光 - みる会図書館


検索対象: 半導体の話―物性と応用―
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1. 半導体の話―物性と応用―

っていないで、特別の波長の光がいくつか重なったものである。この事は、何か特別の、全く 新しい物理学的な描像を持たないことには理解しようがない。そして、その描像に従って、新 しい法則性を仮定して行かねばならない。こうして量子論のいとぐちがっかまれた。 我々が、実際に手にとり、目でみてたしかめられる範囲を越えて、なお物の性質を理解し、 これを活用できるのは、全く私達が抽象的に考えを進める事ができるからである。 「自分で触ることができ、目で見られるものしか信じない」 というかたくなな心の人でも、実際には知らず知らずに、こういう人類共通の能力を信じ、活 用しているのである。 原子の世界の現象から、法則性をつかみ出し、一歩々々理解を深め、そして、ついには原子 核の世界に立入って、その中の = ネルギーを使いこなした科学と技術との歴史は、全くすばら しい抽象的な思考方法によるデモンストレ 1 ションという事ができる。 誰一人、一個のエレクトロン ( 電子 ) そのものを見た人はいない。丸いか四角いか、エレク トロンの色は何色かという事は、今日 『尋ねることが無意味』 という事が学問的に判っている。しかもなお、我々は電子の直径や、重さを知っている。そう して、電子の性質を知っているからこそ、今日の壮大な電子技術を築き得たのである。 『法則性の真実を掴んだ限りにおいてのみ、それを有効に使い得る』 という言葉は本当だという実感がする。 さわ

2. 半導体の話―物性と応用―

を、気長に、いろいろな工夫をしてじっくりやってみないと駄目だという事に相当する。場合 によっては、一見実用と全く離れた様な事でも、じっくりとやりつづけて見ないと、再び大き な鉱脈を見つけることはかなり難しいという事である。ところが、研究というものが日に日 に『高価な仕事」になりつつある。研究費は、少しキザな表現を使えば、天文学的な額になり つつあるわけである。 例えば半導体レーザーというものが米国でできたときを考える。それを追いかけて、同じも のを作るまでの仕事 ( すなわち追試 ) をするのに、我々はすぐに費用の壁にぶち当る。 則定装置だけを例にとってみよう。先す、非常に鋭い電流のパルスを作り出す装置が要る。 この。ハルス発生装置に軽く一〇〇万円はかかる。出てくる光のスペクトルをとるのに、国産品 では不充分となると、輸人品で、 ーキン・エルマ 1 社の分光器に一〇〇〇万円、観測装置の シンクロスコー。フが一五〇万円、万事この調子である。とにかく金がかかる。この例など安い 方である。まして、追試でなく、自力で開発する場合には、失敗や改良を積み重ねる必要があ るから、もっともっと ~ 〕回価につく。 さすがの米国でも、一般の会社が自力でこれをやるという事は、そろそろ限度に近づいて来 た。つまり、次の時代を作る為の長期的で純学間に近い研究は、会社自身で張り合うのは大変 だというわけである。実用化のめどが少しでもつけば、思い切った「方向づけ研究」と開発の ための。フロジクトを組めるが、次の時代の波紋を起こす仕事が生まれるのを待っために、果て のない投資をし切れるかどうか、そろそろ心配になって来た。だから、一九六六年初頭には、 8

3. 半導体の話―物性と応用―

術がなかったら、およそ想像もっかない程に進歩をして来たという話であった。特に、飛行機 が音の速度を超すと、「すべての天候に使える着陸装置」など、光を利用したいろいろの電子 装置に将来を期待せねばならないだろう、という結びで、最後に一言コマ 1 シャルの文章を入 れて、機長の署名が入っていた。 この様に、現に自分の乗る飛行機の運転に利用されていてさえ、私は半導体の役立ち方に実 感を持っチャンスが与えられなかったのである。 技術の発展、工業の発展が持っ影響というものは、だから一層今日では重大なのである。そ れがイン。フリシットであればあるだけ、見落されたり、過少評価されやすい。逆に、その社会 あた の持っ特色が、科学技術に対して与える影響の方も、これも又同様の意味で、大切なのに見の がされ易い。 ところで、ここに、一寸変わったエピソ 1 ドがある。 二年ごとに、世界の国々の持ちまわりで、国際会議が開かれている。それは、「半導体の物 理学」についての会議で、一九六〇年にはプラ 1 グ、六二年に英国のエクゼター、六四年はパ リ、六六年は京都で開かれた。 フューネラル 六二年、エクゼターでは、「葬式」という一一 = ロ葉がきかれた。それは、半導体の物理学も、そ ろそろはなやかな生涯を閉じる時が来たといったニュアンスを以って語られた。 そして、六四年、。ハリではエコール・ノルマ 1 ルのエグラン教授は開会の辞にこう述べた。 「かって、半導体はかのマ リリン・モンロ 1 の如く魅力に満ちていた」 あた 6

