社会 - みる会図書館


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1. UP 2016年10月号

りも、ポピュリズム政治がそれだけの英国有権者を動かしたこ とに、である。ヨーロッパ政治にナショナルポピュリズムを持宮島喬編 ちこんだのは、何といっても国民戦線をはじめとする極右政 移民の社会的統合と排除 間われるフランス的平等 党・勢力であるが、今やかなりの国の政権政党にもその傾向が みられ、「移民・難民」や「イスラームー問題がステレオタイ プ・イシューとして構築され、援用されている。過激派のテロ宮島喬 の時代がそうさせたともいえるが、では、どうすれば熟議デモ 外国人の子どもの教育 就学の現状と教育を受ける権利 クラシーの道へ、政治をスイッチしていけるのかという問いを もたなければならない。 稿を閉じるにあたり、容易に結語を見出せないが、本連載の宮島喬・太田晴雄編 冒頭で触れたフランスの二〇一五年の危機に立ち戻りたい。ジ 外国人の子どもと日本の教育 ル・ケベルら編の新著『フランスの地におけるテロ』 ( 、ミ 不就学間題と多文化共生の課題 d ミジ一さミ . Gallimard) は、移民第二世代へのインタビュー から、怒り、悩み、逡巡した多くの青年が実は二〇一二年、オ 上林千恵子 ランド大統領に期待し票を投じた者だったとしている。幻滅は 外国人労働者受け入れと日本社会 大きいだろう。だが、やはりそこに隠された将来へのカギもあ 技能実習制度の展開とジレンマ < 5 判・二九六頁・五六〇〇円 るように思う。フランス社会としては、移民たちを「他者化 し周辺化するのではなく、もはや帰るべき祖国をもたない、共 丹野清人 に生きていくべき存在だと認識したうえで、象徴的にも ( 言葉 越境する雇用システムと外国人労働者 の上でも ) 、実質的にも ( 社会関係的にも ) 、対話的で、関係形成 判・一一三八頁・五七〇〇円 的な関わり方を取りもどしていかねばならない。 三〇一六年八月二五日 ) 東京大学出版会 ( 表示は本体価格 ) ( みやじま・たかし社会学 ) 四六判・二九六頁・二八〇〇円 < 5 判・二三四頁・三八〇〇円 < 5 判・二七二頁・三八〇〇円 [ 「イスラーム問題」の構築と移民社会一一二〇一五年パリ危機からその後へ ] 3 ポピュリズム政治と「移民問題」 6

2. UP 2016年10月号

房〕現代社会の中の 圭自己・アイデンティティ 梶田叡一・中間玲子・佐藤德編著 多元性、流動性、状況依存性が指摘されてい 子・ る、これからの時代の自己・アイデンティテ 金 イの在り方を、さまざまな視点から考察 し、「生きること」への視座を示す。 <LO 判・ 208 頁本体 2 、 700 円十税 づかされ、できる限り翻訳・訳註・解説で細かく紹介した。 関を披くか、を読み解くこともまた『饗宴』の醍醐味なのであ 一つは、日本語と同じようにギリシア語は母音の頻度が高いる。 ので音の共鳴を使った語呂合わせが容易である。「美」というそして肝心のエロス (erös) という語も、一方では恋は人を 名詞の to kalon は「呼ぶ、誘う、召喚する」を意味する動詞死をも恐れぬ英雄 (hérös) にするとともに、他方では、美し ka n と似て響く。美しいと評判の青年作家アガトンの祝宴にい人に恋心を掻き立てられ、日常生活の事実処理と社会習慣と 招かれてソクラテスが出席したのがことの始まりであった。い 自分なりの人生計画を忘れて、うずうずするような美の不思議 つもは粗衣裸足のソクラテスが珍しく湯浴みをして小綺麗になを「問い尋ねる (erötän) 」探究に駆り立てられることを示唆す っていた。その「美しくなったソクラテス」が弟子の一人にる仕組みになっている。関係ないほど遠く離れたことの間にも 「一緒に行こう」と誘うのである。全篇のあちらこちらの文脈類似性を発見することは知性の徴 ( 『弁論術』 1412a12 ー 13 ) 、と で、美が人のこころを誘って「外」へ呼び招く超越カ動性に満アリストテレスは指摘している。プラトン・ワンダーランドは ちていることを示唆している。また「アガトン (Agathön)_ と仕掛けに満ちている いう固有名詞が「善いもの (agathon) 」と響くのである。美と 単数・複数のしかけ 善が全体のテーマと窺い知れよう。語呂合わせというただ音声 の偶然の共鳴ということを通して、文脈文脈でいかなる意味連 今一つはギリシア語文法である。ギリシア語は細部に至るま 0 家族心理学年報 個と家族を支える心理臨床実践Ⅱ 五ロ きロ 性をめぐる家族の諸問題と支援 ア シ 区鴨 日本家族心理学会編 京 性の問題は、個人から人と人との関係性、 A 」 ン カップル、夫婦・家族へと発展する問題で 0 ・ 4 ある。多様な性のあり方、犯罪との関連 0 も視野に入れ心理臨床での扱いを考える。 3 <LD 判・ 208 頁本体 3 、 200 円十税〒谷

