自分 - みる会図書館


検索対象: 窓ぎわのトットちゃん
109件見つかりました。

1. 窓ぎわのトットちゃん

106 、先生達にも手伝ってもらって、とうとう、講堂の床に、みんなの分だけのテント を張ってしまった。一つのテントは、三人くらいすっ寝られる大きさだった。トット ちゃんは、はやばやと、バジャマになると、あっちのテント、こっちのテントと、入 口から、はいすって、出たリ入ったリ、満足のいくまてした。みんなも同しように、 よそのテントを訪問しあった。 全部が、バジャマになると、校長先生は、みんなが見える、まん中にすわって、先 生が旅をした外国の話をしてくれた。 子供たちは、テントから首を半分だした寝ころんた形や、きちんと、すわったリ、 ひぎ もちろん 上級生の膝に、頭をもたせかけたリしながら、行ったことは勿論、それまて見たこと も、聞いたこともない外国の話を聞いた。先生の話は珍しく、ときには、海のむこう の子供たちが、友達のように思えるときも、あった。 そして、たったこれだけのことが : 、講堂にテントを張って、寝ることが : : : 子 きちょう 供たちにとっては、一生、忘れることの出来ない、楽しくて、貴重な経験になった。 校長先生は、確実に、子供のよろこぶことを知っていた。 先生の話が終わリ、講堂の電気が消えると、みんなは、ゴソゴソと、自分のテント

2. 窓ぎわのトットちゃん

128 の中に入っていた。それにしても、たった数カ月前、授業中に窓からチンドン屋さん と話して、みんなに迷惑をかけていたトットちゃんが、トモ工に来たその日から、ち ゃんと、自分の机にすわって勉強するようになったことも、考えてみれば不思議なこ とだった。ともかく、今、トットちゃんは、前の学校の先生が見たら、「人違いてす わ」というくらい、ちゃんと、みんなと一緒に腰かけて、旅行をしていた。 沼津からは、みんなの夢の、船だった。そんなに大きい船しゃなかったけど、みん こうふん な興奮して、あっちをのぞいたリ、さわったリ、ぶら下がってみたリした。そして、 いよいよ船が港を出るときは、町の人達にも、手を振ったリした。ところが、途中か かんばん ら雨になリ、みんな甲板から船室に入らなければならなくなリ、おまけに、ひどく揺 れてきた。そのうち、トットちゃんは、気持ちが悪くなってきた。他にも、そういう 子がいた。そんなとき、上級生の男の子が、揺れる船の真ん中に重心をとる形て立っ て、揺れてくると、 「オットットットットー・・ といって、左にとんてったリ、右にとんてったリした。それを見たら、おかしく て、みんな気持ちが悪くて半分、泣きそうだったけど、笑っちゃって、笑っているう

3. 窓ぎわのトットちゃん

108 んの家の人にも、秘密だった。その約束が、どういうのか、というと、それは、「ト ットちゃんの木に、泰明ちゃんを招待する」というものだった。トットちゃんの木、 といっても、それはトモ工の校庭にある木て、トモ工の生徒は、校庭のあっちこっち に自分専用の、登る木を決めてあったのて、トットちゃんのその木も、校庭のはしつ かきね くほんぶつ この、九品仏に行く細い道に面した垣根のところに生えていた。その木は、太くて、 登るときツルツルしていたけど、うまく、よし登ると、下から二メートルくらいのと ふたまた ころが、二股になっていて、その、またのところが、ハンモックのように、ゆったリ としていた。トットちゃんは、学校の休み時間や、放課後、よく、そこに腰をかけ て、遠くを見物したリ、空を見たリ、道を通る人たちを眺めたリしていた。 そんなわけて、よその子の木に登らせてほしいときは、 ごめん じゃま 「御免くたさいませ。ちょっとお邪魔します , ふう という風にいって、よし登らせてもらうくらい、〃自分の木〃って、決まっていた。 しようにまひ ても、泰明ちゃんは、小児麻痺たったから、木に登ったことがなく、自分の木も、 決めてなかった。だから、今日、トットちゃんは、その自分の木に、泰明ちゃんを招 待しようと決めて、泰明ちゃんと、約束してあったのた。トットちゃんが、みんなに

