絵本『ペレのあたらしいふく』 ( 福音館書店 ) の世界がそのままここにあるような気がし ます。羊の毛を刈ったり、糸紡きや染物 を楽しんたり、保護者も手仕事の世界に 夢中になってしまいました。一生楽しめる 趣味 ( ? ) に出合え感謝です。 ( 羊毛手仕事の会保護者 ) 身近な生き物について、また自然の中で 遊ぶ時に注意するべきことについてたく さん学べる幼稚園です。家族としてのセ キュリティレベルがアップし、生きる力、 家族力が育ってきているように感じます。 ( ぼうけんのもりを愛する保護者 ) 聞い 1 みました ! 保護署・地域からの 身近な動物や植物のことなど、ちょっとし案を次々に仕掛けています。人間には想 た情報を提供するたけで、真剣に聴き入像もつかないほどの長い年月をかけて淘 り、心の底からおもしろがってくれる先生汰され、今の姿がある自然物は、すべて たちがいるから、足の運び甲斐がありまが理にかなっています。自然から学ぶこ す。たからこそ、もっとおもしろがらせとは、またまたたくさんありそうです。 ( 自然博士のおじちゃん ) てやれと思って、こちらもいろいろな提 生田先 め自然とふれ合う保育に不可欠な 地域のカ どものためになるだけでなく、 地域交流と言うと、毎年恒例 おばあちゃんたちの喜びにもっ の高齢者との交流、おじいちゃ ながっている点が重要です。この ん、おばあちゃんから昔遊びを : 、などのバターンか ような「互恵性」のある交流を 教わって : ・ ありがちです。ゲーンス幼稚園行いたいものです。 また、マダニ調査隊の事例で がそれらと違うのは、自然と本 は、自然博士のおじちゃんとの 気で付き合う保育をするために は、地域の人たちの協力が不可かかわりがすてきです。自然を 欠という点です。それは、イベ生かした保育をしていると、子 ント化されたものではありませどもたちの「なぜ ? 」という問 いや探究が生まれます。子ども ん。「染物をやるなら、私たちに も手伝わせて」とおせつかい感たちが「どうしたらいい ? 」と 困った時に地域のスペシャリスト 覚で気軽に参画してしまうよう とのつながりがあることで、子 な関係性です。このような関係 どもの探究や協働はさらに深 が生まれるには、日ごろから まっていくものです。理想的な 「顔の見える」お付き合いがある のでしようね。そしてそれは、子地域とのつながりですね。 プロフィール・大豆生田啓友 ( おおまめうだひろとも ) / 玉川大学大学院教育学研究科・教授。保育分野にとどまらず、子育て支援や、子どもと その周辺領域への提言など、精力的に活動している。倉橋惣三の研究家としても知られる。 43 保育ナビ
事例 マグニ調査隊結成 ! いつも子どもたちが " ぼうけんのもり " と呼んで 「冬場はマダニはいない」と思い込んでいました いる大学キャンパス内の雑木林には、イタチや が、 2015 年度の 3 学期、 3 人の子どもと 2 人の タヌキ、キツネやイノシシなどの野生動物も多く 保育者がマダニにかまれてしまいました。これを 生息しています。当然心配されるマダニ感染症。 きっかけに、マダニ調査隊を結成しました。 幸いにも大事に至らなかったのです が、マダニについてもっとよく知り、 身を守る方法を学ばなければと思っ た矢先、いつも園に出入りしている 自然博士のおじちゃんが、「友だちの マダニ博士を連れて来よう ! 」と呼び かけて実現したのが、 2016 年 5 月 のマダニ調査企画。親子でぼうけん のもりのミクロの生き物を採取して、 マダニの生態を学び、安心・安全な 森遊びについて語り合いました。 ※ゲーンス幼稚園は広島女学院牛田校地にあり、 そこには広島女学院大学と大学院があります。 ーれが K 子先生に かみついたマタ・ニかあ 42
