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1. UP 2016年9月号

日本でもよく知られた中国の言葉に、唐時代の「韜光養晦 著者は末尾でアメリカがとるべき多数の措置も提案してい というものがある。中国政府はその意味を「好機を待ち、力をる。ただし、著者によれば、実行することが最も難しく、かっ 蓄えよ」を意味する一般的な教えであると曖昧に説明してき最も重要なのは、マラソンが始まっていることを認めることで た。しかし、著者によれば、この諺は実は、才能や野心を隠しある。 て古い覇権を油断させて倒し、復讐を果たすことを意味してい 若干の考察 る。 一九八九年の天安門事件後も、ブッシュ政権の中国支持者アメリカにおいて、特に政治の世界において、協力から警戒 は、事態の展開を最大限肯定的に捉えようとして、次のように に中国認識と政策提案が変わりつつあることは確かであろう。 思い込んだ。中国は依然として民主化の途上にある。アメリカ は鄧小平率いる「穏健な」派閥を保護しなければならない。そ ジェフリー・・べーダー著・春原剛訳 して著者もその一人であった。 二〇〇八年のアメリカ発の金融危機は、中国がアメリカの衰 オ、ハマと中国米国政府の内部からみたアジア政策 四六判・二八八頁・二五〇〇円 退が予想より加速していると判断する根拠となった。そして、 マラソンでの勝利が見えた現在、中国はいっそう好戦的になる 服部龍一一 余地があるかどうかを検討している。もっとも緊張が高まって 日中歴史認識 いるのは日本との関係であり、領土紛争は全面的な海戦に発展 「田中上奏文」をめぐる相剋九二七ー一一〇一〇 しかねない、と著者は見る 四六判・三六〇頁・三二〇〇円 二〇一三年、著者は中国についての判断をさらに変える。そ れまでは、中国は一一〇四九年まで「目立つ行動を控え、好機を高原明生・丸川知雄・伊藤亜聖編 待っー戦略を維持するとの見通しを立てていたが、それは誤り 東大塾社会人のための現代中国講義 であった。そうではなく、中国はアメリカが衰退し、カの均衡 が中国に有利に傾くにつれて攻撃を強める段階的方法を採用し 東京大学出版会 ( 表示は本体価格 ) ている。 と、つ、」、つよ、つ力し < 5 判・二八八頁・二八〇〇円 65 [ 書評 ] 131 アメリカにおける中国観の変遷

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象的であったが、『危険な幻想』ではかなり率直に著者の本音報局 (o—<) の枢要な地位を占め、国防総省でもそれは変わ を披露しており、著者の異なった側面を見せている らない。アメリカの大学やシンクタンクの中国学者はたいてい マンによると、一九八〇年代から天安門事件を経た後でも、 が関与政策の強い支持者であり、「フォーチュン繝社」の会長 アメリカの政財界の指導者や学者の中国観は基本的に変わってや経営者もたいてい同じ考え方である」。 。皮らは、政治的抑圧や一党独裁の現実をできる限り見中国で中産階級が育ちつつあり、それは近いうちに共産党に てみないふりをしている。 迫って民主主義を実現させる可能性がある、というニコラス・ 著者の基本的な見方は、中国が民主主義あるいは一層の自由クリストフ ( ニューヨークタイムズ紙コラムニスト ) らによって 化に向かっていると思い込むべきでない、むしろ中国は長期に表明された期待も、正面から批判される わたって抑圧的な一党支配体制を維持するだろうというもので マンによれば、アメリカのエリートが中国の抑圧的体制を公 ある。マンによれば、親中派の人びとは、中国とのビジネスが然と批判するのをためらう傾向は、金銭が絡むことで一層強化 拡大すれば中国での政治的変化が帰結し、民主主義に至るはずされる。その典型例は、ヘンリ ・キッシンジャーである。彼 だと主張するが、それは幻想ないしおとぎ話に過ぎない。 