1 cm 1 cm 液 溶 解図 電解質 1m01 が入っている 図 10 ー 2 う記号で表す . 伝導度は , 電極の面積 ( ) に比例し電極間距離 ( / ) に反比例するから , G とんの間に は次の関係がある . ( 10.3 ) 10.2.3 モル伝導率 上で定義した伝導率は , 溶液中に含まれる単位体積あたりのイオンの個数によって , い換えると電解質溶液の濃度によって違ってくる . いろいろな電解質について , その溶液 の電気伝導性を比較しようとする場合 , 同じ濃度での伝導率を比べないと意味がない . そ こで , 1 cm 離れた 1 cm2 の電極の間に電解質 1 モルが含まれているとき ( 濃度にすると 1 m01 cm-3) の伝導率を考え ( 図 10 ー 2 ) , これをモル伝導率 (molar conductivity) と呼び , 記号 m で表す . この濃度は , あくまで仮想的な濃度であり , 現実にはこんなに高い濃度 の溶液はっくれない . 実際には , もっと薄い濃度で伝導率を求め , それをここで定義した 単位濃度あたりに換算する . んと m は , 次のように関係づけられる . モル濃度が C ( m01 dm-3) の溶液の伝導率がんのとき , モル伝導率は llm 1000 ん C / 1000 ( 10.4 ) で与えられる . 10.2.4 当量伝導率 モル伝導率は , 種々の電解質溶液の電気伝導性を比較するのに都合のよい量ではある が , ここにもう 1 つ具合の悪いことが起こってくる . それは , モル伝導率はモル濃度を基 準にしており , 個々のイオンの価数の違いが考慮されていないことである . たとえば , 同 じモル濃度の溶液でも , NaCl と CaC しでは単位体積中のイオンの個数は異なる . そこで , モル濃度のかわりに , 当量濃度を基準にとれば都合がよい . すなわち , 1cm3 中に 1 当量 (equivalent) の電解質を含む溶液の伝導率を定義し , 当量伝導率 (equivalent conductiv- 219 い 0.2 伝導度と伝導率
ity) と呼び , 記号で表す . 電解質の当量とは , Avogadro 数個の単位正負電荷対のこと で , たとえば , NaCI の 1 モルは 1 eq. と等しく , NaS04 や CuS04 の 1 モルは 2 eq. に相 当し , また Fe2(S04)3 の 1 モルは 6eq. になる . 当量濃度が C * ( eq. dm 3 ) の溶液の伝導 率がんのとき , 当量伝導率は C * / 1000 1000 ん C* ( 10.5 ) で与えられる . 1 価 -1 価型電解質の場合 , 当然 = である . 以上見てきたように , 電 解質溶液の電気伝導性を評価する場合に最も都合のよい量は当量伝導率であるといえる . しかし , イオンの価数の問題を十分頭に置いたうえで , モル伝導率を用いる場合も多い . 10.2.5 伝導率の単位 こで , 伝導率の単位についてまとめておこう . まず , 伝導度の単位を見てみると , 伝 導度 ( G ) は抵抗の逆数だからその単位は Q ー 1 である . この単位をジーメンスと呼び , 記号 S で表す . 伝導率んの単位は S cm-l, モル伝導率 llm の単位は S cm2moI-l, また当量伝導 率の単位は Scm2eq. ー 1 となる . それぞれの定義についての関係 , すなわち式 ( 10.3 ) ~ ( 10.5 ) に基づいて , これらの単位が確かにそうなることを確認してみよ . 10.2.6 伝導率の測定 電解質溶液の電気伝導性を評価する際の基本的な量とな るモル伝導率や当量伝導率はどのようにして知ることがで きるだろうか . これらは仮想的な濃度のもとでの伝導率で あり , 直接測定することはできないが , 適当な濃度の溶液 について伝導率んを測定すれば , あとは単位濃度に換算す ることによって得られる . んは , 図 10 ー 3 に示すような交流 プリッジを用いて測定することができる . 図 10 ー 3 中の D で示した検出器に電流が流れないように可変抵抗 ~ R3 を調節する . このとき , 溶液の抵抗 ( & ) は & = 訳 3 / & で与えられる . & が測定できれば , ( 10 . 6 ) ス Rx の関係があるので , 〃がわかればんを知ることができ 交流 電源 1 セル のプリッジ回路 図 10 ー 3 伝導率測定のため る . / やを実際に測定して正確に求めることは困難であ る . / / は , 個々の伝導率測定用セルごとにある決まった一定の値をもつので , K / / スとおいて , この ICcell をセル定数という . セル定数は , 伝導率が既知の標準試料をその セルに入れて抵抗を測定すれば式 ( 10.6 ) によって求められる . いったんセル定数を決め cell 220 ー第 10 章電解質溶液 イオンの移動と電気伝導
