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検索対象: 本の雑誌 2016年11月号
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1. 本の雑誌 2016年11月号

知られる。 剣を振り回していたというから周囲は毎晩録大全』 ( 織田淳太郎 / 東京書籍 ) は酒が 『サムライ評伝三船敏郎』 ( 松田美智子ヒャヒヤである。家族は周囲にどうにかしあったから一流になりえた選手に光をあて / 文春文庫 ) によると、三船はウイスキーてくれと懇願したが、あの黒澤明でも止める。 のポトルの蓋を開けると飲みきらないと満られなかったというから仕方が無いか 今井雄太郎は阪急 ( 現オリックス ) の名 足しなかったとか。一滴も残したくない性そんな三船でも肝を冷やした経験があ投手で通算で 130 勝したが、人団 7 年ま 格のため、毎晩のようにウイスキーのポトる。『映画俳優安藤昇』 ( 安藤昇・山口猛ではわずか 6 勝で解雇寸前だった。今井の ルが空になるのだから、酒量は増すばか / ワイズ出版映画文庫 ) では伝説の愚連隊課題はメンタル。練習では調子が良くて を率いた安藤にからむ三船の姿が語られても、いざ登板すると、悪い結果ばかり考え 、る。べろペろに酔った三船と初対面の安て力が発揮できなかった。 ~ こし ひ藤がタクシーに乗ったところ、いきなり一一一 8 年目に首脳陣が前代未聞の方針を決 田船が理由もなく、顔を殴りつけてきたのだ定。今井に試合前にビールをガプ飲みさせ から穏やかでない。初対面なのだから安藤てマウンドにあがるように指示した。「さ も怒りを抑えきれない。「思い切り三船をすがに酔いが回ってきてね。あれこれ考え ・郎 蹴飛ばし、車から引きずり落として、ボコるのが面倒くさくなった」と述懐するよう ン太 てきめん イ健 ボコになるまでぶん殴って、半殺しの目に に効果は覿面。同年、史上人目の完全試 ザ崎 デ石 合わせたんだ」。道路に気絶した三船を置合を達成し、その後も、勝ち星を積み上げ り。三船も危機意識はあったのか、何杯目いて、そのまま安藤は家に帰ったとか。前球界のエースにのし上がる かを飲むときに必ずコップに印をつけて、後不覚になろうとも、真剣を家族に振り回「仕事中に酒をあおるとは何事か」と怒ら それ以上、飲まないようにしようと心がけそうとも、人間、絡む相手を間違えてはいれるかもしれないが、これは、私もたまに るがいつもラインを越えてしまっていたけな、。 やる。「こんなしょーもないことを何で書 という。酒飲みの悲しい性であるが、ライ「偉人たちに学べ , と偉そうに書きながらいているのだろうか」と考えずに原稿が進 ンを越えると、ころっと人が変わり、怒鳴も、ほば反面教師としての教訓で埋めてしむからだ。シラフでは書けない自虐的なネ り散らすというから迷惑きわまりない。 まったが、酒が人生に思わぬ効果をもたらタも盛り込める。実際、本稿も缶チュー そんな状態で、殺陣の練習と称して、真すこともある。『ニッポン野球珍事件珍記イを飲みながら書いている ー船敏郎

