化学 - みる会図書館


検索対象: 食品の裏側 2
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1. 食品の裏側 2

はじめに 添加物は自分で食い止められる 私たちの日常生活を見渡せば、殺虫剤、芳香剤、農薬、化粧品など、実に多くの化学物 質に囲まれていることに気づかされます。 こうした化学物質は私たちの生活を非常に便利にしてくれた反面、時と場合によっては 健康や環境に悪影響を与えることもありうるわけです。 私は年間、食品添加物の現場にいますが、同時に農水省指定の認証機関で有機農業の h< 判定員として農薬、化学肥料問題に取り組み、さらには経産省管轄の国家資格の公 害防止管理者として環境汚染物質に取り組んできました。つまり化学物質に対してさまざ まな角度からアプロ 1 チしてきたわけです。 その私がつくづく思うのは、私たちの生活を支える化学物質のうち、もっとも「わかり やすく、防ぎやすいーもの、それが食品添加物だということです。食品添加物こそは自分 の努力次第で自分たちに入ってくる前の段階、玄関で食い止めることができるものです たとえば放射能が不安だからといって、みんなが原発のないところに引っ越せるわけで はないし、・ 5 が中国から飛んできたからといって空気を取り替えることはできま

2. 食品の裏側 2

特 付 録 えるでしよう。甘味倍率が高く添加量が少ない ので、フェニルアラニン化合物を含むという表 ~ 天然甘味料 一小は不要となります。 天然だけど化学反応での 甘さはなんと砂糖の 1 万倍です。甘さに雑味 改良品もあり がなく、糖類との相性もよいので、使用するメ 天然甘味料と呼ばれる添加物は種以上あり 1 カーも 500 社を突破。今後はもっと消費量 が伸びるものと思われます。 ますが、一般によく見るのは、「甘草 ( カンゾウ ) これらの合成甘味料を支えるのは、甘いもの と「ステビア」です。 を食べ力し ( 「甘草ーはグリチルリチンとも呼ばれ、煮出 こ、ナど、カロリ 1 が気になるという私 たちのカロリー恐怖症です。ですから人工甘味】し汁は古くから漢方薬にも利用される植物です。 添加物の「カンゾウ抽出物ーも熱水で抽出し、 料は、常に品薄状態です。 粉末化したものです。さらに甘味の改善や安定 ある中学校での講演会で女の子からこういう させるために、酵素処理でブドウ糖をくつつけ 質問を受けました。「なぜ甘いのにカロリーオ フなんですか ? 」。答えに迷いましたが、「食 、酵素分解で甘味を抽出物の 5 倍に強めた りするのです。また、化学反応させたグリチル べ物じゃないから」と答えました。一瞬会場が 静かになり、次にドッと爆笑が起こりました。 リチン酸 ( 一 l) ナトリウムは、しようゆ、みそ に限って使用が認められ、グリチルリチン酸 ( 三 ) ナトリウムは 1991 年に禁止になりま 247

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章・ さになり主亠 9 ・ では、生のほうれん草 100g と粉末青汁の同量 100g を単純に比べるとどうなるで しようか。 1 袋入りの青汁とすると、芻袋分と比べることになります。不公平にもほ どがあります。水分のない粉末青汁のほうが数字の上では圧倒的に栄養価が高くなるのは 当然でしよう。 ビタミン O にしろ、食物繊維入りにしろ、表一小がトリッキ 1 なメーカーはモラルとその メ 1 カ 1 の製品を疑いたくなりませんか 発がん物質入り ? トクホコーラ 「トクホのコーラから発がん物質が検出ーという報道がありました。 コ 1 ラの色であるカラメル色素の中に含まれる不純物、 <->— ( 4 メチルイミダゾール ) か 2011 年に米国で発がん物質にリストアップされたことに端を発します。 カラメルは、家庭で砂糖を焦がしてつくるのと原理は同じですが、工業的にはデンプン や砂糖の原料を焦がして、その後アンモニア化合物や亜硫酸化合物、あるいは両方で化学 処理を行います。その過程で 4 ーが発生するのです。 ・添加物なしにはつくれない食品

