6.3 内部エネルギー変化の分子論的解釈 (kinetic energy) Ek として , また , 分子間相互作用のポテンシャルエネルギー (potential 供給されたエネルギーは , 分子 ( 原子やイオンであってもよい ) の運動エネルギー 加したエネルギーはどのようにして蓄えられるのであろうか . 仕事または熱によって系に 系を加熱したり仕事を与えたりすると , その系のエネルギーは増大するが , ではその増 energy)Ep として蓄えられる . U=Ek 十 Ep ( 6.9 ) ここで , 簡単のため系全体としては静止しており , 重力や電場のような外部的な要因の影 響によるエネルギーはないとみなしている . このため , 外部的エネルギーを除いて , いま 問題にしている系がもっている全エネルギーを内部エネルギー ( internalenergy ) と呼ぶ . 並進運動 (translational motion) と呼ばれる , 3 次元空間内を単原子分子が飛び回る運動 を分子がしているとき , その運動エネルギーは襯 2 / 2 である . ただし , 襯は分子の質量 , は速度である . 系の総運動エネルギーは , 分子の平均運動エネルギーぎ = 1 襯 2 と 2 分子数ルの積 , すなわち Ek = である . もし分子が 2 原子かあるいはそれ以上の原子 からなる気体分子であれば , 回転 (rotation) と振動 (vibration) の運動によるエネルギー も Ek の中に含まれる . 6.3.1 理想気体の内部エネルギー すでに第 1 章で , 理想単原子気体は運動エネルギーだけをもっていて , 粒子間のポテン シャルエネルギー Ep はゼロであるということを学んでいる . すなわち , 単原子分子理想気 体の内部エネルギーは U= Ek であり , また , Ek と温度 T ( 絶対温度 , 熱力学温度 ) との 間の関係から次式が成り立っことがわかるであろう . U = Ek 3 2 ( 6.1 の 式 ( 6.10 ) は温度 (temperature) を定義する式であるともいえる . T は理想気体のもつ 内部エネルギーに比例する量であり , また , U= 0 ですべての分子が運動を完全に止めて Ek = 0 となった状態では , 極小温度となる . この極小温度は一 273.15 ℃に相当し , 絶対 零度と呼ばれる . これを Kelvin 温度 ( 熱力学温度 ) 尺では 0 K とし , セ氏温度の 0 ℃を 273.15K としている . ここで式 ( 6.1 のを見て , lmol の理想単原子気体の内部エネルギー は , 温度が一定でありさえすれば , 体積や圧力に関係なく一定であることを記憶にとどめ ておいてほしい . 単原子分子の理想気体に加えられたエネルギーは , それが熱であれ仕事であれ , すべて 分子の運動エネルギーを増加させる . 分子間相互作用のない理想気体分子がもちうる内部 88 第 6 章エネルギーと熱力学第一法則
図 7 ー 12 △ G の温度変化に対するエンタルピー項とエントロピー項の寄与の様子 ( 3 ) 自由エネルギーの意味と有効仕事 て , 仕事に使えない TS を束縛エネルギ—(boundenergy) ということがある . すなわち , TS との 2 つに分けられることを示している . このことから自由エネルギースに対し ー U は定温変化で仕事として取り出せるエネルギースと , 仕事には使えない熱エネルギ 当する . ス = U— TS を書き換えると U = 十 TS となる . この式は , ( 内部 ) エネルギ つ全エネルギーは , 外部的なものを考慮しなくてよい場合は , 内部エネルギーがそれに相 自由エネルギーの自由 (free) とはどういう意味で用いられているのであろうか . 系のも ( 内部 ) エネルギー 定温で 有効仕事に使える自由エネルギー 同様に式 ( 7.62 ) の U = G ー召十 TS を見ると , 定温・定圧では 十仕事に使えない束縛エネルギー 仕事に使える自由エネルギー ( 内部 ) エネルギー とみなすことができる . いることがわかるであろう . さらに「自由」には「遊離する」の意味があり , 人間の立場 と解釈できる . こで「自由」が「束縛」に対する反対の意味をもっ言葉として使われて 十体積仕事に使われるエネルギー十仕事に使えない束縛エネルギー 144 ー第 7 章ント。ピーと自由ネルギー : 熱力学第一 有効仕事がある場合を整理すると以下のとおりである . からすれば「取り出せる」意味をもっことになる . 