2. 本の雑誌 2016年11月号

とい一つことである の話があったとしても、長編連載は遡ってなるところだけ参考にすればいいのであつらない、 ただ、原稿についてだけは、事前に相談 修正できない分、新人には非常に難易度のて、全部を気にする必要はない。 twitter も ことはない。書く前 高い仕事だ連載は終わったものの、大量要注意。居心地のいいに浸っているし過ぎてもあまりいい にいくらプロットを磨いても、結局のとこ の直しが必要だからいつ出せるか分からなと、それが世間だと勘違いしてしまうし、 い、なんてことになると、あらゆる点で二鬱陶しいリプライは、相手にしないと決めろ原稿勝負。粗筋はあんまり面白くなさそ 度手間になる。書き上げてから連載、といてもストレスになる。精神衛生上、ネットうなのに、読んだら抜群に面白かった、と いう経験はないだろうかその逆もしか う方法もあるが、初めのうちは、早く新刊とは適度な距離を置くに越したことはない。 り、である。作家と編集者は、最終的には ・何でも相談していし が出せるならどんどん出していった方がい 作家は孤独な仕事とよく言われるが、執原稿を挟んで向かい合うものなのだ。 デビューして数年は、作家にとって、と筆はたった一人でするものだから、精神的・初心を忘れない 仕事を続けていると、労多くして功少な ても大切な時期。いくら雑誌に原稿が載っにも肉体的にも孤独の極みである。勢い し、と思う局面がきっと来る。本は思うよ ても、一般読者には店頭に並んだ本がすべ煮詰まることもある。 て。だから、先々のことを見据え、しつかそんなときは、もうとにかくどんなことうに売れないし、何を書いても文句を言う りと自分のスケジュール管理をしなければでも、担当者に吐き出して欲しい用なん人はいる。ついつい、「もう嫌だ」と思い かなくていい ならない。 愚痴でもいい。余所の仕事がちであるが、そんなときは、好きなこと この人は信用できる、を仕事にできた幸せと、デビューできた喜 の相談だっていし ・ネットとのお付き合いはほどほどに 本が出たら、感想を知りたくなるのが人という編集者に出会えたら、場合によってびを思い出して欲しい。立場は違えど、編 情。苦労した作品なら尚更だ。ただ、ネッは他社の原稿の意見を求めたっていいとさ集者も同じだ。 最後に、そんなときに思い出す、ある人 え思う。そうやって頼られて、嬉しくない トを検索しまくるのは考えものである の言葉を紹介して終わりにしたい。 基本的に、ネットには批判的なことが書編集者はいない 「世の中には、どんなに努力したくても、 理由は単純大切なのは、何でも一人で抱え込まない いてある、と思った方がいし で、褒めるより貶す方が簡単だからだ。もで、ビジネスパートナーたる担当者に相談その機会さえ得られない人が沢山いる。だ ちろん、励みになる感想もあり、耳が痛いして欲しいということであり、編集者はそから、努力できる立場にいる人は、努力す が鋭い指摘もある。占いと同じで、ためにういう関係性を築けるようにしなければなるのが義務なんだ」。

3. 本の雑誌 2016年11月号

編集者になって二十数 「改稿」である。最近では、 日手 いで下さい」と言われる、というのは本当 年、半分以上の間、新人賞 ~ 改稿を前提とした授賞も増えの話だ。安定した収人あっての安定した創 の運営にかかわってきた。 ている。選考会での厳しい意作、という側面は、少なからずある。 その中で感じたあれこれを 見や、担当編集者からの忌憚収人が気になり過ぎると、原稿料が貰え 集 聿日くことにする。一 = ロ - つまで のない指摘に凹むこともあるる仕事ばかりを受けたくなってしまうのだ もなく個人の意見。とあると編 だろうが、勘違いしないで欲が、そればかりになるのは危ない。原稿料 編集者の老爺心の発露、と しいのは、それらは、作品をの出る仕事とは、最初は大抵が読み切りの 家卦幸 して読んでいただければ幸乍日一久 「より良くするため」に発せ短編である。しかし、現代日本が〈圧倒的 ィま井 いである られた一一一一口葉だということだ に長編市場〉であることは、しつかり認識 人の新 ・分からないことは何でも 誰も、貶そうと思って言ってしておかねばならない。長編を好む読者が 新そ = 尋ねる いるわけではない。 圧倒的に多く、代表作として名前が挙がる 新人が真っ先に面食らう そして、編集者から投げらのも、これまた圧倒的に長編である のは、その「異文化体験」だろう。それまれた改稿案という球を、書き手はプロの意そういう事情だから、短編集は残念なが で普通の勤め人だったらなおのこと、口約地にかけて、より面白くして打ち返さなけらセールス的になかなか厳しい。それはっ 束で成り立っている出版業界の慣習は驚愕ればならない。編集者は読むプロではあるまり、最初期に短編集を連発するのはあま 以外の何物でもないはずだ。また、「ゲラ」が、書くプロではない。編集者のアイディり得策ではない、 と言い換えることもでき 「校了」などの用語や、原稿に書いてあるアなど高が知れているのだ。一方で、編集る。内容、枚数について、注文通りの短編 校正記号も、最初は意味不明に違いない。 者は、自分の球が作家の発想の良き触媒とをきっちり書いていくのは作家のキャリア そんなときは、迷わず質問するのがいなるよう、出来るだけ沢山の球を投げるべアップに重要かっ有意義な仕事だけれど、 い。誤解したまま進んでいいことはない く肩を鍛えておかなければならない。 デビュー直後はやはり、長編をコンスタン し、こういった些細な遣り取りの積み重ね・目先の原稿料ばかりにとらわれない トに出していく必要がある が、初期の関係性を築いたりするものだ。 出版不況と言われて久しい昨今、今更言最初のうちは、短編の仕事を受けながら、 ・編集者は作品を貶しているわけではない うまでもないが、本はなかなか売れない。 将来の代表作となる書き下ろし長編を、歯 新人賞を受賞して最初のハードルは、新人賞受賞者が、開口一番「仕事、辞めなを食いしばりながら書くべきである。連載