3. UP 2016年10月号

派が特に強調したのは、「人の自由移動。体制の下で増大した の強い国だということにあらためて気付いた。離脱派のボリ 題 ス・ジョンソンなどの、イギリス経済にとりの諸規則は自東方からの移民が、雇用を奪い、公共生活も脅かしているとす 民 移 由を縛る「枷」だという言葉を聞くと、あのサッチャー政権のる点だ。 治 確かにその急増は一部の地域の住民を戸惑わせているが、そ 後半期の、「社会的ヨーロッパ」の構想に強く「ノー」を言い 政 ム ズ 続けた同国のスタンスが思い出されてくる。だがそんなことでのポーランド人やリトアニア人が同じ市民だということ、 労働者、高齢者を惹きつけることはできない。そこでとってつまたポーランド人たちがイギリス人の嫌う下級サービス労働市ュ けたように、への拠出金がなくなればそれを社会保障財源場をかなり支えていること、は考慮に値しないのか。ロンドン に回せるなどと論じるが、単一市場から抜けることの経済的負の有権者はより多角的見方をし、移民との共住、共生を受け容 へ 後 の 担増にはロをつぐむなど、ポピュリスト的な言説が目立った。れたとみるが、他のイングランドでは反移民、反自由移動とい そ う争点のみで動いた労働者、高齢世代が予想以上に多かったの 一方、「難民 , 問題が大きなイッシューに持ちだされたが、 機 たぶんロンドン新市長誕生に懸念を示すような、イスラモフォだろう。 危 ビアも分かちもたれていたと推測する。この点、もともと首相 年 共生の社会へ 五 キャメロンも従来の多文化主義は問題があったと発言している 〇 くらいだから、残留派も移民規制ではあまり変わらない。離脱国民投票は、私には驚きだったが、それは結果そのものによ 戦争は女の顔をしていない店晉 スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ 三浦みどり訳 ( 解説澤地久枝 ) 本体 1340 円 書田価 白ロシアの 皮 ' ボタン穴から見た戦争 子供たちの証言、、′ スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ 三浦みどり訳 ( 解説沼野充義 ) 本体 1160 円 チェルノブイリの祈りー未来の物語 スベトラーナ・アレクシェービッチ 松本妙子訳 ( 解説広河隆一 ) 本体 1040 円 ◆「使い古し」の時代とは。ニ 0 一五年ノーベル文学賞作家最新作ー 「赤い国」を 生きた人びと セカンドハンドの時代 3 スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ / 松本妙子訳 ソ連がなにを残したか探るため旧ソ連に暮らす一般の人 びとに取材をおこない、二一世紀に甦りつつある抑圧的 四六判・本体 2700 円 な国家の姿をとらえた大著。 岩波現代文庫 5 [ 「イスラーム問題」の構築と移民社会一一