は国務長官退任後、「キッシンジャー・アソシェーツ」と称す 遷 変 このような楽観的な見解は、超党派的支持をえている。たとるコンサルタント会社を作り、アメリカの経営者を中国政府に の えば、民主党のビル・クリントンと共和党のジョージ・・プ紹介することで高額の報酬を得てきた。クリントン政権で国家観 ーガーも同中 ッシュの政権の間には、対中政策で基本的な違いはなかった。安全保障担当大統領補佐官を務めたサミュエル・バ る どちらも中国とのビジネスが一党独裁に変革をもたらすという様である。親中派経済人の資金力の影響は、プルッキングス研 お 見解に依拠していた。親中派の人びとは、中国が依然としてレ究所やヘリテージ財団など、左右のシンクタンクにも及んでい カ る。 ーニン主義的な政治体制のもとにあることを認めたがらない メ ア 一九八〇年代後半と比較して、一一〇〇〇年初頭の中国政治が開 ピルズベリーの分析 放的になったとは思えない 、とマンは断言する。 「民主党政権であれ、共和党政権であれ、いずれの政権も対これに対して、ピルズベリーの thina 2049 』は、アメリカ 評 書 中政策では「関与」派が : : ほとんど決定権を握ってきた。実人は中国のタカ派の影響力を過小評価してきたと断言する。著 務レベルでも、「関与」派がホワイトハウス、国務省、中央情者はニクソン政権以来約三〇年にわたって、アメリカ政府にお

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方の原因を骨太に提一小した。関与と警戒という合言葉で推進さ れてきた対中政策も、実質的には「関与」に重点が置かれたも のであった。マンはそれに一石を投じたと言えよう。ただし、 アメリカの学界には、アメリカの現実政治と比較して、全体と してかなりリべラルな傾向かある。この点をもう少し織り込ん で見取り図を描きなおしてもよいようにも思える。 ピルズベリーは中国政府内の力関係の分析を通じて、二〇四 九年から一貫して、かっ秘密裏に遂行されている「世界覇権一 〇〇年戦略ー ( 訳書の副題 ) 仮説を提示し、これまでの対中国政 策の誤りと彼が考えるものを指摘するとともに、今後とるべき登 政策も提言している。ただし、一般読者としては、つねに優越本 的な影響力保持してきたとされる「タカ派」の正体 ( ? ) につ ・カ いて、今一つ具体的な像を結びにくいのではないか。また、一 画 〇〇年計画がどの程度一貫性をもって推進されてきたかについ ても、説得力がやや不十分であると感じられる。あるいは、そ人 れはそこはかとなく共有されている願望のようなものなのだろの一 、つ , 刀 マンとビルズベリー両者の議論を受け入れたとしても、複雑 な相互依存関係の中で、具体的にどのような強硬な対中国政策 を実践するかは、一義的に答えを出しにくい。対中国政策は、 アメリカにおいても日本においても、政策決定者にとってます ます重要な知的・政治的挑戦となるであろう。 ( くば・ふみあき現代アメリカ政治 ) 東大教師が 新人生にすすめる本 2009 ー 2015 東京大学出版会『 UP 』編集部一一 [ 編 ] 2009 ~ 2015 年の『 UP 』 4 月号に掲載された好評アンケー ト 7 年分を収録。東京大学のスタッフが、新入生にいま読 んでほしい本を熱く語る。さらに哲学から生物学まで、 12 名の各分野の第一線の執筆者が、それぞれの学問の 戦後の軌跡を解説。 ISBN 978-4-13-003333-6 B6 判 / 270 頁 / 本体 1 , 800 円十税 67 [ 書評 ] 131 アメリカにおける中国観の変遷 東大教師が 新人生にすすめる ßOOK GUIV)E 200 ラ 2 三 5

