使っ - みる会図書館


検索対象: 半導体の話―物性と応用―
179件見つかりました。

1. 半導体の話―物性と応用―

S 2 物理学と工学との対話 という定義をしようとすると、話が却って判りにくくなる可能性がある。 そこで先ず、半導体らしさということについて説明して行き、その後で全体をふりかえって 表れば、半導体というものの具体的なイメ 1 ジが形成されるだろうと考える。 私達が小さい結品を与えられて、それが 「半導体であるか、そうでないか ? 」 とたずねられたら、先ず電流の流れ方を調べるだろう。 一番簡単な方法は、第 9 図の様に、テスタ 1 を使って、大体の電気抵抗をあたってみること である。テスターの棒の両端を、結品の両端にあてて、メータ ス 1 が大体どの位のふれを示すか調べてみる。 タ もし、針が殆ど振れない様なら テ回 「これは半導体ではなく、むしろ絶縁体であろう」 路をる 回抗み と一応は考える ( 一応はの説明は後でする ) 。 抵て 気っ次にもし針が端まで一杯に振れる様なら、それは殆ど抵抗が 電当 のでないつまり極めて電流をよく流すという事だから、これも 「半導体ではなくて、何かの金属ではないか」 結タ と疑ってみるだろう。 図 この様に、電気の通り方で、第一の目安をつけるわけであ 第 0 る。 5

2. 半導体の話―物性と応用―

1 半導体 シエマティック ばトランジスタは、図式的に書くと、異なった二種類の不純物、例えばアンチモン ) とイ ンジウム ( ⅲ ) とを、設計に従った分布になる様に、結品の中に加えて作ったものである。こ の添加量自体、決して多くはない。せいぜい一〇〇万分の一程度前後である。だからゲルマニ ウムの結品をトランジスタに使うためには、一度は充分によい結品に仕上げる必要があるわけ である。 半導体は、これに加える不純物でかなりいろいろの異なった性質を持たせる事ができる。そ ればかりでなく、半導体そのものにも、いろいろなヴァラエティがある。いわば半導体材料 は、このところそれぞれの持ち味によって非常に沢山の選択の可能性が得られている。ゴルフ の球の落ちた場所によって、次に使う 的さ クラブを選び出すように、大工さんが 理布 原分材木の形と性質とによって工具を使い 分ける様に、私達は目的によって半導 アンチンタ ロス 体の沢山の種類の中から候補者を指命 インジウム ン造むする事が、かなりの自由さでできる様 ラ構物 , トな純るになっこ 0 アンチモン 不あ 図 一番広く多く使われているのは、ゲ 局と 結こルマニウムとシリコンである。 これには歴史的に理由がある。トラ 半導体結晶 不純物原子の 濃度

3. 半導体の話―物性と応用―

論で扱う場合の様に完全に近い状態が実験的 けジ成 っン形には作り出せないために、ピタリと全部合う しイが ーし力ないという事である。しかし、大 おに分わけこ、、 に中部る筋は「たなごころを指す」という言葉の様に 裏ののき 表そ型で設計理論ー こよって言いあてられていた。こう 品とてらタして、はじめて接合トランジスタが生まれ 結るけかス をすとむジた ムを部こン 厳密な意味で、今日使われているトランジ ウ理一けラ ジ処がとトスタが生まれたのはこの時である。つまり、 ン熱品がて イ加結ムれエレクトロニクスに革新をもたらすトランジ て 2 ウさ スタは、本質的にはここで誕生したと言わね 図 ばならないのである。 第 もし、点接触トランジスタで事が終わって いたら、 : 、現 5 らく今日のトランジス タ時代は現出しなかったろう。そういう仮定は場合によってはナンセンスであるにしろ、将来 の技術開発の計画を建てる人々に対しては、誠に大きな教訓である事を私は強調しないでいら れない。 さて、接合トランジスタの出現で事態は一変した。何故なら、点接触トランジスタの誕生の インジウム N 型 ゲルマニウム インジウム P 型 (b) 1 イ 0

4. 半導体の話―物性と応用―

第三に、整流性、あるいは『非オーム性』をしらべる。 流 電 このためには、第昭図に示した様に、結品の片面を広くハンダ と る で銅板につけ、結品の上面に針をたてて、このものの電圧と電流 め の特性をしらべてみる。 温 でる このとき、図の@の様に、電流が電圧と常に比例していれば、 線れ ムふそれは『オーム性』であるとよぶ。オ 1 ム (Ohm) の法則に従っ ク針ているからオーム性というのである。しかし、もし結品が半導体 ニ化頂 であれば、多くの場合、特性はオーム性にならず、⑧の曲線の様 をの 針計に曲ってくる事が多い。これを『非オーム性』だと表現する。 図 ただ曲っているだけでなく、原点 0 に対して対象にならない。 第すなわち、。フラス 1 ボルトに対する電流値と、マイナス 1 ボルト に対する電流値とが互いに等しくない、すなわち、先に述べた整 流作用があらわれるわけである。 シリコンやゲルマ = ウム、その他、今日、電気的な装置 ( 例えばトランジスタなど ) に使わ れている半導体材料なら、すぐこの網にひっかかる。 しかしながら、例えば、電子冷却に使うビスマスとテルルの合金だとか、トンネルダイオー ドに使う、非常に不純物を沢山入れた半導体などでは、整流性を確認する事はかなり難しいか ら、もっと違った方法を使わねばならない。 ニクロム線 一三ロ 電