4. UP 2016年10月号

今月の新刊 統計学の第一人者による東大での講義を書籍化 ! . 久「保月け - 也くばかわたつや ( 東京大学大学院経済学研究科教授 ) 友ーノ、くにともなおと ( 明治大学政治経済学部特任教授 / 東京大学名誉教授 ) 統計学 A5 判・ 360 頁 / 定価 ( 本体 2800 円十税 ) BN978 ー 4 ー 1 3 ー 062921 ー 8 初学者のための統計学のテキスト。豊富な図を用いて、統計学を学ぶ動機づけから、社会や 経済への応用までを丁寧に説明。数学と統計ソフトについてもやさしく解著者達の長年 にわたる講義でのノウハウが詰まった、生きた学問としての「統計学」を学ぶための最適の 書。 住要目次〉 第 1 章統計学とその役割 第 I 部基礎事項 第 2 章分布の特徴を探る 第 3 章度数分布から不平等度を測る 第 4 章変数間の関係性をみる 第Ⅱ部確率 第 5 章確率の基礎 第 6 章確率分布と期待値 第 7 章代表的な確率分布 第 8 章多変数の確率分布 第Ⅲ部統計的推測 第 9 章ランダム標本と標本分布 第 10 章推定 第 11 章仮説検定 第 12 章回帰分析 第Ⅳ部社会・経済・時系列データ 第 13 章経済・社会データと統計分析 第 14 章時系列の統計分析 [ 付録 ] 1 統計計算ソフトウェア / 2 数学の基礎知識 0 統計学入門基礎統計学 1 東京大学教養学部統計学教室編定価 ( 本体 28 開円 + 税 )

5. UP 2016年10月号

冖執筆者紹介〕 * 印は東京大学出版会刊 寺田寅彦 ( てらだとらひこ ) 東京大学大学院総合文化研究科教授、比較文化。一九六六年生れ。 * 「高校生のための 東大授業ライプ , ー・ガクモンの字宙」 ( 分担執筆 ) 、「絵を書く」 ( 分担執筆、水声社 ) 、 「西洋近代の都市と芸術 2 円世紀の首都」 ( 分担執筆、竹林舎 ) 、「十九世 紀フランス文学を学ぶ人のために」 ( 分担執筆、世界思想社 ) 。 宮島喬 ( みやじまたかし ) お茶の水女子大学名誉教授、社会学。一九四〇年生れ。「多文化であることとは」 ( 岩 波書店 ) 、 * 「外国人の子どもの教育」、「現代ヨーロッパと移民問題の原点」 ( 明石書 店 ) 。 大村敦志 ( おおむらあっし ) 東京大学法学部教授、民法。一九五八年生れ。生活民法入門』、 * 「他者とともに生 きる」、二跚世紀フランス民法学から」、 * 「新しい日本の民法学へ」、『穂積重遠』 ( ミ ネルヴァ書房 ) 、「新基本民法』 ( 有斐閣 ) 。 橋元良明 ( はしもとよしあき ) 東京大学大学院情報学環教授、コミュニケーション論。一九五五年生れ。 * 「日本人の 情報行動 2015 」 ( 編 ) 、「メディアと日本人ーー変わりゆく日常」 ( 岩波新書 ) 、「ネ オ・デジタルネイテイプの誕生ーー・日本独自の進化を遂げるネット世代」 ( 共著、ダ イヤモンド社 ) 。 山本巍 ( やまもとたかし ) 東京大学名誉教授、ギリシア哲学。一九四五年生れ。二ロゴスと深淵ーーギリシア哲 学探究』、 * 『受難の意味ーーアプラハム・イエス・パウロ」 ( 共著 ) 、 * 「饗宴訳と詳 解」 ( プラトン著、訳・解説 ) 。 清水あっし ( しみすあっし ) 公益財団法人東京大学新聞社常務理事 ( 二〇一三年より ) 。一九五七年生れ。一九八 一年東京大学工学部都市工学科卒業。 齋藤希史 ( さいとうまれし ) 東京大学大学院人文社会系研究科教授、中国古典文学。一九六三年生れ。「漢文スタ イル」 ( 羽鳥書店 ) 、「漢詩の扉」 ( 角川選書 ) 、「漢字世界の地平」 ( 新潮選書 ) 、「漢文 脈と近代日本」 ( 角川ソフィア文庫 ) 。 太田浩一 ( おおたこういち ) 東京大学名誉教授、物理学。一九四四年生れ。 * 「哲学者たり、理学者たり」、ほか ほかのパン』、 * 『がちょう娘に花東を六二それでも人生は美しい』。 中島隆博 ( なかじまたかひろ ) 東京大学東洋文化研究所教授、中国晢学。一九六四年生れ。 * 「共生のプラクシス 国家と宗教」、『ヒューマニティーズ哲学」 ( 岩波書店 ) 。 佐藤康宏 ( さとうやすひろ ) 東京大学大学院人文社会系研究科教授、日本美術史。一九五五年生れ。「湯女図」 ( 平 凡社 ) 、「歌麿と写楽」 ( 至文堂 ) 、・「講座日本美術史」全六巻 ( 共編 ) 、「伊藤若冲」 ( 東京美術 ) 、「改訂版日本美術史』 ( 放送大学教育振興会 ) 。 山口晃 ( やまぐちあきら ) 画家。一九六九年生れ。二山口晃作品集』、 * 「山口晃が描く東京風景ーー本郷東大界 隈」、「すゞしろ日記」 ( 羽鳥書店 ) 、「すゞしろ日記弐」 ( 羽鳥書店 ) 、「山口晃大画面 作品集」 ( 青幻舎 ) 、「ヘンな日本美術史』 ( 祥伝社 ) 。 冖次号予告〕 学問の図像とかたち寺田寅彦 / 歴史学 の作法肥池上俊一 / 動物園巡礼木下 直之 / トナリのシガク加藤陽子 / 行政 責任を考える 4 新藤宗幸 / 書評泊 次郎 / 日本美術史不案内ⅵ佐藤康宏 す。しろ日記第Ⅷ回山口晃 【に「「・「」。科第四五巻第十号 ( 通巻五二八号 ) 一一〇一六年十月五日発行 L•u 定価 ( 本体価格一〇〇円 + 税 ) 代表者ーー - ーー、ー古田元夫 D 発行 一般財団法人東京大学出版会 〒一五三ー〇〇四一 東京都目黒区駒場四ー五ー一一九 電話 〇三ー六四〇七ー一〇六九 ファックスーー〇三ー六四〇七ー一九九一 印刷・製本・・ーー大日本法令印刷株式会社 ( 0 UNIVERSITY OF TOKYO PRESS 2016