ある溶液の伝導率はそのセルを用いて抵抗を測定することにより ておけば , ICcell として求められる . なお , セル定数を決めるための標準試料としては KCI がよく用いられ る . ( 10.7 ) ⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢ 100 cm3 の溶液中に 0.624 g の CuS04 ・ 5H20 を含む水溶液を , 電気伝導率測定用セ 例題 10.1 ル ( セル定数 1.537Cm ー 1 ) に入れて抵抗を測定したところ , 25 。 C で 5200 であった . この溶液 の当量伝導率を計算せよ . 解 セル定数 ( Kcell ) がわかったセルを用いて x を測定したわけだから , 式 ( 10.7 ) よりんが求 まる . これと溶液の当量濃度から員が得られる . Kcell 1.537 ()m 1 ) = 2.955X10 ー 3 (S cm-l) 520 (Q) この溶液のモル濃度は , CuS04 ・ 5H20 の式量が 249.7 だから , 0.624 (g) 1 = 2.499X10-2 ( m01 dm 3 ) 249.7 ( gmol ー 1 ) 0.100 (dm3) したがって , 当量濃度は 2 (eq. dm 3 ) C* = 4 .998 x 10 ー ー 3 (S cm-l) 2.955 x 10 = 59.1 ( Scm2eq. ー 1 ) 4.998 x 10-2 (eq. dm ー 3 ) / 1000 (cm3 dm-3) C * / 1000 い 0.3 当量伝導率の濃度変化 前節では , 電解質溶液の電気伝導性の表し方について考察した . その結果 , 当量伝導率 が最も都合のよい量であることがわかった . では , 溶液の濃度が変わったとき , この当量 伝導率はどうなるだろうか . ちょっと考えたところ , 当量伝導率にしろモル伝導率にしろ , それらはある濃度で得られた伝導率を単位濃度あたりに換算したものだから , 溶液濃度に は無関係に一定の値になるものと思われるだろ う . しかし , 実際に実験をしてみると , 当量伝 導率は溶液濃度によって変化することがわか る . これは一見奇妙に思える現象であるが , の奇妙さの中からわれわれは電解質溶液中で起 こっていることがらについて知ることができ る . この節では , 当量伝導率の濃度変化の問題 をとりあげる . 図 10 ー 4 は , 塩化カリウムと酢酸について得 られた当量伝導率と濃度の関係を示したもので ある . 溶液濃度が増すにつれ , 塩化カリウムの 当量伝導率はわずかに減少していく . 一方 , 酢 160 KCI 120 ・ ba S/V 40 C H 3COO H 0.20 0.30 JC*/eq. 1 / 2 dm との関係 当量伝導率の濃度変化 10 . 3 0 0.10 ー 3 / 2 図 10 ー 4 25 OC におけると c* 221
のように表せる . が得られるから , 全電流 / は 1000 た = u-A—FE 1000 陰イオンについても同様に 強さ E = い / / を用いて式 ( 10.27 ) を次のように書き換えておこう . で与えられる . こうして電流とイオンの移動度の関係が得られた . なお , 次に , 電流と伝導率の関係は , Ohm の法則より 1000 F. 川△ル / で与えられる . 、ア = ん川△ル / こで , 右端の関係は , 式 ( 10.3 ) の 1 ( 10.26 ) ( 10.27 ) こで , 電場の ( 10.28 ) ( 10.29 ) ( 10.3 ) を用いて , 抵抗を伝導率で表したものである . 式 ( 10.28 ) と式 ( 10.29 ) を比較すると , ( 10.30 ) 1000 であることがわかる . この式 ( 10.3 のが移動度と伝導率を結びつける関係である . これよ り , 当量伝導率は式 ( 10.5 ) の関係から , となり , さらにまた , 各イオンの当量伝導率と移動度の関係として ( 10.31 ) ( 10.32 ) が得られる . の当量伝導率ス + やスーがどのようにして得られるか , ということについてはまだ示してい られる伝導率が結びつけられた ( 式 ( 10.31 ) ). ただし , 式 ( 10.32 ) に現れる個々のイオン ことになる . こうして , 溶液中のイオンに働くカから導かれる移動度と , 測定によって得 以上の結果をまとめると , 当量伝導率は移動度と Faraday 定数の積として与えられる い 0.5 輸率 ない . この残された問題を次に考えよう . 側へ , また陰イオンは左側へ移動する . その結果 , 正の電荷が右側へ運ばれる . すなわち , 電解質溶液に電場をかけたとき , たとえば図 10 ー 7 のような状況であれば , 陽イオンは右 230 第 10 章電解質溶液 イオンの移動と電気伝導