4. 窓ぎわのトットちゃん

いろんな鳥たちも、一緒に大騒きをしているように、さえすっていた。そのうちに、 どの、おなべからも、いいにおいがしてきた。これまて、ほとんどの子は、自分の家 ひかげん て、おなべをしーっと見つめたリ、火加減を自分てするっていう事はなく、たいが ふう い、テープルに出されたものを食べるのに馴れていた。。 たから、こんな風に自分たち て作る、という事の楽しさと、同時に、大変さと、それから食べものが出来るまて の、さまさまな、ものの変化などを知ったのは、大発見たったいよいよ、どのカマ ドも完成した校長先生は、草の上に、まるくなって座るように、場所を作ろう、と いった。おなべや、飯盒が、それぞれのグループの前に運ばれた。ても、トットちゃ んのグループは、トットちゃんが絶対にしようと決めていた、あの動作 : : : 、おなべ のふたを取って、 ん 危「あちちち : : : 」 をするまて、出来上がリを運ぶのを待たなければならなかった。そして、トットち ゃんが、少し、わさとらしく、 「あちちち : : : 」 といって、両手の指を両耳たぶにつけて、それから、

5. 窓ぎわのトットちゃん

216 めたために、大きい声て、 八マールコテンマールコテン タテタテョコョコ 丸かいてチョン マール子さん 毛が三本毛が三本毛が三本 あっという間におかみさん なんて、大きい声て歌いながら、まるまげを結った、おかみさんの絵を描いてる子 もいた。毎日、自分の好きな科目から勉強してよくて、つ人の声がうるさいと、自分 の勉強が出来ない〃というようしゃ困る。どんなに、まわリが、うるさくても、すく ふう 集中てきるように ! 』という風に教育されてるトモ工の子にとっては、この八マール コテンも別に気にならす、一緒に同調して歌ってる子もいたけれど、みんな自分の本 に、熱中していた。 トットちゃんのは、民話の本みたいのだったけど、「おなら」をするのて、お嫁に 行けないお金持ちの娘が、やっと、お嫁に行けたのて、うれしくなって、結婚式の みんわ よめ

6. 窓ぎわのトットちゃん

て、山を見た。 「終わったら、全部もどすけど、水のほうは、どうしたらいいのかなあ ! 本当に、水分のほうは、どんどん地面にすいこまれていて、その形は、もうなかっ た。トットちゃんは、働く手を止めて、地面に、しみてしまった水分を、どうした ら、校長先生との約束のように、もどせるか、考えてみたそして、結論として、 ししと決めた。 ( しみてる土を、少し、もどしておけば、、、 から 結局、うすたかく山がてきて、トイレの池は、ほとんど空になったというのに、あ のお財布はとうとう出て来なかった。もしかすると、ヘリとか、底に、びったリ、く つついていたのかも知れなかった。ても、もうトットちゃんには、なくても、満足た った自分て、これたけ、やってみたのだから本当は、その満足の中に、『校長先 生が、自分のしたことを、怒らないて、自分のことを信頼してくれて、ちゃんとした 人格をもった人間として、あっかってくれた』ということがあったんだけど、そんな むずか 難しいことは、トットちゃんには、また、わからなかった。 ふつうなら、このトットちゃんの、してる事を見つけた時、「なんていうことをし しうところた てるんだ , とか「危ないから、やめなさい」と、たいがいの大人は、、