4. 半導体の話―物性と応用―

的な研究とは別に、とにかくこれから逃れる術はないものかという研究も沢山行なわれた。診 断よりも、とにかく治療の方法を見つけたいというわけである。 面白いことに、シリコンでは同じく接合を作るのに、使う不純物原子の選び方で、放射 線損傷をかなり弱める事ができる事が判った。けれども、そういう点でもっと思い切った改良 はないものかという研究がその後もつづい . て来た。 硫化カドミウムを使った太陽電池などはその一例である。硫化カドミウムという材料は、例 えば最近のカメラの電気露出計に使われている。米国のハ 1 ショ 1 ・ケミカルズ社では、一九 六三年に、硫化カドミウムの三インチ角の板で太陽電池を作り、これ一つで太陽光線から〇 一ワットの電力を作れる事を示し、放射線損傷に対しても、コストの点からも、シリコンに勝 ヒる事を示したのである。この仕事は今まで地道につづけられ、最近ではますます良さがはっき りして来た様である。 の 時字宙に出た電子部品が受ける苛酷な条件は、高い温度と、低い温度が交互に襲うことであ ス る。地上の通信や、電子計算機ではこんなことは全くない。ハー ショ 1 ・ケミカルズは、硫 カドミウムの太陽電池に摂氏マイナス一〇〇度と。フラス六〇度の温度変化を、一一〇〇〇回く り返し与えて、その間充分に動作する事をたしかめた。この温度変化のサイクルは、軌道を二 、年間まわった事に相当する。これで、放射線に対しても、温度条件に対しても充分もちこたえ 4 られる事が判ったわけである。 半導体を使って光を作る事もできる様になったし、半導体に電流を流して冷却する事もかな 1 / 5

5. 半導体の話―物性と応用―

ある。 しかし、ここで、良い酸化膜というものが大きなキ 1 ポイントになって来る。たしかに、 シリコン結品の表面に酸化膜を作る位のことは、素人にでもできる。極端なことをいえば、電 熱器のニクロム線の上に結品を十分もころがしておけば、限でみて判る位表面は酸化する。酸 化膜で光の反射の様子が変わるからである。しかし、良い酸化膜を作るとなると、専門の技術 者でもかなりの訓練を必要とする。それは熟練が必要なのではなくて、装置や、材料の処理、 温度の管理といった、厳密な技術が要るということである。 良い酸化膜というのは、現象論的にいえば、その酸化膜のついたダイオードやトランジスタ の特性が変化しないというだけの事になるけれど、もう少し実体論的に、つまり、どんなとこ ろが違うかという点について言えば、それは第図に示した様に、表面準位 ( 3 の 1 参照 ) が多か少ないかで決って来る。 シリコンと、その上にできた酸化膜との境界面のところに、一つの種類の表面準位が存在す る。これは、酸化膜を作る前の表面の状態でほぼ決ってしまう。次に酸化膜を作ると、その膜 の中及び膜の上に、別の種類の表面準位が発生する。もし、この様な表面の状態のところに、 たまたまæZ 接合が顔を出しているとすれば、その特性はこれらの二種類の表面準位によって 強く支配されるけれども、特に、長い間に特性が変わったり、不安定な特性を示したりする様 なことについては、第二番目の ( 図の△印 ) 表面準位が強い影響を与えるのである。 この種の表面準位は、何等かの不完全さ、あるいは不純物によって生しると思われ、いろい レ 0