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いて中国を分析してきた。「脆弱な中国を助けてやれば、中国だ。それは、「過去一〇〇年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共 はやがて民主的で平和的な大国となる。しかし、中国は大国と産党革命一〇〇周年にあたる二〇四九年までに、世界の経済・ なっても、地域支配、ましてや世界支配を目論んだりはしな軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」という い」という説を、アメリカ人は信じ込まされてきた。著者自ものである。そして、この計画は「一〇〇年マラソンーと呼ば 身、中国が民主化するという話を何十年も聞き続け、それを信れるようになる。 じてきたし、それを信じたかった、と告白する。 西側の中国専門家は長らく、中国のタカ派を非主流派とみな 著者によると、これは楽観的なバイアスでしかな しかし、著者はやがて違う認識を持つようになる。中国のタしてきたが、 カ派が、北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作く、むしろ逆に彼らが主流なのである。 しかも、ピルズベ 1 し、情報や軍事的、技術的、経済的支援を得てきたのではない ーによれば、一〇〇年マラソンの強み は、それが秘密裏に遂行されることにある。おそらく、中国政 かと、著者は一九九〇年代に考え始めた。 著者によれば、中国ではタカ派が一貫して強い影響力を持っ府の金庫にもそのマスタープランは存在しない。ようやく近年 ている。彼らは、中国政府の指導者を通じてアメリカの政策決になって、中国人はその考えをよりオ 1 プンに語り始めたに過 定者を操作し、情報、軍事的・技術的・経済的支援を得てきぎない。とりわけ二〇〇八年の世界金融危機の後、中国人はア た。タカ派は毛沢東以降の指導者に次のような計画を吹き込んメリカの回復不能な凋落がついに始まったと確信した。 C ミ 1 第を茫税 昭十 辺円 渡 o 5 中国が民主化もなかったら世界はどうなる ? を ン・ 0 マ頁 2 ズ万 無 ( 一墨一一ム . 究 工六 O- ジ四 危険な幻想一 秘密裏に遂行される 「世界覇権 100 年戦略」 マイケル・ビルズベリー・を 野中物方子 森本載 ( , 洋物疆授新一の - 能 マイケル・ピルズベリー著 / 野中香方子訳 / 森本敏解説 四六判・ 440 頁・ 2000 円十税 日経 BP 社・ 2015 年 [ 書評 ] 131 アメリカにおける中国観の変遷 64

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変 の 国 中 る お カ メ ア る。もう一つは、警戒心をもちながら悲観的にみようとするも はじめに のであり、その見解によれば、経済的に台頭しても中国の行動評 最近四半世紀の中国の経済的台頭はただただ目を見張るばかは変わらないであろうと予測する。ニクソン大統領による一九 七二年の中国訪問以来、長年、アメリカでは前者が優勢であっ りである。同時に、その軍事力強化も顕著である。 そこには、軍事費の伸びだけでなく、行動様式や能力面でのたが、近年、やや風向きが変わってきたようにも感じられる。 大きな変化も含まれる。尖閣諸島周辺での日本の領海侵犯も頻ここで取り上げる一一つの著書は、後者の見方を代表する 繁に起き、過日は中国海軍艦船による侵犯すら起きた。 マンの分析 その一方で、アメリカにせよ、日本にせよ、中国との間の経 済的相互依存関係は巨大な規模に拡大している。それでは、近まずマンの『危険な幻想』であるが、これはかってロサンゼ 年、アメリカにおいて、中国はどのように見られているのであルス・タイムズ紙の記者を務めた中国専門家によるやや知識社 会学的な分析である。これまで、マンの著書は日本でも『米中 ろ、つカ やや単純化すれば、二つの見方が存在してきた。