層的に偏向し すぎているという理由で、クリントンに投票するつもりはないとい うあなたの若い支持者に何と言いますか ? Ø しいですか、私は一年以上もヒラリーに対抗してきたの で、彼女がどういうつもりか理解しています。私にとっては、 これは難しい選択ではない。私は米国上院議員ですし、もし ドナルド・トランプが大統領になったら我が国の政府にどう いうことが起きるのか、知っています。トランプは私の生涯 で、主要政党から浮上した最悪の候補者だと思います。こい つはこの国にとって大きな災難であり、国際面では我が国の 恥です。病的な大嘘つきの男です。仮に問題にいくばくか取 り組むことがあったとしても、姿勢を毎日変えるような男で す。明らかに、それは国の最高地位を求めて立候補している 人物に求める精神構造ではない。 特に一言語道断で憂慮すべきなのは、トランプの選挙運動の 骨子が偏見に基づいているということ , ーー人びとをメキシコ 系アメリカ人やムスリムに対して、または女性に対して敵対

7. 世界 2016年12月号

であろうか。紛争地で武装勢力や政府軍を相手に駆け付け警軍事的なプレゼンスを日本が求め、また欧米諸国がそれを日 護や宿営地の共同防衛のために武器を用いれば、紛争の当事本に期待している。 二〇一四年の国連総会での演説で、安倍首相は、オバマ大 者になる恐れがある。すなわち交戦状態の中で自衛隊が住民 統領の要請を受けて、日本はアフリカでのをより一層 を殺したり、自衛隊自身が死傷する恐れがある。それなのに 展開すると発言した。アメリカに反感をもつ人の多いアフリ なぜ自衛隊員を敢えて危険に晒そうとするのであろうか。 力で、この発言を喜ぶ人がいるであろうか。少なくとも、ア また、 ZCO を武装勢力の攻撃から駆け付け警護で守ると メリカへの反感が強く、 A-EO に対しても反感が生まれてい いうが、南スーダンで活動する ZCO は、スーダン政府軍か る南スーダンでは逆効果である。 らもの軍からも距離を置こうとしている。人道危機に そもそも南スーダンの A-EO は極めて厳しい状況にある。 対処するために自らの中立を担保しなければ、かえって危険 が高まるからである。 駆け付け警護の指令があっても容易に出動できる状況ではな 。住民を守るために軍事力の行使も辞さない四〇〇〇人も 南スーダンでは日本の自衛隊のことを知る人は少なくても、 の O-EO 増派決定によって、政府軍と交戦状態に陥る可能性 日本の民生支援を知る人は多い。日本は民生支援によって南 さえある。日本の自衛隊が入っていけるような状況ではない。 スーダンの人々の信頼を獲得してきたのである。それなのに 日本は全く別の角度から平和貢献をすべきであり、それが憲 なぜ政府は武器を用いることで、あるいは武器を用いざるを 法の要請である。 得ない環境に自衛隊を置くことで人々の信頼を失う危険を冒 務 それは、紛争当事者への外交面での働きかけであり、人道 任そうとするのであろうか。 危機にある難民や国内避難民に対する人道支援であり、国造 これまで国際秩序の頂点に立ち、経済的・文化的な支配を りのための支援である。日本は紛争当事者になってはいけな ま様々な挑戦を 謳歌していた先進国である欧米と日本は、い いのである。そして、より長期的には地球温暖化を食い止め、 本受けている。新興国のグローバル市場への進出であり、「テ の 地球上の資源と環境を食いつぶす必要のない脱成長の経済に ロリズム」の拡大であり、気候変動や自然資源の枯渇である。 向けて舵をきる必要がある。それが武力に依存しない経済を 座して凋落の憂き目を見るのではなく、先進国スタンダード ン つくるということではないだろうか 一の自由貿易をより一層推進し、その負荷の中で生じる抵抗を 南軍事的なプレゼンスで抑止する。南スーダンやアフリカでの

8. 世界 2016年12月号

コプのない駱駝 新刊案内に表示した発売日は小社出庫日です 1 1 -2016 ーきたやまおさむ「心」の軌跡ー きたやまおさむ氏は、 精神科医・臨床心理士・作詞家 きたやまおさむ ( 伝説の音楽グループ、フォーク・クルセダ 1 ズで活躍し、ま た作詞家として数々のヒット曲を手がけながらも、表舞台か ら退き、精神科医となった著者の決定版自伝。波乱に満ちた 人生を振り返り、しぶとく生き続けるヒントを探る。 綴る戦 ◆潔く去っていかない 8 論 5 9 2 0 円館 ノ 8 書 功図売 並般発 関・ コフィ・アナン ) っ ー上下寰事 回顧録 体 ムロ コフィ・アナン、ネイダー・ムザヴィザドウ 6 9 白戸純訳 各 9 第七代国連事務総長コフィ・アナンは、アフリカや旧ユーゴの民族紛争、一館 ・Ⅱ事件、アフガンやイラクでの戦争など、国際政治を揺るがす困難加田図 な出来事に直面した。いかにして大国や独裁者と渡り合い、事態に介入上般発 一日 したのか。国連は世界の諸問題にどう向き合ったのか。「同時代の最も引劇 5 偉大なグロ 1 バルリーダ 1 」 ( アマルティア・セン ) による初の自伝。

