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検索対象: 肩ごしの恋人
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1. 肩ごしの恋人

集英社文庫目録 ( 日本文学 ) 恵孤独で優しい夜夢枕獏純情漂流 山本文緒あなたには帰る家がある唯 恵恋人はいつも不在夢枕獏絢爛たる鷺 山本文緒きらきら星をあげよう唯 いただき 恵あなたへの日々夢枕獏神々の山嶺山 山本文緒ほくのパジャマでおやすみ唯 恵シングル・プルー夢枕獏・編著奇譚カーニバル 山本文緒おひさまのプランケット唯 恵愛しても届かない夢枕獏慶応四年のハラキリ 山本文緒シュガーレス・ラヴ唯 恵イプの憂鬱夢枕獏空気枕ぶく先生太平記 山本文緒野菜スープに愛をこめて唯 恵めま 夢枕獏仰天・文壇和歌集 山本文緒まぶしくて見えない唯 恵病む月夢枕獏黒塚 山本文緒落花流水唯 どくろ 恵さよならをするために隹 恵明日はしめる恋のために夢枕獏ものいふ髑髏 唯 恵彼女は恋を我慢できない唯 恵海色の午後由良三郎網走ー東京殺人力ルテ 唯 隹 恵川年やりました唯 恵肩ごしの恋人由良三郎聖域の殺人力ルテ こもち 隹 恵シフォンの風悠玄亭玉介幇間の遺言横尾忠則絵草紙うろっき夜太 恵キスよりもせつなく夢枕獏怪男児横森理香恋愛は少女マンガで教わ「た 恵ロンリ 唯 ・。ンプレ , クス夢枕獏仕事師たちの哀歌森語横森理香の恋愛指南 恵彼の隣りの席夢枕獏仰天・平成元年の空手チプ横森理香凍った蜜の月 せいらくどうすいむたん 恵ただそれだけの片想い夢枕獏聖楽堂酔夢譚吉沢久子老いをたのしんで生きる方法 川川川川川川川川 エレジー

2. 肩ごしの恋人

するならば、『肩ごしの恋人』は、純然たる恋愛小説であり、同時にまた、家族小説でもあ る。 複数の人間が一緒に暮らし、互いが互いの居場所となり、人生に立ち向うときの支えであ り避難所である、とするなら、彼らを家族と呼んでわるい理由はない。 とんきよう この小説の結末は、だからものすごく晴れ晴れしている。最後に暗示される頓狂な未来 像は、実はまるで頓狂などではなく、切実で堅実で、むしろ古典的とさえ言うべき家族観に 裏打ちされた、たくましい結末だと私は思う。 今年は夏が随分暑かった。唯川さんの住む軽井沢はすっと涼しいんだろうな、と、ときど しらかば き思う。白樺の林を散歩したりしているかしら、とか、空の色はもうつめたいくらいの澄ん とか だ青に違いない、 唯川さんが引越をされてからというもの、夜、バーでお酒をのんでいるときに、いまごろ、 さび この東京のどこかおなじ空の下で、唯川さんものんでいるにちがいない、 と、思えなくて淋 し以前し。 ーこま、電話で居場所を聞きあって、すぐ合流したりもできたのに。 説この小説が直木賞を受賞した夜も、私がお祝いを言った場所はバーだオ こっこ。編集者や友人 たちに囲まれた唯川さんが、「直木賞を受賞しても、唯川はずっと唯川です」と、かっこよ 解 く挨拶されたことを思いだす。梨の筆を持っ女は、あの夜も、もちろん大層ダンデイだった。