0 E ミ 0 , 第一 , 第三法則の統合 400 300 200 100 0 ー 100 ー 200 ー 300 ー 400 0 △ G △〃 T △ S 0 E ト ミ 0 500 1000 800 600 400 200 0 ー 200 ー 400 ー 600 ー 800 ー 1000 0 1000 T/K 2000 1500 T △ S △″ △ G 1000 2000 3000 4000 5000 T/K (a) 反応 N2(g) 十 3H2 ( g ) ー→ 2NH3 ( g ) に対する式 ( 7.66 ) の各項の温度変化 ( 1 atm) (b) 反応 H20(g) + CO(g) C02 (g) + H2(g) に対する式 ( 7.66 ) の各項の 温度変化 ( 1 atm)
ル > 0 仕事が熱に変わって 温度 T から T 十△ T へ上昇 . 羽根車を回す . ( 系に仕事をする ) △ = 21 kJ = 8 kJ △し = - 21 kJ 系は仕事をしない . 下がる間 , 羽根車は回らない . 温度が T 十△ T から T まで 図 6 ー 5 仕事と熱の互換性を考えてみる . 図の左側では , 羽根車を回して仕事を系に与えると ( ル > の , これが熱に一部変わって 槽内の水温は上昇する . しかし , 右側の図に見るように , 槽の温度が下がる過程で , 羽根 車が自動的に回ることはない . このことは , 熱から仕事に変わるときには , 何らかの制約 があることを示唆している . この問題は , 次章の熱力学第二法則を学ぶときに考えよう . 例題 6.3 次の各過程における△ U , Q , ルが 0 か否か述べよ . また , Q= ールかどうか検討せ よ . ただし , 考えている系の物質量は一定である . ( a) 定温における理想気体の体積が定圧 pex のもとで協からへ膨張した . ( b ) 沸点において液体が気化 ( 等温等圧過程 ) した . Cc ) 固くて変形しない容器内に入れた気体を冷却した . ( d) 理想気体が断熱膨張した . 解式 ( 6.4 っと式 ( 6.8 ) から △ U = Q 十ル = Q - P △レ (a) 次節でも示すように , 理想気体は温度一定でありさえすれば , 圧力 , 体積に関係なく内 部エネルギーは一定である . したがって , △ U = 0 , Q= ールキ 0. (b) 1m01 あたりの内部エネルギーは , 分子運動のエネルギーを多く保有するので , 気体のほ うが大きい . したがって , △ U= U 気ー U 液 > 0 , 蒸発は吸熱反応であるから Q>O, 蒸発に伴っ ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢ がって , 内部エネルギーも低下する ). ( d ) 熱の出入りを断って膨張させているから Q = 0 , ル < 0 , したがって△ U < 0 ( 温度が下 放熱しているから Q < 0 , 体積変化がないからⅢ = 0. ( c ) 温度が下がることは内部エネルギーが減ることであるから△ U < 0. 冷却に伴って系は て気体は膨張仕事をするからル < 0. 例題 6.4 次の過程の Q , ル , △しを計算せよ . ある系にます 43kJ の熱を与えると , 系は 22 ⅡⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢ kJ の仕事を行い , 最後に 29 kJ の放熱をしながら外界から 8 kJ の仕事をされてもとに戻った . 解第 1 段階 第 2 段階 全体として Q = 43 kJ, = ー 22 kJ Q2 = ー 29 kJ, Qt0t = 14 kJ, . 2 Wt0t ー 14 kJ, △ Ut0t = 0 kJ 熱力学第一法則 : 熱 , 仕事およびエネルギーの関係 87
の O ー O 結合 ) の結合エネルギーを合わせたものより 239kJm01 ー 1 ほど大きいことを意味 している . この数値は , 液体の水の中で水分子の 2 本の O-H 結合が切断されるときに必要なエネ ルギーを計算するとき , 他のデータと組み合わせて利用できる . 