4. 本の雑誌 2016年11月号

り、その上、物語の展開のアドバイスまで品である。私は爽やかな剣豪小説になると品は英語にも翻訳されている くださった。何万という軍勢の動かし方思っていた。だが主人公の日向景一郎は巻秘書になって川年が過ぎた頃、ある課題 も、この小説で学んだものだ、 を増すほどにモンスターに育っていったのが出された。「歳になったら 1 年間、連 そしてもうひとっとても大事なことを教だ。殺伐とした描写は身を切られるほど痛載の仕事をやめて書き下ろしに専念した わった。それは研究者がわかっていることく、骨肉の争いも、ここまで過酷に書くの それに見合う題材を探せ」というもの は大事にしなければならないが、それ以外か、と当時は読むのが少し辛いほどであつだった。戦国時代 ? 新撰組 ? 幕末 ? などい のわからないことは小説家が自由に物語をた。だがそれもすべては後の作品に生かさろいろな提案をしてみたが、 1 年の時間を れていく 作ってもいいのだ、ということだった。小 作って書くほどのものが見当たらない 説は嘘を書くものだとしても、わ 室スケールの大きなある日、角川春樹から会いたいという連 かっていることはすべて承知の上 装小説を書くのと同時絡が来た。すでに角川書店を辞し、自らの で書かねばならない。それを教わ 潮に、文体の研究にも名前を付けた出版社を立ち上げたばかりの ったのが『武王の門』だった。 余念のなかった北方ころだ。何事かと出かけると、開口一番 ン ードボ ここからし。はら / 、は、ハ イは、短編小説を好ん「北方、三国志を書け」と言った。来るべ イルドと南北朝ものが、およそ 8 デで書いていた。月刊き時が来た、と思った。頭の片隅に中国も 対 1 くらいの割合で続いていく。どうして文芸誌で毎月枚、一枚も狂うことなく締のを書いてもらうという選択肢はいつもあ も時代物は時間がかかるのだ。 切通りに現代小説を書く。文体をだらけさったのだ。だが、資料を調べるのは今まで そのとき私は裏で、剣豪小説の準備に人せない為に絶対に必要な作業だ、と定期的の比でなく大事になる。 っていた。とてつもなく強い剣の達人を書に書いていた。そこには倉本四郎という書 北方はその場で決断する。先は見えない く。いろいろ調べてくれ、と言われ、各流評家の存在も大きかったと思う。少しでもが 2 か月に 1 冊の書き下ろしで新しい三国 派のビデオを見たり、五輪書をはじめとし気を抜いた文章を書くと、すぐさま連絡が志を書く。その間、他の仕事はしない。 て様々な関連書を読みあさり、果ては握カ来た。『棒の哀しみ』という各章枚の短 2 年の準備期間を経て刊行は開始され を高めたり膂力を増すためのトレーニング編集は、 1 人称と 3 人称を書き分けながらこ。 オだが角川春樹は、そのときある罪で収 法まで調べていた。 一人の男を描写するという実験的な作品で監されていたのだ。まるで後を託されたよ 『風樹の剣』はそれらの知識を総括した作ある。玄人好みで、倉本も絶賛したこの作うに、必死で書き続ける姿は、実際、鬼気 北 の月 130

