商品ことの価格チェックポイント・ 3 章 ( を商品の特徴 アルミニウム 倍であったので、オイルショックを境にして、原油や天然ガスが安く手 の 5 大アルミ地金製錬メーカーがあった。しかし、電力費が世界の 6 ~ 10 時、日本には日本軽金属・三菱化成・住友化学・昭和電工・三井アルミ 私は、 1972 年から 1981 年まで、アルミ地金の担当者であった。その当 15 , 000kwh ~ 21 , 000kwh もの電力を消費するため、電気の塊といわれる。 と加工される。アルミナからアルミ地金 1 トンを生産するためには、 ボーキサイト→アルミナ→アルミ地金→アルミ圧延品・押出品→製品 3 番目に多い元素である。 アルミニウムは、地核中に含まれる元素の中で、酸素・硅素に次いで 価格も、 LME に追随することが多い。 界的な指標となっている。ニューヨークの COMEX や東京・大阪市場の METAL EXCHANGE= ロンドン金属取引所 ) の 3 ヶ月先物価格が、世 アルミニウムは国際商品であり、ロンドンの LME (LOND ON に入る国々との競争に、生産コストで太刀 打ちできなくなった。そのため、日本の製 錬設備は徐々に閉鎖され、各社は海外に投 資して開発輸入するようになった。 アルミは、日常的に使われている。アル ミサッシ等の建材、地下鉄や新幹線の車体、 航空機の機体、自動車のエンジンやラジェ ・アルミニウムの原料ボーキサイトの鉱山 日本アルミニウム協会 ) 147 ( 提供
ているに過ぎない。ファンダメンタルも、テクニカルも、手口の分析も、 あらゆる分析手法に精通し、相場の時宜に応じてそれらを使い分けるこ とこそ、相場に勝ち残る方法であると私は考えている。なぜなら、たっ た 1 つの理論で相場を予測できる方法は、いまだ発見されていないから である。 さて、需給バランスを見通すことは、商品価格の中長期的展望を描く 最善で最大の道具である。一例をあげよう。 トウモロコシの主な需要は、牛や豚などの家畜の餌である。ところが、 ここに植物性燃料としてのエタノール需要が急速に伸びてきた ( 2005 年 度には、全米のトウモロコシ需要のおよそ 15 % を占めた ) 。ガソリン価 格の高騰と、ブッシュ政権の積極的な非石油資源の活用政策によって、 一躍脚光を浴びているのがトウモロコシと砂糖である。 ◆米国のエタノール生産量 ◆ 2006 / 07 年度の米国トウモロコシ需要 輸出用 エタノ、ル用 8 % ) 食糧 工業用 ( 12 % ) ( 資料 : し S. Ene 「 gy 価f0 「 mation Administ 「 ation / 日 enewable Fuels Association) ( 資料 : 米国農務省 ) 百万ガロン 4 , 500 4 , 000 3 , 500 3 , 000 2 , 500 2 , 000 1 , 500 1 , 000 500 0 飼料用 ( 52 % ) 植物性燃料であるエタノールは、サトウキビやトウモロコシだけでな く、小麦やビートからでも作れる。 その生産コストはガソリンの半分程度であり、米国のトウモロコシか らではリッター当たり 33 セント ( 約 40 円 ) 、プラジルのサトウキビの場 合は 19 セント ( 約 23 円 ) といわれる。 米国の自動車メーカーは、低燃費車の技術開発に遅れを取った。日本 のトヨタやホンダのハイプリッド車が、市場を席巻してしまったからだ。 86
商品ことの価格チェックポイント・ 3 章 トウモロコシ A 商品の特徴 トウモロコシは、メキシコ料理店等で見られる、黒っほい干からびた ものをイメージしたほうがよい。 南米アンデス山麓の低地帯が原産といわれ、マヤ文明では主作物として 栽培されていた。トウモロコシの主な用途は、コーンスープや茹でて丸か じりする食材としてではない。これらは、むしろ例外的な需要である。 その約 8 割は、家畜の餌となる。プロイラーの体重を 1 キロ増やすため には、トウモロコシが ( 単独ではなく配合飼料等の形態となるが ) 2 キ ロ必要で、同様に、豚 4 ~ 5 キロ、牛 7 ~ 8 キロのトウモロコシが必要とな る。