5. 半導体の話―物性と応用―

るに充分な銅原子が入っている 一」 0 事判 0 = 以来、←一【 = 0 場や実験室「、水道ら 0 水を , 交換樹脂を 通し、更に蒸溜して使うというのが常識になった。トランジスタ工場の建物を見ると、大抵屋 上に大きなタンクが作ってある。これは良質の水を作り保存する装置である。こうやって水を 良くする事によって、熱処理による変化は防げる様になった。 ところで、この事は水の中に多量の銅が混っている事を発見したという話ではない。半導体 がことのほか敏感だという事である。何故なら、変化をひき起こす銅の分量は、一億分の一位 の濃度にすぎなかったのだから。 つまり、ゲルマニウムの原子一〇〇〇〇〇〇〇〇個の中に、一個の鋼の原子がまぎれ込む と、それが結晶の電気的な性質に影響を与えはしめる。この濃度は日本の全人口に対してたっ た一人という程度にすぎない。 こういう、わずかばかりの不純物の影響が強くあらわれる性質を 『構造敏感』 とよんでいる。この構造敏感の性質のために、技術者は手を焼いたわけである。 ところが、この苦労の種の構造敏感さこそ、また、半導体が技術革新の中心材料となり得た いわば利点でもあった理由である。 実際に作られるさまざまな半導体装置というのは、結局のところ「必要な種類の不純物』を 『必要とする量だけ』、『望ましい場所』に添加して作っているのである。第 2 図の様に、例え

6. 半導体の話―物性と応用―

的な研究とは別に、とにかくこれから逃れる術はないものかという研究も沢山行なわれた。診 断よりも、とにかく治療の方法を見つけたいというわけである。 面白いことに、シリコンでは同じく接合を作るのに、使う不純物原子の選び方で、放射 線損傷をかなり弱める事ができる事が判った。けれども、そういう点でもっと思い切った改良 はないものかという研究がその後もつづい . て来た。 硫化カドミウムを使った太陽電池などはその一例である。硫化カドミウムという材料は、例 えば最近のカメラの電気露出計に使われている。米国のハ 1 ショ 1 ・ケミカルズ社では、一九 六三年に、硫化カドミウムの三インチ角の板で太陽電池を作り、これ一つで太陽光線から〇 一ワットの電力を作れる事を示し、放射線損傷に対しても、コストの点からも、シリコンに勝 ヒる事を示したのである。この仕事は今まで地道につづけられ、最近ではますます良さがはっき りして来た様である。 の 時字宙に出た電子部品が受ける苛酷な条件は、高い温度と、低い温度が交互に襲うことであ ス る。地上の通信や、電子計算機ではこんなことは全くない。ハー ショ 1 ・ケミカルズは、硫 カドミウムの太陽電池に摂氏マイナス一〇〇度と。フラス六〇度の温度変化を、一一〇〇〇回く り返し与えて、その間充分に動作する事をたしかめた。この温度変化のサイクルは、軌道を二 、年間まわった事に相当する。これで、放射線に対しても、温度条件に対しても充分もちこたえ 4 られる事が判ったわけである。 半導体を使って光を作る事もできる様になったし、半導体に電流を流して冷却する事もかな 1 / 5

7. 半導体の話―物性と応用―

という見方をも生み易い。 一時、研究所が日本に沢山作られた頃 「研究者は、そっとして、なるべくそばからタッチしないで、静かに冥想させてあげる方が よい。そうすれば、何時かは金の卵を生むたろう』 といった考え方が一部にあった様である。 しかし、米国の研究所に関する限り、ある意味ではかなりこれと反対である。こういう状態 におかれ、そして、まさしくこの信望に答え得る人はむしろ少なく、却って現実の巷でもまれ ているのが活動的な研究者達であるという印象の方が強い。実際、偶然に支配される型の成果 の大部分は、かなり現実的なものとのからみ合いから刺戟とエネルギ 1 とを吸収している。こ れがむしろ歴史的教訓である。 開点接触トランジスタが生まれるまでの推移をみても、ショックレ 1 が「真空管を使わない増 巾器を作ろう」とした動機が一貫して強い影響を与えている。 ス トンネルダイオードというものが、はじめて生み出されたのは、ソニ 1 社のトランジスタの 仕事である。不純物を、とかしたゲルマニウムに投入しながら作る「成長型」とよばれる接合 トランジスタの特性を調べているうちに、特徴的なこぶが、電流ー電圧特性に見つかった。こ レ れは偶然である。しかし、この偶然の下地は、本気でやっている工業上の課題であった。 工 このトンネルダイオ 1 ドを実用にしようというので、ゼネラル・エレクトリック社で開発研 / 究に着手した。そうしたら、ゲルマニウムよりも、ガリウムと砒素との化合物半導体、砒化ガ