一つは、基奔流』 ( 一九九九年 ) 、『ウルカヌスの群像』三〇〇四年 ) などが 本的には中国の台頭を歓迎し、また中国も豊かになるにつれ国翻訳されており、いずれも高い評価を博している。これらの著 際的規範をより一層受け入れるであろうと期待する見方であ作では、広範な聞き取り調査に依拠した落ち着いた語り口が印 アメリカにおける中国観の変遷 ジ = ームズ・マン著、渡辺昭夫訳『危険な幻想中国が民主化しなか「たら世界はどうなる ? 』 「イケル・ピルズ ~ リー著、野中香方子訳 0 ぎ ~ 0 お秘密裏に遂行される「世界覇権年戦略」』 〔書評〕 0 0 1 久保文明

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中国に対する態度は、政党によっても違いがあるが、民主ただし、近年、このようなアメリカ政治における勢力配置図 党・共和党それぞれの中に異なった集団が存在していて、政党には変化が起きている。一つは、経済界が以前と比較するとか遷 の境界を越えて錯綜している。 なりの程度、中国市場に冷ややかな態度を取り始めている。労の たとえば、民主党内では、労働組合が中国について、とくに 働コストの上昇に加え、サイバー攻撃により企業秘密が盗み取国 中 る 通商・為替問題などを重視して厳しい態度をとる。環境保護団られる例が増えていること、知的所有権が十分に保護されない 体や人権団体も中国に批判的である。また、外交・安全保障問こと、外国企業より中国企業が優遇され内外無差別原則が尊重川 カ 題の専門家には、中国に強硬な態度をとる者も少なくない。そされないこと、恣意的に様々な規則か変更されることなどにも れに対して、ビル・クリントン元大統領に代表される穏健派よる。多くのアメリカ企業にとって、中国市場は以前ほど魅力刈 ア 的でなくなっている。 は、中国との通商の拡大を含む協力関係の維持を支持する。 共和党の外交・安全保障専門家では、リアリストといわれる第二に、外交・安全保障の専門家は、どちらの政党に所属し ニクソンⅱキッシンジャーの流れをくむ人々は比較的中国とていようと、一様に以前より中国に批判的になっている。これ評 の協力に前向きであるが、保守強硬派とでも呼ぶべき力の外交はとくに近年の南シナ海での中国の行動が原因である。 の提唱者、あるいは新保守主義者 ( ネオコン ) は中国に対して これに対して、かってより中国に好意的になっている集団は 非常に厳しい態度をとる。宗教保守勢力も同様である。それに ほとんど存在しないであろう。 対して、党内でもっとも中国に好意的なのは、経済界、とくに このような大きな見取り図の変化という文脈で見ると、ここ 中国ビジネスで利益を得ている企業経営者たちである。 で扱った二つの書は、どちらもアメリカ政治、あるいは知的潮 世論調査で見られる対中国観では、共和党支持者の方が民主流の変化とほば符合するものである。 党支持者より厳しい傾向があるが、政権の性格などによって、 ただし、米中政府間には、北朝鮮問題の解決、イラン核開発 必ずしも共和党政権が強硬な対中政策を採用するとは限らな阻止、国連常任理事国としてのさまざまな取引など、広範にわ 、 0 野党・議会は、与党・政権より中国に厳しい立場を打ち出たる協力関係などがある。とくに現オバマ政権と民主党にとっ す傾向も存在する。ここにマンの議論を加えれば、大学やシンては、地球温暖化での米中協力はきわめて重要なものと位置づ クタンクの中国研究者の多数も、かなりの程度親中派であるとけられている。 い、つ一」とに学はろ、つ マンの著書は、アメリカの中国理解に埋め込まれた親中的見

