自由を求めてきた北朝鮮住民が幸せな生しい」という願望を基礎に、現実政治を一九九〇年九月に韓ソ国交樹立を通告に きたソ連のシェワルナゼ外相に対し「国 活を送っているとは言い難い。北朝鮮住行なうのは危険だ。 民へ脱北を促すことは南北の体制競争、 南北間では、板門店や軍同士の連絡ル交を樹立するなら核開発をする」と述べ ートも切れており、偶発的な軍事衝突がたという。朝半島では一九九二年二月 体制対立という過去への回帰だ。朴槿恵 界 大統領の一連の発言は、北朝鮮の体制崩起こっても十分な意思疎通をするルート に「南北間の和解と不可侵および交流、 世 壊、吸収統一を示唆するものであり、対がない極めて危険な状況である。 協力に関する合意書」 ( 南北基本合意書 ) い理戦ともいえる。そこには困難だが、 国際社会も対応に失敗 その困難の中で南北共存を発展させてい た。朝鮮半島に平和構造を構築する貴重 く「統一へのプロセス」に対する現実感 北朝鮮の核・ミサイル脅威が前例のなな機会だった。しかし、韓国はソ連、中 が希薄だ。 い脅威にまでなった第一の要因は北朝鮮国との国交を樹立するが、北朝鮮は日米 韓国の世論調査会社「韓国ギャラツの核・ミサイル開発にあることはいうまとの国交樹立に失敗し、南北のクロス承 プ」は一〇月一一一日、朴槿恵大統領の支でもない。北朝鮮は、韓国や米国、国際認も実現しなかった。 キムジョンイル 持率が二五 % と過去最低を記録したと発社会との合意を破り、核・ミサイル開発金正日総書記はそれでも、核・ミサ 表した。今年四月の韓国国会議員選挙でを続けて来た。 イルを「カード」として米国との平和協 は与党、セヌリ党は過半数確保どころか しかし、今日の状況を招いた原因を北定、国交樹立を実現しようという姿勢が 第一党の座からも転落した。与党はその朝鮮にのみ求めるのも誤りだろう。国際明確だった。われわれが危惧するのは、 後、無所属候補を受け入れて第一党にな社会も何度も対応を誤ってきた。米国は金正恩党委員長の時代になり、核・ミサ ったが野党多数の国会で政権運営はうま米朝基本合意を達成したものの、軽水炉イル開発が自己目的化し、米国に到達す くいかずレームダック化が進んでいる。 が完成するころには北朝の体制は崩壊る核弾頭搭載ミサイルを開発することが 朴槿恵大統領は対北朝鮮政策で妥協はなするだろうという甘い見通しだった。 金正恩体制の生存戦略になっていること いとし、安保問題では野党も協力すべき 北朝鮮を核開発に走らせた大きな原因だ。「イラクやリビアのようにはならな だとして任期末まで対北強硬路線を突きの一つは北朝鮮を国際社会の中で孤立さ い」という心理はわかるが、どういう状 キムョンナム 進む構えだ。しかし、「体制崩壊してほせたことである。金永南外相 ( 当時 ) は況までいけば、北朝鮮が国際社会と調和
国際社会が一体となって取り組むべきインドの加盟のため、本年六月のあるとされる。東芝の「会社立て直し」 だ」と発言した。外務省は日本外交の資総会で申請提案国となった。しかし、中のため、ウエスティング・ハウスがイン 産として、「軍縮・不拡散における主導国など加盟七カ国が反対、全会一致でのドでの大規模な原発増設を計画する。非 的な取組の実績」を掲げており、「決定という原則から加盟不承認と常識というよりも、東芝関係者の人間性 強化による」核不拡散体制の強化と維なった。この背景として日本政府は、イの欠如を示す、重大な問題である。 持は、「外交政策の最重要の柱」である。ンドへ原発を売り込み、現地生産された「本協定」を進める外務官僚たちは、「反 これに対してインド首脳は、「インド安価な原発の、アフリカ、中東、中央ア対キャンペーン」との交渉において、「政 を六番目の核兵器保有国と認めるなら、 ジアなどへの輸出をも目指すとされる。府は協定を締結し、その後の商業活動に に加盟する」と繰り返す傲慢な外インドへの原発輸出は核拡散であり、 は関与しない」と責任逃れに終始した。 定交姿勢であった。