薫 - みる会図書館


検索対象: 海猫 上巻
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1. 海猫 上巻

「温泉入ってあったまろうな、薫 ? 「そんなに先はいや」 薫はそう言うと、背伸びをして邦一の唇に自分の唇を合わせた。それだけで、薫は甘 い吐息を漏らすのだ。 「おまえは好きもんの嫁さんだ。そこがええ」 邦一はもはや熱情を抑えきれなくなり、ネクタイを乱暴にはずし、ワイシャツの胸を 愛あけて薫を強く抱きすくめた。そのままワンピースの下からタイツを引きずりおろすと、 の 薫を窓の枠に座らせ、足を開かせ中に押し入った。 雪 白 薫がまた大きな声をあげそうになり、邦一はその手で口元をおさえた。 章 邦一がどれだけ続けても、薫が苦しそうにすることは一度もなかった。薫という、大 おば こた 第きな泉はいつも際限なく彼を溺れさせようとした。邦一はそれに応えるのに必死だった。 そして終わると、薫はまたあどけない二十歳の顔をして、自分の横で小さな息で眠る のだった。 だが今日はまだ眠るわけにもいかない。 頬を上気させた薫に、もう一度タイツをはかせると、邦一は並んで散歩に出た。温泉 の中庭を、手をつないでぶらぶらと並んで歩いた。 「薫、俺な、一度だけ別の女とこの温泉に来たことあんだ」

2. 海猫 上巻

そのまま両手で、薫の細い手首をつかんだ。 おお 邦一の酔った息が薫のロを覆い、首筋に伝わり、薫はもがいた。もがいたが、邦一の 体重の下では、よけることもできないことに気がついた。 邦一の手が薫の部分を乱暴におしあけ、入ってきた。このときになってはじめて怖い たくま と思った。薫のプラウスやスカートはあっという間に引き剥がされて、邦一の逞しいも のが入ってきた。 猫酔っているというのに、邦一の動きは確かで、薫は心では強い反発を抱きながらも、 久しぶりの交わりにからだが反応してしまうのを覚える。歯ぎしりするように唇を固く 結んでいたというのに、抑え切れない吐息が漏れ始めると、邦一の表情が泣いているよ うに和らいだように見えた。そして、邦一は薫のなかでカ尽きた。 海交わりを終えた邦一は、まだからだを放さぬまま、薫の頬を撫でた。叩いたあとの頬 の部分が、赤くあとになっているのだった。 「俺はなんてことをしたんだべな」 薫は黒く煤けた天井を見上げながら、きっとこれが夫婦というものなのだと考えてい 幼い頃、父がいなかった薫には、夫婦というものの雛形がない。踊りの稽古の場など で大人の女たちが話しているのを聞くと、女は殴られたり、浮気されたりするのが当た 138 ひながた

3. 海猫 上巻

海 「あんたのことは、俺が絶対に見守っているから」 つか 広次が立ち上がって、薫の腕を掴んだ。 「心配でならねんだ」 かす 掠れた声が、薫に響いてきた。 その時だった。薫は意識が遠のき、すっと足下に崩れ落ちるのを感じた。 「どうした ? なあ、どうしたんだ」 猫体が急に軽くなって、左右に揺れている。鼓動が響き、血の気が失せていく中に、薫 なっ は懐かしい温かさを思い出していた。その温もりは、、 しつも寂しかった薫につかの間の 安らぎを与えてくれた。子供の頃、病気で倒れると、タミが仕事を休み、そうして薫を おぶって病院へと運んでくれたのだ。 往診にやって来た鹿部の医師は、薫が妊娠していることを告げた。 三ヶ月目の始まりということだった。 その晩は、家族は酒宴になったが、薫はまた船酔いに逆戻りしたかのように胸が悪く、 同時に山の上で聞いた話が気になってやまなかった。 うれ 夜が更けて布団に入ってからも、酔った邦一は嬉しそうに子供の話をした。 「男でも、女でもええ。薫、大事にしてくれな」 178 ふとん

