時間 - みる会図書館


検索対象: かもめのジョナサン
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1. かもめのジョナサン

、、ジョナサン、天国とは、場 間にどこへでも行く。おばえておくがよし 所でもない、時間でもない というのは、場所や時間自体は、そもそも 何の意味ももたぬものだからだ。天国とはだ、それは : : : 」 「さっきみたいに飛ぶやり方を教えていただけませんか ? 」ジョナサン は、もう一つの未知の世界を征服することを考えて身を震わせた。 ン 「よいとも。お前が教わりたいというのならな」 サ ナ 「おねがいです。いっからはじめてくださいますかワ」 ジ の「そちらさえその気なら、今からでも」 「あんなふうに飛べるようになりたいのです」ジョナサンは言った。異 様な光が彼の目の中に燃えあがった。 「言ってください、、、 とうすればいいのかを」 チャンはゆっくりと話し、自分より若いカモメをじっと注意ぶかくみ つめた。 ( し、刀 「思った瞬間にそこへ飛んでゆくためには、ということはつまり、

2. かもめのジョナサン

「なにかな」 この長老は年をかさねるにつれておいばれるどころか、かえって高い 能力をさすけられていた。彼は群れのどのカモメよりも速く飛べたし、 ほかの連中がやっとおばえはじめたばかりの技術を、すでに自分のもの にしてしまっていたのだ。 「チャン、ここは天国なんかじゃありませんね。そうでしよう ? 」 長老は月光の中で微笑した。 「かなりわかってきたようだな、ジョナサン」 「うかがしたいんですが、いまの生活のあとにはいったい何がおこるの でしようか ? そして、わたしたちはどこへ行くのでしよう ? そもそ も天国などというものは、本当はどこにもないんじゃありませんか ? 「その通りだ、ジョナサン、そんなところなどありはせぬ。天国とは、 場所ではない。時間でもない。天国とはすなわち、完全なる境地のこと 簡なのだから

3. かもめのジョナサン

Part Three 125 「一羽の鳥にむかって、自己は自由で、練習にほんのわすかの時間を費 しさえすれば自分のカでそれを実施できるんだということを納得させる ことが、この世で一番むすかしいなんて。こんなことがどうしてそんな に困難なのだろうか ? 」 フレッチャーは、突然自分が立っている場所の様子が一変したことに 驚いて、まだ目をパチクリさせていオ 「一体あなたは何をなさったのですか ? どうやってばくたちはここへ きたんです ? 」 「きみはあの暴徒たちから逃げ出そうといったんじゃなかったのか 「ええ。でも、どうやってあなたは・ 「ほかのことと全部おんなじさ、フレッチャー。練習だよ」 朝がくるころには、群れは自分たちの狂気じみた行為を忘れてしまっ

4. かもめのジョナサン

「ます第一に」彼は苦笑しながら言った。 「合流するのがかなりおくれたようだが : : : 」 あいつらは追放カモメだー なのにやつらは戻ってきたぞ ! それに あんな : : : あんなことがあってたまるか ! そういう声が群れの間を稲 妻のように駆け抜けた。争いになるかもしれないというフレッチャーの ン危嶼は、群れに生じた混乱にまぎれて薄らいでいった。 「うん、そりやそうだ。オーケイ、やつらはたしかに追放カモメさ」 の若いカモメたちの中にはこんなふうに言うものもいた。 「だけど、おい、やつら一体どこであんなふうに飛ぶのをおばえたんだ ろうなあ ? 」 そして、一時間ほどたっと次のような長老の通達が群れに伝わった。 彼らを無視せよ、追放カモメに言葉をかけるものは、ただちに追放する、 追放カモメを尊敬したりするものは、群れの掟を破ったものとみなされ る。 106

5. かもめのジョナサン

したあかっきには、われわれにとって残るのはここだけだ。そしてもし 時間を征服したとすれば、われわれの前にあるのはいまだけだ。そうな れば、このここといまとの間で、お互いに一度や二度ぐらいは顔をあわ せることもできるだろう。そうは思わないか、え ? 」 サリヴァンは、思わず笑い出した。 「この気ちがいめー彼は親しみをこめて言った。 「もし地上にいる誰かに、数千キロのかなたをどうやって見るか教える ことができる者がいるとすれば、それはジョナサン・リヴィングストン、 つぶや きみぐらいのものさ」彼は砂に目をおとして呟いた。 「さらば友よ、ジョン」 「さようなら、サリ 。また会おう」 ぼうだい そう一一一口うと、ジョナサンは心の中で、以前の海岸に集っている厖大な カモメの群れの姿を思い描いた。そして彼はすっかり身についたやり方 で自分は骨と羽毛のかたまりではない、なにものにもとらわれぬ自由と

