ある。ロシュミットは統計力学誕生の介添人になった。 追悼演説の冒頭で、「彼の業績は単なる一個の石材ではなく、 ロシュミットは一八八七年十二月七日、六十六歳でカロリ 科学が存在する限り遠くから見える、しつかりした隅柱をなし ネ・マクダレーナ・ ハラ・マイアと結婚した。カロリーネています」と述べている。 は四十一歳、白なめし職人の娘で、長年ロシュミットの忠実な オフジェを下り、合流したエルべを遡ると、ロヴォシッ工の 家政婦をしていた。ロシュミットは、一八九一年十月、七十歳町に出る。そこから西に十四キロほどの距離に小村トジェビー で定年退職した。一八九〇年から住んだ家はラクナーガッセにヴリツェがある。ウルリーケは一八九九年十一月十三日この地 現存し銘板が付けてある。ボルツマンは、一八九四年に、ミュで亡くなった。九十五歳だった。教区教会墓地に立派な廟所が ンヘンから再びヴィーンに戻ったとき、この質素な家を訪問ある。その年十一月二十五日、ヴィーン大学本館回廊にロシュ し、「ヴィーンはその偉大な住人をこんなふうに遇するのか ! 」 ミット胸像が設置され、除幕式でボルツマンが演説した。「今 と叫ばずにはいられなかったと言っている。ロシュミットは実や、ロシュミットの体は原子に分解しました。私たちは、彼が 生活に対してなにも求めなかった。ボルツマンは「これまで以得た原理によって、その数を計算できます。実験物理学者を讃 上にすべての党派が物質的利益のためにのみ戦っているまさに える演説において、すべての実証に欠けることなく、その数値 ーネが亡くな この現代において、物質的利益を忘れたこの男の理想的な姿はをここで黒板に書くことができます。」妻カロリ さわやかなものでした」と言っている ったのは一九三〇年二月十日で八十三歳だった。 ( おおた・こういち物理学 ) ヴィーン大学本館から西に十五分ほど歩くと、マリアネンガ ッセに旧療養所レーフの大きな建物が残っている。玄関横の銘 酒井邦嘉 板に、交響曲第十番第一楽章冒頭の楽譜とともに、「グスタ 高校数学でわかるアインシュタイン 科学という考え方 フ・マーラーは一九一一年五月十八日にこの家で亡くなった」 四六判・二二四頁・二四〇〇円 と書かれている。一八九五年七月八日、ロシュミットもこの療 太田浩一・松井哲男・米谷民明編 養所で亡くなった。ロシュミットの銘板がないのは片手落ち アインシュタインレクチャーズ@駒場 だ。ロシュミットは七月十日ヴィーン中央墓地に埋葬された。 東京大学教養学部特別講義 四六判・二九六頁・二六〇〇円 原子論のために孤軍奮闘し自殺したボルツマンの近くに眠って 東京大学出版会 ( 表示は本体価格 ) いる。ポルツマンは、十月二十九日、科学アカデミーで行った 47 [ たまには物理カンタービレ ] 45 人類の星のとき
めに諸家の名が用いられたとしてよいのかもしれない。 で、韓愈の「符読書城南」は、まぎれもなく韓愈がその子のた めに作った詩で、他の「勧学文」とは一線を画している。どう いう経緯でこれが「勧学文」の中に置かれることになったの か、あるいはこの八篇がどのようにしてひとまとまりのものと なったのか、事は『古文真宝』の成り立ちにも関わって興味は 尽きないのだが、 いかんせん材料に乏しい 前野直彬 ともあれ、「勧学文」とともに流布したことで、「符読書城 コレクション 南」は広く読まれた。その詩の最後に添えられた秋の季節感 新装版風月無尽中国の古典と自然 は、ちょうど「勧学文」全体の結びとしても機能し、人々の心 〔解説〕学間のエッセンス齋藤希史 四六判・二九六頁・二九〇〇円 に印象づけられた。