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検索対象: NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 2016年 9月号
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1. NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 2016年 9月号

網膜をよみがえらせる 視覚は脳の活動の半分近くを占めているともいわれる。光を感知して信号を送る網膜の層に損傷が生じれば、 現時点では治療が不可能な失明に至ることがある。だが、現在は試験段階にある網膜のさまざまな 治療法 ( 下 ) の有効性が確認されれば、視力の回復が可能になるかもしれない。 細胞バッチの移植 変性した視細胞層の下に幹細胞由来の上皮細胞のバッチを 移植すると、死んだ細胞が新しい細胞で置き換えられる。 細胞の注入 網膜の前駆細胞を硝子体に注入すると、細胞が放出する 因子の作用で、遺伝性の変性と視力喪失の進行が抑えられる。 網膜色素上皮 網膜 網膜 移植された 細胞バッチ 斑 黄 硝子体 視細胞 網膜の拡大図 人工網膜 ( アーガス ) カメラ付き眼鏡、画像処理装置、電極チップでシステムを 構成し、死んだ視細胞を迂回する。欧米で認可済み。 人工網膜 ( アルファ ) 光を電流に変換するマイクロチップを網膜の黄斑部の 死んだ視細胞の間に埋め込み、視神経に電気信号を送る。 エネルギ 供給 カメラ付き限鏡 エネルギー供給 ワイヤレス 受信器 電極チップ 網膜 網膜 マイクロチップ 死んだ視細胞 視神経 網膜の拡大図 視神経 画像処理装置 遺伝子治療 第 2 段階 ウイルスが正常な RPE65 遺伝子を届けると、タンバク質が 作られ、視細胞は光を電気信号に変換できるようになる。 第 1 段階 視覚に必要なタンバク質をコードする RPE65 遺伝子を、無害化し たウイルスに組み込み、損傷した視細胞の近くに注入。 RPE65 遺伝子を 組み込んだウイルス 網膜色素上皮 網膜 正常な RPE65 選伝子 ウイルスの 影響を受けた 視細胞 視細胞 網膜の拡大図 網膜の拡大図 MANUEL CANALES. NGM STAFF; PATR ℃ HEALY. イラスト : EM に Y M. ENG 出 R.•MARK S. HUMAYUN. UNIVERSITY OF SOUTHERN CALIFORNIA; HENRY KLASSEN. IJNIVERSITYOF CALIFORNIA. 旧 VINE; ROBERT MACLAREN. UNIVERSITY OF OXFORD; JEAN BENNETT, UNIVERSITY OF PENNSYLVANIA

2. NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 2016年 9月号

荒れる北米西岸 藻類は通常、毎年春に数カ所で数週間だけ発生する。だ が 2015 年の春から夏には、暖かい海水と深海から上昇 する栄養分が混じり、カリフォルニア州南部からアラスカ まで広い範囲で藻類が発生。水温のさらなる上昇で、藻 類の異常発生は長期化し、その多くは毒性が高かった。 藻類の異常発生 海面水温偏差 ( 2015 年 6 月 19 日の週 ) ( 2015 年 5 月 ) クロロフィル濃度 1981 ~ 2010 年の平均値との比較 低 低 プリティッシュ・コロンビア州 バンクーバー ワシントン州 フッドカナルイゞ オレゴン州 シアト丿 彳蘒 ( 寒流 ) ニューボート 0 km 100 ボテガべイカリフォルニア州 ( サンフランシスコ ヾシフィカ サンタ モントレー ロサンゼルス バーバラ よラグナビーチ サンティエ・ チャンネル 諸島 ク ) モントレー湾の有毒藻類 (ng/ml) 暖かい海から逃れる生物 モントレー湾には、海底から湧き上がる栄養豊 富な冷たい海水を求めて生物が集まってきた。 2015 年には有毒な藻類の発生が長く続き、貝類 やカニの一部は食用に適さなくなった。 12 8 4 0 ' 15 阜 2016 年 発生期間 2012 3 水が深海から上昇してくる。こうしたすべての にわたり、 2 週間に 1 回のペースでこの海域を 不規則な変動が、海洋生物の分布に変化をも 訪れてきた。世界屈指の豊かさを誇る生態系 たらしているのかもしれない。 の基盤となる、微小な動植物を採集するため この現象がいかに大規模なものかを理解し だ。本来、この食物連鎖の底辺を支える " 人気 ようと、アラスカに向かう数週間前にオレゴン州 メニュー " は、体長 2 センチほどのオキアミだ。 沿岸を訪れた。沖合数キロを進む全長 16 メー 工ビに似た形をしたオキアミは、ウミスズメやギ トルの海洋調査船の上で、 NOAA の海洋学者 ンザケ、ウバザメ、クジラの食料になる。イワシ ビル・ピーターソンはひざまずき、クーラーポッ 類もオキアミを食べ、より大型の魚やアシカに食 べられる。夏を迎えたこの時期、オキアミは一 クスの中をのぞき込んでいた。そこには、たっ 帯に豊富に生息しているはずだった。だが採 た今、海底から網で引き揚げたものが入ってい た。「こいつはひどいな」と言う彼の肩越しに 集できたのは、栄養分の乏しい藻類や小型の どす黒い色をした泥のようなものが見えた。 クラゲばかり。調査チームはもう何カ月もオキア ピーターソンの調査チームはこれまで 20 年 ミを目にしていなかった。 ( 112 ページへ続く ) LAUREN E. JAMES, NGM STAFF. 出典 . NICK BOND, UNIVERSITY OFWASHINGTON, RAPHAEL KUDELA, UNIVERSITYOF CALIFORNIA, SANTACRUZ