5. 本の雑誌 2016年11月号

そして、謎解きである うことを、小生は好まないのでけてくれ ! 」誰かに向って、絶 冒頭、真山は、かってアンデある。自分の文章をひさいで、叫したい絶望状態に襲われて》 ス山中のクレバスに落下して死お金を儲けるとは、なんというしまうし、村上春樹の項なんか、 亡した相棒の遺体を、十年越し浅間しい料簡だろう》とまで慷そこら辺のお笑い芸人より遥か で回収に赴く。ところが、あの慨する。いやいやいや、立派なに笑えるコントになっていて、 時姿を消した同じ場所に横たわお仕事でしよう、作家小説家文アンチ春樹にもここだけは読め って凍る遺体は、明らかに十年筆家 ( 笑 ) 。 と迫りたくなるレベル 前よりも歳をとっていた彼左右社編集部編『〆切本』 ( 左そうかと思うと《苦しいから 雪と氷と岩の急斜面を駆け下っは十年前、実は生還していたの右社一一三〇〇円 ) は、漱石からこそ、お金が貰えるのだ》 ( 大 ていた》とか、《前方の登山者たか ? だとしたら、何故その後太宰から乱歩から安吾から藤子沢在昌 ) とか《やり直しを嫌っ ちは、斜めに張られた純白のシ消息を絶ったのか ? そして何不二雄 3 から西加奈子から村上たら、よい仕事はできない》 ( 三 ーツを這う蟻も同然で、人種も故、あの時と同じクレバスの底春樹まで、古今の作家数十人が浦光世 ) などと、苦労した人な 性別も判別できない》などといで死んでいるのか ? 一一転三転ェッセイやら手紙やらで吐露しらではの含蓄ある一一 = ロ葉もひょい ったビジュアルな文章が至るとする謎解きに破綻は無く、乱歩た「〆切に対する泣きごと繰りひょい飛び出す。《なぜか勇気 ころにちりばめられており、挙賞作家の面目躍如、読みだしたごと恨みごと」をまとめた本。がわいてくる》という帯の惹句 げ出すとキリが無いこのての描ら一気呵成を約束しよう。 人の不幸は蜜の味とは一 = ロうけれも、言い得て妙。 写が、時に日本アルプスの山々 さて。先を急ぐ ど、よくぞ集めたねこんなにも因みに、或る編集者に本書を を、時に目もくらむようなヒマ《ああ、いやだ、いやだ。小説 いやあ楽しい本だ 紹介したところ、「それでも、 ラヤの高峰を、まるで立体映像なんか書くのはいやだ》と愚痴高橋源一郎は《本来なにもし連絡がつくだけマシだー ! 」と でも見ているかの如き臨場感でるのは、田山花袋である。《正たくないのが作家的人格である いう名言が飛び出した。編集者 読者の前に提示してくれる。こ直な話、私は毎日、イヤイヤなから、作家になったとしてもなの苦労が偲ばれるエピソードの んなにワクワクしながら読んだがら仕事をしているのである》るたけ仕事だけは避けようとす一つとして、ついでながら紹介 山岳小説は、夢枕獏の『神々のとは、遠藤周作内田百閒に至るのが人情であろう》などと開しておきたい。みんな、〆切は いただき 山嶺』以来かも知れない。 っては《一体、原稿を書くとい き直るし、柴田錬三郎は《「助守ろうね ( ↑お前もな ) 。 めったくたガイ - とうし工も書けぬ。 れ切啓 そに う 装丁・鈴木千佳子 」芸社い 切本

