287 学 「これて、やっと、うまく、いく ! と、みんなが考えたけど、それは、みんなの間違いだった。というのは、山伏が山 を登ったリ降リたリするための、長い棒を、トットちゃんに渡したのが、いけなかっ となり た。トットちゃんは、立ってるたけて退屈してくると、その棒て、隣の山伏の足を、 つつついたリ、もう一人さきの山伏の、わきの下を、くすくったリした。それから、 しきしゃ また、その長い棒て、指揮者のまねをしたリしたから、まわリのみんなは、あぶなか ったし、第一に、富樫と弁慶の芝居が、それて、プチこわしになるのだった。 そんなわけて、とうとう、トットちゃんは、山伏の役も、おろされてしまった。 義経になった泰ちゃんは、歯をくいしばるようにして、ぶたれたリ、けっとばされ たリしたから、見る人は、 会 ( 可哀そうに ! ) 芸と思うに違いなかった。稽古は、トットちゃん抜きて、順調に進行していた。 一人ぼっちになったトットちゃんは、校庭に出た。そして、はだしになリ、トット ふう ちゃん風のバレエを踊リ始めた自分流に踊るのは、気持ちがよかった。トットちゃ んは、白鳥になったリ、風になったリ、ヘンな人になったリ、木になったリした。誰 たいくっ
こういわれた じよう じゅうめいわく 「おたくのお嬢さんがいると、クラス中の迷惑になリます。よその学校にお連れくた 若くて美しい女の先生は、ため息をつきながら、くリ返した こま 「本当に困ってるんてす ! 」 クラス中の迷惑になる、どんな ママはびつくリした。 ( 一体、どんなことを : ことを、あの子がするんだろうか : : : ) 、っちまき ーマのかかった短い内巻の毛を手て 先生は、カールしたまっ毛をハチバチさせ、 なてながら説明にとリかかった じゅぎようちゅう ん「ます、授業中に、机のフタを、百ペんくらい、開けたリ閉めたリするんてす。そ トこて私が、『用事がないのに、開けたリ閉めたリしてはいけません』と申しますと、 ふでばこ いおたくのお嬢さんは、丿ートから、筆箱、教科書、全部を机の中にしまってしまっ たと 劼て、ひとつひとっ取リ出すんてす例えば、書き取リをするとしますね。するとお嬢 窓 さんは、ますフタを開けて、丿ートを取リ出した、と思うが早いか、バタン ! とフ タを閉めてしまいます。そして、すくにまた開けて頭を中につつこんて筆箱から いったい
ろうか があリ、生徒に自習をさせて、廊下に出ますと、ほとんど毎日、あなたが廊下に立た されているんてす。そして、私が通リかかリますと、徹子さんは、私を呼び止めて、 『先生、私、立たされているんてすけど、どうして ? 』とか、 『私は、どんな悪いことをしたの ? 』とか、 きら 『先生はチンドン屋さん嫌い ? 』とか話しかけて来るのて、困ってしまうんてす。て すから、しまいには、職員室に用事があっても、戸を開けて見て、徹子さんが立たさ れていると、出るのをやめてしまいました。あなたの受持ちの先生も、よく職員室 て、私に、『どうして、ああなんてしよう』、と話してらっしゃいましたよそんなわ けて、あなたが後年テレピにお出になったとき、すく、お名前てわかリました。あん な昔のことなのに、あなたの一年生の頃のことは、はっきリと、おぼえていましたか カ ( 立たされていた ? ) 私は、全く自分て憶えていなかったことなのて、びつくリしま やさ と したが、同時に、朝早いテレビなのに出て来て下さった、白髪て優しそうな先生の若 あ い姿と、廊下て立たされているのにもかかわらす、なお、「知リたがリのテッコちゃ んーぶリを発揮している自分の姿を想像し、おかしくもあリ、同時に、やはリ退学
