かれた。同懇談会は新聞、放送、出版で構成される国内最大 匿名発表は、被室暑と報道との分断を図り、警察に都合の のメディア関係団体である。この大会で、「犯罪被害者支援悪い情報を隠す恐れがあるため、メディア規制として政府を 弁護士フォーラム」の事務局長・高橋正人弁護士が「発生直批判するのは当然だが、それでは取材攻勢にさらされる人た 後は各地の犯罪被害者支援センターが被害者と報道機関の間 ちに報道界はこれまで、どう向き合ってきたのか。各都道府 に入る形での取材を提案した」ことを講演で話したことが、 県ごとに報道責任者による組織がメディア・スクラム発生に 朝日 ( 一〇月一日朝刊 ) に書かれていた。高橋弁護士が懸念し 対処することになったが、高橋弁護士は、こうした報道界の たのは、実名発表による過熱取材だという。長野県軽井沢町 対応がいまも十分でないという問題提起をしているのだろう。 で起きたバス事故で遺族の自宅に大勢の記者が集まったこと 繰り返すが、新聞週間なのだ。こうした疑問や不信に対す を指摘していた。 る答えを期待したのだが、それを見つけることはできなかっ 「メディア・スクラム」と呼ばれる「集団的過熱取材」の た。十年前に報道界が犯罪被害者等基本計画を批判したとき 問題は一九九〇年代半ばごろから社会問題化した。一社一社 とまるで同じ意見が繰り返し表明されているだけなのだ。極 の取材は正当な業務上の行為であっても、それを同じ時期、 めて残念である。それでも二紙は特集を組んだが、たとえば 地域、取材対象に集中的に行なうことを人権侵害として規制 読売は新聞週間にちなんだ社説 ( 一五日 ) の中で、「新聞は、 できる法案までもが国会に提出されてしまった過去が、メデ実名を割り出せなければ当事者の取材ができない。その結果、 ィアにはある ( 人権擁護法案は二〇〇三年に審議未了のまま廃案 ) 。 捜査当局や行政機関による情報操作や不適切な権力行使をチ 先に記した、実名匿名発表の判断権限を警察に委ねた一一〇〇 ェックできなくなる。実名発表は正確な報道の大前提であ 五年の閣議決定も、この延長線上にある。この決定は「警察 る」と指摘しただけだ。このように大上段に構えた主張に、 による被害者の実名発表、匿名発表については、犯罪被害者被害者が心を開くのだろうか。 等の匿名発表を望む意見と、マスコミによる報道の自由、国 信頼を取り戻せるかェイズや 0 型肝炎といった薬害問題 民の知る権利を理由とする実名発表に対する要望を踏まえ、 を解決するために国を動かす原動力となった世論は、被害者 プライバシーの保護、発表することの公益性等の事情を総合 や遺族らが実名を名乗ることなしには形成されなかったろう。 批的に勘案しつつ、個別具体的な案件ごとに適切な発表内容と そもそも検察の被害者等通知制度や犯罪被害者等基本法、裁 イなるよう配慮」していくとし、一見バランスをとった表現に 判での被害者参加制度の創設など一連の被室暑施策の発端と メ見えるが、現実の運用が匿名発表に傾いているのは明らかだ。 なった「片山隼君事件」 ( 一九九七年にダンプカーではねて死亡さ
( 国際原子力機関 ) が採っている「深層防護」の 考え方でいえば第五層にあたります。原子力発電所の敷 地の外へと事故の影響が及んだ場合に、被害を最小限に とどめるための対策ということですが、この第五層は、 日本の新規制基準においてすつばり抜け落ちてしまって います。 ちなみに第一 5 三層は事故の際にメルトダウン ( 炉心 溶融 ) を防ぐまで、第四層は過酷事故が起きた時に事故 を拡大させないための対策で、日本の場合はこの第四層 も貧弱と言わざるを得ない状況ですが、住民の生命、健 康、財産に直結する第五層の制度や仕組みを考えなけれ ばならないと、ずっと申し上げてきました。 しかし、たとえばテロ行為によって原発が破壊され、 別 大量の放射性物質が放出されたような場合の住民の避難 特 計画について、原子力規制委員会が何と言っているか。 問 の規制委は、それは「所管外」だとしているのです。