6. 半導体の話―物性と応用―

村ブックス ゆたかな人間形成のための 刊行書目よリ■日本放送出版協会 転換期の宗教一真宗・天理教馞会笠原ー男月の科学竹内均 / 久野久 / 伊佐喬三 を日本全地域にわたって調査分析。 280 円 激しく移り変った日本経済の現状と問題点 日本斉の新地図伊藤善市 / 坂本ニ郎 来の明治維新論に鋭いメスをいれる 250 円 フランス革命と明治維新を比較検討し、従 フランス革命と明治維新河野健ニ 程を学問的視野から論じた異色編。 230 円 生物から猿を通って人間社会が成立する過 人間社会の形成今西錦司 待望久しいドストエフスキイ論。 240 円 苦悩の生涯と作品を特異な視点から論じる ドストエフスキイ第そク井涯と作謌埴谷雄高 げ分析し、現代人の心理の源を探る。 2 円 日本人独特と思われる心理的特徴をとりあ 日本人の心世良正利 200 円 その姿を浮彫りにする。 32 歳の筆者が各層の現代青年と語り合い、 現代の青年像石堂淑朗 りあげ、言葉と機能について詳解。 250 円 流行語、職場用語、外来語などの言葉をと ことばの社会学柴田武 え、今日のドル問題の意義を正す。 250 円 ドルの発展の姿を歴史的変遷のうちにとら ドルの歴史牧野純夫 2 円 と人間観の確立を指針する。 “昭和史論争 " を中心に、正しい歴史の把握 歴史と人間堀米庸三 210 円 問いかけの中に探った好著。 現代をどう生きるか。その指針を歴史への 歴史をみる眼堀米庸三 2 円 財の心と形をみごどに解明する。 歴史的展開を明白にするとともに密教文化 日本密教をその展開と美術佐和隆研音■その形態と物理竹内龍ー 280 円 三宗教に焦点をあて特質を探る。 政治的空白期に宗教はどんな役割をしたか 教の根底にある褝の姿をとらえる。 250 円 神文化・心理・現象・人間像などを通して仏 禅■現代に生きるもの紀野一義 獄極楽絵図、神画等をとり上げる。 280 円 正編に続き、弥勒菩薩、弁天、大黒天や地 続・仏像■心とかたち望月信成 / 佐和隆研 / 梅原猛 められた日本人の心をとく名著。 280 円 仏像は単に美術品ではない。仏像の形に秘 仏像第むとかたち望月信成 / 佐和隆研原猛 国際法の全容をわかりやすく解説。 250 円 載争の法、平和の法、新しい国際法など、 国際法の話田畑茂ニ郎 み合わせながら総合的にとらえる。 280 円 作品の鑑賞・解釈を時代・社会的背景とから 万葉集を時代と作品木俣修 と役割、文化などを実証的に究明。 280 円 東西文化の交通路シルクロード。その歴史 シルクロード■東西文化の溶炉岩村忍 立場から究明し、人間理解を試みる。 2 円 反射理論を中心に脳の働きや行動を科学の 脳■行動のメカニズム千葉康則 250 円 間とやきものの関係をさぐる。 “やきもの”の起源をたずね、創造と美、人 やきもの・技術・生活・美学吉田光邦 2 円 などを興味深くさぐる。 数学の思想、歴史、現代数学のあるべき姿 数学の思想村田全 / 茂木勇 性を科学的に追求した興味深い書。 250 円 あらゆる顔をとりあげ、現代人相学の可能 顔と性格山崎清 250 円 関係、生命発生の謎などを解明。 広い視野から諸説を分析し、物質と生命の 生命の起源野田春彦 深い科学読物。地球の科学姉嫌編。 2 円 50 億年の地球の歴史、その謎をといた興味 地球の歴史竹内均 / 都城秋穂 280 円 を生活との接点においてさぐる。 伝統思想と現代思想。そこに内在する論理 中国の思想・伝統と現代竹内実 2 円 る音の本質を興味ぶかくさぐる。 聞こえる音から聞こえない音まで、あらゆ 280 円 おける月の全容を明快にとく。 最新の科学的データをもとに新しい時代に 230 円 宇宙医学・心理学の面から解明。 人間が宇宙人として生きる条件、課題を、 宇宙と人間大島正光 的に捉え、興味深く解明していく。 2 円 宇宙全般の諸問題を歴史の流れの中で体系 宇宙の探究湯浅光朝 2 円 とつひとつ解明していく。 進化する宇宙をたて袖にしてそのナゾをひ 宇宙の科学小尾信弥

7. 半導体の話―物性と応用―

という見方をも生み易い。 一時、研究所が日本に沢山作られた頃 「研究者は、そっとして、なるべくそばからタッチしないで、静かに冥想させてあげる方が よい。そうすれば、何時かは金の卵を生むたろう』 といった考え方が一部にあった様である。 しかし、米国の研究所に関する限り、ある意味ではかなりこれと反対である。こういう状態 におかれ、そして、まさしくこの信望に答え得る人はむしろ少なく、却って現実の巷でもまれ ているのが活動的な研究者達であるという印象の方が強い。実際、偶然に支配される型の成果 の大部分は、かなり現実的なものとのからみ合いから刺戟とエネルギ 1 とを吸収している。こ れがむしろ歴史的教訓である。 開点接触トランジスタが生まれるまでの推移をみても、ショックレ 1 が「真空管を使わない増 巾器を作ろう」とした動機が一貫して強い影響を与えている。 ス トンネルダイオードというものが、はじめて生み出されたのは、ソニ 1 社のトランジスタの 仕事である。不純物を、とかしたゲルマニウムに投入しながら作る「成長型」とよばれる接合 トランジスタの特性を調べているうちに、特徴的なこぶが、電流ー電圧特性に見つかった。こ レ れは偶然である。しかし、この偶然の下地は、本気でやっている工業上の課題であった。 工 このトンネルダイオ 1 ドを実用にしようというので、ゼネラル・エレクトリック社で開発研 / 究に着手した。そうしたら、ゲルマニウムよりも、ガリウムと砒素との化合物半導体、砒化ガ