7. 窓ぎわのトットちゃん

「そうてす、私は、い、 し子てす ! そして、自分てもいい子たと思っていた。 たしかにトットちゃんは、、、 しし子のところもたくさんあった。みんなに親切だった し、特に肉体的なハンディキャップがあるために、よその学校の子にいしめられたリ する友達のためには、他の学校の生徒に、むしゃぶリついていって、自分が泣かされ けが ても、そういう子の力になろうとしたし、怪我をした動物を見つけると、必死て看 びよう めずら 病もした。ても同時に、珍しいものや、興味のある事を見つけたときには、その自分 の好奇心を満たすために、先生たちが、びつくリするような事件を、いくつも起こし なていた。 たと な例えは、朝礼て行進をするときに、頭の毛を二本のおさけにして、それぞれの尻っ うで ぽを、後ろから、両方の、わきの下から出し、腕て、はさんて、見せびらかして歩い そうじ ゆか まてみたリ、お掃除の当番のとき、電車の教室の床のフタを上げて : : : それはモーター 本の点検用の上げプタたったんだけど、それを目さとく見つけて持ち上けて : ・ を捨てて、いさ閉めようとしたら、もう閉まらないのて、大さわきになったリ。ま かぎ た、ある日は、誰かから、牛肉は大きな肉の固まリが、鈎からぶら下がってると聞く かん

8. 窓ぎわのトットちゃん

244 「いいわよ といったのて、なんたかわからないけど、運んだのたった。この耳たぶの動作を、 まんぞく 誰も「ステキ」とはいってくれなかったけど、トットちゃんは、もう満足していた。 みんなは、自分の前のお茶碗と、おわんの中の湯気の立っているものを、見つめ た。お腹も空いていたし、第一に、自分たちて作ったお料理なんたから よーく噛めよたべものを : : : の歌に続いて、「いたたきまーすーといったあ と、林の中は、急に静かになった。滝の音だけになった。 「本当は、いい子なんたよ」 校長先生は、トットちゃんを見かけると、いつも、いった。 「君は、本当は、いい子なんだよ ! そのたびにトットちゃんは、一一ッコリして、とびはねながら答えた。

9. 窓ぎわのトットちゃん

「お名前は ? と聞くと、必す、 「トットちゃん ! 」 と答えた。小さいときって、ロがまわらない、ってことだけしゃなくて、言葉をた くさん、知らないから、人のしゃべってる音が、自分流に聞こえちゃう、ってことが おさな せつけん あるトットちゃんの幼なしみの男の子て、どうしても、「石鹸のあぶく」が、「ちえ んけんのあぶけ」になっちゃう子や、「看護婦さん」のことを、「かんごくさん」とい っていた女の子がいた。そんなわけて、トットちゃんは、 「テッコちゃん、テッコちゃん と呼ばれるのを、 と「トットちゃん、トットちゃん」 こ と思い込んていたのだった。おまけに、「ちゃんーまてが、自分の名前だと信して の 前いたのだった。そのうち 、ババたけは、いっ頃からか すけ 名 「トット助」 と呼ぶようになった。どうしてたかは、わからないけと こ ごろ 。、ババたけは、こう呼ん

10. 窓ぎわのトットちゃん

310 た。この顔のときは、自信があリ、いい子だと、自分ても思っているときたった ひざ 先生は、膝を、のリ出すようにして聞いた。 「なんだい ? ー トットちゃんは、まるて、先生の、お姉さんか、お母さんのように、ゆっくリと、 やさしく、いった。 かなら 「私、大きくなったら、この学校の先生に、なってあげる必す、 先生は、笑うかと思ったら、そうしゃなく、ましめな顔をして、トットちゃんに聞 した 「約東するかい ? ー 先生の顔は、本当に、トットちゃんに、「なってほしい、と思っているように見え た。トットちゃんは、大きくうなすくと、 「約束 ! と、いった。いいながら、 ( 本当に。絶対に、なる ! ) と自分にも、 ずいぶん しゅんかん この瞬間、はしめて、トモ工に来た朝のこと : : : 随分むかしに思えるけど、あの一 年生のときの : : : はしめて、先生に、校長室て逢ったときのことを思い出していた いいきかせた