4. 海猫 上巻

は、まるで違ったものに感じられた。夫にはいつも、まるで肉の中に分け入られてくる ような息苦しさがあり、それが同時に夬楽にも結びついたが、広次は薫の体をというよ りはむしろ、彼女の心を抱いているかのようだった。まるで真綿にくるむよ、つに優しく、 みつおほ 温かく全身で包み込むように彼女を抱き、それもまた薫を蜜に溺れるように夢中にさせ うな つめ 薫は広次の背に爪をたて、深く唸った。 愛美輝は、そのあえぎ声に驚き、叫ぶように泣き声をあげたが、二人はその営みをやめ 柱なかった。 氷 。いいって言ってくれや」 「気持ちいいか、薫 章「とてもいいわ」 第「大きな声で言ってけれや」 広次は、薫が兄のことを思い出してはいないかふと不安になり、よけいに薫の体に深 く沈んで行く。 「とっても、とっても : ・ 薫がそう言ったまま気を失うように果て、広次は薫の中に果てる。 脱力したまま、二人はなお畳の上で重なりあっており、広次は天を仰いだまま、腕の 中にある薫の汗で濡れた髪を撫でていた。 311

5. 海猫 上巻

薫は赤いフ 1 ドをかぶり、うなずいた。 美輝は、広次の腕の中でまだよく眠っていた。つんと上を向いた鼻、長い金色のまっ げ、こんな小さな生き物が生まれてくる神秘に、薫はまだ夢心地だった。 広次がタクシ 1 を拾いなだらかな坂を登って着いた場所は、あのとんがり屋根の教会、 ハリストス正教会だ。 「ここ ? 」 愛薫は一瞬足を止めるが、広次は赤ん坊を抱いたまま、少し背を丸め、通い慣れた足取 えしやく の りで中へ入っていく。広次は、入り口の教会員の男性に軽く会釈をすると、薫を中へ招 雪 白、た。そして、片手で薫の赤いフ 1 ドをはずした。 章暗い内部に、木製の椅子が等間隔にひっそり並んでいる。正面の祭壇の前には、黄色 第いろうそくが無数に立っていた。赤いグラスの中にも火があり、赤と黄色の光が内部で 揺れ続けていた。その向こうに 、たくさんのイコンが並ぶ。ろうそくの灯りが、ちりち りといぶっており、薫にはそれぞれが一つずつの生命のように思えた。 薫は、ゆっくりろうそくへ近寄り、内部を歩き、マリア像を見上げた。 広次は、薫に見とれていた。薫のろうのようにすべらかな頬に赤い光が反射して、白 い輪郭を浮かび上がらせている。やはり間違いではなかった。いっか自分が描いたこと のある絵と、まるで同じ薫の横顔だった。この場所にあまりによく似合っているのだ。 211

6. 海猫 上巻

海 g ほど美しかった。 「あ、俺もうだめだよ」 「だめ、私を放さないで」 「放さないよ。約東する」 ああ、という吐息とともに、広次は薫の中で脱力した。体の下には薫の温もりがあり、 だが女は意識を失っているかのように動かなかった。その額にはりついた髪を、撫でて 猫やった。目をつむった薫の表情は、だがいつにも増して頼りなく孤独に見えた。そう感 じると、広次のものはまたすぐに硬くなり、薫の中へと入っていきたくなった。だが広 次は、薫の手をそっと導くと、ただそれを握らせた。 「あ」 と、声を出して薫が目をあけた。 「広次さん、ありがとう」 薫はなぜかそう言い、眠ってしまった。 広次はその体を抱えたまま、夜を過ごした。大きく重たい扉が、ぎ 1 っと音を立てて 開いてしまったかに感じられた。同時に何か寂しかった。これでついに二人きりになっ てしまったな、と思ったのだ。

7. 海猫 上巻

ことを思い出していた。中でも海猫の目は海水で洗うとすぐに表面が濁るが、直前まで 放っている光彩は、宝石のようだった。 まぶた 広次はもどかしそうに衣類をはぐと、もう一度全身で薫を抱きすくめた。つぶった瞼 に、金色のまっげが輝いており、そこにも口づけた。 「来て、広次さん、お願い」 薫は震えるような声でそう言い、広次のそそりたつ物に手を添え、自分の中に導いた。 愛互いに、熱く吐息が漏れた。広次はその瞬間、海に溺れていた。呼吸も、手足もばら のばらに、ただ薫の体を探し続けた。海は常に溢れ、広次を救い出すことはなかった。こ 氷 んな性の感覚があったのかと思う。薫は白い首をのけぞらせて、どこか遠くへ行ってし 章 まうようだった。捕まえておきたい一心で、よけいに彼の性器は奥深くまで入って行こ 第 うとする。薫の手が広次の腕に巻き付けられる 「私の首をしめて」 薫は、つわごとのよ、つに一言った。 「もう何もいらない。ここで終わっていいから」 、だが性の高みへと登っていこうとす 広次は大きな手でその首をおさえ、苦しそうに る薫を見た。 それほどに乱れあえいでいても、いや、だからこそ一層薫はなおこの世の者と思えぬ 299 あふ