体重 150 キロの牛を 450 キロにしたいとすれば、 1 頭当たり 2.1 トン ~ 2.4 トンのトウモロコシが必要となる。 近年、中国等アジアの国々の生活水準が向上して、肉食が増加してき た。トウモロコシ需要はますます増加する傾向にある。 飼料以外の用途としては、コーンスターチと異性化糖がある。コーン スターチは、段ボールの製造や魚肉など練り物のつなぎに使われる。異 ニューヨークの砂糖価格が 1 性化糖は、かってのオイルショック時に ポンド当たり 66.5 セントまで上昇、東京粗糖もトン当たり 23 万円を突破 する大暴騰となったことがあり、その際に、砂糖を使うメーカーがトウ モロコシの糖分を利用することとなって、使われ始めたものである。現 在は、缶コーヒー・清涼飲料水・コーラ等の甘味料として使われている。 また、トウモロコシを原料として、エタノールと呼ばれる工業用アル 159
公正な価格の形成・ 5 章 2 再販価格 商品の価格は、いろいろな形でコントロールされている。 たとえば、その昔、資生堂は化粧品の小売価格を傘下の卸売店、小売 店に指示していた。しかし、公正取引委員会から、これらの指示は独占 禁止法第 24 条に規定される再販価格維持行為に該当すると指摘を受け、 いまでは資生堂等の化粧品メーカー等は、価格を「小売希望価格」とい う形でしか表示していない。 松下電器とダイエーの戦争は有名である。松下電器は、自社の電気製 品を全国の販売代理店に卸す際に、小売価格を指示していた。安売りを 標榜するダイエーは、松下プランドの電気製品を安売りした。 松下電器は、価格を維持するためにダイエーへの納入をストップした。 ダイエーは、松下電器を扱う他の卸売り業者から仕入れて、安売りを続 けた。松下は、ダイエーで売っている電気製品の製造番号を調べ、どこ の卸売り業者がダイエーに横流ししているかをつきとめた。ダイエーは 対抗して、製造番号をすべてャスリで削り取って販売した。 こうした戦争の末に、松下電器はついにダイエーの販売力に屈し、和 解して納入を再開。ダイエーは、独自の価格政策をとり続けたと聞く。 3 買い占め 有名な買い占め事件としては、ハント一族による銀の市場操作がある。 ハント兄弟は、 1978 年初め、米国ニューヨークの COMEX 市場で、 US ド ル 5 / oz 当たりから銀を買い始め、 79 年末には US ドル 29 / oz まで買い上が った。当初の目標は、 US ドル 15 / oz であったといわれたが、折からソ連 がアフガニスタンに侵攻したため、価格はさらに上昇し、一時的には US ドル 48 / oz まで急騰した。ハント兄弟は、石油で儲けた資金をつぎ込ん で買い進んだ。 191
ただ、最近は排気ガス規制がますます厳しくなっており、米国力リフ ォルニア州では、アーノルド・シュワルツネッガー知事が、温室効果ガ スの排出量を 2020 年に 1990 年並みに戻すことを定めた規制案に署名し た。また、排気ガス規制値を守れなかった車を作る会社の社長は、損害 賠償で訴えるとしている。 こうした環境規制に対処するため、自動車メーカーはさまざまな方法 で開発を進めている。 1 つはハイプリッド車。ガソリン自動車と電気自 動車の両方の特性を備えたものである。もう 1 つは、燃料電池を主力と した水素自動車。 3 つ目は、エタノール車である。また、家庭用電源で 充電して走る、電気自動車も開発されている。いずれも、自動車部品の 中で一番高価な触媒をできるだけ使わないで、環境規制をクリアしよう との動きとなっている。したがって、遠い将来も自動車触媒用にプラチ ナが必要とされるかは不透明である。 ④新しい用途ー燃料電池 将来のプラチナの大きな用途として、燃料電池があげられる。燃料電 池は、水素と酸素を反応させて電気を起こすものであるが、水素はメタ ンガスやガソリンから改質することが考えられている。その改質装置に は、プラチナの触媒が欠かせない。 また、プラチナはその耐腐食性、耐熱性から、アノード / カソード電 極として使われている。燃料電池の技術開発は日進月歩なので、今後ど うなるかわからないが、現段階では、燃料電池の普及はプラチナ需要の 増加につながる。自動車がすべて燃料電池になった場合は、いまの自動 車触媒需要の約 10 倍のプラチナ需要が生じるといわれている。南アでは、 プラチナ鉱山が 1 , 000 億円規模の利益を上げている。そのため、新たにプ ラチナを掘ろうという動きが活発になっており、これまでの 5 社に加え て、新たに 5 社が名乗りを上げている。こうした生産競争は、短期的に は過剰生産をもたらすであろう。 128
