問題 - みる会図書館


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1. UP 2016年9月号

今月の新刊 ガバナンスをめぐる議論には、現代の世界および日本がかかえる課題が凝縮している。 東京大学社会科学研究所 東京大学社会科学研究所による 5 年に渡るプロジェクトの成果本。本巻では社会科学の 大沢百理おおさわまり ( 東京大学社会科学研究所教授 ) 一粡諸分野におけるディシプリンに立ち戻り、理論的系譜から現代的課題を突き詰めゑ 【全 2 巻】 佐藤山石夫さとういわお ( 東京大学社会科学研究所教授 ) 〈主要目次〉 刊行にあたって序論ガバナンスを問い直すーーなにが問題か ( 大沢真理 ) 第—部ガバナンスとは何か第 1 章政治思想史におけるガバナンス ( 字野重 規 ) / 第 2 章経済ガバナンスの目的と手段 ( 加藤晋 ) / 第 3 章ガバナン ス・アプローチと研究 ( 平島健司 ) 第Ⅱ部なぜガバナンスか第 4 章企 ガバナンスを間い直す— 業統治と法制度の役割ーー会社法制を中心に ( 田中亘 ) / 第 5 章歴史の中 越境する理論のゆくえ のガバナンス ( 五百旗頭薫・字野重規 ) / 第 6 章参加と協働に潜む葛藤ーー 地域における福祉ガバナンス ( 朴姫淑 ) 第Ⅲ部ガバナンスで捉える第 7 章 「再生産」とガバナンスーー、政治社会学から ( 武田宏子 ) / 第 8 章世代間問題 <IO 判・一一七ニ頁 / 定価 ( 本体四〇〇〇円 + 税 ) とガバナンス ( 佐々木弾 ) / 第 9 章ガバナンス ( 論 ) における正統性問題 一 s B N 978 ー 4 ー一 3 ー 030207 ー 4 ( 藤谷武史 ) あとがき ( 佐藤岩夫 ) 東京大学社会科学研究所大沢真理・佐藤岩夫編本巻では市場と社会の変容がもたらした現代行政国家・福祉国家の改革から、「ニ、ー ガバナンス論」の脱構築を模索する。 〈主要目次〉 第—部家族・生活・地域第 1 章家計生産のガバナンスと社会の均衡・ーー「家 事分担に関する妻の選好」を例に ( 不破麻紀子 ) / 第 2 章日本における女性 就業の地域差 ( 安部由起子 ) / 第 3 章多極化する都市空間のガバナンス 境界を開く法の役割 ( 高村学人 ) / 第 4 章災害と民主主義・多様性ーーリス ガバナンスを間い直すⅡ ク・ガバナンスの 3 次元理論に向けて ( スティール若希 ) 第Ⅱ部企業・市場 市場・社会の変容と改革政治 第 5 章株主価値最大化がもたらすものーー労使関係論から ( 南雲智映・中村 圭介 ) / 第 6 章経済政策のガバナンスとはーー、構造改革は事態を悪化させた ( 大瀧雅之 ) 第Ⅲ部改革政治第 7 章イギリスにおける政権交代と福祉ガハ ナンスの変容 ( 今井貴子 ) / 第 8 章消費税増税と日本のガバナンス ( グレゴ 丿ー・・ノープル ) / 第 9 章「政治司法化」とガバナンス ( 佐藤岩夫 ) 総括 <LO 判・一一八八頁 / 定価 ( 本体四ニ〇〇円十税 ) 一 SBN978 ー 4 ー一 3 占 30208 ー一本プロジェクトの意義と拓かれた課題 ( 大沢真理・佐藤 ) あとがき ( 大沢 ) 【全 2 巻】

