生物学者のテビー・ボーグ = トービンが、死にゆくラッコに寄り添う。 ここホーマーでは、昨年 9 月だけで 79 頭ものラッコの死骸が見つかった。
死にかけたオオカミウオが、ワシントン州西岸の入り江フッドカナルで、 工ビの死骸に囲まれてとぐろを巻いている。 2014 年にはこの入り江に 暖かい海水が流れ込み、オオカミウオをはじめ、さまざまな海洋生物が死んだ。 フェープルは直感で、「プセウドニッチア」と呼 ばれる単細胞の有毒な藻類が原因ではないか と考えた。毎年春になると、小さな塊を作って、 通常 1 ~ 2 週間ほどの間繁茂するこの藻は、 ドウモイ酸という神経毒を生成する。この毒は 一部の貝類やカニなどに蓄積され、人間が摂 取すると発作や記憶喪失を起こし、時には死 に至る。この毒が野生動物にも害を及ほす可 能性があるのだ。 ルフェープルが 1998 年に、病気のアシカの ふん 糞からドウモイ酸を検出したのが最初の証拠と なった。この年はエルニ ニョ現象によって異 常に高温の海水がカリフォルニアに押し寄せ、 これを引き金に有毒な藻類が大発生した。 だが、史上最悪といわれた 1998 年の規模 を上回る異常発生が、 2015 年に起きた。 4 月、 藻類は数週間のうちにカリフォルニアのチャン ネル諸島からアラスカのコディアック島に至る長 さ 3200 キロ以上の海域を覆った。太平洋沿 岸部では、一部の貝類やカニなどの漁が禁止 された。毒の濃度は、高濃度とされる値より 30 倍も高かった。検査の結果、カタクチイワシな どの魚に含まれるドウモイ酸は、人間が食べる と危険な量に達していた。この毒によって、多 くのアシカや海鳥、イルカ、アザラシなどが、病 気になったと考えられている。藻類の異常発 生は 11 月まで続いた。 やがてアラスカでは、ナガスクジラやザトウク ジラが次々と死ぬ現象が起きた。だが、その 死骸のほとんどは腐敗が進み、あるいは不便 な場所にあって、検査をするには難しかった。 カナダのプリティッシュ・コロンビア州の海岸に 打ち上げられた数頭のクジラから微量のドウモ イ酸が検出されたが、この物質はすぐに分解し てしまうため、摂取量が多いか少ないかもわか っていない。 太平洋の熱い波 115
4 プリティッシュ・コロンビア州の沿岸部を移動するミズダコ。近年の太平洋の 異変により、多くの生物の移動バターンや食料は一時的に変化したが、 海洋生物に及ぼした影響を完全に理解するまでには、まだ長い時間がかかるだろう。 海水温の上昇でスポーツフィッシングの対象 予想もしない、新たな変化を引き起こす可能性 となる魚がメキシコから北へ移動してくると、ロ があるのだ。 サンゼルスの沖合で操業する釣り船は、これま 有毒な藻類の異常発生 でにないほどのにぎわいを見せた。 2015 年 8 月、シェイファーは船をチャーターし、サンディ NOAA の研究者キャシー・ルフェープルと私 工ゴの西の沖へ向かうと、水中銃でヒラマサを を乗せたトラックは、無線で教えられたホーマ 仕留めた。するとそのとき、腹をすかせた 1 頭 ースピットの海辺に着いた。ラッコの死因で近 のアシカが傍らを猛スピードで泳いでいった。 年多いのは、連鎖球菌の感染とその合併症 マイワシが見つからないときなど、アシカはよく だ。ひどくやせたラッコもいたが、今年は一見 大型魚を横取りする。それを知っていたシェイ 健康そうなラッコも死んでいる。アラスカ海洋 ファーは、ヒラマサを引き寄せ、船へと戻ろうと 国立野生生物保護区の研修生たちが解剖を したが、その矢先に、体長 2 メートルのシロシ 始めた。一人の研修生が、その前の週に、け ュモクザメが襲いかかってきた。