万が か 一の時に周辺住民の命と健康を守ることは、自分たちの プ所掌でない、国民保護法 ( 「武力攻撃事態等における国民の保 ル護のための措置に関する法律」 ) の世界であるというわけで チ す。現に、自治体の避難計画は原発の規制基準適合審査 年 の対象とされていません。 事住民を保護する多くの役割を実際に負っているのは地 方公共団体です。しかし、 3 ・Ⅱの前に複合災害として 原発事故を経験していた自治体は、世界でも新潟県だけ でした。一一〇〇七年の中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災 し、原発構内で地震による火災が発生したのです。 サイト内には、もともと東京電力の自衛消防隊がいま したが、地震で地面に一メートルもの段差が生じて配管 が破断し、消火栓から水が出ない状況になってしまいま した。それで地元の消防にを出したのですが、消 防車がサイトにたどり着くのに数時間もかかりました。 道路が途絶えて、通行可能なルートが大渋滞になったり、 住宅倒壊のために助けを求める人たちがいたりと、「緊急 車両」といっても簡単には目的地に到着できないわけで す。この災害の後、コバルトなどの人工放射性物質が 微量検出されましたが、周辺環境や住民の健康に対する 影響はありませんでした。このように、現実に震災と原 発事故が重なるとどうなるか、リアルに目の当たりにし たのは新潟県だけです。 それから、二〇一一年の福島第一原発事故では、原発 立地自治体として、放射線量の測定機材とともに専門職 員を福島県に派遣しています。というのは、ご存知のよ うに宮城県も立地自治体ですが、自ら被災して福島県の 支援にまで手は回らないし、茨城県もやはり被災してい
に亡くなった。死の床で彼女は「謝罪してほしい。罪を認め、 き事件であったと認められるべきである。 頭を下げて賠償をするべきです。私が死んでも鬼になって闘 中国と北朝鮮の被害者に謝罪と支払いを う。真理を手に入れる必要がある。日本で再度訴訟を起こし ます」と語っていた。日本の裁判所に提訴した他の原告たち だが慰安婦問題は韓国人被害者だけの問題ではない。一二 もほとんど全員がこの世を去っている。だとすれば、すくな 月二八日の合意においても、安倍総理は河野談話にならって くとも中国人慰安婦訴訟原告一一四人の遺族に対してだけでも、 「慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しが このたびの新基準で日本政府は謝罪と支払いの措置をとるべ たい傷を負われた全ての方々」に対して謝罪を表明した。こ きではないか。 こには当然韓国の被害者だけでなく、韓国以外の国の被害者 北朝鮮では、政府に登録した被害者は二〇〇人をこえてい も含まれているのである。だから、このたび韓国の慰安婦被 ることが知られている。その大多数も亡くなったといわれて 害者に対する謝罪と支払いの措置が進められ、被害者の名誉 いるが、なお生存しておられる被害者は一〇人はいるだろう。 と尊厳を回復し、心の傷を治癒する事業がおこなわれるなら 韓国の被害者に生存者一〇〇〇万円、死亡者遺族に一一〇〇万 ば、これがアジア女性基金に代わって日本政府のおこなう慰 円を支払うなら、北朝鮮の被害者には計五億円以上の支払い 安婦被害者に対するあらたな謝罪と支払いの措置の基準とな がなされるべきである。日本政府の立場としては、この国と って、新しい措置を他の国の被害者にもとることができるは は国交がないから慰安婦被害者に措置はとれないというもの ずである。 であった。しかし、日朝平壌宣言が出て、国交早期実現が約 中国では、政府間の協議がととのわず、アジア女性基金は 中国の被害者に対していかなる事業もなしえなかった。最後束されてからすでに一四年が経過した。韓国の被害者のため の追加的な措置がとられた現在の機会に、国交樹立のまえに、 かの瞬間に弁護士の方々があたえてくださったチャンスもアジ たア女性基金は活かすことができなかった。班忠義監督が製作被害者が幾人かでも存命のうちに、謝罪と支払いの措置を講 ずるべきではないか。 わしたドキュメンタリー映画『太陽がほしい』をみて、私は、 は もとより安倍内閣がこのような措置をとるだろうと簡単に あらためて、中国の被害者の痛切な声を聞き、自責の念を深 題 しかし、日本国家と国民にはなお くした。日本軍に占領された山西省孟県で特殊慰安所で暴力想像することはできない。 かかる問題がっきつけられたままであることは動かし難い事 安的に監禁されて被害を受けた万愛花さんは日本の裁判所に提 慰 訴した二四人の原告を代表する人である。彼女は二〇一三年実である。