2. UP 2016年9月号

だと思うが、本会も含め、各出版社プースでの書過去長きにわたり、お互いがおかれている状況 籍の割引販売等、実質的に「読者謝恩」としてのに大きな違いがあり、セミナーではそれぞれの大 東京国際ブックフェアと日韓 要素が年々強くなっていた。「読者謝恩」はもち学出版についての考え方、現状を報告する意味合 ろん大切で、プースに足を運ぶ読者の方々の反応いが強かったが、ここ数年は非常に近い問題意識 大学出版部協会合同セ、くナー を見ていると、勇気づけられ、さらなる努力をおのもと、実質的な議論がなされる素地が整った。 例年、七月の第一週に開催されていた東京国際約束する気持ちになる。だがやはり、もう一歩開今回の主題にもそれが表れている。 あるイベントで韓国文学の翻訳者の方が、日韓 ブックフェア ( 於〕東京ビッグサイト ) が、今年かれたブックフェアを目指したい。 日本と韓国の大学出版部協会は、これまで三〇では多くの情報、空気感を共有しながら違う言語 から「読者謝恩」を前面に打ち出し、九月一一三日 ( 金 ) 、・二五日 ( 日 ) に会期を移して開催される。年以上、一年ごとにお互いの国を行き来して合同で思考しているとおっしやっていたが、そのなか で大学出版を語り合う意味は大きい。今回、セミ 「国際ブックフェア」と銘打っている以上、版権セミナーを行ってきた。今年は日本開催の番で、 取引等のビジネス的要素があり、加えて出版の現そのセミナーをブックフェアと連動して九月二三ナーは初めて一般公開で行われ、またフェア会場 状、将来への展望を書籍や出版関係者のイベント日 ( 金 ) の午後、東京ビッグサイト会議棟で行内の大学出版部協会プースでは韓国側の書籍も展 示される。ぜひ足をお運びいただきたい。 等で内外に示していく、というのが本来的な役割う。主題は「大学出版部の編集を考える」。 雑誌出版社が参加していなかったこともあって、書出版社にとって専門書店は、電子、冊子を問わ とりたてて意見も出ないまま散会となったが、直ずコンテンツ販売のための重要なインフラなの インフ一フ 後にネットで意見が交わされた。「マガジンは 雑誌ビジネスを破壊する」としてその書店人の発書店の減少、取次の経営不振など本を売る環境 言に共感を示すもの、あるいは「読者に歓迎されはますます悪くなっている。出版社にとってはこ 「マガジンによって雑誌の売上は激減してい る。このままでは町の書店の経営は立ち行かなくるサービスを業界が拒絶すべきではない」というれまで享受してきた書籍や雑誌の流通ルートが当 たり前ではなくなりつつある。では、将来にわた 批判的なものまで、様々と。 なる。出版社はこのことをどう考えるのか」。 6 月にサービスインした医学専門書籍・雑誌のってどのような販売インフラを構想するか。これ 出版業界関係者による勉強会での一場面、ある 書店人からの指摘である。マガジンとは電子配信サービス、医書ジェーピーは売上の一部は、生産者である出版社が自ら選択するしかな ドコモが始めた雑誌読み放題サービスのこと。僅を書店に還流する仕組みをつくり上げた。書店がい か雑誌一冊程度の料金を毎月払えば、百数十誌の電子書籍の販売代理店の役割を担うのである。戦その意味で勉強会での書店人の発言は、とても 最新号がネットで読み放題となる。読者にとって前より専門書店と密な協力関係を築いてきた医書重く響いた。 はありがたいサービスかもしれない。勉強会には出版社ならではのビジネスモデルといえよう。医 学術出版 ヾ、」 0 71 学術出版