6. UP 2016年10月号

ない。あるのはわずらわしい現実世界だけで、わたしたちうか。ピュエットの語る〈かのように〉の礼は、帝国化してい はそのなかで努力して自己を磨く以外ない。ありきたりのく手前の中国において、一時的に見出されたものであって、そ 〈かのように〉の礼こそ、新しい現実を想像し、長い年月の後の中国において実際に展開していった礼とは異なる。〈か をかけて新しい世界を構築する手段だ。人生は日常にはじのように〉の礼は、ピュエットの読解を通じて構築され、洗練 まり、日常にとどまる。その日常のなかでのみ、真にすばされ、再び構築されたものなのだ。その限りで、〈かのように〉 の礼は一種パフォーマテイプ ( 行為遂行的 ) なものであって、 らしい世界を築きはじめることができる。 ( 同、七六頁 ) コンスタテイプ ( 事実確認的 ) なものではない。 弱い規範としての〈かのように〉の礼。はたして、わたしたちそうであれば、〈かのように〉の礼を近代的な普遍的規範 ( 自由や人権等々 ) と単純に対立するものとして考えるべきでは はそれをどう受け止めればよいのだろうか ないかえって、後者が普遍化していくためには、〈かのよう 5 近代の普遍的規範との関係 に〉の礼の実践が必要だと考えるべきではないだろうか。機会 実は、ピュエットのこの本を学生と社会人の人たちに読んでがあれば、是非ピュエットに聞いてみたいところである。 もらって感想を聞くと、大きく二つに分かれた。共感と反発で さて、最後に、礼の重要な場面である食事について付け加え ある。とはいえ、その受け止め方の根っこはあまり変わらな というのも、ピュエットは東アジアとりわけ日本にとってておこう。ピュエットと食事をしていたある時にふと気づい の 馴染みの考え方を提示しているとどちらもとらえているからた。ピュエットは、わたしと完全に同じタイミングで同じもの だ。共感する人たちはそこに可能性を見いだすし、反発を覚えを食べるという礼を実践していたのである。肉を切れば肉を、 、つ よ る人たちは、「じゃあ、近代を受け入れてきた意味がなくなるサラダを食べればサラダを、飲み物を取れば飲み物をともにい の ただくのである。心配りの繊細な人に出会うことがこれまでも ではないか」と憤慨するのである。 ードでのピュエットに対する反応数多くあったが、ピュエットのそれはまた独特であった。断片 これこそが、東大とハ の違いをもたらしたものである 1 ドの読者にとっては 化された世界において、破片を繋ぎ合わせることでよき生を生 書 きわめて新しい考えであるにしても、東大の読者にとってはどきようとする思想家の、ささやかなプラクシスである。 ( なかじま・たかひろ中国哲学 ) こか既視感があるということだ。しかし、本当にそうなのだろ