8. 半導体の話―物性と応用―

り実用に近づいた。いろいろの要因が介在するため、まだ家庭の中に入って来るところまで来 ていないけれども、半導体というものは、電子のからくりの宝庫の様であり、この十五年程 は、次から次へと、その宝にかけられたヴイルをはいで来たのである。 その様な進歩の原動力となったのは、やはり、研究であった。しかも、トランジスタの例に 見た様に、時には、それはかなり基本的な研究であった。 しかし、これを別の側面からみると、もう一つ違った分類をする事ができる。すなわち、大 きな進歩をもたらした研究というのは 3 偶然に支配される。 ①言画的に進められる。 の二つに分けられるという事である。 偶然に支配されるというのは、はしめの点接触トランジスタの場合の様に、ある研究の途中 で、想像していなかった様な奇妙な現象にぶつかる場合である。つまり珍 ( 新 ) 現象の発見で ある。奇妙とか、珍とかいうのは、少なくとも発見の段階では、「それまでにある知識と理論 とを使ったのでは、うまく説明がっかない」という事である。点接触トランジスタがまさに その通りであったことは前に詳しく述べておいた。 だから、この種の仕事は全く新しいという印象がより鮮烈である。その事が、しばしば 特に日本では「独創的で画期的な』仕事は、こういう、大が歩いて棒に当る様な性質のものだ けだといった考えに導き易い。また、それが極めて「個人的』な雰囲気の中でのみ可能である 1 / 6

9. 半導体の話―物性と応用―

0 0 0 0 0 0 0 「字宙へ送る』 という厳しい条件のもとですべての部品を考え直す事 0 0 0 0 0 0 0 、れ俊 さ をせまられた。シリコンでは、地球を離れて、ヴァ 0 0 0 0 0 0 0 山山み きこ ン・アレン帯という放射能の著しく強い部分を通り抜 0 0 0 0 0 0 0 ロ こ 生ロ ける時に、結品に変化が起こって特性が劣化する事が 0 0 0 0 0 0 0 め一に た間 ある。これが悩みの種であったし、今でも困ってい 0 0 0 のの 0 0 0 る。 子品す 。。。。。。。粒結残結品が放射線をうけると、原子は結品の中の決った や , を 0 0 0 0 ( ) 0 。線は穴場所から第図の様に叩き出されて、どこか他の場所 、子け 。。。。。。。放電抜へ追いやられる。追いやられた先に、具合よくたまた ま『空き』があるという事はないから、結局、規則正 0 0 0 0 0 0 0 図 しく並んでいる原子の間に割り込んで入る結果とな 敖射線又は粒子第 る。 何しろ、『構造敏感』な半導体のことだから、このどちら ( いなくなってできた空きと、割 り込んだ原子 ) も、電気的な性質に強い影響を与える。こういう現象を、一般に『放射線損傷」 ( ラディエイション・ダメソジ ) と呼んでいる。放射線損傷は、米国の技術者には焦眉の急の 間題だったが、日本では大学の研究室でのアカデミックな課題に近かった。これは技術の置か れた状態がまるで違うためである。だから丁度の場合の様に、米国では放射線損傷の原理 0

10. 半導体の話―物性と応用―

例えば、一九六四年には、大きい電力を扱って、しかも特性のよいシリコン・トランジスタ がテレビ用に開発された。もともとトランジスタに大きい電力をかけると、電圧や電流の関係 が比例しない傾向があらわれてくる。これを『直線性から外れる』という。例えばバネの延び を考えても、あまり強く引張ると、かける重さと、延びとは比例しなくなってくる。それと似 ている もし、電力が大きくなって直線性から外れてくると、信号として入った電波は、折角増巾さ れても歪んでくることになる。人の声であれば、スピーカ 1 を通って出た声が、もとの声と少 し違った感じになってしまうわけである。だから、ましてこの様なトランジスタをテレビの 向には使えない。テレビは電子線が画面を横にくり返しなでながら、順に上から下へ降りてく 化る事をくり返している。その横に撫でる時の電圧を出す回路に直線性の悪いトランジスタを使 可えば画がゆがんでしまう事は明らかである。 代 これがどうやら解決したということがゼネラル・エレクトリック社、フ = アチャイルド社 時 ス等からアナウンスされたのが、一九六四年の六月である。フアチャイルド社のマネジャーで あるノイスは、「一九六五年六月からの一年間に、四〇〇万台のトランジスタ・テレビをこれ で作り、そのためのシリコントランジスタを、今から数週間のうちに売り出す」と記者達に発 表した。こういう、眼に見えた成果は、数え上げたら、きりがない。 これまで、太陽電池といえばシリコンの板を使うと殆ど決っていたのだが、米国の技術者 ゆが ー / 3