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るとし、聴覚や嗅覚のあり方の変化、央楽の表象の変化を、医のは、認知心理学、神経科学あるいは精神哲学において、感情給 にー畆言能力と道徳的合理性が備わっており、したがってそれ性 学理論、神学、技術開発やそれに促されたインフラ整備、社会 慣習や新たな欲求、身体衛生規範などとの関係を検討しながは合理性の寄生物ではなくむしろ見張り番なのであり、我々の可 ら、つぎつぎと跡づけ解明していった。新たな感受性は、まさ抱く価値に適合するもの、社会的期待に沿うものは何かをいち史 感 に身体のあり方の変化に同道し、文化的社会的に構築されたも早く教えてくれる、と考えられるようになったからである。 一九八五年に新来の「感情史 , の綱領的な論考 ("EmotionoIo- のだからである。社会的想像力の歴史を、人類学的な五感の歴 法 史にまとめてみよ、つとい、つ試みは、まず一九八二年の『におい】 CIarifying the History of Emotions and Emotional Standards ・・ ) の歴史』 ( 邦訳、藤原書店、一九九〇年 ) に結晶し、また一九世を発表し、専門分野としての確立を求めるとともに、自ら具体の 紀のフランスの田園で音環境がどう変わっていったかを、とく的な個別感情の歴史的あり方を何冊もの単著で示しているの史 に鐘を中心に探査した一九九四年の「音の風景』 ( 邦訳、藤原書が、アメリカのスターンズ夫妻 ( ピーター・ Z ・スターンズとキ ャロル・・スターンズ ) である。また一九九二年に、夫ピータ 店、一九九七年 ) もこの分野の代表作である。 ーは・ルイスとともに一連の印象深い感情史シリーズ The コルバンの仕事は、一種の名人芸的なところがあり、特定の グループや後継者を持たないが、アメリカから、新たな装いで ( 00 、 E ミ 0 を New York University press から出版 この感性史が一大発展することになった。しかも、感性し始め、二〇一三年にはそのシリーズの一冊として『感情史を sensibility を感情 emotion と言い換えている点にも、戦略的な行う』 00 g E きミきという論文集を刊行した。後 意味があろう。この最近の感情史の動向を知るには、 Jan 者では、前近代的感情から近代的な感情への変化プロセスを追 Plamper, The 、 E き 0 ( ~ ・を s. ・ゝ 7 ミ、 od ミ、 ~ ド Oxford 求するべきこと、そのため学際的・国際的比較も可能になるよ University press. 20 】 5 や森田直子「感情史を考える , 『史学雑うな方法で感情史研究を行、つべきことが説かれている。また人 誌』三〇一六年三月 ) が、委曲を尽くして解説しているので参間の基本感情は、歴史的に不変だと看做されがちだが、基本感 情とはべつに、その個人が属す大小の集団や社会が前提とする 照されたい。 感情を理性と対立させて、不合理のレッテルを貼る一九世紀感情のあり方は、他の歴史的変化と結びついて可変的である、 末以来の伝統が災いして、感情研究は長い間あまり進展しなかということも示されている。 ったのだが、 二〇世紀後半以降、その復権が見られた。という アメリカではほば同時期に・・レデイや・ゼルディン

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こうして披露山のサルたちは逗子の町から戦争の記億を払拭 する大切な役割を担った。サルは戦争などという馬鹿なことは しないからだ。いくら横須賀にアメリカ軍が居座り、いくら高が 射砲がぐるぐると回転した砲座を住み処にしたところで、戦争 ゴッコだってしないだろう。 猿畠夜雨 逗子独立の年、逗子観光協会によって新逗子八景が選ばれ一 た。「新」というのだから、それ以前から逗子八景というもの番 があった。とはいえ近江八景や金沢八景ほどの古い歴史はな 。大正十年 ( 一九二一 ) に逗子倶楽部が選び、それを山崎白 者し 堂が『逗子八景葉山の史蹟』 ( 逗子八景社、一九二三 ) にまと めた。