3. UP 2016年9月号

んで、遊ぶという機会がたくさんできているが、突破口になるヒントがこういう場からもやはりアクテイプシニアだと思います。 と思いました。そうすると高齢者だけではな芽生えてくると思いますが、いかかでしよう ただ、アクテイプシニアを入れるというの くて、多世代の関係も変ってきます。それがか は難しいんですね。権限を持たせるとよくな 素晴らしいところで、訪ねるたびにまちが活小宮山やはり私は仕事づくりが重要だと思い人がけっこういるわけですよ ( 笑 ) 。です 性化していると感じます。そ、ついうまちづく います。その意味で前川製作所を一つの例とから、さっきの前川製作所では、六五歳で定 りのノウハウをどんな形で他のまちに移管でして挙げましたが、いまの森さんの話では農年になっている。だけど少しはお金をもらっ きるか、これは大きな課題であると思いま業ですね。他にもいろんなジャンルがあるけて、年金プラスアルフアでいる。そういう人 す。 れども、仕事として入りやすいのは学校だとがよい人だと上手い関係が生まれる。学校も 思います。いま学校ではいじめだ、英語をや同じだと思うんですね。現役の邪魔をするど アクティブシニアの働き方 れ、を教えろと先生たちは大変です。二 ころか、サポータ 1 として関係する。その仕 秋山そのように高齢者がどんどん外に出て二歳で大学を卒業してそのまま先生になった事ができれば、若い人が力を発揮できる。そ こられると、先ほど小宮山先生がおっしやつ人たちだけでは、学校はもはや成り立たないもそも高齢者だけの社会というのはありえな たように、「ああしたらいい」「こうしたらいかもしれない。そして学校の最大の問題は、 いから当然です。 い」と様々なアイディアを示してくれる。新大人の多様な経験というのが入っていないこ考え方を変えないといけない。図 2 も二〇 しい価値の創造というと大きな話になりますとです。そこをどうやって補うかというと、 5 六四歳が高齢者を支えるというのはおかし や <LO 判頁本体四五〇〇円十税 判饗本体三〇 8 円 + 税井堀利宏・小西秀樹著 公共選択学会編 2 ル 政治経済学政寸の一丁動アベノミクス 」社公共選択号 特集国の政治と地方の政治《ニ〇一六年》 本書は、アベノミクスに代表される最近の日本政府の経済・財政運営や金融政 「ルチレベルの政治競争アリーナにおける議員と政党建林正彦策などの行動について、その理論的整合性や政治的制約要因を政治経済学の視点刊 世代別政治力が自治体による教育の公的助成に与える影響田中宏樹から理論的に分析する。わが国も含め、先進諸国政府が直面する経済政策や財政 世代投票率が財政赤字に与える影響新倉純樹 金融運営の諸課題を理論的な枠組みで検証し、その問題点を抽出する。 木 生活保護行政と自殺関智弘 9 活気ある高齢社会をめざして

4. UP 2016年9月号

不 の 民 移 構 の 点 争 へ 後 の い。その証拠に数日を経ずして「私はシャルリ」の言葉は消え そ 「私はシャルリ」に唱和した者、しなかった者 去り、「シャルリとは何者か」「過度の同化ではないか」という 『シャルリ・ エブド』新聞社襲撃と人質の殺害があって直後、議論もメディアに登場する。容疑者を外なる敵手とみ、ク国難ク危 ツィッターの呼びかけで「私はシャルリ」の語を一斉にリズミのごとく表象し、愛国心を沸騰させるという単純さに与せず、 年 五 カルに連呼するデモの奔流が生まれた。何であれ多大の犠牲者フランスの内なる問題でもあるのではないか、預言者の風刺画 を出した者に連帯を表明するのは自然のことだが、不 ムは、これ掲載は可だったのか、多民族性への配慮はあったか、など成熟 ユナニミテ は限られた瞬間の「全員一致」であろうと感じた。 した問いを発するフランスという側面も看取された。 会 ここでは『シャルリ・ また、その報道に定評のある『ル・モンド』が「フランスの エブド』紙自体に言及する紙福はない 民 移 9 ・Ⅱ」という大見出しで事件を報じ、場所によりラ・マルセが、一言。より有名な『ル・カナル・アンシエネ ( 鎖につなが 築 構 イエーズが高唱されたのには、正直のところ驚いた。 9 ・Ⅱのれたアヒル ) 』とともに、「風刺紙」 (journal satirique) のジャン の 題 ・プラ アメリカと違い、フランス共和国が標的とされたわけではない ルをなし、反権力で、「シャルリ」は表向きチャー のに、なぜ「国民的想像力」 (n ・アンダーソン ) に訴えなけれウンから借りつつ、シャルル・ドゴールのあてこすりといわム ばならないのか。それをすれば、この事実上の多文化の国ではれ、イラスト風刺によって筋を通す新聞だった。かって国民戦ス 排除される者が生まれる。 線が移民排斥の言辞を振りまくようになるや、鋭く批判を向け 非移民のフランス人にもこれに唱和しなかった者が少なくなたのが同紙だったが、それがなぜマイノリティ宗教の預言者の 「イスラーム問題」の構築と移民社会ーー一一〇一五年バリ危機からその後へ 2 争点の構築と移民たちの不安 宮島喬