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られています。 かつおやいりこを粉末状にしてパックしただけのタイプもありますが、中には限りなく 「黄金トリオ」に近いものを入れているタイプもあります。 まず「合成保存料不使用」という表現ですが、なんという保存料を使用していないとい いたいのか、理解に苦しみます。そもそも乾燥品のだしの素に保存料は不要ですし、ソル ビン酸、安息香酸、ナイシンなどの合成保存料は、もともとだしパックには法的に使用で きません。だしに限らず、このような誇張した表現は、サッカーで「俺たちは手を使わず に勝った ! 」と威張っているのと同じです。 次に「化学調味料無添加」という表示。化学調味料は使っていないものの、「酵母エキス」 「たんばく加水分解物」が配合されている場合があります。 私が商品開発をしていた時、「化学調味料はイメ 1 ジが悪いから、天然に替えてほしい」 という要請を受けることがありました。そんなときは、この「酵母エキスーを化学調味料 の代わりに使用しました。この酵母エキスはうまみ専用の「トルラ酵母」を培養して抽出 します。グルタミン酸ソ 1 ダと核酸系うまみ調味料を混ぜたようなうまみを持っています。 化学調味料に比べ、 ハンチカは弱いものの、量を多く使えば、化学調味料に劣りません。 ・添加物なしにはつくれない食品

5. 食品の裏側 2

ゆでうどんの殺菌にも使用されていましたから、製麺屋さんも大弱り「これで配達が できなくなる、商売に直接打撃だ」と落ち込んでいました。 その後、最終食品に残存しない条件で認められることになりましたが : また、米こうじに含まれている天然物で「コウジ酸」。野菜や水産加工品の変色防止剤 これは肝細胞腫瘍の発生、染色体異常の可能性があると報告 として使われていましたが、 され、 2004 年に禁止になりました。現在は化粧品に使われています。 コウジ酸が使えないと、カット野菜の切り口や、あじの開きが黒ずむことを防げません。 コウジ酸を主流に製造販売していたある添加物メーカーは、この禁止がきっかけで倒産し てしまいました。 1947 年月に食品衛生法が制定されて以来、約年間で品目以上の化学的合成 加物 ( 指定添加物 ) が削除されました。 いったんは「安全だ」と認可したはずなのに、何年も経ってから禁止になるというのは どういうことでしようかそのほとんどが、後から発がん性が確認されたというものです。 よく知られるのは人工甘味料の「ズルチンー「チクロ」、保存料の「」です。 す。 イ小、 100

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章・ そのエネルギーコストは商品価格に上乗せになります。 売る人と買う人は、お互いにつながりを切ってしまったのです。 添加物と付き合う 3 原則 結局、私たちは何を優先して、何を捨てるか、自ら選択しなければいけないのだと思い ます。 添加物と付き合うにあたって大事なこと、それは次の 3 原則に集約できます。この 3 原 則は添加物のみならず、農薬、環境物質、放射性物質など私たちが化学物質と付き合う際 にすべて当てはまることです。難解な化学物質が、少し身近な問題として見えてくるので ~ ーオい力し」田 5 い土玉亠 9 ①メリットとリスクを同時に考える「おかげ」と「せい」を知る ②ニ者択一の覚悟をする化学物質を摂る以上、リスクの覚悟が必要 〇優先順位は何か「自分の」「家族の」「社会の」「日本の」優先順位 ・私たちは添加物とどう付き合えはいいのか

7. 食品の裏側 2

第 章・・ 難解な化学物質が、なんとなく身近な問題として思えてきます。 リスクを承知でメリットを取るのか、あるいは不便さを引き受けて、リスクを減らすの か添加物に限らず化学物質のメリットとリスクとは、こういうことです。 2 「ニ者択一の覚牾」をするーーリスクの覚悟が必要 メリットとデメリットを踏まえた上で、私たちは「二者択一の覚悟」をしなくてはなり ません。 コンビニやファストフ 1 ド、でき合い調理済み食品を買い、インスタント食品などです ませば便利で簡単に食べられます。しかしそこで摂取することになる添加物は、 100 種 類、 200 種類以上です。さらに家庭で食べるよりもはるかに多い塩分・糖分・油分を摂 ることになり一ます 摂った以上は、添加物によるリスクを覚悟しなければいけないのです。 化学物質に限らず、物質文明にはリスクがっきものです。 若いころ、アメリカに出張した時、ロ 1 カル空港に着陸する機会がありました。 飛行機は 100 人も乗れない、見るからに型式の古い汚れた機体でしたから、一抹の不 ・私たちは添加物とどう付き合えばいいのか