かわらず , 溶解が自発的に進行するのは , イオンに解離することによってエントロピーの 得をするためである . 電解質が水に溶けてイオンに解離するのは , 工ンタルピーで少し損 をするが , 工ントロピーでたくさん得をして , 結果的には , 自由エネルギーの得をするか らである . 以上のような理由から , 電解質は水中でイオンに解離して溶解する . なお , 電 い 0.2 伝導度と伝導率 解質がイオンに解離することを電離ともいう . の間に比例関係が成り立っ . すなわち , 電解質溶液も次のような Ohm の法則に従う . る . このとき , 電極の両端の電位差 ( 電圧 ) △のと流れる電流 / の関係を調べると , それら 電解質溶液に 2 枚の電極を入れて , その両端を適当な電池につなぐと回路に電流が流れ 10.2.1 伝導度 て評価するか , また , その量をどのようにして測定するかについて示していこう . し " となる量が必要である . この節では , 電解質溶液の電気伝導性をどのような量を用い の電解質についてそれらを比較しようとする場合 , 電気伝導性を評価するための、。ものさ 電気伝導性は , 溶液濃度や溶けている電解質の種類によって異なってくる . そこで , 個々 数 , および溶液中でのイオンの動きやすさ ( 移動度 ) によって決まる . したがって , 溶液の 液中を流れる電流の流れやすさは , 存在するイオンの数 , イオンが帯びている電荷の価 中をイオンが移動することによって電荷が運ばれる , すなわち , 電流が流れる . 電解質溶 たように , 電解質溶液中ではイオンという電荷を帯びた溶質が存在するためである . 溶液 電解質溶液に最も特徴的な性質として , 電気伝導性があげられる . これは , 前節で述べ ( 10.1) ここで , 比例定数を抵抗 (resistance) という . いま , 電気伝導性のほうに目をつける と , 式 ( 10.1) の関係を次のように書き換えたほうがわかりやすい . ー△ = G 1 ( 10.2 ) 式 ( 10.2 ) は , 「溶液中を流れる電流は , かけた電圧に比例する」ことを表しており , その 比例定数 G ( すなわち , 抵抗の逆数 G = 1 / ) を伝導度 (conductance) と呼ぶ . G は単位 電圧あたりに流れる電流に相当し , 溶液の電気伝導性の目安となる . 10.2.2 伝導率 伝導度 ( G ) は , 同じ溶液について測定した場合でも , 溶液中に浸した電極の面積や電極 間距離によって違ってくる . したがって , ある溶液の電気伝導性を評価するためには , れらを決めておく必要がある . そこで , 面積 1cm2 の電極が lcm の距離だけ離れて置か れたときの伝導度を考え ( 図 10 ー 1 ) , これを伝導率 (conductivity) と呼び , ふつうんとい 218 ー第 10 章電解質溶液 イオンの移動と電気伝導
のときのイオンの移動速度とみなすことができる . 電解質溶液の電気伝導性は溶液中をイオンが動くことによってもたらされるから , 伝導 率とイオンの移動度の間には何か関係がありそうなことは直観的にもわかるだろう . で次に , 移動度と伝導率の関係を見つけよう . 10.4.2 イオンの移動度と溶液の伝導率の関係 そこ 考える . 単位時間あたりに運ばれる電荷が電流だから , 電流はこの断面を単位時間に通過 しよう . 図 10 ー 7 に示したように , 電極にはさまれた溶液中に , 面積スの仮想的な断面を 電解質溶液に , 2 枚の電極を距離 / だけ離して置き , その間に△のの電位差をかけるものと の量がどのようにして結びつけられるかを以下に示す . まず , 考え方の大筋を述べよう . ら導かれる . 一方 , 伝導率は実際の測定によって得られる . これらの性格を異にする 2 っ 移動度は , 実験とは無関係に , 電場に置かれた溶液中のイオンに働く力を考えることか するイオンの個数と関係づけられる . このイオ ンの個数はイオンが動く速度 , すなわち移動度 で決まるから , 電流は移動度と結びつけられる . 