3. NATIONAL GEOGRAPHIC 日本版 2016年 9月号

ュカタン半島 ツイバンチェ 0 カラクムル サクニクテ ( ラ・コロナ ) ペリース 0 ティカルホルムル ー☆ベルモバン ワカ。→ - 十 ナランホ ( 工ル・ベルー ) 推定 ペテン盆地カラコル 0 ドス・ヒ。ラス 0 0 ホンジュラス湾 . メキシコ 0 0 バレンケ モラル・レフォルマ - 凶十シコ湾 覇権をめぐる戦い 6 世紀までは、ティカルがマヤの超大国だっ た。蛇王朝はおそらくツイバンチェを拠点に 赤い文字で記した都市国家と同盟関係を築い ていき、 562 年にティカルを倒す ( 黒い文字 はティカルの同盟国 ) 。 635 年までに、蛇王 朝はカラクムルに遷都。 695 年 8 月 5 日、テ イカルの王「雲を払う神」が蛇王朝に勝利する ( その時点では、灰色で示したニつの国も蛇 王朝と同盟関係にあった ) 。 進軍ルート ( 562 年 ) 0 km 60 地図中の国境は現在のもの ( 600 年代初頭に建設 ) 。カンクエン ( 657 年に建設 ) グアテマラ キリグア 0 ホンジュラス コノヾン 蛇王朝の足跡が次に確認できるのは、はる か西方の洗練された都市、パレンケだ。メキシ コ湾や中部の高原につながる山々に囲まれた 豊かな都市で、現在は、しつくい塗りの優美なピ ラミッドや 4 階建ての監視塔などが残っている。 人口は 1 万人ほどと、決して大きくはなかっ たが、文化の中心地であり、西部地域との交 易の入り口となるため、野心に満ちた若い大国 にとって格好のターゲットとなった。この時の 蛇王朝の王は「渦巻き蛇」という名で、先代の 王たち同様、同盟国の軍を使って侵略戦争を 行った。パレンケの女王「風の吹く場所の心」 は、蛇王国軍の猛攻撃に抵抗したものの、 599 年 4 月 21 日に降伏した。 蛇王朝に見られるような領土拡張への強い 衝動は、古典期のマヤには珍しい。マヤ人は 往々にして結東カに欠けていたとみられること が多く、対外的な野心をもたないと考えられて いる。だが、蛇の王たちは違った。 「パレンケに対する攻撃は、より大きな計画の 一部だったのです」。メキシコ国立自治大学で 碑文の解読を専門とするギジェルモ・ベルナー 92 ルはそう語る。「戦争の目的は、富の収奪では なく、覇権の拡大にあったと思います。蛇王朝 は帝国を築こうとしていたのです」 帝国建設の意図があったかどうかは、マヤ 考古学者の間でも意見が分かれる。マヤには 帝国建設という発想がほかに見受けられない し、地理的な条件から見ても、大変難しいと考 える人が多い。それでも、蛇王朝の足跡を見 ていると、どうしても拡張主義的なパターンが浮 かび上がってくる。彼らは東部の有力都市と同 盟を結び、南部の都市を征服し、北部の人々 と交易した。パレンケはマヤ地域の西の端とな る。だが馬や常備軍が存在しない世界で、どう やってこれほどの広域を支配できたのだろう。 広大な地域 ( 日本の本州の半分弱 ) に対し て影響力を維持し続けるには、それまでのマヤ には存在しなかったような統治機構が必要とな る。また、ヒスイがたくさん採れる南部の都市 に近い場所に、新たな首都を構える必要があ った。カラクムルへの遷都を裏づける記述は見 つかっていないが、蛇王朝は 635 年に、それ までカラクムルを治めていたコウモリ王朝に代わ JEROME N. COOKSON, NG STAFF 出典 : DAVID FREIDEL, WASHINGTON UNIVERSITY 爪 ST. LOUIS