8. 食品の裏側 2

第 章・・ た。「添加物ありき」からすべての食品づくりが始まるのです。 安全性については、入社当初に大手上場の添加物メーカーの博士号を持っている研究者 から「安全性は確認されている」「安全性を問う必要はない」と教えられました。 もともと私は物理、化学、数学の好きな理系バカともいえる学生でしたから、科学で証 明できない事象は一切受けつけないし、科学がすべての基準と思っていました。だから偉 い人の説明もすべて真に受けていました。 しかし、その「科学」が万能ではないと知ったのは、皮肉にも添加物の仕事に携わって からでした。 メーカーのいう安全、国が認めた安全。その裏側には、食品添加物メーカ 1 にも国にも、 データによる安全性の「過信」があり、販売業者、それを使用する工場の「盲信」があっ たと思います 安全と断言してしまうから、リスクが生じた時に話がややこしくなり、解決の糸口さえ 見つからなくなってしまうのではないでしようか 添加物に限らず化学物質はメリットとリスクの両方がある両刃の剣です。 化学物質に携わる方は、いわば「両刃の剣士」です。剣士に求められるものは、知識、 ・添加物の認可をめぐるおかしな現状

9. 食品の裏側 2

増え続ける添加物 日本における添加物の現状はまったく変わっていないどころか、深刻化していると「は じめに」で述べました。それを端的に表しているのが、使用が許可されている添加物の数 です。その数は年々増え続けています。 添加物は、厚労省が認可 ( 指定 ) したものだけが使用されます。合成品は「指定添加物 天然系は「既存添加物ーと呼ばれ、そのほか「天然香料ー、食品を添加物として使う「一 般飲食物添加物ーの 4 つのグル 1 プに分かれます。 2001 年における化学的合成添加物 ( 指定添加物 ) は 338 品目、前著『食品の裏側』 を書いた 2005 年時点では 357 品目でした。 ところが、本稿を書いている 2013 年 8 月時点で、化学的合成添加物は 436 品目。 この肥年間に約 100 種類近く増えているのです。 化学的合成添加物 ( 指定添加物 ) が 430 あまりというと、「ずいぶん多いのね」と思わ れるかもしれません。しかし、本当は「 436 」ではなく、「 4500 」だといったら驚 かれるでしよ、フか

10. 食品の裏側 2

第 つくるのはしようゆ職人。長いもので 3 年かかります。長年の経験と勘が必要とされる 仕事です。 これに比べて置き換えはこうです。 ますは、しようゆのうまみとなる主成分のアミノ酸液を速く大量につくります。ここで 化学です。たんばく質は色々なアミノ酸が連なって出来ていますから、塩酸で大豆のたん ばく質をアミノ酸液に分解します。塩酸というと毒劇物ですが、添加物としても認められ ています。コストダウンのための省力、大量生産の典型です。昔は「化学しようゆ」とも 呼ばれていました。 その後、塩酸はカセイソーダで中和されることで水と塩となります。塩酸とカセイソ 1 ダは最終食品には残らないということで、表一小の必要はありません。 ここで使われる大豆は、汕をしばった後の脱脂加工大豆です。小麦タンパクのグルテン も一部、原料として利用されることがあります このアミノ酸液に、丸大豆しようゆと比べて足りないものを添加物で補います。うまみ は化学調味料、色はカラメル色素、甘みはサッカリン、塩辛みをやわらげる天然甘味料 〔 * 邑のカンゾウ、とろみは増粘多糖類等と組み立てていくのです。 ・添加物なしにはつくれない食品