今日の国際社会がインさらにインドからの原発輸出など認めらまた、輸出された原発がどのように土地 カドの勝手な主張を認めることはあり得ず、れるはすもない。安倍政権の原発輸出政と人びとの生活や環境に影響するかにつ カ自ら加盟の意思なしは明らかであ策を徹底的に打ち砕かなければならない。 いては、「現地政府が対応するべきこ と」としか回答しない。 こうして外務省、 る。インドは、核不拡散体制に背を向け④原発輸出の非倫理性 て、「核兵器保有」の大国化の夢に進む。 安倍政権による金儲けのための原発輸経産省などは、協定締結業務と原発売却 こういうなか、「本協定」の締結は、出政策は、東電福島第一原発事故も収東は違うと称して、原発輸出に関わる一切 面被爆国として「核拡散防止のための一定できない日本が、事故責任を一切負わなの社会的かっ倫理的責任を放棄している。 終の努力の姿勢を示してきた日本」が、イい原発メーカーに輸出を認めるものであ東電福島原発事故を振り返る時、日本 最 にとって必要なのは、安倍総理の言う「世 ヘンドを「核保有国として認める」意味をる。すなわち、「本協定」が締結された 阻有する。その国際的な悪影響は非常に大ならば、三菱重工、日立、東芝の国内一一一界一安全な原発を提供する責任」ではな 承きく、調印の可否を国際社会が注目する。大原発メーカーがインド進出に踏み出す。く、「原発を売らない義務」である。原発 印 さらにインドは、自国への原子力関連すでに原発建設予定地も決定済である。輸出へ突き進む日本政府、そして人びと 調 一輸入だけでなく、原発の海外輸出を目的特筆すべきは東芝で、在米の子会社ウに対して、国際社会はその「非倫理性」 のとして「原子力供給国グループ (zne) 」 エスティング・ハウスの買収に関わる不を強く批判する。経済利益優先政策と非 世への加盟承認を求めている。特に日本は、正資金操作が不正会計処理問題の起点で人道な経営方針が、厳しく問われている。
な新規政府担当機関が設立されることが負うのかという論点である。返還義務を民投票否決後は、受賞の可能性は露と消 アジェンダとして組まれている。これら免責する場合、善意で土地購入した所有えたと誰しもが思っていたから、サント の政策策定が通常国会の審議に逐一かけ者に、その手続き根拠を提示して潔白でス政権だけでなく、平和を希求する国民 られるとしたら、おびただしい法案審議あることを証明させなければならない。 にとって大きな激励になったに違いない。 界 を経ることになり、和平合意後のアジェ反対派は「善意で購入した」とされる企「和平を求める行進」と同様に、これ 世 ンダの達成は事実上不可能となる。 業所有の土地を守ることを重視しているは国際社会からコロンビア社会に対する、 第三は、幹部の政治参加へのが、この場合、紛争被害者に返還される和平合意の重みを再認識する「覚醒」を 反発である。和平合意では、向こう二国土地面積は一層狭まることになる。 促す動きと考えられよう。すでに 会会期、上院下院ともそれぞれ五席ずつ、◆ノーベル平和賞受賞の意義 0 との停戦協定の期限は一〇月末から一 武装解除後の 0 政党に議席が保証国民投票が僅差で否決され、政府も、 一一月末日までに延長された。平和賞が和 されている。和平合意では「武装解除し賛成派市民も、そのショックから立ち上平合意に対する国民の合意形成と政策実 たゲリラが市民社会に復帰再統合され、がれない状況にあった。しかし一〇月五現化を求める国際社会のプレッシャーで また戦闘活動に復帰する可能性を最小限日、学生主導の「和平を求める静かな行あるとすれば、停戦後のアジェン にするための譲歩であり、彼らに政党運進」が全国一四都市で展開された。ボゴダをこれ以上停滞させてはならない。反 営維持能力を自力で獲得するまで時間をタだけでも総動員数は六万人を超え、一一対派の対案は、交渉期日の引き延ばしを 与える」ものとされている。しかし、反六大学の学生がイニシアテイプをとった。