一方 , 電流はまた Ohm の法則によって伝導率 と結びつく . この 2 つの関係から , 電流を仲立 ちとして移動度と伝導率が関係づけられること になる . このような手順で , 移動度と伝導率の 関係を手にすることができるが , 以下 , 順を追 って計算してみよう . 十 面積 A の断面 動きと電流の関係の説明 図 10 ー 7 電場に置かれたイオンの ここでは簡単のために , 対称電解質朝マ型電解質 ) を考えることにする . 濃度 C* eq. dm ー 3 の溶液 1cm3 中に含まれる陽イオン , 陰イオンそれぞれの個数は 1000N こで , んは Avogadro 数である . まず陽イオンについて考えてみると , で与えられる . その移動速度をとすれば , At 時間に面積の断面を通過する個数は であるから , 単位時間あたりに運ばれる電荷 , すなわち電流 / + は 1000 ぇ + △ / ス ん名 e + △ス となる . 電流は 、ア 1000N At こで , Le=F(Faraday 定数 ) および vs + = 4 + E を用いれば , 陽イオンによる 1000 ( 10.24 ) ( 10.25 ) 10.4 イオンの移動度 229
電流が左から右へ流れる . 全電流は陽イオンが運ぶ電流と陰イオンが運ぶ電流をたし合わ せたものになるが , 各イオンに基づく電流は , その移動度と関係していて ( 式 ( 10.25 ) , ( 10.26 ) を見よ ) , 動きやすいイオンほど全電流に対する寄与が大きくなる . そこで , 全 電流のうち , 特定のイオンが運ぶ割合を考え , これを輸率 (transportnumber) と呼び , 記 陽イオンの輸率は , 全電流 / に対する陽イオンが運ぶ電流たの割合だから , 10.5.1 輸率とイオン当量伝導率の関係 号乙で表す . と表される . て , 陰イオンの輸率は となり , 当殀 ド十「 4 + 十″ けられるから ( 式 ( 10.32 ) ) , 輸率とイオン当量伝導率の関係として る . また一方 , 移動度は , 前節で見たように , イオンの当量伝導率とス土 = F で関係づ の関係がある . このように , 輸率は移動度と式 ( 10.33 ) , ( 10.34 ) の関係で結びつけられ ( 10.33 ) ( 10.34 ) ( 10.35 ) ここで , 最後の等式は式 ( 10.25 ) , ( 10.26 ) の関係から得られる . 同様にし ス + 十た ス + 十スー が得られる . ( 10.36 ) したがって , イオンの輸率が測定できれば , それと別に測定したを組み合わせること によって個々のイオンの当量伝導率 ( た ) を知ることができ ( 式 ( 10.36 ) ) , また →こうして 得られたス土を Faraday 定数で割ることによってイオンの移動度 ( ″つが求まることにな る ( 式 ( 10.32 ) ). 表 10-2 に示したス 0 土の値はこのようにして得られたものである . では , イオンの輸率はどのようにして求まるのだろうか . これについては後で述べることにし て , こで , これらの関係を使った例題をあげておこう . 例題 10.4 0.100 mol dm-3 LiCI 水溶液について , 当量伝導率と Li + の輸率を測定したところ , それそれ 103.2Scm2eq. ー 1 および 0.318 であった . この溶液中における Li + イオンおよび CI ー ⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢ 解まず式 ( 10.36 ) からス + とたがわかる . ノ 1 = 103.2 S cm2 eq. ー , ん = 0.318 より イオンのイオン当量伝導率朝 + とスー ) と移動度 ( ″ + と広 ) を求めよ . い 0.5 輸 率 231