分光学的方法によって , H2 や 02 の 2 原子分子が原子に解離するときに必要とされるエネルギー値は測定可能で , 次のような値が得られている . H2(g)—→ 2H ・△ U = 432kJm0 に 1 1 △ U = 247 kJ (O ・の 1 m01 あたり ) ー 02(g) ーー→ O ・ 2 H2 と 02 の反応が次の仮想的な経路を通って起こるとみなす . H2(g) + ー 02(g) ー生→ △ U2 H20(g) 2 H ・十 O ・ 第 1 段目の△ UI は解離エネルギーの総和であるので , △ UI = 432 十 247 = 679kJm01 1 内部エネルギー変化の総和△は上の 2 つの段階のエネルギーの和である . △ = △し十△し △伝は前述の一 239 kJ m01-1 であるから , △しは次のように計算できる . △し = △ー△し = ー 239 ー 678 = ー 918kJm01 1 2 個の H 原子と 1 個の O 原子が結合して H20 を生じるときに放出されるエネルギーが 918kJm01 ー 1 である . したがって , H20 分子中の H ー O 結合の平均結合エネルギーは , の半分の 459kJm01 ー 1 ということができる . この値を H2 の結合エネルギー 432kJm01 1 や , 02 の O = O 結合のエネルギー 494 ( = 2 x 247 ) kJ m01 ー 1 と比べると , O-H 結合のェ ネルギーはこれらの間にある . N 三 N や C=O, C 三 C のような強い三重結合は 900 ~ 1100 kJmoI-1, 単結合は 100 ~ 500kJm01-1 の範囲の結合エネルギーをもっている . 以上は , 結合エネルギーについて , 絶対零度における分子の内部エネルギー差△孱 = 0 を 用いて議論してきたが , 25 OC におけるエンタルピーでデータを整理しておくほうが , 標 表 6-8 25 ℃における平均解離 ( 結合 ) エネルギー ( ェンタルピー ) D/kJ mol 1 ロ合 D/kJ mo に 339 344 436.0 615 945.4 812 498.3 415 716.7 292 350 725 259 391 143 463 ( 6.48 ) 、ロに 1 S—H C (graphite) 113 熱力学第一法則の応用 6.6 熱化学
6.6.2 標準生成熱とそのテータの応用 内部エネルギーやエンタルピーの絶対値を知ることができるだろうか . 確かに , 理想気 体の内部エネルギーは温度の関数として U= ( 3 / 2 翔 RT であるので絶対値を知ることが できるが , これは例外である . それぞれの物質のエンタルピーの絶対値がわかっていたら , 反応熱を計算するのにいちいち熱化学方程式を立てて加減算を行わなくても , 反応系と生 成系のエンタルピーの差として簡単に求められるであろう . しかし , 熱力学は積分定数を 決めることができないという特質があり , 物質のエンタルピーや , 次章で登場する自由工 ネルギーなどは絶対値を知りえない . これは , ポテンシャルエネルギーと同様である . し かしながら , 必要なのは絶対値ではなく , 変化の前後の差△〃 , △ U などである . 図 6 ー 13 に示すように , 〃や U, その他のエネルギー ( ポテンシャルエネルギー , 自由エネルギー など ) を含めて一般にエネルギーを E で表すと , E の基準をどこに置いても , その差△ E は同じであることがわかる . それではどのような基準を設けたら便利であろうか . 反応系のエネルギー ( 始めの状態 ) △ E = Ep—ER = E6—Ek 生成系のエネルギー ( 終わりの状態 ) エネルギー ー基準 2 基準 1 図 6 ー 13 異なる基準で定められたエネルギーとその変化量△ E の関係 そのためには , すべての元素の単体のうち latm , 25 ℃で最も安定な状態にある単体 ( 炭素ではグラファイト , 硫黄では斜方硫黄 ) のエンタルピーをゼロとおいて , これをま ず標準にする . 次に , ある物質の 1 atm, 25 ℃でとっている形態 ( 水では H20(g) または H20(/)) が , その成分元素の単体 ( latm , 25 。 C ) からっくられるとしたときの , 1m01 あ たりのエンタルピー変化を標準生成工ンタルピーとする . これを△ e で表し生成熱 ( heat offormation) と呼ぶ . この標準生成工ンタルピーは種々の物質について調べられていて , 表 6 ー 6 に代表的な物質について載せている . なお , この表の中には , 次章で学ぶ工ントロ ピーや Gibbs の自由エネルギー変化も記載されている . たとえば , 25 。 C , 1 気圧における H20 ( g ) の生成反応は , 表 6 ー 6 より H2(g) + —02(g) = H20(g) △ e = ー 241.826 kJ m01 1 である . いま , 標準状態における各物質のモルエンタルピーを , 〃 0(H2), 〃 0(02), H0(H20) とすると , 105 熱力学第一法則の応用 い . 6 熱化学