8. 半導体の話―物性と応用―

しみ込ませると、表面のところに接合が形成され、しかもその型の層は非常に薄く作る 事が可能なのである。 例えば、厚さ一ミクロン ( 一〇〇〇分の一 ミリメートル ) 位の型の層を作る事も決して難 しくない。これが拡散法の特長で、合金法の処理ではこれ程精度よく作りあげる事は殆ど不可 能である。しかも、厚さ一ミクロンの層がもっ凸凹は、その十分の一程度、すなわち〇・一、 クロン位ですむ。そこで、この拡散層を、トランジスタのべース領域として使う事が考え出さ れた。実際には第図⑤の様に、その拡散層に直接べース電極をつけ、エミッタ電極をつけて トランジスタに仕上げてしまう場合と、拡散処理を二度、しかも場合によっては、ドナ 1 不純 物と、アクセ。フタ不純物とを同時に拡散してしまうといった、非常に凝ったやり方をする場合 とがあるけれども、いずれにしてもこの型のトランジスタは、それまでの如何なる方法よりも 開べース領域の巾がせまく、しかもその巾が均一にできるので、カット・オフ周波数が急に高く 代なったのである。 ス ⑤図に破線でかこった様に、拡散法によるトランジスタは、小さいエミッタ、べース電極をつ = けてから、肝要な部分を残して薬品でけずりおとしてしまう。こうすると、あたかもトランジ スタは、小高い丘の上に作られている形になるので、『丘』という意味をもっ『メサ』 (MESA) ク . レ という一 = ロ葉をつけて 『メサ・トランジスタ』 と称せられる様になった。 157

9. 半導体の話―物性と応用―

のは、とてもできない相談であった。 考えてみれば、これは一見もっともな面もあった。というのは、もともと、真空の中を走る 電子と、結品の中を走る電子との間には、ゝ 力なり本質的な違いがある。例えば第図 3 の様 に、真空の中におかれた電子に対して一定の電場が作用すれば、その電子は刻々に速さを増 しつつ、。フラス電極に向って走る筈である。何故なら、電子に働く力は電荷と電場との積 でありその力が『加速度』を生ずるからである。 ところが、結品の中の場合⑩ではどうだろう ? この場合には電子は一定の速度でプラス電 極に向って走る。一定の速度というのは、実は平均してみての話である。どうしてかという と、電子は走り出して間もなく、結品を形づくっている原子などに衝突する。そして一度止っ て、また走り出す、ということをくり返すためである。つまり衝突と衝突との間だけは図 と同様の走り方をするのだけれど、しばしば衝突をくり返すために、状態がもとに逆もどりし てしまう。それを全体として平均して眺めると、一定の時間には決った距離を走ることにな る。つまり速度は一定なのである。 求 を この本質的な違いがあるから 性 ム月 「真空管にできる事は、トランジスタの様に結品を使ってもやらせる事ができるだろう』 可 次という類推は必ずしも常には成立たない つまり真空管のマイクロ波発振管には、マグネトロンとかクライストロンとい 0 た名前四 の特別の構造をもったものがある。そして、その中での電子の運動や、何故そこからマイクロ

10. 半導体の話―物性と応用―

っていないで、特別の波長の光がいくつか重なったものである。この事は、何か特別の、全く 新しい物理学的な描像を持たないことには理解しようがない。そして、その描像に従って、新 しい法則性を仮定して行かねばならない。こうして量子論のいとぐちがっかまれた。 我々が、実際に手にとり、目でみてたしかめられる範囲を越えて、なお物の性質を理解し、 これを活用できるのは、全く私達が抽象的に考えを進める事ができるからである。 「自分で触ることができ、目で見られるものしか信じない」 というかたくなな心の人でも、実際には知らず知らずに、こういう人類共通の能力を信じ、活 用しているのである。 原子の世界の現象から、法則性をつかみ出し、一歩々々理解を深め、そして、ついには原子 核の世界に立入って、その中の = ネルギーを使いこなした科学と技術との歴史は、全くすばら しい抽象的な思考方法によるデモンストレ 1 ションという事ができる。 誰一人、一個のエレクトロン ( 電子 ) そのものを見た人はいない。丸いか四角いか、エレク トロンの色は何色かという事は、今日 『尋ねることが無意味』 という事が学問的に判っている。しかもなお、我々は電子の直径や、重さを知っている。そう して、電子の性質を知っているからこそ、今日の壮大な電子技術を築き得たのである。 『法則性の真実を掴んだ限りにおいてのみ、それを有効に使い得る』 という言葉は本当だという実感がする。 さわ