6. 本の雑誌 2016年11月号

椎名誠・沢野ひとし 目少年画廊 ・発作的座談会 東京の雑踏から、中国、スイス、パリへ。ただよ木村晋介・目黒考ニ う日々のスケッチ定価 ( 本体円 + 税 ) 案足のカカトをかじるイヌ 超能力株式会社の未来 行 む撮る飲むの日々定価 ( 本体円 + 税 ) 昼一寝、土我 テレポートが一回百万円 ! だったらどう使う ? 締切迫った仕事も家庭も関係なし。気ままに暮シリーズ第三弾定価 ( 本体 r-ooo 円 + 税 ) らす男の日常 定価 ( 本体 r—ooo 円 + 税 ) 読書歯車のねじまき仕事 でつかい旅にどっさり読書の缶詰ェッセイ & プ 沢野字の謎 ックガ , イ・トー 沢野ひとしの書きなぐりコピーを徹底検証 定価 ( 本体—cooo 円 + 税 ) 木村晋介・エッセイ 「座談会」番外編定価 ( 本体 r-ooo 円 + 税 ) OZO@ *OZ キムラ弁護士、小説と闘う 北上次郎・エッセイ、ブックガイド 《むかしむかし、あるところに》。著者自ら編集 小説体験ゼロ ! のキムラ弁護士ならではのひと した会心の写真集定価 ( 本体 nooo 円 + 税 ) 味違う面白小説論定価 ( 本体 1600 円 + 税 ) エンターティンメント らくだの話ーそのほか目作家ファイル 108 めたエッセイ集定価 ( 本体 1600 円 + 税 ) した集大成ー 定価 ( 本体円 + 税 ) 本の雑誌風雲録〃 沢野ひとし・エッセイ、画集 初版から年、書き下ろし、単行本未収録原稿叩鏡明・エッセイ 枚を追加して復活 ! 定価 ( 本体—cooo 円十税 ) 十世紀から出てきたところだけ 北京食堂の夕暮れ 笹塚日記シリーズ 金色に輝く粥、見知らぬ街で飲む白酒。愉しみ れども、なんだか似たような気分 に満ちた旅ェッセイ定価 ( 本体 1800 円 + 税 ) 本誌顧問の " 仕事場寝泊まり人生。を綴る、ご 近所ェッセイ ! 定価 ( 本体各円十税 ) からはじまる継続進行型ポップ・カルチャ ・スタディーズ定価 ( 本体 2800 円 + 税 ) クロ日記 ①笹塚日記・②親子丼篇・ 0 ったた クロと過ごしたかけがえのない日々。燔年描き 寝篇・④ご隠居篇 坪内祐三・エッセイ 続けた愛大絵日記定価 ( 本体 1300 円 + 税 ) 【読書日記シリーズ】シプい本を愛するツポ 椎名誠・沢野ひとし・木村晋介・中村征夫・ 山の帰り道 ちゃんのブック・クルージング・ダイアリー 山があるから登り、酒があるから飲む。哀愁のかなざわいっせい・太田篤哉・目黒考ニ 抒情ェッセイ集定価 ( 本体 r-noo 円 + 税 ) 一二茶日記定価 ( 本体 168 円 + 税 ) 新これもおとこのじんせいだ ' ・本日記 = 価 ( 本体。 8 品、税 ) スケッチブック 昭和世代七人が綴る子供時代に青春時代、近ご ケ , チプ , クを開くと旅に出たくなる。初のろ思うあれ = れ定価 ( 本体—ooo 円 + 税 ) 聿日中日記定価 ( 本体 1600 円 + 税 )

7. 本の雑誌 2016年11月号

す。元来、書く技術と読どこに持つのか、ということなのでしょ 校一閲一階一梯一か一も一め一式 む技術は対になるべきもう。美意識とは、時に商慣習だったりもし 美意識 て、個人で持つべき美意識もありますが、 のです。 校閲を情報リテラシー ( 業界や職種などの ) 属性が左右するもの 栁下恭平 と再定義すると、世界はでもあります。テレビのテロップや、ラジ 「間違いを見つける」という校閲の技術まったく広がります。なぜなら、文字をはオの番組連動のツィッターなどをチェック は、つまり「書き手から読み手に、誤解なじめとする、あらゆる情報伝達に校閲の技したり、そのフローを構築する仕事で、メ く情報が伝わる」というところを目指して術とマインドが必要になるからです。僕のディア、しかもマス・メディアの皆さんと います。たとえば、データの思い違いだっ所属する鵐来堂では、一昨年あたりから校一緒にいると、考え方の違いに驚かされる たり、意図しない不快表現だったりなどで、閲の教育を体系化していて、編集部の校閲ことが多いです。たとえばテレビマン、と 書き手が、自分でも気づかないで、あるい研修用カリキュラムを、一般企業 ( の広報くに報道の皆さんは、「書き手から読み手 は知らなくて、間違いを書くということは室やウエプ制作部署 ) にも使えるようにしに、誤解なく情報が伝わる」ということも、 ありえます。校閲はそういうものこそ拾っています。実際に講義から、新人教育のマ当然大事に思っていますが、極端な言い方 てあげたいと思っています。意図的な間違ニュアル作成や情報管理のコンサルタントをすると、「 1 秒でも早く、他局よりも早 くこの情報を伝えることができるか」とい まで、規模や用途によって、幅広くいろい いは、間違いでなく表現ですから。 出版の世界ではこの技術を「校閲」と言ろな現場での仕事が増えてきました。こううことに命をかけているように見えます。 いますが、外に出てみれば、この技術は「情いう、一定のリソースの中で作り替える、粘新鮮さと見目の派手さが彼らの美意識の最 報リテラシー」あるいは「情報の品質管理」土細工みたいな仕事っておもしろいです。上位。もちろん校閲の立場では、それを否 と呼ばれるのかもしれません。もう少し現そのように、いろんな業種の皆さんに校定することはなく、むしろ、外国を旅する 代的に、わかりやすく表現すれば「ツィッ閲の技術を伝えていて、最近、小さな発見ような、異文化交流の興奮を楽しみまし た。こういうときは、校閲の技術も大事で ターの炎上を防ぐ技術」といえるでしよがありました。美意識についてです。 すが、美意識の折り合いをどこでつけるか う。誰でも情報発信ができる時代だからこ そ、想定外の読者層に意図しない伝わり方僕たちの行動は、何を優先するかによっというマインドセットも同じくらい大切な をしてしまうということは避けたいものでて決まるのだと思います。それが美意識をんですよね。