保育内容 突撃 ! 隣の 園環境 お話をうかがった人 上越教育大学附属幼稚園 ( 新潟県上越市 ) 渡辺典子先生 隣の園がどんな工夫を しているのか・・・ 日々の保育に活きる、 ちょっとした工夫や アイデアを 覗いてみましよう。 第 6 回 つ て 遊 び 込 め る 遊 び の 工 夫 でいます。 園の保育方針は「元気な子」「やさしい子」 「考える子」。そのような子を育てるためには、 次に大事にしているのが「本物」です。「本 何より遊びが必要です。そこで当園では、自分物」には、やはり子どもを夢中にさせる力があ ります。 でやりたい遊びを見つけ、やり方を工夫して取 り組み、友だちと折り合いをつけて遊びを進め そこで、ままごと道具などは既成の玩具でな ていくことができるような遊び環境を工夫して く、本物を用意。円ショップなどで購入 います。 するほか、家庭から不用品の寄付を募るなどし まず、大事にしているのが「自然」です。園 て集めました。鍋やフライバン、おたま、皿、 には、生き物本来の姿にふれられる池や飼育ス コップ、そしてガスレンジやオープントース ペース、様々な作物の生長を見ながら育てたり 収穫したりできる広い畑や保育室前のプラン いつもお母さんがおうちで使っている道具、 ターがあります。そんな自然には、子どもを夢普段は触る機会の少ない道具を自由に扱えるこ 中にさせる力があると思うのです。 とが楽しくうれしく、子どもたちはすんなりと 大学には「緑の小道」と呼ばれる森がありま その世界に人り込みます。 す。園は大学の敷地内にあるので、その森まで こうして 3 年間を過ごした子どもたちは、遊 徒歩分。ありのままの自然に自由に子どもた びの中からたくさんのことを学んでいます。そ ちがふれられるようにしています。子どもたち れは、生涯にわたって役に立つ「生きる力」に はここで、主体的に自然とかかわりながら遊ん つながっていくに違いありません。 緑の小道 本物のままこと道具 8
0 人材育成 保護若・地域と一結に 魅力ある園づくり ~ 事例で見る保護者・地域の協働・参画 ~ 保護者や地域に園の保育を知ってもらい巻き込むことで、それ ぞれの園文化が魅力あるものに構築されます。ここでは様々な園 の、保護者や地域とのコラボレーション事例を紹介します。 監修大豆生田啓友 ( 玉川大学大学院教授 ) 広島女学院ゲーンス幼稚園では、 くために、保護者や地域とのネット キリスト教の精神のもと、子どもた ワークは欠かせません。水辺や田ん ちのありのままを受容すること、遊ばを造る時、畑の作物がイノシシに びを中心とした生活を通して子ども食べつくされた時、マムシやスズメ と保育者が共に育っこと、神様の創 バチがたくさん出た時、羊の毛を紡 いだりフェルトにしたりする方法が 造された自然から学ぶことを大切に しています。 わからない時、森の遊び場を造る時 自然の中には、多様性、応答性、 等々、多くの人の力を借り、これま 不可逆性、不確実性など、人為的に で伝承されてきた知恵に学びながら、 準備・計画しきれない要素が詰まっ より良い園環境と園生活の在り方を 、場 ています。思いがけない出会いに心追い求めてきました。自然とのふれ いう を動かし、かけがえのない命にふれ、 合いから広がるすべての活動から、 合合 不思議を感じ、また時には、どう対どう生きるべきか、何が本当に大切 れち かというメッセージを受けとめる 応していいかわからないこと、怖さ 、育 日々です。 や厳しさに直面することもあります。 しで これこそが 人間に都合のいいところだけを切り 然子 自然の恵み 自親取って子どもに与えるのではなく、 リスクも隣り合わせの環境の中で、 であると感 じています。 子どもたちと共に困難にも立ち向か 、それらを乗り越えるための試行 錯誤を重ねています。 遊びと生活を豊かにしていくため に、またリスクマネジメントしてい 第 6 回 執筆 学校法人広島女学院 広島女学院ゲーンス幼稚園 園長高田憲治 園デーク 学校法人広島女学院 広島女学院ゲーンス幼稚園 ・・広島市東区 http://www.hju.ac.jp/-gensuyo/ 4