やがて世は移り、読書が立身出世とは別に 東京大学教養学部国文・漢文学部会編 多くの人に享受される時代を迎える。東京大学新聞がどんな読 書特集号を組むのか楽しみだけれども、少なくとも「書中自有古血 ( 日本五の世界漢字か 0 くる日本 < 5 判・二八〇頁・二四〇〇円 黄金屋」といったものではなさそうだ。そんな私たちの読書の 東京大学教養学部国文・漢文学部会編 秋に、「時秋積雨霽、新涼入郊墟。燈火稍可親、簡編可巻舒」 の句を取り出して口すさめば、たしかに気分もふさわしく感じ 古典日本語の世界一一 文字とことばのダイナ、 , 、クス られる。由来というより、詩句が新たな広がりを得たとすべき < 5 判・二八〇頁・二四〇〇円 かもしれない。そしてそれもまた、詩の一つのありかたなので 村田雄一一郎・ラマール編 ある。 ことばと国家 漢字圏の近代 四六判・二三二頁・二四〇〇円 東京大学出版会 ( 表示は本体価格 ) ( 1 ) 記事の登録日時は二〇一二年一〇月一〇日一五時二三分、更新日 時は二〇一三年一〇月一九日一四時三九分。 http: 、、、、 crd. ndl.go.jp, 、 reference 、、 detail?page= ref—view&id= 108112345 ( 2 ) ウエプ版の雑誌『』に「「〇〇の秋」って、そもそもどれが元祖 秋 なの ? 」という二〇〇九年一〇月十六日付の記事があり、『三省堂国語 の 辞典』編集委員の飯間浩明氏に取材している。韓愈の詩や一九一八年書 読 の新聞記事についても指摘されている。 h ( ( p 〕、、、、 r25.jp 、、 ( o 它 c 、、 90007849 、、 ( 3 ) 大木康「宋眞宗の「勸學文」について」 ( 『大東文化大學漢學會誌』 五三号、二〇一四年一二月 ) ( さいとう・まれし中国古典文学 ) ノ 文
三谷太一郎 戦後民主主義をどう生きるか 四六判 / 定価 ( 本体ニ八〇〇円十税 ) 西野嘉章 前衛誌未来派・ダダ・構成主義〔外国編〕 << 判 / 定価 ( 本体三九〇〇〇円十税 ) 竹蜂義和 〈救済〉のメーデイウム べンヤどン、アドルノ、クルーゲ 四六判 / 定価 ( 本体五九〇〇円十税 ) 内野儀 演劇」の場所 モビリティ トランスナショナルな移動性へ <LO 判 / 定価 ( 本体六八〇〇円十税 ) 久保亨・加島潤・木越義則 統計でみる中国近現代経済史 <LO 判 / 定価 ( 本体ニ九〇〇円十税 ) 開一夫・金山範明編 脳波解析入門 とを使いこなす <LO 判 / 定価 ( 本体三八〇〇円十税 ) 大西品子 キャンパスの国際化と留学生相談 多様性に対応した学生支援サービスの構築 <LO 判 / 定価 ( 本体五ニ〇〇円十税 ) 太郎丸博編 後期近代と価値意識の変容 日本人の意識 1973 ー 2008 <LO 判 / 定価 ( 本体三六〇〇円十税 ) 9 月の新刊 川島浩平・竹沢泰子編 人種神話を解体する 3 「血」の政治学を越えて <LO 判 / 定価 ( 本体五〇〇〇円 + 税 ) 田中亘 会社法 <LO 判 / 定価 ( 本体三八〇〇円十税 ) 宮川努・淺羽茂・細野薫編 インタンジプルズ・エコノどー 無形資産投資と日本の生産性向上 <LO 判 / 定価 ( 本体五一一〇〇円十税 ) 木村福成・椋寛編 国際経済学のフロンティア グローパリゼーションの拡大と対外経済政策 <LO 判 / 定価 ( 