シェイファー いれんを起こしているラッコを見たと報告する は手首をかまれ、 40 針も縫う大けがをした。カ と、ルフェープルが興味を示した。「アシカで、 リフォルニア沿岸では、シロシュモクザメが現れ 私も同じ症状を見たことがあります」 ることはもとより、人間を襲うことはめったにない 1998 年、米カリフォルニア大学の博士課程 が、海水温が高かった 2015 年には何度もこう の学生だったルフェープルは、体がふるえる症 した事故が起きている。海で生じた異変は、 状が出ている病気のアシカを何十頭も見た。ル 114 NATIONALGEOGRAPHIC ・ 2016 - 9
ヤドカリの仲間であるコシオリエビの死骸が、モントレー湾近くの 海にたくさん浮いている。 2015 年には、この甲殻類が一帯で大発生し、 カリフォルニア州の沿岸に、たびたび大量に打ち上げられた。 辺に流れ着いた、やせこけて病気になったアシ 力の子たちだろう。アシカは民家のポーチや駐 車中のトラックの下でぐったりしていた。食料の イワシ類が捕れなくなり、母親のアシカたちはヤ リイカやシロガネダラ、メバルなど栄養分の乏し い食料を食べ、早々と授乳をやめてしまったの こ。こうした幼いアシカは 5 カ月間で 3000 頭以 上にの ( まった。 オレゴン州ニューポートのオフィスに戻ったピ ーターソンは困惑していた。その暖水塊の出 現は、長年、海洋を研究してきた彼も知らな い、あまりに不可解な事態だったからだ。 予測できない異変 暖水塊のような異変が永遠に続くことはまず ない。仮にそうなったとしても、海が死ぬわけ ではなく、生物たちは生き続ける。だが暖水塊 の出現からは、気候変動に見舞われた海の未 来を垣間見ることができる。その生態系は、お そらく様変わりしていることだろう。 海水温が上昇すると、魚たちの代謝のスピ ードが速まる。つまり、食料が乏しいのにたくさ ん食べなければならない。その結果、大きく育 たず、病気にかかりやすくなって、多くの場合 生息数が減る。国連の「気候変動に関する政 府間パネル」の報告書によれば、すでに多くの 魚やプランクトンは海水温の低い海を求め、よ り高緯度の方向へ向かっている。冷たい海が 狭まって栄養分の豊富な海域が縮小すると、 魚や魚を捕食する生き物の集まる場所が減り、 新たな問題が生じることになるだろう。 海洋生物が従来とは異なる場所に現れるよ うになると、人間と海との関係も変わる可能性 がある。私はカリフォルニア州パシフィカで、水 中銃を使い、素潜りで魚を捕っているリチャー ド・シェイファーに話を聞いた 太平洋の熱い波 113
カツオノカンムリを追いかけるマンボウ。一部の海域では海水温が 平年より 4 ℃も高くなり、マンボウをはじめ、もともとは亜熱帯の 海に生息する生物が温帯の太平洋沿岸にまで現れるようになった。 この海洋生態系の変調は、海水温の上昇 ヒョウは身に締まりがなくなり、西海岸に戻って が引き起こしたものだ。海水が暖かくなってま くるギンザケは小さくやせ細っていた。こっした もなく、南太平洋でよく見かける、員殻をもつタ 異変はほかの変化も伴った。ただでさえ減少 コの仲間のカイダコが、カリフォルニア南部の 傾向にあったマイワシの数がさらに激減し、缶 沖合に姿を現し、熱帯の海にすむマンボウやヨ 詰工場は閉鎖にまで追い込まれた。イワシ類 シキリザメが北太平洋で捕れるようになった。 の数の増減は周期的なもので、海水温と直接 カリフォルニアの沖合に数多く生息するヤリイカ の関係はなさそうだ。だが、海水温の異常上 がアラスカ南東部やカナダの海で産卵し、ロサ 昇で生き残ったイワシ類の分布が変わり、影響 ンゼルス周辺のビーチには、中米にすむ有毒 はより深刻なものになった。