フレ - ベル館儻 フレ - ベル館のガ - テンテサインとワ - クショップ 「子どもたちに生きよう ! 」を合言葉に、フレーベル館は日々新たな可能性にチャレンジしています。 その一端をご紹介します。 子どもの創造力と感性を育てるガーデン 「子どもにとって遊びは生活の一部で、周囲の 解環境は遊具であり、教材」という矢野氏 9 の監修のもと、園庭のデザインとワークショッ プを提案しています。 今回ご紹介するのは、ビルの 3 階にある保育所。 一狭小 0 屋上 = 〈ー = も、子どもたちが日 00 0 高生活の中で自然にふれ、季節や育てる喜びを感 法じられるよう、食べられる実や遊べる実のなる木、 福特徴的な葉や花など、多種多様に植栽しました。環 完成後は矢野氏の指導のもと草花で遊ぶワー クショップを一丁い、 遊びを通して子どもたちの館 創造力を引き出し、感性を刺激する考え方を職勺 員全員で学びました。この体験を現場の実践にレ つなげています。 。担当者 試コメ冫ト ご希望の面積や園庭の場所や状態 に合わせて、ガーテンテザインをご 提案いたします。 く矢野 TEA 氏プロフィール〉 ガーテンテザイナー・ライフスタイルテ ザイナー。 2016 年、英国王立園芸協会 主催「チェルシーフラワーショー」で世界 トップクラスのデザイナーと競い合い、 ショーガーテン部門でシルバーメダル賞 を受賞。自然環境学習ワークショップ 「 FOREST FARM 」主催。 ※ワークショップ費、ガーテンテサイン費、 工事費等がかかります。
, 、第を 1 ド第 , 町、心 をこ、 総み・そ今、驫 ". ァ三、 ・ヤ考ミこ 、をい、ン当 イ阜れ当な 阜第第冫イ第 第、当第叮茅をを第「 = レ震 ノ : 第」第舅第多 を蹶の。を彡の帚気 どんぐりの木アラカシは、下枝も生えていて登りやすかったが、たくさんの園児が遊んでいると枝が折れて木も弱った。 そこでツリーデッキを付けて、木を守りながら木とかかわれるように。「木登りは危なくないんです。自然は優しくないので、 自分の能力以上の高さには登れませんから」 ( 園長 ) 35 保育ナビ
0 事例 地域のあはあちゃんたちと 色永遊びから染物へ 咲き終わった花びらや、緑の葉っぱ、その他なん も入れてよ ! 」と、地域の染物大好きおばあちゃ んたちが遊びに来てくれました。 でもすり潰して色水作りやジュース屋さんごっこ 自然とぶれ合うことを大切にしていると、いろい を楽しむ子どもたち。画用紙に色水で絵を描いた ろな人が集い、つながり、様々な知恵や情報の り、ティッシュや和紙を染めてみたりしているう ネットワークが広がってきます。 ち、「そんなおもしろいことをしているなら私たち おばあちゃんたちがプレゼントしてく れた種を蒔いてみると、夏にはたくさ んの緑の葉っぱが出てきました。それ は、アイタデの葉っぱでした。すり鉢 で葉っぱをすると、独特の臭いがしま す。「なんかくさいぞ ! 」「うわ、どろ どろだ ! 」「黒っぽいね」 1 0 ド 川、 AS 。 生の藍で染めたハンカチは優しい水色 でした。「次は乾燥藍をやってみよう ね ! 葉っぱを刈り取って干しておい てね」。秋には 1 人 1 枚ずつ紺色のバ ンダナを手にしました。 「園の畑で玉ねぎを育てているなら、 玉ねぎの皮の染物もしてみない ! ? 」 と、身近ないろいろなものから染物が できることを教えてくれています。 41 保育ナビ
草木に阻まれての歩き . にくさも大切な体験 イ認′・鵞イ、 - 彎を第を Pick up 緑の小道 自然をそのまま残した「緑の小 道」。管理された環境では味わえ ない様々な体験が子どもの五感 を刺激します。 ・「緑の小道」は、「本物」に こだわる私たちの保育方針 の表れでもあります。 肌た 木も 保育者 : = VOice Pickup 本物のままこと道具 プラスチックの玩具と違い、大きさ も重さも子どもには扱いにくいので すが、子どもは夢中になって遊ん でいます。 保育者 VOice ・本物のガスレンジにふれる子ど もの表情の生き生きしているこ と ! どの子も夢中になって、 遊びの世界に入り込みます。 保育室に設けたままごとコーナー 園庭の砂場に設けたままごとコーナー 園舎・園庭 MAP ()P より ) 録の小道 甬池 うみ 多目的室 北門 ( 5 歳児 ) シャワー トイし物置 物ートイ やま そら 足洗場 夐 ( 3 歳児 ) ー ( 4 歳児 ) 出会いの広場 ロ砂場 子どもの家 ロ けやき目 キウイ 歩道 ジャングルジム そらの家 ヒューム管 正面 ・いちい - ちびっこ砦 策山 プランコ 取材 こんべいとぶらねっと 69 保育ナビ