3. 肩ごしの恋人

江國香織 この小説は、たんたんとしている。白々している。そこがおもしろい なし 唯川恵の筆は梨でできているのではないか、と思うくらいだ。世の中には、ステーキの筆 で書いたみたいな小説も、焼き魚の筆で書いたみたいな小説もある。そういった小説の文章 しし、脂肪があったり焦げ目があったりする。唯川さんの筆は梨であるから、脂肪だの焦げ 目だのはない。あるのはみずみずしさと、どこまでもさくさくした歯ざわりのよさだ。 単語に余計な気配をまとわりつかせないことも、その筆の性質と関係があるのだろう。 『肩ごしの恋人』のなかから幾つか拾ってみる。 青果市場。依願退職。全身オイルマッサージ。噂。カクテル。セックス。太っ腹。ナイト ウェア。値踏み。 唯川さんの小説においては、ひとつずつの一一 = ロ葉が、辞書にのっているときと同じ顔をして そこにある。単語だけではない。 また拾ってみる。 女のアソコ。くたびれた上司。やられてる、という甘美な被害者の気持ち。お尻は三角に なり、膝や肘が角質化して、七センチのヒールも履けなくなる。家出した人妻。オカマの酔 解説ーー「梨の筆」

4. 肩ごしの恋人

っ払い ついった、普通なら強すぎる印象を与えてしまいがちな一一 = ロ葉も、アルファベットみたい に機能的かつあっさりと存在できる。これは、私が唯川さんの小説を読むたびに、いちばん びつくりすることだ。辞書にのっているときのままの顔で、しつかり使われる一一一一口葉たち、そ れを可能にする梨の筆。 唯川さんの小説を読むしみの一つに、アフォリズムがある。『肩ごしの恋人』にも、も ちろんある。「女はいつだって、女であるということですでに共犯者だ」とか、「我慢してい とこかで安 る女はみんな貧乏臭い顔をしている」とか、「男が結婚しているという事実は、、、 心感を連れて来る」とか。どうしたって、深くうなずいてしまう。 という点だ。正しい すばらしいのは、唯川さんのアフォリズムは絶対に説教にならない、 著者は、ト説において説教なんかしている暇はないはずだ、と固く信じている私はまた、正 ということも固く信じている。 ( = しおいて説教なんかされている暇はない、 しい読者は、 一冊の小説のなかには時間が流れている。著者も読者も、だから前に進まなくてはならない。 説ひとところにじっとしてはいられないのだ。 この小説は、前へ前へ進む。数々のアフォリズムも、また、たとえばしばらく家を離れて 解 いた妻が、ひさしぶりにマンションに帰ったときの部屋の違和感、「同じ水槽なのに、中を 満たしている水が変わってしまったような感じ」という直接肌に響くような表現なども、夜

5. 肩ごしの恋人

330 空の星のように美しくそこにあるのみで、読者を立ちどまらせて物語の進行を妨げたりしな さらさらと、さらさらと、小説は進んでいく。 唯川さんの文章の持つ、この前へ前へ進む力は上品さだと思う。梨のような上品さ。まる で唯川さん本人みたい。 るり子と萌。五歳のときから親友どうしの二人の女。読みどころは、なんといってもこの 二人のそれぞれの女つぶり ( そういえば、この小説の雑誌連載時のタイトルは「シュガーコ ート」だった。シュガーコートされているーーーあるいはたゆみない努力によって、自らをシ ュガーコートしているーー女たち、という感じがして 、、いなあと思った ) 。 私は個人的にはるり子という女が好きだ。「鮫って、常に泳いでないと死んでしまうんだ ほんろう って。私も常に愛に翻弄されてないと生きてゆけないのよ」などとのたまう「鮫科の女」る りこ , 「どんなに落ちぶれても、我慢強い女にだけは絶対にならないでおこう」と「常々 心に誓っている」女、るり子 ! 小説の最後で、萌がそのるり子に言う一一一一口葉は、だからこそ 詳烈だ。 女のダンディズム、とでも言いたいような何かが、るり子にはある。この、ダンディズム というのは唯川さんの小説の底に、つねに流れているものだ。 推理小説が推理をツールとして人間を描く試みであるように、時代小説が時代をツールと して人間を描く試みであるように、恋愛小説が恋愛をツールとして人間を描く試みであると さめ