もくろみ、このまま来年度の大統領選挙 対派は、政党に対して特権を与・の立場を超えて和平を求める声がキャンペーンにもちこむ戦術である。 え、他の政党に対して有利に立たせるこ大学生から自然発生的に生まれ、多くのとの和平合意までの努力を水泡に とは容認できないとしている。 市民を動員した。危機に瀕した和平プロ帰さないためには、政府は、毅然とした 第四は紛争被害者への土地返還問題でセスに直面し、若者がとったこの行動は、態度でハバナ合意文書の根幹を維持しつ ある。紛争地で土地を追われた被害者の市民社会を覚醒したのである。 つ、難題を突きつけている反対派との合 土地を、のちに「善意で購入した」現在そのような折、サントス大統領のノー意形成を急ぐ必要がある。 ( はたや・のりこ上智大学外国語学部 ) の所有者 ( または企業 ) も返還する義務をベル平和賞受賞のニュースが届いた。国
151 南スーダン 0-*0 の本質と 鸞ド自衛隊新任務 でか , 練向 たにやま・ひろし日本ボランティアセンター のた護 (•>O) 代表。タイ、ラオス、カンボジア、アフガニ 連環する れ保隊、王 自共 スタンで計一ニ年海外駐在を経験。国際協力 ZOO セ ~ 「 護まの 警囲 ンター (•<Z—O) 理 けに則る後 事長、 ZOO 非戦ネッ け徒連 自然資源と紛争谷山博史 ト呼びかけ人など兼務。 駆暴国獗四 一一〇一五年九月、国会での強行採決により成立した安保法安保法制が今なぜ必要なのかという本質的な問題に結びつく。 ーバルな資源問題 安保法制と南スーダンを結ぶ線は、グロ 制が、南スーダンで初めて運用されようとしている。政府は にあるのではないか。グローバルな資源問題が、世界各地で 一一月に南スーダンに派遣される自衛隊に、安保法制で可能 深刻化する土地収奪や日本を含む世界各国の軍事化、さらに になった駆け付け警護と宿営地の共同防衛を新たな任務とし 市民社会スペースの締め付けという現象に複雑な連環の輪で て付与する方針である。 しかし、南スーダンは二〇一三年に政府の主要勢力が分裂結びついている。 し、内戦状態が続いている。今年七月には首都ジュバで大規 南スーダンの紛争 模な戦闘が発生。新任務の付与のみならず、自衛隊の 今年の七月八日、南スーダンの首都ジュバで大規模な武力 派遣そのものの是非が問われるべき状況である。 衝突が発生した。九月一日、日本国際ボランティアセンター 南スーダンで安保法制の運用の是非が問われているのは、 (—>0) のスーダン駐在代表の今井高樹が紛争被害者への緊 南スーダンの特殊状況ゆえの偶然であろうか。この問いは、
これが憲法制定当初の理解であった。憲法制定議会 ( 日本 する行為」 ( 「国事行為」と呼ばれる ) を定めるだけである ( 四条 ) 。 国憲法の制定を明治憲法の「改正」として議論した戦後最初の議会 ) に そうだとすれば、象徴としての天皇が行う行為は、憲法上は おいても、憲法担当大臣であった金森国務大臣は、これと同 国事行為だけだという理解となるのが自然であろう。国事行 為としては、内閣総理大臣の任命 ( 六条一項 ) 、最高裁判所長旨の答弁を行っている ( たとえば、清水伸『逐条日本国憲法審議録、 第一巻』六三六頁以下参照 ) 。国事行為の外に、天皇の「象徴と 官の任命 ( 六条二項 ) 、国会の召集、衆議院の解散、国会議員 しての行為」が存在するというような議論は現れていない。 選挙の公示等 ( 七条一号 5 一〇号 ) が限定的に列挙されている。 国事行為以外に天皇に「公的行為」があり得るということは、 これらは国政において重大な政治的意味をもつ行為である。 意識されていなかったのである。 しかし、天皇は「国政に関する権能は有しない」 ( 四条 ) とさ れているから、天皇が行う唯一の行為である国事行為は政治 国会開会式の「おことば」 的な決定権を含まないものである。