ほとんどの海域か なセグロウミヘビが現れた。ピーターソンは、こ ら姿を消したカタクチイワシだったが、モントレ ー湾だけは違った。おびただしい数が集まり、 れまで目にしたことのない熱帯や亜熱帯の動物 プランクトンを 20 種近くも採集した。 一度に 50 頭以上ものクジラが食べにやって来 オキアミに比べれば、動物プランクトンは小さ た。海鳥も食料不足に苦しみ、オキアミを食べ くて栄養分も乏しく、いわば低カロリーの " 代 るウミスズメは、少なくとも 10 万羽が餓死した。 用食 " だ。その影響は食物連鎖を通して捕食 これは野鳥の大量死としては、米国史上類を 者にも及び、アラスカ湾に数多く生息するスケト 見ない大規模なものだった。その数カ月後に ウダラの数は、 30 年間で最低の水準にまで落 は、数十万羽のウミガラスも餓死した。 ち込んだ。栄養不足がたたって、クック湾のオ 最も人目を引いたのは、カリフォルニアの海 112 N AT 10 N A L G E 0 G R A P H I C ・ 2016 - 9
カリフォルニア州ラグナヒーチの太平洋海洋哺乳類センターに 保護された、衰弱したアシカの子たち。 2015 年には数百頭が 収容された。イワシ類の減少て栄養分の乏しいほかの食料を 食べるか、海水温の上昇で遠くの海域に移動した獲物を 探すことを余儀なくされた結果、多くのアシカが餓死した。 JAE C. HONG, AP PHOTO
荒れる北米西岸 藻類は通常、毎年春に数カ所で数週間だけ発生する。だ が 2015 年の春から夏には、暖かい海水と深海から上昇 する栄養分が混じり、カリフォルニア州南部からアラスカ まで広い範囲で藻類が発生。水温のさらなる上昇で、藻 類の異常発生は長期化し、その多くは毒性が高かった。 藻類の異常発生 海面水温偏差 ( 2015 年 6 月 19 日の週 ) ( 2015 年 5 月 ) クロロフィル濃度 1981 ~ 2010 年の平均値との比較 低 低 プリティッシュ・コロンビア州 バンクーバー ワシントン州 フッドカナルイゞ オレゴン州 シアト丿 彳蘒 ( 寒流 ) ニューボート 0 km 100 ボテガべイカリフォルニア州 ( サンフランシスコ ヾシフィカ サンタ モントレー ロサンゼルス バーバラ よラグナビーチ サンティエ・ チャンネル 諸島 ク ) モントレー湾の有毒藻類 (ng/ml) 暖かい海から逃れる生物 モントレー湾には、海底から湧き上がる栄養豊 富な冷たい海水を求めて生物が集まってきた。 2015 年には有毒な藻類の発生が長く続き、貝類 やカニの一部は食用に適さなくなった。 12 8 4 0 ' 15 阜 2016 年 発生期間 2012 3 水が深海から上昇してくる。こうしたすべての にわたり、 2 週間に 1 回のペースでこの海域を 不規則な変動が、海洋生物の分布に変化をも 訪れてきた。世界屈指の豊かさを誇る生態系 たらしているのかもしれない。 の基盤となる、微小な動植物を採集するため この現象がいかに大規模なものかを理解し だ。本来、この食物連鎖の底辺を支える " 人気 ようと、アラスカに向かう数週間前にオレゴン州 メニュー " は、体長 2 センチほどのオキアミだ。 沿岸を訪れた。沖合数キロを進む全長 16 メー 工ビに似た形をしたオキアミは、ウミスズメやギ トルの海洋調査船の上で、 NOAA の海洋学者 ンザケ、ウバザメ、クジラの食料になる。イワシ ビル・ピーターソンはひざまずき、クーラーポッ 類もオキアミを食べ、より大型の魚やアシカに食 べられる。夏を迎えたこの時期、オキアミは一 クスの中をのぞき込んでいた。そこには、たっ 帯に豊富に生息しているはずだった。