与防止法違反の共謀罪に問われる可能性がある。このような 明らかにする公務員などによる内部告発やこれを報ずるジャ ーナリズムに大きな萎縮効果をもたらし、民主主義の機能不 広範な行為が共謀罪によって検挙の対象となりうるのである。 全をもたらすことを指摘してきた。この秘密保護法には、団 ~ ロ共謀罪がもたらす監視社会 体性も準備行為も必要ない「共謀」や「煽動」そのものを罰 界 人と人とが犯罪を遂行する合意をしたかどうかや、その合 する規定が既に盛り込まれていた。 世 意の内容が実際に犯罪に向けられたものか、実行をともなわ 産経新聞は八月三一日の「主張」において、共謀罪法案の ない口先だけのものかどうかの判断は、極めて困難である。 創設だけでは効力を十分に発揮することはできず、刑事司法 共謀罪は人と人との意思の合致によって成立するから、その 改革で導入された司法取引や対象罪種が拡大された通信傍受 捜査のためには、会話、電話、メールなどを収集することと の対象に共謀罪を加えるべきだと主張している。秘密保護法 なる。そのため、捜査機関の恣意的な検挙が行われたり、市違反の共謀罪をはじめとして、共謀罪が通信傍受 ( 盗聴 ) の 民のプライバシーに立ち入って監視するような捜査がなされ 対象とされれば、政府の違法行為や腐敗を暴く内部告発・調 る可能性がある。 査報道は極めて困難となる。 改正された通信傍受法では、薬物、銃器、集団密航、組織 政府案には、自首した場合には、必ず刑を減免するという 的殺人に限定されていた対象犯罪を、放火、殺人、傷害、逮 規定があった。犯罪の実行前に中止した場合であっても、共 捕・監禁、誘拐関連、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、爆発物、児 謀に加わった者は、警察に自首する以外に刑罰を免れる手段 童ポルノ関連にまで拡大した ( 三条 ) 。通信事業者の立ち会い がないことになる。改正された刑訴法は、検察官が被疑者、 なしに、全通信を暗号化して搜査機関に設置された特定装置 被告人 ( 協力被告人 ) と協議を行い、他人の刑事事件について、 に電送する方式が導入された ( 二三条 ) 。記録媒体の封印の手 その解明につながる供述をした場合には、被疑者・被告人に 続きも省略されている。この改正によって、通信傍受に要す 一定の恩典 ( 不起訴、軽い罪での起訴、軽い求刑など ) を与えるこ る人的コストは飛躍的に削減され、盗聴捜査が爆発的に拡大 とができるという司法取引制度を導入した ( 三五〇条の一 l) 。 することが危惧される。 対象は一定の経済犯罪、汚職 ( 贈収賄 ) 、詐欺などであるが、 私たちは、二〇一三年一二月に成立した「特定秘密保護 これらの罪は共謀罪の対象とされている。手続きには弁護人 法」が市民の知る権利を制限し、国にとって不都合な事実を が立ち会うが、弁護人は取引する被疑者の利益のために活動
加盟二八カ国、それに加盟予定の中国とインド しかし、アメリカは製薬企業の意向を受けて保護期間一二年 が加わると、メガ協定参加四十数カ国で世界のの八割 を譲らない。そこで日本は会議をまとめるために中間の八年 を支配することになる。しかし、地球上にはにも を提示して交渉を進展させた ーーと日本政府の交渉官は胸を にも入らない国はどれぐらいあるのか ? 全世界一九六 張るが、アジア各国の ZCO からは「日本がアメリカの代理 カ国の実に四分の三はそのメガ協定には参加できず、極端な 人となって保護期間延長を導いた、その数年の間にどれだけ 貿易上の不利益を被ることになろう。 の患者が死ぬことになるのか、わかっているのか ? 