本体八五〇〇円十税 ) 清水克俊 金融経済学 <LO 判 / 定価 ( 本体六三〇〇円十税 ) 村松伸・山下裕子編 メガシティ 4 新興国の経済発展とメガシティ <LO 判 / 定価 ( 本体三四〇〇円十税 ) 小泉秀樹編 コどュニテイデサイン学 その仕組みづくりから考える <LO 判 / 定価 ( 本体三ニ〇〇円十税 ) 青木人志 日本の動物法第 2 版 四六判 / 定価 ( 本体三四〇〇円十税 ) 鈴木晃仁・北中淳子編 精神医学の哲学 2 精神医学の歴史と人類学 <LO 判 / 定価 ( 本体四八〇〇円十税 ) 坂野徹・竹沢泰子編 人種神話を解体する 2 科学と社会の知 岡田徹太郎 アメリカの住宅・コどュニティ開発政策 高瀬正仁 リーマンと代数関数論 岩本康志・鈴木亘・両角良子・湯田道生 健康政策の経済分析 石原孝一一・河野哲也・向谷地生良編 精神医学の哲学 3 精神医学と当事者 月の新刊
一一〇〇〇年調査で、全年齢層平均で言えば、テレビ視聴時間一一 〇一・一分の次に時間量の多いメディア利用は「パソコンで作 業 ( 自宅外の仕事利用も含む ) 」の二九・八分、「ラジオ」の二 九・四分で、圧倒的にテレビ視聴時間が長いことがわかりま す。それが近年、時間量的に若年層からネットに凌駕され始め たのです。 テレビは我々の主観的世界を均質化しました。国民平均で三 時間強、テレビを視聴することにより、国内外でどのような出 来事が生じているのか、同じようなニュース情報に接し、人気 の高いもので言えば二割から三割の人が同じドラマに接し、 くつかの限られた楽曲を耳にしてきました。紅白歌合戦などは 昭和三〇年代から四〇年代にかけ、実に視聴率七〇 % 以上をキ ープしていたのです。 その結果、我々の話題はテレビが中心でした。男子は野球、 女子はドラマの話を持ち出せば、学校や職場で話題に困ること はありませんでした。話題についていくためにわざわざテレビ を見るという人も多かったと思われます。 ところがネットは主観的世界を再び個別化させます。「再び と記したのは、書籍や新聞、雑誌などの「文字の文化、が、主たとしても、時間によってトップニュースの内容は異なりま 観的世界を個別化する方向に作用していたからです。ネットのす。一方、テレビの夜のニュースは、どのチャンネルに合わせ 世界は文字通り情報の大海ですので、人々はそれぞれの好みにても、取り上げられるのはほとんど同じ項目です。何が世の中 応じて、多様な媒体で好きな場所、好きな時間に個別の情報にで起こっているのか、世の中の人にとって重要なニュースは何 接触します。たとえば同じ YAHOO!JAPAN のニュースを見か、という認識も一致しなくなりました。音楽も、昔はレコー 松田美佐・上橋臣吾・辻泉編 ケータイの 2000 年代 成熟するモバイル社会 橋元良明編 日本人の情報行動 2 5 丹羽美之・藤田真文編 メディアが震えた テレビ・ラジオと東日本大震災 東京大学出版会 ( 表示は本体価格 ) < 5 判・二八四頁・一二〇〇〇円 < 5 判・二九六頁・五四〇〇円 四六判・四一四頁・三四〇〇円 日本人の情報行動、この二〇年間の変化を追って 18