6. 肩ごしの恋人

集英社文庫 肩ごしの恋人 唯川恵 集英社

7. 肩ごしの恋人

眉 集英社文庫 しの恋人 唯川恵 集英社版

8. 肩ごしの恋人

ゅ。肩ごしの恋人 0 0 I S B N 4 ー 0 8 ー 7 4 7 7 4 4 ー 4 C 0 1 9 5 \ 6 0 0 E 欲しいものは欲しい、結婚 3 回目、自称鮫科の女「るり子」。 仕事も恋にものめりこめない クールな理屈や「萌」。性格も 考え方も正反対だけど二人は 親友同士、幼なしみの 27 歳。 この封照的な二人が恋と友情 を通してそれぞれに模索する 、、幸せ〃のかたちとは 女の本音と日常をリアルに写 して痛快、貪欲にひたむきに 生きる姿が爽快。圧倒的な共 感を集めた直木賞受賞作。 9 7 8 4 0 8 7 4 7 7 4 4 5 集英社文庫 唯川恵作品 さよならをするために 彼女は恋を我慢できない O 凵 0 年やりました シフォンの丿虱 キスよりもせつなく ・コンフレックス 彼の隣りの席 ただそれだけの片想い 孤独で優しい夜 恋人はいつも不在 あなたへの日々 シング丿レ・プ丿レー 愛しても届かない イプの憂鬱 めまい 病む月 明日はじめる恋のために 海色の午後 肩ごしの恋人 肩ごしの恋人 C)PHOT()/TOM()KI FUT と SHI 0 0 唯川恵 0 1 9 2 0 1 9 5 0 0 6 0 0 1 定価本体 600 円十税 解説・江國香織 0 唯川恵 ( ゆいかわ・けい ) 一九五五年金沢市生まれ金沢短期 大学情報処理学科卒。銀行勤務を経 て八四年「海色の午後」でコバルト ・ノベル大賞受賞。以後、恋愛小説 やエッセイを発表し、〇二年「肩ご しの恋人」で第一一一六回直木賞受賞 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 集英社文庫 ゅー 5 ー 19 カバー・杉田達哉 集英社文庫

9. 肩ごしの恋人

集英社文庫 こいびと 肩ごしの恋人 2004 年 10 月 25 日 第 1 刷 かわ 川 山尚 定価はカノヾーに表 示してあります。 著者 発行者 発行所 印刷 製本 唯 谷 株式 会社 ゆい 義 けい 集英社 東京都千代田区ーツ橋 2 ー 5 ー 10 〒 101 ー 8050 ( 3230 ) 6095 ( 編集 ) 電話 03 ( 3230 ) 6393 ( 販売 ) ( 3230 ) 6080 ( 制作 ) 凸版印刷株式会社 凸版印刷株式会社 本書の一部あるいは全部を無断で複写複製することは、法律で認められた 場合を除き、著作権の侵害となります。 造本には十分注意しておりますが、乱丁・落丁 ( 本のページ順序の間違い や抜け落ち ) の場合はお取り替え致します。購入された書店名を明記して 小社制作部宛にお送り下さい。送料は小社負担でお取り替え致します。 但し、古書店で購入したものについてはお取り替え出来ません。 ⑥ K. Yuikawa 2004 Printed in Japan ISBN4-08-747744-4 C0193

10. 肩ごしの恋人

だって組むかもしれない。所詮、それくらいのことだもの」 「じゃ聞くけど、どこまでならいいの ? 腕を組むのは O だったら、キスはどう ? 」 るり子は少し考えた。 「よ」 「じゃあ、セックスは ? 」 るり子は足を止め、崇を振り返った。 「よ」 「だったら、いけないことって何さ」 しばらく考えてから答えた。 「今の生活を壊すようなこと」 「つまり、ダンナが離婚したいとか言うってこと ? 」 「まあ、そうなるかな」 たまがわ 黙ってふたりは駅に向かって歩いた。多摩川が近付いて、風にかすかな川の匂いがした。 「なあんだ」 人 恋急に、崇が納得したように頷しオ し「どうしたの ? 」 肩「つまり、おたくはダンナを愛してるんじゃなくて、結婚を愛してるんだ」 的るり子は改めて崇を見つめた。崇の言葉が、妙にすとんと胸の中に落ちていた。