の exp この式の分母のエネルギー準位に関する総和を分子分配関数 ( molecular exp したがって , 式 ( A. 78 ) は次式で表される . / 三 gz•exp れを次式で表す . * 1 ラ function) といつ exp partition ( A. 80 ) ( A. 78 ) ( A. 79 ) 川 / ルはまた , エネルギー準位 E , をとる確率でもある . この分配関数は統計熱力学で最 も重要なものであり , 微視的な分子のエネルギーと巨視的な系の熱力学的な量 , たとえば 内部エネルギー , ェントロピー , 熱容量 , 自由エネルギーなどを関連づける . この教科書 ではこれ以上触れないが , B 。 ltzmann 分布や分配関数が化学にとって重大な地位にある ことを認識しておいてほしい . E. が 1 つの分子のエネルギー準位を表すので , 分子分配関数という . 巨視的系の分配関数は系分配 関数という . A. 5 理想気体の分子運動の速度と速さの分布 295
子運動論から得られた結果 , U = ー T をもとにして示した . 次に , これを熱力学の式を Cp—Cv= 理想気体では , 前に述べたように ( OU / 6 の T = 0 である ( この式は , 理想気体の温度が一 操作して求めてみよう . 式 ( 6.21 ) と式 ( 6.22 ) と〃の定義から OT p OT ( 召の 6 T p 6 T P ( U + 召の p OT / 6 ( 6.25 ) 6 T / この式のままでは意味がよくわからないので , 第 1 項 ( 6 U/ö T)p に代わるものを探す . のために内部エネルギー U を T との関数とすると , その全微分 d U は d T 6 レ 6 U 両辺を P 一定の条件下で dT で割ると , ( aU / 0T ) p が得られる . T 0T p OT これを式 ( 6.25 ) に代入すると , 6 U 6 レ 十 P 6 レ T 6 T 6 ( P の 6 T p 6 レ すなわち ( 6.26 ) ( 6.26 ' ) * 1 ( 6.27 ) * 1 定でありさえすれば , 体積が増大しようと減少しようと内部エネルギーは一定であること を意味している ). 上式に理想気体の状態方程式からレ = RT/P を用いて , ( 6 / 0T ) p = / 尸を得るので , 1 m01 については Cp—Cv=R ( 6.28 ) ( 6.28 ' ) である . この関係は Mayer の関係式と呼ばれている . 上の例題 6.8 において 0 / Cv 5 / 3 が示された . これらの関係は , 実際 , 希ガスや水銀蒸気のような単原子気体ではよく 成り立っことが知られている . このことはまた , 単原子理想気体の内部エネルギーとして U= ( 3 / 2 ) T を導いた , 気体の分子運動論による式 ( 2 / 3 ) ん = T が正しいことを意 味している . しかし , 2 原子以上からなる多原子分子は , 並進運動ばかりでなく , 回転運 式 ( 6.27 ) C(Cp—Cv) は , 外圧 p に抗してなされる膨張仕事に関係した項 PGV/öT)p と , 分子間 カ ( 内部圧 ) に抗してなされる膨張仕事に関係した項 ( / 6 の TG / 0T ) との 2 つからなることが わかる . 分子間力はないとする理想気体は , したがって , 後者の項がゼロ ( Jo ⅲ e の法則 ) となる . こ れから GU/öT)p = GU/öT)v であることが式 ( 6.26 つを見ればわかる . 6.4 熱 , 内部エネルギー , 工ンタルピーおよび熱容量 95