あ円 巻社供 予らな 糟谷憲一・並木真人・林雄介著 っ 0 民提 勉网厄 結か的 朝鮮現代史 全餔を 麦占 社不蹊 朝鮮の開国から現在まで、円世紀後半の近代化の模索、日本によ 民 後念月学多近樋ぐ ' の る植民地支配、解放と南北分断、その後の韓国と北朝鮮の歩みを 政プ編を 市 示囲 究較 戦 表は ロ考比 産活 年地ア緑識の一 丹念に叙述し、「近くて遠い」朝鮮半島の近現代史を明らかにする。 。フをの・、 2 四六判 464 頁本体 3500 円 -0 住 0 響須 廣 のな 1 X ア 費 影必 編ス編 ◎、 / ア ンる モ多 保 神 2 ク和コ的編 0 アモ、叮 田囲 文学で読む日本の歴史を 史に理 欧本 と美ロ史廴とトに通勉 歴西田 具の 【中世社会篇】 ゞ、つ 、刀日」 世 化ホ喜の英本〕浦 編近 の治、、治社治 犯味 ら 代座 の意 勇田民代博戦産 夲ナ石市 よ 近ヂ生 ナ会①②③ 大津浩著 分権国家の憲法理論 フランス憲法の歴史と理論から見た現代日本の地方自治論七〇〇〇円 近・現代立憲主義の普遍的原理の下で「地方自治の本旨」はいかに 解されるべきか。新たな解釈論の提示を目指す野心的地方自治論 0 ・ 0 ー・立憲国の条件六〇〇〇円 - 阪本昌成著権力分立 立憲主義の要素とは何か " 異端 ~ の憲法学者による、鋭い問題提起 予三〇〇〇円 ( 仮 ) 横躡新基本行政法 ドイツで提唱された法関係論の考え方を基にした最新行政法総論 〔第ニ版〕 ニ八〇〇円 郷 1 著国際海洋法 最新動向をふまえ歴史と現在を平易に学ぶ海洋法の体系的入門書 三〇〇〇円敬 鶴田順編海賊対処法の研究 対処法の的確な理解のため実務家・実務担当者を念頭にした研究 東 歴史書、軍記物、絵巻、日記、紀行文などによりながら中世社会 に通底する「思潮」を抽出し、さらなる考察を深めた書。これま での歴史研究にはない独自の構想で切りひらく新しい中世史像 ! 四六判 520 頁本体 2000 円 菊判・三九 0 頁・本体九 000 円 宮田純著 5 7 近世日本の開発経済論と国際化構想 ーーー本多利明の経済政策思想 5 天明飢饉・ロシア南下などへの対処として国際社会の中の日本を意識し た構想が民間サイドから出現し始めた歴史的意義に迫る。 房 書阯 菊池真純 ( 東京大学教養学部特任准教授 ) <LO 判・三七 0 頁・本体一 0 六 00 円 水 農村景観の資原化ー中国村落共同体。 0 C の 広西壮族自治区龍脊棚田を例に、農村景観を動態的に保全できるか、 茶。 山間地農村の発展形態をどのように模索できるか考察。 < 5 判・ニ八〇頁・本体ニ八 00 円′ 白水繁彦・鈴木啓編 区 京れ ある帰米一一世 ジャーナリストの証言 ハワイ日系社会ものがたりー 戦中の「ホノウリウリ収容所」体験、戦後混乱期の「勝った組」、日本語放京 東 送の裏話など「移民列伝」から芸能史まで貴重な証言。 五味文彦著 [ 価格は税別 ] 容 03 ( 3293 ) 8131 表示価格は税別 ( 別途消費税が加算されます ) TEL 03-3813 ー 451 1 〒 1 13 ー 0033
ろ ド オ ト す 上 が 体面 す い ☆好評重版☆ は大 が筆減 ケ し か筆 。領 る 的 ス 日日Ⅱ日ⅡⅡ ど賞 て も 内 S ら 者政域 つ で に 13 年ぶりの改訂 の受 容 N ら て い ど 日 ら 冫ロ の 凸 最強の「ことば探し」辞典 曲賞 き 緒 る の は的 情 め は S の 本 が曲 の や 調 報 た て に 人 関 ほ よ 日本語 力、 ぐ い 歌 メ ム と の 日 っ む ん も 賞 ら に ま 韭 ん な情本 が わ 曲 る よ す ど ル 減 に的 情報人 し、 シソーラス れ 。