いない場合、金鉱山は、各国の政府が備蓄している金地金等をリースで 借り受ける。借りた地金を、市場に持ち込んで売却してしまい、現金を 受け取る。受け取った現金は、鉱山の運転資金とする。リースを受けた 金地金は、将来のリース契約の満期日に、自社の鉱山で生産した金地金 により返却する。 政府機関等、金地金をリースする人たちのメリットは、金地金を備蓄 していても一銭の金利も産まないが、鉱山会社にリースすることにより リース料が収入として入ってくる点である。問題は、鉱山が予定通り生 産してくれるかどうかの与信リスクだけである。 鉱山会社は、将来生産する金地金の代金を、リース料を支払って、い ま受け取ることができる。 この例も、将来の価格が下がるリスクを避けるために、いま先物で売 っておくという売りへッジの戦略の変形で、リース料を支払って地金を 借り、それを売却して将来の生産物で返済するものであった。 同様な売りへッジは、銅鉱山、アルミ鉱山、大豆やトウモロコシの生 産者でも行われている。米国や中国では、農業生産者を保護するために 多くの先物市場が設立された。日本には、農協等の強い反対により、い まだにコメが上場されていない。 こうした取引は一見複雑に見えるため、上司を説得するのが面倒だな どという理由で、長い間日本企業は敬遠してきた。しかし、金融取引の 発達で、 10 年ほど前からこうしたデリバテイプ取引が一般企業でも行わ れるようになってきた。最近では、都市銀行がメーカー等に、原材料の 購買価格や販売価格のヘッジを組み込んだ金融商品を売っているそうで ある。そうした取引は、エンロンのように大きな損失が出たときだけ新 聞紙上等で取り上げられ、あたかも危険なものと思われがちであるが、 先物などのデリバテイプ取引は、逆にリスクをミニマイズするためのリ スクマネージメントとして有効な手段である。日本でも、多くの企業が これらの仕組みを理解して、活用する時代がやがて来るだろう。 216
る。また、自国の通貨に信用が置けない場合は、預金をする代わりに金 塊を溜め込む。インドのダウリーという婚礼時の習慣では、花嫁側が、 年収の 7 倍ほどの金を持参するという。これは、通貨の役割を果たして おり、香港やインドの街中でよく見かける金商が、金の装飾品をいつで も時価で買い取ってくれるので、正に財産を持っことと同じ意味である。 そうした持参金代わりの装飾品需要は、 9 月から翌年 5 月にかけてのイン ドで増加する。これが、インドが世界一の金輸入国たる理由である。 金の需要は、イタリアや日本等の宝石メーカーが、クリスマス商戦に 向けて商品を製造する秋口に増加するという季節要因がある。トルコや 中国の宝飾品需要も 1 つの鍵である。これらの地域の政治経済動向、通 貨価値の動向などが、金価格に影響を与える。 ②地政学的リスク イラクの核開発問題や北朝鮮の核実験問題のように、先行きの世界情 勢に不安が生じたり、テロや戦争が懸念されると、金価格は上昇する。 自然災害等も、人的システムへの不安から、資金が金へシフトする動き を起こす。 2002 年の米国によるイラク侵攻で見られたように、ブッシュ大統領の 発言などから開戦が近いと見られると金価格は上がり、いざ開戦すると、 逆に金価格は値下がる。これは、石油価格も同じ傾向をたどった。いず れも、開戦と共に、イラクの抵抗が少なくてすぐに終戦を迎えると、 歩先を見越していたからだ。 ③経済不安 米国の景気が悪化し、ドル安になると、「セーフへプン」として金へ の資金シフトが進み、金価格は相対的に上昇する。米国不景気→資金が 米国から逃避→米国株安・ドル安→金高の図式。景気がよくなると、金 価格は下がる傾向にある。米国の連邦公開委員会 (FOMC) において、 118