すなわち、神武晩鐘、延命秋月、桜山暮雪、小坪帰帆、 不動落雁、猿畠夜雨、岩殿晴嵐、鳴鶴タ照の八景である。とこ ろが、新逗子八景では、浪子不動秋月、沼間落雁、田越川タ 台 召、披露山暮雪、山の根夜雨、神武晩鐘、小坪帰帆、桜山晴嵐 ~ となり、披露山が登場した。 さて、気になるのは旧にはあって新にはない「猿畠夜雨」と いう名勝である。猿畠山は法性寺の山号であって、猿畠山とい 山う山があるわけではないものの、法性寺は披露山から谷を隔て た山の中腹にある。その谷を横須賀線が走っている。線路脇の 逗山門には「猿畠山ーと記した額が掛けられ、二頭の白いサルが 落ちないようにと支えている。それにはこんな由来があった。

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冖執筆者紹介〕 * 印は東京大学出版会刊 寺田寅彦 ( てらだとらひこ ) 東京大学大学院総合文化研究科教授、比較文化。一九六六年生れ。・「高校生のための東大授業ライプ ガクモンの字宙」 ( 分担執筆 ) 、「絵を書く」 ( 分担執筆、水声社 ) 、「西洋近代の都市と芸術 2 円世紀の首都」 ( 分担執筆、竹林舎 ) 、「十九世紀フランス文学を学ぶ人のために」 ( 分担執筆、世界思想 秋山弘子 ( あきやまひろこ ) 東京大学高齢社会総合研究機構特任教授、科学技術振興機構社会技術研究開発センター「コミュニティで 創る新しい高齢社会のデザイン」研究開発領域総括 ( 平成一三、二七年度 ) 、ジェロントロジー ( 老年 学 ) 。・「高齢社会のアクションリサーチーー新たなコミュニティ創りをめざして」 ( 共編著 ) 、・一新老年学 第三版」 ( 編集代表 ) 。 小宮山宏 ( こみやまひろし ) 三菱総合研究所理事長、プラチナ構想ネットワーク会長、第二八代東京大学総長、化学システムエ学、地 球環境工学、知識の構造化。一九四四年生れ。「プラチナ社会への道筋 み多様なナンパーワン。作り」 ( 財界研究所 ) 、「日本「再創造」 「プラチナ社会」の実現に向けて」 ( 東洋経済新報社 ) 。 増田寬也 ( ますだひろや ) 日本創成会議座長、東京大学公共政策大学院客員教授。一九五一年生れ。「東京消滅ーー介護破綻と地方 移住」 ( 編著、中公新書 ) 、「地方消滅ーー東京一極集中が招く人口急減」 ( 編著、中公新書 ) 。 森雅志 ( もりまさし ) 富山市長。一九五二年生れ。「森のひとりごと」、「こんども森のひとりごと」、「森のよた話ーー森雅志講 演録」、「やつばり森のひとりごと」 ( 北日本新聞社 ) 。 池上俊一 ( いけがみしゅんいち ) 東京大学大学院総合文化研究科教授、西洋中世史。一九五六年生れ。「ロマネスク世界論一 ( 名古屋大学出 版会 ) 、「お菓子でたどるフランス史」 ( 岩波ジュニア新書 ) 、・「ヨーロッパ中近世の兄弟会」 ( 共編 ) 。 清水あっし ( しみすあっし ) 公益財団法人東京大学新聞社常務理事三 0 一三年より ) 。一九五七年生れ。一九八一年東京大学工学部 都市工学科卒業。 大元鈴子 ( おおもとれいこ ) 宮崎大学産学・地域連携センター講師。一九七九年生れ。・「国際資源管理認証ーーエコラベルがつなぐグ ローパルとローカル」 ( 共編 ) 。 須藤靖 ( すとうやすし ) 東京大学大学院理学系研究科教授、字宙論・太陽系外惑星。一九五八年生れ。「字宙人の見る地球」 ( 毎日 新聞出版 ) 、「三日月とクロワッサン・・ー宇宙物理学者の天文学的人生論」 ( 毎日新聞出版 ) 、「一般相対論 入門」 ( 日本評論社 ) 、・「解析力学・量子論」、・「人生一般ニ相対論」。 宮島喬 ( みやじまたかし ) お茶の水女子大学名誉教授、社会学。一九四〇年生れ。