8. 海猫 上巻

だがその罪の感覚は同時に、邦一の中の男としての欲望をさらに燃え上がらせもした のである。 大きな手で頭を撫でてやり、その指で涙を拭ってやった。 「なんでもない」 薫は言う。 猫「なんでもなくねえべ。俺には何でもしゃべれ。しゃべらねばだめだ」 薫は首を横に振った。もう涙は乾いていた。 私はもうここの家の一人なのだからという、あのバスで嫁いできた日の誓いのような 気持ちが再び薫を強くした。 海邦一は、泣いていた薫の頬の冷たさと滑らかさに驚いていた。セルロイドの人形のよ うだった。よけいに、火をつけてみたくなる。その体に温かい血を流してみたくなるの ヾ」 0 「俺に何でも任せねばだめだ」 たが邦一の中にも、薫のことがどれだけわかっているのか、問いたい気持ちもあった。 邦一は、薫と出会い、すぐに結婚を決めた。 漁師の家に生まれた長男の人生は決まっている。立派な漁師になるしか道はないのだ。

9. 海猫 上巻

「風邪引くよ。これ着てください」 アノラックを手渡そうとすると、薫の目にじっと見入っていた邦一に、突然、抱き寄 せられた。 たくま 温かい逞しい体だった。これが男というものなのだと、薫は思った。 吐息が漏れる。 邦一は、薫を雪のたまった床の上に押し倒すと、自分と薫のズボンを下着ごと引き下 すきま 猫ろして強引に押し入ってきた。背中から雪が入ってくる。屋根の隙間から差し込む、冬 の鈍い光が見えていた。 「夫婦なんだから、当たり前だべー 「わかってる」 海薫がまた大声を出しそうになり、邦一はその柔らかく赤みを帯びた唇を、大きな手で 抑えた。 そうだ、当たり前なんだ、と薫は思った。けれど、夫婦になって、男の人に抱かれる す・ヘ というのは、こんなに全てを忘れるほどのものなのだろうか。この先には、何があるの だろ、つ。 「私、怖い」 「怖くなんかねえ。早く子供作ろうや」

10. 海猫 上巻

猫 いは薫邦奢 っ て く ーー 1 い浴 : 火あ ぶ衣たが のつ 久裾い薫 あ 見 感 の 。幸 の ら し り く ら 、止 は た は 体 の たるね つめ委 ロ のき身 動 0 り つ 柔ゆ福 た て れ強な 、中な た薫ま ぶ割邦 が薫 の柔 い方子て の頃 やし、 。も ん 、だ分薫な匂 薫し、 しを 許あたか れで だと にも っ いか おそ っか カゞの のは か余 は始 そに も計 の甘 は引 う匂 以 0 だ薫 前割 い人 と つば い漂 同 の腰 っそ のな い の腕でて の だを ら の性 かく な も 性わ かの っ首 へし 切な はが な の で 1 ノ て る れ な だ っ て 女 な だ の オよ ず 海 啓 と っ て ら 。は っ 数 ケ 月 を て い っ を あ のがだ っ て と い 思 た ら 薫 は 案 外 す ぐ そ つ 答 そ の 奮 し た 部 分 冷 た 指 握は体 る や自そ 分し も ち や を 取 り 民 し た 力、 よ っ が 華 や ぐ の 感 じ て た 皐男 部 つがは 。俄に のて興な懐弯 れした 、め て の 細 し、 そ な お 小 さ く て 華 な た 自 け の も 324 る ら甘 し、 の 、石カ かでは 力、 よ 0 こ ′つ も に隣き よ 。回そ邦 たそは はた筋 力、 ら し し、 、が ′つ て 顔 を め る