実際、国事行為の実質的 象徴的行為の問題が表面化したのは、国会開会式における な決定権は、憲法上天皇以外の他の機関に帰属させられてい 天皇の「おことば」を契機としてであった。明治憲法におけ る。たとえば、内閣総理大臣の任命 ( 条文上は「指名」と表現さ る帝国議会は天皇の立法権に「協賛」する機関であり、天皇 れている ) は国会、最高裁長官の任命は内閣の権限とされて が「召集」し、議会の活動の開始に当たって「開院式」を開 いる。したがって、天皇の国事行為は、他の機関が行った決 き、天皇の「勅語」を賜ることになっていた。これが議会の 定を形式的に「再演」し、あるいは、「公示」「確認」 ( 認証 ) するだけの行為とされているのである。いわば、実質的決定会期の開始宣言であった。開院式にはそのような法的意味を 与えられていたのである。これに対して、日本国憲法上の国 権限をもつ者が予め決定した国政上の重要な行為を天皇が 会は、主権者国民の代表者により構成される「国権の最高機 に「儀式」として行い、「権威づけ」を与えるのである。決定の 関」 ( 四一条 ) であり、国法上の位置づけがまったく異なる。 表重みを国民に伝達し権威づけるのが目的で、決定の法的効力 その招集 ( 法文上「召集」が使われている ) は、形式的には天皇 には関係がないものと解されている。もっとも、国事行為が 持 気 の国事行為であるが、実質的決定権は内閣にある。内閣は、 実質的決定権を伴わない「儀式」にすぎないとしても、それ お 「集会の期日」を定めて招集することになっており ( 国会法一 のを行うことが天皇に何らかの「威信」を与える効果をもっこ 条一項 ) 、期日に集会すると共に会期が始まる。国会に活動能 天とも期待されていることは疑いない。
料の輸入のことを取り上げた。日本が海外から輸入する石油 を提出した。前者に関してはいまだに回答がなされていない。 や食料の供給が危険にさらされた場合も「存立危機事態」に 後者については、 ZCO と外務省との定期協議会での議論が 該当する可能性を示したのである。また一方、安保法制では、 継続している。 0 法とも、他国軍への後方支援を認める国際平和支援法 自治体と ZCO との関係でも市民社会の活動スペースをめ 界 や重要影響事態法とも別立てで、ある国の要請があれば治安 ぐる問題が起こっている。埼玉県ののネットワーク組 世 支援、対テロ支援の名目で自衛隊を派遣し、任務遂行のため 織であるさいたま ZA«O センターが、市民サポートセンター の武器使用が可能となった。 の指定管理者としての資格をさいたま市から取り上げられた。 日本は自由貿易によって海外の産物を安価で輸入できるよ 施設利用者に反戦を主張する政治性の強い団体があることを うになり、私たちの消費生活は以前よりは豊かになった。 市議会で追及されたことに端を発する。安保法制や憲法擁護 @•-A などの自由貿易協定によって日本の食料の自給率がさら の市民集会が「政治的」との理由で自治体から公共施設の利 に減退しても、海外から持ってくればいいと考える人がいる。 用を拒否されるケースが全国で報告されている。二〇一三年 しかし本当にそうだろうか。日本の食料の「生命線」を守る に国会での強行採決によって成立した秘密保護法は、特定秘 しいと言えるだろうか。モザンビー ために武力を行使しても、 密を入手しようとした市民に厳罰を科する内容が織り込まれ クのように輸入先の農民の反対を押し切ってでも私たちは食 た。こうした政府や行政による一連の動きが市民活動の自粛 を海外に依存するのだろうか。これはイラクの石油を確保す を加速している。平和の危機であると同時に市民社会活動の るために、イラク戦争を支持し、アメリカ占領下のイラクに 危機でもあると言わざるを得ない。 自衛隊を派遣し、ファルージャの虐殺を遂行する米軍を後方 安保法制と資源問題 支援することをよしとすることと同じではないだろうか。す なわち「国益」のために他から奪う、そのために暴力を用い 昨年の安保法制の国会審議の政府答弁のなかで、集団的自 ることをよしとするとい , っことである。 衛権の行使が必要と判断する「存立危機事態」について、経 政府はなぜ南スーダンに自衛隊を派遣し続けること、そし 済的な要因が取りあげられた。存立危機事態は日本経済の生 て安保法制をそこで運用することにこだわるのであろうか。 命線が脅かされる事態、と政府は答弁している。はじめは石 油の輸入、次にプルトニウム輸入のことを、そして最後に食安保関連法にも憲法にも抵触する危険をなぜ冒そうとするの ロ