だが採 た今、海底から網で引き揚げたものが入ってい た。「こいつはひどいな」と言う彼の肩越しに 集できたのは、栄養分の乏しい藻類や小型の どす黒い色をした泥のようなものが見えた。 クラゲばかり。調査チームはもう何カ月もオキア ピーターソンの調査チームはこれまで 20 年 ミを目にしていなかった。 ( 112 ページへ続く ) LAUREN E. JAMES, NGM STAFF. 出典 . NICK BOND, UNIVERSITY OFWASHINGTON, RAPHAEL KUDELA, UNIVERSITYOF CALIFORNIA, SANTACRUZ
ロシア 60 。 N アラスカ州 ( 米国 ) アンカレジ ホマー ウィッティ べーリング海 アリュ 太平洋の " 熱い " 2 年間 太 平 コディック コ云イアック島 洋 太平洋北東部では、 2013 年の冬からほとんど強風が吹かなかったため、 海面がかき回されず、水温低下が起こらなかった。蓄積された熱は 2015 年末まで北米沿岸に広がり、海洋生態系の変化、食物連鎖の混乱、 有毒な藻類の大発生に拍車をかけた。水温が上昇した海域 ( 暖水塊 ) は さらに拡大して深海にまで広がり、かってないほど長期にわたって居座った。 深海の水温上昇 一 -- ーー ~ ~ ーーーー , ー一太平洋北東部の水深と水温偏差 平均値との比較 一部の海域では、水深 400 メートルの深海まで 水温が上昇。海の生態系は水温が 1 ℃上がった だけでダメージを受ける。 2015 年末、海面の水 温は下がったが、深海には熱がたまったままだ。 2005 + 1 .1 海水温は、場所によっては平年より 4 ℃以上 高くなり、一部では観測史上最も高い値を記録 した。この暖水塊は、最盛期にはメキシコから アラスカまで広がり、その面積は米国の国土面 積に近い約 900 万平方キロにまで達した。 北極海の海氷が急速に減少したことで、寒 帯ジェット気流が大きく蛇行し、高気圧や低気 圧を長く停滞させたのが原因という説がある が、これについては賛否が分かれる。より有力 なのは、通常の熱帯からの暖気が引き起こす ジェット気流の蛇行が原因とする説だが、これ を支持する研究者ですら、気候変動の影響を 必ずしも否定していない。 106 N AT 10 、 A L G 見 0 G R A P H ー C ・ 2016-9 水深 200 400 m 2015 年 2010 + 2.2 ℃ この不可解な現象を解明しようにも、世界最 大の海洋である太平洋は、あまりに多くの謎に 満ちている。太平洋東部は、数年から数十年 の間隔で「太平洋十年規模振動」と呼ばれる サイクルを繰り返す。食料が豊富な冷たい海 になるかと思えば、一転して暖かい海になった りもするのだ。熱帯の海水温が周期的に上昇 ニョ現象が発生すると、北米で するエルニ は一気に気温が上がる。洋上のハイウェーと もいうべきカリフォルニア海流は、カナダからメキ シコのバハカリフォルニア半島に向けて冷たい 海水を運ぶ。その際、風が暖かい海面の水を 沖合へ追いやると、栄養分の豊富な冷たい海
いるのを目にしたが、その数は 1 カ月で 79 頭を 数えたという。 2015 年末までに、アラスカ湾西 部で死んだクジラの数は、実に 45 頭に達した。 山火事がカのない生き物を葬り、森の再生 に向けて道を切り開くように、生物の大量死は 自然の摂理ともいえる。だが、各地で起きたこ うした生物の死には、一つの共通点があった。 いすれも北米西岸の海水温が、観測史上最も 高い値を記録した時期に起きているのだ 海水温の上昇で、熱帯ではサンゴ礁が死滅 し、北極圏では海氷が解けて生態系が変化し ているが、温帯の海への影響は見過ごされて きた。