エネルギーの実体は , 唯一 , その分子の運動エネルギーからなっている . 熱が系に加えら れるとき , 壁に衝突する分子はそこで高いエネルギーを得て , より速く運動しより高い 頻度で衝突を繰り返しては , 外から得た熱エネルギーを運動エネルギーのかたちで蓄えて いく . 結果として , 高エネルギー , 高温度の状態へと変わっていくことになる . 仕事もまた理想気体の温度を上昇させることができる . 気体がピストンで圧縮される と , ピストンの運動が分子の運動速度を上げ , そのため温度が上がる . この様子は図 6 ー 4 ( b ) を見ればよくわかる . 例題 6.5 1 mol の単原子分子からなる理想気体に , その体積を変えずに 1000J の熱を吸収さ せたとき , 内部エネルギーはいくら変化するか . また , 熱の吸収によって温度は何 K 上昇する ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢ日ⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅡⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢⅢ か . 解定積変化であるから 次に , 始めの温度を T とすると , ル = 0 し = ー x 1 x RT, 終わりの温度を T 十△ T とすると , △ U = Q = 1000 J 3 2 3 —XIXR(T 十△ T). 2 △ T = 約 80 K 上昇する . ゆえに , 3 △ U = し一し = ー R{( T + △ T) ー T} = ー△ T = 1000 J 1000 J 2 2 3 3 2 蓍 80 K 1 m01X8.314 J K -1m0 に 1 6.3.2 実在物質系の相互作用ポテンシャルエネルギー から戸 = 新までの仕事 d ・ルの総和が Ep に相当する . ギー , Ep 」と名づける . 戸 ) からある距離 7- のところへ , 一方の粒子を運ぶのに必要な仕事をボテンシャルエネル (d だは正の値 ) のときまルが正になるようにするためである . 「無限に遠いところ ( だ→ 負の符号がつけられているのは , 2 つの引き合う粒子 (F は負 ) がさらに遠ざけられる d' ル = ー F 市 - 示される . のと定義づけておく . 2 つの粒子を d だけ遠くへ引き離すのに必要な仕事 d ' Ⅳは次式で に , 粒子間に引力が作用しているときは負 , 反発力が作用しているときは正の値をとるも る . 2 粒子 ( 分子 , 原子等 ) 間の距離 % の関数であるカ F(I - ) は , 図 6 ー 6 ( a ) に示すよう もし 2 つの粒子が相互作用をし合うなら , それは互いに力を及ばし合っていることにな 概観するだけにとどめておこう . ' こではポテンシャルエネルギーを きとめるには , 量子力学を学ばなければならないが , 合っており , この相互作用はポテンシャルエネルギーを及ばし合っている . その原因をつ 実在の (real) 原子どうしや分子どうしは相互作用 (interaction) と呼ばれる力を及ばし . 3 内部エネルギー変化の分子論的解釈 89
が得られる . 不等号が不可逆過程に相当する . 仕事のうち体積仕事の多くは通常 , 大気を 押しやるだけで , 有効な仕事としては使えない . そこで仕事 d ' ルを 2 つに分けて , 体積仕 事 d'Wv = —P dV と , 有効に使える可能性のある有効仕事 (available work, net work, こうすれば式 ( 7.57 ) は次式で表され 正味の仕事とも呼ばれる ) まの和であるとする . 1 m01 の計 3 mol) より生成物のそれ (H20 2 mol) が減少していることがあげられる . 反 応物は 2 種類の物質が 3moI あったのに対し , 生成物が 1 種類しかなく分子数が減ってい る . これには , 乱雑さが減少 , すなわちェントロピーの減少を伴う . この反応は , 反応の 開始に電気花火の点火を要したものの , 反応としては自発的に進行した . では , これまで 自発変化の方向はエントロピー増大の方向といってきたことと矛盾しているのではない か ? この疑問に完全に答えるためには , 次節で紹介する自由エネルギーの登場を待たね ばならない . ただ , この反応がかなり多量の熱を発する発熱反応 ( △〃 < のであることと , これに伴って外界に熱が移されたことによるエントロピーの増加があり , トータルでは △ S 系十△ S 外界 > 0 となっていることは意識にとどめておかねばならない . 第 7 章ェントロピーと自由エネルギー : 熱力学第一 , 第二 , 第三法則の統合 . 