と進化した。その間に、中心テーマも自由貿易協定から、投 た旧ソ連邦諸国も貿易国として成長してきた。 このように貿易国の数が増えただけでなく、それそれが自資自由化そして規制緩和など、経済連携協定へと変化した。 そのような地域をベースとしたメガ協定と同時に、アメリカ 国の政策に合わせて多様な主張を繰り広げるために、議論を の未来戦略である知財やサービス、通信などの分野では 収東することが困難になった。 が並行して進められた。 もう一つの要素は、貿易の変容である。多国籍企業のグロ ( 5 ) の変貌 ーバルな展開により、貿易よりも投資が国際的財サービス移 協定に二〇一〇年、超大国アメリカが参加したことに 転の中心的なテーマとなった。貿易の内容も従来の工業製品 より、はまったく異質な貿易協定となった。超大国と や農産品だけでなく、さまざまなサービス、知財の国際展開 して圧倒的な経済力を持つアメリカは、農業から最先端技術 が進むにつれ、貿易は次第に投資の補助的な要素になり、ま までフルセットで産業を持っているゆえに、すべての産業分 たアメリカは一方では農業や自動車産業などの衰退産業の保 護と同時に、将来の糧を保証するサービス・知財分野での覇野で交渉はアメリカ中心の二国間協定となった。 それは産業分野だけでなく、アメリカとの二国間のさまざ 権確立に注力するようになった。すでににおいても、 まな課題もまた交渉のテープルに乗ることを意味する。ベト —や E—— Plus の新枠の中でアメリカはそう ナムは中国の脅威の問題、メキシコは移民問題、マレーシア した未来支配力を拡大してきたが、インターネット分野の急 は人権問題、日本は基地問題など、貿易と直接関係のないテ 成長にともない、 <OE*< ( 偽造品取引防止協定、諸国の反対 ーマもバッケージ化されてアメリカとの交渉が行われた。 で頓挫 ) そして ( 新サービス貿易 ) 構想へと発展させた。 そして、アメリカのお家の事情というか、衰退産業保護や アメリカは世界の全貿易国を平等に管理する協定をあきら め、アメリカとの共同体的意識のもとで管理が可能な広域経逆に虎の子の先端技術産業と知財など、アメリカが未来戦略 として確保したい先端技術分野での戦略や、中国との覇権対 済連携、いわゆるメガ協定へと戦略転換を行うようになった。 か 立、アメリカ国内の様々な固有な社会問題も大きなテーマと これは、中東への軍事介入に際し、国連や国際社会の異論の か 向 あるなかで、アメリカが「有志連合」を構成してイラク侵攻して交渉に流れ込んできた。これまで貿易とは無縁だ へ ったなど国内の人権問題、環境問題などアメリカに を行ったのと同様の発想であろう。 は 特に関係の深いテーマも、交渉を進めるに従い存在感 その広域地域を対象とした貿易管理協定がであ を増すようになった。 り、アジア太平洋地域の、そしてとの—へ