5. UP 2016年9月号

時間軸、地域の単位、地元の資源 増田私が持ってきた資料 ( 図 3 ) は、二〇 一五年から一一〇一一五年までに後期高齢者が主 に東京圏でどれだけ増えるかを示していま す。推計ですが、この数字の意味は何か。全 国の後期高齢者の増加が五三三万人のとこ ろ、東京圏では一七五万三〇〇〇人で、だい 齢者というわけです。高齢者の健康を見るとたい三分の一を占めている。伸び率をご覧い くために、一つは多くの地方の自治体がその 若返っているそうなので、元気のほうもかなただくと、東京は母数が大きいので、三四・発火点にならなくてはならないと思います。 り保証されています。 三 % となっていますが、じつは神奈川・埼もう一つは、大学がこういう問題を提起して これからの時代は価値観の変化までを考え玉・千葉は五〇 % くらい伸びる ( 一二五万いかなくてはいけない。民間や社会福祉法人 ながら、ビジネスを行うのでも構いません。人 ) 。この伸びのスピードですね。二〇二五などは荒ただしい現場なので、かえって問題 そのためには、高齢者の参画が不可欠であ年なので、もう一〇年ないのです。 を提起することが難しいと思われます。 り、こういう視点で自治体も施策を打って出私も森市長も行政を歩いてきたのですが、 ちなみに、東京ではこの問題の解決が大変 るべきではないかと思っています。 例えば、行政でまちづくりを議論すると、日に難しい。だからこそ東京圏の高齢化の危機 秋山高齢者の社会参加の重要性は長年唱ら本の場合はいろいろな手続きなどがあって、が言われるのですが、逆に言うと、それ以外 れてきましたが、 多くの場合は健康によいと最初のスタートからゴールまでに、どうしての地域はずっと前からこういう問題に直面し か、コミュニティの支援になるという側面がも時間がかかるわけです。これだけの急激なていて、都市のコンパクト化などに長く関わ 強調されてきました。それだけでなく、社会変化、 つまり五〇 % を超える後期高齢者の伸ってきた自治体もあります。あるいは高齢者 にとって高齢者の貢献は不可欠だということび率のなか、一〇年で話をまとめるというのの人口さえ減少気味の自治体も出てきてい ですね。今日の大きな転換期において、新しは、ものすごく困難に感じます。 る。ですから、すでに多くの経験値がある自 い価値を創造する担い手として、高齢者を位 したがって、こういう高齢化に対してさま治体を参考にして、そこに何かを加えると自 置づけるご提案をいただきました。 ざまな問題を提起して、その解決を図ってい治体ごとでいろんな解決に向かっていけるの 増田寛也氏 森雅志氏 活気ある高齢社会をめざして 4

6. UP 2016年9月号

女性徒がスカーフ ( ヒジャープ ) を着けて登校、校長から授業あり、聖職者が公教育の教壇に立ってはならないこと、そして 参加が認められないと通告され、生徒たちは応じず、保護者も宗教教育の禁止を意味した。とすれば、ライシテとは主に学校安 側、教える側の守るべき原則のはずであり、生徒に義務を課すの 交えて学校側との話し合いが続く。やがてメディアが報道し、 るものではない。 国民教育相の見解が問われるなど、政治的争点化されていく。 民 移 校長がスカーフ不可の理由に挙げたのは「公教育における非宗しかるにくだんの中学校長は、生徒たちに同原則の順守を求 築 構 教性 ( ライシテ ) ーの原則だった。 めた。仮に教員のなかにスカーフを着け教壇に立つ者があれば の 点 たまたま私はフランスに滞在中で、周りの反応をよく覚えてシリアスな論議を生じるだろうが、フランスではそのケースは 争 いる。それまで各地でスカーフでの登校があって何も言われななく、その十数年後に隣国ドイツにそれに近い出来事が起こる かったのに、なぜ急に差し止めかという市民の疑問、「ライシ ( フレシュタ・ルディン事件 ) 。ライシテの原則をもたないこの国後 そ テ」を持ち出すのは大袈裟で筋ちがいではないか、という研究では、州当局が対応に戸惑った ()e 、 s eg ミ . 40 、、 2003 ) 。 、り 者仲間の声が印象に残っている。「ライシテ」 (laicité) とは、 「スカーフ問題、への国の裁定としてコンセイユ・デタの示爾 危 政治と宗教の分離、すなわち公生活の諸活動 ( 政治、行政、公した見解は大要、次のようなものである。公役務である公立学 教育など ) は特定宗教の影響を排して行われねばならないとす校の教員およびカリキュラムは宗教的中立が求められるが、生 るもので、フランス革命の事実上の主導原理の一つである。特徒たちは信仰の自由をもち、学校内でもそれを表明する権利が に第三共和政の下で、王制支持のカトリック教権 ( その最終審あり、したがって宗教宣伝とならず、学校運営に支障を及ほさ 級はローマ教皇 ) に対抗して共和政を防衛するため押し出されないかぎり、宗教表徴を身に着けてもライシテに反しない ライシザシオン た世俗化政策の根本原則として知られ、ジュール・フェリーや 政治的ライシテ論へ エミール・コンプの名と結びついている。 だから歴史的にみれば、ライシテはカトリックという教会権これは、ライシテの原点にもどった妥当な見解といえよう。 しかしその後、ライシテ論はこの解釈を踏み越え、政治化さ 力に抗するための原測だった。それがなぜ西欧内ではマイノリ ・Ⅱ」事件で幕開けする今世紀には、イラク戦争、 ティ宗教で、かっカトリックのような組織された教会構造をもれる。「 9 たないイスラームに対置されるのかという疑問があった。ま地下鉄爆破テロなどがあり、それらと無関係ではなかろう、二 アンティクレリカリ た、ライシテの核心をなす原理は、「反・聖職者至上主義」で〇〇四年シラク政権の下で、公立学校で生徒が宗教的所属をこ スム [ 「イスラーム問題」の構築と移民社会一一