歌 か は か が な の少 蟄 イ 報 生 が り も ど ッ 身 ど ば に活情 し ま 知 少 の に報 続 接 ン の の し 類語検索辞典 [ 第 2 版 ] ら年 若 な せ 行 ユ 回 け し コ つ て んず代 者 く り い 動 る 山口翼 [ 編 ] な ュ が の の か て 調 ど ク ) ◎ A5 判・ 1 , 626 頁本体 1 5 , 000 円 そ人 り そ も ら デ査 で 不 の 道 2 は の も も き ケ ツ 理 か どせそ知 ことばの ど で っ タ 、で 不 い も ん と ん な を ン に - つ ツ で ど ョ 費 ど て ど 処 集 主 ト ん や ん ン 子 の し、 理 め に 地理学 時 利 カ 生 よ た 系 す 離 て を 間 用 で 日寺 フ で っ の し き オし つ 者 さ な 間 オ に 方言はなせ ん 曲 の私 り の ケ と し や そ そこにあるのか 半 現的 ル の た し、 で と 分 カ ヒ の 大西拓一郎 [ 著 ] 「カタッム ュ り 以 で ム 幸 員側 フ ツ リ」の方言分布は本当に同心 円なのか。交通、自然観、家 族制度、入口密度・・・。多彩 〇 と か と そ ′ゾし な観点から方言形成の謎 し 年 ん ら 大 け く と 月リ に迫り、方言研究の新たな ど ど き て 間 つ述 地平を切り拓く。 し く そ し ん か の て よ た 関 の の 日 図 て の ◎四六判・ 208 頁本体 2 , 200 円 連情 一本 よ お先 問 1 つ し報人 ま な り の っ 麻雀の 図 行 日 葭に に ま て 3 ん響 い動 大 す 本カ は の き 。人 あ 日 る す で変 り 本 な し の 誕生 つ 人あ化変かけ 変 ま て は 化 化 す し ろ て の は 日 が の つ 大谷通順 [ 著 ] ときは 19 世 現 生 . 、報 重 る 紀末、上海租界の花柳界を賑 じ 的 行 と 実 面 可 の わせていた賭博遊戯が、やが 情 デか 能動 の た を カゞ よ てアメリカのコマーシャリズ 報 等 推行 実 な調 し ムに乗って世界的な大流行 と 正限査測動 タ を巻き起こす一一麻雀誕生 だ質 が 的 り を や で 2 の真実に迫る、初の試み ! 、把け的 、継 き に コ 0 ◎四六判・ 258 頁本体 2 , 200 円 か側 続 ま 識握 裏 1 5 ら 面 し す で 付 の の 。変 き も 大修館書店 て け 調 の 化 ま 、分 て : 査し、 ら 〒 1 13-8541 東京都文京区湯島 2-1-1 ン し 析 を く い の の TEL 03 ー 386 & 2651 ( 販売部 ) ヨ 根 の は 転 た き や に http://www.taishukan.(0 ・ jp ン 載 * 定価 = 本体 + 税 底 ほ ロ間 Ⅱ日Ⅱ日日日 ニ二ロ 日本人の情報行動、この二〇年間の変化を追って 19
りも、ポピュリズム政治がそれだけの英国有権者を動かしたこ とに、である。ヨーロッパ政治にナショナルポピュリズムを持宮島喬編 ちこんだのは、何といっても国民戦線をはじめとする極右政 移民の社会的統合と排除 間われるフランス的平等 党・勢力であるが、今やかなりの国の政権政党にもその傾向が みられ、「移民・難民」や「イスラームー問題がステレオタイ プ・イシューとして構築され、援用されている。過激派のテロ宮島喬 の時代がそうさせたともいえるが、では、どうすれば熟議デモ 外国人の子どもの教育 就学の現状と教育を受ける権利 クラシーの道へ、政治をスイッチしていけるのかという問いを もたなければならない。 