2 , っ そのためには北朝鮮が核政策を変える身のある米朝対話は成り立たない。その だが、明確なのは北朝鮮への対応は制ほどの大胆な交渉が必要だ。対価を明示意味で、朴槿恵政権の姿勢を転換するこ 裁一辺倒でも、対話一辺倒でも駄目だとする必要がある。朝鮮戦争の休戦協定をとを期待したいが、それは非常に困難に いうことであろう。経済制裁などの抑止平和協定に切り替え、朝鮮半島におけるみえる。朴政権の任期満了まではまだ一 界 と、北朝鮮を国際社会の中に導き入れる新たな平和体制の構築は避けて通れない年余ある。朴政権の過度の対決姿勢と北 世 対話が同時に稼働しなければならない。 課題だ。韓国は休戦協定の当事者でない朝鮮の挑発姿勢が偶発的な軍事衝突を生 国連決議を無視して核実験やミサイル ため、韓国内では平和協定の協議は韓国み出さないか心配だ。国際社会は米政権 発射をする北朝鮮を放置することはできを頭越しにした米朝協議になると警戒感交代から韓国の政権交代までの不安定な ない。それには相応の対価を負わせる必が強い。しかし、朝鮮半島の平和体制の期間の管理にも配慮する必要がありそう 要がある。しかし、北朝鮮を追い詰め、構築に韓国が入らないことはあり得ない だ。来年一二月の韓国大統領選挙では与 国際社会から弾き出し、完全に孤立させことだ。つまり、朝鮮半島の平和体制の党が勝っても野党が勝っても南北関係が ることは、逆に北朝鮮の核・ミサイル開構築のためには米朝の十分な協議と南北再検討されることになろう。政権のスタ 発に拍車を掛けることになりかねない。 関係の改善、そして朝鮮戦争の当事者で ート時から対決一辺倒は考えにくい 。韓 北朝鮮の核・ミサイル開発は、北朝鮮のある南北と米国・中国が参加した多者間国の次期政権が長期的な視野に立ち、米 国際的な孤立の結果だということを忘れ協議が必要だ。 国の次期政権と協力し、朝鮮半島の平和 てはならない。さらに前述したように、 また、北朝鮮がすぐに核を放棄すると体制構築に動くべきだ。そして米国の次 朝鮮半島での武力による問題解決には膨考える専門家はいないだろう。われわれ期政権も北朝鮮との本質的な対話を始め 大な犠牲を伴い、絶対に避けねばならなは二〇年以上の失敗の対価として、、北朝るべきだ。そうした中で、日本も東アジ い。朴槿恵政権は現時点での対話は「挑の核の廃棄でなく、北朝鮮の核の「凍アに平和と安定を築くための役割を米韓 発への褒美」になるとするが、この認識結」から協議を始めるしかない現実に直と協力して努力すべきだ。こうした努力 には同意できない。われわれは抑止を強面している。 は、朝鮮半島で戦争を容認するのか、平 めながらも、北朝鮮を国際社会に取り込米朝対話が動き出すためには南北関係和を堅持するのかという勢力間のせめぎ む対話の道を準備しなければならない。 が重要だ。韓国政府が反対していては中合いでもある。
2 8 3 ーカシミールにおける文化的反撃 一うのは、国際社会にとって都合の良い考え方で、現実に 何が起こっているかよりも好まれる」 カシミ ルにおける武装反乱の歴史 一九九〇年代初頭以来、ジャンムーⅡカシミール州に おける武装反乱 ( 一九九六年に五〇〇〇名から一万人と見積も られている ) に関して、インドのメディアはカシミール人 を自分の都合の良いように勝手に扱っている。「タリバ ンの支持者、もしくはより最近では《イスラム国 ( — n) 》の支持者とみなして、報道している。例えば《歓 迎タリバン》などの悪戯書きを映したり、何千人という デモ参加者がいるのに、敢えて黒い旗を振り回す黒いマ 。スクをした四名のデモ参加者を集中して取り上げている。 毳私は、インド・カシミールには、他のイスラム教のグル ープは存在しているが、—のようなテロリストグルー プは存在しないと思っている」とアナンド教授は確信し ている。 「主要な内乱グループとして、パキスタンとの連携を 希望しているヒズプル・ムジャヒディンと、宗教色がな く独立を望んでいるジャンムー日カシミール解放戦線 が存在している。現在では、武力闘争は一九 九〇年代よりも大幅に注意を引くことがなくなってきて 一一いる。この問題でカシミールの住民は分裂しているが、 大多数は「アザディ (azadi) 【自由」を求めている。この 事実から、インドと対決するグループを支援することが 普通となっている」とアナンド教授は説明している。 二〇一六年四月、カリブ海の西インド諸島クリケッ ト・チームがインド・クリケットチームを打ち破った時、 多くのカシミール人は、喜んでスリナガールの街頭に繰 り出した。