7. UP 2016年9月号

この問題を、他のメデイウムによる作品の分析を通して、異 前回の議論を踏まえて言えば、テオ・アンゲロプロスの映画 なる角度からとらえ直してみたい。具体的にはマックス・エル 作品における「空舞台」 ( 大島渚 ) には、「みれん」と「希望」、 ンストの初期作品《主の寝室》 ( 一九二〇年 ) である〔図 1 〕。 過去の「余韻」と「痕跡」や未来の「予感」と「徴候」が漂っ この作品をはじめとするエルンストのいわゆる「コラージュ」 ている。ワンショットⅡワンシークエンスによって同一の場に 複数の歴史的出来事が重ね合わされるとき、そこに介在するがシュルレアリストたちに与えた衝撃については、アンドレ・ ーンこそが、現前しプルトンのこんな証言があるーー「事実、シュルレアリスムは 「死んだ時間」、「死の空間」、オフ・スクリ 、ただちに ない気配としての異なる時間性、そしてそれに呼応したみれん一九二〇年の〔エルンストの〕コラージュのなかに 利点を見いだしたのである。そこにはまったく未開拓の、だが や希望という情感を喚起するのである。 この「空舞台」が失われるとき、編集 ( モンタージュ ) の詩においてロートレアモンやランポーが欲していたものに対応 「作業台」のようなものとして、諸要素の配置される抽象的なするような、視覚の編成についてのひとつの命題があらわされ ていた、 ( 「シュルレアリスム芸術の発生と展望」、一九四一年、巌 場こそがすべてを支える基底であるかのように見えてしまう。 アンゲロプロスの反モンタージュ的な「リアリズム」とは、こ谷國士訳、アンドレ・プルトン『シュルレアリスムと絵画」、瀧ロ修 フルトンか の抽象的な作業台に抗して、空舞台の死んだ時間と死の空間を造・巌谷國士監修、人文書院、一九九七年、八八頁 ) 。。 「もの ( 「 e 巴 , として露呈させるところにこそある。だが、「作「かって味わったことのない性質の感動。を覚えたと回想する この出会いを、米国の美術評論家ロザリンド・クラウスは「シ 業台」と「空舞台」とを分かつものとはいったい何なのか ノラタクシス ( 3 ) モンタージュ / 。、 マックス・エルンスト《主の寝室》の「皮膚」について 田中純 55 [ イメージの記憶 ] 45 モンタージュ / パラタクシス ( 3 )