7. UP 2016年10月号

題 民 移 治 政 ム ズ ュ へ 後 水着を禁止し、着用者を浜辺から立ち退かせる、罰金を科すと の イスラモフォビア そ いった所が出てきた。どう考えても「ライシテ」の原則によっ 昨年来の悪夢の冷めやらぬなか、大小の事件が相次ぎ起こて正当化しうる措置ではない。人権問題だ、とが裁判所議 カトルズ・ジュイエ し訴えたのは当然だ。 る。特に「七月一四日」 ( フランス革命記念日 ) の宵を締めくく 年 五 る直例の花火に酔いしれていた南仏ニースの海岸通りを埋めた イスラームと対話できるか 住民・観光客の中に、突然大型トラックが突っ込み、暴走、八 連載の前回のテーマに戻るようだが、やや別の面から問題を 〇名を超える死者を出した事件は一大衝撃だった。チュニジア 系とされる容疑者との繋がりははっきりしないが、「これ捉えたい。 民 ムスリム移民たちが普通にもっている信仰心に対しこれを尊移 は戦争だ」と八カ月前に宣したオランド大統領の言葉をあらた 築 重するという姿勢がフランス人にあまりみられないのは気にな めて噛みしめる市民もいた。 構 の 実行犯と一般ムスリム移民を結び付けるという単純な見方はる。この国の精神風土というつもりはないが、反宗教といおう 題 ム おおかたのフランス人は卒業している。だが、地域ではイスラか、宗教への内的理解や関心をこばむ傾向があるように思う。 カトリックの信仰をもちだすのは問題かもしれないか、 モフォビア ( イスラーム嫌い ) の噴出なのか、ニース事件の記 ス プラティカン 憶がなまなましい八月、カンヌなど地中海岸の町々では、ムス「宗儀を行う者」は二割以下とみられ、日曜日の教会のミサも リム女性の着用する、髪を隠し、体の線を隠す緩やかな長めの閑古鳥が鳴いている。ルコント社発行のパリ区分地図帳の末尾 「イスラーム問題」の構築と移民社会ーー一一〇一五年バリ危機からその後へ 3 ポピュリズム政治と「移民間題」 宮島喬