67 散 といった。トットちゃんは、どうして光らないか、を考えた。そして、いった。 「お星さま、いま、寝てるんしゃないの ? サッコちゃんは、大きい目を、もっと大きくしていった 「お星さまって、寝るの ?. トットちゃんは、あまリ確信がなかったから、早ロていった。 「お星さまは、昼間、寝てて、夜、起きて、光るんしゃないか、って思うんだ」 におう なか それから、みんなて、仁王さまのお腹を見て笑ったリ、薄暗いお堂の中の仏さま てんぐ あしあと を、 ( 少し、こわい ) と思いながらも、のぞいたリ、天狗さまの大きな足跡の残って る石に、自分の足をのせてくらべてみたリ、池のまわリをまわって、ボートに乗って る人に、「こんちはーといったリ、お墓のまわリの、黒いツルツルの、あぶら石を借 歩リて、石けリをしたリ、もう満足するくらい、遊んだ。特に、初めてのトットちゃん こうふん は、もう興奮して、次から次と、なにかを発見しては、叫び声をあげた。 かたむ ひぎ 春の陽差しが、少し傾いた。先生は、 「帰リましよう」 といって、また、みんな、菜の花と桜の木の間の道を、並んて、学校にむかった。 ね
150 「それて、それは面白いの ? 」 よう ママの質問に、トットちゃんは、びつくリした様な顔て、ママを見て、いった。 「ママだって、やってみれば ? 絶対に面白いから。てさ、ママだって、バンツ破け ちゃうと思うんだ々 トットちゃんが、どんなにスリルがあって楽しいか、という遊びは、こうだった。 つまリ、テッジョウモウの張ってある長い空地の垣根を見つけると、はしのほうか ら、トケトケを持ちあげ、穴を掘って中にもくリこむのが、ます「ごめんくださいま せ」て、次に、いま、もくった、ちょっと隣のトゲトケを、今度は、中から持ちあ げ、また穴を掘って、このときは、「ては、さようなら」といって、お尻から出る このとき、つまリお尻から出るときに、スカートがまくれて、バンツがテッジョウモ ウにひっかかるのた、とママにも、やっとわかった。こんな風に、次々と、穴を掘 リ、スカートやバンツもひっかけながら、「ごめんくださいませ」そして、「ては、さ ようなら」をくリ返す。つまリ上から見ていたら、垣根の、はしからはしまて、ジグ サグに、入ったリ出たリするのたから、バンツも破けるわけだった おとな ( それにしても、大人なら、疲れるだけて、なにが面白いか、と思えるこういうこと おもしろ
柳徹子はたった」というのてした。こんな天才とくらべて頂いて、と思いました が、エジソンも私と同して小学校を数カ月て退学になリ、アイン、ンユタインも、入る 学校もなく、どこか変な子、という、その辺リたけが似ているとわかリました。て も、こんな天才と名前を並べて頂けたのは光栄なことてした。ても、私が少し知った 事は、本当はなのに、親のしつけが悪いとか、努力が足リないとか、自分勝手な 子、という風にいわれてきた子が、かなリいるのだ、ということてした。どこか変っ た子、という風にも見られてしまう。知的に問題があるわけしゃなく、個性の強い子 も多く、得意の分野の勉強の、うんと出来る子どももいる好きなことは上手。 は、まだ研究がはしまったばかリて、わからない事が多く、早くとわかれは、周 リのみんなが、その子を理解し、自信を持たせて成長させていく事が出来ますが、そ 港うしゃないと、イジメにあったリ、自信をなくしたリ、大きくなって、ひきこもリに なってしまう事もあるらしいのてす。『の子どもを持っ会』のお母さまたちの中 ては、どうやら、私が完全にたった、という事になっていると聞きました。なん てあれ、子どもが、のびのびと、明るく元気に大きくなって欲しい、と、ねがってる 私にとって、そういう、お母さまたちも、『窓きわのトットちゃん』を読んて下さっ