8. 本の雑誌 2016年11月号

いちおう「とりあえず生き残るタイプ」の目安があることは られ、気がつくと仕事がなくなっている、というケースである ある ぼくの場合、祖父母や親父が早い時期に同時にまとめて逝って 推理作家協会のパーティに新人を連れてゆくと、ほぼ例外な くれたんで、体力のあるうちに乗り切った。家族同時多発介護の く「聞いたことのないチンケな作家ばかりじゃねえか」とぼや時期は自分で選べないんで、これは運である。 く ( 口に出すこともある ) 。ここで「自分がいちばん無名でチ いたいが、毎日が薄氷を踏んで積み ンケな作家だ」と気づくかどうかがひとつのポイントである 「あっという間に年」とゝ 重ねるような生活をしているので、とてもあっという間とはいか 「作家の生存率は 5 年とはよくいわれることだが、先日、秋ない。自分でも美しくないと痛感しているし、「才能がないのに 葉原で公開小説講座をやったら同業者の川年選手ばかりが集ま しがみつく痛い奴」と陰で嗤われているだろうと想像もっく。 った。川年選手のほうが小説家志望者よりも勉強熱心、という ああ、そうだ。「嗤う奴のいうことは耳を貸さない」のも秘訣 といえば秘訣か よりは、貪欲だから川年生き残るわけだが 川年選手をみつけたら持ち物検査をしてみるといい。電子辞 年前にデビューしたとき、たぶん業界で初めて著者新刊書店 まわりをはじめたときも、著者手書きのを書店さんに足を 書とメモ用紙は必ず持ち歩いているはずである。 運んで自分で立てたときも、同業者たちから嗤われ、「そんなパ 川年をクリアするいちばんの秘訣は健康管理である ェロを書いている同業者知人が大病をわずらって休筆し、先フォーマンスはやめろ」と説教された。ばくは年経ってもいま 日仕事を再開した。そのときしみじみと「不健康なものを書く だに新刊が出ると書店に顔を出しつづけている。そして笑った連 中のほとんどが消えた。笑わなかった奴は書店さんに頭をさげて には健康が必要よねえ」といった。たしかに美男と美男が互い 自著を置いてもらうようになり、自著の手書きを書くよう の股間をまさぐりあう描写をするには体力が必要であろう になった 早寝早起き規則正しい生活は鉄則である。 手元の控えをチェックしたら、「本の雑誌三角窓口」への最 川年は努力で割となんとかなるが、加年は運におおきく左右 される 初の投稿は 1996 年 8 月だった。これも年続けていることに なる。 知られていないが意外と「介護離職は多い。 すごくあたりまえの結論で恐縮だが、継続はカである 時間に融通のきく仕事なので老親の介護を親族から押し付け