」という では、そのような国にいかなるメカニズムで援助し、発展厳しい叱責の声が上がった。 を助けることができるのであろうか。このように一方で格差 メガ協定の行方 や貧困を拡大し続けて、世界が安定し繁栄した歴史は存在し ( 1 ) 考えられる大統領選後の三つのシナリオ ない。必ずやこの格差は難民や紛争となって、メガ協定参加 シナリオ 1 【クリントン勝利産業界から多額の献金を受 国に深刻な打撃を与えるにちがいない。 この状況で、「正 義」が貿易や経済活動において重要な指標として再登場しつ け、本音は (---ææ推進だが E-*> 討論であれほど現行協定に反 つある。バナマ文書の公表や、 ーニー・サンダース氏の主 対を表明し、大統領になっても反対の意思を変えないという のだから、当選後は協定の抜本的再交渉に出る。いう 張があのように大きな運動となっていることを考えると、現 代世界は再び正義とは何か、貿易問題においても、なぜそれ なれば (---æg« r.2 の策定である。日本のように再交渉を認 めないと宣言する国があっても、状況変化や新規参加希望国 が必要なのかを問いかける時期にきている。 今、日本に求められているのは、自体の加害性に対 の立場を考慮するなど、いくらでも合理的な言い訳になる。 シナリオ 2 】トランプ勝利とか自由貿易協定とい する認識である。日本では農業への深刻な打撃から、自らを う言葉でなく、アメリカ国益第一主義を表現した新構想貿易 ? の実質的被害者と考える人が多い。ところが、連帯が システムも策定に入るに違いない。それでも、交渉で 期待されるアジア各国では逆に、日本は加害者と考える勢力 アメリカが勝ち取った有利なテーマや決定は守るはずだから、 ~ が多いのである。ェイズに悩む各国は、タイやインドなどで 生産されるジェネリック医薬品に依存しているのだが、今後 日本が失地回復をできるわけではない。 は シナリオ 3 【オバマ大統領のレームダック期間の議会承認 の医療で期待される生物製剤のデータ保護期間に関して、オ ーストラリアやマレーシアは三年から五年の短期を要求する。可能性は少ないがゼロではない。オバマにとって最後の切り こ 3
クタドール紙には、キャンペーンがア権侵害に対して、その行為者に対し、真パラミリタリーによる人権侵害も増大し ンティオキア県ウラバのバナナ流通業者相の追及と法的審理が行われ、加害者にた。これらの責任追及はウリペ上院議員 の献金によって賄われたという告発記事は処罰を、被害者には補償を与えることを中心とする反対派の権力層 ( 政治家、 企業家 ) に及ぶだろうことは明白で、 が掲載された。ウラバはバナナ・プランで実施される正義のことである。 「 ( o に対する ) 免責のない和平 < O にとって譲れない一線であった。 テーションが集中する地域だが、 O と。ハラミリタリー ( 右派準軍事組織【出を ! 」というスローガンに集約されるよ移行期正義に関するもう一つの論点は 自は様々だが左翼ゲリラの暴力に対抗するためうに、反対派の最大の批判点はハバナ和裁判手続きに関するものである。今回反 に組織された傭兵集団 ) 両者の介入で長年平合意内容がに対して寛大で譲対派が提一小した改定案は、「和平のため 紛争に苦しんだ地域である。の歩し過ぎるというものであった。合意内の法廷」は通常の司法枠組みに組み込ま 脅威に対する自衛手段として企業家がパ容では、通常の司法システムとは独立しれるというものだ。「和平のための法 ラミリタリーに資金提供を行うという構た、外国人判事も含む和平のための特別廷」は、メンバーの罪状審議に 方図は他にもみられたが、その背後に政府法廷を新設することとし、真実を告白し限定されるべきとの主張があるが、これ の 関係者が関わってきた。こうした汚れたた者には五年から最大八年間、特に農村は軍、企業家、政治家などの紛争関与者 平 ア資金が今回のキャンペーンにも流れた。部で勤労に服させるというものであった。が特別法廷での裁きの対象からはずれる ン ことを意味し、当然との合意は ◆反対派との合意形成の模索争点は「誰が裁きの対象になるか」とい 国民投票否決直後から、サントス大統う点にあった。