8. UP 2016年10月号

今月の新刊 とうごうかすひ , ) ( 京都産業大学法学部教授 ) 東郷和彦 ・ Z ・ハノフ ( モスクワ国立国際関係大学外交学科長 ) ロシアと日本 〈主要目次〉 はじめに ( 東郷和彦 ) 序章アイデンティティを考える (< ・ Z ・パノフ ) アイデンティティの形成ーー中世から近代へ 歴史の遺産と近代への影響 ( 安 野正士 ) / 2 近世における歴史的発展の特徴・ O ・サルキソフ / パノフ ) Ⅱ近代化への道と日露戦争 1 近代化とアイデンティティの模索 ( 安野 / 河原 地英武 ) / 2 改革の時代 ( パノフ ) Ⅲアイデンティティの相克ーー第ニ次世界 大戦終結まで 1 交差する日本とロシアの軌跡 ( 池田嘉郎 ) 和解と対立 自己意識の歴史を比較する ( サルキソフ ) Ⅳ冷戦時代のアイデンティティ 1 葛藤する日本とソ連 ( 下斗 米伸夫 ) / 2 「戦勝国」と「敗戦国」の歩み (= ・・ストレリツオフ ) > アイデンティティの再構築ーー冷戦後の時代 1 安倍・プーチンの新世紀 ( 東郷 日本とロシアがどのような国家の歩みを刻み、眼差しを交わしてきたのか。 外交の現場での交渉をふまえ、両国の本質を理解しあうことを目的とした研 / 隈部兼作 ) / 2 転換か回帰か ()o ・・チュグロフ ) おわりにーー歴史の 究プロジェクトの成果。現在の日ロ関係の課題に対して、歴史的なアプロー 比較分析は未来の道標たりうるか ( 東郷 ) チによる解決の糸口を探る <LD 判・三〇八頁 / 定価 ( 本体四四〇〇円 + 税 ) 0 日ロ関係史五百旗頭、下斗米、トルクノフ、ストレリツオフ編 一 S B N978 ー 4 ー 1 3 ー 020305 ー 0 定価 ( 本体九二〇〇円 + 税 ) 本来見えるはずのない人々の差異は、歴史・社会的にどのように徴づけられてきたのか さいとうあやこ ( 明治学院大学文学部教授 ) 斉藤綾子 , 粡人種主義は社会階層、ジェンダー、民族の政治 ( ポリティクス ) とどう複合してきたか。 見えない人種が創られていく現場に、近代史と現代、日本とアジア・ヨーロッパ・アメ 竹沢泰「卞たけざわやすこ ( 京都大学人文科学研究所教授 ) リカの事例から切り込む。 【シリーズ全 3 巻 / 第 2 回配本】 〈主要目次〉 序章差異の可視性 / 不可視性 ( 斉藤綾子・竹沢泰子 ) —被差別集団の人種化 被差別部落の映画表象 ( 斉藤 ) / 人種の形成 ( 金仲燮 / 高正子訳 ) / 近代日本 人種神話を解体する① 社会と被差別民の表象 ( 吉村智博 ) Ⅱ制度としての人種形成血の掟 (< ・グ ロス / 後藤千織訳 ) / 日本の天皇制と近代人種主義 (e ・フジタニ / 辛島理人 可視性と不可視性のはざまで 訳 ) Ⅲ移動のポリティクスと人種「移動民族」としてのロマと新人種主義 ( 岩 谷彩子 ) / 〈血〉の連続性とは何か ? ( 関口由彦 ) 試論 1 / 試論 2 ( 竹沢 ) ■内容見本呈 0 人種神話を解体する全 3 巻竹沢泰子編集代表 (U) 判・ニ九六頁 / 定価 ( 本体四八〇〇円 + 税 ) 【既刊】③「血」の政治学を越えて川島浩平・竹沢編定価 ( 本体五〇〇〇円 + 税 ) 一 SBN978 ー 4 ー一 3 ー 054 一 4 一ー一【続刊】科学と社会の知坂野徹・竹沢編 ( Ⅱ月完結 ) 編

9. UP 2016年10月号

の「師」は大川周明であったが、兄貴分として笠木良明を慕っ原巌徹 ( 笠木と親しかった満鉄弘報課長・前掲『実録・満鉄調査 ていた。永井了吉は戦争末期まで中国大陸と内地の間を頻りに部』「抗争の思想」より ) が評しているが、私には正に永井了吉 往復し、笠木や満鉄、満州国関係者と交わった。永井は戦後もその人を言っているように思える。また短い紙数では語り切れ聞 ない、笠木良明という人物の特異な思想・行動、また人を引き大 含めて、これら「日の会」の仲間とは一生交流があった。 笠木は自らの「民族協和による王道楽土」建設のため、満州つける不思議な魅力に私も興味を覚える。 AJ そして永井の携わった『帝大新聞』の時代に、永井と同じ脈 に「資政局」を設立し、満州人民の間に飛び込んでいく官僚と しての「県参事官」の養成に努めた。しかし、満州国を対ソ戦「日の会」の仲間たち、大川周明・笠木良明そして後に出て来 会 略の要衝と見る陸軍や、また実務的な満州国官僚にとって、笠る綾川武治らは皆満鉄調査部に入社したが、いずれも東京の事の 木の方針は相容れるところとならず、「満州国六月政変」とも務所にいて、永井との連絡も密であっただろうことは注目すべ 了 称される、「資政局解散」という事態に至る。笠木と「大雄峰き点だ。当然『帝大新聞』への影響も考えられる。 永 会」の一派は一掃され、笠木は退官して内地に戻る。 帝大出のエリートが民衆の中へ 以上、笠木良明に多く触れたのも、永井が『帝大新聞』に関 わった一九一九年から一九二三年頃周囲にいて大きな影響を受また橋川文三は著書『昭和維新試論』 ( 一九八四年・朝日新聞謎 けた人物だからだ。また「笠木派の人物は、純清熱血漢」と石社 ) の中で、「田沢義輔のこと」として、明治末から大正期に 資 刊 究 研 の 聞 新 大 帝 期 へ劬。ん社 いまを生きる江戸思想 十七世紀における仏教批判と死生観 本村昌文著近世前期にお ける死生観の展開とその背景 を、十七世紀の儒者の著作と 仮名草子から読み解き、老い と死後という視点も絡めて江 戸時代を生きた人々の意識 の深層に分け入る。 4800 円 柏木義円と親鸞 近代のキリスト教をめぐる相克 市川浩史著キリスト者として 日本の帝国主義化への反対を 貫き、地域伝道と社会批判運 動を活発に展開した柏木義円 ( 1860 ー 1938 ) 。その思想形成 を出自である真宗寺院および 親鸞との葛藤・内的対話の軌 跡から探り、明治の精神の可 能性と限界に迫る。 2600 円 禅からみた日本中世 の文化と社会 天野文雄監修日本中世の 文化や社会に「禅」がもたら した影響を、文学・美術・ 芸能・建築・社会・思想の 各分野の研究者が最新の研 究状況をふまえて、その新展 開を検証する。 4800 円 長谷川伸の戯曲世界 沓掛時次郎・瞼の母・暗闇の丑松 鳥居明雄著大衆文芸作家 として一世を風靡し、股旅物 の生みの親でもある長谷川 伸。傑作と名高い戯曲三編 を取り上げ、挽歌の視点か ら精緻に読み解き、大衆演 劇の根源を拓く。 3500 円 東京都文京区本郷 1 ー 28 ー 36 容 03 ー 3814 ー 8515 * 税別価格 吉