「多文化であることとは」 ( 岩波書店 ) 、・一外国人 の子どもの教育」、「現代ヨーロッパと移民問題の原点」 ( 明石書店 ) 。 木下直之 ( きのしたなおゆき ) 東京大学大学院人文社会系研究科教授、文化資源学。一九五四年生れ。・「講座日本美術史」全六巻 ( 共 編 ) 、「わたしの城下町」 ( 筑摩書房 ) 、「股間若衆」 ( 新潮社 ) 。 田中純 ( たなかじゅん ) 東京大学大学院総合文化研究科教授、表象文化論。一九六〇年生れ。・「都市の詩学ーー場所の記憶と徴 候」、・「政治の美学ーー権力と表象」、「イメージの自然史。ー・天使から貝殻まで」 ( 羽鳥書店 ) 。「過去に融 れる丨ー歴史経験・写真・サスペンス」 ( 羽鳥書店 ) 。 久保文明 ( くばふみあき ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授、現代アメリカ政治。一九五六年生れ。・「現代アメリカ政治と公共 利益ーー環境保護をめぐる政治過程」・「ニューディールとアメリカ民主政ーー・農業政策をめぐる政治過 佐藤康宏 ( さと、つやすひろ ) 東京大学大学院人文社会系研究科教授、日本美術史。一九五五年生れ。「湯女図一 ( 平凡社 ) 、「歌麿と写 楽」 ( 至文堂 ) 、・一講座日本美術史」全六巻 ( 共編 ) 、「伊藤若冲」 ( 東京美術 ) 、「改訂版日本美術史」 ( 放送大学教育振興会 ) 。 山口晃 ( やまぐちあきら ) 画家。一九六九年生れ。・「山口晃作品集」、・「山口晃が描く東京風景・・ー本郷東大界隈」、「す・、しろ日記」 ( 羽鳥書店 ) 、「す・、しろ日記弐」 ( 羽鳥書店 ) 、「山口晃大画面作品集」 ( 青幻舎 ) 、「ヘンな日本美術史」 ( 祥伝社 ) 。 第四五巻第九号 ( 通巻五二七号 ) 二〇一六年九月五日発行 定価 ( 本体価格一〇〇円 + 税 ) ト・・ . 、 ~ > 代表者ーーーーーー古田元夫 Z 発行 般財団法人東京大学出版会 〒一五三ー〇〇四一 東京都目黒区駒場四ー五ー一一九 電話ーーーーーーーー、・・〇一一一ー亠ハ四〇七ー一〇亠ハ九 ファックスーーー〇三ー六四〇七ー一九九一 印刷・製本ーー大日本法令印刷株式会社 0 UNIVERSITY OF TOKYO PRESS 2016 ー 0 乍 0 冖次号予告〕 学問の図像とかたち寺田寅彦 / 漢文ノ ート齋藤希史 / たまには物理カンター ビレ菊太田浩一 / 書評中島隆博 / 日 本美術史不案内囲佐藤康宏 / すゞしろ日 記第回山口晃

10. UP 2016年9月号

学問の図像とかたち鬲イラストから読む教科書田力「卞厨一房に人 , らす - 寺田寅彦 【座談会】活気ある高齢社会をめざして秋山弘子・小宮山宏・増田寛也・森雅志 〔歴史学の作法〕感盾史の可能性池上俊一 〔初期『帝大新聞」の研究ー「創刊資金の謎」〕 6 札幌で「東龍太郎日記」を発見、そこに書かれていたのは清水あっし シーフードのエコ一フベル持続可能なエビとカキ大元鈴子 かに星雲と『明月記』の出会い注文の多い雑文その三十五須藤靖 〔「イスラーム問題」の構築と移民社会ーーニ〇一五年バリ危機からその後へ〕 2 争占 ~ の構筑木 A 」移民たち一の・不宀女宮島喬 〔動物園巡礼〕第 + 六番の一サルかいる、サルかいた披露山公園・諏訪山公園・打出公園木下直之 ノラタクシス ( 3 ) マックス・エルンスト《主の寝室》の「皮膚」につ、 〔イメージの記憶モンタージュ一 / 。、 〔書評〕アメリカにおける中国観の変遷久保文明 〔日本美術史不案内洞の中の魍魎佐藤康宏 す気、しろ日コ心第回山口晃 執筆者紹介 学術出版 第四五巻第九号 ( 通巻五ニ七号 ) ニ 0 一六年九月五日発行 ( 毎月五日発行 ) 定価 ( 本体価格一〇 0 円十税 ) ( - 年分一〇 0 〇円送料・税共 ) フ′ ・ Numbe 「 527 、 Septembe 「 2 三 6 簡レサイ第ル本 斤 4008 子 出 版