だが事態は一変した。 2013 年から 16 年 の初めにかけて、北米西岸の海域では生物の 分布に異変が生じ、有毒な藻類の大発生な ど、かってない異常な事態の数々に見舞われ た。海水温の上昇は、温室効果ガスの排出か 拍車をかけた結果なのか、単に気象の変動パ ターンの極端な表れなのかはわからない。科 学者たちは難しい問いを投げかけられた。 の現象は、極端な変化が予想もつかないよう な形で結びつき、一部の海洋生物に影響を及 ばしているだけなのか。それとも、気候変動で 海水温が上昇した際に起きる、何らかの事態 ロ離れたアラスカ州南部の町、ホーマーのカチ の前兆なのか、と。 エマク湾にいる。海辺には、死にかけたラッコ 次の行き先を検討していると、無線連絡が が横たわっていた。山頂を雪に覆われたケナ 入った。 8 キロ先の町、ホーマースピットの海 イ山脈の麓に広がるこの海辺では、ラッコの死 辺で新たなラッコの死骸が見つかったという。 亡数が急増中で、ルフェープルはラッコとクジラ 私たちは早速、現場へと向かった。 の死に関連がないかを調べているのだ。 巨大暖水塊の出現 こ数年、北米大陸の西岸沖の海域では、 海洋生物の死が目立つようになっていた。カリ アラスカ湾では 2013 年末から、水温の高い フォルニア州からアラスカ州に至る各地の潮だ 海域、暖水塊が現れた。発生原因ははっきり まりでは、何百万匹ものヒトデが死んだ。ウミガ しないが、そこには高気圧が居座り、通常なら ラスやウミスズメなど数十万羽の海鳥が死に 海面の熱を吹き飛ばすはずの嵐が起こらなか 海辺に打ち上げられた。カリフォルニア州では、 った。そのため、熱を蓄えたまま暖水塊は成長 餓死するアシカが例年の 20 倍になった。ホー し、北米西岸沿いに広がって、北上してきた別 マーで、研究者がそりにラッコの死骸を積んで の暖かい水塊といくつも合流していった。 太平洋の熱い波 105 カリフォルニア州のモン トレー湾で魚をむさぼる ザトウクジラ。 2015 年に 多くの海域でカタクチイ ワシが激減したが、この 湾にはおびただしい数が 集まり、これを目当てに 一度に 50 ~ 60 頭ものク ジラが押し寄せる異常な 光景が見られた。
文 = クレイグ・ウェルチ環境ジャーナリスト 写真 = ポール・ニックレン 初のナガスクジラの死骸 が見つかったのは太平洋 北東部、米国アラスカ州 南部沖に位置するコディ アック島のマーモット湾で のことだった。 まだ若いクジラで、発見されたときは、体を 横向きにして海面を漂っていたという。開いた 口に海水が流れ込んではあふれ出し、だらりと 垂れた舌が波に洗われていた。アラスカ周辺 では生物の死骸を目にすることは珍しくない。 だがその翌日の午前中、フェリーの乗客が近く の水面に浮かんでいる別のナガスクジラを見つ けた。その雌クジラは、皮下脂肪をたつぶり蓄 104 NATIONAL GEOGRAPHIC ・ 2016 - 9 えて健康そうに見えたが、やはり死んでいた。 死んだクジラたちの話をしてくれたのは、米 海洋大気庁 (NOAA) 北西漁業科学研究セン ターの研究者キャシー・ルフェープルだ。通常 アラスカ湾西部で見つかるクジラの死骸は年に 8 頭ほどだが、 2015 年には 6 月だけで少なくと も 12 頭が見つかった。夏の間、アンカレジから アリューシャン列島まで、 1600 キロにわたって 連なる太平洋沿岸の岩場には、腐敗したクジ ラの死骸が打ち上げられ、ヒグマたちがそれを むさばった。ルフェープルは、そうした死骸の 眼球から体液を採取して分析してみたが、死 因は特定できなかったという。 今、私たちはコディアック島から北に 320 キ