10. UP 2016年10月号

有斐閣 に立っデュルケムの『社会学講義ー習俗と法の物理学』の叙述け入れ教授であった o 教授が開講していた「法一言語学」なる授 と並んで、ミシュレの考察には時空を越えて私たちに呼びかけ業に出席していたことがある。ある日、授業後の雑談の際に、 るものが含まれている。実定法を支える「原初形態の法」「無彼は私にこう言った。「一九世紀のフランスでは、民法典の韻 詩 意識の法」への彼の関心、あるいは、人々のふるまいの中に法文化が企てられていた。私が知る限りでも三つの例がある」 AJ 法 を見出す彼の視点は、たとえば現代日本の実定法学者にとってと。 の は、かって私たちが持っていたはずの法への複眼的な視座を思 当時はその「三つの例ーを探すのは難しかったのだが、最近 ス い出させるとともに、より広く人文Ⅱ社会科学の研究者にとっ になって、「韻文による民法」といった表題を有する三冊の著一フ ては、「法」への新たな関心を惹起する契機を含むのではない 作が、相次いで復刊された。おそらくは 0 教授の一一一一口う「三つの紀 世 かと思われるのである。もっとも、彼の言、つ「詩」「象徴」「意例」は、これらを指すのであろう。 Flacon dit Pochelle ( J. H. ). 味論」が何を意味するかに関しては、さらに検討を要するかも Co c ~ ・ ~ ミ des F ミミ旁ミ 2 ミ ) 、ミミ c ミ e en 、 eg 、 しれない 1805. Decomberousse Hach (). M. ). Co c ~ ・ミ 7 ミ ~ ミ ) ミ 2 ところで、一九世紀のフランスでは、「詩としての法」ミ 1811. Pons-Euziéres. Co ~ ミ en ミ ) ミミ s. 1882 の三 の研究だけでなく、「法の詩」の制作も行われていた。最初の冊であり、順に、二〇一二年、二〇一四年、二〇一〇年に復刊 在外研究中のことなので、もう一二〇年も前のことになるが、受されている。このうち最初のものについては、フランス国立図新 →パ . 対策法 成 9 吉 P0 〔【〔 T20 一 7 , に対本。ラ 2 価 定乢 旒改一等プ亠ノ ロ 」件嫁のピ者新閣ト 山 等ス害をの斐 型幻法法ト被法法有ッ 、、ノ信表 ~ 令イ罪譓「、ケ〔 漑 0 、、友代法。訴〈犯保 山、山 ノ 2 ノノ山編基収刑応更 = 新刊案内 民法・刑訴法 重要改正 必第十分な法令 202 件を収録 = 有斐関 排除と差別の 社会学新版 好井裕明編 〔有斐閣選書〕 2 , 200 円 + 税 原発事故やヘイトスピー チ , いじめ , マタニティ・ ハラスメントなど , いま まさに注目すべき排除や 差別の問題を取り上げて 新版化。問題の本質を考 える入門書。 ◎図書目録送呈◎ 9 [ 法の森から