9. 本の雑誌 2016年11月号

一私小説書きの日乗 新起の章 ( 三 ) ◎西村賢太 す。 仕事をする気がまったく起きぬ。精神 的にも″ダメな方の周期〃に、またぞろ 人ったものらしい と、なればもうジタバタしても仕方が ない。流れのままに、″長期療養みへ気 持ちを切り換えるより他はない。 夜、滅多にゆかぬファミレスなぞに人 ってゆき、生ビールに安サーロインステ ーキ、オニオングラタンスープ、フライ ドボテトを食べてみる。案外に美味 八月十日 ( 水 ) . 八月十一日 ( 木 ) 帰室後ひと眠りしたのち、長見義三の 午前十時起床。人浴。のち、一一時間 【短篇を四篇復読。 午前九時半起床。人浴。 】サウナ。 明け方五時から手製のペーコンエッグ 新幹線で新大阪へ。 午後三時過ぎにテレビ大阪到着。 夜、シネマート新宿へ映画を観にゆき、 ・とカレーライスで発泡酒一缶、宝焼酎を 深夜帯のパラエティー番組、「わざわ】帰途に一杯ひっかける 】水割りで三分の一本。 ざ言うテレピ収録 帰室後、録りだめしておいた「吉田類】最後にヨーグルトを食して寝る 終了後、梅田で知人と会食。 の酒場放浪記」を眺めながら、宝焼酎を ・八月十六日 ( 火 ) 東京行最終の " のぞみ。で戻り、真っ飲み直す。 すぐ帰室。 やはり、依然″短期療養生活〃の態。 午後一時起床。人浴。 再人浴後、何やら草臥れて早々に就】不甲斐なし。 引き続き無為の時間の中、「日乗」を 整理して『本の雑誌』にファクシミリで . 八月十三日 ( 土 ) 結句、無為と同義の一日。 】送稿 午後一時起床。体の不調、種々ぶり返ついでに督促のきていた『新刊ニュー けつく いちじっ た々、 ( して 、スロ 弱

10. 本の雑誌 2016年11月号

昔のミステリファンに 装丁・永田力の『作家の舞台り、《「居留守の常習犯」の宇野が、江戸川 ち 裏』 ( 読売新聞社 ) に居留守をくわされた、この話は、まこと は、江戸川乱歩が宇野浩一一 には、こんなことにおもしろい》というわけだ。 に居留守を使 0 たのは、周討 ところが、若き乱歩は上京した際、 が書かれている。 知のことだ。 乱歩の『探偵小説三十 返 宇野の上野桜木宇野さんはそこを仕事場にして毎日のよ 年』 ( 岩谷書店 ) は、『探偵で 蔭の うに来ておられることがわかっていたの 町の自宅の門はい 小説四十年』が出る前の本の つも錠がかかってで、私は玄関払いも覚悟の上で、とも角そ で、わたしの中学時代の愛琳守薫 いて、ベルをおすのホテルへ人って行った。取次ぎに来意を 読書だった。 わ留 と、道に面した台告げると、宇野さんは快く私を部屋に通し そこには、乱歩が《格段 0 居◎ 所の格子戸の桟のて下さった。 に好きだった》のが宇野で あり、家まで訪ねて行ったただ一人の作家間から女中さんが顔をちょっと見せた と書かれている。それなのに乱歩は、大正「先生いらっしゃいますか」と訊ねると、《そこ》とは、多くの文士に利用された、 十五年、向こうから来てくれた宇野に対し、女中さんは判をおしたように、「お留守で本郷の菊富士ホテル。《文学青年のあこが 《旅行中ですと家内に云わせてしまった》。す、とか、「お出かけです」といった。しれの場所であった》。宇野によれば《手帳 いかし、宇野の在宅は承知しているので、「その切れはしのような紙に「大阪からちょっ 何も書けない状態で、誰にも会わずに、 や、会えずにいたのだ。敬愛する宇野にそうですか、また来ます」といって、ゆっくと来た者、江戸川乱歩、としてあって》と いう。宇野はすぐに会っている。だからこ うしたことが気になった乱歩は、上州の温りした足取りで、町角を曲がりかけると、 泉に出掛ける。そこで《あなたにお詫びすきまって、女中さんが追いかけてきて呼びそ、乱歩の自責の念も深かったのだ。 る為に、本当に旅をしてこの手紙を出しまとめ、案内するという段取りになるのであ時期も違い、何より相手が同業の後輩だ す、というようなことを書いた》。宇野かった。宇野の「不在」のからくりは、編集ったからだろう。会っても、原稿を催促さ れるおそれがない。楢崎の、居留守の返り らは、好意に満ちた励ましの手紙が返って者の間では評判であった。 討ち的見方は、いかにも、普段、困らせら 来た まことに嬉しいエピソードだが、楢崎勤そして、乱歩とのやり取りになる。つまれている編集者らしい