8. UP 2016年9月号

ムスリム移民も巻き込む勢いである。テロ再発防止の絶対目的じめ多くの有力党員、議員が反対を鮮明にした。これは一般の の下、捜査方針は徹底してムスリム系の市民、住民の監視に置移民にも不安を与える。フランスに生まれ、育ち、「フランス不 かれたため、彼らの不安、怒りがつのる一方で、それ以外の市人」だと自ら意識してきた者も、結局、マジョリティフランス 民 民、住民は「自分たちには関係ない」として、非常事態宣言下人とは区別され、国籍取り上げもありうる「移民にすぎない 移 築 でも、変わらず日常の生活を楽しみ、無関心をきめこむというとされるのではないか、と。それは国民の分断という意味合い 構 の 分裂世界も生まれた。 も帯びてくる 点 争 もう一つ、移民が不安に感じたのは、シャルリ事件後から政法案は、対象を重国籍者でないフランス人にも広げるかたち 府内で検討されてきたある措置である。それは、国民の生命にで諮られ、通過し、「すべての人は国籍をもっ権利を有する」 へ 深刻な危害を及ばすような犯罪実行者には、フランス国籍の剥とうたう世界人権宣言第一五条やヨーロッパ国籍条約に違反すの 奪をもって臨むというものである。移民第二世代の多くは、生るとの批判にさらされ、かっ、思わぬ結果を呼ぶ。重国籍者に 地主義国籍法によりフランス国籍をもっ二重国籍者となるが、対象を限るべきとする上院 ( 元老院 ) の議決と食い違い、結危 その仏国籍を奪うのである。言葉を選び、「失効」を意味する局、「両院不一致」で、法律としては無効になった。今後この 年 五 déchéance という語を使うが、かってヴィシー政府がユダヤ系問題がどう扱われるのか。 国民に対し行った「国籍剥奪」を連想する者もいる。 「スカーフ問題」という構築 それがヴァルス首相率いる社会党政府の手で進められること 会 に、党内から反発が起こった。九〇年代初め、保守の攻勢によ ここで時間をやや遡る。四半世紀来連綿と続いてきた「イス 民 移 り国籍法見直しの論議が起こり、フランスに出生する外国人子ラーム問題」の構築とは一体何だったかを考える必要がある 弟への自動的な国籍付与を改め、「意志の表示」を要件とするその意味で、一九八九年秋は振り返っておくに値する。いわゆ構 題 制度に代わった。ごか、 オ、第二世代はフランスの完全な定住者でる「スカーフ」に「ライシテ」をもって対し、イスラームをフ ム ( 、冫しかたいものとして示そうとし 帰るべき祖国をもたない以上、成員として統合しなければならランス共和国の価値・規範こ忝、 ない。数年後、社会党政府が自動的付与に戻すという再改正たのは、一種疑似争点化ではないかとかねて私は考えてきた ス ( ギグー法 ) を行い今日にいたった経緯がある。その思いがあ ( 宮島『移民社会フランスの危機』岩波書店 ) 。 ればこそ、マルティーヌ・オプリ ( リール市長、元雇用相 ) をは ことの発端は、一九八九年九月、パリ郊外の一公立中学校に

9. UP 2016年9月号

今月の新刊 現代日本の「見えないレイシズム」に迫る 竹沢泰子たけざわやすこ ( 京都大学人文科学研究所教授 ) 編集代表 ・、わーレ↓ : : っへ ー良ロ・平 ( 武蔵大学人文学部教授 ) 竹沢泰子 人種神話を解体する 3 「血」の政治学を越えて ・内容見本呈 <LO 判・平均三八六頁 / 各巻定価 ( 本体四八〇〇 5 五〇〇〇円十税 ) 人種神話を解体する全 3 巻刊行開始 ・血や QZ< の差異に基づいた「人種」の実像を掘り下げ、 ①可視性と不可視性のはざまで 定 特その構築過程を解明 予 斉藤綾子・竹沢泰子編 ( 川月刊 ) の・映画や文学の被差別イメージから、ゲノム研究や医薬品行 刊科学と社会の知 一政策に現れる「人種」問題まで幅広く論じる 坂野徹・竹沢泰子編 ( Ⅱ月完結 ) ・アイヌ、沖縄、在日外国人、「ハーフ」の人びとの語りを成 シ 紡ぎ、いまここに生起する課題として向き合う 問「血」の政治学を越えて Ⅱ島浩平・竹沢泰子編 ( 9 月刊 ) 複数のルーツをもつ人びとは称揚と差別のもと「何者」として社会に位置づけられる のか。また彼らは当事者としてどのような葛藤・交渉を経ながら自らの生き方を模索 しているのか。アイヌ、沖縄、在日外国人、「ハーフ」の歴史と現在に迫る。 〈主要目次〉 序 ( 竹沢泰子 ) 第—部表象と帝国・占領・植民地主義「ハーフ」をめぐる言 説 ( 岡村兵衛 ) / 一九三〇年代の映画が描いた「混血児」とその「母」 ( 高美 哿 ) / 日本における「混血児」のディスクール ( 成田龍一 ) / 人種化される 欲望 ( 菅野優香 ) 第Ⅱ部「混血」「ミックス」から歴史を読み直す植民地統治 下の「混血」 ( 水谷智 ) / 黒人アスリートの人種意識 ( 川島浩平 ) / 日系ア メリカ人とミックスレイスの歴史、一八六八ー一九三〇年 ( ・ウィリアム ート・ジャパニ 1 ズ」アーティス ス ) 第Ⅲ部自分らしい生き方を求めて「パ トのアイデンティティ ( 竹沢 ) / 在日朝鮮人Ⅱ日本人間「ダブル」の民族経 <o 判・三四四頁 / 定価 ( 本体五〇〇〇円 + 税 ) 験 ( 李洪章 ) / 差異の交渉とアイデンティティの構築 ( 工藤正子 ) / 沖縄の 一 SBN978 ー 4 ー 1 3 ー 054143 ー 5 ミックスレイスとその曖昧なはざま (> ・ウェハラ・カータ 1 ) 編