和平のための特別法廷で見込まれない。 れ 第二は、和平合意内容の法制化につい 領は反対派との合意形成のための対話をは「以外の紛争中の人権侵室簡 立繰り返している。主要な争点は以下だが、題の関与者もあまねく審議対象となる」てである。政府は国際人権規約に則った ことが確認されているが、ここには軍関内容での法制化を憲法に照らしたうえで ちいずれも合意実現へのハードルは高い。 、そして政府関係実施しようとしているが、反対派は国会 第一は、「移行期正義」の方法と中身係者やパラミリタリー についてである。ここで言う移行期正義者も含まれるからである。ウリべ政権期、において、通常の立法過程に則って法案 のとは紛争の和平過程において、紛争中にに対する戦闘路線での和平プロ審議に付されるべきと主張している。合 世行われた戦闘行為やそのほかの様々の人セスがめざされたが、紛争地ではこの間意文書内容の政策実施にあたって、様々
ここにいたって、和解・治癒財団は、安倍総理が これが翌日のハンギョレ新聞で報道された。二九日、韓国外までもない。 務部の報道官は、手紙問題が提起されていることに関連して、署名した謝罪文を獲得することを断念せざるをえなくなった。 「日本側が慰安婦被害者の方々の心の傷を治癒するような追 一〇月一一日、和解・治癒財団は韓国各紙に広告をだした。 加的かっ感性的な措置を取るように期待している」と述べた 「韓日間日本軍『慰安婦』被害者問題合意 ( 二〇一五年一一一月 界 ( 中央日報、三〇日 ) 。 二八日 ) により日本軍『慰安婦』被害者の方々の名誉と尊厳 日本政府がこの動きに反発した。一〇月三日の衆議院予算 の回復、及びこころの傷の治癒のために設立された『和解・ 委員会で民進党小川淳也議員が次のように質問した。「先ご 治癒財団』が個別被暑を対象とする事業を実施する計画で ろ、慰安婦問題に関する日韓合意に基づいて、ことし八月、 すから、対象者は申請期間内に申請してくださるように望み 元慰安婦を支援する財団に一〇億円の拠出をされています。 ます」 それに加えて、韓国政府からさらに安倍総理からのおわびの 申請期間は一〇月一一日から翌年六月三〇日までとされ、 手紙を求めるということがあるようでありますが、総理この 事業対象者は「政府に登録・認定を受けた日本軍『慰安婦』 件について現時点でどうお考えですか」。それに対して、ま 被害者」とし、事業内容は「日本軍『慰安婦』被害者の名誉 ず岸田外相が、日韓合意は、昨年一一一月の「共同発表の内容 と尊厳の回復、及びこころの傷の治癒のための現金支給」と に尽きております。その後、追加の合意がなされているとは 明記された。この部分に但し書きがあり、合意当日の死亡被 承知をしておりません」と問題をはぐらかすような回答をし、 害者に対して一一〇〇〇万ウオン規模、生存被害者に対して一 つづいて安倍総理が、「小川委員が指摘されたことはこの内 億ウオン規模で「財団が対象者の個別需要を把握し、これを 容の外でございまして、我々毛頭考えていないところでござ 土台にして支給する」と書かれていた。これによって申請書 います」と答弁したのである。 の受付がはじまったのである。 」川議員は、これに対して、「ひとまず受け止めさせてい この広告では、被害者に渡される現金がどこから来たもの ただきます」とわけのわからぬ反応を示しただけで、いかな か、なぜ提供されるものかが説明されていない。財団はその る批判も加えなかったが、安倍総理のこの尊大な態度は慰安 ことを説明しなければならない。安倍総理が署名した謝罪文 婦被害者にあらたに踏み込んで謝罪を表明した日本国総理大 が得られない以上、財団は、昨年末の合意を写して、韓国の 臣にふさわしくない態度である。「毛頭考えていない」とい 外務部長官が証明する説明文を作成するしかなくなった。 うこの答弁が韓国人の感情をあらためて傷つけたことは言う 岸田外相は昨年一二月二八日日韓外相会談での合意後、韓