酸のそれは , 低濃度のところで急激に落ち , その後徐々に減少する . では , 濃度に対する当量伝導率の変化の仕方が著しく異なっているが , 多くの電解質につ これら 2 つの電解質 10.3.1 強電解質 解質と弱電解質について細かく見ていこう . 度依存性を示し , このタイプの電解質を弱電解質 (weak electrolyte) という . 以下 , 強電 (strong electrolyte) という . 多くの有機酸やアンモニアの当量伝導率は酢酸と同様な濃 分の塩類は , 塩化カリウムと似た振舞いを示しこのタイプの電解質を強電解質 いて調べてみると , 当量伝導率と濃度の関係は , 一般にこの 2 つの型に類別される . 大部 これは , Kohlraush によって実験的に見い出された関係で , 次式で表 強電解質溶液では , その濃度が十分に薄い場合 , 当量伝導率と濃度の平方根の間に直線 関係が認められる . される . = 川一れで ( 10.8 ) こで , たは実験的に決められる定数である . また , 川は濃度ゼロに補外した当量伝導率 であり , 無限希釈における当量伝導率 (equivalent conductivity at infinite dilution) と呼 ばれる . 式 ( 10.8 ) の関係を KohIraush の平方根則という . 電荷が反対だから , 結果としてイオンの運動が妨げられる ( 図 10 ー 5 ( b ) の状況では , 移 ン雰囲気は球対称から崩れた形となる ( 図 10 ー 5 ( b ) ). イオンとそのまわりの雰囲気とは イオンは無限に速く集まるわけではないから , イオンが溶液中を移動するとき , そのイオ 比べて十分に速く起これば , イオン雰囲気は球対称を保ったまま移動するだろう . しかし られる ) , 正負イオンは互いに逆向きに移動する . もし , イオンの再配列がイオンの移動に (a)). このようなイオン性溶液に電場がかけられると ( 伝導率測定の際には電場がかけ のイオンの集まりをイオン雰囲気といい , 平均として球対称の形をしている ( 図 10 ー 5 反対電荷を帯びたイオンどうしの間に作用するクーロン引力のためである . この反対電荷 えられる . ある注目したイオンの近くには反対電荷のイオンが集まる傾向がある . これは , C* の増加とともにが落ちてくる理由としては , 以下に述べるような 2 つのことが考 動する陽イオンの背後で陰イオンの密 度が高くなっているから , 陽イオンに 対して , 移動方向とは逆向きの力が作 用することになる ). このようなイオ ン雰囲気の球対称からのずれがイオン の移動を遅らせる効果を非対称効果 (asymmetric effect) または緩和効果 (relaxation effect) という . 図 10 ー 5 (a) (b) イオン雰囲気の模式図 1 222 第 10 章電解質溶液 イオンの移動と電気伝導
もう 1 つの理由として , 次のことが考えられる . イオンは溶液中を動くとき粘性抵抗 ( 第 2 章 2.6 節参照 ) を受ける . イオンは水和した水分子の集団を伴って移動するので , イ オンどうしが十分に離れているのでないかぎり , 反対電荷のイオンがそれぞれの水和層を 互いにこすり合って動くことになる . その結果 , 粘性抵抗が増し , ひいてはイオンの移動 速度が落ちる . このような水和層の重なりによる粘性抵抗の増大がイオンの移動を遅らせ る効果を電気泳動効果 (electr 叩 horetic effect) という . いずれの効果も溶液中のイオン濃 度が高くなるほど大きくなるので , 強電解質のスは C* の増加とともに小さくなる . 上で見たように , イオン間の相互作用は強電解質の当量伝導率を下げる方向に作用す る . 無限に希薄な溶液では , イオン間の相互作用はなくなると考えられるから , 無限希釈 における当量伝導率は , イオン間相互作用が取り除かれた状況のもとでの , その電解質 に固有の伝導率とみなすことができる . いくつかの強電解質について得られた川の値を 表 10 ー 1 に示す . 表 10 ー 1 共通のイオンをもっ 1 対の電解質の無限希釈における 当量伝導率 電解質 AO/S cm2 eq. 電解質 IIO/S cm2 eq. KCI LiCl 差 149.86 115.03 34 .83 KN03 LiN03 144 . 96 110 . 1 34.86 差 4 .90 4 .93 この表を見ると , カリウム塩とリチウム塩の川を比較した場合 , 陰イオンの種類が異 なっていてもその差がほば一定になっていること , また一方 , 塩化物と硝酸塩の川の差 は陽イオンの種類によらず同じ程度の値になっていることに気がっく . すなわち , 共通イ オンをもっ 2 つの塩類のの差はほば一定になる . このことは , 電解質溶液の電気伝導 に , 陽イオンと陰イオンがそれぞれ相手とは独立に寄与していることを示している . した がって , 無限希釈における陽イオンおよび陰イオンの当量伝導率をそれぞれス 0 + およびス 0 ー とすれば , ス 0 はこれらの和として与えられるだろう . 