稿を閉じるにあたり、容易に結語を見出せないが、本連載の宮島喬・太田晴雄編 冒頭で触れたフランスの二〇一五年の危機に立ち戻りたい。ジ 外国人の子どもと日本の教育 ル・ケベルら編の新著『フランスの地におけるテロ』 ( 、ミ 不就学間題と多文化共生の課題 d ミジ一さミ . Gallimard) は、移民第二世代へのインタビュー から、怒り、悩み、逡巡した多くの青年が実は二〇一二年、オ 上林千恵子 ランド大統領に期待し票を投じた者だったとしている。幻滅は 外国人労働者受け入れと日本社会 大きいだろう。だが、やはりそこに隠された将来へのカギもあ 技能実習制度の展開とジレンマ < 5 判・二九六頁・五六〇〇円 るように思う。フランス社会としては、移民たちを「他者化 し周辺化するのではなく、もはや帰るべき祖国をもたない、共 丹野清人 に生きていくべき存在だと認識したうえで、象徴的にも ( 言葉 越境する雇用システムと外国人労働者 の上でも ) 、実質的にも ( 社会関係的にも ) 、対話的で、関係形成 判・一一三八頁・五七〇〇円 的な関わり方を取りもどしていかねばならない。 三〇一六年八月二五日 ) 東京大学出版会 ( 表示は本体価格 ) ( みやじま・たかし社会学 ) 四六判・二九六頁・二八〇〇円 < 5 判・二三四頁・三八〇〇円 < 5 判・二七二頁・三八〇〇円 [ 「イスラーム問題」の構築と移民社会一一二〇一五年パリ危機からその後へ ] 3 ポピュリズム政治と「移民問題」 6
われわれはここで「恋の道行きーを、存在の哲学の創始者パ垂直超越の深淵があった。ソクラテスが〈美しい〉それ自身を鮖 ルメニデスの真理探究と比較しておこう ( パルメニデスは『饗知ることがあるように、根拠に出会うことになるように、そう 1 ロ ア シ 宴』で最初に名前が言及される哲学者である ) 。「牝馬らはわたしあれば、 しいか、と希望を託した予言者ディオティマの言葉だっ を運んだ」と序章で歌うことをもって始まるその探究は、「光たのである。それは登場人物とは異なる著者の裏脈絡から見れお AJ ン の国」を目指して驀進した。そのパルメニデスを待っていたのば、プラトンがテキスト外のわれわれ読者に思いをかけた希望 は、「夜と昼を分かっ門ーであり、それが「固く鎖した閂」にである。やはりプラトンの作品は謎と誘い、そして挑戦と自由ラ プ な遊びに満ちたワンダーランドである。 よって閉ざされていた ( 断片一 ) 。そして「その開け閉ての ( やまもと・たかしギリシア哲学 ) 鍵もつは罰に厳しき女神デイケ」である ( 井上忠訳 ) 。絶 望のごとくそそり立っ天門が開いて真昼の真理に出会うかどう か、その鍵を握るのは罰に厳しい正義の女神である。「わたし」 の側の「正しさーが決するのではなかった。 もしパルメニデスと似たことを考えて間違いないとすれば、 美を追い求めて進むべき諸段階の「正しさ」とはまったく違 う、あらゆる基準の基準である正義 ( の女神 ) が、究極におい て恋と哲学の修行者が〈美しい〉それ自身に出会うかどうかを 決する。ディオティマはそれを希望し期待するが、予測したり 保証するわけではなかったのである。ディオティマは予想屋で はなかった。予言者である。 ではディオティマは誰に対して期待しているのか。ディオテ イマが念頭に置いている具体的個人とは、こうして哲学の議論 を共にし、「恋の道行きーを説き聞かせている当のソクラテス である。ソクラテスが哲学修行の困難な道を忍耐をもって正し く踏み、恋の道の最終段階に到達しても、なお薄皮一枚隔てる 山本巍訳・解説 プラトン 饗宴訳と詳解 山本巍ほか 哲学原典資料集 宮本久雄・大貫隆・山本巍編著 アプラハム・イエス・パウロ 受難の意味 四六判・二九六頁・三四〇〇円 東京大学出版会 ( 表示は本体価格 ) 判・四四八頁・六五〇〇円 < 5 判・二七二頁・二六〇〇円