国国民と世界のメディアに向かって、次のように発表したの を設置し、国民募金から被害者へ「償い金」を支払い、政府 である。これは万人が聞いている。 の資金により医療福祉支援をおこなったのであった。基金を 「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名 うけとる被害者一人一人に総理の「お詫びの手紙」、基金理 誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から日本政事長の手紙が渡された。 府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の総 しかし、韓国の被害者の大半と挺対協 ( 韓国挺身隊問題対策 理大臣として、改めて慰安婦として、数多の苦痛を経験され、 協議会 ) などの運動団体は、総理の謝罪があっても、政府が 心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心 「償い金」二〇〇万円に一円も支出しないのでは、誠意のあ からのおわび〔謝罪〕と反省の気持ちを表明する」 る謝罪ではないのではないかとして、アジア女性基金の事業 「日本政府は、・ を拒絶した。基金の事業を受け取った被害者は六〇人にとど ・ : 今般、日本政府の予算により、全ての 元慰安婦の方々の心の傷を癒す〔治癒する〕措置を講ずる」 まり、政府登録の被害者総数の三分の一に達しなかった。ア 「なお : : : 予算措置については、規模はおおむね一〇億円 ジア女性基金は韓国の被害者に対しては謝罪と償いの事業を 程度となった」 ( 以上〔〕内は韓国語文のもの ) やりおえることができず、韓国国民に認めてもらえず、和解 をすすめることに失敗した。アジア女性基金に反対した挺対 和解・治癒財団は以上のような言葉をそのまま記載し、ま さに安倍総理の謝罪、政府の責任を痛感した謝罪にもとづい 協は、一九九二年にはじめた日本大使館前の毎週水曜デモを て、日本政府が一〇億円を拠出したとの説明文を添えるので アジア女性基金が解散した一一〇〇七年三月以後も継続し、一一 あろう。そして、慰安婦被害者の申請にしたがって、現金の 〇一二年末には一〇〇〇回目のデモをおこない、少女像を大 支給が一〇月のうちにはじまるのである。 使館前の路上に設置するにいたるのである。 か だから、日本政府としては、どうしても、アジア女性基金 の 新方式への評価 をのりこえた新たな解決の方式をもって、韓国の被害者のた わ めに第二次の措置をとることが必要であったのである。二〇 ここであらためて今回の措置の意義を考えてみよう。一九 は 九一年に韓国から慰安婦問題の提起を受け、韓国政府の促し 一一年の韓国憲法裁判所の判決をふまえて、韓国大統領が日 題 を受けて、日本政府は調査を開始し、一九九三年には調査結 本政府に慰安婦問題の解決を求めるようになったことがあら 安果にもとづいて、河野官房長官談話を発表して、謝罪し、そ たな機会を開いた。李明博大統領の時代には、民主党政権と 慰 の謝罪をあらわすために、一九九五年には、アジア女性基金 のあいだで一定の努力がなされたが、実を結ぶにいたらなか
ところがそれ以後は、健康被害への補償 ( 手当 ) 以外は、 すべてチェルノブイリという特殊枠をはずれて、退役軍人や 生まれつきの障害者と同じカテゴリーになったのです。その 中で特にダメージが大きかったのが医療サービスでした」 ロシアにおける元事故処理作業者の全国組織「チェルノブ チェルノブイリ同盟は、法改定の度にデモやハンガースト ィリ同盟」のビチェフラフ・グリシン代表は、法改定の中で ライキ、法廷闘争などで反対の意思表示をしてきた。とりわ 最も重要だったのは二〇〇一年と二〇〇五年の改定だったと け二〇〇一年の改定前には、トウーラ支部の元炭鉱労働者た ち約一〇〇人がモスクワまで行進し、赤の広場の入り口にあ 「まず二〇〇一年の改定では、身体障害者の年金の算出基 準が変更されました。それまではチェルノブイリでの作業で る第一一次大戦の英雄ジューコフ元帥の銅像の足元に、チェル ノブイリの事故処理参加でもらった勲章を置いてきた。「中 受け取っていた、通常の四、五倍にあたる給料に対して喪失 身のない勲章なら返上する」という強烈な意思表一小だった。 