と思って授業をしておリましたら、これが、また大きな声て、いきなリ、『なにして だれ るの ? 』と、誰かに、何かを聞いているんてすね。相手は、私のほうから見えません のて、誰だろう、と思っておリますと、また大きな声て、『ねえ、なにしてるの ? 』 って。それも、今度は、通リにてなく、上のほうにむかって聞いてるんてす。私も気 になリまして、相手の返事が聞こえるかしら、と耳をすましてみましたが、返事がな いんてす。お嬢さんは、それても、さかんに、『ねえ、なにしてるの ? 』を続けるの て、授業にもさしさわリがあるのて、窓のところに行って、お嬢さんの話しかけてる 相手が誰なのか、見てみようと思いました。窓から顔を出して上を見ましたら、なん と、つばめが、教室の屋根の下に、巣を作っているんてす。その、つばめに聞いてる んてすねそリや私も、子供の気持ちが、わからないわけしゃあリませんから、つば めに聞いてることを、馬鹿げている、とは申しませんても、授業中に、あんな声 て、つばめに、『なにをしてるのか ? 』と聞かなくてもいいと、私は思うんてす」 そして先生は、ママが、一体なんとおわびをしよう、と口を開きかけたのよリ、早 くいった。 「それから、こういうことも、ごさいました。初めての図画の時間のことてすが、国 こっ
288 もいない校庭て、いつまても、ひとリて踊った。 ても、心の中ては、 ( やつばリ、義経やリたかったな ) という気持ちが、少しあった。 ても、いさ、やったら、やつばリ、税所さんのこと、ひっかいたリ、ぶっちゃった リするに、違いなかった。 こうして、あとにも先にも、トモ工にとって一回だけの学芸会に、トットちゃんは 残念だけど参加てきなかったのだった。 トモ工の生徒は、よその家の塀や、道に、らく書きをする、という事がなかった。 というのは、そういう事は、もう充分に学校の中てやっているからたった。 じゅうぶん
176 そして、最後の全校リレーが、また、トモ工らしいのだった。なにしろ、リレーと いっても、長く走るところは、あまリなく、勝負どころは、学校の中央にあたる、つ せんすがた まリ門にむいて、お扇子型に広がっている、講堂に上がるコンクリートの階段を、か けのぼって、かけおリて来る、という、他には類のないリレーコースだった。ところ が、一見、たわいなく見えるのに、この階段の一段一段の高さが、ふつうの階段よ けいしゃ 、すーっと低く、傾斜がゆるく、しかも、このリレーのときは、何段も一足とびに ていねい やってはいけなくて、丁寧に、一段一段登って一段一段降リて来る、というのだか ら、足の長い子や、背の高い子には、むしろ、むすかしかった。ても、これは、子供 たちにとって、毎日、お弁当の時間にかけ上がる階段が、「運動会用」となると、ま しんせん た別のもののように思えて面白く、新鮮て、みんなキャアキャアいって、上がった まんげ・きよう リ、降リたリした。それは遠くから見ていると、美しく、万華鏡のようにさえ、見え た。階段は、てつべんまて入れて、八段あった。 さてトットちゃんたち一年生にとって、初めての運動会は、校長先生の希望どお おりがみ リ、晴天て始まった。みんなて、前の日から、折紙て作った、くさリとか、金色の星 かざ とか、いつばい飾ったからとってもお祭リみたいだったし、レコードの音楽も気持ち
ど、学校のはフタが上にあがるのごみ箱のフタと同しなんだけど、もっとツルツル て、いろんなものが、しまえて、とってもいいんた ! 』 おもしろ ママには、今まて見たことのない机の前て、トットちゃんが面白がって、開けたリ よ、フす 閉めたリしてる様子が目に見えるようだった。そして、それは、 ( そんなに悪いこと てはないし、第一、だんたん馴れてくれば、そんなに開けたリ閉めたリしなくなるた ろう ) と考えたけど、先生には、 「よく注意しますから」 といった。 ところが、先生は、それまての調子よリ声をもう少し高くして、こういった。 ん「それたけなら、よろしいんてすけど ! ち ママは、少し身がちぢむような気がした。先生は、体をすこし前にのリ出すといっ トた 劼「机て音を立ててないな、と思うと、今度は、授業中、立ってるんてす。すーっ 窓 ママは、またびつくリしたのて聞いた。 と ! 」 ちょうし