そこで衝突が起き、逮捕者が出た。二〇一六 年七月には、ヒズプル・ムジャヒディンの指導者の一人、 プルハン日ムザファール・ワリ ( 二一 l) がインド軍によ って殺害され、抗議のデモが多数の人々が参加して盛大 に行われた。デモは厳しい弾圧を受け、少なくとも五〇 人の市民が死亡し八〇〇〇人が負傷した。新聞は発禁処 分となり、社会的ネットワークは中断させられた。 モデイ首相が率いる民族政党の「インド人民党 ) 」にとって、カシミールはインドの反対者を抑圧す る格好の手段となっている」とアナンド教授は言う。 「インド軍の略奪を話す勇気のある人々は皆、『反民族』 のケースとして片づけられる。また、進歩主義者の話は、 自動的に信憑性がないものとして扱われる。公式統計で はインドの人口の一四・二 % がイスラム教徒とされてい るが、キリスト教徒とイスラム教徒の中で国会議員とな った者は一人もいない」 テジタル・メティアというもう一つの声 カシミール生まれのジャーナリスト、フアハード・シ
世界 SEKAI 2 0 1 6 . 1 2 ー 2 6 4 も今年六月の報告書で、北朝鮮は過化させた。 た。一方で、北朝鮮幹部や一般住民に統 去一年半の間に核兵器を四 5 六個増やし、 北朝鮮では、党大会後も一部幹部の粛一後の同等な待遇と幸福追求の機会を提 現在の保有数は一三 5 一一一個に上ると推清や革命化教育が行なわれ、英国駐在の供すると訴えた。韓国大統領が光復節の 計している。 テ・ヨンホ公使の韓国亡命をはじめとす演説で北朝鮮当局と幹部や一般住民への る海外駐在幹部の亡命が相次いでいる。訴えを区別して行なうのは異例であった。 基本的に安定した体制 韓国の情報機関、国家情報院は一〇月一朴槿恵大統領は北朝鮮が五回目の核実 金正恩体制は今年五月の第七回党大会九日、北朝が今年一 5 九月に六四人を験をした九月九日には「権力維持のため と同六月末の最高人民会議第一三期第四公開処刑したと報告した。金正恩体制にに国際社会と周辺国のいかなる話も聞か 回会議を通じて、党と国家の新たな体制様々な問題が内在し、恐怖統治による締ない金正恩の精神状態は統制不能とみな チェリョンへ を作り上げた。党は崔龍海政治局常務委め付けで体制を維持していることは事実ければいけない」と非難した。朴槿恵大 ファンビョンソ 員が、軍は黄炳瑞軍総政治局長が、内だが、金正恩体制が動揺しているとする統領の怒りは理解できるが、金正恩党委 パクポンジュ 閣は朴奉珠首相が軸となって金正恩党委のは早計だろう。 員長の精神状態を「統制不能」と言い切 員長を補佐する体制だ。「唯一的領導体 ってしまえば対応手段はなくなる。 ウオンユチョル 制裁一辺倒の朴槿恵政権 系」という名の個人独裁体制がさらに強 韓国では与党、セヌリ党の元裕哲前院 化された。国家機関は国防委員会を廃止憂慮されるのは朴槿恵政権の最近の姿内代表など与党幹部から核武装論が提起 し、国務委員会に改編した。国防委員会勢だ。北朝鮮が今年一月に第四回核実験され、有力紙「朝鮮日報」の金大中顧問 はその歴史的役割を終えた。 を行なって以降の朴槿恵政権の対北朝鮮は「核拡散防止条約を脱退し、 国防委員会体制は一九九〇年代の「苦政策は制裁、強硬一辺倒だ。朴槿恵政権北朝鮮の核放棄を条件に核武装を宣一言す 難の行軍」時期を乗り越えるための非常は二月に唯一残っていた南北経済協力事べきだ」と主張するなど、国内で核武装 事態体制であった。金正恩党委員長は今業である開城工業団地の稼働を中断した。論がこれまでになく台頭している。 回の党大会、最高人民会議を通じて、国朴槿恵大統領は八月一五日の光復節の演在韓米軍に戦術核を再配備すべきだと 防委員会を軸にした非常事態体制を、朝説で、北朝鮮当局に対話や交流の提案を いう議論も出ている。大統領の諮問機関 鮮労働党が核となる党国家体制へと正常せず、核開発や挑発の即時中止を要求しである「民主平和統一諮問会議」は九月 キムデジュン