員 0 = ス 0 + 十ス 0 ー ( 10.9 ) 式 ( 10.9 ) の関係を Kohlraush のイオン独立移動の法則 (law of the independent migra- tion of ions) という . 弱電解質の川を実験値から濃度ゼロに外挿して求めることは困難 だが ( 図 10 ー 4 を見よ ) , イオン独立移動の法則があるため , これを計算により求めること ができる . 次に , その例を示そう . 例題 10.2 酢酸ナトリウム , 塩化水素 , および塩化ナトリウムの水溶液の無限希釈における当 , 426.2 Scm2eq. ー1, および 126.5 S cm2eq. ー1 である . 量伝導率はそれぞれ 91.0 S cm2 eq. ⅡⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅡⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡ い 0.3 当量伝導率の濃度変化 きる . 酢酸のは実験的には求められないが , イオン独立移動の法則より , 解問題にあげた 3 つの電解質はすべて強電解質だから , それらの員 0 は実験から知ることがで れらのテータを用いて , 酢酸水溶液の無限希釈における当量伝導率を求めよ . 223
くさんの水分子が水素結合によって鎖状に連なった構造が存在しており , この鎖の中の隣 接した水分子を介してプロトンが受け渡されていき , 結果的にはプロトンが移動したこと になるという機構が考えられている ( 図 10 ー 10 ). 第 10 章演習問題 10.7 25 。 C において , 電気伝導率測定用セルに 0.02M の KCI を入れたところ , その抵抗値は 2500 であった . 同じセルに 6X10 ー 3M の NH40H を入れたところ , 抵抗値は 10000 であった . 6X10 ー 3 M の NH40H の当量伝導率を求めよ . ただし , 25 OC における 0.02 M KCI 溶液の伝導 率んは 0.00277 Scm-l である . 70 . 2 CaS04 の溶解度は 25 ℃で 0.667 g dm 3 である . 表 10 ー 2 を用いて , 25 ℃における CaS04 飽和水溶液の伝導率を計算せよ . 10 . 3 25 OC で , KCI, KN03 および AgN03 の無限希釈における当量伝導率はそれぞれ 149.9 S , 144.9 Scm2eq. ー1 および 133.3 Scm2 eq. ー1 である . この温度で , AgCl の無限希釈に cm eq. おける当量伝導率はいくらか . 70. イセル定数 0.2063Cm ー 1 の伝導率測定用セルを用いて 0.020m01dm ー 3 の酢酸水溶液の抵 抗を測定したところ , 888Q であった . この濃度における酢酸の電離度および電離定数を計算 せよ . 70 . 5 弱電解質溶液の当量伝導率を濃度 C の関数として測定し , C を 1 / に対してプロ ットすれば直線になること , また , その直線の傾きと川の値から電離定数 K が求まることを示 せ . クロロ酢酸水溶液について得られた次のテータ ( 25 。 C ) を用いて , このプロットによりクロ ロ酢酸の電離定数を求めよ . ただし , = 362 S cm2eq. ー1 である . C-1/mol-1 dm3 II/S cm2 eq. - 16 32 64 128 53 . 1 72 . 4 96 . 8 127.7 256 512 164 205.8 249.2 1024 7 0 . 6 HCI と NaCI の混合水溶液があり , HCI および NaCI の濃度をそれぞれ C, C' (mol dm-3) とする . 3 種のイオンの輸率朝一 ー ) をそれぞれの移動度 (uH, ttNa, ucl) と濃度 H' NEi' ロ で表す関係を示せ . 10. 7 水溶液中 25 ℃の H + , Na + , CI ーの移動度は , それぞれ 3.63X10-3cm2s ー IV -1 , 5.19X 1 『 4cm2s ー 1 V-I および 7.92X10 ー 4cm2s ー 1 V-I である . ( i ) 1X10 ー 3m01 dm-3 の塩酸で , H + が運ぶ電流の割合はいくらか . ( ⅱ ) NaCI をこれに加え , 塩が 1 .0m 。 ldm ー 3 になるようにし たとき , H + , Na + および CI- が運ぶ電流の割合はそれぞれどうなるか . 電流の輸送がイオンの移 動度と濃度によって支配される様子に注意せよ . 第 10 章 演習問題 235