十 子どもを物語ることは、日常であり、自然です。 子どもから学ぶことです。 子どもを物語ることは、誰にでもできることです。 子どもについて考えることです。 そして、子どもを通して見ることです。 子どもを物語ることには、 等身大の祈りや願いが含まれています。 子どもを通して世界を見ると、 子どもを物語ることは、誰もができる平和のための働きです。 私たち人間にとって大切なものが見えてきます。 最後に 子どもを物語ることについて、 それは、たとえば、今ここに存在することへの愛おしさ。 たとえば、誰かの存在。支え合うこと、分け合うこと。 書き留めておきたいことがあります。 子どもを物語る時は、どうしても自分の一一一一口葉で語ることです。 たとえば、美しい空気や水だったり、 どれだけ、若くても、経験が浅くとも、 木や花や虫や鳥やけものの存在。 自分の一一一一口葉で語ることです。 資本主義経済とか、 新自由主義とやらの力が大きく働いているところでは、 言葉はその人自身です。 大切とは言っても、 足りなかったり、迷ったり、乱れたりもしますけれど、 ェッセンスくらいにしか見ていないであろうことを、 ど真ん中において見ることで、風景が変わって見えたりします。語彙の少なさ、経験の少なさ、思慮の浅さ、 それらを映すかもしれませんけれど、 そこが脅かされず、そこが励まされることで、 子どもを通して世界を見ると、 言葉はまさにその人自身となり、 私たち人類が共通に大切にしたいものが見えてきます。 そしてまた、その人自身が子どもを物語り続けてゆく時、 命を連綿とつないでゆくイメージが浮かび上がってきます。 子どもを物語ることが、平和のための働きとなるのです。 でもね 子どもの物語に泣いて笑って今日明日 子どもを物語ることは、まったく高尚なことではありません。 十 13 保育ナビ
子どもの〃おもしろさ〃を もっとろ , フー 対談 「子どもを物語る」とは、どのよ 現場に人ったばかりの頃、先輩のロ うなことでしようか。これまでも保ぶりをよく真似ていたんです。子ど 育の現場では、同僚・保護者・地域もが帰った後に職員室で、先輩たち 等へ子どもの様子を伝えることが大が本当に楽しそうに子どものことを 事だとされ、日々行われてきました。 話していて、おなかを抱えて笑って 一方で、「物語る」という行為は、 しまうくらいおもしろい話だったん 事実を事務的に伝える必要性だけか です。その姿を見て、僕もあんなふ らではなく、子どもに心動かされ、 うに子どものことを、明日ここで話 それをだれかに伝えたいと感じた時したいなあと思いました。 に、おのずと生まれてくるもののよ ロぶりを真似ているうちにだんだ うです。「物語る」ことのもっ力と ん子どもが見えるようになっていき 心動かされ 可能性について、大豆生田啓友先生ました。「語る」の前にある「見る」 と青山誠先生に語り合っていただき の視点が、真似することで自然と自 生まれた物語 ました。 分の中に入ってきた感じです。そん なふうにして、子どもは本当に興味ィ一三 よ呆護者にも 「真似てみる」ことから始める が尽きない魅力的な存在だというこ 青山先生 ( 以下、青山 ) 】僕が保育とを最初にまず学んだ気がします。 感染してい 大豆生田啓友、 大豆生田啓友 ( おおまめうた・ひろとも ) 玉川大学大学院教育学研究科・教授。 保育分野に留まらす、子育て支援や子ども とその周辺領域への提言など、精力的に 活動。倉橋惣三の研究家としても知られる。