した労働力の割合がかけられて計算されたため、最低でも五 万ループル ( 現在の一〇万ループル。日本円にして約一七万円 ) ほど ソ連邦崩壊の歴史の渦の中で生まれたチェルノブイリ法。 それは旧共産党勢力と対峙するエリツイン政権が選挙対策に ありました。しかし二〇〇一年以後は、一般の障害者のカテ ゴリーに準じた年金となりました。第二級で七五〇〇、寝た とった人気とりと揶揄されながらも、傷ついた事故処理作業 者とその家族の生活を守ってきた。しかしプーチンの時代と きりで動けない第一級でも一万七五〇〇ループルほどに減り ました」 なり次々と進められる福祉予算削減の中で、事故処理作業者 の権利を守る闘いは苦戦が続いている。 グリシンは二〇〇五年の改定はさらにドラスティックだっ たとい , つ。 「二〇〇五年まではチェルノブイリ法の根本は憲法で定め トウーラに滞在中、チェルノブイリの事故処理作業者が母 られたものだったので、『被災者の権利』が認められていま した。そこでは医療、保養などのサービス、無料で交通機関校に招かれ、講演するというイベントに立ち会った。 トウーラ市立第四教育センター。日本でいえば小学校と中 のを利用できるなどの特権、家賃や電気代などの補助金、補償 学校と高校が合体したような学校だ。この学校の卒業生のセ 永金、支援などは被害に対する賠償の中に入っていました。 打ちをかけている。 「英雄」母校に帰る
気持ちを表明する。 〇〇〇万円 ) を支出することで韓国側と合意したと発表した 二〇一五年一二月一一八日 ( 読売新聞、二五日 ) 。九月一日、日本政府からの一〇億円の送 日本国内閣総理大臣安倍晋三 金が完了した。 生存被害者一億ウオン、死亡被害者二〇〇〇万ウオン ( 約 二〇〇万円 ) という支給額は日韓の協議に基づいて決められた 日韓合意では、日本が拠出する一〇億円をうけとり、事業 ようである。日本側は現金の支給という形をストレートにと をする財団を韓国政府が設立することになっていた。しかし、 ることには難色を示したはずだが、韓国側がこの点は押し切 賛成反対の議論が分かれる中で、財団の設立にも多くの困難 があった。 ったと見える。問題は、現金支給のさいの説明の文書である。 安倍総理の手紙問題がこの局面で財団理事会の最大の関心事 韓国政府は、まず財団たちあげについて官民合同のタスク となったようである。 フォースを設けて、検討をおこない、五月末にいたり、 委員会の発足にこぎつけた。そしてついに七月二八日、「和 総理の手紙をめぐる攻防 解・治癒財団」を設立した。なお日本側の記録では、軽い感 九月二〇日、朝日新聞は和解・治癒財団の事業のために、 じの「癒し」という言葉を使っているが、韓国側では重い言 安倍総理の手紙を慰安婦被害者に送るように、韓国側が日本 葉である「治癒」を使っていることに注意すべきである。財 側に要請していると報じた。この日、韓国外務部の報道官は、 団の理事長は金兌玄誠信女子大名誉教授、理事には李元徳国 和解・治癒財団の中で「日本の首相名義の書簡を含む、日本 民大学教授、陳昌洙世宗研究所所長、沈揆先東亜日報記者ら 側の追加的な措置について意見交換が行われている」と明ら の他、弁護士や外務部、女性福祉部の現職官僚も参加した。 か かにした ( 毎日新聞、二一日 ) 。九月二六日に、韓国国会議員に この日の発足の記者会見場に日韓合意反対の女子学生が乱入 の よる国政監査の席で、金兌玄財団理事長は安倍首相の手紙を たし、金理事長にカプサイシン入りの水をかけるという事件が わあった。 慰安婦被害者に送ることを求める考えを表明した。 は 九月二八日、東京では重藤都、中村ひろ子氏らを中心とす 八月二四日、日本政府は韓国の和解・治癒財団の事業に一 題 問 〇億円を拠出することを閣議決定した。この決定には少女像る女性グループ、「慰安婦問題」解決の会が安倍首相に対し、 韓国の財団が求めている「お詫びの手紙」を出すように求め 安の問題は一切関連づけられていないことが重要である。この 慰 る要望書を提出し、参議院議員会館での記者会見で発表した。 さい、日本政府は、生存被害者一人あたり一億ウオン ( 約一