ISSN 0913-3291 第四五巻第十号 ( 通巻五ニ八号 ) ニ〇一六年十月五日発行 ( 毎月五日発行 ) 定価 ( 本体価格一〇〇円十税 ) ( 一年分一〇〇〇円送料・税共 ) Good lnnovation. 「その手があったか」と言われるアイ デアがある。「そこまでやるか」と言われる技 術がある。「そんなことまで」と言われる企 業家精神がある。私たちは 3 つのカでイノ ペーションをつくる。人へ、社会へ新たな変 化をもたらすイノベー ションをつくってゆく。 dentsu 雑誌コード 08943-10
経団連出版 最後に出てきた「隈部」とは隈部一雄のことだ。帝大工学部 は、右翼と左翼を否定し中正だと言うのですよ。そして、 「両刃の刀」ということを言って、「右を切り左も切る」、を永井と同じ一九二〇年に卒業し、内燃機関の専門家としてエ 学部教授に就任。そして戦後はトヨタ自動車の副社長にもなっ こういうことがモットーのようでしたね。そこへ私は行っ ておったんです。あの頃誰がいたかね、あまりほくは熱心 た「自動車工学の大家」である。永井が「興国同志会」一 じゃなかった人ですね。新聞やポートの方が忙しかったかっていない」というのも注目される。太田耕造は私が調べた限 ら。七生社とか興国同志会のそっちへはいってないんでりでは「興国同志会」に名前が無いが、近くにいた事は間違い す。 ( 聞き手Ⅱ伊藤隆・東京都立大助教授Ⅱ当時 ) 仲間として 近現代史や満州国の研究者にはお馴染みのように、大川周明 伊藤 はどんな方かいらっしゃいましたか。 以下、永井の「日の会」の仲間である笠木良明や綾川武治らは 永井その頃は世間で知っている人では笠木良明、中谷武大学卒業後揃って南満州鉄道株式会社調査部の編輯課に入社し 世、あれは七生社に近かったかな。綾川武治もいた。鹿子ている ( 大川周明が課長 ) 。永井が『帝大新聞』の編集に携わっ 木さんはギリシャ哲学だった。工科の奴が一人いたね、隈ているまさにその頃だ。のちに大川は満鉄が作ったシンクタン 部というのがいたかな。どういうのがいたかはっきり覚えクの嚆矢と言われる「東亜経済調査局」の理事長にもなってい ていないね るが、これら大川の人脈は昭和史に大きな影響を与えた。 キャリア戦略プロ人材に自分で育っ法組織内一人親方のすすめ 人が育っために必要な「育てる力」「育てる場」「育っ気持ち」のうち、 もっとも重要な「育っ気持ち」が最近衰えてきたといわれています。 本書では、組織に所属するなかで「自分らしさー「専門性」「自律性」を 身につけて自分への信頼を高め、プロフェッショナルと自他共に認め られる人材に育っ法を「キャリア」「リーダーシップ」「戦略」の切り口′ から解説します。 関島康雄 プ臥林こ 自う滝育っ法 組織内一人親方の 関島康雄著 四六判 248 頁 定価 1620 円 keidanren-jigyoservice. 0舅P TEL 03 ・ 6741-0043 29 [ 初期『帝大新聞』の研究ー - 「創刊資金の謎」 ] 7 永井了吉「日の会」人脈と『帝大新聞』