6. かもめのジョナサン

「そいつはどうかな」と、そばにいたサリヴァンか言った。 「ジョン、きみみたいに学ぶことをおそれないカモメに、わたしは過去 一万年のあいだ出会ったことがないぜ」 皆がしんとなり、ジョナサンは身のおき場がなくてもじもじした。 「お前が望むならば、時間のほうの研究をはじめてもよい」チャンが言 っ一 0 「そうすれば、お前は過去と未来を自由に飛行できるようになる。そし てそこまでゆけば、お前は最も困難で、最も力強く、かっ最もよろこば しい事柄のすべてと取り組む用意ができたといえるだろう。そしてお前 はそのとき、より高く飛びはじめ、また優しさと愛との真の意味を知り はじめる用意ができたことになるのだ」 そして、ひと月が過ぎた、いや、ひと月と感じられただけかもしれな ジョナサンは素晴らしい早さで学んでいった。彼はこれまでいつも 日常の何でもない些細な経験から、いろんな事を素早く学びとってきて

7. かもめのジョナサン

: 」と彼は なるところへでも飛ぶということになるのだが、それには・ 一「ロった。 「ます、自分はすでにもうそこに到達しているのだ、ということを知る ことから始めなくてはならぬ : : : 」 チャンの語るところによれば、瞬間移動の秘訣は、ますジョナサン自 身が自分のことを、限られた能力しかもたぬ肉体の中にとじこめられて いる哀れな存在と考えるのをやめることにあった。たかだか一メートル ひしようりよく あまりの翼長と、せいぜい飛行地図に書きこめる程度の飛翔力しか持た ぬカモメの肉体に心をとらわれるな、というのである。そしてさらに本 来の自己は、まだ書かれていない数字が限界をもたぬごとくに、限りな く完全なるものであり、時間と空間を超えて、いかなる場所にも直ちに 到達しうるのだと知れ、とチャンは説くのだった。 ジョナサンはくる日もくる日も日の出前から真夜中すぎまで、猛烈に ひけっ

8. かもめのジョナサン

「 : : : 何千何万というカモメがいるのに、かね。わかってるとも」 サリヴァンは首をふった。 「こういうことだよ、ジョナサン。それはだな、つまりきみがおそらく 百万羽に一羽という、めったにいない鳥だってことさ。ここにいるほと んどの連中は、えらく長い時間をかけてここへやってきたのだよ。一つ ンの世界から、それと大して変りばえのしないもう一つの世界へと徐々に ナ 移ってきたんだ。そして自分らがどこからきたかということもすぐに忘 のれ、これから先どこへ向っていくのかさえ考えすに、ただその時だけの 事を考えて生きてきた。人生には、食うことや、争うことや、権力を奪 いあったりすることなどより、はるかに大事なことがあったんだと、そ うはじめて気づくようになるまでに、カモメたちはどれだけ永い歳月を 経てこなければならなかったことか。きみにはそれがわかるかね ? 何 千年という年月だよ、そう、何万年という年月さ ! そしてさらに、こ の世には完全無欠といえるような至福の状態が存在するのだと知りはじ

9. かもめのジョナサン

「 : : : 八 : : : 九 : : : 十 : : ・見てください、。 ショナサン、どんどんスビー ドが、おちてきます : : : 十一 : : : あなたみたいに、見事にびたっと、停 止をしてみたい・ : 十二 : : : でも、ちくしよう、ばくにはできない : 十三、この、最後の、三回が : ・・ないと : : : 十四・ : : ・ああっー」 最終段階でのフレッチャーの上昇失速は、自分の失敗への腹立たしさ ン と激怒のせいで、いっそう悪い状態になった。彼はひっくり返り、投げ サ ナ だされ、むちゃくちゃに背面きりもみしながら、あお向けに転落して行 ジ のき、そして彼の教師のいるところから三百メートル下で、ようやく体勢 を立てなおし、息をきらしてあえいだ。 「ばくなんかにかまうなんて、時間の無駄ですよ、ジョナサン ! ばく は駄目なやつなんだー どうしようもない間抜けなんだ ! 何度やった って、どうせものになりやしませんよ , 」 ジョナサンは、彼を見おろし、うなすいてみせオ 「あんなに無茶な急上昇をやらかしたりしてる限り、絶対にものにはな 100 ア」 0

10. かもめのジョナサン

なんぞしなかった。彼らは流れるように楽々と風に乗り、輝く翼をひろ げると、なんらかの方法で羽根のカーヴの角度を変えて足が地面につく と同時に停止したのである。実に見事なコントロールだったが、 こ疲れきっていて、それをためしてみるのは無理だ った。彼は海岸のその場所に立ったまま、ひとことも発せす、そのまま ン眠りこんでしまった。 ナ それから数日の間に、ジョナサンは、ここには飛行に関して学ぶべき のことが、これまでの彼の一生にあったのと同じほど多くあることを知ら された。しかし、それは今までのものとは違う事柄だ。ここには彼と同 じ考えを持っカモメたちがいた。彼らの一羽一羽にとって、生活の中で 最も重要なことは、自分が一番やってみたいことを追求し、その完成の 域に達することだ。そしてそれは空を飛ぶことだった。 彼らは全員、まさに素晴らしい鳥たちだった。そして毎日、何時間と なく飛行の練習をつづけ、さらに進んだ高等飛行法のテストをくり返し