10. UP 2016年9月号

中国に対する態度は、政党によっても違いがあるが、民主ただし、近年、このようなアメリカ政治における勢力配置図 党・共和党それぞれの中に異なった集団が存在していて、政党には変化が起きている。一つは、経済界が以前と比較するとか遷 の境界を越えて錯綜している。 なりの程度、中国市場に冷ややかな態度を取り始めている。労の たとえば、民主党内では、労働組合が中国について、とくに 働コストの上昇に加え、サイバー攻撃により企業秘密が盗み取国 中 る 通商・為替問題などを重視して厳しい態度をとる。環境保護団られる例が増えていること、知的所有権が十分に保護されない 体や人権団体も中国に批判的である。また、外交・安全保障問こと、外国企業より中国企業が優遇され内外無差別原則が尊重川 カ 題の専門家には、中国に強硬な態度をとる者も少なくない。そされないこと、恣意的に様々な規則か変更されることなどにも れに対して、ビル・クリントン元大統領に代表される穏健派よる。多くのアメリカ企業にとって、中国市場は以前ほど魅力刈 ア 的でなくなっている。 は、中国との通商の拡大を含む協力関係の維持を支持する。 共和党の外交・安全保障専門家では、リアリストといわれる第二に、外交・安全保障の専門家は、どちらの政党に所属し ニクソンⅱキッシンジャーの流れをくむ人々は比較的中国とていようと、一様に以前より中国に批判的になっている。これ評 の協力に前向きであるが、保守強硬派とでも呼ぶべき力の外交はとくに近年の南シナ海での中国の行動が原因である。 の提唱者、あるいは新保守主義者 ( ネオコン ) は中国に対して これに対して、かってより中国に好意的になっている集団は 非常に厳しい態度をとる。宗教保守勢力も同様である。それに ほとんど存在しないであろう。 対して、党内でもっとも中国に好意的なのは、経済界、とくに このような大きな見取り図の変化という文脈で見ると、ここ 中国ビジネスで利益を得ている企業経営者たちである。 で扱った二つの書は、どちらもアメリカ政治、あるいは知的潮 世論調査で見られる対中国観では、共和党支持者の方が民主流の変化とほば符合するものである。 党支持者より厳しい傾向があるが、政権の性格などによって、 ただし、米中政府間には、北朝鮮問題の解決、イラン核開発 必ずしも共和党政権が強硬な対中政策を採用するとは限らな阻止、国連常任理事国としてのさまざまな取引など、広範にわ 、 0 野党・議会は、与党・政権より中国に厳しい立場を打ち出たる協力関係などがある。とくに現オバマ政権と民主党にとっ す傾向も存在する。ここにマンの議論を加えれば、大学やシンては、地球温暖化での米中協力はきわめて重要なものと位置づ クタンクの中国研究者の多数も、かなりの程度親中派であるとけられている。 い、つ一」とに学はろ、つ マンの著書は、アメリカの中国理解に埋め込まれた親中的見