9. 世界 2016年12月号

' 大統領でたどる「緲 . アメリカの歴史一 = 明石和康 国際社会をリードする「唯一の超大国」アメリカを率い、世界に強い影 響力を及ぼすアメリカ大統領はどのような指導力を発揮してきたのか。 初代ワシントンからオバマまで、歴代大統領の足跡をたどりながら描く 【岩波ジュニア新書】 978 ・ 4 ・ 8 ・ 58723 ・ 3 本体 880 円 アメリカ史。 崩壊す一 0 0 《教育 978 ・ 4 ・ 8 ・ 024792 ム四六判本体 1800 円 相次ぐ学校と教員のリストラ、教育の規制緩和と市場化。教育が数値で 測られ、企業が「公」を侵食するアメリカの現実を生々しく伝える。 アメリカ憲法における 「自然」と「知識」 カ一憲法的思惟 978 ・ 8 ・ 061125 ・ 1 四六判本体 3600 円 蟻川恒正 米憲法史に輝くバーネット判決をロバート・ジャクソン判事の思考に即し て読む。近代立憲主義の世界像を析出、吟味する理論研究の名著の再刊。 、リべラルと ソーシャルの間 ア政治哲学的考察 978 ・ 4 Y06n28 ・ 2 四六判本体 3400 円 宇野重規 トクヴィルや現代フランス政治哲学の議論を通じて、個人と社会、自由 と平等、デモクラシーなどについて考察した著者初の論文集。 希望への道 ニューヨーク・タイムズ編 三浦俊章訳 合衆国を決定的に変えた、バラク・ オバマとは何者なのか。アフリカ系 初の大統領という、アメリカの大きな変化を象徴する政治家の、文化的 にも員重なドキュメントとして、また報道の記録として、最も包括的な 978 ・ 4 Y022401 ・ 7 判変型本体 3800 円 決定版。 ーアメリカ政治思想の文脈 オバマを読む ジェイムズ・クロッペンバーグ / 古矢旬、中野勝郎訳 オバマの思想とは何であり、それはどこからやって来たのか。彼の著作 や演説を読み解き、アメリカ・デモクラシーの歴史や思想的伝統におけ るオバマの位置づけを明らかにする。オバマを深く理解した思想史家に 978 ・ 469022418 ・ 5 四六判本体 3500 円 よる本格的考察。 冷戦と「アメリカの世紀」 ーアジアにおける「非公式帝国」の秩序形成ー 菅英輝 一一〇世紀とは、アメリカがリべラルな秩序形成を目指した時代だった。 しかしその「リべラル」とはどんなものだったのか。冷戦下におけるア ジア政策から、反自由主義を包摂した「非公式帝国」としてのアメリカ が浮かび上がる。 978 ・ 4 ・ 8 ・ 025667 ・ 4 < 5 判本体 6400 円 オバマ 希望への道 ⅳリ k 笆ⅲ 105 ' q 号 A 分

10. 世界 2016年12月号

インドネシアで育つなど、アフリカとだけではなく太平洋、 わざるをえません。 アジアとの縁も非常に深い。アメリカ社会が内包するさまざ 外交面でいえば、オバマ政権にとって不幸だったのは、か まに重層的な境界性を象徴するリーダーです。そのオバマ政 ってのアメリカの伝統的な「超党派外交」がもはや不可能で 権下では、アメリカの多文化性が、急速に承認されてきました。 あることです。第二次世界大戦後、超党派外交は、政権を取 界 ただし、オバマ大統領が、黒人の地位向上や多文化主義の った党派と政権から追いやられた党派が外交問題で真っ向か 世 進展を示したという結果は、必ずしもオバマ自身の意図した ら対決するのは得策ではない、アメリカ全体の国益を考えれ ところではないように思います。彼が目ざしたのは、むしろ ば、どこかに両党の妥協や調停の機能が留保されていて、政 人種横断的で、主流文化とマイノリティーズの多文化主義と権交代後も外交の継続性をあるていど担保する形で選択肢を を架橋するような統合政治だったと思われます。このオバマ 検討することが必要だーーそうしたコンセンサスのもとかろ の統合への夢をことごとく阻んだのは、共和党やティーバー うじて続いてきた。その超党派外交が、この三〇年くらい非 ティーによるオバマの黒人性、少数者性の強調という党派的常に衰えてきています。 戦術でした。 また経済面でも、ルーズベルト、トルーマンのあと大統領 に就任した共和党のアイゼンハワーは、民主党のニューディ 「失敗」の刻印の背景 ール的福祉政策や経済政策をほば受け継いでいた。ニクソン 古矢オバマ政権については、失敗したか成功したかとい もそうでした。反対党から出た大統領も前政権の経済政策を うより、なぜ、これほど失敗したイメージがついてまわった 受け継ぎながら、それをアレンジしていった。しかし、現在 のかを考えなければならないと思います。 は、「大きな政府」か「小さな政府」という抽象的でイデオ それはトランプ現象に結びついてくる話ですが、オバマの ロギー的な大前提の違いが、党派をはっきりと分断しており、 「失敗」を印象づけた一因は、やはり党派政治、政党政治の 争点ごとの党派間の建設的な討議や妥協は困難を極めている。 機能不全にあります。問題は、党派対立を緩和する中間的な したがって、党派を異にする政権間の経済財政政策の連続 クッションの役割を果たす人や制度がなくなってしまったこ性を保つことも困難になっています。たとえば、オバマ政権 とにあります。外交においても内政においても、第二次世界 の内政面での最大の成果と目される二〇一〇年の医療保険改 大戦後のアメリカ政治がもっていた、あるていど党派横断的革「患者保護並びに医療費負担適正化法」 ( 孑一。日 p 「え で、柔軟で調和的な政策決定の方式が失われてしまったとい 翆。「針 b 一 CareAct: I)I)ACA) も、非常に党派的な争点にされて、 ロ