3 自由エネルギー ◆ 先の例題 7.10 で水素ガスの燃焼を取り扱った . この反応では系のエンタルピーは減少 するが , 一方 , 自発的変化であるにもかかわらず , ェントロピーの減少も伴った . このこ とは , 温度 , 圧力あるいは体積などのどれかを一定に保った条件下で自発的な変化が進行 するには , エネルギー的要素とエントロピー的要素の両方が何らかの役割分担をしている のではなかろうかと想像させられる . また , 系のもつ全エネルギーは内部エネルギーであ るが , エネルギーを利用して仕事をさせるとき , エネルギーの一部が熱となって逃げてい くので , 実際に仕事に変換し利用できる部分を評価できる新しい目安はないかという問題 も残されている . これらのことを説明してくれる新しい熱力学量 : HelmhoItz の自由エネ ルギー ( HeImhoItz free energy) と Gibbs の自由エネルギー (Gibbs free energy, または 簡単に Gibbs energy) をこれから学ぶ . これらは化学には大切な熱力学量である . 7.3.1 自由エネルギーと平衡の条件 先の 7.2.2 項において , 可逆過程に限定して , 熱力学第一法則と第二法則の結合を試み た ( 式 ( 7.36 ) , ( 7.37 ) ). ここでは , 可逆・不可逆両過程を含めた第二法則を表す式 ( 7.20 ) とを組み合わせよう . T dS と d'Q であるから d U— T dS ミ d' ル ( 7.57 ) る . d U ー T dS ミ d' ル = ま広 , 十 d' 既 ( 1 ) 定温・定積変化 : Helmholtz の自由エネルギー 式 ( 7.58 ) を積分すると U ー TS である . この微分をとると 140 ( 7.58 )
気相反応における反応熱の中身を見ると , 主たるものは生成物と反応物の結合エネルギ ーの差である . このことは , H2 と 02 の反応が理想化された反応経路を通って生じたとみ なすことによって , 定量的に示せる . H2(g) 十 T02(g) 定積下で T = 0 K, P = 0 H2 ( g ) + プ 02(g) A 〃 7 、 = 0 = △ UT- T = 0 , P = 0 ( 化学反応 ) Cv ( 生成物 ) dT H20(g) H20(g) 定積下で T = 0 , 2 = 0 Cv ( 反応物 ) d レ こで反応する気体は , 一定体積に保ったまま 0K まで冷却して , 圧力 0 にすると仮想す る . このときの内部エネルギー変化は△ U Cv d T である . P = 0 であれば , △〃 ; = 0 と △ UT = 0 は等しくなる . この△ = 0 は化学結合の組み替えによるものである . 次に生成物を 一定体積に保ちながら 298 K まで熱してやる . そうすると , 298 K における内部エネルギ 一変化は次式で与えられる . 298 △し 98 = △ UT=O 十△ Cv d T 0 ここで , △ G , を一般的に表すと , 式 ( 6.43 ) と同様に次式で与えられる . △ Cv = 2 Cv ( の ( 生成物 ) ーレ℃ v ( i) ( 反応物 ) ( 6.46 ) ( 6.47 ) △ Cv d T は熱エネルギー差 (thermal energy difference) と呼ぶものである . 生成物と 反応物に対する積分項△ cvdT は , 実在の気体にいては気体が凝縮して液体や固体 になるため , 直接測定はできない . しかし分光学的実験からそれぞれの物質の回転や振 動のデータを求め , 統計力学的な処理を施せば , 理想化された熱エネルギー差を計算で推 定できるようになっている . △ UT = 0 が結合エネルギー差であるので , 式 ( 6.46 ) は△ U が結合エネルギー差と熱的ェ ネルギー差の 2 つからなることを示している . H2 と 02 の反応の熱的エネルギー差は ー 1.65 kJ と見積もられている . したがって , 結合エネルギー差は△ UT- ー 240.6 ー ( ー 1.6 ) = ー 239 kJ mo に 1 である . このことは , 0 K において 1 mol の H2 の H-H 結合 を切断して 2 m01 の H 原子にし , また 0.5 mol の 02 の O-O 結合を切断して 1 m01 の O 原子 ( 気体 ) にするのに必要なエネルギー ( 吸熱 ) と , これら H や O の原子が再結合して , 1 mol の H20(g) を 0 K で生じる際に放出するエネルギー ( 発熱 ) との差に相当する 239 kJ が放出されることを意味する . 別の言い方をすれば , H201m01 の結合エネルギー ( す なわち 2 mol の O ー H 結合 ) のほうが , H2(g) ( 1 mol の H ー H 結合 ) と一 02(g) ( 0 . 5 mol 112 ー第 6 章ネルギーと熱力学第一法則